説明

液体噴射装置および液体噴射装置用液体タンク

【課題】液体貯留部に対する空気導入部を液体タンクから分離し、上記空気導入部を複数の液体タンクに対して配置した液体噴射装置およびそれに用いる液体タンクを提供する。
【解決手段】装置本体1に装着された液体タンク2の液体を液体噴射ユニット10から噴射する液体噴射装置であって、上記液体タンク2の液体貯留部2bに対し液体消費に伴って外気を導入する空気導入部70が、装置本体1側に設けられ、上記空気導入部70は、複数の液体タンク2に対して共通するよう各液体タンク2の液体貯留部2bに連通している。このような構成により、空気導入部70が、液体タンク2から分離されるとともに、複数の液体タンク2に連通しているので、空気導入部70は継続的に使用し、液体タンク2だけを消耗品とすることができ、材料資源の節減や構造簡素化および原価低減が実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の消費に伴う空気導入の構成を経済的なものとした液体噴射装置および液体噴射装置用液体タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置は、液体であるインクを貯留したインクカートリッジから、インク噴射ユニットにインクを供給するようになっている。そして、上記インクカートリッジ内のインク消費に伴って、インクカートリッジのインク貯留部内へ空気が導入され、インク噴射ユニットへのインク供給が円滑になされるようになっている。一方、インク貯留部内への空気導入流路を通じて、インク貯留部から大気の方へインクが蒸発するので、その蒸発量を低減するために、上記空気導入流路の途中に流路抵抗を大きくした制御流路が配置されている。
【0003】
上記制御流路は、流路面積の小さな流路を長くした状態で配置したり、流路を迷路状に湾曲や屈曲した形状にしたりしている。
【特許文献1】特開2000−62205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているインクカートリッジは、各カートリッジ毎に上記制御流路が設けられている。また、必要に応じてこの制御流路からインクが外部に漏洩することを防止する構造も採用され、カートリッジとしては複雑で価格の高い構造物を備えている。ところが、インクエンドになると、上記の価格の高い構造物も一緒にしてカートリッジが廃棄され、新品カートリッジが装着される。
【0005】
上記のような消耗品のサイクルは、継続使用が可能な部分、すなわち制御流路等も廃棄するので、材料資源の節減や環境問題にとって好ましいものではない。さらに、インクカートリッジの単価を低減する点からも好ましくない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、液体の消費に伴って液体貯留部に導入される空気の空気導入部を液体タンクから分離し、上記空気導入部を複数の液体タンクに対して配置することのできる液体噴射装置およびそれに用いる液体タンクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射装置は、装置本体に装着された液体タンクの液体を液体噴射ユニットから噴射する液体噴射装置であって、上記液体タンクの液体貯留部に対して液体の消費に伴って外気を導入する空気導入部が装置本体側に設けられ、上記空気導入部は、複数の液体タンクに対して共通するよう各液体タンクの液体貯留部に連通するように構成されていること要旨とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明の液体噴射装置用液体タンクは、液体貯留部に貯留されている液体を液体噴射ユニットへ供給する供給口と、液体の消費に伴って液体貯留部に外気を導入する導入口とを備え、上記供給口と導入口がそれぞれ液体タンクの下部に下方に向って開口した状態で形成され、上記導入口への空気導入時に開状態になる大気弁が配置されていることを要旨とする。
【0009】
すなわち、本発明の液体噴射装置は、上記液体タンクの液体貯留部に対し液体の消費に伴って外気を導入する空気導入部が、装置本体側に設けられ、上記空気導入部は、複数の液体タンクに対して共通するよう各液体タンクの液体貯留部に連通するように構成されている。
【0010】
このように、いくつかの部品等で構成される上記空気導入部が液体タンクから分離した箇所である装置本体に設けてあるとともに、空気導入部が複数の液体タンクの液体貯留部に対して連通させてあるので、液体タンクの交換時には空気導入部はそのまま継続使用をすることができ、液体タンクだけが交換される。したがって、空気導入部を無駄に処分することがなく、材料資源の節減や環境問題にとって好適である。さらに、消耗品である液体タンクの構造が簡素化され原価低減を促進することができる。
【0011】
本発明の液体噴射装置において、上記空気導入部が1つである場合には、空気導入部を最少限度の個数で機能させることができ、装置本体側の構造簡素化と原価低減にとって有効である。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、上記空気導入部は、上記液体タンクの液体貯留部を外気に連通させる連通路に、液体の消費に伴って液体貯留部内に導入される空気の通過は許容し、上記導入される空気とは逆方向の液体の通過を阻止する規制フィルタを備えている場合には、液体消費に伴う空気導入と液体の流出防止が上記規制フィルタによって行なわれ、空気導入による円滑な液体供給と液体貯留部からの不用意な液体流出が防止され、信頼性の高い液体噴射装置が得られる。
【0013】
本発明の液体噴射装置において、上記空気導入部は、上記液体タンクの液体貯留部を外気に連通させる連通路に、気体の流路抵抗が所定値に設定された抵抗流路を備えている場合には、液体の蒸気の流路抵抗を高く設定して液体蒸気の流出を抑制することができる。また、このような抵抗流路により、空気導入部中の気体の圧力を高く設定して液体の蒸発を抑制することができ、液体の粘度変化等の物性変化が抑制されるとともに浪費が防止される。
【0014】
本発明の液体噴射装置において、上記液体タンクの液体貯留部に、上記液体貯留部内に液体を保持するための弾性フォーム材を充填した場合には、弾性フォーム材に液体が保持されるため、液体の流出が防止され、空気導入部の機能が良好に果たされる。
【0015】
本発明の液体噴射装置において、上記液体タンクの液体貯留部よりも下流側に、液体の消費に伴って動作することによって、液体の供給を選択的に許容する圧力制御弁が配置されている場合には、液体の消費に伴って圧力制御弁の下流側の圧力が一定値以上低くなった場合のみ開弁し、通常は閉弁するため液体の流出が防止され、空気導入部の機能が良好に果たされる。
【0016】
本発明の液体噴射装置において、上記空気導入部が、液体タンクが装着される装着部材に形成されている場合には、液体タンクにきわめて近い箇所に空気導入部を形成することができるので、空気導入部の機能を忠実に液体タンクの液体貯留部に反映させることができる。さらに、液体タンクを上記装着部材に取り付けるのと同時に液体タンクの液体貯留部を空気導入部に連通させることができ、液体タンクの装着という簡単な動作で空気導入部を液体貯留部に連通させることができる。
【0017】
本発明の液体噴射装置において、上記装着部材は、略水平方向に配置された基部材とこの基部材から略垂直に起立している支持部材を含んで構成され、上記基部材に、液体タンクの液体貯留部を液体噴射ユニットに連通させる第1接続部材と、液体貯留部を上記空気導入部に連通させる第2接続部材が配置されている場合には、液体タンクを上記基部材に取り付ける際に、上記第1接続部材と第2接続部材における上記各連通が成立するので、装着部材に対する簡単な装着動作で液体タンクや空気導入部の機能を果たすことができる。
【0018】
本発明の液体噴射装置において、上記第1接続部材と第2接続部材がそれぞれ、液体タンクを装着部材に装着する動作により液体タンクに相対的に差し込まれる液体供給針と空気流通針である場合には、液体タンクの装着動作で上記液体供給針と空気流通針の差し込みが完了するので、液体供給針を通じての目的箇所への液体供給と、空気流通針を通じての空気導入部への連通を一時に達成できるようにすることができる。したがって、簡素化された装着動作で液体もれや気体もれのない接続が成立し、信頼性の高い液体噴射装置が得られる。
【0019】
本発明の液体噴射装置において、上記液体タンクには、空気導入部との接続箇所に、液体タンクが上記装置本体に装着されているときには開き、液体タンクが装置本体から外されたときに閉じる大気弁が設けられている場合には、液体タンクを装置本体から外したときに液体タンクと空気導入部との接続箇所から液体がもれることがない。したがって、装置本体を液体で汚すようなことが防止できる。また、外された液体タンクを持ち運ぶ際にも液体もれが発生しないので、楽な取り扱いができる。
【0020】
また、本発明の液体噴射装置用液体タンクにおいては、上記供給口と導入口とが液体タンクの下部に下方に向って開口させてあるので、例えば、液体タンクを装置本体に取り付ける場合には、装置本体側における供給口と導入口に対する対応構造を簡素化された配列にすることができ、合わせて液体タンクの着脱が容易になる。そして、上記大気弁が配置されているので、大気弁を開閉させて液体消費に伴う外気導入が確実に行なわれて、円滑な液体供給がなされ、安定した液体噴射性能が得られる。
【0021】
本発明の液体噴射装置用液体タンクにおいて、上記導入口が、装置本体側に設けられ液体の消費に伴って外気を導入する空気導入部に連通するものである場合には、液体消費とともに空気導入部から液体貯留部内に空気が導入されるので、供給口から液体噴射ユニットへの液体供給が円滑になされ、安定した液体噴射性能が得られる。
【0022】
本発明の液体噴射装置用液体タンクにおいて、液体タンクを装置本体に対して一方向に移動させて装着することにより、上記供給口から液体噴射ユニットへの液体供給流路の形成と、上記空気導入部に対する導入口の連通とが、同時になされるように構成されている場合には、一方向の最も単純な液体タンクの装着動作で、供給口と導入口との連通を成立させながら液体タンクの装着ができ、空気導入部と導入口との連通について特別な装着動作を必要としないので、簡単に液体タンクの着脱ができる。さらに、液体タンクの装着動作が一方向であるから、装置本体側の供給口や導入口に対する構造も、例えば、液体供給針や空気流通針のような部品配置によって簡素化しやすくなる。
【0023】
本発明の液体噴射装置用液体タンクにおいて、上記大気弁が、導入口の近傍に配置されている場合には、大気弁を動作させる部材が導入口に挿入された段階で直ちに大気弁を開くことができる。したがって、大気弁の開動作が確実になされる。また、大気弁の閉動作は導入口の近傍でなされるので、液体タンク内の液体が外部に漏れ出すことが確実に防止される。すなわち、導入口の近傍で流路が閉じられるので、液体タンクを装置本体から外したときに、空気導入部から液体が滴下したりしない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
つぎに、本発明の液体噴射装置および液体噴射装置用液体タンクを実施するための最良の形態を説明する。
【0025】
本発明の液体噴射装置および液体噴射装置用液体タンクは、上述のように種々な液体を対象にして機能させることができ、以下に説明する実施例においてはその代表的な事例として、インクジェット式記録装置に適用した例を示している。
【実施例1】
【0026】
図1〜図7は、本発明の液体噴射装置および液体噴射装置用液体タンクの一実施例を示す。
【0027】
図1は、本発明が適用されるインクジェット式記録装置1の周辺構造の一例を示す図である。この装置は、インクカートリッジ2が搭載されるとともに液体噴射ユニットである記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ3を備えている。
【0028】
上記キャリッジ3は、タイミングベルト4を介してステッピングモータ5に接続され、ガイドバー6に案内されて記録紙7の紙幅方向すなわち主走査方向に往復移動するようになっている。上記キャリッジ3は、上部に開放する箱型を呈し、被噴射物である記録紙7と対向する面(この例では下面)に、記録ヘッド10のノズル面が露呈するよう取り付けられるとともに、インクカートリッジ2を収容するようになっている。
【0029】
そして、上記記録ヘッド10にインクカートリッジ2からインクが供給され、キャリッジ3を移動させながら記録紙7上面にインク滴を吐出させて記録紙7に画像や文字をドットマトリックスにより印刷するようになっている。図1において、8は印刷休止中に記録ヘッド10のノズル開口を封止することによりノズルの乾燥をできるだけ防ぐとともに、後述のノズル開口11や記録ヘッド10内のインク流路をクリーニングするための吸引キャップ、9は記録ヘッド10のノズル面をワイピングするワイパーブレードである。また、キャリッジ3には、図1に示すように、ガイドバー6が挿通されている。さらに、9aはワイパーブレード9でワイピングされたインクを貯留する廃インク貯留部である。
【0030】
図2は、上記記録ヘッド10の基本構造を示す断面図である。この基本構造の一例を図2にしたがって説明すると、この記録ヘッド10の先端部に流路ユニット13が配置されている。この流路ユニット13は、ノズル形成面16aにノズル開口11が列設されたノズルプレート16と、上記ノズル開口11に連通し圧電振動子14によりインクを加圧する圧力発生室12と、上記圧力発生室12に供給されるインクを貯留するインク貯留室17から構成されている。なお、ノズル開口11が主走査方向に直交する方向(副走査方向)に列設されて、ノズル列11aが形成されている。
【0031】
上記流路ユニット13は、ノズル開口11が穿設されたノズル形成面16aを有するノズルプレート16と、圧力発生室12と共通の液体貯留室であるインク貯留室17ならびにこれらを連通させるインク供給路18とに対応する空間が形成された圧力発生室形成板19と、上記圧力発生室12やインク貯留室17の開口を封止する封止板すなわち振動板20とが積層されて形成されている。そして、上記ノズル形成面16aは平坦面とされている。図2に示すように、流路ユニット13は、接着剤を用いてヘッドケース15の先端面27に接合されている。
【0032】
上記圧電振動子14は、駆動信号の入力により、充電状態で長手方向に収縮し、充電状態から放電する過程で長手方向に伸長する、いわゆる縦振動モードの振動子である。上記圧電振動子14は、その先端が圧力発生室12の一部を形成する振動板20の島部20aに固着された状態で、他端が基台21に固定されている。なお、本発明においては、上記縦振動モードの圧電振動子14を、たわみ振動モードの圧電振動子に変更してもよい。
【0033】
また、上記ヘッドケース15には、そのインク貯留室17に対応する部分に、インク貯留室17にインクカートリッジ2のインクを導入するヘッド流路24が形成されている。上記ヘッド流路24の開口縁には、管部材で構成された環状突起23が形成されている。
【0034】
上記記録ヘッド10では、上記圧電振動子14の収縮および伸長を受けて圧力発生室12が拡張および収縮し、圧力発生室12の圧力変動によりインクの吸引とインク滴の吐出とが行なわれるようになっている。図2において、22は圧電振動子14に駆動信号を入力するフレキシブル回路板であり、ヘッドケース15に結合された制御基板25に結線されている。また、インクジェット式記録装置1全体を動作する制御装置1a(図1参照)からの動作信号を制御基板25に供給するフレキシブル回路板22が、ターミナル30aを介して制御基板25に接続されている。
【0035】
ヘッドケース15には、流路ユニット13とは反対の側にフランジ15aが設けられ、上記制御基板25はこのフランジ15a上に載置されている。
【0036】
上記記録ヘッド10では、図2において紙面に垂直な方向に圧電振動子14,圧力発生室12,ノズル開口11が列設されており、ノズルプレート16には、2列のノズル列が一対となり、複数対のものが形成されている。上記のノズル開口11は一直線上に列設され、このようなノズル列に符号11aが付してある。
【0037】
上記流路ユニット13は、接着剤等を用いてヘッドケース15に接合されている。上記のワイパーブレード9でノズル形成面16aをワイピングするときには、ワイパーブレード9が流路ユニット13の角部に擦れてワイパーブレード9が滑らかに動作しなかったり、流路ユニット13の角部に傷がついたりするのを防止するために、ノズル形成面16aの周縁部を保護するヘッドカバー26が設けられている。
【0038】
インクカートリッジ2から送られてきたインクは、ヘッド流路24からインク貯留室17に流入し、その後、圧力発生室12において圧電振動子14の動作で加圧され、ノズル開口11から記録紙7に向ってインク滴の状態で吐出され、印刷が進行するようになっている。
【0039】
図3は、液体タンクであるインクカートリッジ2とキャリッジ3との位置関係を示す断面図であり、インクカートリッジ2がキャリッジ3に装着される直前の状態である。
【0040】
このインクカートリッジ2は、偏平な略直方体の形状とされた箱型のカートリッジケース2aによって構成され、図3の紙面の奥側が2点鎖線で示されたインク貯留部2bとされている。上記インク貯留部2bに貯留されているインク2cは、圧力制御弁28を通過して流出口29と逆止弁30を経て供給口31に流れるようになっている。図3の(4)−(4)断面図が図4に示されている。図4に示すように、上記インク貯留部2bは、蓋板32によって密閉されている。
【0041】
圧力制御弁28を構成するために、カートリッジケース2aに円形の凹部33が設けられ、この凹部33に蓋部材34を嵌入して弁室35が形成されている。上記弁室35の底板36に弁37の着座部38が設けられている。上記弁37は、エラストマーのような弾性材料で構成された弁膜39の中央部に形成され、この弁膜39の外周部は蓋部材34とカートリッジケース2aによって挟み付けられている。弁37の周囲と蓋部材34との間に圧縮コイルスプリング40が挿入され、弁37を着座部38に押し付けて弁封止がなされている。また、弁37の中央部に通口41が設けられ、弁37が着座部38から離れると弁膜39の右側から左側へインクが流通できるようになっている。
【0042】
上記底板36に通口42が設けてある。また、蓋部材34の中央部に通口43が設けられ、蓋部材34に半径方向に形成した通溝44に上記通口43が連通している。そして、通溝44に上記流出口29が連通している。なお、符号45は、ガスバリア性に優れた合成樹脂製のフィルム材であり、カートリッジケース2aに接合されて通溝44のシールをしている。
【0043】
上記逆止弁30は、断面円形の弁室47内に摺動可能な状態で弁48が挿入され、弁室47の底面に形成した着座面49に弁48が着座して、逆止弁30を閉じるようになっている。このように弁48を着座させるために、圧縮コイルスプリング46が弁室47の上面部と弁48との間に挿入されている。符号50は着座面49の中央部に設けた通口であり、51は弁48の外周部に形成した流通溝である。また、供給口31の開口部分には、後述の中空のインク供給針52に密着してシール機能を果たす環状のシールゴム53がはめ込んである。上記の構成により、供給口31は、カートリッジケース2aの下部に下向きに開口した状態で配置されている。なお、インク供給針52は、フィルタ67と通路68を経て記録ヘッド10に連通している。
【0044】
一方、上記記録ヘッド10からのインク滴吐出によりインク貯留部2bのインクが消費されて行き、このインク消費にしたがってインク貯留部2b内に外部空気を導入して、記録ヘッド10から正常なインク吐出を行なうようになっている。そこで、カートリッジケース2aの下部に下方に向って開口する導入口54が設けられ、この導入口54の近傍に大気弁55が配置されている。この大気弁55は、カートリッジケース2aに設けた空気流路56に連通し、その端部はインク貯留部2bの上部に開口する空気穴57に連通している。
【0045】
上記大気弁55は、インクカートリッジ2が装置本体側の部材であるキャリッジ3に装着されているときに開弁状態となり、インクカートリッジ2がキャリッジ3から外されると直ちに閉弁状態になる。このような開閉機能を付与するための弁構造としては種々なものが採用できるが、この例は上記逆止弁30と同様な構造の弁である。
【0046】
すなわち、断面円形の弁室60内に摺動可能な状態で弁61が挿入され、弁室60の底面に形成した着座面62に弁61が着座して、大気弁55を閉じるようになっている。このように弁61を着座させるために、圧縮コイルスプリング63が弁室60の上面部と弁61との間に挿入されている。また、上記弁61の外周部に流通溝64が設けられ、上記導入口54は着座面62の中央部に設けられている。また、導入口54はエラストマーのような弾性材料で形成した膜部材65で封止されている。この膜部材65は、接着剤でカートリッジケース2aに接合されている。
【0047】
上記膜部材65に後述の中空の空気流通針66が差し込まれると空気流通針66の外周部に密着してシール機能を果たし、空気流通針66を抜き取ると、膜部材65は自己の弾性で空気流通針66の貫通穴を閉塞して、空気やインク2cの流通を阻止する。
【0048】
インクカートリッジ2がキャリッジ3に取り付けられると、供給口31側ではインク供給針52が相対的に供給口31内に差し込まれ、インク供給針52の先端部が通口50を経て弁48を押し上げて、弁48が着座面49から離れ流通溝51が開通状態になって開弁状態になる。このときには、弁48が圧縮コイルスプリング46の張力に抗して押し上げられる。また、導入口54側では、空気流通針66によって弁61が着座面62から離れて、逆止弁30と同様な動作を経て開弁状態になる。
【0049】
上記のようにインクカートリッジ2がキャリッジ3に取り付けられることにより、インク貯留部2b内のインク2cが記録ヘッド10へ供給されるようになり、また、導入口54からインク貯留部2bに空気が導入される状態になる。
【0050】
上記インク貯留部2bのインク2cが消費されて、インク液面が下がって行くのにしたがい上記導入口54から空気が導入される。この空気導入に際しては、インク2cの液面低下に伴う空気導入は円滑になされ、また、印刷動作の休止中にインク2cが蒸発することを抑制する必要がある。また、使用者が装置本体を持ち運んだりして傾けた結果、インク2cが液状のまま導入口54に逆流して、外部にもれることを防止する必要がある。
【0051】
上記のような要請に応えるために、空気導入部70が設けられている。本発明においては、この空気導入部70は、インクカートリッジ2から離隔した箇所に配置され、複数のインクカートリッジ2が上記空気導入部70に連通されている。空気導入部70は、インクジェット式記録装置1の本体側の適当な箇所であれば、どこに配置してもよいのであるが、この例ではキャリッジ3の一部を利用している。
【0052】
図3に示すように、インクカートリッジ2が装着される部材であるキャリッジ3は、略水平方向に配置された基部材71とこの基部材71から略垂直に起立している支持部材72を有しており、空気導入部70は上記支持部材72に設けられている。図3の(5)矢視図が図5であり、また、図3の(6)−(6)断面図が図6である。
【0053】
上記支持部材72の背面に1つの四角い凹部を形成してフィルタ室73が形成され、そこに設けた段部74に規制フィルタ75が接着剤で接合してある。上記規制フィルタ75は、気体の流通は可能であるがインク液の流通は不可能とされた部材である。すなわち、インク2cの消費に伴ってインク貯留部2b内に導入される空気の通過は許容し、インク貯留部2b内に導入される上記空気とは逆方向のインク液の通過を阻止するものである。
【0054】
このような機能の規制フィルタとしては、例えば、空気やインクからの水蒸気は通過させるがインク液は通過させない程度の微細穴が多数設けられたメンブレン等をあげることができる。
【0055】
上記空気流通針66は先端が尖った形状で内部が中空とされ、導入空気が通過する通口76が設けられている。空気流通針66に連通する通路77が設けられ、その端部はフィルタ室73に連通している。フィルタ室73と外気との間に,気体の流路抵抗が所定値に設定された抵抗流路78が設けられている。この抵抗流路78は、閉断面の流路でその流路面積と長さを選定することによって、所定の流路抵抗が設定されている。この例では、蛇行形状の流路とされている。上記抵抗流路78の連通口79がフィルタ室73に連通し、抵抗流路78の開放口80が外気に開口している。
【0056】
上記キャリッジ3は合成樹脂材料をインジェクション成形をしたもので、上記通路77,フィルタ室73,抵抗流路78,連通口79および開放口80等は、キャリッジ3の外側面を窪ませた形状の構造とされている。通路77を閉断面の封止された通路とするために、基部材71の下面にガスバリア性のある合成樹脂製のフィルム材81が接合してある。また、同様に、フィルタ室73や抵抗流路78を封止された流路とするために、支持部材72の外側面にガスバリア性のある合成樹脂製のフィルム材82が接合されている。これらのフィルム材81,82は透明のものが使用されている。
【0057】
この例では1つの上記空気導入部70に対して、6つのインクカートリッジ2のインク貯留部2bが連通している。すなわち、1つの空気導入部70が複数のインクカートリッジ2に対して共通した状態で機能するようになっている。そのために、通路77は、各空気流通針66に連通する共通路77aと、この共通路77aから分岐した1つの連通路77bがフィルタ室73に開口している。
【0058】
上記の場合は、1つの空気導入部70に対して6つのインクカートリッジ2が連通してあるが、これを2つの空気導入部70に対して3つずつのインクカートリッジ2を連通させることもできる。このようにすることによって、規制フィルタ75の使用期間を著しく長期化してメンテナンスを楽にすることができる。
【0059】
上記インク供給針52と空気流通針66は、上記のように略水平方向に配置された基部材71からほぼ垂直方向に起立している。したがって、インクカートリッジ2をキャリッジ3に取り付けるときには、一方向の取り付け動作で一時にインク供給針52と空気流通針66の相対的な差し込みがなされ、取付が簡素化される。また、インク供給針52が第1接続部材であり、空気流通針66が第2接続部材である。
【0060】
図7は、抵抗流路78の変形例を示す。同図(A)に示したものは、通気性のある焼結合金によって所定の流路抵抗が設定されている。上記焼結合金83は細長い円柱形または直方体に成形され、その密度や連通口79から開放口80までの長さ等によって所定の流路抵抗が設定されている。同図(B)に示したものは、スチールウールをつき固めて形成したウールブロック84であり、所定の流路抵抗を設定するために、ウールブロック84の断面積やウール材の密度等が選定されている。他の構造部分は、図5に示したものと同様であり、同じ部材には同じ符号が図7に記載されている。
【0061】
上記実施例による空気導入の動作を説明する。
【0062】
図3に示す状態からインクカートリッジ2を真下に下降させると、インク供給針52は供給口31,通口50を貫通して圧縮コイルスプリング46の弾力に抗して弁48を開き、インク貯留部2bのインク2cが記録ヘッド10に供給されるようになる。一方、インク供給針52の差し込み動作と同時に、空気流通針66は膜部材65を突き破って導入口54を貫通して圧縮コイルスプリング63の弾力に抗して弁61を開き、インク貯留部2bが空気導入部70に連通する。このような連通は、1つの空気導入部70に対して6つのインクカートリッジ2との間で成立する。
【0063】
印刷動作により、インク2cが消費されてゆくと、インク貯留部2bのインク液面が低下してゆくので、それに伴って外部の空気が、開放口80,抵抗流路78,規制フィルタ75,通路77,空気流通針66,通口76,開弁状態の大気弁55,空気通路56等を経てインク貯留部2b内に導入される。したがって、記録ヘッド10からのインク吐出が正常になされる。また,上記空気導入の途上で空気中の塵埃等の不純物が規制フィルタ75で捕捉されるので、インク2cに異物が混入することがなく、インク吐出にとって好適である。
【0064】
図4に示すように、上記インク消費の継続中には、弁膜39の記録ヘッド10側の圧力がインク貯留部2b側の圧力よりも低下し、この圧力差によって圧縮コイルスプリング40のばね力に抗して弁膜39が図4の左方に移動し、弁37が開いてインク2cが通口41から記録ヘッド10側に流入する。その後、記録ヘッド10側の圧力が上昇すると、圧縮コイルスプリング40のばね力によって弁37が閉じる。このような弁37の開閉が継続的になされることにより、圧縮コイルスプリング40の張力に応じてインク貯留部2b内の圧力が大気圧よりも低く維持される。
【0065】
上記第1の実施例の作用効果を列記すると、つぎのとおりである。
【0066】
上記のように、規制フィルタ75や抵抗流路78等の部品で構成される上記空気導入部70がインクカートリッジ2から分離した箇所である装置本体1すなわちキャリッジ3に設けてあるとともに、空気導入部70が複数のインクカートリッジ2のインク貯留部2bに対して連通させてあるので、インクカートリッジ2の交換時には空気導入部70はそのまま継続使用をすることができ、インクカートリッジ2だけが交換される。したがって、空気導入部70を無駄に処分することがなく、材料資源の節減や環境問題にとって好適である。さらに、消耗品であるインクカートリッジ2の構造が簡素化され原価低減を促進することができる。
【0067】
上記空気導入部70が1つであることにより、空気導入部70を最少限度の個数で機能させることができ、装置本体1側の構造簡素化と原価低減にとって有効である。
【0068】
上記空気導入部70は、上記インクカートリッジ2のインク貯留部2bを外気に連通させる連通路に、インク2cの消費に伴ってインク貯留部2b内に導入される空気の通過は許容し、インク貯留部2b内に導入される上記空気とは逆方向のインク液の通過を阻止する規制フィルタ75を備えていることにより、インク消費に伴う空気導入とインクの流出防止が上記規制フィルタ75によって行なわれ、空気導入による円滑なインク供給とインク貯留部2bからの不用意なインク流出が防止され、信頼性の高いインクジェット式記録装置1が得られる。
【0069】
上記空気導入部70は、上記インクカートリッジ2のインク貯留部2bを外気に連通させる連通路に、気体の流路抵抗が所定値に設定された抵抗流路78,83,84等を備えているため、インク2cの蒸気の流路抵抗を高く設定してインクの水蒸気の流出を抑制することができる。また、このような抵抗流路78,83,84等により、空気導入部70中の気体の圧力を高く設定してインク2cの蒸発を抑制することができ、インク2cの粘度変化等の物性変化が抑制されるとともに浪費が防止される。
【0070】
上記インクカートリッジ2のインク貯留部2bよりも下流側に、インクの消費に伴って動作することによって、インクの供給を選択的に許容する圧力制御弁28が配置されているため、インクの消費に伴って圧力制御弁28の下流側の圧力が一定値以上低くなった場合のみ開弁し、通常は閉弁するためインクの流出が防止され、空気導入部70の機能が良好に果たされる。
【0071】
上記空気導入部70が、インクカートリッジ2が装着されるキャリッジ3に形成されているため、インクカートリッジ2にきわめて近い箇所に空気導入部70を形成することができ、空気導入部70の機能を忠実にインクカートリッジ2のインク貯留部2bに反映させることができる。さらに、インクカートリッジ2を上記キャリッジ3に取り付けるのと同時にインクカートリッジ2のインク貯留部2bを空気導入部70に連通させることができ、インクカートリッジ2の装着という簡単な動作で空気導入部70をインク貯留部2bに連通させることができる。
【0072】
上記キャリッジ3は、略水平方向に配置された基部材71とこの基部材71から略垂直に起立している支持部材72を含んで構成され、上記基部材71に、インク貯留部2bに連通する第1接続部材であるインク供給針52と、インク貯留部2bを上記空気導入部70に連通する第2接続部材である空気流通針66が配置されていることにより、インクカートリッジ2を上記基部材71に取り付ける際に、上記インク供給針52と空気流通針66における上記各連通が成立するので、キャリッジ3に対する簡単な装着動作でインクカートリッジ2や空気導入部70の機能を果たすことができる。
【0073】
上記第1接続部材と第2接続部材が、それぞれインクカートリッジ2をキャリッジ3に装着する動作によりインクカートリッジ2に相対的に差し込まれるインク供給針52と空気流通針66であることにより、インクカートリッジ2の装着動作で上記インク供給針52と空気流通針66の差し込みが完了するので、インク供給針52を通じての目的箇所へのインク供給と、空気流通針66を通じての空気導入部70への連通を一時に達成できるようにすることができる。したがって、簡素化された装着動作でインクもれや気体もれのない接続が成立し、信頼性の高いインクジェット式記録装置1が得られる。
【0074】
インクカートリッジ2と上記空気導入部70との接続箇所に、インクカートリッジ2が上記装置本体1に装着されているときには開き、インクカートリッジ2が装置本体1から外されたときに閉じる大気弁55が設けられているため、インクカートリッジ2を装置本体1から外したときにインクカートリッジ2と空気導入部70との接続箇所からインク2cがもれることがない。したがって、装置本体1をインク2cで汚すようなことが防止できる。また、外されたインクカートリッジ2を持ち運ぶ際にもインクもれが発生しないので、楽な取り扱いができる。
【0075】
また、インクジェット式記録装置1に用いるインクカートリッジ2においては、上記供給口31と導入口54とがインクカートリッジ2の下部に下方に向って開口させてあるので、例えば、インクカートリッジ2をキャリッジ3に取り付ける場合には、キャリッジ3側における供給口31と導入口54に対する対応構造を簡素化された配列にすることができ、合わせてインクカートリッジ2の着脱が容易になる。そして、上記大気弁55が配置されているので、大気弁55を開閉させてインク消費に伴う外気導入が確実に行なわれて、円滑なインク供給がなされ、安定したインク吐出性能が得られる。
【0076】
上記導入口54が、装置本体1側に設けられインク消費に伴って外気を導入する空気導入部70に連通するように構成されているので、インク消費とともに空気導入部70からインク貯留部2b内に空気が導入され、供給口31から記録ヘッド10へのインク供給が円滑になされ、安定したインク吐出性能が得られる。
【0077】
インクカートリッジ2をキャリッジ3に対して一方向に移動させて装着することにより、上記供給口31から記録ヘッド10へのインク供給流路の形成と、上記空気導入部70に対する導入口54の連通とが、同時になされる。このため、一方向の最も単純なインクカートリッジ2の装着動作で、供給口31と導入口54との連通を成立させながらインクカートリッジ2の装着ができ、空気導入部70と導入口54との連通について特別な装着動作を必要としないので、簡単にインクカートリッジ2の着脱ができる。さらに、インクカートリッジ2の装着動作が一方向であるから、キャリッジ3側の供給口31や導入口54に対する構造も、例えば、インク供給針52や空気流通針66のような部品配置によって簡素化しやすくなる。
【0078】
上記大気弁55が、導入口54の近傍に配置されているため、大気弁55を動作させる空気流通針66が導入口54に挿入された段階で直ちに大気弁55を開くことができる。したがって、大気弁55の開動作が確実になされる。また、大気弁55の閉動作は導入口54の近傍でなされるので、インクカートリッジ2内のインク2cが外部に漏れ出すことが確実に防止される。すなわち、導入口54の近傍で流路が閉じられるので、インクカートリッジ2を装置本体1から外したときに、空気導入部70からインク2cが滴下したりしない。
【実施例2】
【0079】
図8は、本発明の液体噴射装置および液体噴射装置用液体タンクの第2の実施例を示す。なお、図8は、理解しやすくするために基部材71と支持部材72を、図3のように屈曲したものではなく、展開して図示してある。
【0080】
上記第1の実施例においては、各インクカートリッジ2から規制フィルタ75までの流路が、規制フィルタ75の手前で共通の空間になっているが、この第2の実施例では、各インクカートリッジ2から規制フィルタ75までの流路が独立した状態になっている。そのために、各流路に隔壁部材86が設けられ、この隔壁部材86の端面に規制フィルタ75が密着した状態で接合されている。それ以外は、上記実施例と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0081】
上記構成により、何等かの原因でインクカートリッジ2内のインクが空気流通針66に流入しても、規制フィルタ75までの流路において他のインクカートリッジ2からのインクと交じり合うことがない。インクの種類によっては、このような混色によって固化する場合があるので、このような独立した流路にしておくことにより、流路面積が小さくなったり詰まったりすることが回避できる。
【0082】
上記のように流路が独立しているので、各流路毎にその流路のインクの性状に適した規制フィルタを配置することができる。また、隔壁部材86の位置を変更して、各インクカートリッジ2に適した規制フィルタの面積を設定し、インクによって異なる蒸発速度の違いを面積の大小でできるだけ均一化することができる。さらに、各規制フィルタの面積を選定することにより、インクの消費に伴う空気の導入抵抗を各インクカートリッジ2毎に均一化することができ、各インク色において吐出特性がばらつくことがない。
【0083】
インク色毎に粘度が異なって流路抵抗に差ができる場合、上記のように各色毎に規制フィルタの面積を変えることにより、上記流路抵抗の差を補正することができる。また、例えば、ノズル列が2列で、1列がブラック、他の1列をカラーの3色で分割する場合には、ブラックのノズル数は他の3倍になり、インクの流速も3倍になる。このような場合には、ブラックのインクカートリッジ2への空気導入を、面積の大きな規制フィルタによって促進することにより、ブラックと3カラーの各インクカートリッジ2における空気導入が均衡のとれたものとなる。この場合、記録ヘッド10が取り付けられた記録装置1本体
において補正するのが効果的であり、装置本体1側に規制フィルタを配置することの有意性が向上する。
【0084】
さらに、各インクカートリッジ2から規制フィルタ75までの流路が独立していても、高価な規制フィルタ75は1部品であり、組立てコストも低減し、コスト上昇が少なくてすむ。それ以外は、上記実施例と同様の作用効果を奏する。
【実施例3】
【0085】
図9は、本発明の液体噴射装置および液体噴射装置用液体タンクの第3の実施例を示す。
【0086】
この実施例は、インク貯留部2bの内部にインクを保持するために、インク貯留部2b内に弾性フォーム材85が充填されている。上記弾性フォーム材85には、連続気泡とされた弾性材料製のスポンジ材が採用されている。それ以外は、上記各実施例と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0087】
上記構成により、弾性フォーム材85の気泡内に保持されているインク2cが消費されてゆくと、弾性フォーム材85にインクが保持されるため、インク2cの流出が防止され、空気導入部70の機能が良好に果たされる。それ以外は、上記各実施例と同様の作用効果を奏する。
【0088】
上記各実施例は、インクジェット式記録装置を対象にしたものであるが、本発明によってえられたインクカートリッジおよびそれを装着した液体噴射装置は、インクジェット式記録装置用のインクだけを対象にするのではなく、グルー,マニキュア,導電性液体(液体金属)等を噴射することができる。さらに、上記実施例では、液体の一つであるインクを用いたインクジェット式記録装置について説明したが、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド,液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド,有機ELディスプレー,FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド,バイオチップ製造に用いられる生体有機噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッド全般に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】インクジェット式記録装置全体を示す斜視図である。
【図2】記録ヘッドの断面図である。
【図3】インクカートリッジとキャリッジの断面図である。
【図4】図3の(4)−(4)断面図であり、圧力制御弁を示している。
【図5】図3の(5)矢視図であり、空気導入部を示している。
【図6】図3の(6)−(6)断面図である。
【図7】抵抗流路の変形例を示す正面図である。
【図8】他の実施例を示す断面図である。
【図9】インクカートリッジの変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 インクジェット式記録装置,1a 制御装置,2 インクカートリッジ,2a カートリッジケース,2b インク貯留部,2c インク,3 キャリッジ,4 タイミングベルト,5 ステッピングモータ,6 ガイドバー,7 記録紙,8 吸引キャップ,9 ワイパーブレード,9a 廃インク貯留部,10 記録ヘッド,11 ノズル開口,11a ノズル列,12 圧力発生室,13 流路ユニット,14 圧電振動子,15 ヘッドケース,15a フランジ,16 ノズルプレート,16a ノズル形成面,17 インク貯留室,18 インク供給路,19 圧力発生室形成板,20 振動板,20a 島部,21 基台,22 フレキシブル回路板,23 環状突起,24 ヘッド流路,25 制御基板,26 ヘッドカバー,27 先端面,28 圧力制御弁,29 流出口,30 逆止弁,30a ターミナル,31 供給口,32 蓋板,33 凹部,34 蓋部材,35 弁室,36 底板,37 弁,38 着座部,39 弁膜,40 圧縮コイルスプリング,41 通口,42 通口,43 通口,44 通溝,45 フィルム材,46 圧縮コイルスプリング,47 弁室,48 弁,49 着座面,50 通口,51 流通溝,52 インク供給針,53 シールゴム,54 導入口,55 大気弁,56 空気流路,57 空気穴,60 弁室,61 弁,62 着座面,63 圧縮コイルスプリング,64 流通溝,65 膜部材,66 空気流通針,67 フィルタ,68 通路,70 空気導入部,71 基部材,72 支持部材,73 フィルタ室,74 段部,75 規制フィルタ,76 通口,77 通路,77a 共通路,77b 連通路,78 抵抗流路,79 連通口,80 開放口,81 フィルム材,82 フィルム材,83 焼結合金,84 ウールブロック,85 弾性フォーム材,86 隔壁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に装着された液体タンクの液体を液体噴射ユニットから噴射する液体噴射装置であって、上記液体タンクの液体貯留部に対して液体の消費に伴って外気を導入する空気導入部が装置本体側に設けられ、上記空気導入部は、複数の液体タンクに対して共通するよう各液体タンクの液体貯留部に連通するように構成されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
上記空気導入部は1つである請求項1記載の液体噴射装置。
【請求項3】
上記空気導入部は、上記液体タンクの液体貯留部を外気に連通させる連通路に、液体の消費に伴って液体貯留部内に導入される空気の通過は許容し、上記導入される空気とは逆方向の液体の通過を阻止する規制フィルタを備えている請求項1または2記載の液体噴射装置。
【請求項4】
上記空気導入部は、上記液体タンクの液体貯留部を外気に連通させる連通路に、気体の流路抵抗が所定値に設定された抵抗流路を備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
上記液体タンクの液体貯留部に、上記液体貯留部内に液体を保持するための弾性フォーム材を充填した請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
上記液体タンクの液体貯留部よりも下流側に、液体の消費に伴って動作することによって、液体の供給を選択的に許容する圧力制御弁が配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
上記空気導入部が、液体タンクが装着される装着部材に形成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
上記装着部材は、略水平方向に配置された基部材とこの基部材から略垂直に起立している支持部材を含んで構成され、上記基部材に、液体タンクの液体貯留部を液体噴射ユニットに連通させる第1接続部材と、液体貯留部を上記空気導入部に連通させる第2接続部材が配置されている請求項7記載の液体噴射装置。
【請求項9】
上記第1接続部材と第2接続部材はそれぞれ、液体タンクを装着部材に装着する動作により液体タンクに相対的に差し込まれる液体供給針と空気流通針である請求項8記載の液体噴射装置。
【請求項10】
上記液体タンクには、空気導入部との接続箇所に、液体タンクが上記装置本体に装着されているときには開き、液体タンクが装置本体から外されたときに閉じる大気弁が設けられている請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
液体貯留部に貯留されている液体を液体噴射ユニットへ供給する供給口と、液体の消費に伴って液体貯留部に外気を導入する導入口とを備え、上記供給口と導入口がそれぞれ液体タンクの下部に下方に向って開口した状態で形成され、上記導入口への空気導入時に開状態になる大気弁が配置されていることを特徴とする液体噴射装置用液体タンク。
【請求項12】
上記導入口は、装置本体側に設けられ液体の消費に伴って外気を導入する空気導入部に連通するものである請求項11記載の液体噴射装置用液体タンク。
【請求項13】
液体タンクを装置本体に対して一方向に移動させて装着することにより、上記供給口から液体噴射ユニットへの液体供給流路の形成と、上記空気導入部に対する導入口の連通とが、同時になされるように構成されている請求項12記載の液体噴射装置用液体タンク。
【請求項14】
上記大気弁は、導入口の近傍に配置されている請求項11〜13のいずれか一項に記載の液体噴射装置用液体タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−35795(P2006−35795A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222993(P2004−222993)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】