説明

液体噴射装置

【課題】簡易な構成によってフラッシング動作により噴射されたインクを洗い流すことが
でき、かつ、液溢れが生じない液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体噴射体のフラッシング部を有する液体噴射装置であって、フラッシング
部が液体噴射体から噴射される液体を受ける面状の洗浄液吸収材と、洗浄液吸収材の上流
側に毛細管力により洗浄液を供給する供給誘導体と、洗浄液吸収材の洗浄液を排出する排
出誘導体とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関し、特にフラッシング動作によって噴射された液体を受け
るフラッシング部を備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリアルプリンティング方式の液体噴射装置は、キャリッジに搭載されて記録用
紙の幅方向(主走査方向)に往復移動する噴射体としての噴射ヘッドと、記録用紙を噴射
ヘッドの移動方向に対して直交する方向(副走査方向)に搬送させる紙送り手段とを備え
、印刷データに基づいて噴射ヘッドよりインク滴を吐出させることにより記録用紙に印刷
を行うものである。
上記液体噴射装置は、圧力発生室で加圧したインクを噴射ヘッドのノズル開口からイン
ク滴として記録用紙に噴出して印刷を行う関係上、ノズル開口からのインク溶媒の蒸発に
起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによ
りノズル開口に目詰まりを発生し、印刷不良を起こすという問題を抱えている。
このために、この種の液体噴射装置は、非印刷時に噴射ヘッドのノズル面をキャップで
封止する保湿機能を備える。
このキャップは噴射ヘッドのノズル面に設けられた複数のノズル開口のインク乾燥を防
止する蓋体として機能するだけでなく、ポンプを駆動してキャップ内を負圧にし、ノズル
開口のインクを強制的に吸引排出させる。
さらに、噴射ヘッドの目詰まり解消のために噴射ヘッドに印刷とは関係のない駆動信号
を印加してインク滴を空吐出させることで、ノズル開口の目詰まりを解消させる、フラッ
シング動作と呼ばれるメンテナンス機能も備えており、フラッシング動作は、例えば印刷
動作中にインク滴の吐出の機会が少ないノズル開口において、インクの増粘による目詰ま
りを防止する目的で、一定周期ごと(例えば10秒ごと)に実行される。
上記保湿機能及びメンテナンス機能を有する液体噴射装置としては、第1の保湿用キャ
ップ装置を備え、第1の保湿液供給部から供給される第1の保湿液を溜めるための保湿液
貯留部を有し、第1の保湿液供給部が、第1のタンクに溜まった第1の保湿液と、第1の
保湿液貯留部との水頭差を利用して、第1のタンクに貯蔵された第1の保湿液を第1の保
湿用キャップ装置に供給するものが知られている。しかしながら、この水頭差を利用する
構成では、保湿液を補給する際の動作が複雑になり、また、保湿用キャップ内の保湿状態
を保持するためにキャップ内に保湿液を供給する場合、紙搬送経路が傾斜したプリンター
に搭載される傾斜型ヘッドに対応した保湿キャップでは、保湿キャップ自体も傾斜してい
るため、保湿液が傾斜下側から溢れてしまう。また、保湿キャップとは別の収容体により
、フラッシング動作によって吐出されるインクを受ける構成としてもインク受け面に保湿
液を供給すると収容体の下側から溢れてしまうことには変わりない。
また、他の液体噴射装置としては、機能液滴吐出ヘッドからの捨て吐出を受けるパン状
のユニット本体に敷設された吸収材を備え、吸収材が捨て吐出された機能液をトラップす
る上吸収材と、ユニット本体の底面に敷設されると共に上吸収材の下面に接し、上吸収材
の機能液を吸収し貯留する下吸収材とからなるものが知られているが、フラッシング部を
構成するフラッシング受け面を湿潤(保湿状態)に保つための機能が無いとともに、コン
シューマー等で使われるフラッシングボックスでは、再溶解性(または再分散性)のない
インクを使用するとフラッシングボックスの吸収材上のインクが乾燥とともに堆積し始め
、ヘッドのノズルプレートと接触する状態となり、吐出性が悪化(抜け・曲がり発生)し
、それ以外の場所だとしても紙面に転写されて不良となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−101634号公報
【特許文献2】特開2008−188807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、簡易な構成によってフラッシング動作に
より噴射されたインクを洗い流すことができ、かつ、液溢れが生じない液体噴射装置を提
供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1の構成として、液体噴射体のフラッシング部を有する液体噴射装置で
あって、前記フラッシング部が、前記液体噴射体から噴射される液体を受ける面状の洗浄
液吸収材と、前記洗浄液吸収材の上流側に毛細管力により洗浄液を供給する供給誘導体と
、前記洗浄液吸収材の洗浄液を排出する排出誘導体とを備える構成とした。
本構成によれば、供給誘導体から洗浄液吸収材に洗浄液が供給され、供給された洗浄液
が排出誘導体から排出されるので、洗浄液の流れが形成され、洗浄液吸収材に噴射された
インク等の液体を洗い流すことができる。また、洗浄液吸収材によって洗浄液が保持され
るので、フラッシング部を湿潤状態に保つことができる。
また、本発明に係る第2の構成として、前記洗浄液を下部貯留部に収容する函体と、当
該函体の上部開口部に対応する位置に前記洗浄液吸収材を保持する保持枠とを備える構成
とした。
前記洗浄液を函体の下部貯留部に収容し、前記函体の上部開口部に対応する位置に洗浄
液吸収材及びこの洗浄液吸収材を収容する保持枠を設けたので、洗浄液吸収材によって保
持された洗浄液が外部に漏れ出すことを防ぐことができる。
また、本発明に係る第3の構成として、前記洗浄液吸収材が前記上部開口部を介して前
記液体噴射体のノズル面に対向する構成とした。
本構成によれば、ノズル面に開設される複数のノズル開口から噴射される液体のミスト
化を防止することができ、外部に液体が飛散することを防止できる。
また、本発明に係る第4の構成として、前記洗浄液吸収材が液体を吸収して全域に分布
させる浸透性の素材である構成とした。
本構成によれば、洗浄液吸収材の全面に洗浄液が分布して供給されるので、洗浄液吸収
材の全域に亘って噴射されるインク等の液体を確実に洗浄することができる。
また、本発明に係る第5の構成として、前記供給誘導体を洗浄液吸収材と下部貯留部と
の間に設けた構成とした。
本構成によれば、供給誘導体により函体の下部貯留部からの洗浄液を直接吸い上げて洗
浄液吸収材に供給できるので、洗浄液の供給経路を簡略化できる。
また、本発明に係る第6の構成として、前記供給誘導体が細状中空管を束状とした毛細
管部材である構成とした。
本構成によれば、構造が簡単で、かつ、洗浄に必要な洗浄液を確実に供給することので
きる供給誘導体を得ることができる。
また、本発明に係る第7の構成として、前記下部貯留部に収容される洗浄液面よりも液
面の高さが低くなるように廃液を収容する廃液回収タンクを備え、前記洗浄液吸収材と前
記廃液回収タンクとの間に前記排出誘導体を設けた構成とした。
本構成によれば、廃液回収タンクの廃液面が、洗浄液面より低位置に有るので、水頭差
でポンプ等を使用せず常に洗浄液吸収材に洗浄液を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】インクジェット式記録装置の傾斜図(実施形態1)。
【図2】フラッシング部を示す斜視図(実施形態1)。
【図3】フラッシング部を示す断面図(実施形態1)。
【図4】供給誘導体を示す斜視図(実施形態1)。
【図5】フラッシング動作を示す図(実施形態1)。
【図6】フロートセンサーの断面図(実施形態1)。
【図7】供給誘導体を示す斜視図(実施形態1)。
【図8】フラッシング部を示す断面図(実施形態2)。
【図9】供給誘導体を示す斜視図(実施形態2)。
【図10】フラッシング部を示す断面図(実施形態3)。
【図11】フラッシング部を示す斜視図(実施形態4)。
【図12】フラッシング部を示す斜視図(実施形態5)。
【図13】フラッシング部を示す斜視図(実施形態6)。
【図14】フラッシング部を示す断面図(実施形態6)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1は、本発明による液体噴射装置、例えば、インクジェット式記録装置の傾斜図であ
り、同図において、1は外枠本体であり、この外枠本体1の対向する左,右側部2,3間
にガイド4が水平に位置され、このガイド4にキャリッジ5が左,右方向(主走査方向)
にガイド自在に装着される。キャリッジ5はモータ6の回転力で往復駆動される駆動ベル
ト7で制御される。8,9はプーリー、10はチューブであり、一端側がタンク11のカ
セット12に、コネクタ13、コネクタ14を介して接続され、他端がコネクタ15を介
してキャリッジ5に接続されて、タンク11側からのインクを噴射ヘッド16に供給する

噴射ヘッド16の非印刷領域であるガイド4の下部には、フラッシング部17、キャッ
ピング部18が、ガイド4の長さ方向に沿って並設されている。
上記フラッシング部17は、図2,図3に示すように、上面板17aに開口部17bを
有する函体17gより形成される。上記開口部17bの大きさは、矩形の噴射ヘッド16
のノズル面より若干大きな矩形となっており、上記上面板17aの下面(裏面)に対向す
るように保持板17cが取付けられている。保持板17cの外側4辺に立上がり枠17d
が設けられ、この立上がり枠17dの内側の保持板17c上には、フラッシング動作時に
おいて上方に位置する噴射ヘッド16から噴射,吐出されるインクを受ける面状配置の洗
浄液吸収材17eが敷設されている。つまり、噴射ヘッド16のノズル面と対向する洗浄
液吸収材17eの上面がインク受け面として形成される。
洗浄液吸収材17eの厚みは、立上がり枠17dの高さより若干低い。この洗浄液吸収
材17eは綿、絹、布(含不織布)、紙(含和紙)等の不燃素材や、発泡ウレタン等の素
材を用いても良く、要は毛細管力により洗浄液が吸収,浸透して全体に分布するものであ
ればよい。また、この洗浄液吸収材17eには、噴射ヘッド16からのインクが噴射され
るため、噴射されたインクを反射しないものが好ましい。
【0008】
上記洗浄液吸収材17eの一端(上流側)には、縦置きの管状の供給誘導体17fの上
端が取付けられ、この供給誘導体17fの上端の開口部17hは、保持板17cの上面よ
り露出し、洗浄液吸収材17eに接触している。上記供給誘導体17fは本例では、ガイ
ド4に対し直角水平方向並びに等間隔で例えば、3本位置されている。
【0009】
上記洗浄液吸収材17eの他端(下流側)の立上がり枠17dには、上下方向に延長す
る排出誘導体17iの上部水平折曲部17jの先端が貫入しており、この先端の開口部1
7mは洗浄液吸収材17eの下流側の端面に埋没する。なお、上部水平折曲部17jは函
体17gの側板を貫通し、ついで、立上がり枠17dを貫通する。排出誘導体17iは函
体17gの外方で下方に延長し、函体17gより低位置に位置された廃液回収タンク17
nの開口部17tに接続されている。廃液回収タンク17nの底部には吸収材17uが収
容されている。
函体17gは基体30により洗浄液の水面Zよりも、廃液回収タンク17nの廃液面Y
が常に低い位置となるように保持される。廃液回収タンク17nの底面には廃液抜き取り
用のチューブ17naが設けられ、廃液回収タンク17nに収容されて溜まった液が図外
のタンク等に抜き取られる。
60は函体17gの上下分割部分を接続するねじ孔であり、函体17gを分割する構成
とすれば函体17g内のメンテナンスが容易となる。62はメンテナンス用のキャップで
ある。
上記供給誘導体17fは、図4に示すように、例えば、穴空きの外管20に、必要とす
る毛細管力を有する内径の押し出し樹脂製の細状中空管21を束状にしたものを縦方向に
収容して構成する。なお、供給誘導体17fを構成する細状中空管21の直径は、洗浄液
の表面張力,密度及び供給誘導体17fの素材による壁面のぬれやすさ、また、供給誘導
体17fにより洗浄液を供給する高さに応じて適宜設定すれば良い。
【0010】
図3において、函体17g内の下部の貯留部17p内の水等の洗浄液が、細状中空管2
1内の中空縦孔及び細状中空管21と細状中空管21との間隙、細状中空管21と外管2
0の内壁との間隙により、毛細管現象に基づき上方に吸い上げられて、洗浄液吸収材17
eの一端(上流側)に吸収される。上記函体17g内の洗浄液は保湿成分を含む水や、顔
料系インクを用いる場合は顔料以外の溶媒成分(不揮発性有機溶剤、低級アルコール等)
が用いられ、染料系インクを用いる場合は、染料以外の溶媒成分(グリセリン、尿素等)
が用いられるが、洗浄液吸収材17e表面からの蒸発を考慮すると溶媒成分に保湿成分が
含まれていることが望ましい。上記供給誘導体17fは外管20内に、他の毛細管素材、
例えば、綿,絹,紙等の天然素材、あるいは樹脂細線等を詰めても良く、あるいは、前述
の洗浄液吸収材17eと同一のものを用いてもよい。また、形状が毛細管素材単体で形成
可能であれば外管20がなくてもよい。
排出誘導体17iは、上記供給誘導体17fと同様に毛細管力によって、洗浄液吸収材
17eに保持された洗浄液を吸い出す構成や、外管20の単体より構成し重力により洗浄
液を廃液回収タンク17nに落下させる構成であってもよい。
上記排出誘導体17iの上端の開口部17mからは洗浄液吸収材17eの下流側の洗浄
液が流れ込んで、毛細管力または重力により引き込まれて、函体17gの下部に位置する
廃液回収タンク17nに落ちる。
以上のように、洗浄液の供給誘導体17fによる吸い上げにより、洗浄液吸収材17e
全体に洗浄液が浸透,分布し、下流に流れて排出誘導体17iより排出される。結果とし
て洗浄液吸収材17eには矢印T方向の洗浄液の流れが洗浄液吸収材17eの全面に亘っ
て生じることとなる。
【0011】
よって、図5に示すように、非印刷領域Qにおけるフラッシング位置Rで噴射ヘッド1
6が停止し、フラッシング動作によってノズル開口より噴射されたインク滴は、洗浄液吸
収材17eの表面に着弾し、洗浄液吸収材17eの内部及び表面を上流側から下流側方向
に流れる洗浄液と混合状態となって、洗浄液吸収材17eの下流側に移行し、排出誘導体
17iより洗浄液とともに廃液回収タンク17nに落下するので、洗浄液吸収材17eの
表面に堆積することがなくなる。
よって、インクの堆積により盛り上がりが生じて噴射ヘッド16のノズル面と接触する
ことがなく、ノズル開口からの吐出性悪化(抜け・曲がり)あるいは、転写不良の発生を
阻止できる。
【0012】
このように、本実施の形態によれば、洗浄液が排出誘導体17iを介して洗浄液吸収材
17eから廃液回収タンク17n側に滴り落ちる。これにより、排出誘導体17iの水分
保持量に余裕ができるため、隣接する洗浄液吸収材17eから洗浄液が移動する。また、
洗浄液吸収材17eから洗浄液が移動することにより洗浄液吸収材17eの水分保持量に
も余裕ができるため、これに接する供給誘導体17fから洗浄液が移動する。さらに、供
給誘導体17fから洗浄液が移動することにより供給誘導体17fの水分保持量にも余裕
ができるため最終的に貯留部17pから水が補充される。つまり、貯留部17pから洗浄
液吸収材17eを経て廃液回収タンク17nへと至る洗浄液の流れを発生させることがで
きる。よって、洗浄液吸収材17e上に着弾したインク滴を乾燥する前に洗い流すことが
でき、常に湿潤状態であることからインクの堆積を防止できる。
また、時間当たりの洗浄液吸収材17e表面での蒸発量が貯留部17pから洗浄液吸収
材17eへの供給量を上回らないよう、供給誘導体17fにも毛細管力の高い素材を用い
ているので、洗浄液の供給不足が生じることがなくなる。しかも、供給誘導体17fと洗
浄液吸収材17e、及び、排出誘導体17iと洗浄液吸収材17eは一定の力、もしくは
、接続部材にて接触し、流れの断絶を防止するので、インク滴の洗い流し効果を常時発揮
できる。
【0013】
図3に示すように、函体17gは基体30に設置してもよいが、基体30を高さ調整可
能に構成し、函体17gの高さを調整可能としてもよい。
そして、非フラッシング動作時において洗浄液の流れを止める場合には、函体17gを
降下させ、貯留部17pの洗浄液と廃液回収タンク17nの廃液との液面高さを同一とす
れば、水頭差が無くなることによって流れを止めることが可能となる。なお、廃液回収タ
ンク17nを図外の昇降機構によって上昇させることによって、水頭差を無くす構成とし
てもよい。
【0014】
図3の31はフロートセンサーであり、例えば、図6に示すように、水位で上下するフ
ロート31aに磁石31bを組み込んで、磁石31bの高さを外筒31cに設けた水位セ
ンサー31dで検知することとし、水位センサー31dからの高さ信号で駆動部31eを
制御するように構成するようにしてもよい。
【0015】
駆動部31eは洗浄液の水位が指定レベルまで減少するとバルブ31fを開いて補給タ
ンク31gの洗浄液を函体17gの貯留部17pに供給して、水位を常に設置量に保つよ
うにする。31hは補給タンク31gに洗浄液を供給する補給口である。以上によれば、
フロートセンサー31等の水位センサー31dで貯留部17p内の洗浄液の水面Zを検知
して、常に洗浄液の水位を設定位置に保つことができ、洗浄液切れを防止できる。
また、図5において、キャリッジ5がキャッピング位置Sに位置すると、キャッピング
動作が実行される。キャッピング動作は、キャッピング機構40を上昇させて噴射ヘッド
16のノズル面をキャップで封止し、図外のポンプでキャップ内を負圧とすることにより
インクを噴射ヘッド16側から吸引する動作である。そして、吸引されたインクは廃液回
収タンクに排出されるが、この場合の廃液回収タンクを廃液回収タンク17nとしてもよ
い。
【0016】
廃液回収タンク17nについては、図1に示す液体噴射装置1の底部に引き出し型の浅
底の箱を設け、この箱の底部に吸収材を敷設して、この吸収材に廃インクが吸収されるよ
うにし、吸収された廃インクのインク溶媒成分が自然乾燥により蒸発するようにしてもよ
い。また、図7に示すように廃液回収タンク17nは継ぎ管42を設けて、排出誘導体1
7iに接続可能とし、引抜いて使い捨てができるようにしてもよい。
【0017】
実施形態2
図8は、フラッシング部17の他の実施形態を示す断面図である。
本実施形態は、供給誘導体17fと排出誘導体17iとの間に他の供給誘導体41を設
けたものである。これは、平行に配置されている洗浄液吸収材17eが長いと洗浄液の流
れが悪くなるため、途中に貯留部17pから洗浄液を補充できる供給誘導体41を追加し
て上流から下流に掛けて長く設定された洗浄液吸収材17eに対応するようにしたもので
ある。この途中位置の供給誘導体41は1本または複数本設けて、洗浄液を補給するよう
にしてもよい。
【0018】
前記実施の形態では供給誘導体17f、排出誘導体17iは円管より成るとして説明し
たが、図9に示すように、矩形筒により形成してもよい。本構成によれば、取付けが1個
づつで良く、構造が簡単となる。
【0019】
実施形態3
図10は、フラッシング部17の他の実施形態を示す断面図である。
本実施形態においては、廃液回収タンク17nの底部に浄化液溜りとなる凹部17yを
設け、廃液回収タンク17nの底部に敷設するものとして、底面側からフィルター43と
吸収材44より成る2層部材を設ける構成とした。フィルター43としては、例えば、発
泡スチロールなどをベースとして形成してもよいが、活性炭フィルター、中空希膜フィル
ター、逆浸透膜フィルターを単体、あるいは、二つ以上を多層化したものでもよい。ある
いは、微細な多孔質のウレタンチップを膜状に加工して母材の織布の表面に埋め込んだ特
殊濾布や、ポリエステルのモノフィラメントを使用した排脱石膏用濾布等を用いることも
できる。
【0020】
動作としては、廃インクが吸収材44の上に放出されると吸収材44に浸透し、浸透の
過程で、吸収材44の全体に徐々に広がってからフィルター43まで下降し、粒径の大き
なものがフィルター43でトラッピングされ、粒径の小さい保湿成分を含む溶媒成分がフ
ラットなタンク底部の凹部17y側に徐々に溜まる。
これにより、顔料系インクを用いた場合は、顔料がトラッピング(フィルタリング)さ
れて、廃液回収タンク17nの底部の凹部17y側には顔料が除去された溶媒成分、保湿
成分の液体が溜められる。染料系インクを用いた場合も、染料がトラッピングされて、溶
媒成分の液体が廃液回収タンク17nの凹部17y側に溜められる。
この洗浄液を含む成分はポンプ45により補給タンク31gの洗浄液に帰環されて再利
用されるので、洗浄液の補給量を少なくできる。
【0021】
実施形態4
図11は、フラッシング部17の他の実施形態を示す断面図である。
本形態において、噴射ヘッド16は上記実施形態における噴射ヘッドと異なり、水平面
に対して傾斜して取付けられる。なお、図1乃至図4と同一構成については同一符号を用
い、説明を省略する。
本実施形態における函体17gは、ガイド4で往復移送されるキャリッジ5及び噴射ヘ
ッド16の直下に位置するものであるが、函体17gの上面の一部は、傾斜した噴射ヘッ
ド16のノズル面の傾斜面と並行となるように、傾斜面体17vに成形され、この傾斜面
体17vに開口部17bが開設される。
函体17gの内部に位置される洗浄液吸収材17e及び保持板17cは、この開口部1
7bに向けて傾斜するように取付けられるが、供給誘導体17fは垂下して、図1乃至図
4と同様に貯留部17pの洗浄液中に到達しており、洗浄液吸収材17eの上流側(左部
)に洗浄液を補給可能となっている。
【0022】
傾斜状態の洗浄液吸収材17eの上流側に補給される洗浄液は、毛細管力による浸透に
より、洗浄液吸収材17eの全体に分布して、噴射ヘッド16より噴射されて着弾するイ
ンク滴と混合され、下流側に移行して排出誘導体17iを介して廃液回収タンク17nに
廃棄される。
このように、傾斜型の噴射ヘッド16のノズル面と平行となるように、洗浄液吸収材1
7eを傾斜させた場合でも、毛細管力により洗浄液が洗浄液吸収材17eに浸透するので
、洗浄液が全体に分布し、多数のノズル開口のノズル列を有する噴射ヘッド16からのイ
ンク滴を洗浄液吸収材17eの上流側から廃液回収タンク17nまで良好に排出できる。
また、洗浄液吸収材17eが洗浄液吸収材17eの表面、即ち、噴射ヘッド16から噴
射されるインクを受ける面が噴射ヘッド16のノズル面と平行となるように敷設されるた
め、表面に着弾したインクを飛散させることなく吸収することが可能となる。
【0023】
実施形態5
図12は、フラッシング部17の他の実施形態を示す斜視図である。
本実施形態においては、洗浄液吸収材17eを噴射ヘッド16と平行向きに傾斜させた
場合に洗浄液吸収材17eの傾斜上部側に供給誘導体17fを、傾斜下部側に排出誘導体
17iを取付けるように構成したものである。
傾斜下部側に排出誘導体17iが位置することで、傾斜下部側に流れ込んだインクを円
滑に排出誘導体17iから廃液回収タンク17nに導くことができる。
【0024】
実施形態6
図13(a),(b)は、フラッシング部17の他の実施形態を示す斜視図である。
本実施形態においては、保持板17c,洗浄液吸収材17eを図12と同様に傾斜させ
、傾斜上部側に供給誘導体17fを、傾斜下部側に排出誘導体17iを取付けた場合に、
洗浄液吸収材17eの表面を伝わって傾斜下方に移動し、下部隅部50に溜まった洗浄液
が溢れ出ないように、傾斜下部側の立上がり枠17daの高さ,左,右の立上がり枠17
dbの傾斜下部側の高さを高く設定した構成である。
【0025】
なお、図14に示すように、供給誘導体17fの上端を、キャップ17faを介して保
持板17cの凹部17caの底面に嵌合し、凹部17caに洗浄液吸収材17eよりもさ
らに吸収性に富む吸収材17eaを詰めて、洗浄液吸収材17fからの洗浄液の吸引力を
向上するようにしてもよい。
【0026】
また、同様に、排出誘導体17iの先端を、キャップ17fbを介して保持板17cの
凹部17cbの底面に嵌合し、凹部17cbには、洗浄液吸収材17eよりもさらに吸収
性に富む吸収材17ebを詰めて、排出誘導体17iからの洗浄液の吸収力を向上するよ
うにしてもよい。
【0027】
以上、実施形態1乃至実施形態6を通じて本発明に係る液体噴射装置を説明したが、本
発明の技術的範囲は上記実施形態に何ら限定されることはなく、多様な変更、改良を行い
得ることが当業者において明らかである。また、そのような多様な変更、改良を加えた形
態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0028】
1 外枠本体、16 噴射ヘッド、17 フラッシング部、
17c 保持板、17e 洗浄液吸収材、17f 供給誘導体、17i 排出誘導体、
17n 廃液回収タンク、17p 貯留部、21 細状中空管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射体のフラッシング部を有する液体噴射装置であって、
前記フラッシング部が、
前記液体噴射体から噴射される液体を受ける面状の洗浄液吸収材と、
前記洗浄液吸収材の上流側に毛細管力により洗浄液を供給する供給誘導体と、
前記洗浄液吸収材の洗浄液を排出する排出誘導体とを備えることを特徴とする液体噴射装
置。
【請求項2】
前記洗浄液を下部貯留部に収容する函体と、
当該函体の上部開口部に対応する位置に前記洗浄液吸収材を保持する保持枠とを備えるこ
とを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記洗浄液吸収材が前記上部開口部を介して前記液体噴射体のノズル面に対向すること
を特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記洗浄液吸収材が液体を吸収して全域に分布させる浸透性の素材であることを特徴と
する請求項1乃至請求項3いずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記供給誘導体を洗浄液吸収材と下部貯留部との間に設けたことを特徴とする請求項1
乃至請求項4いずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記供給誘導体が細状中空管を束状とした毛細管部材であることを特徴とする請求項1
乃至請求項5いずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記下部貯留部に収容される洗浄液面よりも液面の高さが低くなるように廃液を収容す
る廃液回収タンクを備え、
前記洗浄液吸収材と前記廃液回収タンクとの間に前記排出誘導体を設けたことを特徴とす
る請求項1乃至請求項6いずれかに記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−101956(P2011−101956A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256784(P2009−256784)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】