説明

液体噴射装置、及び、液体噴射方法

【課題】印刷速度の高速化を図る。
【解決手段】液体を噴射するノズルを複数備えたヘッドであって、回転軸を中心に回転し、回転軸の径方向の外側に液体を噴射するヘッドと、回転軸を中心とする円周の少なくとも一部に沿って、且つ、ヘッドの回転方向に媒体を搬送する搬送機構と、を備え、ヘッドの移動速度と媒体の搬送速度に速度差を有する状態で、媒体と対向するノズルから媒体に液体を噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置、及び、液体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の1つであるインクジェットプリンターとして、紙幅方向に並ぶ複数のノズルが配設されたヘッドを備えて、ヘッドの複数のノズルから、インク滴を噴射しつつ媒体(例えば紙)を搬送することで画像を形成するプリンター(いわゆるラインプリンター)がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−14445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなプリンターでは、シリアル方式のものよりも高速に印刷することができるものの、ヘッドからのインクの噴射周期に限界があるため、媒体に所定の解像度で(所定のドット間隔で)画像を形成するには搬送速度に限界があった。つまり、印刷速度に限界があった。
【0005】
そこで本発明は、印刷速度の更なる高速化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、液体を噴射するノズルを複数備えたヘッドであって、回転軸を中心に回転し、前記回転軸の径方向の外側に液体を噴射するヘッドと、前記回転軸を中心とする円周の少なくとも一部に沿って、且つ、前記ヘッドの回転方向に媒体を搬送する搬送機構と、を備え、前記ヘッドの移動速度と前記媒体の搬送速度に速度差を有する状態で、前記媒体と対向するノズルから前記媒体に液体を噴射することを特徴とする液体噴射装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】印刷システムの外観構成を示した説明図である。
【図2】プリンターの全体構成のブロック図である。
【図3】図3Aは、比較例のプリンターの印字領域における横断面図であり、図3Bは、比較例のプリンターが紙Sを搬送する様子を示す図である。
【図4】第1ヘッドと第2ヘッドのノズル配列を示す図である。
【図5】図5Aは、紙上に第1ヘッドからのインク滴が着弾した様子を示す図である。また、図5Bは、紙上に第1ヘッド及び第2ヘッドからのインク滴が着弾した様子を示す図である。
【図6】比較例のドット形成の様子の説明図である。
【図7】本実施形態の基本概念の説明図である。
【図8】第1実施形態のプリンターのヘッド周辺の構成の説明図である。
【図9】第1実施形態の印刷動作の説明図である。
【図10】第2実施形態のヘッド周辺の構成の説明図である。
【図11】第2実施形態の印刷動作の説明図である。
【図12】第2実施形態において印字領域が狭い場合の印刷動作の説明図である。
【図13】第3実施形態のヘッド周辺の構成の説明図である。
【図14】第3実施形態の印刷動作の説明図である。
【図15】第4実施形態のヘッド周辺の概念図である。
【図16】第4実施形態の変形例のヘッド周辺の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
液体を噴射するノズルを複数備えたヘッドであって、回転軸を中心に回転し、前記回転軸の径方向の外側に液体を噴射するヘッドと、前記回転軸を中心とする円周の少なくとも一部に沿って、且つ、前記ヘッドの回転方向に媒体を搬送する搬送機構と、を備え、前記ヘッドの移動速度と前記媒体の搬送速度に速度差を有する状態で、前記媒体と対向するノズルから前記媒体に液体を噴射することを特徴とする液体噴射装置が明らかとなる。
このような液体噴射装置によれば、搬送速度を速めることができる。これにより、印刷速度の高速化を図ることができる。
【0011】
かかる液体噴射装置であって、前記ヘッドの移動速度は、前記媒体の搬送速度よりも遅くてもよい。
このような液体噴射装置によれば、回転するヘッドから液体を噴射する際の遠心力の影響を低減できる。
【0012】
かかる液体噴射装置であって、前記ヘッドの移動速度は、前記媒体の搬送速度よりも速くてもよい。
このような液体噴射装置によれば、媒体をより速く搬送することが可能になる。
【0013】
かかる液体噴射装置であって、前記速度差による前記ヘッドと前記媒体との相対的な移動量は、前記ヘッドが移動していないときの前記媒体の搬送量と等しいことが望ましい。
このような液体噴射装置によれば、ヘッドが移動しない場合と同じ解像度で画像を印刷することができる。
【0014】
かかる液体噴射装置であって、前記搬送機構は、前記円周の或る部分に沿って第1媒体を搬送し、前記円周の別の部分に沿って第2媒体を搬送し、前記或る部分に位置するノズルは前記第1媒体に液体を噴射し、前記別の部分に位置するするノズルは前記第2媒体に液体を噴射することが望ましい。
このような液体噴射装置によれば、スループットを向上させることができる。また、ヘッドのノズルの目詰まりを防止できる。
【0015】
また、液体を噴射するノズルを複数備えたヘッドを、回転軸を中心として、且つ、複数のノズルを前記回転軸の径方向の外側に向けて回転することと、前記回転軸を中心とする円周の少なくとも一部に沿って、且つ、前記ヘッドの回転方向に媒体を搬送することと、前記ヘッドの移動速度と前記媒体の搬送速度に速度差を有する状態で、前記媒体と対向するノズルから前記媒体に液体を噴射することとを有することを特徴とする液体噴射方法が明らかとなる。
【0016】
以下の実施形態では、インクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
【0017】
===印刷システムの構成===
まず、図面を参照しながら印刷システムについて説明する。
図1は、印刷システムの外観構成を示した説明図である。この印刷システム100は、プリンター1と、コンピューター110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを備えている。プリンター1は、紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。コンピューター110は、プリンター1と電気的に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。表示装置120は、ディスプレイを有し、アプリケーションプログラムやプリンタードライバー等のユーザーインターフェイスを表示する。入力装置130は、例えばキーボード130Aやマウス130Bであり、表示装置120に表示されたユーザーインターフェイスに沿って、アプリケーションプログラムの操作やプリンタードライバーの設定等に用いられる。記録再生装置140は、例えばフレキシブルディスクドライブ装置140AやCD−ROMドライブ装置140Bが用いられる。
【0018】
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、表示装置120にユーザーインターフェイスを表示させる機能を実現させるほか、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピューター読み取り可能な記録媒体)に記録されている。または、このプリンタードライバーは、インターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
なお、「印刷装置」とは、狭義にはプリンター1を意味するが、広義にはプリンター1とコンピューター110とのシステムを意味する。
【0019】
===プリンターの構成===
<インクジェットプリンターの構成>
図2は、本実施形態のプリンター1の全体構成のブロック図である。
本実施形態のプリンター1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット40)を制御して、印刷データに従って媒体(例えば紙)に画像を印刷する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0020】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。なお、本実施形態の搬送ユニット20の詳細については後述する。
【0021】
ヘッドユニット40は、液体の一種であるインクを媒体に噴射するためのものであり、複数のヘッドを備えている。ヘッドユニット40は、搬送中の媒体に対してインクを噴射することによって、媒体にドットを形成し、画像を印刷する。本実施形態のプリンター1はラインプリンターであり、ヘッドユニット40の各ヘッドは媒体幅分のドットを一度に形成することができる。なお、本実施形態のヘッドユニット40の詳細については後述する。
【0022】
検出器群50には、ロータリー式エンコーダー(不図示)、紙検出センサー(不図示)などが含まれる。ロータリー式エンコーダーは、搬送ユニット20による媒体の搬送量を検出することができる。紙検出センサーは、給紙中の媒体の先端の位置を検出する。
【0023】
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0024】
<比較例>
本実施形態について説明する前に、比較例について説明する。
図3Aは、比較例のプリンター10の印字領域における横断面図であり、図3Bは、比較例のプリンター10が紙Sを搬送する様子を示す図である。なお、比較例のプリンター10は、紙幅方向に並ぶ複数のノズルが配設されたヘッドを備えて、ヘッドの複数のノズルから、インク滴を噴射しつつ媒体を搬送することで画像を形成するプリンター(いわゆるラインプリンター)である。
【0025】
プリンター10の搬送ユニット20は、上流側搬送ローラー23A及び下流側搬送ローラー23Bと、ベルト24とを有する。不図示の搬送モーターが回転すると、上流側搬送ローラー23A及び下流側搬送ローラー23Bが回転し、ベルト24が回転する。給紙ローラー(不図示)によって給紙された媒体は、ベルト24によって、印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される。ベルト24が媒体を搬送することによって、媒体がヘッドユニット40に対して搬送方向に移動する。印刷可能な領域を通過した媒体は、ベルト24によって外部へ排紙される。なお、搬送中の媒体は、ベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
【0026】
プリンター10のヘッドユニット40は、2つのヘッド(第1ヘッドH1、第2ヘッドH2)を有している。また、各ヘッドの下面には、インクを噴射するノズルが複数設けられている。
【0027】
図4は、第1ヘッドH1と第2ヘッドH2のノズル配列を示す図である。図では、プリンターの上面から見たときのノズル配列が示されている。本来であれば、ヘッドの下面に存在する各ノズルは、他の要素に阻まれてプリンターの上部から視認することができない。しかしながら、ここでは説明を容易にするために、プリンターの上部から見たときにノズルが存在する位置が透過的に示されている。
【0028】
第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2は各ノズル列のノズルの一端から他端までが連続して紙の幅方向(以下、紙幅方向ともいう)に紙幅以上の長さに並ぶフルライン型のヘッドである。なお、ここで示される第1ヘッドH1と第2ヘッドH2は、紙面の都合上、紙幅方向について実際よりも短く示されている。そして、第1ヘッドH1と第2ヘッドH2は、紙の全幅にインク滴を噴射可能としている。
【0029】
図において、紙の搬送方向の上流側には第1ヘッドH1が配置され、搬送方向の下流側には第2ヘッドH2が配置されている。この第1ヘッドH1と第2ヘッドH2は共に同じノズル配列を有している。
【0030】
第1ヘッドH1は、ノズル列a〜ノズル列dまでの4つのノズル列を有している。ノズル列aはブラックKのインク滴を噴射するブラックインクノズル列である。また、ノズル列bは、シアンCのインク滴を噴射するためのシアンインクノズル列である。また、ノズル列cは、マゼンタMのインク滴を噴射するためのマゼンタインクノズル列である。また、ノズル列dは、イエローYのインク滴を噴射するためのイエローインクノズル列である。ノズル列a〜dの各ノズル列は、それぞれ360dpiのピッチでノズルが形成される。
【0031】
第2ヘッドH2も、ノズル列a´〜ノズル列d´までの4つのノズル列を有している。前述のように、第2ヘッドH2のノズルの配置は第1ヘッドH1と同様のノズルの配置となっている。ただし、第2ヘッドH2の各ノズルは、第1ヘッドH1の各ノズルに対して紙幅列方向(紙の搬送方向と交差する方向)について720dpiずれている。
【0032】
このようにすることによって、紙幅方向について、第1ヘッドH1の各ノズル列のノズル間に第2ヘッドH2の各ノズル列のノズルが位置するようになる。これにより、紙幅方向について、紙上に720dpiの解像度でインク滴を着弾させることができるようになる。
【0033】
図5Aは、紙上に第1ヘッドH1からのインク滴が着弾した様子を示す図である。また、図5Bは、紙上に第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2からのインク滴が着弾した様子を示す図である。本図において、紙Sの横方向は前述の各ヘッドの紙幅方向である。図には、紙S上に着弾した順番にインク滴が積み重なっている様子が示されている。ここでは、図に示すように、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの順番でインク滴が着弾することが示されている。
【0034】
図において、インク色を示す符号の後に示されている番号は、噴射されたヘッドの番号である。例えば「K1」は、第1ヘッドH1から噴射されたブラックインクKであることを示し、「C2」は、第2ヘッドH2から噴射されたシアンインクCであることを示す。
【0035】
第1ヘッドH1の各インク色について紙幅方向のノズル間隔は360dpiであった。また、第1ヘッドH1において、各インク色のノズルの位置は紙幅方向について一致(搬送方向から見て各色のノズルが重なるように配置)していた。よって、第1ヘッドH1の全てのノズルからインク滴が噴射されると、紙幅方向について360dpiの解像度で各インク滴が着弾する。例えば、図5Aの右端の「K1」は、第1ヘッドH1のノズル列aの或るノズルによって形成されたドットであり、その左隣の「K1」は、或るノズルと隣接するノズルによって形成されたドットである。図4より、隣接するノズルで形成されるドットとの間隔は360dpiである。
【0036】
なお、紙Sは搬送方向に搬送されつつブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの順番に紙Sの各画素にインク滴が噴射される。よって、図5Aに示すように、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの順番にインク滴が紙S上に着弾する。
【0037】
また、第2ヘッドH2のノズルは、紙幅方向について第1ヘッドH1のノズルから720dpiずらされて配置されていた。このため、第2ヘッドH2からのインク滴は、図5Bに示すように、第1ヘッドH1からのインク滴の着弾位置から紙幅方向に720dpiずれて着弾する。すなわち、第1ヘッドH1で形成されたドットとドットの間に第2ヘッドH2によってドットが形成される。例えば、図において、例えば右端から2つめの「K2」は、第2ヘッドH2のノズル列a´の或るノズルによって形成されたドットであり、その2つ左隣の「K2」はノズル列a´の或るノズルと隣接するノズルによって形成されたドットである。第1ヘッドH1と同様に、第2ヘッドH2においても、隣接するノズルによって形成されるドットとのドット間隔は360dpiとなっている。このように、第1ヘッドH1で形成されたドット間に第2ヘッドH2によってドットが形成されるので、紙幅方向のドット間隔は720dpiとなる。
【0038】
このように、第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2からインクが噴射されることによって、紙Sに720dpiの解像度の画像が印刷される。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、各ヘッドから単色(例えばブラック)のインクのみを噴射して画像を印刷することとする。
【0039】
図6は、比較例のドット形成の様子の説明図である。
この比較例の場合、紙Sは一定速度で停まることなく搬送方向に搬送され、ヘッドユニット40の下を通る。ヘッドユニット40の下を紙Sが通る間に、第1ヘッドH1、第2ヘッドH2の各ノズルからインクが断続的に噴射される。つまり、ドットの形成処理と紙Sの搬送処理が同時に行われる。
【0040】
ところで、ノズルの設計上、ノズルからインク滴を連続して噴射できる周期(噴射周期)には限界があり、このため紙の搬送速度にも限界がある。例えば、仮に搬送方向に連続する画素にドットを形成するようにすると、噴射周期の間に1画素分の距離だけしか紙を搬送することができないことになる。このように、媒体に所定の解像度で画像を形成するには搬送速度に限界がある。ここでは、搬送方向に720dpiのドット間隔で画像を形成する場合の限界(最速)の搬送速度で紙Sが搬送されることとし、図において、紙Sを、その搬送速度で1秒間に搬送される領域ごとに区切って示している。また、紙Sのドット形成済みの領域には、ドットを形成したヘッド名(H1、H2)を示している。比較例では、1秒間に1領域分が搬送方向に移動することになる。以下、この1領域分の移動量のことをコマともいう。
【0041】
図6の印刷開始時(0秒)において、斜線で示す領域Aは第1ヘッドH1の直前(搬送方向上流側)に位置し、領域Bは第2ヘッドH2の直前に位置している。
【0042】
コントローラー60は、紙Sを搬送方向に1秒間に1コマの搬送速度で搬送させる。また、コントローラー60は、搬送中の紙Sに向けて第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2からインクを噴射させる。これにより、1秒後には、領域Aには第1ヘッドH1によってドットが形成され、領域Bには第2ヘッドH2によってドットが形成される。なお、各領域に形成される紙幅方向のドット間隔は、360dpiであり、搬送方向のドット間隔は720dpiである。
【0043】
続いて、コントローラー60は、紙Sを搬送方向に1秒間に1コマの搬送速度で搬送させ、また、搬送中の紙Sに向けて第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2からインクを噴射させる。これにより、2秒後には、領域Aの左隣(搬送方向上流側)の領域に第1ヘッドH1によってドットが形成され、領域Aと領域Bの間の領域に第2ヘッドH2によってドットが形成される。
【0044】
さらに、コントローラー60は、紙Sを搬送方向に1秒間に1コマの搬送速度で搬送させ、また、搬送中の紙Sに向けて第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2からインクを噴射させる。このとき、領域A(第1ヘッドでドット形成済みの領域)が第2ヘッドH2の下を通り、第1ヘッドで形成された360dpiのドット間に、第2ヘッドH2によってドットが形成される。これにより紙幅方向に720dpiのドット間隔でドットが形成される。
【0045】
以下、同様にして、紙Sの搬送と各ヘッドからのインクの噴射を同時に連続して行う。これにより、720dpiの解像度の画像が印刷されていく。
【0046】
このように、比較例のプリンター10では、1秒に1コマの搬送速度で紙Sを搬送しつつ、第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2から搬送中の紙Sにインクを噴射している。このため、ドット形成処理と搬送処理を交互に行うシリアル式のプリンターよりも印刷速度を早くすることができる。しかし、ヘッドのインクの噴射周期には限界があり、媒体に所定の解像度で(所定のドット間隔で)画像を形成するには搬送速度に限界がある。例えばこの比較例の場合、720dpiの解像度で画像を形成するには紙Sを1秒間に1コマ以上搬送することができない。
そこで本実施形態では、印刷速度の高速化を図っている。
【0047】
<本実施形態の基本概念>
図7は本実施形態の基本概念の説明図である。なお、図の表記方法は比較例(図6)と同様である。
【0048】
比較例ではヘッドが固定されていたのに対し、本実施形態ではヘッドも紙Sの搬送方向と同じ方向に移動する。また、本実施形態では比較例よりも多くのヘッドを用いる。この基本構成では第1ヘッドH1、第2ヘッドH2、第3ヘッドH3、第4ヘッドH4の4つのヘッドが用いられている。第1ヘッドH1、第2ヘッドH2、第3ヘッドH3、第4ヘッドH4は、番号順に媒体の搬送方向に並んで配置されている。このうち、奇数番号の第1ヘッドH1と第3ヘッドH3(以下、奇数ヘッドともいう)は、ノズルの配置が比較例の第1ヘッドH1と同じであり、偶数番号の第2ヘッドH2と第4ヘッドH4(以下、偶数ヘッドともいう)は、ノズルの配置が比較例の第2ヘッドH2と同じになっている。つまり、隣接する奇数ヘッドと偶数ヘッドとの組み合わせ(2つのヘッド)により、各領域に2パス相当で720dpiの解像度の画像を印刷することができる。なお、パスとは、各ヘッドからインクを噴射することによって媒体にドットを形成するドット形成動作のことである。
【0049】
図7の印刷開始時(0秒)において、斜線で示す領域Aは第1ヘッドH1の直前(搬送方向上流側)に位置し、領域Bは第2ヘッドH2の直前に位置している。また、領域Cは第3ヘッドH3の直前に位置し、領域Dは第4ヘッドH4の直前に位置している。
【0050】
コントローラー60は、紙Sを搬送方向に1秒間に2コマの搬送速度で搬送させるとともに、各ヘッドを搬送方向と同じ方向に1秒間に1コマの移動速度で移動させる。つまり、紙Sの搬送速度は、ヘッドの移動速度よりも速く、紙Sの各領域は1秒間でヘッドに対して相対的に1コマ搬送方向に移動する。また、コントローラー60は、移動する各ヘッドからインクを噴射させる。これにより、1秒後には、図のように斜線の領域に各ヘッドによってドットが形成される。例えば、領域Aは、第1ヘッドH1の下を通り、このとき第1ヘッドH1によってドットが形成される。なお、各領域に形成される紙幅方向のドット間隔は、360dpiである。また、この1秒間における、ヘッドに対しての紙Sの搬送方向への相対的な移動量は比較例と同じ(1コマ)である。よって、比較例と同じ噴射周期によって、搬送方向に比較例と同じドット間隔(720dpi)でドットを形成することができる。
【0051】
次の1秒間も同様に、コントローラー60は、紙Sを搬送方向に2コマ搬送させるとともに、各ヘッドを搬送方向と同じ方向に1コマ移動させる。また、コントローラー60は移動中の各ヘッドからインクを噴射させる。これにより、2秒後には、斜線の各領域の左側(搬送方向上流側)の領域にドットが形成される。
【0052】
その次の1秒間も同様に、コントローラー60は、紙Sを搬送方向に2コマ搬送させるとともに、各ヘッドを搬送方向に1コマ移動させる。また、コントローラー60は移動中の各ヘッドからインクを噴射させる。このとき、第1ヘッドH1によってドット形成済みの領域Aが第2ヘッドH2の下を通る。そして、第2ヘッドH2からインクが噴射されることにより、第1ヘッドH1によって形成された360dpiのドット間にドットが形成される。これにより、3秒後、領域Aには、第1ヘッドH1と第2ヘッドH2によって720dpiの解像度の画像が形成される。同様に、領域Bには、第2ヘッドH2と第3ヘッドH3によって720dpiの解像度の画像が形成され、領域Cには第3ヘッドH3と第4ヘッドH4によって720dpiの解像度の画像が形成される。
【0053】
その次の1秒間も同様に、コントローラー60は、紙Sを搬送方向に2コマ搬送させるとともに、各ヘッドを搬送方向に1コマ移動させる。また、コントローラー60は移動中の各ヘッドからインクを噴射させる。これにより、4秒後、領域A、領域B、領域Cの左隣の領域にも、それぞれ偶数ヘッドと奇数ヘッドによる720dpiの解像度の画像が形成される。
【0054】
このように、ヘッドは紙Sの搬送方向と同じ方向に1秒間に1コマ移動し、紙Sは搬送方向に1秒間に2コマ移動する。すなわち、1秒間の紙Sの搬送量が比較例の2倍(2コマ)になっており、且つ、1秒間でのヘッドに対する紙Sの相対的な移動量は比較例と同じ(1コマ)である。つまり、比較例と同じ解像度で、比較例よりも速く印刷することができる。
【0055】
===第1実施形態===
図8は第1実施形態のプリンター1のヘッド周辺の構成の説明図である。
前述した基本構成ではヘッドが4つであったが、第1実施形態では8つのヘッド(第1ヘッドH1〜第8ヘッドH8)が用いられている。
【0056】
これら8つのヘッドは、前述したヘッドと同様のヘッドであり、紙幅方向にノズルが並んだノズル列を有している。また、奇数ヘッド同士、及び、偶数ヘッド同士はノズルの位置関係が同じである。また、偶数ヘッドと奇数ヘッドはヘッド分解能の半分ノズルの位置がずれている。例えば、本実施形態の場合、各ヘッドのノズル間隔が360dpiであり、偶数ヘッドと奇数ヘッドではノズルの位置が1/720インチずれている。
【0057】
これらの8つのヘッドは、図に示すように円筒形状の回転ヘッド部42の周面に番号順に並んで配置されている。なお、各ヘッドのノズル列は、円筒の外周面において、円筒の軸方向に並んでいる。
この回転ヘッド部42は、軸Cを中心として所定方向(図では、反時計方向)に回転可能であり、この回転により各ヘッドが同じ方向に回転する。第1実施形態では、コントローラー60は、各ヘッドが1秒に1コマ分回転方向に移動するように回転ヘッド部42の回転を制御する。なお、第1実施形態では、回転ヘッド部42のうち軸Cよりも下側(下半分)が印字領域となっており、この部分に位置するヘッドからインクが噴射される。一方、回転ヘッド部42のうち軸Cよりも上側(上半分)は非印字領域であり、この部分に位置するヘッドからはインクが噴射されない。
【0058】
また、第1実施形態の搬送ユニット20(搬送機構に相当する)は、ガイド部材26を有する。ガイド部材26は、回転ヘッド部42の下半分を囲うように半円筒形に形成されている。第1実施形態のベルト24は、印字領域において、ガイド部材26にガイドされて、回転ヘッド部42の周面の下半分に沿って紙Sを搬送する。紙Sの搬送方向は、ヘッドの回転方向と同じ方向(反時計方向)である。なお、搬送中の紙Sは、ベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
【0059】
第1実施形態では、紙Sは1秒に2コマの搬送速度で搬送される。一方、ヘッドは1秒に1コマの移動速度で回転方向に移動する。つまり、紙Sは、ヘッドの周速度(移動速度)に対して2倍の速度で搬送される。
【0060】
図9は、第1実施形態の印刷動作の説明図である。図の表記方法は前述の基本概念と同様である。なお、同図に示す先行ヘッドとは、紙Sの各領域に最初にドットを形成するヘッドのことであり、後行ヘッドとは、すでにドット形成済みの領域に後からドットを形成するヘッドのことである。この先行ヘッドと後行ヘッドは、隣接する奇数ヘッドと偶数ヘッドの組み合わせからなり、2つのヘッドによって各領域に720dpiの画像が印刷されることになる。
各ヘッドは、実際には回転ヘッド部42の軸Cを中心として回転するが、同図では紙Sに合わせて直線状に示している。つまり、図に示すヘッドの左端と右端は実際には同じ位置になっている。また、非印字領域ではヘッドの位置と紙Sの各領域の位置は対応していない。
【0061】
図9の印字開始時(0秒)において、斜線で示す領域Aは、第1ヘッドH1直前(搬送方向上流側)に位置している。
コントローラー60は、各ヘッドが1秒間に1コマ移動するように回転ヘッド部42を回転させるとともに、紙Sを1秒間に2コマ搬送方向に搬送させる。また、コントローラー60は回転ヘッド部42の回転中に印字領域に位置するヘッド(図9の場合、第1ヘッドH1〜第4ヘッドH4)のノズルからインクを噴射させる。つまり、コントローラー60は、ヘッドの移動速度と紙Sの搬送速度に速度差がある状態で、印字領域に位置するヘッドからインクを噴射させる。
【0062】
これにより、1秒後には、ヘッドと紙Sの相対位置が1コマずれる。印字開始時(0秒)に各ヘッドの搬送方向上流側に位置した領域は、各ヘッドによってドットが形成されて、それぞれのヘッドの搬送方向下流側に移動する。例えば、領域Aは、第1ヘッドH1によってドットが形成されて、第1ヘッドH1の搬送方向下流側に移動する。同様にして、第2ヘッドH2〜第4ヘッドH4によって、図のようにそれぞれ1コマおきの領域にドットが形成される。なお、第4ヘッドH4によってドットの形成された領域は非印字領域に搬送される。このため、この後、後行ヘッドによるドット形成は行われない。
【0063】
次の1秒間も、コントローラー60は、各ヘッドが1コマ移動するように回転ヘッド部42を回転させるとともに、紙Sを2コマ搬送方向に搬送させる。また、コントローラー60は回転ヘッド部42の回転中に印字領域に位置するヘッド(この場合、第8ヘッドH8〜第3ヘッドH3)のノズルからインクを噴射させる。
これにより、2秒後には、領域Aの左隣の領域に第1ヘッドH1によってドットが形成される。また、領域Aは、第2ヘッドH2の直前に搬送される。
【0064】
その次の1秒間も、コントローラー60は、各ヘッドが1コマ移動するように回転ヘッド部42を回転させるとともに、紙Sを2コマ搬送方向に搬送させる。また、コントローラー60は回転ヘッド部42の回転中に印字領域に位置するヘッド(この場合、第8ヘッドH8〜第3ヘッドH3)のノズルからインクを噴射させる。このとき、第1ヘッドH1によってドット形成済みの領域Aが第2ヘッドH2の下を通る。その際、領域Aに第2ヘッドH2からインクが噴射されて、第1ヘッドH1によって形成された360dpiのドット間にドットが形成される。
これにより、3秒後には、領域Aに、第1ヘッドH1(先行ヘッド)と第2ヘッドH2(後行ヘッド)によって720dpiの解像度の画像が形成される。
【0065】
その次の1秒間も、コントローラー60は、各ヘッドが1コマ移動するように回転ヘッド部42を回転させるとともに、紙Sを2コマ搬送方向に搬送させる。また、コントローラー60は回転ヘッド部42の回転中に印字領域に位置するヘッド(この場合、第7ヘッドH7〜第2ヘッドH2)のノズルからインクを噴射させる。
これにより、4秒後には、領域Aの左隣の領域に、第2ヘッドH2によってドットが形成され、第1ヘッドH1(先行ヘッド)と第2ヘッドH2(後行ヘッド)による720dpiの解像度の画像が形成される。また、領域Aは、印字領域を通過して非印字領域に入る。
以下、図のように同様の動作を行う。これにより、紙Sに720dpiの解像度の画像が順次印刷されていく。
【0066】
なお、ヘッド回転部42の回転を止めた状態で印字領域のヘッドからインクを噴射することにより、紙Sに720dpiの解像度の画像を紙Sに印刷することもできる。ただし、この場合、紙Sの1秒間の搬送量は比較例と同じ(1コマ)になる。よって、720dpiの画像を印刷するには、本実施形態よりも印刷速度が遅くなる。
【0067】
以上説明したように、第1実施形態では前述の基本概念と同様に、ヘッドは紙Sの搬送方向と同じ方向に1秒に1コマの移動速度で移動し、紙Sは搬送方向に1秒に2コマの搬送速度で搬送される。すなわち、搬送速度が比較例の2倍になる。また、1秒間におけるヘッドに対する紙Sの相対的な移動量は比較例と同じ(1コマ)である。よって、比較例と同じ噴射周期により、比較例と同じドット間隔でドットを形成することができ(同じ解像度で印刷することができ)、且つ、比較例よりも搬送速度を速くすることができる。これにより印刷速度の高速化を図ることができる。
【0068】
また、本実施形態では、媒体の搬送速度が2コマに対してヘッドの移動速度が1コマと、ヘッドの移動速度(ヘッド回転部42の回転速度)が遅いので、回転するヘッドからインクを噴射する際に、遠心力の影響を受けにくくすることができる。
【0069】
===第2実施形態===
第1実施形態で紙Sの搬送速度よりもヘッドの移動速度の方が遅かった。これに対し、
第2実施形態では紙Sの搬送速度よりもヘッドの移動速度の方が速くなっている。
【0070】
図10は、第2実施形態のヘッド周辺の構成の説明図である。第2実施形態のヘッド周辺の構成は第1実施形態と同様である。ただし、第2実施形態では、図のように、ガイド部材26の回転ヘッド部42を囲う長さが第1実施形態よりも長くなっており、これにより、印字領域が第1実施形態よりも広くなっている。これは、印字領域が狭いと(第1実施形態と同じだと)、印刷できない領域が出てくるからである(後述する)。
【0071】
図11は、第2実施形態の印刷動作の説明図である。図の表記方法は前述の基本構成と同様である。
印字開始時(0秒)において、斜線で示す領域Aは、第1ヘッドH1の搬送方向下流側に位置している。
【0072】
コントローラー60は、各ヘッドが1秒間に3コマ移動するように回転ヘッド部42を回転させるとともに、紙Sを1秒間に2コマ搬送方向に搬送させる。また、コントローラー60は回転ヘッド部42の回転中に印字領域に位置するヘッド(図11の場合、第1ヘッドH1〜第4ヘッドH4)のノズルからインクを噴射させる。つまり、コントローラー60は、ヘッドの移動速度と紙Sの搬送速度に速度差がある状態で、印字領域に位置するヘッドからインクを噴射させる。
【0073】
これにより、1秒後には、ヘッドと紙Sの相対位置が1コマずれる。なお、第2実施形態では、紙Sの搬送速度よりもヘッドの移動速度の方が速いため、ヘッドと紙Sの位置関係が第1実施形態と逆側にずれる。例えば、領域Aは、第1ヘッドH1の搬送方向下流側から、第1ヘッドH1の搬送方向上流側に移動する。この間に、領域Aの上を第1ヘッドH1が通過し、その際にヘッドH1から領域Aにインクが噴射されてドットが形成される。なお、第1実施形態では紙Sの搬送方向下流側の画素からドットが形成されるが、第2実施形態では、逆に、搬送方向上流側の画素から順にドットが形成されることになる。同様に、第2ヘッドH2、第3ヘッドH3、第4ヘッドH4によって1コマおきの領域にドットが形成される。
【0074】
また、2秒後には、ヘッドと紙Sの相対位置がさらに1コマずれる。この間に、例えば、領域Aの右隣(搬送方向下流側)の領域の上を第1ヘッドH1が通過する。そして、その際に第1ヘッドH1からインクが噴射されて、当該領域に第1ヘッドH1によってドットが形成される。また、領域Aの左隣(搬送方向上流側)の領域の上を第8ヘッドH8が通過する。そして、その際に第8ヘッドH8からインクが噴射されて、当該領域に第8ヘッドH8によってドットが形成される。なお、第4ヘッドH4は非印字領域になるため、第4ヘッドH4からはインクが噴射されない。
【0075】
3秒後には、ヘッドと紙Sの相対位置がさらに1コマずれる。この間に、例えば領域A(第1ヘッドH1によってドット形成済みの領域)の上を第8ヘッドH8が通過する。そして、その際に第8ヘッドH8からインクが噴射されて、当該領域Aの第1ヘッドH1(先行ヘッド)によって形成された360dpiのドット間に第8ヘッドH8(後行ヘッド)によってドットが形成される。また、領域Aの2つ右側の領域(第2ヘッドH2によってドット形成済みの領域)の上を第1ヘッドH1が通過する。その際に、第1ヘッドH1からインクが噴射されて、当該領域の第2ヘッドH2(先行ヘッド)によって形成された360dpiのドット間に第1ヘッドH1(後行ヘッド)によってドットが形成される。
【0076】
以下、同様の動作を繰り返す。
このようにして、図に示すように、先行ヘッドと後行ヘッドの2つのヘッドによって、紙Sの各領域に720dpiの解像度の画像が形成されていく。
【0077】
図12は、第2実施形態において印字領域が狭い場合の印刷動作の説明図である。図11では印字領域が円筒の半周以上であったの対し、図12では印字領域が円筒のほぼ半周になっている。ヘッドの移動速度や紙Sの搬送速度については図11と同じである。つまり、ヘッドは1秒間に3コマ移動し、紙Sは1秒間に2コマ移動する。
この場合、図に示すように、6秒目以降に印刷できない領域が現れる。よって、第2実施形態では、図10、図11に示すように印字領域を広くしている。こうして、全ての領域に印刷ができるようにしている。
【0078】
この第2実施形態においても、1秒間の紙Sの搬送量は2コマである。また、ヘッドに対しての紙Sの1秒間の相対的な移動量は1コマ(比較例と同じ、ただし移動の方向が異なる)である。よって、比較例と同じ噴射周期により、比較例と同じドット間隔でドットを形成することができ、且つ、比較例よりも搬送速度を速くすることができる。このように、第2実施形態においても、印刷速度の高速化を図ることができる。
【0079】
また、本実施形態では、媒体の搬送速度が2コマに対してヘッドの移動速度が3コマと、ヘッドの移動速度(ヘッド回転部42の回転速度)が速い。このように媒体の搬送速度よりもヘッドの移動速度を早くすることで、所定の解像度で画像を印刷する場合に、より媒体を速く搬送させることが可能となる。
【0080】
===第3実施形態===
第3実施形態では、全述の実施形態と比べるとヘッドの数が異なる。具体的には、前述の実施形態ではヘッドの数が8個だったが、第3実施形態ではヘッドの数が10個である。第3実施形態においても、ヘッドを1秒間に3コマ移動させ、紙Sを1秒間に2コマ移動させる。つまり、第3実施形態でも、第2実施形態と同様に紙Sの搬送速度よりもヘッドの移動速度の方が速くなっている。なお、第2実施形態では非印字領域が印字領域よりも狭かったが、第3実施形態では、非印字領域と印字領域の広さがほぼ同じになっている。これは、ヘッド数を増やすことで、印字されない部分(領域)を低減することができるからである。
【0081】
図13は、第3実施形態のヘッド周辺の構成の説明図である。前述した実施形態ではヘッドが8個であったが、第1実施形態では10個のヘッド(第1ヘッドH1〜第10ヘッドH10)が用いられている。
これら10個のヘッドは、前述したヘッドと同様のヘッドであり、紙幅方向にノズルが並んだノズル列を有している。また、奇数ヘッド同士、及び、偶数ヘッド同士はノズルの位置関係が同じである。また、偶数ヘッドと奇数ヘッドはヘッド分解能の半分ノズルの位置がずれている。
これらの10個のヘッドは、図に示すように円筒形状の回転ヘッド部42の周面に番号順に並んで配置されている。なお、各ヘッドのノズル列は、円筒の外周面において、円筒の軸方向に並んでいる。
【0082】
この回転ヘッド部42は、軸Cを中心として所定方向(図の場合、反時計方向)に回転可能であり、この回転により各ヘッドが同じ方向に回転する。第3実施形態では、第2実施形態と同様に、各ヘッドが1秒に3コマ分回転方向に移動するようにコントローラー60によって制御される。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、回転ヘッド部42のうち軸Cよりも下側の下半分が印字領域となっており、この部分に位置するヘッドからインクが噴射される。一方、回転ヘッド部42のうち軸Cよりも上側の上半分は非印字領域であり、この部分に位置するヘッドからはインクが噴射されない。
【0083】
図14は、第3実施形態の印刷動作の説明図である。図の表記方法は前述の印刷動作と同様である。
第3実施形態では、第2実施形態同様に、ヘッドは1秒間に3コマ移動し、紙Sは1秒間に2コマ移動する。この図の印刷の動作は、第2実施形態とほぼ同じであるので説明を省略する。第3実施形態では、ヘッド数を増やしているので、第2実施形態よりも印字領域を狭くすることができる。
この第3実施形態においても、比較例よりも搬送速度を速くすることができ、印刷速度を速くすることができる。
【0084】
===第4実施形態===
前述の実施形態では、印字領域と非印字領域があり、印刷の際に円筒の周面の全てのヘッドを用いていなかった。この場合、ヘッドからインクを噴射しない期間があるため、ノズルが詰まるおそれがある。
そこで、第4実施形態では円筒の周面に配置された全てのヘッドを用いて印刷を行う。
図15は、第4実施形態のヘッド周辺の概念図である。第4実施形態では、紙Sは円筒の回転ヘッド部42の周面に沿って1週するように搬送される。そして、回転ヘッド部42は軸Cを中心として回転し、回転する各ヘッドから紙Sにインクを噴射する。
この場合も、紙Sの搬送速度と各ヘッドの移動速度とに速度差がある状態で各ヘッドからインクを噴射することにより、搬送速度を速くすることができる。また、この場合、各ヘッドからインクを噴射しない期間を削減することができる。
【0085】
<変形例>
図16は第4実施形態の変形例のヘッド周辺の説明図である。
図のように、円筒の回転ヘッド部42の上半分と下半分でそれぞれ別の紙Sに印刷を行うようにしてもよい。
この場合も、各ヘッドからインクを噴射しない期間を削減することができる。さらに、この変形例の場合、同時に2枚の紙Sに印刷できるので、スループットを向上させることができ、効率的に印刷を行うことができる。
【0086】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0087】
<液体噴射装置について>
前述の実施形態では、液体噴射装置の一例としてインクジェットプリンターが説明されている。但し、液体噴射装置はインクジェットプリンターに限られるものではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり噴射したりする液体噴射装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0088】
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンターの実施形態だったので、インクをノズルから噴射しているが、このインクは水性でも良いし、油性でも良い。また、ノズルから噴射する液体は、インクに限られるものではない。例えば、金属材料、有機材料(特に高分子材料)、磁性材料、導電性材料、配線材料、成膜材料、電子インク、加工液、遺伝子溶液などを含む液体(水も含む)をノズルから噴射しても良い。
【0089】
<ピエゾ素子について>
前述の実施形態では、ピエゾ素子を用いてインクを噴射していた。しかし、液体を噴射する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0090】
<ヘッドについて>
前述の実施形態では、各ヘッドに4色のノズル列が設けられていたが、これには限定されない。例えば、1つのヘッドに1色分のノズル列を設け、4つのヘッドによって4色分の印刷を行うようにしてもよい。また、この場合も、ヘッドのノズル配置をずらしたヘッドを、それぞれ搬送方向に別々に設けて解像度を上げるようにしてもよい。
また、前述の実施形態では、円筒形状の回転ヘッド部42の周面に複数のヘッドを配置していたが、これには限定されない。例えば、複数のヘッドをノズルが回転軸の径方向の外側を向くようにして個々に回転軸に接続し、回転軸を中心として複数のヘッドを回転させてもよい。
また、前述の実施形態では、複数のヘッドを設けるようにしていたが、これには限定されず、複数のノズルがあればよい。例えば、回転ヘッド部42が一つのヘッドであって、その回転ヘッド部42の周面に沿って複数のノズル(ノズル列)を配置してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 プリンター、
20 搬送ユニット、23A 上流側搬送ローラー、
23B 下流側搬送ローラー、24 ベルト、26、ガイド部材
40 ヘッドユニット、42 回転ヘッド部、50 検出器群、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、
63 メモリー、64 ユニット制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルを複数備えたヘッドであって、回転軸を中心に回転し、前記回転軸の径方向の外側に液体を噴射するヘッドと、
前記回転軸を中心とする円周の少なくとも一部に沿って、且つ、前記ヘッドの回転方向に媒体を搬送する搬送機構と、
を備え、
前記ヘッドの移動速度と前記媒体の搬送速度に速度差を有する状態で、前記媒体と対向するノズルから前記媒体に液体を噴射する
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記ヘッドの移動速度は、前記媒体の搬送速度よりも遅い、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記ヘッドの移動速度は、前記媒体の搬送速度よりも速い、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の液体噴射装置であって、
前記速度差による前記ヘッドと前記媒体との相対的な移動量は、前記ヘッドが移動していないときの前記媒体の搬送量と等しい、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の液体噴射装置であって、
前記搬送機構は、前記円周の或る部分に沿って第1媒体を搬送し、前記円周の別の部分に沿って第2媒体を搬送し、
前記或る部分に位置するノズルは前記第1媒体に液体を噴射し、前記別の部分に位置するするノズルは前記第2媒体に液体を噴射する、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
液体を噴射するノズルを複数備えたヘッドを、回転軸を中心として、且つ、複数のノズルを前記回転軸の径方向の外側に向けて回転することと、
前記回転軸を中心とする円周の少なくとも一部に沿って、且つ、前記ヘッドの回転方向に媒体を搬送することと、
前記ヘッドの移動速度と前記媒体の搬送速度に速度差を有する状態で、前記媒体と対向するノズルから前記媒体に液体を噴射することと、
を有することを特徴とする液体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−161775(P2011−161775A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26887(P2010−26887)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】