説明

液体噴射装置に装着される液体収容容器

【課題】インクカートリッジ内でのインク成分の沈降を回避しながら、印刷時に大きな騒音を発生することがなく、且つ、簡単に製造することが可能なインクカートリッジを提供する。
【解決手段】液体収容室102から突設された支持部材108を撹拌部材107の貫通穴107hに挿入することで撹拌部材を揺動可能に支持しておき、貫通穴には、貫通穴が支持部材と当接する部分にインサート成形によって緩衝部材を組み付ける。こうすれば、支持部材を貫通穴に挿入するだけできわめて簡単に撹拌部材を組み付けることができる。また、貫通穴に緩衝部材を設けることで、インク撹拌中に生ずる騒音を大幅に抑制することができる。更に、貫通穴の緩衝部材はインサート成形によって組み付けられるので、組み付けに際して新たな手間が発生することもなく、インクカートリッジの製造を容易とすることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの液体を噴射する液体噴射装置に適用されて、内部に液体を収容
する液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷媒体上にインクを噴射して画像を印刷する印刷装置が広く使用されている。この印
刷装置では、噴射ヘッドが設けられたキャリッジを印刷媒体上で往復動させながら、噴射
ヘッドからインクを噴射することによって画像を印刷する。また、噴射されるインクは、
インクカートリッジと呼ばれる専用の収容容器に収納されて、キャリッジに搭載されてい
る。
【0003】
インクカートリッジに収納するインク中に、溶媒よりも比重の大きなインク成分(顔料
など)が含まれる場合、こうしたインク成分が時間の経過とともに重力によって沈降する
。そこで、インクカートリッジが往復動する動きに伴って揺動する撹拌部材を、インクカ
ートリッジのインク収容室内に搭載しておくことによってインク成分の沈降を防止する技
術が提案されている(特許文献1)。印刷装置では、インクカートリッジを往復動させな
がら画像を印刷するので、このような撹拌部材をインクカートリッジに内蔵しておけば、
その動きによってインク成分を撹拌し、沈降を回避することが可能である(特許文献1)

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1の技術には、以下の二つの問題が存在する。先ず。インク
カートリッジ内で撹拌部材が揺動することで、印刷時に騒音が発生するという問題がある
。また、カートリッジ内に撹拌部材を取り付けなければならないので、インクカートリッ
ジを製造する際の手間が増えてしまうという問題がある。従って、こうした二つの問題の
発生を引き起こすことなく、インクカートリッジ内でのインク成分の沈降を回避すること
が要請される。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、
インクカートリッジ内でのインク成分の沈降を回避しながら、印刷時に大きな騒音を発生
することがなく、且つ、簡単に製造することが可能なインクカートリッジの提供を目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明のインクカートリッジは次の
構成を採用した。すなわち、
噴射ヘッドが設けられたキャリッジを往復動させながら液体を噴射する液体噴射装置の
該キャリッジに装着されて、該噴射ヘッドに液体を供給する液体収容容器であって、
前記液体を内部に収容する液体収容室と、
前記液体収容室内の内壁から突設された支持部材と、
前記液体収容室内に設けられて、貫通穴が形成された板状の撹拌部材と
を備え、
前記撹拌部材は、前記支持部材を前記貫通穴に挿入することによって支持され、且つ、
該支持部材に対する該貫通穴の大きさが、前記キャリッジの往復動によって該撹拌部材が
揺動可能な大きさに設定されており、
前記貫通穴は、前記支持部材と当接する部分に、当接時の衝撃を緩衝する緩衝部材がイ
ンサート成形によって組み付けられていることを要旨とする。
【0008】
このような本発明の液体収容容器においては、液体収容室の内壁から突設された支持部
材を撹拌部材の貫通穴に挿入することで撹拌部材が支持されており、液体収容容器をキャ
リッジに装着すると、キャリッジの往復動によって液体収容室内の撹拌部材が揺動する。
また、本発明の撹拌部材の貫通穴には、貫通穴が支持部材と当接する部分にインサート成
形によって緩衝部材が組み付けられている。
【0009】
撹拌部材を組み付ける際には、液体収容室に突設された支持部材を貫通穴に挿入するだ
けで組み付けることができる。しかも、貫通穴の大きさは支持部材よりも大きく形成され
ているので、きわめて簡単に組み付けることができる。また、貫通穴には、支持部材と当
接する部分に緩衝部材が設けられているので、この部分で騒音が発生することもない。そ
して、詳細には後述するが、撹拌部材で発生する騒音は、撹拌部材が貫通穴の部分で支持
部材と当接することに起因して生じる騒音が、実際には大きな割合を占めている。従って
、貫通穴に緩衝部材を設けることで、撹拌部材で生じる騒音を大幅に抑制することができ
る。加えて、緩衝部材は、撹拌部材の製造時に、インサート成形によって撹拌部材と一体
に組み付けられるので、たとえば液体収容容器の製造時に、撹拌部材に緩衝部材を組み付
けるなどの新たな手間が発生することもない。その結果、液体の成分の沈降を撹拌部材に
よって抑制しながら、騒音が発生することもなく、製造も容易な液体容器を提供すること
が可能となる。
【0010】
また、上述した本発明の液体収容容器の撹拌部材には、撹拌部材が揺動した時に液体収
容室と当接する箇所にも、インサート成形によって緩衝部材を組み付けることとしてもよ
い。
【0011】
こうすれば、撹拌部材が貫通穴の部分で支持部材と当接することによって生じる騒音を
抑制するとともに、撹拌部材が揺動した時に液体収容室と当接することで生じる騒音も抑
制することができるので、撹拌中の騒音をより一層小さくすることが可能である。また、
緩衝部材はインサート成形によって撹拌部材に組み付けられるので、緩衝部材の組み付け
時に緩衝部材を取り付けるなどの手間がかかることもない。
【0012】
また、上述した本発明の液体収容容器においては、撹拌部材に対して撹拌部材が液体収
容室と当接する箇所にインサート成形によって緩衝部材を設ける際に、撹拌部材の外縁よ
りも内側に緩衝部材を設けることとしてもよい。
【0013】
詳細には後述するが、インサート成形によって撹拌部材の外縁部に緩衝部材を組み付け
る場合、撹拌部材の外周部と、金型との間に隙間が生ずることがあり、この状態で緩衝部
材の材料(ゴムなど)を金型に注入すると、金型の隙間から緩衝部材の材料が漏れ出て緩
衝部材を上手く成形することができない場合がある。一方で、インサート成形によって撹
拌部材の外縁よりも内側に緩衝部材を組み付けることとすれば、金型を撹拌部材に押し付
け、密着させることで金型と撹拌部材との間の空間(すなわち緩衝部材を注入する空間)
を密閉することができる。その結果、金型から緩衝部材の材料が漏れ出ることを防ぐこと
ができるので、緩衝部材の成形不良を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インクジェットプリンターのキャリッジにインクカートリッジが搭載された状態を例示した斜視図である。
【図2】インクカートリッジの外観形状を示した斜視図である。
【図3】インクカートリッジの内部構造を示した平面図である。
【図4】インク室内に設けられたインクの撹拌機構を示した説明図である。
【図5】撹拌板の貫通穴に緩衝部材を設けることでインク撹拌中の騒音が効果的に抑制される理由を示した説明図である。
【図6】変形例の撹拌板の構成を示した説明図である。
【図7】緩衝部材をインサート成形によって組み付ける場合に、撹拌板の外縁部よりも内側に組み付けることで緩衝部材の成形不良が防がれる理由を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.本実施例のインクカートリッジの構造:
B.インク撹拌中の騒音が抑制される理由:
C.変形例:
【0016】
A.本実施例のインクカートリッジの構造 :
図1は、インクジェットプリンター1のキャリッジ10にインクカートリッジ100が
搭載された状態を例示した説明図である。図示されるように、インクジェットプリンター
1には、印刷媒体2の上で往復動するキャリッジ10が設けられており、インクカートリ
ッジ100は、このキャリッジ10に搭載されている。キャリッジ10の底面側(印刷媒
体2に向き合う側)には、インクを噴射する噴射ヘッド20が、インクカートリッジ10
0毎に設けられており、インクカートリッジ100内に収容されているインクが噴射ヘッ
ド20に供給されて、噴射ヘッド20から印刷媒体2に向けて噴射される。尚、図示した
インクジェットプリンター1は、シアン色のインク(Cインク)、マゼンタ色のインク(
Mインク)、イエロー色のインク(Yインク)、および黒色のインク(Kインク)を用い
て画像を印刷しており、これに対応してキャリッジ10には、Cインクを収容したインク
カートリッジ100、Mインクを収容したインクカートリッジ100、Yインクを収容し
たインクカートリッジ100、Kインクを収容したインクカートリッジ100の4つのイ
ンクカートリッジ100が搭載されている。
【0017】
図2は、キャリッジ10に搭載されているインクカートリッジ100の外観形状を示し
た斜視図である。図示されているように、インクカートリッジ100は、略直方体形状を
しており、インクカートリッジ100の底面には、キャリッジ10の噴射ヘッド20に向
けてインクを供給するためのインク供給口105が設けられている。尚、以下の説明にお
いて、図2の紙面上で右側のインクカートリッジ100の側面をインクカートリッジ10
0の表面と呼び、左側の側面をインクカートリッジ100の裏面と呼ぶことがあるものと
する。
【0018】
図3は、インクカートリッジ100の内部構造を示した平面図である。図3には、図2
に示したインクカートリッジ100のAA断面を矢印の方向からみたときのインクカート
リッジ100の内部構造が示されている。
【0019】
図示されるように、インクカートリッジ100の内部は、縦横に設けられた複数のリブ
によって大きくは4つの部屋に区分けされている。すなわち、紙面上で右側には、第1イ
ンク室102a(液体収容室)が設けられており、その左上方には、第2インク室102
b(液体収容室)が設けられている。第2インク室102bに対して紙面上で左下方には
、細かい斜線を付して示したセンサー室103が設けられており、このセンサー室103
には、図示しないインク検出センサーが設けられている。更に、センサー室103の右斜
め上方には、バッファー室104が設けられている。そして、バッファー室104は、小
さな丸い連通孔104hによって、インクカートリッジ100の裏面側に設けられた図示
しない圧力調整室に連通している。圧力調整室には膜弁やバネなどが内蔵されており、キ
ャリッジ10に供給されるインクの圧力を調整する機能を有している。
【0020】
また、第1インク室102aと第2インク室102bとはインクカートリッジ100の
裏面側で通路によって接続されており、第2インク室102bとセンサー室103とは迷
路状の通路によって接続されており、センサー室103とバッファー室104とはインク
カートリッジ100の裏面側で通路によって接続されている。従って、噴射ヘッド20か
らインクを噴射する際には、第1インク室102aから、第2インク室102b、センサ
ー室103、バッファー室104と経由して、連通孔104hから圧力調整室(図示せず
)に流入した後、インク供給口105から噴射ヘッド20に供給されるようになっている

【0021】
尚、本実施例のインクカートリッジ100では、第1インク室102aと第2インク室
102bの内部に、各インク室内のインクを撹拌するためのステンレス製の撹拌板107
(撹拌部材)がそれぞれ設けられている。撹拌板107を含むインクの撹拌機構の詳細に
ついては後述する。
【0022】
また、図3に示されるように、第1インク室102aに対して紙面上で左側下方には、
空気室106が設けられている。空気室106には連通孔106hが設けられており、連
通孔106hはインクカートリッジ100の裏面側に設けられた図示しない通路を経由し
て大気開放孔に繋がっている。また、この空気室106は、インクカートリッジ100の
裏面側の通路によって第1インク室102にも繋がっている。このような空気室106は
、周囲の温度変化によってインクカートリッジ100内の空気が膨張したりインクカート
リッジ100の姿勢が変化するなどして、第1インク室102aから大気開放孔に向かっ
てインクが逆流した場合に、内部にインクをトラップすることでインクが外部に漏れ出る
ことを防いでいる。
【0023】
図4は、本実施例のインクカートリッジ100に設けられたインクの撹拌機構を示した
説明図である。図4には、図2に示したインクカートリッジ100の第2インク室102
bのBB断面を矢印の方向から見たときの様子が示されている。尚、前述したように、本
実施例のインクカートリッジ100には、第1インク室102aにもインクの撹拌機構が
設けられているが(図3を参照)、何れの撹拌機構も構成は同じなので、以下では第2イ
ンク室102bのインクの撹拌機構を例にとって説明する。また、以降の説明では、第2
インク室102bのことを単にインク室102と呼ぶこととする。
【0024】
図示されているように、インク室102内に収容された撹拌板107には、一端側に貫
通穴107hが設けられており、貫通穴107hの内縁部にはゴム製の緩衝部材107c
がインサート成形によって組み付けられている。そして、貫通穴107hをインク室10
2の内壁から突設された突部108(支持部材)に挿入することにより、撹拌板107が
インク室102内に支持される。
【0025】
このようなインクの撹拌機構を備えたインクカートリッジ100をキャリッジ10に搭
載すると、キャリッジ10の往復動に伴って、インクカートリッジ100が側面の方向(
図3に矢印で示した方向)に往復動する。ここで、前述したように、撹拌板107はイン
クよりも十分に大きな比重の材料(本実施例ではステンレス)で構成されているので、撹
拌板107は、インク室102内のインクを押しのけながらインクカートリッジ100の
動きとともに揺動する。その結果、インク室102の紙面下方(すなわち、インクカート
リッジ100をキャリッジ10に装着した状態での重力方向)に沈降したインクの成分を
巻きあげるようにして撹拌することができ、インク室102内のインクの濃度を均一に保
つことが可能となる。
【0026】
また、図4に示されるように、本実施例の撹拌板107は、貫通穴107hを突部10
8に挿入するだけで組み付けることができるようになっており、しかも貫通穴107hの
径の大きさは突部108の径よりも大きく形成されている。従って、インク室102の突
部108に対して撹拌板107を極めて簡単に組み付けることが可能となっている。
【0027】
もちろん、このような構造では、インクカートリッジ100内で揺動する撹拌板107
が、インクカートリッジ100の内壁に衝突して騒音を生じさせることが懸念される。し
かし、本実施例のインクカートリッジ100では、前述したように、撹拌板107の貫通
穴107hの内縁部に緩衝部材107cが設けられており(図4を参照)、これによりイ
ンクの撹拌によって生ずる騒音を抑制することが可能となった。すなわち、撹拌板107
が揺動した時にインクカートリッジ100の内壁に衝突するのは撹拌板107の先端付近
であると予想されるが、実際には撹拌板107の先端付近よりも貫通穴107hの内縁部
に緩衝部材107cを設けることで効果的に騒音を抑制可能となる。以下ではこの点につ
いて説明する。
【0028】
B.インク撹拌中の騒音が抑制される理由 :
図5は、撹拌板107の貫通穴107hの内縁部に緩衝部材107cを設けることでイ
ンク撹拌中の騒音が効果的に抑制される理由を示した説明図である。図5には、説明の前
提として、インク撹拌中に音を発生させる撹拌板107の動きが示されている。
【0029】
先ず、図5(a)および図5(b)に示されるように、撹拌板107がインクを撹拌す
る方向に動く場合、撹拌板107の先端部分がインク室102の内壁と衝突して衝突音の
発生が懸念される。しかし、実際にはこの様にして生じる騒音はそれほど大きなものでは
ない。一方、撹拌板107の先端部分がインク室102の内壁と衝突すると、撹拌板10
7が支持構造である突部108に対して振動し、その振動時に撹拌板107の穴の内縁部
と突部108が衝突することにより衝突音が発生する。そして、この衝突音がインク撹拌
時に発生する騒音の主たるものである。図5(c)は、撹拌板107の先端部分がインク
室102の内壁と衝突してことによって、撹拌板107と支持構造である突部108に対
して振動する様子を示している。
【0030】
以上のように、インクの撹拌中に生ずる騒音の主な原因は、撹拌板107がインク室1
02と衝突した際に撹拌板107が振動し、この振動時に、貫通穴107hの内縁部と突
部108とが衝突する時の衝突音であると考えられる。従って、貫通穴107hの内縁部
に緩衝部材107cを設けておけば、貫通穴107hと突部108との衝突時の衝撃を抑
えることで、主な騒音(貫通穴107hと突部108との衝突音)を小さくすることがで
きる。その結果、インクの撹拌中に生ずる騒音を効果的に抑制することが可能である。
【0031】
また、前述したように、本実施例では、緩衝部材107cがインサート成形によって撹
拌板107と一体に組み付けられるので(図4を参照)、騒音防止の観点から緩衝部材1
07cを設けることとしても、この事によって製造上の新たな手間が生ずることはない。
その結果、インク撹拌中の騒音を抑制可能としながら、インクカートリッジ100の製造
を容易とすることが可能である。
【0032】
C.変形例 :
上述した実施例では、撹拌板107の貫通穴107hと突部108との間に緩衝部材1
07cを設けるものと説明した。ここで、以下の位置にも緩衝部材を設けることとすれば
、インクの撹拌中に生ずる騒音をさらに抑制することが可能である。尚、以下に説明する
変形例において、上述した実施例と同様の構成部分については、実施例と同様の符号を付
し、その詳細な説明を省略する。
【0033】
図6は、変形例のインクカートリッジ100のインク室102に設けられる撹拌板10
7の構成を示した説明図である。図6(a)に示した撹拌板107には、インサート成形
によって、貫通穴107hの内縁部に緩衝部材107cが組み付けられるとともに、撹拌
板107の先端部(揺動時に撹拌板107がインク室102の内壁と衝突する位置)にも
緩衝部材107dが組み付けられている。
【0034】
このような撹拌板107をインク室102に設けておけば、図6(b)に示されるよう
に、撹拌板107の先端がインク室102の内壁と衝突したときの衝突音と、衝突による
撹拌板107の振動を緩衝部材107dによって抑制することができる。従って、上述し
たように、緩衝部材107cによって撹拌板107の貫通穴107hの位置での騒音が抑
制されることと相まって、インク撹拌中の騒音をさらに抑制することが可能となる。また
、撹拌板107の先端の緩衝部材107dは、貫通穴107hの内縁部の緩衝部材107
cとともにインサート成形によって撹拌板107と一体に組み付けられるので、緩衝部材
107dを追加してもインクカートリッジ100の組み立てが複雑となることはない。
【0035】
更に、図6に示した撹拌板107では、撹拌板107の先端の緩衝部材107dが撹拌
板107の外縁部よりも内側に設けられており、これによりインサート成形時に緩衝部材
107dの成形不良が生ずることを防いでいる。以下ではこの点について説明する。
【0036】
図7は、緩衝部材107dをインサート成形によって組み付ける場合に、撹拌板107
の外縁部よりも内側に組み付けることで緩衝部材107dの成形不良が防止される理由を
示した説明図である。撹拌板107は、製造バラつきによって板の厚みなどに公差(バラ
つき)が生ずることがある。従って、図7(a)に示されるように、インサート成形によ
って緩衝部材107dを撹拌板107の外縁部に設ける場合、撹拌板107の厚みの公差
によって金型同士が上手く密着しない部分が生じ、これによりゴムを注入する空間の一部
に隙間が生ずる場合がある。このような場合には、金型を撹拌板107に密着させるよう
に金型をセット(押し付け)しても、隙間の発生を抑制することはできない。そして、こ
の状態でゴムを注入すると、金型の隙間からゴムが漏れ出ることで緩衝部材107dを所
望に形状に成形することができなくなってしまう。
【0037】
一方で、図7(b)に示されるように、インサート成形によって緩衝部材107dを撹
拌板107の外縁部よりも内側に設けることとすれば、撹拌板107の厚みに公差(バラ
つき)があった場合でも、金型の凹部を撹拌板107に密着させる(押し付ける)ように
金型をセットすることで、隙間の発生を抑制することができる。その結果、金型からのゴ
ムの漏れを防ぐことで、緩衝部材107dの成形不良を防止することが可能となる。
【0038】
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるもので
はなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例
えば、上述した実施例および変形例においては、緩衝部材にはゴム製の材料を用いるもの
と説明したが、衝撃を吸収可能な材質であれば他の材料を用いても構わない。
【符号の説明】
【0039】
1…インクジェットプリンター、 2…印刷媒体、 10…キャリッジ、
20…噴射ヘッド、 100…インクカートリッジ、 102…インク室、
103…センサー室、 104…バッファー室、 105…インク供給口、
106…空気室、 107…撹拌板、 107c…緩衝部材、
107d…緩衝部材、 107h…貫通穴、 108…突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ヘッドが設けられたキャリッジを往復動させながら液体を噴射する液体噴射装置の
該キャリッジに装着されて、該噴射ヘッドに液体を供給する液体収容容器であって、
前記液体を内部に収容する液体収容室と、
前記液体収容室内の内壁から突設された支持部材と、
前記液体収容室内に設けられて、貫通穴が形成された板状の撹拌部材と
を備え、
前記撹拌部材は、前記支持部材を前記貫通穴に挿入することによって支持され、且つ、
該支持部材に対する該貫通穴の大きさが、前記キャリッジの往復動によって該撹拌部材が
揺動可能な大きさに設定されており、
前記貫通穴は、前記支持部材と当接する部分に、当接時の衝撃を緩衝する緩衝部材がイ
ンサート成形によって組み付けられている液体収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容容器であって、
前記撹拌部材には、該撹拌部材が揺動したときに前記液体収容室と当接する箇所にも、
前記緩衝部材がインサート成形によって組み付けられている液体収容容器。
【請求項3】
請求項2に記載の液体収容容器であって、
前記撹拌部材が前記液体収容室と当接する箇所に設けられた前記緩衝部材は、該緩衝部
材の外縁よりも内側に設けられている液体収容容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−158007(P2012−158007A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17646(P2011−17646)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】