液体噴射装置及び液体噴射型印刷装置
【課題】構成が容易で且つ所望する駆動信号を得ることが可能な電力増幅装置を提供する。
【解決手段】駆動波形信号WCOMを変調回路26でパルス変調し、その変調信号をデジタル電力増幅回路28で電力増幅し、その電力増幅変調信号を平滑フィルタ29で平滑化してアクチュエータ22に駆動信号COMとして供給する場合に、変調回路26の前段に、少なくとも平滑フィルタ29及びアクチュエータ22の静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を補正する逆フィルタ回路24を備え、その逆フィルタ回路24に設けられた第1スイッチ35及び第2スイッチ36によって遅延器31の接続状態を切替えて、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えることにより、逆フィルタ回路の規模を小さくする。
【解決手段】駆動波形信号WCOMを変調回路26でパルス変調し、その変調信号をデジタル電力増幅回路28で電力増幅し、その電力増幅変調信号を平滑フィルタ29で平滑化してアクチュエータ22に駆動信号COMとして供給する場合に、変調回路26の前段に、少なくとも平滑フィルタ29及びアクチュエータ22の静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を補正する逆フィルタ回路24を備え、その逆フィルタ回路24に設けられた第1スイッチ35及び第2スイッチ36によって遅延器31の接続状態を切替えて、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えることにより、逆フィルタ回路の規模を小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに駆動信号を印加して液体を噴射する液体噴射装置に関し、例えば微小な液体を液体噴射ヘッドのノズルから噴射して、微粒子(ドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像等を印刷するようにした液体噴射型印刷装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
プッシュプル接続されたトランジスタ対をリニア駆動するアナログ電力増幅回路に比べて、プッシュプル接続されたスイッチング素子をスイッチ動作、つまりデジタル駆動させて電力増幅するデジタル電力増幅回路、所謂D級アンプは、効率に優れ、広い範囲で使用されている。このデジタル電力増幅回路を用いて、例えば液体噴射型印刷装置のノズルから液体を噴射するためのアクチュエータに駆動信号を出力する場合、駆動信号の基準となる駆動波形信号を変調回路で変調信号にパルス変調し、その変調信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅し、その電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタで平滑化して、駆動信号として出力する。平滑フィルタは、パルス変調の周波数成分を減衰する。その際、駆動するアクチュエータの数が変わると、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性が変化し、所望する駆動信号が得られない場合がある。そこで、本出願人は、下記特許文献1に記載されるように、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所望する駆動信号を得ることができる逆フィルタを変調回路の前段に設けた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報WO2007/083669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載される液体噴射装置では、伝達特性の異なる逆フィルタを複数設け、駆動するアクチュエータの数に応じて、それら伝達特性の異なる複数の逆フィルタを切替えるようにしているため、逆フィルタの数だけ回路が必要となり、逆フィルタの回路規模が大きくなってしまう。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、構成が容易で且つ所望する駆動信号を得ることが可能な液体噴射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記諸問題を解決するため、本発明の液体噴射装置は、アクチュエータの駆動信号の基準となる駆動波形信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、前記電力増幅変調信号を平滑化して前記駆動信号とする平滑フィルタと、前記変調回路の前段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量の周波数特性が、駆動する前記アクチュエータの数によって変化しても所望する駆動信号を得ることができる逆フィルタ回路とを備え、前記逆フィルタ回路は、入力信号の位相を遅延させる遅延器と、前記駆動波形信号から前記遅延器の出力信号を減じる減算器と、前記減算器の出力信号を所定の倍率で増幅する増幅器と、前記増幅器の出力信号と他の入力信号とを加算する加算器と、前記駆動波形信号及び前記加算器の出力信号を切替えて前記遅延器の入力信号とする第1スイッチと、前記駆動波形信号及び前記遅延器の出力信号を切替えて前記加算器の前記他の入力信号とする第2スイッチと、前記第1スイッチ及び第2スイッチによって、前記遅延器の接続状態を切替えて、前記逆フィルタ回路の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性との何れかに切替えるスイッチ接続制御部とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
この液体噴射装置によれば、第1スイッチ及び第2スイッチによって遅延器の接続状態を切替えて、逆フィルタ回路の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに切替える構成としたため、逆フィルタ回路の規模を小さくすることができ、これにより構成が容易で且つ所望する駆動信号を得ることができる。
更に、この液体噴射装置によれば、第1スイッチを用いて遅延器の入力を切替え、第2スイッチを用いて加算器の入力を切替える構成としたため、逆フィルタ回路の伝達特性を簡易な構成で位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えることができる。
【0007】
また、前記スイッチ接続制御部は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数以上の場合には、前記第1スイッチを前記駆動波形信号に接続すると共に、前記第2スイッチを前記駆動波形信号に接続し、駆動する前記アクチュエータの数が所定数未満の場合には、前記第1スイッチを加算器の出力信号に接続すると共に、前記第2スイッチを前記遅延器の出力信号に接続することを特徴とするものである。
この液体噴射装置によれば、駆動するアクチュエータの数に応じて逆フィルタ回路の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えることができる。
【0008】
また、前記スイッチ接続制御部は、駆動される前記アクチュエータの数に応じて前記増幅器の倍率を調整することを特徴とするものである。
この液体噴射装置によれば、駆動信号の波形精度をより一層高めることが可能となる。
また、駆動波形信号に対して所望のフィルタ処理を行う第1フィルタ回路と、前記フィルタ処理された信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、前記電力増幅変調信号を平滑化して駆動信号とする第2フィルタ回路と、を備え、前記第1フィルタ回路は、入力信号の位相を遅延させる遅延器と、前記駆動波形信号から前記遅延器の出力信号を減じる減算器と、前記減算器の出力信号を所定の倍率で増幅する増幅器と、前記増幅器の出力信号に対して、前記駆動波形信号又は前記遅延器の出力信号を加算する加算器と、前記遅延器に対して、前記駆動波形信号又は前記加算器の出力信号を入力させる第1スイッチと、前記加算器に対して、前記駆動波形信号又は前記遅延器の出力信号を入力させる第2スイッチと、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記第1フィルタ回路は、駆動するアクチュエータの数が所定数以上の場合には、前記第1スイッチを用いて前記遅延器に対して前記駆動波形信号を入力させると共に、前記第2スイッチを用いて前記加算器に対して前記駆動波形信号を入力させることを特徴とするものである。
また、前記第1フィルタ回路は、駆動するアクチュエータの数が所定数未満の場合には、前記第1のスイッチを用いて前記遅延器に対して前記加算器の出力信号を入力させると共に、前記第2スイッチを用いて前記加算器に対して前記遅延器の出力信号を入力させることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記所望のフィルタ処理は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数以上の場合には、所定の高周波数帯域を強調するフィルタ処理であることを特徴とするものである。
また、前記所望のフィルタ処理は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数未満の場合には、所定の高周波数帯域を減衰させるフィルタ処理であることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置の一実施形態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1の液体噴射型印刷装置に用いられる液体噴射ヘッド近傍の平面図である。
【図3】図1の液体噴射型印刷装置の制御装置のブロック図である。
【図4】各液体噴射ヘッド内のアクチュエータを駆動する駆動信号の説明図である。
【図5】スイッチングコントローラのブロック図である。
【図6】アクチュエータの駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図7】図6の逆フィルタ回路のブロック図である。
【図8】図6のデジタル電力増幅回路のブロック図である。
【図9】図6の平滑フィルタのブロック図である。
【図10】平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性の説明図である。
【図11】逆フィルタによって変化する周波数特性の説明図である。
【図12】図7の逆フィルタ回路におけるスイッチ切替えの説明図である。
【図13】図12aの逆フィルタの周波数特性の説明図である。
【図14】図12bの逆フィルタの周波数特性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の液体噴射装置の一実施形態として、液体噴射型印刷装置に用いられたものについて説明する。
図1は、本実施形態の液体噴射型印刷装置の概略構成図であり、図1において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型印刷装置である。
【0013】
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数の液体噴射ヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート11に固定されている。各液体噴射ヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、噴射する液体の色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全ての液体噴射ヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。印刷媒体1は、これらの液体噴射ヘッド2のノズル面の下方を通過するときに、ノズル面に形成されている多数のノズルから液体が噴射され、印刷が行われる。
【0014】
液体噴射ヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が、図示しない液体タンクから液体供給チューブを介して供給される。そして、液体噴射ヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを形成する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。
【0015】
液体噴射ヘッド2のノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、アクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液体がノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液体の噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。
【0016】
液体噴射ヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラ8には図示しない電動モータが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラ5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モータによって駆動ローラ8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、液体噴射ヘッド2から液体を噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダなどで構成される印刷基準信号出力装置が取付けられている。この印刷基準信号出力装置は、搬送ベルト6とそれに吸着されて搬送される印刷媒体1とが同期して移動されることに着目し、印刷媒体1が搬送経路中の所定位置を通過した後は、搬送ベルト6の移動に伴って要求される印刷解像度相当のパルス信号を出力し、このパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をアクチュエータ22に出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色の液体を噴射し、そのドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
【0017】
本実施形態の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置内には、液体噴射型印刷装置を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、図3に示すように、ホストコンピュータ60から入力された印刷データを読込むための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行するマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ5に接続されている給紙ローラモータ17を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、液体噴射ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記駆動ローラ8に接続されている電動モータ7を駆動制御する電動モータドライバ66と、給紙ローラモータドライバ63、ヘッドドライバ65、電動モータドライバ66と給紙ローラモータ17、液体噴射ヘッド2、電動モータ7とを接続するインタフェース67とを備えて構成される。
【0018】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データの印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、入力インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルから液体を噴射するか或いはどの程度の液体を噴射するかというノズル選択データ(駆動パルス選択データ)を算出し、この印刷データや駆動パルス選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、給紙ローラモータドライバ63、ヘッドドライバ65、電動モータドライバ66に駆動信号及び制御信号を出力する。これらの駆動信号及び制御信号により、給紙ローラモータ17、電動モータ7、液体噴射ヘッド2内のアクチュエータ22などが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0019】
図4には、本実施形態の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置の制御装置から液体噴射ヘッド2に供給され、圧電素子からなるアクチュエータ22を駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電位を中心に電位が変化する信号とした。この駆動信号COMは、アクチュエータ22を駆動して液体を噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の噴射面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の噴射面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液体がノズルから噴射される。
【0020】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液体の噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータ22に供給し、液体を噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータ22に供給し、液体を複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液体が乾かないうちに複数の液体を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液体を噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液体を噴射せずに、ノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0021】
液体噴射ヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて噴射するノズルを選択すると共に圧電素子などのアクチュエータ22の駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動パルス選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動パルス選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMと液体噴射ヘッド2のアクチュエータ22とを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動パルス選択データSI&SPをシリアル信号として液体噴射ヘッド2に送信するためのクロック信号SCKが入力されている。なお、これ以後、アクチュエータ22を駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
【0022】
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をアクチュエータ22に供給するために液体噴射ヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラは、液体を噴射させるノズルに対応した圧電素子などのアクチュエータ22を指定するための駆動パルス選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換して選択スイッチ201に供給することにより、駆動信号COMをピエゾ素子などのアクチュエータ22に接続するレベルシフタ213を備えて構成されている。
【0023】
シフトレジスタ211には、駆動パルス選択データ信号SI&SPが順次入力されると共に、クロック信号SCKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動パルス選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられる圧電素子などのアクチュエータ22は駆動パルス選択データSI&SPの接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、シフトレジスタ211の駆動パルス選択データSI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印刷情報をシフトレジスタ211に入力し、液体の噴射タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのアクチュエータ22のグランド端である。また、この選択スイッチ201により、圧電素子などのアクチュエータ22を駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後も、当該アクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
【0024】
図6には、アクチュエータ22の駆動回路の概略構成を示す。このアクチュエータ駆動回路は、前記制御回路内の制御部62及びヘッドドライバ65内に構築されている。本実施形態の駆動回路は、予め記憶されている駆動波形データDWCOMに基づいて、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の元、つまりアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路25と、駆動波形信号発生回路25で生成された駆動波形信号WCOMに逆フィルタ処理を施す逆フィルタ回路24(第1フィルタ回路)と、逆フィルタ回路24で逆フィルタ処理が施された逆フィルタ処理済駆動波形信号FWCOMをパルス変調する変調回路26と、変調回路26でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅回路28と、デジタル電力増幅器28で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)として、液体噴射ヘッド2に供給する平滑フィルタ29(第2フィルタ回路)とを備えて構成される。この駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が前記選択スイッチ201からアクチュエータ22に供給される。
駆動波形信号発生回路25は、CPU62aから出力された駆動波形データDWCOMを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールドすると共に、それをD/A変換器でアナログ変換して駆動波形信号WCOMとして出力する。
【0025】
逆フィルタ回路24は、図7に示すように、遅延器31と、駆動波形信号WCOMから前記遅延器31の出力を減じる減算器32と、前記減算器32の出力を所定の倍率で増幅する増幅器33と、前記増幅器33の出力と他の入力とを加算して逆フィルタ処理済駆動波形信号FWCOMとして出力する加算器34と、前記駆動波形信号WCOM及び前記加算器34の出力を切替えて前記遅延器31の入力とする第1スイッチ35と、前記駆動波形信号WCOM及び前記遅延器31の出力を切替えて前記加算器34の他の入力とする第2スイッチ36と、前記第1スイッチ35及び第2スイッチ36の切替え接続を制御するスイッチ接続制御部37を備えている。このうち、スイッチ接続制御部37は、前記駆動パルス選択データSI&SP、ラッチ信号LAT、チャンネル信号CHを読込み、駆動するアクチュエータ22の数に応じて、第1スイッチ35及び第2スイッチ36の切替え接続制御を行う。なお、第1スイッチ35を駆動波形信号WCOMに接続するときには、第2スイッチ36も駆動波形信号WCOMに接続し、第1スイッチ35を加算器34の出力に接続するときには、第2スイッチ36を遅延器31の出力に接続する。これにより、逆フィルタ回路24の伝達特性が位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えられるのであるが、その制御については後段に詳述する。なお、スイッチ接続制御部37は、前記制御部62内で行われるプログラミングによって構築される。
【0026】
図8に示すように、前記逆フィルタ回路24で逆フィルタ処理が施された逆フィルタ処理済駆動波形信号FWCOMをパルス変調する変調回路26には、周知のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)回路を用いた。パルス幅変調は、例えば所定周波数の三角波信号やノコギリ波信号などの基準信号と入力信号(この場合は逆フィルタ済駆動波形信号FWCOM)を比較し、逆フィルタ済駆動波形信号FWCOMが基準信号より大きいときにオンデューティとなるパルスデューティの変調信号を出力する。なお、基準信号の周波数を変調周波数(一般にキャリア周波数などと呼ばれている)と定義する。また、変調回路26には、この他にパルス密度変調(PDM)回路などの周知のパルス変調回路を用いることができる。
【0027】
デジタル電力増幅回路28は、実質的に電力を増幅するためのハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2からなるハーフブリッジ出力段21と、変調回路26からの変調信号に基づいて、ハイサイド側スイッチング素子Q1、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲート駆動回路30とを備えて構成されている。デジタル電力増幅回路28では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力は、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がローレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはローレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力は0となる。
【0028】
このようにハイサイドスイッチング素子Q1及びローサイドスイッチング素子Q2がデジタル駆動される場合には、オン状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、オフ状態のスイッチング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅器28の損失そのものは極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用することができる。
平滑フィルタ29には、図9に示すように、2つのコンデンサC1、C2、コイルL、抵抗Rからなる3次のフィルタを用いた。この平滑フィルタ29によって、前記変調回路26で生じた変調周波数、即ちパルス変調の周波数成分を減衰して除去し、前述したような波形特性の駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を出力する。
【0029】
アクチュエータ22である圧電素子は容量性素子であり、個々のアクチュエータ22が所定の静電容量CNZLを有する。液体を噴射するために駆動されるアクチュエータ22は、選択スイッチ201によって駆動回路に接続されるので、図9の場合、駆動されるアクチュエータ22の数によって、等価的に第2コンデンサC2の静電容量が変化する。具体的には、平滑フィルタ29と駆動されるアクチュエータ22の静電容量CNZLによって構成されるフィルタの伝達関数T(s)は、下記(1)式で表れる。1式において、NNZLは駆動されるアクチュエータ22の数を表し、sはラプラス演算子を表す。
【0030】
【数1】
【0031】
1式から明らかなように、このフィルタの伝達関数T(s)、つまり周波数特性は、駆動されるアクチュエータ22の数NNZLによって変化する。図10には、このフィルタの周波数特性の一例を示す。図中の目標特性は、全アクチュエータ22の半分を駆動する際に設定した平滑フィルタ29の周波数特性であり、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力周波数帯域全域でゲインが0dBとなっている。つまり、この出力周波数帯域では、電力増幅変調信号APWMは減衰も強調もされないが、これより高い周波数帯域では、特に変調周波数成分を減衰する。この目標特性に対し、駆動されるアクチュエータ22の数が多い(図10では駆動ノズル数大)と、高域減衰型フィルタの特性が変化し、カットオフ周波数が低周波数側へ移行する。一方、駆動されるアクチュエータ22の数が少ない(駆動ノズル数小)と、カットオフ周波数は高周波数側へ移行し、ピークを持つ特性となる。
【0032】
このような平滑フィルタ29及び駆動されるアクチュエータ22の静電容量によって構成されるフィルタの周波数特性に対し、例えばカットオフ周波数が低周波数側へ移行した場合、即ち駆動されるアクチュエータ22の数が所定数よりも多い場合に、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性に切替えて用いると、図11aに示すように、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力周波数帯域の最高周波数f0でゲインが0dBになるように増幅器33の倍率Aを調整することにより、補正された周波数特性を目標特性に近づけることができる。また、逆に、周波数特性にピークを生じた場合、即ち駆動されるアクチュエータ22の数が所定数よりも少ない場合に、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相遅れ特性に切替えて用いると、図11bに示すように、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力周波数帯域の最高周波数f0でゲインが0dBになるように増幅器33の倍率Aを調整することにより、補正された周波数特性を目標特性に近づけることができる。
【0033】
図12は、前記逆フィルタ回路24のフィルタ機能部分だけを抽出したものである。前述したように、第1スイッチ35を駆動波形信号WCOMに接続するときには、第2スイッチ36も駆動波形信号WCOMに接続するので、そのときの回路状態は図12aのようになる。図12aの回路状態は、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性に切替えて用いる場合に相当する。一方、第1スイッチ35を加算器34の出力に接続するときには、第2スイッチ36を遅延器31の出力に接続するので、そのときの回路状態は図12bのようになる。図12bの回路状態は、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相遅れ特性に切替えて用いる場合に相当する。
【0034】
図13aは、図12aからスイッチ類や余分な配線を除去したブロック図である。図14aは、図12bからスイッチ類や余分な配線を除去したブロック図である。両者から明らかなように、図13aは、遅延器31を入力信号X(z)の並列回路に接続している。一方、図14aは、遅延器31を入力信号X(z)の帰還回路に接続している。つまり、両者は遅延器31の接続状態が切替えられている。そして、図13aでは、遅延器31の出力を減算器32で入力信号X(z)から減じ、その出力を増幅器33でA倍し、その出力を加算器34で入力信号X(z)に加えている。従って、このフィルタの伝達特性は下記2式で与えられる。
【0035】
【数2】
【0036】
2式で与えられた離散システムにおけるサンプリング周波数fs(サンプリング周期Tsの逆数)が出力周波数帯域の最高周波数f0よりも十分高いとき、ラプラス演算子sは、下記3式のように離散化して表すことができる。
【0037】
【数3】
【0038】
従って、3式を2式に代入して、図13aのフィルタ回路の伝達関数として下記4式が得られる。
【0039】
【数4】
【0040】
この4式で表れる伝達関数は、周知の位相進み特性を示すフィルタであり、式中の増幅器33の倍率Aを調整することで、ゲインや位相を調整することも可能である。図13bには、図13aのフィルタのゲインの周波数特性の一例を、図13cには、位相の周波数特性の一例を示す。
一方、図14aでは、出力信号Y(z)を遅延器31で遅延し、その出力を入力信号X(z)から減算器32で減じ、その出力を増幅器33でA倍し、その出力信号に加算器34で遅延器31の出力を加えて出力信号Y(z)としている。従って、このフィルタの伝達特性は、下記5式で与えられる。
【0041】
【数5】
【0042】
この5式に前記3式を代入して下記6式が得られる。
【0043】
【数6】
【0044】
6式で得られた離散システムにおけるサンプリング周波数fsが出力周波数帯域の最高周波数f0よりも十分高いとき、つまりサンプリング時間Tsが十分小さいとすると、z-1=1となるので、これを前記6式に代入して、下記7式のフィルタ伝達特性が得られる。
【0045】
【数7】
【0046】
この7式で表れる伝達関数は、周知の位相遅れ特性を示すフィルタであり、式中の増幅器33の倍率Aを調整することで、ゲインや位相を調整することも可能である。図14bには、図14aのフィルタのゲインの周波数特性の一例を、図14cには、位相の周波数特性の一例を示す。
図10に示した目標特性は、例えば駆動されるアクチュエータ22の数がアクチュエータ22の全数の半分であるとき、といったように設定されており、フィルタの伝達特性T(s)は、それよりも駆動されるアクチュエータ22の数が多いときに位相遅れ、それよりも駆動されるアクチュエータ22の数が少ないときに位相進みとなる。この目標特性を設定したときの駆動アクチュエータ数を基準駆動アクチュエータ数と定義すると、この基準駆動アクチュエータ数より駆動アクチュエータ数の多いときに、逆フィルタ回路24のフィルタ特性を位相進み特性とし、つまり第1スイッチ35を駆動波形信号WCOMに接続すると共に、第2スイッチ36も駆動波形信号WCOMに接続すればよい。一方、基準駆動アクチュエータ数より駆動アクチュエータ数の少ないときに、逆フィルタ回路24のフィルタ特性を位相遅れ特性とし、つまり第1スイッチ35を加算器34の出力に接続すると共に、第2スイッチ36を遅延器31の出力に接続すればよい。更に、前述のように、逆フィルタ回路24の位相進み及び位相遅れの伝達特性は、夫々、増幅器33の倍率Aによって調整可能であるので、例えば逆フィルタ回路24がプログラミングによって構築されているような場合に、基準駆動アクチュエータ数に対する駆動アクチュエータ数の差に応じて倍率Aを調整すれば、逆フィルタ回路24によって補正された駆動信号出力系の周波数特性をより一層目標特性に近づけることができる。
【0047】
このように、本実施形態の液体噴射装置によれば、液体を噴射するためのアクチュエータ22の駆動信号COMの基準となる駆動波形信号WCOMを変調回路26でパルス変調し、変調回路26でパルス変調された変調信号をデジタル電力増幅回路28で電力増幅し、デジタル電力増幅回路28で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタ29で平滑化してアクチュエータ22に駆動信号COMとして供給する場合に、変調回路26の前段に、少なくとも平滑フィルタ29及びアクチュエータ22の静電容量で構成されるフィルタの周波数特性が駆動するアクチュエータ22の数により変化しても所望する駆動信号COMを得ることができる逆フィルタ回路24を備え、その逆フィルタ回路24に設けられた遅延器31と、駆動波形信号WCOMから遅延器31の出力を減じる減算器32と、減算器32の出力を所定の倍率Aで増幅する増幅器33と、増幅器33の出力と他の入力とを加算する加算器34と、駆動波形信号WCOM及び加算器34の出力を切替えて遅延器31の入力とする第1スイッチ35と、駆動波形信号WCOM及び遅延器31の出力を切替えて加算器34の他の入力とする第2スイッチ36とを備え、第1スイッチ35及び第2スイッチ36によって遅延器31の接続状態を切替えて、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えることにより、逆フィルタ回路の規模を小さくすることができ、これにより構成が容易で且つ所望する駆動信号COMを得ることができる。
【0048】
また、スイッチ接続制御部37は、第1スイッチ35を駆動波形信号WCOMに接続するとき、第2スイッチ36も駆動波形信号WCOMに接続し、第1スイッチ35を加算器34の出力に接続するとき、第2スイッチ36を遅延器31の出力に接続することとしたため、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに確実に切替えることができる。
【0049】
また、スイッチ接続制御部37は、駆動されるアクチュエータ22の数に応じて増幅器33の倍率Aを調整することとしたため、駆動信号COMの波形精度をより一層高めることが可能となる。
なお、本実施形態では、本発明の液体噴射装置をラインヘッド型の液体噴射型印刷装置に用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の液体噴射装置は、マルチパス型の液体噴射型印刷装置にも同様に適用可能である。
【0050】
また、本発明の液体噴射装置は、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射する液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1は印刷媒体、2は液体噴射ヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラ、6は搬送ベルト、7は電動モータ、8は駆動ローラ、9は従動ローラ、10は排紙部、11はヘッド固定プレート、21はハーフブリッジ出力段、22はアクチュエータ、24は逆フィルタ回路、25は駆動波形信号発生回路、26は変調回路、28はデジタル電力増幅回路、29は平滑フィルタ、30はゲート駆動回路、31は遅延器、32は減算器、33は増幅器、34は加算器、35は第1スイッチ、36は第2スイッチ、37はスイッチ接続制御部、65はヘッドドライバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに駆動信号を印加して液体を噴射する液体噴射装置に関し、例えば微小な液体を液体噴射ヘッドのノズルから噴射して、微粒子(ドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像等を印刷するようにした液体噴射型印刷装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
プッシュプル接続されたトランジスタ対をリニア駆動するアナログ電力増幅回路に比べて、プッシュプル接続されたスイッチング素子をスイッチ動作、つまりデジタル駆動させて電力増幅するデジタル電力増幅回路、所謂D級アンプは、効率に優れ、広い範囲で使用されている。このデジタル電力増幅回路を用いて、例えば液体噴射型印刷装置のノズルから液体を噴射するためのアクチュエータに駆動信号を出力する場合、駆動信号の基準となる駆動波形信号を変調回路で変調信号にパルス変調し、その変調信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅し、その電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタで平滑化して、駆動信号として出力する。平滑フィルタは、パルス変調の周波数成分を減衰する。その際、駆動するアクチュエータの数が変わると、平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性が変化し、所望する駆動信号が得られない場合がある。そこで、本出願人は、下記特許文献1に記載されるように、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所望する駆動信号を得ることができる逆フィルタを変調回路の前段に設けた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報WO2007/083669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載される液体噴射装置では、伝達特性の異なる逆フィルタを複数設け、駆動するアクチュエータの数に応じて、それら伝達特性の異なる複数の逆フィルタを切替えるようにしているため、逆フィルタの数だけ回路が必要となり、逆フィルタの回路規模が大きくなってしまう。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、構成が容易で且つ所望する駆動信号を得ることが可能な液体噴射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記諸問題を解決するため、本発明の液体噴射装置は、アクチュエータの駆動信号の基準となる駆動波形信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、前記電力増幅変調信号を平滑化して前記駆動信号とする平滑フィルタと、前記変調回路の前段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量の周波数特性が、駆動する前記アクチュエータの数によって変化しても所望する駆動信号を得ることができる逆フィルタ回路とを備え、前記逆フィルタ回路は、入力信号の位相を遅延させる遅延器と、前記駆動波形信号から前記遅延器の出力信号を減じる減算器と、前記減算器の出力信号を所定の倍率で増幅する増幅器と、前記増幅器の出力信号と他の入力信号とを加算する加算器と、前記駆動波形信号及び前記加算器の出力信号を切替えて前記遅延器の入力信号とする第1スイッチと、前記駆動波形信号及び前記遅延器の出力信号を切替えて前記加算器の前記他の入力信号とする第2スイッチと、前記第1スイッチ及び第2スイッチによって、前記遅延器の接続状態を切替えて、前記逆フィルタ回路の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性との何れかに切替えるスイッチ接続制御部とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
この液体噴射装置によれば、第1スイッチ及び第2スイッチによって遅延器の接続状態を切替えて、逆フィルタ回路の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに切替える構成としたため、逆フィルタ回路の規模を小さくすることができ、これにより構成が容易で且つ所望する駆動信号を得ることができる。
更に、この液体噴射装置によれば、第1スイッチを用いて遅延器の入力を切替え、第2スイッチを用いて加算器の入力を切替える構成としたため、逆フィルタ回路の伝達特性を簡易な構成で位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えることができる。
【0007】
また、前記スイッチ接続制御部は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数以上の場合には、前記第1スイッチを前記駆動波形信号に接続すると共に、前記第2スイッチを前記駆動波形信号に接続し、駆動する前記アクチュエータの数が所定数未満の場合には、前記第1スイッチを加算器の出力信号に接続すると共に、前記第2スイッチを前記遅延器の出力信号に接続することを特徴とするものである。
この液体噴射装置によれば、駆動するアクチュエータの数に応じて逆フィルタ回路の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えることができる。
【0008】
また、前記スイッチ接続制御部は、駆動される前記アクチュエータの数に応じて前記増幅器の倍率を調整することを特徴とするものである。
この液体噴射装置によれば、駆動信号の波形精度をより一層高めることが可能となる。
また、駆動波形信号に対して所望のフィルタ処理を行う第1フィルタ回路と、前記フィルタ処理された信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、前記電力増幅変調信号を平滑化して駆動信号とする第2フィルタ回路と、を備え、前記第1フィルタ回路は、入力信号の位相を遅延させる遅延器と、前記駆動波形信号から前記遅延器の出力信号を減じる減算器と、前記減算器の出力信号を所定の倍率で増幅する増幅器と、前記増幅器の出力信号に対して、前記駆動波形信号又は前記遅延器の出力信号を加算する加算器と、前記遅延器に対して、前記駆動波形信号又は前記加算器の出力信号を入力させる第1スイッチと、前記加算器に対して、前記駆動波形信号又は前記遅延器の出力信号を入力させる第2スイッチと、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記第1フィルタ回路は、駆動するアクチュエータの数が所定数以上の場合には、前記第1スイッチを用いて前記遅延器に対して前記駆動波形信号を入力させると共に、前記第2スイッチを用いて前記加算器に対して前記駆動波形信号を入力させることを特徴とするものである。
また、前記第1フィルタ回路は、駆動するアクチュエータの数が所定数未満の場合には、前記第1のスイッチを用いて前記遅延器に対して前記加算器の出力信号を入力させると共に、前記第2スイッチを用いて前記加算器に対して前記遅延器の出力信号を入力させることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記所望のフィルタ処理は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数以上の場合には、所定の高周波数帯域を強調するフィルタ処理であることを特徴とするものである。
また、前記所望のフィルタ処理は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数未満の場合には、所定の高周波数帯域を減衰させるフィルタ処理であることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置の一実施形態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1の液体噴射型印刷装置に用いられる液体噴射ヘッド近傍の平面図である。
【図3】図1の液体噴射型印刷装置の制御装置のブロック図である。
【図4】各液体噴射ヘッド内のアクチュエータを駆動する駆動信号の説明図である。
【図5】スイッチングコントローラのブロック図である。
【図6】アクチュエータの駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図7】図6の逆フィルタ回路のブロック図である。
【図8】図6のデジタル電力増幅回路のブロック図である。
【図9】図6の平滑フィルタのブロック図である。
【図10】平滑フィルタ及びアクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性の説明図である。
【図11】逆フィルタによって変化する周波数特性の説明図である。
【図12】図7の逆フィルタ回路におけるスイッチ切替えの説明図である。
【図13】図12aの逆フィルタの周波数特性の説明図である。
【図14】図12bの逆フィルタの周波数特性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の液体噴射装置の一実施形態として、液体噴射型印刷装置に用いられたものについて説明する。
図1は、本実施形態の液体噴射型印刷装置の概略構成図であり、図1において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型印刷装置である。
【0013】
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数の液体噴射ヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート11に固定されている。各液体噴射ヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、噴射する液体の色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全ての液体噴射ヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。印刷媒体1は、これらの液体噴射ヘッド2のノズル面の下方を通過するときに、ノズル面に形成されている多数のノズルから液体が噴射され、印刷が行われる。
【0014】
液体噴射ヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が、図示しない液体タンクから液体供給チューブを介して供給される。そして、液体噴射ヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを形成する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。
【0015】
液体噴射ヘッド2のノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、アクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液体がノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液体の噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。
【0016】
液体噴射ヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラ8には図示しない電動モータが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラ5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モータによって駆動ローラ8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、液体噴射ヘッド2から液体を噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダなどで構成される印刷基準信号出力装置が取付けられている。この印刷基準信号出力装置は、搬送ベルト6とそれに吸着されて搬送される印刷媒体1とが同期して移動されることに着目し、印刷媒体1が搬送経路中の所定位置を通過した後は、搬送ベルト6の移動に伴って要求される印刷解像度相当のパルス信号を出力し、このパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をアクチュエータ22に出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色の液体を噴射し、そのドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
【0017】
本実施形態の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置内には、液体噴射型印刷装置を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、図3に示すように、ホストコンピュータ60から入力された印刷データを読込むための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行するマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ5に接続されている給紙ローラモータ17を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、液体噴射ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記駆動ローラ8に接続されている電動モータ7を駆動制御する電動モータドライバ66と、給紙ローラモータドライバ63、ヘッドドライバ65、電動モータドライバ66と給紙ローラモータ17、液体噴射ヘッド2、電動モータ7とを接続するインタフェース67とを備えて構成される。
【0018】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データの印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、入力インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルから液体を噴射するか或いはどの程度の液体を噴射するかというノズル選択データ(駆動パルス選択データ)を算出し、この印刷データや駆動パルス選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、給紙ローラモータドライバ63、ヘッドドライバ65、電動モータドライバ66に駆動信号及び制御信号を出力する。これらの駆動信号及び制御信号により、給紙ローラモータ17、電動モータ7、液体噴射ヘッド2内のアクチュエータ22などが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0019】
図4には、本実施形態の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置の制御装置から液体噴射ヘッド2に供給され、圧電素子からなるアクチュエータ22を駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電位を中心に電位が変化する信号とした。この駆動信号COMは、アクチュエータ22を駆動して液体を噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の噴射面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の噴射面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液体がノズルから噴射される。
【0020】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液体の噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータ22に供給し、液体を噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータ22に供給し、液体を複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液体が乾かないうちに複数の液体を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液体を噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液体を噴射せずに、ノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0021】
液体噴射ヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて噴射するノズルを選択すると共に圧電素子などのアクチュエータ22の駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動パルス選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動パルス選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMと液体噴射ヘッド2のアクチュエータ22とを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動パルス選択データSI&SPをシリアル信号として液体噴射ヘッド2に送信するためのクロック信号SCKが入力されている。なお、これ以後、アクチュエータ22を駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
【0022】
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をアクチュエータ22に供給するために液体噴射ヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラは、液体を噴射させるノズルに対応した圧電素子などのアクチュエータ22を指定するための駆動パルス選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換して選択スイッチ201に供給することにより、駆動信号COMをピエゾ素子などのアクチュエータ22に接続するレベルシフタ213を備えて構成されている。
【0023】
シフトレジスタ211には、駆動パルス選択データ信号SI&SPが順次入力されると共に、クロック信号SCKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動パルス選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられる圧電素子などのアクチュエータ22は駆動パルス選択データSI&SPの接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、シフトレジスタ211の駆動パルス選択データSI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印刷情報をシフトレジスタ211に入力し、液体の噴射タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのアクチュエータ22のグランド端である。また、この選択スイッチ201により、圧電素子などのアクチュエータ22を駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後も、当該アクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
【0024】
図6には、アクチュエータ22の駆動回路の概略構成を示す。このアクチュエータ駆動回路は、前記制御回路内の制御部62及びヘッドドライバ65内に構築されている。本実施形態の駆動回路は、予め記憶されている駆動波形データDWCOMに基づいて、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の元、つまりアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路25と、駆動波形信号発生回路25で生成された駆動波形信号WCOMに逆フィルタ処理を施す逆フィルタ回路24(第1フィルタ回路)と、逆フィルタ回路24で逆フィルタ処理が施された逆フィルタ処理済駆動波形信号FWCOMをパルス変調する変調回路26と、変調回路26でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅回路28と、デジタル電力増幅器28で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)として、液体噴射ヘッド2に供給する平滑フィルタ29(第2フィルタ回路)とを備えて構成される。この駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が前記選択スイッチ201からアクチュエータ22に供給される。
駆動波形信号発生回路25は、CPU62aから出力された駆動波形データDWCOMを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールドすると共に、それをD/A変換器でアナログ変換して駆動波形信号WCOMとして出力する。
【0025】
逆フィルタ回路24は、図7に示すように、遅延器31と、駆動波形信号WCOMから前記遅延器31の出力を減じる減算器32と、前記減算器32の出力を所定の倍率で増幅する増幅器33と、前記増幅器33の出力と他の入力とを加算して逆フィルタ処理済駆動波形信号FWCOMとして出力する加算器34と、前記駆動波形信号WCOM及び前記加算器34の出力を切替えて前記遅延器31の入力とする第1スイッチ35と、前記駆動波形信号WCOM及び前記遅延器31の出力を切替えて前記加算器34の他の入力とする第2スイッチ36と、前記第1スイッチ35及び第2スイッチ36の切替え接続を制御するスイッチ接続制御部37を備えている。このうち、スイッチ接続制御部37は、前記駆動パルス選択データSI&SP、ラッチ信号LAT、チャンネル信号CHを読込み、駆動するアクチュエータ22の数に応じて、第1スイッチ35及び第2スイッチ36の切替え接続制御を行う。なお、第1スイッチ35を駆動波形信号WCOMに接続するときには、第2スイッチ36も駆動波形信号WCOMに接続し、第1スイッチ35を加算器34の出力に接続するときには、第2スイッチ36を遅延器31の出力に接続する。これにより、逆フィルタ回路24の伝達特性が位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えられるのであるが、その制御については後段に詳述する。なお、スイッチ接続制御部37は、前記制御部62内で行われるプログラミングによって構築される。
【0026】
図8に示すように、前記逆フィルタ回路24で逆フィルタ処理が施された逆フィルタ処理済駆動波形信号FWCOMをパルス変調する変調回路26には、周知のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)回路を用いた。パルス幅変調は、例えば所定周波数の三角波信号やノコギリ波信号などの基準信号と入力信号(この場合は逆フィルタ済駆動波形信号FWCOM)を比較し、逆フィルタ済駆動波形信号FWCOMが基準信号より大きいときにオンデューティとなるパルスデューティの変調信号を出力する。なお、基準信号の周波数を変調周波数(一般にキャリア周波数などと呼ばれている)と定義する。また、変調回路26には、この他にパルス密度変調(PDM)回路などの周知のパルス変調回路を用いることができる。
【0027】
デジタル電力増幅回路28は、実質的に電力を増幅するためのハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2からなるハーフブリッジ出力段21と、変調回路26からの変調信号に基づいて、ハイサイド側スイッチング素子Q1、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲート駆動回路30とを備えて構成されている。デジタル電力増幅回路28では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力は、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がローレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはローレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力は0となる。
【0028】
このようにハイサイドスイッチング素子Q1及びローサイドスイッチング素子Q2がデジタル駆動される場合には、オン状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、オフ状態のスイッチング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅器28の損失そのものは極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用することができる。
平滑フィルタ29には、図9に示すように、2つのコンデンサC1、C2、コイルL、抵抗Rからなる3次のフィルタを用いた。この平滑フィルタ29によって、前記変調回路26で生じた変調周波数、即ちパルス変調の周波数成分を減衰して除去し、前述したような波形特性の駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を出力する。
【0029】
アクチュエータ22である圧電素子は容量性素子であり、個々のアクチュエータ22が所定の静電容量CNZLを有する。液体を噴射するために駆動されるアクチュエータ22は、選択スイッチ201によって駆動回路に接続されるので、図9の場合、駆動されるアクチュエータ22の数によって、等価的に第2コンデンサC2の静電容量が変化する。具体的には、平滑フィルタ29と駆動されるアクチュエータ22の静電容量CNZLによって構成されるフィルタの伝達関数T(s)は、下記(1)式で表れる。1式において、NNZLは駆動されるアクチュエータ22の数を表し、sはラプラス演算子を表す。
【0030】
【数1】
【0031】
1式から明らかなように、このフィルタの伝達関数T(s)、つまり周波数特性は、駆動されるアクチュエータ22の数NNZLによって変化する。図10には、このフィルタの周波数特性の一例を示す。図中の目標特性は、全アクチュエータ22の半分を駆動する際に設定した平滑フィルタ29の周波数特性であり、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力周波数帯域全域でゲインが0dBとなっている。つまり、この出力周波数帯域では、電力増幅変調信号APWMは減衰も強調もされないが、これより高い周波数帯域では、特に変調周波数成分を減衰する。この目標特性に対し、駆動されるアクチュエータ22の数が多い(図10では駆動ノズル数大)と、高域減衰型フィルタの特性が変化し、カットオフ周波数が低周波数側へ移行する。一方、駆動されるアクチュエータ22の数が少ない(駆動ノズル数小)と、カットオフ周波数は高周波数側へ移行し、ピークを持つ特性となる。
【0032】
このような平滑フィルタ29及び駆動されるアクチュエータ22の静電容量によって構成されるフィルタの周波数特性に対し、例えばカットオフ周波数が低周波数側へ移行した場合、即ち駆動されるアクチュエータ22の数が所定数よりも多い場合に、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性に切替えて用いると、図11aに示すように、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力周波数帯域の最高周波数f0でゲインが0dBになるように増幅器33の倍率Aを調整することにより、補正された周波数特性を目標特性に近づけることができる。また、逆に、周波数特性にピークを生じた場合、即ち駆動されるアクチュエータ22の数が所定数よりも少ない場合に、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相遅れ特性に切替えて用いると、図11bに示すように、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力周波数帯域の最高周波数f0でゲインが0dBになるように増幅器33の倍率Aを調整することにより、補正された周波数特性を目標特性に近づけることができる。
【0033】
図12は、前記逆フィルタ回路24のフィルタ機能部分だけを抽出したものである。前述したように、第1スイッチ35を駆動波形信号WCOMに接続するときには、第2スイッチ36も駆動波形信号WCOMに接続するので、そのときの回路状態は図12aのようになる。図12aの回路状態は、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性に切替えて用いる場合に相当する。一方、第1スイッチ35を加算器34の出力に接続するときには、第2スイッチ36を遅延器31の出力に接続するので、そのときの回路状態は図12bのようになる。図12bの回路状態は、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相遅れ特性に切替えて用いる場合に相当する。
【0034】
図13aは、図12aからスイッチ類や余分な配線を除去したブロック図である。図14aは、図12bからスイッチ類や余分な配線を除去したブロック図である。両者から明らかなように、図13aは、遅延器31を入力信号X(z)の並列回路に接続している。一方、図14aは、遅延器31を入力信号X(z)の帰還回路に接続している。つまり、両者は遅延器31の接続状態が切替えられている。そして、図13aでは、遅延器31の出力を減算器32で入力信号X(z)から減じ、その出力を増幅器33でA倍し、その出力を加算器34で入力信号X(z)に加えている。従って、このフィルタの伝達特性は下記2式で与えられる。
【0035】
【数2】
【0036】
2式で与えられた離散システムにおけるサンプリング周波数fs(サンプリング周期Tsの逆数)が出力周波数帯域の最高周波数f0よりも十分高いとき、ラプラス演算子sは、下記3式のように離散化して表すことができる。
【0037】
【数3】
【0038】
従って、3式を2式に代入して、図13aのフィルタ回路の伝達関数として下記4式が得られる。
【0039】
【数4】
【0040】
この4式で表れる伝達関数は、周知の位相進み特性を示すフィルタであり、式中の増幅器33の倍率Aを調整することで、ゲインや位相を調整することも可能である。図13bには、図13aのフィルタのゲインの周波数特性の一例を、図13cには、位相の周波数特性の一例を示す。
一方、図14aでは、出力信号Y(z)を遅延器31で遅延し、その出力を入力信号X(z)から減算器32で減じ、その出力を増幅器33でA倍し、その出力信号に加算器34で遅延器31の出力を加えて出力信号Y(z)としている。従って、このフィルタの伝達特性は、下記5式で与えられる。
【0041】
【数5】
【0042】
この5式に前記3式を代入して下記6式が得られる。
【0043】
【数6】
【0044】
6式で得られた離散システムにおけるサンプリング周波数fsが出力周波数帯域の最高周波数f0よりも十分高いとき、つまりサンプリング時間Tsが十分小さいとすると、z-1=1となるので、これを前記6式に代入して、下記7式のフィルタ伝達特性が得られる。
【0045】
【数7】
【0046】
この7式で表れる伝達関数は、周知の位相遅れ特性を示すフィルタであり、式中の増幅器33の倍率Aを調整することで、ゲインや位相を調整することも可能である。図14bには、図14aのフィルタのゲインの周波数特性の一例を、図14cには、位相の周波数特性の一例を示す。
図10に示した目標特性は、例えば駆動されるアクチュエータ22の数がアクチュエータ22の全数の半分であるとき、といったように設定されており、フィルタの伝達特性T(s)は、それよりも駆動されるアクチュエータ22の数が多いときに位相遅れ、それよりも駆動されるアクチュエータ22の数が少ないときに位相進みとなる。この目標特性を設定したときの駆動アクチュエータ数を基準駆動アクチュエータ数と定義すると、この基準駆動アクチュエータ数より駆動アクチュエータ数の多いときに、逆フィルタ回路24のフィルタ特性を位相進み特性とし、つまり第1スイッチ35を駆動波形信号WCOMに接続すると共に、第2スイッチ36も駆動波形信号WCOMに接続すればよい。一方、基準駆動アクチュエータ数より駆動アクチュエータ数の少ないときに、逆フィルタ回路24のフィルタ特性を位相遅れ特性とし、つまり第1スイッチ35を加算器34の出力に接続すると共に、第2スイッチ36を遅延器31の出力に接続すればよい。更に、前述のように、逆フィルタ回路24の位相進み及び位相遅れの伝達特性は、夫々、増幅器33の倍率Aによって調整可能であるので、例えば逆フィルタ回路24がプログラミングによって構築されているような場合に、基準駆動アクチュエータ数に対する駆動アクチュエータ数の差に応じて倍率Aを調整すれば、逆フィルタ回路24によって補正された駆動信号出力系の周波数特性をより一層目標特性に近づけることができる。
【0047】
このように、本実施形態の液体噴射装置によれば、液体を噴射するためのアクチュエータ22の駆動信号COMの基準となる駆動波形信号WCOMを変調回路26でパルス変調し、変調回路26でパルス変調された変調信号をデジタル電力増幅回路28で電力増幅し、デジタル電力増幅回路28で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑フィルタ29で平滑化してアクチュエータ22に駆動信号COMとして供給する場合に、変調回路26の前段に、少なくとも平滑フィルタ29及びアクチュエータ22の静電容量で構成されるフィルタの周波数特性が駆動するアクチュエータ22の数により変化しても所望する駆動信号COMを得ることができる逆フィルタ回路24を備え、その逆フィルタ回路24に設けられた遅延器31と、駆動波形信号WCOMから遅延器31の出力を減じる減算器32と、減算器32の出力を所定の倍率Aで増幅する増幅器33と、増幅器33の出力と他の入力とを加算する加算器34と、駆動波形信号WCOM及び加算器34の出力を切替えて遅延器31の入力とする第1スイッチ35と、駆動波形信号WCOM及び遅延器31の出力を切替えて加算器34の他の入力とする第2スイッチ36とを備え、第1スイッチ35及び第2スイッチ36によって遅延器31の接続状態を切替えて、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに切替えることにより、逆フィルタ回路の規模を小さくすることができ、これにより構成が容易で且つ所望する駆動信号COMを得ることができる。
【0048】
また、スイッチ接続制御部37は、第1スイッチ35を駆動波形信号WCOMに接続するとき、第2スイッチ36も駆動波形信号WCOMに接続し、第1スイッチ35を加算器34の出力に接続するとき、第2スイッチ36を遅延器31の出力に接続することとしたため、逆フィルタ回路24の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性とに確実に切替えることができる。
【0049】
また、スイッチ接続制御部37は、駆動されるアクチュエータ22の数に応じて増幅器33の倍率Aを調整することとしたため、駆動信号COMの波形精度をより一層高めることが可能となる。
なお、本実施形態では、本発明の液体噴射装置をラインヘッド型の液体噴射型印刷装置に用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の液体噴射装置は、マルチパス型の液体噴射型印刷装置にも同様に適用可能である。
【0050】
また、本発明の液体噴射装置は、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射する液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1は印刷媒体、2は液体噴射ヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラ、6は搬送ベルト、7は電動モータ、8は駆動ローラ、9は従動ローラ、10は排紙部、11はヘッド固定プレート、21はハーフブリッジ出力段、22はアクチュエータ、24は逆フィルタ回路、25は駆動波形信号発生回路、26は変調回路、28はデジタル電力増幅回路、29は平滑フィルタ、30はゲート駆動回路、31は遅延器、32は減算器、33は増幅器、34は加算器、35は第1スイッチ、36は第2スイッチ、37はスイッチ接続制御部、65はヘッドドライバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの駆動信号の基準となる駆動波形信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、
前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、
前記電力増幅変調信号を平滑化して前記駆動信号とする平滑フィルタと、
前記変調回路の前段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量の周波数特性が、駆動する前記アクチュエータの数によって変化しても所望する駆動信号を得ることができる逆フィルタ回路とを備え、
前記逆フィルタ回路は、
入力信号の位相を遅延させる遅延器と、
前記駆動波形信号から前記遅延器の出力信号を減じる減算器と、
前記減算器の出力信号を所定の倍率で増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力信号と他の入力信号とを加算する加算器と、
前記駆動波形信号及び前記加算器の出力信号を切替えて前記遅延器の入力信号とする第1スイッチと、
前記駆動波形信号及び前記遅延器の出力信号を切替えて前記加算器の前記他の入力信号とする第2スイッチと、
前記第1スイッチ及び第2スイッチによって、前記遅延器の接続状態を切替えて、前記逆フィルタ回路の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性との何れかに切替えるスイッチ接続制御部と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記スイッチ接続制御部は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数以上の場合には、前記第1スイッチを前記駆動波形信号に接続すると共に、前記第2スイッチを前記駆動波形信号に接続し、
駆動する前記アクチュエータの数が所定数未満の場合には、前記第1スイッチを加算器の出力信号に接続すると共に、前記第2スイッチを前記遅延器の出力信号に接続することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記スイッチ接続制御部は、駆動される前記アクチュエータの数に応じて前記増幅器の倍率を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
駆動波形信号に対して所望のフィルタ処理を行う第1フィルタ回路と、
前記フィルタ処理された信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、
前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、
前記電力増幅変調信号を平滑化して駆動信号とする第2フィルタ回路と、を備え、
前記第1フィルタ回路は、
入力信号の位相を遅延させる遅延器と、
前記駆動波形信号から前記遅延器の出力信号を減じる減算器と、
前記減算器の出力信号を所定の倍率で増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力信号に対して、前記駆動波形信号又は前記遅延器の出力信号を加算する加算器と、
前記遅延器に対して、前記駆動波形信号又は前記加算器の出力信号を入力させる第1スイッチと、
前記加算器に対して、前記駆動波形信号又は前記遅延器の出力信号を入力させる第2スイッチと、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
前記第1フィルタ回路は、駆動するアクチュエータの数が所定数以上の場合には、前記第1スイッチを用いて前記遅延器に対して前記駆動波形信号を入力させると共に、前記第2スイッチを用いて前記加算器に対して前記駆動波形信号を入力させることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記第1フィルタ回路は、駆動するアクチュエータの数が所定数未満の場合には、前記第1のスイッチを用いて前記遅延器に対して前記加算器の出力信号を入力させると共に、前記第2スイッチを用いて前記加算器に対して前記遅延器の出力信号を入力させることを特徴とする請求項4又は5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記所望のフィルタ処理は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数以上の場合には、所定の高周波数帯域を強調するフィルタ処理であることを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記所望のフィルタ処理は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数未満の場合には、所定の高周波数帯域を減衰させるフィルタ処理であることを特徴とする請求項4乃至7の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の液体噴射装置を備えた液体噴射型印刷装置。
【請求項1】
アクチュエータの駆動信号の基準となる駆動波形信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、
前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、
前記電力増幅変調信号を平滑化して前記駆動信号とする平滑フィルタと、
前記変調回路の前段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量の周波数特性が、駆動する前記アクチュエータの数によって変化しても所望する駆動信号を得ることができる逆フィルタ回路とを備え、
前記逆フィルタ回路は、
入力信号の位相を遅延させる遅延器と、
前記駆動波形信号から前記遅延器の出力信号を減じる減算器と、
前記減算器の出力信号を所定の倍率で増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力信号と他の入力信号とを加算する加算器と、
前記駆動波形信号及び前記加算器の出力信号を切替えて前記遅延器の入力信号とする第1スイッチと、
前記駆動波形信号及び前記遅延器の出力信号を切替えて前記加算器の前記他の入力信号とする第2スイッチと、
前記第1スイッチ及び第2スイッチによって、前記遅延器の接続状態を切替えて、前記逆フィルタ回路の伝達特性を位相進み特性と位相遅れ特性との何れかに切替えるスイッチ接続制御部と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記スイッチ接続制御部は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数以上の場合には、前記第1スイッチを前記駆動波形信号に接続すると共に、前記第2スイッチを前記駆動波形信号に接続し、
駆動する前記アクチュエータの数が所定数未満の場合には、前記第1スイッチを加算器の出力信号に接続すると共に、前記第2スイッチを前記遅延器の出力信号に接続することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記スイッチ接続制御部は、駆動される前記アクチュエータの数に応じて前記増幅器の倍率を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
駆動波形信号に対して所望のフィルタ処理を行う第1フィルタ回路と、
前記フィルタ処理された信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、
前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、
前記電力増幅変調信号を平滑化して駆動信号とする第2フィルタ回路と、を備え、
前記第1フィルタ回路は、
入力信号の位相を遅延させる遅延器と、
前記駆動波形信号から前記遅延器の出力信号を減じる減算器と、
前記減算器の出力信号を所定の倍率で増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力信号に対して、前記駆動波形信号又は前記遅延器の出力信号を加算する加算器と、
前記遅延器に対して、前記駆動波形信号又は前記加算器の出力信号を入力させる第1スイッチと、
前記加算器に対して、前記駆動波形信号又は前記遅延器の出力信号を入力させる第2スイッチと、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
前記第1フィルタ回路は、駆動するアクチュエータの数が所定数以上の場合には、前記第1スイッチを用いて前記遅延器に対して前記駆動波形信号を入力させると共に、前記第2スイッチを用いて前記加算器に対して前記駆動波形信号を入力させることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記第1フィルタ回路は、駆動するアクチュエータの数が所定数未満の場合には、前記第1のスイッチを用いて前記遅延器に対して前記加算器の出力信号を入力させると共に、前記第2スイッチを用いて前記加算器に対して前記遅延器の出力信号を入力させることを特徴とする請求項4又は5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記所望のフィルタ処理は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数以上の場合には、所定の高周波数帯域を強調するフィルタ処理であることを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記所望のフィルタ処理は、駆動する前記アクチュエータの数が所定数未満の場合には、所定の高周波数帯域を減衰させるフィルタ処理であることを特徴とする請求項4乃至7の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の液体噴射装置を備えた液体噴射型印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−5871(P2011−5871A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197811(P2010−197811)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【分割の表示】特願2009−152603(P2009−152603)の分割
【原出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【分割の表示】特願2009−152603(P2009−152603)の分割
【原出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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