説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】フィルターの面積及びフィルター室の容積を最大限に確保し、且つ小型化することができる液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】流路部材20は、液体が供給される複数の液体室53と、各液体室53に連通すると共にフィルター59が設けられたフィルター室56と、を備え、液体室53及びフィルター室56を通過した液体がヘッド本体90に供給され、且つ液体室53に開口して、各フィルター室56に連通する流入口54が一列に揃って設けられており、フィルター室56は、第1列に複数並設された第1フィルター室561と、第2列に複数並設された第2フィルター室562と、を具備し、第1フィルター室561には、流入口54が直接開口し、第1フィルター室561と第1フィルター室561に隣り合う第2フィルター室562との間には、第2フィルター室562と対応する液体室53の流入口54とを連通する連通流路55が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に、液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドは、ノズル開口と連通する圧力発生室に圧力変化を生じさせてノズル開口からインク滴を吐出する。
【0003】
ここで、インクジェット式記録ヘッドには、流路部材であるバルブユニットが設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなバルブユニットは、カバーの内部に流路部材本体が保持されて構成されている。そして、流路部材本体には、流路が設けられており、流路の途中には、液体室である圧力調整室と、圧力調整室の圧力変化によって開閉する弁体とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−260948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような流路部材では、圧力調整室は、弁体を動作させる圧力を調整するためのものであるため、容積を均一にして下流の流路への流入口の位置を同じ位置に設ける必要がある。また、ヘッド本体に接続される流路の開口位置は、ヘッド本体の並びによって規制されている。そして、圧力調整室とヘッド本体との間には、フィルターが配置されるフィルター室が設けられるが、フィルター室はフィルター面積をできるたけ広く取って流路抵抗を低減すると共にフィルターが配置されるフィルター室の容積を最大限に広げて気泡を多く捕捉したいという要望がある。しかしながら、フィルターの面積を広く取ると共にフィルター室の容積を大きくすると流路部材が大型化してしまい、インクジェット式記録ヘッドが大型化してしまうという問題がある。
【0007】
また、逆に流路部材を小型化すると、フィルターの面積が減少すると共にフィルター室の容積が減少し、フィルターを通過するインクの流路抵抗が高くなって供給不良が発生すると共に、フィルターによって捕捉できる気泡の量が減少してしまうため、頻繁なクリーニング動作が必要になって無駄なインク消費が増えてしまうなどの不具合が発生するという問題がある。
【0008】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑み、フィルターの面積及びフィルター室の容積を最大限に確保し、且つ小型化することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するヘッド本体と、該ヘッド本体が固定された流路部材と、を備え、該流路部材は、液体が供給される複数の液体室と、各液体室に連通すると共にフィルターが設けられたフィルター室と、を備え、前記液体室及び前記フィルター室を通過した液体が前記ヘッド本体に供給され、且つ前記液体室に開口して、各フィルター室に連通する流入口が一列に揃って設けられており、前記フィルター室は、第1列に複数並設された第1フィルター室と、第2列に複数並設された第2フィルター室と、を具備し、前記第1フィルター室には、前記流入口が直接開口し、前記第1フィルター室と該第1フィルター室に隣り合う第1フィルター室との間には、前記第2フィルター室と対応する前記液体室の前記流入口とを連通する連通流路が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、第1フィルター室と第2フィルター室とを2列で設けることで、流入口等の位置が規制された状態であっても、流路部材の小型化した状態で、フィルター室の容積を最大限に確保し、且つフィルターの面積を最大限に確保することができる。
【0011】
ここで、前記第1フィルター室と前記第2フィルター室とは、同じ容積で設けられていることが好ましい。これによれば、フィルター室内に同じ量の気泡を保持することができ、同じタイミングでクリーニング動作を行うことができる。また、液体の供給特性のばらつきを抑制することができる。
【0012】
また、前記液体室及び前記流入口が形成された第1流路部材と、前記第1フィルター室、前記第2フィルター室及び連通流路が形成された第2流路部材と、前記フィルター室の一方面側を画成すると共に前記フィルターが保持された第3流路部材と、が積層されていることが好ましい。これによれば、第1流路部材、第2流路部材及び第3流路部材を積層することで、各部材を成形などの安価な製造方法で容易に製造することができる。
【0013】
また、前記第2フィルター室は、前記第1フィルター室の数よりも1以上少ない数で設けられていることが好ましい。これによれば、流路部材の大型化を抑制して、フィルター室を最も多い数で最も大きな容積で配置することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、小型化した液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る流路部材本体の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る流路部材本体の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る背圧制御ユニットの要部分解斜視図である。
【図7】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、流路部材本体の第1流路部材側からの分解斜視図であり、図3は、流路部材本体の第3流路部材側からの分解斜視図であり、図4及び図5は、記録ヘッドの要部断面図であり、図6は、背圧制御ユニットの要部の分解斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド10は、流路部材である背圧制御ユニット20と、背圧制御ユニット20の底面に設けられた回路基板70と、回路基板70の背圧制御ユニット20とは反対側に設けられたヘッドケース80と、ヘッドケース80に固定されたヘッド本体90と、を具備する。
【0018】
背圧制御ユニット20は、外部のインクが貯留されたインクタンクなどの液体貯留手段からのインクをヘッド本体90に供給する流路部材である。
【0019】
ここで、背圧制御ユニット20について詳細に説明する。背圧制御ユニット20は、中空状の箱状部材からなるカバー30と、カバー30の内部に設けられた流路部材本体40と、を具備する。
【0020】
カバー30は、上下に分割されたベース部31とカバー部32とを具備する。ベース部31は、カバー部32側に開口する凹形状を有する第1保持部311と、第1保持部311の一端部側に設けられて厚さ方向に貫通する配線挿通孔312が設けられた支持部313と、を具備する。
【0021】
また、ベース部31の第1保持部311の底面には、厚さ方向に貫通してヘッド本体にインクを供給する複数の供給口314が設けられている。本実施形態では、ベース部31の底面に7個の供給口314を設けた。
【0022】
カバー部32は、図1及び図6に示すように、ベース部31の第1保持部311を覆う大きさを有し、ベース部31の第1保持部311に相対向してベース部31側に開口する凹形状を有する第2保持部321を有する。
【0023】
そして、図4及び図5に示すように、ベース部31とカバー部32とが、第1保持部311と第2保持部321とを相対向させて固定されることで、カバー部32の内部には第1保持部311と第2保持部321とによって画成された空間である保持部33が形成される。
【0024】
ここで、ベース部31には、図4〜図6に示すように、第1保持部311の側面を画成する第1壁部315が設けられている。また、カバー部32には、第2保持部321の側面を画成する第2壁部322が設けられている。そして、これらベース部31とカバー部32とは、第1壁部315の先端面と第2壁部322の先端面とを互いに第1シール部34を介して当接させて固定されている。すなわち、第1壁部315と第2壁部322との間には、ゴムやエラストマー等からなる第1シール部34が挟持される。もちろん、この第1シール部34は熱溶着や接着剤を用いた接着であってもよい。なお、ベース部31とカバー部32とは、図1に示す、ねじ等の締結部材37をベース部31側から挿入し、締結部材37をカバー部32に螺合させることで固定される。
【0025】
また、カバー部32には、第2保持部321の底面に連通して厚さ方向に貫通する開口部323が設けられている。開口部323は、カバー部32の外周面に開口すると共に、第2保持部321の底面に設けられて、第2保持部321の側面を画成する第2壁部322よりも低く突出した突起部324に開口して設けられている。
【0026】
このようなカバー30の保持部33に保持される流路部材本体40は、図2〜図5に示すように、本実施形態では、カバー30側に設けられた第1流路部材41と、第1流路部材41のベース部31側に設けられた第2流路部材42と、第2流路部材42のベース部31側に設けられた第3流路部材43と、が積層されて構成されている。また、流路部材本体40には、第1流路部材41のカバー部32側に保護板44が設けられている。
【0027】
これら第1流路部材41、第2流路部材42、第3流路部材43及び保護板44のそれぞれは、樹脂材料や金属材料等からなる板状部材で形成されている。そして、これらの第1流路部材41、第2流路部材42、第3流路部材43及び保護板44は、積層された状態で、カバー30の保持部33内に保持される。
【0028】
このような第1流路部材41、第2流路部材42及び第3流路部材43で構成される流路部材本体40には、外部のインクが貯留された液体貯留手段からのインクをヘッド本体90に供給する液体流路が設けられている。
【0029】
具体的には、液体流路は、図4及び図5に示すように、液体貯留手段に一端側が接続されたチューブ等の管状部材である供給管(図示なし)の他端部が接続される接続口51を有する導入路52と、導入路52からのインクが供給される液体室である圧力調整室53と、圧力調整室53に連通する流入口54と、流入口54に直接又は連通流路55を介して連通するフィルター室56と、フィルター室56のインクをヘッド本体90に供給する供給路57と、を具備する。
【0030】
ここで、接続口51は、第2流路部材42の上面にカバー部32の開口部323内に開口して設けられたものである。このような接続口51は、複数のインクに対応して複数個設けられている。本実施形態では、接続口51を7個設けるようにした(図1及び図2参照)。
【0031】
このような接続口51を有する導入路52は、第2流路部材42や第1流路部材41を貫通する流路や、第2流路部材42と第1流路部材41との間の流路や、第1流路部材41とベース部31との間の流路などで構成されている。
【0032】
具体的には、本実施形態の導入路52は、図4に示す第1導入路521と、図5に示す第2導入路522との2つの経路を具備する。
【0033】
第1導入路521は、図4に示すように、第2流路部材42と第3流路部材43とを厚さ方向に貫通した第1導入流路521aと、第3流路部材43の底面に凹部状に形成されて第1導入流路521aに一端部が連通する第2導入流路521bと、第2導入流路521bの他端部側に連通して第3流路部材43を貫通して設けられた第3導入流路521cと、第3流路部材43と第2流路部材42との間に設けられて第3導入流路521cに連通する導入用フィルター室521dと、導入用フィルター室521dに連通して第2流路部材42を貫通して設けられた第4導入流路521eと、を具備する。
【0034】
第2導入路522は、図5に示すように、接続口51に連通して第2流路部材42を厚さ方向に貫通した第5導入流路522aと、第2流路部材42と第3流路部材43との間に設けられた凹形状を有する第6導入流路522bと、第6導入流路522bに連通する導入用フィルター室522cと、導入用フィルター室522cに連通して第2流路部材42を厚さ方向に貫通して設けられた第7導入流路522dと、を具備する。
【0035】
すなわち、第1導入路521は、第3流路部材43とベース部31との間の第2導入流路521bを通過して圧力調整室53に達する。これに対して、第2導入路522は第3流路部材43とベース部31との間を通過することなく、第2流路部材42と第3流路部材43との間の第6導入流路522bを通過して、圧力調整室53に達する。
【0036】
また、第1導入路521及び第2導入路522のそれぞれの途中に設けられた導入用フィルター室521d、522cには、インク中に含まれるゴミや気泡等の異物を除去する導入用フィルター58が設けられている。
【0037】
ここで、第1導入路521の途中の導入用フィルター室521dには、第3導入流路521cと第4導入流路521eとが、導入用フィルター室521dの導入用フィルター58を挟んだ両側にそれぞれ連通している。これにより、第3導入流路521cから供給されたインクは導入用フィルター58を通過して第4導入流路521eに供給される。
【0038】
同様に、第2導入路522の途中に設けられた導入用フィルター室522cには、第6導入流路522bと第7導入流路522dとが導入用フィルター58を挟んだ両側にそれぞれ連通している。これにより、第6導入流路522bから供給されたインクは導入用フィルター58を通過して第7導入流路522dに供給される。
【0039】
ちなみに、本実施形態では、図2及び図3に示すように、接続口51を7個設け、この7個の接続口51に対応して7個の導入路52を設けた。そして7個の導入路52の内、第1導入路521を4個設け、第2導入路522を3個設けるようにした。
【0040】
このように、第1導入流路521a〜第4導入流路521eで構成される第1導入路521と、第5導入流路522a〜第7導入流路522dで構成される第2導入路522との2種類の導入路52を設けることで、図4及び図5において図中下向きにインクが流れる導入路52から図中上向きにインクが流れる導入路52への接続に使用する第2導入流路521bと第6導入流路522bとを第3流路部材43とベース部31との間と、第2流路部材42と第3流路部材43との間との異なる位置に配置することができる。これにより、第2導入流路521bと第6導入流路522bを設ける面積を狭くすることができるため、流路部材本体40を小型化して、背圧制御ユニット20を小型化することができる。なお、これらの各導入路52は、第1流路部材41に設けられた各圧力調整室53に連通する。
【0041】
圧力調整室53は、板状部材である第1流路部材41の第2流路部材42とは反対側に開口する凹形状を有する。また、圧力調整室53は、並設方向と直交する方向の一端部側の底面で導入路52に連通し、他端部側の底面に設けられた流入口54を介してフィルター室56と連通している。
【0042】
このような圧力調整室53は、第1流路部材41の開口面に設けられたフィルム部材45によって封止されている。ここで、フィルム部材45は、可撓性を有する薄膜状のフィルムであり、第1流路部材41の表面に熱溶着等によって固定されている。また、フィルム部材45は、圧力調整室53内にドーム状に撓んだ状態となるように加圧成形されている。
【0043】
さらに、第1流路部材41の圧力調整室53内には、フィルム部材45側に配置された弾性板46が設けられている。弾性板46は、一端部側が第1流路部材41の表面側に固定された状態で圧力調整室53内に突出して設けられており、その先端は圧力調整室53内で自由端となっている。本実施形態では、図2及び図3に示すように、弾性板46を固定端側で複数の弾性板46が共通する共通部46aと、圧力調整室53内に突出するスリット46bによって分割された弾性部46cと、で構成された、いわゆる櫛歯形状を有するものとした。
【0044】
このような弾性板46は、共通部46aが圧力調整室53の開口面側に保持されることで固定されている。なお、弾性板46としては、弾性を有し、且つ耐インク性を有する板状部材であればよく、本実施形態では、ステンレス板を用いた。
【0045】
フィルター室56は、図4及び図5に示すように、第2流路部材42を厚さ方向に貫通して設けられている。ここで、フィルター室56は、第1列に複数並設された第1フィルター室561と、第2列に複数並設された第2フィルター室562と、を具備する。
【0046】
つまり、図2及び図3に示すように、第1フィルター室561は、圧力調整室53の並設方向である第1方向Xに並設されて第1列を構成している。
【0047】
同様に、第2フィルター室562は、圧力調整室53の並設方向である第1方向Xに並設されて第2列を構成している。そして、これら第1フィルター室561の第1列と、第2フィルター室562の第2列とは、第1方向Xと直交する方向である第2方向Yに列設されている。
【0048】
本実施形態では、第1フィルター室561を流入口54に相対向する領域に4個設け、第2フィルター室562を流入口54よりも第2方向Yの導入路52側に3個設けるようにした。
【0049】
また、第1フィルター室561及び第2フィルター室562は、第1流路部材41側の開口が長方形状となるように形成されている。そして、第1フィルター室561は、開口の短辺の面方向が第1方向Xとなるように並設されている。これに対して、第2フィルター室562は、第1フィルター室561に対して約90度回転した配置、すなわち、開口の長辺の面方向が第1方向Xとなるように並設されている。
【0050】
さらに、図2及び図5に示すように、第2流路部材42の第1方向Xで隣り合う第1フィルター室561の間には、第1流路部材41側に開口する連通流路55が設けられている。連通流路55は、第2流路部材42の第1流路部材41側の面に開口する凹形状で設けられており、一端部が流入口54に相対向する領域に設けられて流入口54に連通し、他端部が第2フィルター室562に連通する。
【0051】
ここで、流入口54は、圧力調整室53の並設方向(第1方向X)に一列に揃って設けられている。これは、流入口54が異なる位置に設けられると、後述する弁体100が動作する制御圧力にばらつきが生じ、インク供給特性がばらついてしまい、ヘッド本体90から吐出されるインク滴の吐出特性にばらつきが生じてしまうからである。
【0052】
このような一列に揃った流入口54は、第1フィルター室561と第2フィルター室562とに交互に連通する。具体的には、流入口54が一つおきに第1フィルター室561に直接開口する。また、第1フィルター室561に連通しない流入口54は、第1方向Xで隣り合う第1フィルター室561の間の隔壁に相対向して、この隔壁に設けられた連通流路55を介して第2フィルター室562と連通する。本実施形態では、上述のように第1フィルター室561を4個設け、第2フィルター室562を3個設け、4個の第1フィルター室561の間に3つの連通流路55を設けるようにした。このように、連通流路55は第1フィルター室561の間に設けられるため、連通流路55の数は、第1フィルター室561の数より1以上少ない数が好ましい。このため、連通流路55に対応する第2フィルター室562の数も、第1フィルター室561の数よりも1以上少ない数で設けるのが好ましい。もちろん、第1フィルター室561を4個設け、第2フィルター室562を1個又は2個設けるようにしてもよい。ただし、限られたスペースに最も多くのフィルター室56を配置するには、第2フィルター室562は、第1フィルター室561の数よりも1つだけ少ない数で設けるのが好適である。また、本実施形態では、第1フィルター室561を第1流路部材41側に開口する短辺の面方向が第1方向Xとなるように配置し、第2フィルター室562を開口の長辺の面方向が第1方向Xとなるように配置している。これも、第2フィルター室562が、第1フィルター室561よりも少ない数で設けられているから可能である。そして、このように第2フィルター室562を開口の長辺の面方向が第1方向Xとなるように配置することで、流路部材本体40が第2方向Yに大型化することなく、第2方向Yに小さくすることが可能である。つまり、第2フィルター室562を第1フィルター室561と同じ回転位置で配置した場合、第1フィルター室561及び第2フィルター室562の両方が、開口の長辺の面方向が第2方向Yとなり、第2方向Yに大型化してしまうからである。ただし、第2フィルター室562を第1フィルター室561と同じ数だけ設ける場合には、第1フィルター室561と第2フィルター室562とを同じ回転方向の向きで配置すれば、第1方向Xに大型化するのを抑制できる。
【0053】
このように、フィルター室56として、流入口54に直接連通する第1フィルター室561と、流入口54に連通流路55を介して連通する第2フィルター室562とを設けることで、流路部材本体40を大型化することなく、フィルター室56の開口面積を最大限広げることができ、最大限の容積を確保することができる。
【0054】
このような第1フィルター室561及び第2フィルター室562で構成されるフィルター室56は、第2流路部材42に厚さ方向に貫通して設けられており、その開口面は、第1流路部材41及び第3流路部材43によって覆われている。そして、各フィルター室56からのインクは、供給路57を介してヘッド本体90(ヘッドケース80)に供給される。
【0055】
供給路57は、フィルター室56に連通して第3流路部材43を厚さ方向に貫通して設けられた第1供給路571と、第3流路部材43とベース部31との間に設けられた第2供給路572と、を有する。また、第2流路部材42のフィルター室56に連通する第1供給路571の開口は、拡幅されたフィルター保持部573となっており、このフィルター保持部573には、インクに含まれるゴミや気泡などの異物を除去するための供給用フィルター59が設けられている。そして、圧力調整室53からのインクは、流入口54を介してフィルター室56に供給され、フィルター室56のインクは、フィルター保持部573に設けられた供給用フィルター59を通過して第1供給路571及び第2供給路572を介して供給口314に供給され、供給口314からヘッド本体90に供給される。
【0056】
なお、第2供給路572は、第3流路部材43のベース部31側の面に設けられた凹部と、ベース部31の第3流路部材43側の面に設けられた凹部とによって画成されている。そして、供給路57が連通してヘッド本体90にインクを供給する供給口314は、第1方向Xに沿って一列に揃って設けられている。なお、本実施形態では、図1に示すように、供給口314は、第1方向Xに沿って一列に揃って設けられた列が第2方向Yに2列設けられているが、第2方向Yに並んで設けられた2つの供給口314が1セットとなって、第1方向Xに沿って一列に設けられていることになる。そして、この第2方向Yに並んだ1セットの2つの供給口314は、1つのヘッド本体90に接続される。ここで、例えば、背圧制御ユニット20にヘッドケース80を介して複数のヘッド本体90を保持させる場合、1セットとなる2つの供給口314の間隔や位置がセット毎にばらばらに設けられていると、ヘッド本体90側の供給口314に接続される流路の開口位置をセット毎にずらさなくてはならず、ヘッド本体90内部の流路構造が複雑化することから、製造コストの増加を招いてしまう。本実施形態では、第2方向Yに同じ間隔、同じ位置で設けた2つの供給口314を第1方向に一列に揃えて設けることで、各セットに対して同じ形状の(流路の開口位置が同じ)ヘッド本体90を用いることができるため、ヘッド本体90内部の流路構造を簡素化できる。したがって、ヘッド本体90の製造コストを低減することができると共に、組み立て工程を簡略化することができる。
【0057】
そして、上述したように、圧力調整室53は、同じ容積で設ける必要があり、また、流入口54も各圧力調整室53の同じ位置に設ける必要があるなどの規制がある。また、ヘッド本体90に接続される供給口314についても、ヘッド本体90に接続される位置に規制がある。しかしながら、本実施形態では、フィルター室56を、流入口54に直接連通する第1フィルター室561と、流入口54に連通流路55を介して連通する第2フィルター室562とで構成することで、位置が規制された流入口54と供給口314との間にフィルター室56を、背圧制御ユニット20を大型化することなく、供給用フィルター59が最大面積となる大きさで設けることができると共に、最大限の容積を確保した状態で配置することができる。
【0058】
なお、第1流路部材41の圧力調整室53を封止する保護板44は、第1流路部材41側の面に各圧力調整室53に相対向してフィルム部材45の変形を許容する空間である凹形状を有するフィルム保持部60を具備する。
【0059】
また、背圧制御ユニット20には、フィルム保持部60の雰囲気を大気開放する、外部に連通した大気開放路61が設けられている。大気開放路61は、保護板44とカバー部32との間に設けられてフィルム保持部60に連通する狭わい路611と、狭わい路611に連通する蛇路612と、蛇路612に連通して、カバー部32を貫通して外部に連通する外部連通孔613と、を具備する。
【0060】
狭わい路611は、フィルム保持部60に連通する位置から蛇路612に連通するまで、第2方向Yを往復するような形で設けられている。
【0061】
蛇路612は、狭わい路611に連通する位置から外部連通孔613に連通するまで、第2方向Yを往復しながら第1方向Xに向かって蛇行した凹状の溝で形成されている。
【0062】
すなわち、フィルム部材45の圧力調整室53とは反対側の空間を画成するフィルム保持部60は、狭わい路611、蛇路612及び外部連通孔613からなる大気開放路61によって外部に連通している。このように、フィルム部材45の圧力調整室53とは反対側のフィルム保持部60を大気開放路61によって大気開放することで、圧力調整室53内部の圧力と大気圧との差圧でフィルム部材45を変形させることができる。また、大気開放路61を、狭わい路611、蛇路612及び外部連通孔613で構成することで、大気開放路61を狭い断面積で経路を長く形成することができる。これにより、大気開放路61に拡散抵抗を付与して、フィルム部材45からの水分蒸発を抑制することができる。ちなみに、圧力調整室53内に充填されたインクの水分はフィルム部材45を透過するため、拡散抵抗を付与していない大気開放路を設けると、フィルム部材45を透過したインクの水分は蒸発し易くなり、インクの粘度が高くなるなどの不具合が生じてしまう。本実施形態では、フィルム部材45を透過するインクの水分の蒸発を抑制することができるため、インクの粘度が高くなるなどの不具合が発生するのを抑制することができる。
【0063】
また、図4〜図6に示すように、カバー部32には、ゴム、エラストマー等からなる第1シール部34、第2シール部35、第3シール部36が互いに分離した状態で設けられている。
【0064】
第1シール部34は、上述したように、カバー部32の第2壁部322の先端面に亘って設けられて、ベース部31とカバー部32との外周の継ぎ目を第1シール部34によって封止して、カバー30の保持部33内のインクが外部に流出するのを抑制するためのものである。
【0065】
第2シール部35は、カバー部32の蛇路612に相対向する位置に設けられたものであり、蛇路612のカバー部32側の開口を封止する。なお、図6に示すように、第2シール部35には、大気開放路61の外部連通孔613に連通する連通孔35aが設けられており、第2シール部35は、実際には、蛇路612の連通孔35a以外の領域を封止する。
【0066】
第3シール部36は、上述した開口部323が設けられた突起部324の保護板44側の面に、開口部323の周囲に亘って設けられたものである。この第3シール部36は、流路部材本体40の接続口51の周囲でカバー部32との隙間を封止するためのものである。この第3シール部36によって、開口部323に固定されることで、接続口51に接続された供給管の着脱時などに漏れたインクが保持部33内に流入するのを抑制することができると共に、保持部33内のインクが接続口51の周囲のカバー部32との隙間から漏れ出るのを抑制することができる。
【0067】
このような第1シール部34、第2シール部35、第3シール部36は、カバー部32にそれぞれ高さの異なる位置に設けられている。詳しくは、第1シール部34は、上述のようにカバー部32の第2壁部322の先端面に設けられている。また、第2シール部35は、カバー部32の第2保持部321の底面(保護板44に相対向する面)に設けられている。さらに、第3シール部36は、カバー部32の第2壁部322よりも低く突出した突起部324の先端面に設けられている。したがって、第1シール部34、第2シール部35及び第3シール部36は、カバー部32の高さが異なる位置に設けられている。ここで、カバー部32の高さとは、ベース部31とカバー部32との積層方向での厚さ方向のことを言う。したがって、第1シール部34、第2シール部35及び第3シール部36は、カバー部32の積層方向で異なる位置に設けられていることになる。
【0068】
なお、カバー部32の第2壁部322の高さを、第2シール部35が設けられたカバー部32の底面や、第3シール部36の設けられた突起部324と同じ高さにするのは困難である。これは、例えば、第2壁部322の高さを、第2シール部35が設けられたカバー部32の底面と同じ高さにしてしまうと、第2保持部321を十分に確保することができないからである。また、保持部33を確保するために、ベース部31の第1保持部311を画成する第1壁部315を高くしたとしても、ベース部31の底面(ヘッド本体側)から挿通したねじ部材(図示なし)をカバー部32に螺合させる領域が不十分となり、ベース部31とカバー部32とを確実に固定することが困難になってしまうからである。また、例えば、第2壁部322の高さを、第3シール部36が設けられた突起部324と同じ高さにしてしまうと、第3シール部36と第2シール部35とが近くなり、接続口51から漏れ出たインクが第3シール部36及び第2シール部35を介して外部に漏出し易くなってしまうという問題がある。また、突起部324の高さを第2壁部322と同じ高さとすると、流路部材本体40側で接続口51の位置を変更しなくてはならず、流路部材本体40の接続口51を設けるための面積が必要になって大型化してしまうなどの問題がある。
【0069】
本実施形態では、第1シール部34、第2シール部35、第3シール部36をカバー部32の高さが異なる位置に設けることで、第2保持部321を十分に確保した状態で、ベース部31とカバー部32とを強固に固定することができると共に、第1シール部34と第3シール部36との距離を離して、保持部33内のインクが外部に漏出し難くすることができる。また、第1シール部34、第2シール部35及び第3シール部36をカバー部32の高さが異なる位置に設けることができるため、背圧制御ユニット20のカバー30の境目、接続口51及び蛇路612の位置を異なる高さに設けることができ、設計自由度が高く小型化が可能となる。
【0070】
また、第1シール部34、第2シール部35及び第3シール部36は、カバー部32と共に2色成形によって一体的に形成されている。本実施形態では、カバー部32を樹脂材料を成形することで形成した後、カバー部32の所定の位置にゴム材料を成形することで、両者を一体的に形成した。
【0071】
このように、カバー部32と、第1シール部34、第2シール部35及び第3シール部36とを2色成形によって一体的に形成することで、第1シール部34、第2シール部35及び第3シール部36の位置決めが不要となり、背圧制御ユニット20の組み立て作業を簡略化して、コストを低減することができる。特に本実施形態のように、第1シール部34、第2シール部35及び第3シール部36をカバー部32の高さが異なる位置に設けた際に、位置決め作業が不要となって、組み立て作業を簡略化することができると共に、第1シール部34、第2シール部35及び第3シール部36の位置ずれによるインクの漏れの発生を抑制することができる。
【0072】
また、カバー部32と第1シール部34、第2シール部35及び第3シール部36とを2色成形によって一体的に形成することで、別体となる板状のシール部材を用いた場合に比べて、部品点数を低減することができ、製造コスト及び組み立てコストを低減することができる。
【0073】
また、図4及び図5に示すように、導入路52と圧力調整室53との間には、両者の連通状態を開閉する弁体100が設けられている。
【0074】
具体的には、第3流路部材43の底面には、導入路52(第4導入流路521e及び第7導入流路522d)内に上下に伸びる円筒状のケース部101が形成されている。ケース部101の下面は、第4導入流路521e及び第7導入流路522dの底面に当接している。また、ケース部101の内部は、圧力調整室53に連通しており、ケース部101の側面には、ケース部101の内外を連通するスリット102が設けられている。これにより、圧力調整室53と導入路52とは、ケース部101の内部を介して連通している。
【0075】
また、ケース部101内には、弁体100が設けられている。この弁体100は、ケース部101の内部と圧力調整室53とを連通する挿通孔103に挿通された円柱状の軸部104と、ケース部101内において軸部104の下端部に設けられた軸部104の外径よりも大きい外径を有する円盤状の鍔部105と、を有する。軸部104の下端は鍔部105の上面における中心に連結されていると共に、軸部104の上端は弾性板46の下面(圧力調整室53側の面)に当接している。
【0076】
鍔部105の外径は、挿通孔103の内径よりも大きく、且つケース部101の内径よりも僅かに小さくなっている。また、鍔部105の下面(第2流路部材42側の面)と第4導入流路521e及び第7導入流路522dの底面との間には付勢部材の一例であるコイルばね106が介装されている。
【0077】
このコイルばね106は、弁体100を常に閉弁状態となる方向である上方(フィルム部材45側)に向かって付勢するようになっている。そして、この弁体100の閉弁状態では、鍔部105がケース部101内の上壁面に密着して挿通孔103が閉鎖された状態、すなわちケース部101内と導入路52とが連通していない非連通状態になっている。
【0078】
そして、圧力調整室53内がヘッド本体90へのインクの供給によって負圧になると、フィルム保持部60内部の大気圧との差圧によってフィルム部材45が圧力調整室53側(第2流路部材42側)に撓むように変位する。このフィルム部材45の変位に伴って、弾性板46の弾性部46cが第2流路部材42側に向かって屈曲するように弾性変形する。
【0079】
この弾性板46の弾性変形により、軸部104がコイルばね106の付勢力に抗して弁体100を第2流路部材42側に押し下げることで、鍔部105が挿通孔103の開口する壁面から離反し、圧力調整室53と導入路52とが連通する。
【0080】
このように、圧力調整室53と導入路52とが連通すると、導入路52のインクが圧力調整室53内に流れ込む。そして、圧力調整室53及び供給路57内にインクが十分に充填されると、圧力調整室53の負圧が解消されて、弾性板46が元の状態に戻ると共に、各コイルばね106の付勢力によって各弁体100がそれぞれ閉弁されることにより各圧力調整室53内は常に一定の圧力に保たれる。
【0081】
このような背圧制御ユニット20のベース部31の底面には、ベース部31との間で回路基板70を保持するヘッドケース80と、ヘッドケース80の底面に設けられたヘッド本体90と、を具備する。
【0082】
ヘッドケース80は、ベース部31と略同じ面積を有し、ベース部31の底面に固定されて、ベース部31との間で回路基板70を保持する。
【0083】
回路基板70は、配線挿通孔312に相対向する領域に外部配線が接続されるコネクターが上向きとなるように配置される。このような回路基板70は、複数のヘッド本体90に共通して接続されるものを用いることができる。
【0084】
ヘッド本体90は、特に図示しないがノズル開口が並設された列が2列以上設けられており、各背圧制御ユニット20から供給された各種インクを各ノズル列から吐出可能に設けられている。本実施形態では、特に図示していないが、4つのヘッド本体90を設け、3つのヘッド本体90からは2色のインクが吐出されるようにすると共に1つのヘッド本体90からは1色のインクが2列のノズル列から吐出されるようにした。これにより、7色のインクを吐出可能とした。なお、ヘッド本体90の数や配置は特にこれに限定されず、例えば、供給路57と同等の数のヘッド本体90を設けるようにしてもよい。
【0085】
また、ヘッド本体90内には、特に図示していないが、ノズル開口に連通する圧力発生室と圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段とが設けられている。かかる圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を有する圧電アクチュエーターの変形によって圧力発生室の容積を変化させて圧力変化を生じさせて、ノズル開口からインク滴を吐出させるものや、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口からインク滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口からインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態では、圧力調整室53からヘッド本体90にインクを供給する流路の途中にフィルター室56を設け、フィルター室56として、圧力調整室53に流入口54を介して直接連通する第1フィルター室561と、圧力調整室53に流入口54と連通流路55とを介して連通する第2フィルター室562とを設けるようにしたため、第1フィルター室561と第2フィルター室562とを第2方向Yに並設することができる。これにより、流路部材本体40が大型化するのを抑制して、背圧制御ユニット20を小型化した状態で、フィルター室56を最大限の容積で設けることができると共に、供給用フィルター59を最大限の面積で設けることができる。このように、フィルター室56を最大限の容積で設けることで、フィルター室56に保持する気泡の量を多くすることができ、クリーニング動作の回数を低減して、無駄なインク消費を抑制することができる。また、供給用フィルター59を最大限の面積で設けることで、供給用フィルター59の流路抵抗を小さくして、インクの供給不良が発生するのを抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、流路部材本体40として、第1流路部材41、第2流路部材42、第3流路部材43及び保護板44を設けるようにしたが、例えば、第1フィルター室561に直接流入口54を開口するように設けずに、流入口54と第1フィルター室561とを連通流路55等を介して連通させようとすると、第1流路部材41と第2流路部材42との間にもう一つ流路部材を追加しなくてはならなくなるなど、部品点数が増えてコストが増大してしまう。特に、各流路部材を安価な成形によって形成する場合、製造上の理由から流路部材を追加する必要がある。本実施形態では、第1フィルター室561を直接流入口54と連通させるようにしたため、流路部材本体40を第1流路部材41、第2流路部材42、第3流路部材43及び保護板44で構成することができ、部品点数を減少させてコストを低減することができる。
【0088】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、第1フィルター室561を4個設け、第2フィルター室562を3個設けるようにしたが、第1フィルター室561及び第2フィルター室562の数はこれに限定されるものではない。
【0089】
また、これら上述したインクジェット式記録ヘッド10は、インクジェット式記録装置に搭載される。図7は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略斜視図である。図7に示すように、本実施形態のインクジェット式記録装置1では、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ2に搭載されている。そして、インクジェット式記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ2は、装置本体7に取り付けられたキャリッジ軸2aに軸方向移動自在に設けられている。
【0090】
また、装置本体7には、インクが貯留されたタンクからなる貯留手段3が設けられており、貯留手段3からのインクは、キャリッジ2に搭載されたインクジェット式記録ヘッド10(背圧制御ユニット20)に供給管4を介して供給される。
【0091】
そして、駆動モーター8の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト8aを介してキャリッジ2に伝達されることで、インクジェット式記録ヘッド10を搭載したキャリッジ2はキャリッジ軸2aに沿って移動される。一方、装置本体7にはキャリッジ軸2aに沿ってプラテン9が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン9に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0092】
このようなインクジェット式記録装置1では、キャリッジ2がキャリッジ軸2aに沿って移動されると共にインクジェット式記録ヘッド10のヘッド本体90によってインクが吐出されて記録シートSに印刷される。
【0093】
また、上述したインクジェット式記録装置1では、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ2に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が装置本体7に固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0094】
なお、上記した例では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド10を、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置1を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 20 背圧制御ユニット、 30 カバー、 31 ベース部、 32 カバー部、 40 流路部材本体、 41 第1流路部材、 42 第2流路部材、 43 第3流路部材、 44 保護板、 45 フィルム部材、 46 弾性板、 51 接続口、 52 導入路、 53 圧力調整室(液体室)、 54 流入口、 55 連通流路、 56 フィルター室、 57 供給路、 58 導入用フィルター、 59 供給用フィルター、 61 大気開放路、 70 回路基板、 80 ヘッドケース、 90 ヘッド本体、 100 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するヘッド本体と、
該ヘッド本体が固定された流路部材と、を備え、
該流路部材は、液体が供給される複数の液体室と、
各液体室に連通すると共にフィルターが設けられたフィルター室と、を備え、
前記液体室及び前記フィルター室を通過した液体が前記ヘッド本体に供給され、且つ前記液体室に開口して、各フィルター室に連通する流入口が一列に揃って設けられており、
前記フィルター室は、第1列に複数並設された第1フィルター室と、
第2列に複数並設された第2フィルター室と、を具備し、
前記第1フィルター室には、前記流入口が直接開口し、
前記第1フィルター室と該第1フィルター室に隣り合う第1フィルター室との間には、前記第2フィルター室と対応する前記液体室の前記流入口とを連通する連通流路が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第1フィルター室と前記第2フィルター室とは、同じ容積で設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記液体室及び前記流入口が形成された第1流路部材と、
前記第1フィルター室、前記第2フィルター室及び連通流路が形成された第2流路部材と、
前記フィルター室の一方面側を画成すると共に前記フィルターが保持された第3流路部材と、が積層されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第2フィルター室は、前記第1フィルター室の数よりも1以上少ない数で設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−200961(P2012−200961A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66809(P2011−66809)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】