説明

液体噴射装置及び液体噴射装置のクリーニング方法

【課題】液体の吸引機能が低下せず、且つ製造コストが低減できる液体噴射装置等を提供すること。
【解決手段】液体を吸引するチューブ部110と、チューブ部に沿って移動可能に配置される当接部120と、当接部をチューブ部に沿って移動させるための回転トルクを発生させるモータ部150と、を有するチューブポンプ100を備え、当接部がチューブ部を押し潰しながら移動して液体を吸引する吸引区間と、当接部がチューブ部を押し潰さない非吸引区間111と、液体を吸引後に当接部を記非吸引区間に配置させる液体噴射装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吸引等するためのチューブポンプを有する液体噴射装置及びそのクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット式記録装置は、記録用紙等にインクを吐出するためのインクジェット式記録ヘッドを有している。このインクジェット式記録ヘッドは、ノズルを介してインクを記録用紙等に吐出するため、ノズル近傍においてインクが増粘したり、ノズル内に気泡が混入したりして、インクの吐出が良好に行えなくなるおそれがあった。
このため、インクジェット式記録装置には、これらの現象を回避するためヘッドクリーニング装置が備えられている。
【0003】
ヘッドクリーニング装置は、ノズルを覆うように配置されるキャッピング部と、このキャッピング部内を負圧にするためのポンプを有し、ノズル近傍等のインクをポンプで吸引することで、クリーニングする構成となっている。
ポンプとしては、比較的構造が簡単で、且つ小型化が図り易いチューブポンプが用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
図13は、このようなチューブポンプの主な構成を示す概略図である。図13に示すように、チューブポンプは、インクを吸引するチューブ1と、このチューブ1を押し潰すように配置可能なプーリ2が回転板4によって移動可能に配置されている。
しかし、プーリ2がチューブ1を押し潰した状態が長く続くと、チューブ1の内壁同士が接触した状態で張り付き、インクがチューブ1内を通過し難くなり、ポンプの機能が損なわれる等の問題が生じる。
このため、回転板4には、プーリ2がチューブ1との距離を変更するための案内溝3が形成されている。具体的には、案内溝3の図において下側の端部が吸引端部3aとなり、上側の端部がレリース端部3bとなっている。
すなわち、チューブポンプがインクを吸引するときは、プーリ2が吸引位置である例えば、吸引端部3aに配置される。すると、プーリ2がチューブ1を押し潰すように配置され、この状態でプーリ2を図の矢印方向に移動させると、インクが吸引される。
【0005】
一方、チューブポンプがインクを吸引しないときは、プーリ2が、非吸引位置である例えば、レリース端部3bに配置される。すると、プーリ2はチューブ1から離間する方向、すなわち、チューブ1を押し潰さない位置に配置される。したがって、プーリ2を移動させてもチューブ1はインクを吸引しない。
以上のように、チューブポンプは、インクを吸引するときは、プーリ2の位置を吸引端部3aに配置する。そして、インクの吸引が終わると、プーリ2が案内溝3内を通って、レリース端部3bまで移動させられる構成となり、チューブ1の内壁が張り付いた状態で放置されることを防いでいる。したがって、インクが通過し難いチューブポンプとなることを未然に防いでいる。
【特許文献1】特開2004−314622号公報(図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のチューブポンプでは、チューブ1とプーリ2の摩擦力を利用して、プーリ2が案内溝3内を移動させる構成となっているので、プーリ2が案内溝3内を吸引端部3aからレリース端部3bへ移動しない動作不良が発生する場合がある。この場合は、チューブ1が押し潰され、その内壁が張り付いた状態のまま放置されるので、チューブポンプの吸引機能が低下するという問題があった。
そこで、チューブ1の内壁が張り付かないような材質にして、案内溝3を廃止することが考えられる。通常、インクジェット式記録装置では、印字をしていない時には、インクを吐出する記録ヘッドからのインクの蒸発を防ぐためにキャップで記録ヘッド面を覆う。このときキャップに接続するチューブポンプのチューブ1が押し潰されている状態であると、記録ヘッドからチューブポンプまでの空間は密閉状態となる。
ここで圧力変化が生じると、密閉状態のため圧力変化を吸収できず、記録ヘッドからインクを吐出するノズルに圧力がかかり、ノズル内のインクメニスカスが破壊されて、次回の印字時に正常な印字ができなくなるという問題が発生する。
そのため、インクジェット式記録装置ではクリーニングなどでポンプを使用するとき以外は、プーリ2でチューブ1を押し潰さないようにする必要があり、案内溝3を廃止することができなかった。
そして、案内溝3があると、プーリ2を吸引端部3aからレリース端部3bへ移動させる動作が必要である。
また、プーリ2が案内溝3内を確実に移動する機構を形成する必要があるため、製造コストが上昇するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、液体の吸引機能が低下せず、且つ製造コストが低減できる液体噴射装置及び液体噴射装置のクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明によれば、液体を吸引するチューブ部と、前記チューブ部に沿って移動可能に配置される当接部と、前記当接部を前記チューブ部に沿って移動させるための回転トルクを発生させるモータ部と、を有するチューブポンプを備える液体噴射装置であって、前記当接部が前記チューブ部を押し潰しながら移動して液体を吸引する吸引区間と、前記当接部が前記チューブ部を押し潰さない非吸引区間と、液体を吸引後に前記当接部を前記非吸引区間に配置させることを特徴とする液体噴射装置により達成される。
【0009】
前記構成によれば、チューブ部は、当接部が前記チューブ部に沿って移動する際に、当接部がチューブ部を押し潰しながら移動して液体を吸引する吸引区間と、当接部がチューブ部を押し潰さない非吸引区間を有している。
すなわち、当接部をチューブ部に沿って非吸引区間に移動させるだけで、当接部を吸引位置からレリース位置に移動させることができる。
したがって、従来のように、当接部を吸引位置からレリース位置に移動させるためカム等の特別な機構が必要ないので、チューブポンプの製造コストを低減することができる。
また、このようなカム等の特別な機構を形成することにより発生するカム等の動作不良の発生も未然に防止することができる。これにより、チューブポンプの液体吸引機能の不良の発生も防ぐことができる。
例えば、カム機構の動作不良で、当接部が吸引位置からレリース位置に移動せず、チューブ部の内壁の張り付き等が生じることを未然に防止することができる。このため、このチューブ部の内壁の張り付き等で生じるチューブポンプの液体の吸引機能の不良等を未然に防ぐことができる。
さらに、インク等の液体を吐出する記録ヘッドをキャップで覆っていても、チューブ部は押し潰されないので、圧力変動などにより、記録ヘッドのノズル内のインクメニスカスが破壊されることを抑制することができる。
【0010】
好ましくは、前記チューブ部は円環形状をなしていると共に、前記円環形状の基端部には、前記非吸引区間が形成され、前記当接部は、単一の円柱部材であるとことを特徴とする液体噴射装置である。
【0011】
好ましくは、前記吸引区間が170度以下で、前記当接部は、2つの円柱部材でかつ2つの円柱部材が同時に前記非吸引区間に配置されることを特徴とする液体噴射装置である。
【0012】
好ましくは、前記モータ部の前記回転トルクを変化させるための回転トルク制御部を有し、前記チューブ部は、前記当接部が前記チューブ部に沿って移動する際に、前記モータ部の回転負荷が最大となる固定の最大負荷部を有し、前記モータ部の回転が前記最大負荷部によって停止したことを検出する回転停止検出部を有し、前記回転トルク制御部は、前記回転停止検出部の検出結果に基づいて、前記当接部を前記非吸引区間に配置する構成となっていることを特徴とする液体噴射装置である。
【0013】
前記構成によれば、モータ部の回転が固定の最大負荷部によって停止したことを検出する回転停止検出部を有し、回転トルク制御部は、回転停止検出部の検出結果に基づいて、当接部を非吸引区間に配置する構成となっている。
すなわち、最大負荷部と非吸引区間とはチューブ部において固定位置に形成されている。このため、両者の相対位置は一定である。したがって、当接部が最大負荷部で停止したことを回転停止検出部で検出すれば、回転トルク制御部は、当接部を最大負荷部の位置から非吸引区間の位置に容易に移動させることができる。
【0014】
好ましくは、前記回転停止検出部は、前記モータ部の回転の停止を電流波形の形状変化及び/又は電流波形の面積変化に基づいて検出する構成となっていることを特徴とする液体噴射装置である。
前記構成によれば、回転停止検出部は、モータ部の回転の停止を電流波形の形状変化及び/又は電流波形の面積変化に基づいて検出する構成となっているので、モータ部の回転の停止を容易且つ迅速に判断することができる。
【0015】
好ましくは、前記当接部を前記非吸引区間に配置させるための位相検出手段を有することを特徴とする液体噴射装置である。
前記構成によれば、当接部を非吸引区間に配置させるための位相検出手段を有するので、容易且つ迅速に当接部をレリース位置等に配置することができる。
【0016】
好ましくは、前記当接部が前記非吸引区間に達したときに、前記モータ部の回転トルクの伝達を解除させ、前記当接部を前記最小負荷部に配置させるための当接部配置手段を有することを特徴とする液体噴射装置である。
前記構成によれば、当接部が非吸引区間に達したときに、モータ部の回転トルクの伝達を解除させ、当接部を非吸引区間に配置させるための当接部配置手段を有する。このため、当接部配置手段によって当接部を正確に非吸引区間に配置させることができる。
【0017】
前記課題は、本発明によれば、液体を吸引するチューブ部と、前記チューブ部に沿って移動可能に配置される当接部と、前記当接部を前記チューブ部に沿って移動させるための回転トルクを発生させるモータ部と、前記当接部が前記チューブ部を押し潰しながら移動して液体を吸引する吸引区間と、前記当接部が前記チューブ部を押し潰さない非吸引区間と、を有するチューブポンプを備える液体噴射装置のクリーニング方法であって、前記チューブポンプの前記当接部が、前記吸引区間と前記非吸引区間を移動して液体を吸引する液体吸引ステップと、前記液体吸引ステップ後、前記当接部を前記非吸引区間に配置させるリークポイント移動ステップとを有することを特徴とする液体噴射装置のクリーニング方法により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明のチューブポンプを有する液体噴射装置の第1の実施の形態にかかるインクジェット式記録装置(以下「記録装置」という)10を示す概略斜視図である。
(記録装置10の全体構成の概略について)
図1に示すように、記録装置10は、フレーム11を有し、フレーム11にはプラテン12が配置されている。このプラテン12上には、図示しない紙送り機構により用紙Pが給送される構成となっている。
また、キャリッジ13は、ガイド部材14を介してプラテン12の長手方向へ移動可能に支持され、キャリッジモータ15によりタイミングベルト16を介して往復運動される構成となっている。
【0020】
キャリッジ15には、その下部に、インクジェット式記録ヘッド(以下「記録ヘッド」という)20を搭載している。記録ヘッド20は、用紙Pに対して液体である例えば、インクを吐出する構成となっている。
具体的には、記録ヘッド20は、インクを吐出するノズルを有し、圧電振動子の伸縮等によりノズルからインク滴が吐出される構成となっている。
キャリッジ13上には、インクを収容するインクカートリッジ17が着脱可能に搭載され、インクカートリッジ17から記録ヘッド20へインクが供給される構成となっている。
すなわち、キャリッジ13がプラテン12に沿って移動しながら、印刷データに基づいて、圧電振動子が伸縮されることで、記録ヘッド20から用紙Pにインクが吐出されて、印刷が行われる構成となっている。
【0021】
図1のフレーム11には、用紙Pが配置され、用紙Pに対して印字が行われる印刷領域Tを有している。また、フレーム11は、その一端側に非印刷領域であるホームポジションHを有している。
キャリッジ13は、プラテン12に沿って移動することで、印刷領域TとホームポジションHとの間を移動可能な構成となっている。
【0022】
(ホームポジションHにおける構成等について)
ホームポジションHには、図1に示すように、ヘッドクリーニング機構30が配置されている。ヘッドクリーニング機構30には、キャップホルダ31とチューブポンプ100を有している。キャップホルダ31は、図示しない公知の昇降手段により上下動可能にフレーム11に設置されている。
また、ヘッドクリーニング機構30は、キャップ32を有している。キャップ32は、その上端縁が記録ヘッド20のノズルプレート等に当接して、記録ヘッド20のノズルを封止することが可能な構成となっている。
【0023】
図2は、図1のヘッドクリーニング機構30等を示す概略図である。
キャップ32には、その底部に図2に示すように、シート状のスポンジ32aが配置されている。このスポンジ32aは、キャップ32が記録ヘッド20に当接した状態で、記録ヘッド20のノズルと所定間隔をおいて対向し、記録ヘッド20のノズルから吐出されるインクを吸収する構成となっている。
さらに、図2に示すように、キャップ32には、その底面を貫通するように排出口32bが形成されている。
チューブポンプ100は、キャップ32が記録ヘッド20のノズルを封止した状態で、キャップ32内を減圧し、負圧にし、記録ヘッド20のノズルからインクを吸引し、フレーム11内に設けられている廃インクタンク33にインクを排出する構成となっている。
【0024】
(チューブポンプ100の主な構成等について)
図3は、チューブポンプ100の主な構成等を示す概略図である。図3に示すように、チューブポンプ100は、液体である例えば、インクを吸引するためのチューブ部であるチューブ110を有している。
チューブ110は、円環状に湾曲させた可撓性チューブの両端を同方向に引き出して同一平面内で束ねる、円環形状を成している。
また、チューブポンプ100は、チューブ110の内周に沿って移動可能に配置されている単一の円柱部材の当接部である例えば、プーリ120を有している。プーリ120はプーリ中心軸121を中心に回転可能な構成となっている。
また、このプーリ120をチューブ110の内周に沿って移動させるために、チューブポンプ100は回転板130を有している。
この回転板130にモータ部である例えば、ステッピングモータ150が接続されている。
ステッピングモータ150が駆動すると、回転板130が回り、回転板130の回転でプーリ120がチューブ110の内周側を転動しながら移動する構成となっている。したがって、ステッピングモータ150は、プーリ120をチューブ110に沿って移動させるための回転トルクを発生させるモータ部の一例となっている。
【0025】
図3のプーリ120は、チューブ110を押し潰すように配置されているため、プーリ120が図3の矢印のように反時計回りでチューブ110を押し潰して移動するとチューブ110のキャップ側110aが負圧となりインクを吸引することになる。そして、チューブ110の廃インクタンク側110bにインクが排出される構成となっている。
一方、チューブ110は、図3に示すように、その構造上、円環形状の基端部であり、チューブ110を束ねた部分には、リークポイント111が形成される。
リークポイント111では、プーリ120とチューブ110との間に空間が存在するため、プーリ120によりチューブ110の押し潰さない部分である。
【0026】
リークポイント111は、プーリ120がチューブ110を押し潰さない非吸引区間の一例となっている。
このため、プーリ120が図3のリークポイント111に位置するときは、プーリ120がチューブ110を押し潰さないので、チューブポンプ100を非吸引状態とすることができる構成となっている。
また、リークポイント111以外のチューブ110の部分が、プーリ120がチューブ110を押し潰しながら移動して、インクを吸引する吸引区間の一例となっている。
【0027】
また、ステッピングモータ150には、図3に示すようにステッピングモータ150の回転トルクを変化させるための回転トルク制御部である例えば、ステッピングモータ駆動制御部151が形成されている。
そして、ステッピングモータ駆動制御部151には、ステッピングモータ駆動用データ格納部152が接続されている。このステッピングモータ駆動用データ格納部152には、ステッピングモータ150の回転トルクに相当する電流値情報を段階的に小さくするための回転トルク漸減情報である例えば、電流値漸減等データ152aが格納されている。
電流値漸減等データ152aとしては、例えば、1.2Aから0.05Aずつ電流値を下げる等の電流値情報である。
【0028】
すなわち、電流値が、当初、1.2Aに設定されて、ステッピングモータ150が回転し、その後、0.05A毎に電流値を段階的に下げ、ステッピングモータ150の回転トルクも段階的に下がる構成となっている。
また、ステッピングモータ駆動用データ格納部152には、停止電流値データ152bが格納される構成となっている。この停止電流値データ152bについては後述する。
【0029】
チューブ110は同じ径、同じ材質で形成されているが、プーリ120がチューブ110を押し潰した状態で移動するため、変形する。この変形は、チューブ110全体で一様ではないため、チューブ110の部分によって負荷が変化することになる。
すると、ステッピングモータ150が同じ回転トルクでプーリ120を移動させようとしても負荷の大小によってプーリ120の移動が妨げられることがある。
図4は、DCモータで回転板130を回し、プーリ120を移動させたときの負荷変動を電流値で示したグラフである。
図4の矢印は図3と同様に回転板130の回転方向を示すが、負荷(電流値)が一定している状態から急に負荷(電流値)が増大することが示されている(図4の矢印A参照)。この矢印Aは、図3の矢印Aに対応し、リークポイント111の直前の位置である。
【0030】
ここで、負荷(電流値)が上昇するのは、以下の理由からである。すなわち、図3に示すようにプーリ120でチューブ110が押し潰され、且つ、チューブ110が押し出されるように変形されるが、この変形はリークポイント111から離れているときは、プーリ120よるチューブ110への力は分散され、部分的にその力が集中してチューブ110の一部のみが大きく変形することはない。
したがって、プーリ120の移動による負荷(電流値)変動において大きな差が生じることはない。
【0031】
一方、図3のプーリ120が矢印の方向にチューブ110を押し潰し、且つ押し出すように移動し、リークポイント111近傍まで到達すると、リークポイント111でチューブ110は大きく屈曲しているため、チューブ110を押し出す力が、リークポイント111の直前の矢印Aの部分に集中する。すると、矢印Aの部分のチューブ110が盛り上がるように変形することになる。
その状態で、プーリ120がさらに進むと、プーリ120は、この盛り上がった矢印Aの部分を乗り越えるために、負荷(電流値)が増すことになり、図4に示すように、急に負荷(電流値)が増加するのである。
【0032】
次に、この矢印Aの部分を乗り越えると、プーリ120はリークポイント111に到達する。リークポイント111では、上述のように、プーリ120とチューブ110との間に空間が存在するため、プーリ120に対するチューブ110の反発力が最も弱くなる。 このため、図4の矢印B(図3のリークポイント111)では負荷(電流値)が大きく減少する。ここで、負荷(電流値)は矢印Aの部分で「0.024Nm(0.5A)」であるが、矢印Bの部分では「0.017Nm(0.3A)」である。
【0033】
図5は、プーリ120とチューブ110との関係を示す概略説明図である。
リークポイント111は、チューブ110からの反発力が小さいため、プーリ120は図5(a)に示すように、両側のチューブ110に挟まれるように、リークポイント111に安定して配置される。
その後、プーリ120が図5(a)の矢印方向へ更に移動しようとすると、プーリ120の移動しようとする力によって図5(b)に示すようにリークポイント111の直後である矢印Cの部分に大きな変形が生じる。
すなわち、プーリ120は、チューブ110からの反発力が最も弱いリークポイント111から変形によりチューブ110が盛り上がるように形成されている部分を昇るように移動しなければならない。
そこで、この矢印Cの部分は、図4の矢印Cで示すように最も負荷(電流値)が増大する部分となる。図4では、矢印Cの部分は負荷が「0.03Nm(0.7A)」となっている。
【0034】
このように、プーリ120の移動に伴う、負荷変動を電流値の変動として把握することができる。そして、このような電流値等の結果から、矢印Cの部分が最も負荷が大きい部分であることが分かる。
【0035】
本実施の形態で用いるステッピングモータ150はパルスに同期して回転する構成となっているが過負荷時には同期を失って脱調を生じ、モータが停止するという特性を有している。
したがって、図4の矢印Bの部分から矢印Cの部分へ、すなわち、最小の負荷から最大の負荷へ急激に、プーリ120が移動する場合は、ステッピングモータ150の回転トルクが過負荷となり、ステッピングモータ150が停止することになる。
図4の場合は電流値0.7Aに相当する回転トルクで、矢印C部分を超えることができるが、電流値を0.65Aに設定すれば、矢印Cの部分を超えることなく、又は脱調を起こさせ、プーリ120の移動が停止することになる。
このように、矢印Cの部分は、プーリ120がチューブ110に沿って移動する際に、ステッピングモータ150の回転負荷が最大となる最大負荷部の一例となっている。
また、この矢印Cの部分は、固定であるため、固定の最大負荷部の一例となっている。
【0036】
このように本実施の形態では、ステッピングモータ150により移動するプーリ120が、最大負荷部である矢印Cの部分で停止するように電流値を例えば0.65Aに設定すると、ステッピングモータ駆動制御部151は、プーリ120を矢印Cの部分で停止さることができる。
そして、矢印Cの部分とリークポイント111との距離は明らかであるため、ステッピングモータ駆動制御部151が、その距離分、ステッピングモータ150を回すことで、プーリ120をリークポイント111に配置させることができる構成となっている。
すなわち、従来のように、カム機構等を用いなくても、プーリ120をリークポイント111へ移動させることで、プーリ120をインクの吸引位置からレリース位置(非吸引位置)へと変化させることができる。
すなわち、リークポイント111では、チューブ110とプーリ120との間の距離が他の部分より大であるため、プーリ120がチューブ110を押し潰すことがない。このため、チューブ110の内壁同士が接触状態に維持されず、相互に張り付きインクの流れを阻害等することを未然に防ぐことができる。
【0037】
また、プーリ120がチューブ110を押し潰した状態で、図2のキャップ32内で圧力変化生じたとき、その圧力がチューブ110から逃げることがなく、記録ヘッド20内のノズルのメニスカスを破壊することがあるが、本実施の形態では、プーリ120とチューブ110は、押し潰された状態でないため、圧力変化を吸収でき、ノズル内のメニスカスの破壊を未然に防止できることになる。
このように、本実施の形態では、カム機構等を用いることなくチューブポンプ100の吸引機能の不良等の発生を未然に防ぐことができるので、カム機構の動作不良により生じるチューブポンプの吸引機能の不良の発生も未然に防ぐことができる。
さらに、カム機構等を用いないためチューブポンプ100の製造コストを低減させることができる。
【0038】
ところで、プーリ120が図5の矢印Cの部分で停止するときのステッピングモータ150の電流値である停止電流値は、そのチューブポンプ100毎によって異なる。また、同じチューブポンプ100でも使用回数や使用年数によって、チューブ110のへたり等が異なるため、停止電流値は変化する。
チューブ110にへたり等が生じると、図5の矢印C部分の変形の程度が変わるため、ステッピングモータ150に対する回転負荷が変動するためである。
【0039】
そこで、本実施の形態では、この最小回転電流値を定める際に、ステッピングモータ150が、実際に停止したことを検出し、この停止が検出された電流値を停止電流値とするように構成されている。
具体的には、例えば、当初、電流値1.2Aでステッピングモータ100を駆動させ、その後、1回転毎に0.05Aだけ電流値を下げる。すると、電流値が0.65Aまで下がると初めて、ステッピングモータ150は脱調等により停止する。そこで、この0.65Aを停止電流値としている。
【0040】
また、本実施の形態では、ステッピングモータ150が実際に停止したか否かの判定を、ステッピングモータ150の電流波形の形状変化及び/又電流波形の面積変化に基づいて行われている。
図6は、電流波形の一例を示す図であり、(a)はステッピングモータ150が回転しているときの電流波形を示し、(b)はステッピングモータ150の回転が停止したときの電流波形を示すグラフである。
図6(a)の斜線で示した部分が、対象となる電流波形Mである。この電流波形Mの左側の立ち上がり部分は、図示されているように、斜めとなっている。これは、ステッピングモータ150の相切替に対してステッピングモータ150のロータが回転しているので、逆起電力が発生し、電流が遅れて入ってくるためである。
【0041】
一方、図6(b)の斜線で示した部分は対象となる電流波形Sである。この電流波形Sは、立ち上がり部分は斜めでなく、ほぼ垂直の形状となっており、階段形状ともなっている。
これは、ステッピングモータ150のロータが停止状態であるため、電流が遅れて入ることがないためである。
このように、電流波形の立ち上がり部分等の形状を判断することでステッピングモータ150が駆動(回転)しているか停止しているかを容易且つ迅速に判定することが可能となる。
【0042】
また、図6の電流波形Mと電流波形Sの斜線部分の面積を比べることでもステッピングモータ150が停止したか否かを判断することができる。
具体的には、図6(a)の電流波形Mの斜線部分の面積の方が、図6(b)の電流波形Sの面積より小さいため、電流波形の面積変化を比べることでも、容易にステッピングモータ150が停止したか否かを判定することができる。
なお、電流波形の立ち上がり部分等の形状と、面積の変化とを併せて判断することも可能であり、この場合はより確実にステッピングモータ150の停止を判断することができる。
【0043】
このような処理を行うため、図3に示すように、チューブポンプ100には、波形解析部153が設けられている。波形解析部153では、ステッピングモータ150の電流波形が、図6(a)の電流波形Mや図6(b)の電流波形Sである否か、特に、これらの電流波形の立ち上がり部分等の形状変化や面積変化が判定される。
具体的には、電流波形が図6(b)となったときに、ステッピングモータ150が停止したと判断する。
すなわち、波形解析部153は、ステッピングモータ150の回転が図4の矢印Cの部分で停止したことを検出する回転停止検出部の一例である。
また、チューブポンプ100には、図3に示すように、波形解析用データ格納部155を有している、この波形解析用データ格納部155は、電流波形が図6のいずれの電流波形に該当するか否かを波形解析部153が判断するための判断用データを格納している。
【0044】
また、ステッピングモータ駆動制御部151は、このように停止が検出された電流値を停止電流値と判断する構成となっている。
具体的には、ステッピングモータ駆動制御部151は、ステッピングモータ駆動用データ格納部152の電流値漸減等データ152aを参照して、最初、1.2Aでモータを駆動させる。そして、0.05Aずつ電流値を下げ、波形解析部153がモータの停止を検知した電流値、例えば0.65Aを停止電流値とするように構成されている。
【0045】
そして、ステッピングモータ駆動制御部151は、プーリ120の停止を認識すると、プーリ120をリークポイント111まで移動させ、プーリ120をレリース位置に配置させる。
したがって、ステッピングモータ駆動制御部151は、波形解析部153の検出結果に基づいてプーリ120をリークポイント111に配置させる構成となっている。
【0046】
また、図3に示すように、ステッピングモータ駆動用データ格納部152には、停止電流値データ152bが格納される構成となっている。
このように、停止電流値データ152bが、ステッピングモータ駆動用データ格納部152内に登録されているので、その後、ステッピングモータ駆動制御部151が、次回の停止電流値を求める際の最初の電流値として、格納されている停止電流値データ152bを利用することができる。
すなわち、上述のように、最初から1.2Aとせず、前回の停止電流値データ152bである0.65Aに、例えば0.1Aを加えた0.75Aを初期値とすることができる。
そして、この0.75Aから段階的に0.05Aずつ電流値を下げることで迅速に停止電流値を求めることができる。
【0047】
このように、本実施の形態では、ステッピングモータ150の回転トルクを、対応する電流値を介して制御するため、回転トルクを容易且つ正確に制御することができる。
【0048】
本実施の形態にかかるチューブポンプ100を有する記録装置10は、以上のように構成されるが、以下、その動作例を詳細に説明する。
最初に、ヘッドクリーニング機構30を用いたクリーニング工程の全体について説明する。図7はクリーニング工程を示す概略フローチャートである。
先ず、図7のST11に示すようにキャップ32が閉状態となる。すなわち図3のキャップ32が上昇し、記録ヘッド20のノズルプレート面に当接して、キャップ32が閉空間となる。
次に、ST12に示すようにポンプモータであるステッピングモータ140を正転させる。具体的には、図3のプーリ120が矢印方向(時計回り方向)に移動することでキャップ側110aに負圧を発生させ、チューブポンプ100がインクの吸引を行う。
ST12は、吸引区間と非吸引区間とを移動してインクを吸引する吸引ステップの一例である。
このときのチューブポンプ100の回転トルクは、電流値で「1.2A程度」となる。このため。図4に示すように、矢印C部分で大きな負荷がかかってもプーリ120は停止することがない。
【0049】
チューブポンプ100のインク吸引が終了すると、ST13に示すように、キャップ32内の負圧を解除する。これはキャップ32内の負圧が高い状態で、キャップ32を開状態、すなわち、図3のキャップ32を下降させ、ノズルプレート面から離間させると、急激に負圧状態が大気圧状態に変化するため、ノズル内のメニスカスが破壊させるおそれがある。
そこで、キャップ32内の雰囲気を負圧状態から時間をかけて大気圧状態に変えるステップである。
キャップ32内の負圧が解除された後、キャップ32は下降し、記録ヘッド20から離間する。
【0050】
次に、ポンプモータ正転のステップとなる(ST15)。すなわち、図3のステッピングモータ150を駆動させ、プーリ120を矢印方向に移動させる。すると、図3のキャップ32内のインクがチューブポンプ100により廃インクタンク33へ排出されることになる。
【0051】
なお、キャップ32から離間した記録ヘッド20は、ホームポジションHから印刷領域Tに移動する途中で、ノズルプレートの表面がワイパーブレードに当接し、汚れを拭き取られることになる。すなわち、ワイピングのステップ(ST16)が行われる。
以上でクリーニングのための工程が終了する。このため、プーリ120をレリース位置に移動させる工程、すなわち、リークポイント111への移動工程が行われる(ST17)。
【0052】
図8は、ST17のリークポイント移動工程(リークポイント移動ステップの一例)を示す概略フローチャートである。
先ず、図8のST21に示すようにキャップ32を開状態とし、次に、ポンプモータの電流値を「1.2A」とする(ST22)。すなわち、図3のステッピングモータ駆動部制御部151がステッピングモータ駆動用データ格納部152内の電流値データ「1.2A」に従いステッピングモータ150を駆動させる。
次に、ST23に示すようにポンプモータを正転させる。すなわち、図3の矢印方向にプーリ120が1回転するように動作させる。
このとき、図3の波形解析部153がステッピングモータ150の電流波形を解析する。そして、ST24のように、電流波形を解析し、プーリ120が動作波形か否かを判断する。
すなわち、波形解析部153は、取得したステッピングモータ150の電流波形が、図6(b)のような、ステッピングモータ150が停止している電流波形か否かを判断する。具体的には、上述のように、その立ち上がり部等の形状や面積の変化等に基づいて判断する。
【0053】
そして、電流波形が図6(b)のような停止を示す波形でなく、図6(a)に示すような波形のときは、ステッピングモータ150が未だ停止していないと判断する。
次に、ST25で、ポンプモータ電流値を「0.05A」だけ段階的に下げ、再びST23及びST24を行う。
本実施の形態では、ステッピングモータ150が脱調等により停止するのは、図4に示すように、例えば「0.65A」であるから、ステッピングモータ150の電流値が「0.65A」まで下がるまで、ST23乃至ST25が繰り返される。
そして、電流値が「0.65A」まで下がったときに初めて、電流波形が図6(b)の波形となり、図3の波形解析部153がステッピングモータ150の停止を把握する。
そして、そのときの電流値「0.65A」が図3の停止電流値データ152bとなる。
このように、電流値を段階的に下げ、最初のステッピングモータ150の停止の波形を把握することで、ステッピングモータ駆動制御部151は、図4の矢印C部分によってステッピングモータ150が停止したことを認識することができる。
また、プーリ120は常に、同じ位置で停止することになる。すなわち、図5(b)の位置、すなわちリークポイント111より矢印C部分に少し登ったところで停止する。
【0054】
次に、図8のST26でポンプモータ電流値を、さらに「0.2A」下げ、ポンプモータを逆転させる(ST27)。すなわち、ステッピングモータ150の電流値は「0.45A」となる。
これにより、図5(b)の位置にあったプーリ120は矢印と反対方向に1/4回転(周)移動する程度にステッピングモータ150を駆動させる。
これにより、図5(b)のプーリ120は、リークポイント111へ戻るように移動する。このとき、図4の矢印A部分の負荷に相当する電流値は「0.5A」であり、電流値「0.45A」より大きいため、プーリ120は矢印Aの部分を昇ることなく、図5(a)に示すように、リークポイント111に正確に配置される。
以上のようにST24にて、プーリ120は、毎回必ず、リークポイント111に位置するように制御することができる。また、本実施の形態ではリークポイント111を、次回のインクの吸引動作の開始点としている。このため、毎回、必ず特定の位置からプーリ120がチューブ110に沿って吸引を開始するので、インクの吸引量のバラツキが生じないチューブポンプ100となっている。
次に、ST28でキャップ32を閉めることで、リークポイント移動工程は終了し、クリーニング工程も終了する。
なお、ST17のリークポイント移動工程は、ST15のポンプモータ正転の後に行っても良い。このとき、ポンプモータを正転させ、キャップ32内のインクを排出し、ポンプモータを減速させる工程と同期して、リークポイント移動工程(ST17)を行うことも可能である。
【0055】
(第2の実施の形態)
図9は、本発明の第2の実施の形態にかかる記録装置のチューブポンプ200を示す概略斜視図である。本実施の形態にかかる記録装置は、上述の記録装置10と多くの構成が共通するため、共通の構成は同一符号等として、説明を省略し、以下相違点を中心に説明する。
先ず、図9に示すように、チューブポンプ200はポンプフレーム201を有し、このポンプフレーム201内に、図3のチューブ110、回転板130及びプーリ120等が格納されている。
このポンプフレーム201から突出するように検出用回転軸202が形成されている。この検出用回転軸202は、図3の回転板130と一体に回転する構成となっている。
この検出用回転軸202の先端には検出用回転板203が取り付けられており、この検出用回転板203には、切り欠き部203aが形成されている。
【0056】
検出用回転板203の近傍には、検出用回転板203の回転動作の位相を検出するための位相検出装置240が配置されている。位相検出装置240は、検出用回転板203の位相を検出するための光センサ241を有している。光センサ241は、光を照射する発光部241aと、この発光部が照射した光を受光する受光部241bとを有している。
すなわち、図9に示すように、発光部241aからの光は検出用回転板203によって遮られ、受光部241bで光を検出することができないが、検出用回転板203の切り欠き部203aの部分では、発光部241aの光を受光部241bが受光できる。
【0057】
検出用回転板203は図3の回転板130と同期して回転するため、切り欠き部分203aの位置とプーリ120の位置との位置関係は不変である。また、光センサ241は固定されているので、光センサ241とチューブ110との位置関係も不変である。
したがって、切り欠き部231aの位置を光センサ241で検知することで、プーリ120がチューブ110のどの部分に位置しているかを把握することができる。換言すれば、切り欠き部203aの通過を光センサ141が検知し、次に、切り欠き部203aの通過を検知したときは、プーリ120がチューブ110を1回転(周)したことになる。
【0058】
このように、位置検出装置240で、検出用回転板203の切り欠き部203aの通過の有無を把握することで、プーリ120の停止又は回転を容易に把握できる構成となっている。
そして、位置検出装置240が切り欠き部203aを検出したときに、プーリ120がリークポイント111に位置するように構成されている。
したがって、チューブポンプ200は、インクの吸引が終了し、プーリ120をリークポイント111へ移動させるときは、位置検出装置240の位相に基づき、光センサ241が光を受光したタイミングでステッピングモータ150の回転を止めることで、容易且つ迅速にプーリ120をリークポイント11に配置することができる。
すなわち、位相検出装置240は、プーリ120をリークポイント111に配置させるための位相検出手段の一例である。
【0059】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の第3の実施の形態にかかる記録装置のチューブポンプ300を示す概略分解斜視図である。本実施の形態にかかる記録装置は、上述の記録装置10と多くの構成が共通するため、共通の構成は同一符号等として、説明を省略し、以下相違点を中心に説明する。
本実施の形態ではチューブポンプ300は、第1の実施の形態のチューブ110、プーリ120及び回転板130等が収容されているポンプ本体310を有している。この回転板130と同期して回転する回転軸305aと、第2回転板305bが形成されている。
すなわち、第2回転板305bと回転軸305aが回転することで、回転板130が回転する構成となっている。
そして、第2回転板305bは、回転軸ストッパ304、第2の複合歯車303、第1の複合歯車302等を介してモータ301に接続されている。
したがって、モータ301の回転は、これらを介して第2の回転板305bに伝達させる構成となっている。
【0060】
この回転軸ストッパ304は、第2の回転板305bと離間し、モータからの回転を第2の回転板305bに伝達しない位置に移動可能な構成となっている。
そして、この回転軸ストッパ104には、アームストッパ306が係止可能に配置されている。
すなわち、アームストッパ306の係止凸部306aが回転軸ストッパ304の係止凹部304bと係止したときに、回転軸ストッパ304は、第2の回転板305bと離間しモータ301の回転を伝達しない位置に移動する。これによりポンプ本体310内のプーリ120もその移動を停止する。
【0061】
本実施の形態では、この回転軸ストッパ304の係止凹部304bとアームストッパ306の係止凸部306aとが係止する位置が、プーリ120がリークポイント111に配置されている部分に相当するように構成されている。
したがって、アームストッパ306を操作することで、プーリ120をリークポイント111に正確に配置させることができる。
このアームストッパ306、回転軸ストッパ304等が、プーリ120がリークポイント111に達したときに、モータ301の回転トルクの伝達を解除させ、プーリ120をリークポイント111に配置させるための当接部配置手段の一例となっている。
【0062】
(第4の実施の形態)
図11は、本発明の第4に実施の形態にかかる記録装置のチューブポンプ400の要部を示す概略説明図である。本実施の形態にかかる記録装置は、上述の記録装置10と多くの構成が共通するため、共通の構成は同一符号等として、説明を省略し、以下相違点を中心に説明する。
本実施の形態では、チューブポンプ400のチューブ410の形状がU字状となっている点及び2つのプーリ420a、420bがある点、さらに、リークポイントの位置が上述の各実施の形態と異なる。
【0063】
すなわち、図11に示すように、本実施の形態は、一対のプーリ420a、420bがU字状のチューブ410を押し潰すタイプのチューブポンプ400となっている。このようなチューブポンプ400では、2つのプーリ420a、420bがチューブ410のU字状部410aを押し潰し、変形させる区間が150度以上170度以下、例えば170度となっている。
このため、図11の破線で示した位置に2つのプーリ420a、420bが配置されたときは、いずれのプーリ420a、420bもチューブ410を押し潰していないため、この区間は非吸引区間であるリークポイントとなる。
すなわち、この170度の範囲が、吸引区間の一例である。また、2つのプーリ420a、420bは円柱部材でなっているので、本実施の形態では、2つの円柱部材のプーリ420a等が同時にリークポイントに配置される構成となっている。
本発明では、上述のチューブポンプ100等に代えて、本実施の形態にかかるチューブポンプ400を記録装置10に適用することができる。
【0064】
(第5の実施の形態)
図12は、本発明の第5の実施の形態にかかる記録装置のチューブポンプ500の要部を示す概略説明図である。本実施の形態にかかる記録装置は、上述の記録装置10と多くの構成が共通するため、共通の構成は同一符号等として、説明を省略し、以下相違点を中心に説明する。
本実施の形態のチューブポンプ500は、図12に示すように、一部を円環状に湾曲させたポンプフレーム(図示せず)でその外周を支持した可撓性のチューブ510と、この可撓性のチューブ510の円環状の内周を転動させるプーリ520を有している。
このプーリ520が移動することにより、キャップ32側からインクを吸引し、廃インクタンク33側にインクを排出する構成となっている。
そして、本実施の形態では、チューブ510同士が交差している部分がリークポイント511となる。
本発明では、上述のチューブポンプ100等に代えて、本実施の形態にかかるチューブポンプ500を記録装置10に適用することができる。
【0065】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。また、本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のチューブポンプを有する液体噴射装置の第1の実施の形態にかかるインクジェット式記録装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1のヘッドクリーニング機構等を示す概略図である。
【図3】チューブポンプの主な構成等を示す概略図である。
【図4】DCモータで回転板を回し、プーリを移動させたときの負荷変動を電流値で示したグラフである。
【図5】プーリとチューブとの関係を示す概略説明図である。
【図6】電流波形の一例を示す図であり、(a)はステッピングモータが回転しているときの電流波形を示し、(b)はステッピングモータの回転が停止したときの電流波形を示すグラフである。
【図7】クリーニング工程を示す概略フローチャートである。
【図8】ST17のリークポイント移動工程を示す概略フローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態にかかる記録装置のチューブポンプを示す概略斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態にかかる記録装置のチューブポンプを示す概略分解斜視図である。
【図11】本発明の第4に実施の形態にかかる記録装置のチューブポンプの要部を示す概略説明図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態にかかる記録装置のチューブポンプの要部を示す概略説明図である。
【図13】従来のチューブポンプの主な構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0067】
10・・・インクジェット式記録装置、100・・・チューブポンプ、110・・・チューブ、120・・・プーリ、130・・・回転板、150・・・ステッピングモータ、151・・・ステッピングモータ駆動制御部、152・・・ステッピングモータ駆動用データ格納部、152a・・・電流値漸減等データ、152b・・・停止電流値データ、153・・・波形解析部、154・・・波形解析用データ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸引するチューブ部と、
前記チューブ部に沿って移動可能に配置される当接部と、
前記当接部を前記チューブ部に沿って移動させるための回転トルクを発生させるモータ部と、を有するチューブポンプを備える液体噴射装置であって、
前記当接部が前記チューブ部を押し潰しながら移動して液体を吸引する吸引区間と、
前記当接部が前記チューブ部を押し潰さない非吸引区間と、
液体を吸引後に前記当接部を前記非吸引区間に配置させることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記チューブ部は円環形状をなしていると共に、前記円環形状の基端部には、前記非吸引区間が形成され、
前記当接部は、単一の円柱部材であるとことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記吸引区間が170度以下で、
前記当接部は、2つの円柱部材でかつ2つの円柱部材が同時に前記非吸引区間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記モータ部の前記回転トルクを変化させるための回転トルク制御部を有し、
前記チューブ部は、前記当接部が前記チューブ部に沿って移動する際に、前記モータ部の回転負荷が最大となる固定の最大負荷部を有し、
前記モータ部の回転が前記最大負荷部によって停止したことを検出する回転停止検出部を有し、
前記回転トルク制御部は、前記回転停止検出部の検出結果に基づいて、前記当接部を前記非吸引区間に配置する構成となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記回転停止検出部は、前記モータ部の回転の停止を電流波形の形状変化及び/又は電流波形の面積変化に基づいて検出する構成となっていることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記当接部を前記非吸引区間に配置させるための位相検出手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記当接部が前記非吸引区間に達したときに、前記モータ部の回転トルクの伝達を解除させ、前記当接部を前記最小負荷部に配置させるための当接部配置手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項8】
液体を吸引するチューブ部と、
前記チューブ部に沿って移動可能に配置される当接部と、
前記当接部を前記チューブ部に沿って移動させるための回転トルクを発生させるモータ部と、
前記当接部が前記チューブ部を押し潰しながら移動して液体を吸引する吸引区間と、
前記当接部が前記チューブ部を押し潰さない非吸引区間と、を有するチューブポンプを備える液体噴射装置のクリーニング方法であって、
前記チューブポンプの前記当接部が、前記吸引区間と前記非吸引区間を移動して液体を吸引する液体吸引ステップと、
前記液体吸引ステップ後、前記当接部を前記非吸引区間に配置させるリークポイント移動ステップとを有することを特徴とする液体噴射装置のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−256110(P2006−256110A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76868(P2005−76868)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】