説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】小形化及び部品点数の削減を実現し得る液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】第1及び第2の圧力発生室の容積をそれぞれ変化させる第1及び第2の圧電素子16A,16Bと、圧電素子16A,16Bの前記第1及び第2の圧力発生室とは反対側に配設されて圧電素子16A,16Bの一部が接合されている共通の固定部材33と、圧電素子16A,16Bを駆動する駆動信号が外部から供給される入力端子と圧電素子16A,16Bに前記駆動信号を供給する出力端子とが形成された可撓性を有する信号線フィルム35とを備え、信号線フィルム35は、固定部材33の一方の側面で前記入力端子と圧電素子16Aに前記駆動信号を供給する出力端子を有する第1の配線部35Aと、この第1の配線部35Aから固定部材33の他方の側面に回り込んで第2の圧電素子16Bに前記駆動信号を供給する出力端子を有する第2の配線部35Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に縦振動型の圧電素子の駆動により液体を噴射する方式のものに適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、圧電素子の変位による圧力を利用してノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが知られている。その一種としてノズル開口に連通する圧力発生室に対向する領域に振動板を介して圧電素子(圧電振動子)を縦方向に設け、この圧電素子に電圧を印加することによる縦振動を利用して圧力発生室内を膨張・収縮させてノズル開口からインク滴を吐出させるものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなインクジェット式記録ヘッドの圧電素子は、ヘッドケース(基台)の収容部内に収容され、通常FPC等で形成されている回路基板を介してヘッドケース上に設けられる配線基板(上方閉鎖板)の導電パッドと電気的に接続されている。すなわち、回路基板の一端部である出力端子が圧電素子に接続されるとともに、他端部である入力端子が配線基板の導電パッドに接続されている。かくして、回路基板の入力端子を介して各圧電素子を駆動するための駆動信号を各圧電素子に供給するようになっている。
【0003】
かかる縦振動を利用したインクジェット式記録ヘッドとしては、一体となった多数の圧電素子を固定部材の側面に固定して一個の圧電素子ユニットを形成し、この圧電素子ユニットを2個一組としてヘッドホルダーの収容部に収容するとともにその側面に配設したものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−74740号公報
【特許文献2】特開2000−218774号公報(第3頁、第4、7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く縦振動を利用したインクジェットヘッド式記録ヘッドにおいても、さらなる小形化及び部品点数の削減が望まれている。
【0006】
なお、このような要望はインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0007】
本発明は、上述の如き従来技術に鑑み、小形化及び部品点数の削減を実現し得る液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の一態様は、液体を噴射するノズル開口に連通するよう列を形成して流路形成基板にそれぞれ並設された第1及び第2の圧力発生室と、前記流路形成基板に形成された振動板を介して前記第1及び第2の圧力発生室の容積をそれぞれ変化させる第1及び第2の圧電素子と、前記第1及び第2の圧電素子の前記第1及び第2の圧力発生室とは反対側に配設されて前記第1及び第2の圧電素子の一部が接合されている共通の固定部材と、前記第1及び第2の圧電素子を駆動する駆動信号が外部から供給される入力端子と前記第1及び第2の圧電素子に前記駆動信号を供給する出力端子とが形成された可撓性を有する信号線フィルムとを備え、前記信号線フィルムは、前記固定部材の一方の側面で前記入力端子と前記第1の圧電素子に前記駆動信号を供給する出力端子を有する第1の配線部と、この第1の配線部から前記固定部材の他方の側面に回り込んで前記第2の圧電素子に前記駆動信号を供給する出力端子を有する第2の配線部とを備えたことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0009】
本態様によれば、一枚の固定部材に2列分の圧電素子を接合することができるので、その分相対向するノズル開口の間隔を小さくすることができ、装置の小形化とともに印刷密度の向上に資することができる。また、一枚の信号線フィルムを2列の圧電素子で共用できるのでその分部品点数を減らすこともできる。
【0010】
ここで、前記信号線フィルムは、前記第1の配線部から前記固定部材の他方の側面に回り込んで前記第2の配線部に至る連結部と、当該連結部よりも前記流路形成基板側の領域に切欠部と、を設け、当該切欠部を介して前記固定部材の前記圧電素子と接合する側の端面が露出するように構成するのが望ましい。この場合には固定部材の露出部を利用して圧電素子の所定位置への位置決め及び固定部材の固定を容易に行うことができるからである。
【0011】
また、前記第1及び第2の圧電素子の間で前記固定部材の端面に固着されて前記第1及び第2の圧電素子の前記振動板側の端面の位置を規制する脚部を設けるのが望ましい。この場合には圧電素子の高さ位置の調整を脚部を基準に行うことができるので、その分組立てが容易になるばかりでなく、圧電素子の伸縮に伴い発生する反力を支持することもできるからである。
【0012】
さらに、前記第1の配線部に配設する1個の駆動ICで前記第1及び第2の圧電素子をそれぞれ駆動するように構成するのが望ましい。この場合には、第1及び第2の圧電素子で1個の駆動ICを共用できるのでその分部品点数を削減できるからである。
【0013】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0014】
本態様によれば、液体噴射装置としても小形化が実現され、また部品点数の削減もはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る記録ヘッドの概略断面図である。
【図2】実施形態に係る記録ヘッドの要部断面図である。
【図3】圧電素子ユニットの一つを抽出して示す概略斜視図である。
【図4】圧電素子ユニットとヘッドケースとの関係を示す概略断面図である。
【図5】実施形態に係る記録装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドを示す概略断面図であり、図2はインクジェット式記録ヘッドの要部断面図である。
【0017】
両図に示すように、本形態のインクジェット式記録ヘッド10は、インク滴を噴射するノズル開口13A,13Bにそれぞれ連通する2列の圧力発生室11A,11Bを有している。ここで、圧力発生室11A,11Bは流路形成基板12に、図1及び図2の紙面に直角な方向にそれぞれ複数並設されて第1及び第2の圧力発生室列を形成している。
【0018】
さらに詳言すると、流路形成基板12には、その一方面側の表層部分に、圧力発生室11A,11Bが隔壁によって区画されてその幅方向(図1及び図2の紙面と直角方向)でそれぞれ複数並設されており、第1及び第2の圧力発生室列の外側には、各圧力発生室11A,11Bにインクを供給するための共通のインク室(液室)となるリザーバー21A,21Bが、流路形成基板12を厚さ方向に貫通して設けられている。そして、各圧力発生室11A,11Bとリザーバー21A,21Bとは、インク供給路22A,22Bを介して連通している。インク供給路22A,22Bは、本実施形態では、圧力発生室11A,11Bよりも狭い幅で形成されており、リザーバー21A,21Bから圧力発生室11A,11Bに流入するインクの流路抵抗を一定に保持する役割を果たしている。さらに、圧力発生室11A,11Bのリザーバー21A,21Bとは反対の端部側には、流路形成基板12を貫通するノズル連通孔23A,23Bが形成されている。このような流路形成基板12は、例えばシリコン単結晶基板で好適に形成することができ、流路形成基板12に設けられる圧力発生室11A,11B等は、流路形成基板12をエッチングすることによって好適に形成することができる。
【0019】
流路形成基板12の一方面側にはノズル開口13A,13Bが穿設されたノズルプレート14が接着剤や熱溶着フィルムを介して接着され、各ノズル開口13A,13Bは、流路形成基板12に設けられたノズル連通孔23A,23Bを介して各圧力発生室11A,11Bと連通している。また、流路形成基板12の他方面側、すなわち圧力発生室11A,11Bの開口面側には振動板15が接合されて、各圧力発生室11A,11Bはこの振動板15によって封止されている。
【0020】
振動板15は、例えば、樹脂フィルム等の弾性部材からなる弾性膜24と、この弾性膜24を支持する、例えば、金属材料等からなる支持板25との複合板で形成されており、弾性膜24側が流路形成基板12に接合されている。ここで、弾性膜24は、厚さが数μm程度のPPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルムからなり、支持板25は、厚さが数十μm程度のステンレス鋼板(SUS)からなる。また、振動板15の各圧力発生室11A,11Bに対向する領域内には、圧電素子16A,16Bの先端部が当接する島部26A,26Bが設けられている。すなわち、振動板15の各圧力発生室11A,11Bの周縁部に対向する領域に他の領域よりも厚さの薄い薄肉部が形成されて、この薄肉部の内側にそれぞれ島部26A,26Bが設けられている。また、本形態では、振動板15のリザーバー21A,21Bに対向する領域に、薄肉部27と同様に、支持板25がエッチングにより除去されて実質的に弾性膜のみで構成されるコンプライアンス部28A,28Bが設けられている。なお、このコンプライアンス部28A,28Bは、リザーバー21A,21B内の圧力変化が生じた時に、このコンプライアンス部28A,28Bの弾性膜24が変形することによって圧力変化を吸収し、リザーバー21A,21B内の圧力を常に一定に保持する役割を果たす。
【0021】
振動板15を介して第1及び第2の圧力発生室11A,11Bの容積をそれぞれ変化させる第1及び第2の圧電素子16A,16Bは、共通の固定部材33の圧力発生室が形成されている面と直交する面となる両側面にそれぞれの基端部が接合されており、固定部材33及び脚部41とともに圧電素子ユニット17を形成している。ここで、圧電素子16Aは固定部材33の図1中左側の側面に、紙面に直角な方向に亘って接合されており、圧電素子16Bは固定部材33の図1中右側の側面に紙面に直角な方向に亘って接合されている。また、図示はしないが、固定基板33の圧力発生室11が形成されている側に向いた面に圧電素子16A、16Bを接合しても良い。この場合、固定基板33の厚みを厚くすること、また、圧電素子16Aの第1の配線部35Aと接合する面と圧電素子16Bの第2の配線部35Bと接合する面とが、固定基板33の上記側面よりも流路形成基板12の面方向側に突出している。この構成により、各配線部35A、35Bと圧電素子16A、16Bとが接合しやすいという効果を奏する。ここで、固定部材33は、例えばSUSで好適に形成し得るが、これに限るものではない。また、固定部材33は1枚の板状部材に限るものでもなく、複数枚の板状部材を積層したものでも良い。このように、積層板で固定部材33を形成した場合のその両側面とは各積層板の両側面ではなく、積層して一体となった固定部材33自体の両側面を意味する。
【0022】
ここで、圧電素子16Aは、圧電材料と電極形成材料とを交互にサンドイッチ状に挟んで積層した圧電素子形成部材を形成し、この圧電素子形成部材を各圧力発生室11Aに対応させて櫛歯状に切り分けることによって形成されている。圧電素子16Bも、同様に形成した圧電素子形成部材を各圧力発生室11Bに対応させて櫛歯状に切り分けることによって形成されている。すなわち、本形態では、各圧電素子16A,16Bにおける複数の圧電素子がそれぞれ一体的に形成されている。そして、圧電素子16A,16Bの基端部側が固定部材33に固着されている。そして、各圧電素子16A,16Bの基端部側とは反対側の先端部側が振動板15の島部26A,26Bに当接した状態で固定されている。
【0023】
さらに、圧電素子16A,16Bの基端部近傍には、固定部材33とは反対側の面に、各圧電素子16A,16Bを駆動するための信号を供給する配線を有する信号線フィルム35が接続されている。
【0024】
本形態においては共通の固定部材33の両側に2列の圧電素子16A,16Bを相対向させて配設することにより脚部41とともに一つの圧電素子ユニット17を形成したので、圧電素子16A,16Bに駆動信号を供給するための信号線フィルム35は、固定部材33の一方の側面(図1の左側面)で第1の圧電素子16Aに駆動信号を供給するための出力端子を有する第1の配線部35Aと、この第1の配線部35Aから固定部材33の他方の側面(図1の右側面)に回り込んで第2の圧電素子16Bに駆動信号を供給するための出力端子を有する第2の配線部35Bとを備えている。この部分に関する説明は後に詳述する。
【0025】
本形態では4個の圧電素子ユニット17を有する場合を示しているが、各圧電素子ユニット17は振動板15上に固定されているヘッドケース19が有する4個の収容部18にそれぞれ収容してある。すなわち、本形態のインクジェット式記録ヘッド10は、圧電素子16A,16Bを有する圧電素子ユニット17が合計4個設けられている。これに対応させてノズル開口13A,13Bの列が設けられているため、8列のノズル開口13A,13Bが設けられている。
【0026】
また、ヘッドケース19上には、信号線フィルム35の第1及び第2の配線部35A,35Bの各配線の入力端子がそれぞれ接続される複数の導電パッドが設けられた配線基板37が固定されており、ヘッドケース19の収容部18は、この配線基板37によって実質的に塞がれている。すなわち、配線基板37には、ヘッドケース19の収容部18に対向する領域にスリット状の開口部38が形成されており、信号線フィルム35は配線基板37の開口部38から収容部18の外側に引き出されている。
【0027】
なお、配線基板37の開口部38は、各収容部18に対して1つ、すなわち、本形態では、4つ設けられており、1つの収容部18に設けられた各圧電素子ユニット17に対して1つの信号線フィルム35が1つの開口部38から引き出されている。
【0028】
ここで、信号線フィルム35は、本形態では、圧電素子16A,16Bを駆動するための駆動IC(図示なし)が搭載されたフレキシブルプリント基板(FPC)、例えば、テープキャリアパッケージ(TCP)やチップオンフィルム(COF)等、可撓性を有する部材からなる。そして、信号線フィルム35の各配線は、その基端部側では、例えば、半田、異方性導電材等によって圧電素子16A,16Bを構成する電極形成材料に接続されている。一方、先端部側では、各配線は配線基板37の各導電パッドに接合されている。具体的には、配線基板37の開口部38から収容部18の外側に引き出された信号線フィルム35の先端部が配線基板37の表面に沿って折り曲げられた状態で、各配線が配線基板37の各導電パッドに接合されている。すなわち、信号線フィルム35は、配線基板37の開口部38で約90度に折り曲げられて配線基板37の表面に設けられた導電パッドに接合されている。
【0029】
図3は本形態における圧電素子ユニット17の一つを抽出して示す図で、(a)が一方の側から見た概略斜視図、(b)が他方の側から見た概略斜視図である。同図に明示するように、信号線フィルム35は圧電素子16A,16Bを駆動する駆動信号が配線基板37を介して供給される入力端子と、圧電素子16A,16Bに前記駆動信号を供給する出力端子とを有する可撓性を有する部材で形成してあり、一箇所の配線34を介して配線基板37に電気的に接続されて駆動信号が供給され、この駆動信号を圧電素子16Aとともに圧電素子16Bにも供給し得るように構成してある。このため、第1の配線部35Aと第2の配線部35Bとを備えたものとなっている。ここで第1の配線部35Aは、固定部材33の一方の側面側(図3(a)の右側面側)で配線基板37に接続される入力端子を有するとともに圧電素子16Aに駆動信号を供給する出力端子を有している。また第2の配線部35Bは、第1の配線部35Aから固定部材33の他方の側面(図3(a)の左側面)に回り込んで圧電素子16Bに駆動信号を供給する出力端子を有している。すなわち、第1の配線部35Aと第2の配線部35Bとが固定部材33の一方の端面で回り込む連結部35Cを介して一枚の回路基板として機能するように構成してある。また、圧電素子16A,16Bを選択的に駆動させる駆動IC42は第1の配線部35Aのみに搭載されているが、この1個で圧電素子16Aのみならず圧電素子16Bも駆動する。
【0030】
ここで、固定部材33の圧力発生室11が形成されている側に向いた面となる下端面には脚部41の上端面が固着してあり、当該圧電素子ユニット17を流路形成基板12に一体化する際に振動板15に当接して圧電素子16A,16Bの先端位置を所定の位置に規制する。すなわち、脚部41の下端面は圧電素子16A,16Bの先端面とほぼ同一面となるように形成してある。このことにより圧電素子ユニット17としての全体的な剛性の向上を図り得るばかりでなく、圧電素子16A,16Bの図中上下方向の移動に起因する反力を流路形成基板12で支持させることができる。さらに詳言すると、本形態における圧電素子ユニット17は固定部材33の両側面に圧電素子16A,16Bが接合されているので、脚部41を設けなくても自立させることはできるが、圧電素子16A,16Bが駆動されたときの反力を受ける部分がない。そこで、前述の如く脚部41を設けることで前記反力を支持するように構成したものである。
【0031】
なお、脚部41の下端面と直交する面となる左右両端面は圧電素子16A,16Bの左右両端面と面一になるように形成してある。
【0032】
ここで、固定部材33の第1の配線部35Aと第2の配線部35Bに対向する面とは直交する側面の圧電素子35Aと圧電素子35Bとが接合する領域が露出するように、信号線フィルム35に切欠部35Dが設けてある。かかる切欠部35Dを形成することにより当該圧電素子ユニット17のヘッドケース19に対する位置決め・固定に資することができる。この点をさらに図4を追加して説明しておく。
【0033】
図4は圧電素子ユニットとヘッドケースとの関係を示す概略断面図(信号線フィルム35は図示を省略している)である。同図に示すように、圧電素子16A,16Bの流路形成基板12、特に島部26A,26Bとの位置関係は圧電素子16A,16Bとともに脚部41の左右両端面をヘッドケース19の収容部18の内壁面19Aに当接させることで所定の精度を保持するとともに、上下方向の位置関係は切欠部35Dを介して露出させた固定部材33の下端面をヘッドケース19の段部19Bに当接させることで所定の精度を保持するようになっている。かかる位置決めが終了した後、固定部材33の端面とヘッドケース19との間に接着剤40を注入して固定する。
【0034】
このようなインクジェット式記録ヘッド10では、インク滴を吐出する際に、圧電素子16及び振動板15の変形によって各圧力発生室11の容積を変化させて所定のノズル開口13A,13Bからインク滴を吐出させる。具体的には、図示しないインクカートリッジからリザーバー21A,21Bにインクが供給されると、インク供給路22A,22Bを介して各圧力発生室11A,11Bにインクが分配される。この際信号線フィルム35の第1及び第2の配線部35A,35Bを介して圧電素子16A,16Bに電圧を印加することによりこれらを選択的に収縮させる。これにより、振動板15が圧電素子16A,16Bと共に変形されて圧力発生室11A,11Bの容積が広げられ、圧力発生室11A,11B内にインクが引き込まれる。そして、ノズル開口13A,13Bに至るまで内部にインクを満たした後、配線基板37を介して供給される駆動信号に従い、圧電素子16A,16Bの電極形成材料に印加していた電圧を解除する。これにより、圧電素子16A,16Bが伸張されて元の状態に戻ると共に振動板15も変位して元の状態に戻る。結果として圧力発生室11A,11Bの容積が収縮して圧力発生室11A,11B内の圧力が高まりノズル開口13A,13Bからインク滴が吐出される。
【0035】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。一枚の信号線フィルムで固定部材33の両側面に相対向させて配設した圧電素子16A,16Bに駆動信号を供給可能な構成となっていればそれ以上の特別な制限はない。したがって固定部材33に脚部41を固着することも任意である。ただ、脚部41を設けた場合、圧電素子ユニット17としての剛性を向上させることができるばかりでなく、圧電素子ユニット17を流路形成基板12側に固着した後、ヘッドケース19を取り付けるようにすることもできる。すなわち、先ず、圧電素子ユニット17を脚部41を介して各圧電素子16A,16Bが島部26A,26Bの位置に合致するように位置調整を行って流路形成基板12側に固着し、その後ヘッドケース19を圧電素子ユニットの上方から流路形成基板12に固着するようにすることができる。この場合には、圧電素子16A,16Bの島部26A,26Bに対する位置を視認しつつそのアライメントを高精度に行うことができる。
【0036】
また、部品点数が増えるという不利はあるが、駆動ICを圧電素子16A,16Bのそれぞれに対応させて2個設けても良い。さらに、例えば圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0037】
また、上述の如きインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図5は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0038】
図5に示すインクジェット式記録装置において、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0039】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0040】
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
10 インクジェット式記録ヘッド、 11A,11B 圧力発生室、 12 流路形成基板、 13A,13B ノズル開口、 14 ノズルプレート、 15 振動板、 16A,16B 圧電素子、 17 圧電素子ユニット、 18 収容部、 19 ヘッドケース、 26A,26B 島部、 33 固定部材、 34 配線、 35 信号線フィルム、 35A,35B 第1及び第2の配線部、 37 配線基板、 38 開口部、 40 接着剤、 41 脚部、 42 駆動IC


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通するよう列を形成して流路形成基板にそれぞれ並設された第1及び第2の圧力発生室と、前記流路形成基板に形成された振動板を介して前記第1及び第2の圧力発生室の容積をそれぞれ変化させる第1及び第2の圧電素子と、前記第1及び第2の圧電素子の前記第1及び第2の圧力発生室とは反対側に配設されて前記第1及び第2の圧電素子の一部が接合されている共通の固定部材と、前記第1及び第2の圧電素子を駆動する駆動信号が外部から供給される入力端子と前記第1及び第2の圧電素子に前記駆動信号を供給する出力端子とが形成された可撓性を有する信号線フィルムとを備え、
前記信号線フィルムは、前記固定部材の一方の側面で前記入力端子と前記第1の圧電素子に前記駆動信号を供給する出力端子を有する第1の配線部と、この第1の配線部から前記固定部材の他方の側面に回り込んで前記第2の圧電素子に前記駆動信号を供給する出力端子を有する第2の配線部とを備えたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記信号線フィルムは、前記第1の配線部から前記固定部材の他方の側面に回り込んで前記第2の配線部に至る連結部と、
当該連結部よりも前記流路形成基板側の領域に切欠部と、を設け、
当該切欠部を介して前記固定部材の前記圧電素子と接合する側の端面が露出するように構成したことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記第1及び第2の圧電素子の間で前記固定部材の端面に固着されて前記第1及び第2の圧電素子の前記振動板側の端面の位置を規制する脚部を設けたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記第1の配線部に配設する1個の駆動ICで前記第1及び第2の圧電素子をそれぞれ駆動するように構成したことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−179472(P2010−179472A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22299(P2009−22299)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】