説明

液体噴射装置

【課題】 保湿性と掃け性とを兼ね備えた吸収材を有した液体噴射装置を提供することにある。
【解決手段】 キャップ部材12のケース15内に球体形状を成す複数の第1粒状体16を互いにその位置を移動可能となる程度の密度で配置した。また、各第1粒状体16は、その表面が親液性で、かつその比重がインクに比べて小さいものとした。そして、キャップ部材12に排出されたインク(廃インク)を、空間Sを通って底面15aに向かって誘導させるとともに、その一部のインク(廃インク)を空間Sに閉じ込めた状態で保持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置として、インクを印刷用紙に噴射させて印刷を行うインクジェット式プリンタがよく知られている。
この種のインクジェット式プリンタにおいては、記録ヘッドのノズルから噴射されるインクの噴射不良を低減するために、ノズルから増粘したインクを吐出させるクリーニングが適宜行われる。
【0003】
こうしたクリーニングでは、キャップ装置で記録ヘッドのノズルの形成面を封止した状態で吸引ポンプを駆動させ増粘したインクをノズルから強制的に吸引吐出させる。そして、吸引吐出されたインクは、プリンタ内に設けたインク収容体に回収されるようになっている。
【0004】
この種のキャップ装置には、その内部に吸収材が配設されており、ノズルから排出されたインクをその吸収材に吸収させ、非印刷時において同ノズルを封止することで、ノズルに付着したインクが乾燥して目詰まりを起こすのを抑制している。また、吸収材内でインクが固化しないように、その吸収したインクをインク収容体へ排出するようになっている。
【0005】
しかしながら、近年、高画質を実現するためインクとして高濃度の顔料を含む顔料インクを使用することが多くなっており、これら顔料インクはより固化し易い。これにより、吸収材が目詰りを起こし易くなり、インク収容体へ排出しにくくなる。
【0006】
そこで、キャップ装置内に設ける吸収体を2層とし、吸収体密度が疎である吸収体をキャップ装置のノズル側に配設し、インク吸引等において吸収体の掃け性を良くしたものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−175306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記文献1では、掃け性は改善されるが、その分保湿性が低下してしまい、その結果、ノズルが乾燥して目詰まりを起こしやすくなってしまうという問題があった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、保湿性と掃け性とを兼ね備えた吸収材を有した液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体噴射装置は、噴射ヘッドから吐出される液体を収容凹部にて収容する収容体を備えた液体噴射装置において、前記収容体の収容凹部に複数の第1粒状体を配置した。
【0009】
これによれば、収容体の収容凹部に収容された液体は各第1粒状体の間隙に形成される空間に液体を閉じ込められる。従って、収容凹部内の雰囲気の保湿性が高められる。また、収容凹部に収容された液体は各第1粒状体の間隙に形成される空間を伝わって速やかに排出される。従って、液体に対する掃け性が高められる。
【0010】
この液体噴射装置において、前記収容体の収容凹部に配置された前記複数の第1粒状体は、親液性の粒状体であってもよい。
これによれば、噴射ヘッドから吐出された液体が第1粒状体に密着して付着するので、噴射ヘッドから吐出された液体は確実に収容体の収容凹部内に収容される。
【0011】
この液体噴射装置において、前記収容体の収容凹部に充填された前記複数の第1粒状体は、前記収容凹部に前記第1粒状体の粒径より小さい空隙を有する部材で囲まれて配置されていてもよい。
これによれば、複数の第1粒状体が収容凹部の外部に流れ出ることがない。
【0012】
この液体噴射装置において、前記第1粒状体を配置した収容体は、前記複数の第1粒状体とは異なる複数の第2粒状体を配置してもよい。
これによれば、収容凹部内の雰囲気の保湿性と液体に対する掃け性を所望のものに調整することができる。
【0013】
この液体噴射装置において、前記第2粒状体の粒径は、前記第1粒状体の粒径より小さく、前記第2粒状体は前記第1粒状体より前記収容凹部において上側に配置されていてもよい。
【0014】
これによれば、たとえば、第1粒状体が第2粒状体と同じ材質で構成されている場合、その粒径が小さければ、その分、収容凹部内に密に配置されるので、各第2粒状体の間隙に形成される空間は各第1粒状体の間隙に形成される空間に比べて小さく、その掃け性が低い。従って、上記のように第2粒状体が第1粒状体より上側に配置された場合では、収容凹部内の上側の保湿性が高められる。
【0015】
この液体噴射装置において、前記第2粒状体は、前記収容凹部に前記第2粒状体の粒径より小さい空隙を有する部材で囲まれて配置されていてもよい。
これによれば、複数の第2粒状体が収容凹部の外部に流れ出ることがない。
【0016】
この液体噴射装置において、前記第2粒状体は、親液性の粒状体であってもよい。
これによれば、噴射ヘッドから吐出された液体は第2粒状体に密着して付着される。
【0017】
この液体噴射装置において、前記第2粒状体の親液性は、前記第1粒状体の親液性より高く、前記複数の第2粒状体は、前記複数の第1粒状体より前記収容凹部において上側に配置されていてもよい。
【0018】
これによれば、噴射ヘッドから吐出された液体は第2粒状体に密着して付着されるので、前記複数の第1粒状体より前記収容凹部において上側の雰囲気の保湿性を高めることができる。
【0019】
この液体噴射装置において、前記第1粒状体又は前記第2粒状体の少なくとも一方が前記収容凹部内で移動可能に配置されてもよい。
これによれば、たとえば、第1粒状体及び前記第2粒状体の各比重が液体より小さければ、液体が収容凹部内に一時的に貯留されたとき、第1及び第2粒状体が同収容凹部内で攪拌される。これにより、第1及び第2粒状体は、回転しその向きを換えながら動くので、その表面に強く付着した増粘した液体が剥がれ落ちやすくなる。この結果、第1及び第2粒状体の各表面が洗浄され、第1及び第2粒状体の液体に対する付着性を回復させることができる。
【0020】
この液体噴射装置において、前記第1粒状体又は前記第2粒状体の比重は、液体より小
さくてもよい。
これによれば、第1粒状体及び前記第2粒状体の各比重が液体より小さければ、液体が収容凹部内に一時的に貯留されたとき、第1及び第2粒状体が同収容凹部内で攪拌される。
【0021】
この液体噴射装置において、前記収容体は、前記液体が配置されるターゲットを支持する支持体に取り付けられ前記噴射ヘッドからの前記ターゲット上に配置されない前記液体を収容するものであってもよい。
【0022】
これによれば、例えば、液体噴射装置が所謂縁なし印刷を可能とするインクジェット式プリンタである場合では、支持体であるプラテン上に排出されたインクを収容する収容体を高い保湿性と掃け性とを兼ね備えたものにすることができる。
【0023】
この液体噴射装置において、前記収容体は、前記噴射ヘッドのノズル形成面を封止し、前記噴射ヘッドから排出される前記液体を収容するキャップ部材であってもよい。
これによれば、例えば、液体噴射装置がインクジェット式プリンタである場合、その液体噴射ヘッドである記録ヘッドを非印刷時に封止してその状態を良好に維持させるキャップ部材をインクに対する高い保湿性と掃け性とを兼ね備えたものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタの概要を示す図面である。図2は、図1のインクジェットプリンタの要部断面を示す図面である。
【0025】
図1に示すように、インクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタという)1は、上側が開口したフレーム2を備え、そのフレーム2の左右両側板3a,3b間には、ガイド部材4が配設されている。ガイド部材4には、同ガイド部材4に沿って摺動可能にキャリッジ5が支持されている。キャリッジ5は、キャリッジモータ6とタイミングベルト7を介して連結され、同キャリッジモータ6の駆動によって図1中X矢印方向、すなわち、主走査方向に移動可能になっている。
【0026】
また、キャリッジ5の上側面には、液体としてのインクI(図5参照)を貯留するインクカートリッジ8が着脱可能に装填されている。また、キャリッジ5の下側面にはインクカートリッジ8からインクIの供給を受ける噴射ヘッドとしての記録ヘッド9が設けられている。図2に示すように、記録ヘッド9は、その下面にノズル形成面9aが形成され、そのノズル形成面9aには複数のノズル(図示略)が形成されている。また、記録ヘッド9には、インクカートリッジ8から記録ヘッド9へ供給されたインクIをそのノズルから吐出させる圧電素子(図示略)が設けられている。
【0027】
さらに、記録ヘッド9が走査される下方には、ガイド部材4と平行になるように支持体としてのプラテン10が配設されている。プラテン10は、ターゲットとしての紙Pを支持する支持台である。そして、プラテン10はフレーム2に対してガイド部材4と平行となるようにして配設されており、記録ヘッド9と対向している。また、このプラテン10上には、図示しない紙送り機構によって、図1中Y矢印方向、すなわち、副走査方向に沿って紙Pが給送されるようになっており、紙Pはこのプラテン10上において、記録ヘッド9に対向するようになる。
【0028】
そして、キャリッジ5がガイド部材4に沿って往復移動されながら、印刷データに基づ
いて前記圧電素子が駆動されると、記録ヘッド9の各ノズル(図示略)から紙Pに対して所定量のインクIが吐出され、紙P上に文字や画像が印刷される。
【0029】
また、キャリッジ5のホームポジションに対応する位置、即ち、図2中、プリンタ1の右端側の紙Pが給送されない非印刷領域には、クリーニング装置11が配設されている。クリーニング装置11は、図2に示すように、収容体としてのキャップ部材12、吸引ポンプ13及び吸引チューブ14を備えている。
【0030】
図3は、キャップ部材12の全体斜視図であり、図4は、その断面図である。図5は、キャップ部材12内部の拡大図である。
図3及び図4に示すように、キャップ部材12は、その上側(記録ヘッド9に対向する側)が開口した収容凹部Kを有するケース15を備えている。ケース15の底面15aには排出口Hが貫通形成されている。キャップ部材12は、図示しない公知の昇降手段により上下動可能となっており、キャリッジ5が前記ホームポジションに位置しているときに上昇することでケース15が記録ヘッド9のノズル形成面9aのノズルを当接して封止し、蓋体として機能する(図2参照)。
【0031】
ケース15内には、その底面15aに当接するように第1ネットM1が固着されている。ケース15内であって、第1ネットM1上には複数の微細な第1粒状体16が配置されている。図4に示すように、本実施形態では、各第1粒状体16は全て同じ粒径を有した球体形状を成している。また、第1粒状体16は、樹脂で構成されその表面に親液処理が施されており、親液性を有している。さらに、本実施形態の第1粒状体16は、インクIに比べてその比重が小さい材料(例えば樹脂)で構成されている。
【0032】
また、ケース15内であって、複数の第1粒状体16の上方位置には、第2ネットM2が配置固定されている。従って、その第1ネットM1及び第2ネットM2の間に前記第1粒状体16が互いにその位置を移動可能となる程度の密度で囲まれている。そして、図4及び図5に示すように、隣接する第1粒状体16同士で囲まれた間隙には空間Sが形成される。
【0033】
また、この第1及び第2ネットM1,M2は、それぞれ第1粒状体16の粒径より小さい空隙を有する部材である。このため、第1ネットM1により、第1粒状体16が排出口Hから通り抜けるのを抑制される。また、第2ネットM2により、第1粒状体16がその収容凹部Kから漏出するのが抑制される。また、第1粒状体16が第2ネットM2を塞ぐことで排出口Hからインクが排出されなくなることを防止している。
【0034】
図4に示すように、排出口Hには、吸引チューブ14に連結されている。吸引チューブ14は可撓性を有している。図2に示すように、吸引チューブ14は、吸引ポンプ13を介してその他端側の排出口が廃インクタンク17に接続されている。吸引ポンプ13は、内部に回転体を有しその回転体の回転により吸引チューブ14を圧迫することによって負圧を発生させる機構のチューブポンプであり、図示しないモータの動力によって駆動されるようになっている。
【0035】
このように構成されたクリーニング装置11は、前記昇降手段によりキャップ部材12が上昇してノズル形成面9aのノズルを封止した状態で、吸引ポンプ13が駆動すると、キャップ部材12内部が負圧になり、ノズルから増粘したインクI(廃インク)が強制的に吸引吐出され、キャップ部材12へ排出される。
【0036】
すると、図5に示すように、そのインクI(廃インク)が第2ネットM2を介してキャップ部材12内に収容され、第1粒状体16の表面上に付着する。各第1粒状体16の表
面は親液性を有しているので、インクI(廃インク)は、各第1粒状体16の表面に跳ね返って再度ノズルに付着することはなく、各第1粒状体16の表面上に濡れ広がって吸着される。このために、インクI(廃インク)は、確実にキャップ部材12内に収容される。そして、インクI(廃インク)は、各粒状体の間隙に形成された前記空間Sに閉じ込められる。
【0037】
その後、インクI(廃インク)は、徐々に下方、つまり、底面15aに向かって落下し第1ネットM1を介して排出口Hに到達する。このとき、インクI(廃インク)は、一部の前記空間Sを通ることによって底面15aに向かって速やかに落下する。即ち、インクIに対する掃け性が高い。そして、排出口Hに到達したインクI(廃インク)は、吸引チューブ14を介して廃インクタンク17に排出される。
【0038】
また、インクI(廃インク)は、前記したように、排出口H及び吸引チューブ14を介して廃インクタンク17に排出されるが、特に、吸引ポンプ13が駆動開始時においては、ノズルからキャップ部材12に排出されるインクI(廃インク)の量が、キャップ部材12から廃インクタンク17に排出される量より多くなる場合がある。このような場合においては、インクI(廃インク)がキャップ部材12内に一時的に貯留される。この場合、第1粒状体16の比重はインクIに比べて小さいので、図6に示すように、第1粒状体16が上方向(記録ヘッド9側方向)に浮き上がり始め、ケース15内で攪拌される。これにより、各第1粒状体16は、回転しその向きを換えながらケース15内を動くので、その表面に強く付着した増粘したインクI(廃インク)が剥がれ落ち、各第1粒状体16の表面が洗浄される。従って、第1粒状体16間に付着されたインクIによる目詰まりが解消される。この結果、第1粒状体16のインクI(廃インク)に対する付着性が回復するとともに、インクIに対する掃け性も回復する。
【0039】
また、この状態で吸引ポンプ13が停止すると、キャップ部材12は、ノズル形成面9aに当接した状態が保持されて記録ヘッド9の蓋体として機能する。このとき、前記したように、一部の空間Sには、インクI(廃インク)が閉じ込められたままその状態が保持されているので、キャップ部材12内部の雰囲気の保湿性が高められノズルが乾燥して目詰まりを起こすことはない。
【0040】
また、第1粒状体16は微細な球体形状であるので、そのケース15の形状がどのような形状であろうともその形状に寄らず配置させることができる。即ち、本実施形態では、ケース15は、略直方形状であったが、これが他の形状(例えば、球体形状等)であってもその形状に応じた設計変更等を行うことなくその配置される量を調整しさえするだけでよい。
【0041】
さらに、第1粒状体16は、プリンタ1本体の廃却時に取り出して洗浄することにより、初期の性能を回復させ再使用することができる。従って、着色や目詰まり等により再利用が困難である不織布やスポンジの吸収材に対して、リサイクル性を向上させることができる。
【0042】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、キャップ部材12のケース15内に球体形状を成す複数の第1粒状体16を互いにその位置を移動可能となる程度の密度で配置した。従って、互いに隣接する第1粒状体16間には空間Sが形成される。そして、キャップ部材12に排出されたインクI(廃インク)は、空間Sを通って底面15aに向かって誘導されるので、インクIに対して高い掃け性を有する。
【0043】
(2)本実施形態によれば、キャップ部材12に排出されたインクI(廃インク)は、
互いに隣接する第1粒状体16間に形成される空間Sの一部に閉じ込められたままその状態で保持される。従って、非印刷時において、キャップ部材12をノズル形成面9aに当接させた状態においてキャップ部材12内部の雰囲気の保湿性が高められる。この結果、ノズルが乾燥して目詰まりを起こすことを防止することができる。
【0044】
(3)本実施形態によれば、キャップ部材12のケース15内に球体形状を成す複数の第1粒状体16を互いにその位置を移動可能となる程度の密度で配置した。従って、キャップ部材12に排出されたインクI(廃インク)は、互いに隣接する第1粒状体16間に形成される空間Sを通って底面15aに向かって誘導されるとともに、一部の空間Sに閉じ込められたままその状態で保持される。この結果、第1粒状体16は、高い保湿性と掃け性とを兼ね備えたものとなる。
【0045】
(4)本実施形態によれば、各第1粒状体16の表面は親液性を有しているので、インクIを確実に付着させることができる。
(5)本実施形態によれば、第1粒状体16は微細な球体形状である。従って、従来のような板状の吸収材とは異なり、ケース15の形状に寄らずどのような形状を成したものであってもその配設される量を調整しさえするだけで適応させることができる。この結果、吸収材をケースの形状に合わせて別々にその形状を設計変更する煩わしさが解消される。
【0046】
(6)本実施形態によれば、第1粒状体16をその粒径よりも小さなピッチを有する第1ネットM1及び第2ネットM2の間に配置した。従って、第1粒状体16がキャップ部材12の外部に流れ出ることがない。
【0047】
(7)本実施形態によれば、第1粒状体16は、その比重がインクIに比べて小さい。従って、インクI(廃インク)がキャップ部材12内に一時的に貯留されたとき、ケース15内で攪拌される。これにより、各第1粒状体16は、回転しその向きを換えながらケース15内を動くので、その表面に強く付着した増粘したインクIが剥がれ落ちやすくなり、各第1粒状体16の表面を洗浄される。この結果、第1粒状体16のインクI(廃インク)に対する付着性を回復させることができる。
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図7に従って説明する。この第2実施形態のプリンタ1は、キャップ部材12の構成が異なっている以外は上記第1実施形態と同じである。従って、同じ構成部材については符号を等しくし、その詳細な説明を省略する。
【0048】
図7に示すように、本実施形態のキャップ部材12aは、第1ネットM1と第2ネットM2との間にそれぞれと所定の間隔を隔てて第3ネットM3がケース15の側面15bに固着されている。
【0049】
そして、上記第1粒状体16は第1ネットM1と第3ネットM3との間に、互いにその位置を移動可能となる程度の密度で充填されている。第3ネットM3と第2ネットM2との間には、第1粒状体16より小さな粒径を有する第2粒状体16sが互いにその位置を移動可能となる程度の密度で充填されている。つまり、第3ネットM3を介してケース15の底面15a側に第1粒状体16が、上側(記録ヘッド9に対向する側)に第2粒状体16sが配設されている。
【0050】
この第2粒状体16sは、第1粒状体16と同様に、インクIに比べてその比重が小さい材料(例えば樹脂)で構成されている。また、その表面は親液処理が施され、親液性を有している。また、第2及び第3ネットM2,M3は、それぞれ第2粒状体16sの粒径より小さい空隙を有する部材である。この第2ネットM2により、第2粒状体16sがキ
ャップ部材12の外部に流れ出ることがない。また、第3ネットM3により、第1粒状体16と第2粒状体16sとが交じり合うのが回避される。
【0051】
このように構成されたキャップ部材12aにおいて、第2粒状体16sは、第1粒状体16よりもその粒径が小さいので、第2粒状体16s同士の間隙が小さく互いに緻密に配設される。この結果、インクI(廃インク)は、排出されにくくなるため、第1粒状体16よりも保湿性が高くなる。そして、その第2粒状体16sは第3ネットM3を介してケース15の上側(記録ヘッド9に対向する側)に配設されているので、ノズル形成面9aに当接させた状態にすることでノズルに対する保湿効果がより向上される。
【0052】
一方、第1粒状体16は、ケース15の底面15a側に配設されているので、キャップ部材12に排出されたインクIを速やかに廃インクタンク17に排出することができる。従って、ノズルに対する高い保湿効果とインクIを廃インクタンク17に速やかに排出する高い掃け性とを同時に兼ね備えたキャップ部材12aを備えたプリンタ1を提供することができる。
【0053】
尚、発明の実施形態は、上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように実施してもよい。
・上記第1実施形態では、第1粒状体16は、第1ネットM1と第2ネットM2によって囲まれるようにして配置した。これを、第1ネットM1と第2ネットM2とが一体となったネット内に第1粒状体16が配置されていてもよい。
【0054】
・上記第1ネットM1及び第2ネットM2の形状は限定されるものではなく、たとえば、スリット状であってもよい。また、第1ネットM1はケース15の底面15aに当接するようにしたが、底面15aから離れていても良い。このようにすることで、インク流路が確保され、インクIをさらに速やかに廃インクタンク17に排出することができる。
【0055】
・上記各実施形態では、第1及び第2粒状体16,16sは、微細な球体形状であったが、これに限定されるものではなく、例えば図8(a)に示すように、貫通した貫通孔19aを有したものであってもよい。このような形状にすることで、この貫通孔19aを通ってインクIを底面15aに向かって誘導させることができるので、化学的な処理を施すことなく、よりインクI(廃インク)に対する掃け性を向上させることができる。また、第1及び第2粒状体16,16sは、図8(b)に示すように、その表面に貫通しない複数の微小な窪み19bを備えたものであってもよい。このような形状にすることで、この窪み19bにインクIを収納保持させることができるので、親液処理といった化学的な処理を施すことなく、粒状体に親液性を備えることが可能となる。
【0056】
また、第1及び第2粒状体16,16sは球体形状であったが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、立方形状、錐形状、不定形状等であってもよい。例えば、図8(c)に示すようにその表面上に細かい突起19cを有した形状を成したものであってもよい。このような形状にすれば、隣接する他の粒状体との間に形成される空間Sの容積が突起により、より大きくなるのでインクIをより速やかに廃インクタンク17に排出することができる。また、例えば、第1及び第2粒状体16,16sは、上記の他、立方形状、錐形状、不定形状等であってもよい。
【0057】
・上記各実施形態では、第1及び第2粒状体16,16sは、親液処理を施して親水性を有していたが、特に親液性を有してなくてもよい。この場合、親液処理を施す煩わしさが解消される。
【0058】
・上記各実施形態では、第1及び第2粒状体16,16sは、樹脂で構成されていたが
、特にこれに限定されるものではなく、金属や金属酸化物で構成されていてもよい。また、多孔質セラミックスであってもよい。
【0059】
・上記各実施形態では、第1及び第2粒状体16,16sをキャップ部材12,12aに配設した。そして、第1及び第2粒状体16,16sによってインクI(廃インク)を吸収し、廃インクタンク17に排出するようにした。これを、インクIを吸収し、同インクIを廃インクタンク17へ排出する機能を有するプリンタ1の他の部材に用いてもよい。例えば、プリンタ1が縁無し印刷が可能なものであって、そのプラテン10に紙P上に配置されない不要なインクIを吸収する吸収部材を備えたものである場合において、その吸収部材に本発明の第1及び第2粒状体16,16sを使用してもよい。このようにすることで、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。また、廃インクタンクに第1及び第2粒状体16、16sを使用してもよい。この場合、インクの保持性が要求されるので、図8(a)や図8(b)のような形状にして、インクを保持する部分を増やすことが望ましい。
【0060】
・上記実施形態では、液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ1について説明したが、その他の液体噴射装置であってもよい。例えば、ファクシミリ、コピア等を含む印刷装置や、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造に用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての資料噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1実施形態に係るインクジェット式プリンタの概要を示す図面である。
【図2】インクジェットプリンタの要部断面を示す図面である。
【図3】第1実施形態に係るキャップ部材の全体斜視図である。
【図4】第1実施形態に係るキャップ部材の断面図である。
【図5】第1実施形態に係るキャップ部材内部の拡大図である。
【図6】第1実施形態に係るキャップ部材を説明するための図である。
【図7】第2施形態に係るキャップ部材の断面図である
【図8】(a),(b),(c)はそれぞれ別例の粒状体を説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
H…排出口、I…液体としてのインク、K…収容凹部、M1…第1ネット、M2…第2ネット、P…ターゲットとしての紙、1…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、9…噴射ヘッドとしての記録ヘッド、12…収容体としてのキャップ部材、16…第1粒状体、16s…第2粒状体、19a…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ヘッドから吐出される液体を収容凹部にて収容する収容体を備えた液体噴射装置において、
前記収容体の収容凹部に複数の第1粒状体を配置したことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記収容体の収容凹部に配置された前記複数の第1粒状体は、親液性の粒状体であることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体噴射装置において、
前記収容体の収容凹部に充填された前記複数の第1粒状体は、前記収容凹部に前記第1粒状体の粒径より小さい空隙を有する部材で囲まれて配置されたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の液体噴射装置において、
前記第1粒状体を配置した収容体は、前記複数の第1粒状体とは異なる複数の第2粒状体を配置したことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射装置において、
前記第2粒状体の粒径は、前記第1粒状体の粒径より小さく、前記第2粒状体は前記第1粒状体より前記収容凹部において上側に配置されたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の液体噴射装置において、
前記第2粒状体は、前記収容凹部に前記第2粒状体の粒径より小さい空隙を有する部材で囲まれて配置されたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
前記第2粒状体は、親液性の粒状体であることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液体噴射装置において、
前記第2粒状体の親液性は、前記第1粒状体の親液性より高く、前記複数の第2粒状体は、前記複数の第1粒状体より前記収容凹部において上側に配置されたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項9】
請求項3又は6に記載の液体噴射装置において、
前記第1粒状体又は前記第2粒状体の少なくとも一方が前記収容凹部内で移動可能に配置されたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液体噴射装置において、
前記第1粒状体又は前記第2粒状体の比重は、液体より小さいことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
前記収容体は、前記液体が配置されるターゲットを支持する支持体に取り付けられ、前記噴射ヘッドからの前記ターゲット上に配置されない前記液体を収容することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
前記収容体は、前記噴射ヘッドのノズル形成面を封止し、前記噴射ヘッドから排出され
る前記液体を収容するキャップ部材であることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−35697(P2006−35697A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220405(P2004−220405)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】