説明

液体噴射装置

【課題】複数のノズルの一部に対して選択的にクリーニングを行った場合でも、ドット抜
けを防止する。
【解決手段】所定数ずつのノズルをキャップするキャップ部を複数備え、各キャップ部は
、通路を介して吸引ポンプと接続しておき、通路上にはキャップ毎に開閉弁を設けておく
。そして、一部のキャップ部の開閉弁を開いて吸引ポンプの負圧を導くことで、ノズルか
ら液体を吸引する選択クリーニングを行う。また、選択クリーニングで閉じていた開閉弁
を、通路内の負圧が選択クリーニング前の圧力に戻るよりも前の時点で開くことにより、
選択クリーニング中に負圧を導かなかったキャップ部にも負圧を作用させる。こうすれば
、選択クリーニング中に負圧を導かなかったキャップ部内のノズルについては、通路内の
蓄積負圧でノズル面上に液体が出ている状態にすることができるので、ドット抜けを防止
することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ヘッドから液体を噴射する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンターでは、噴射ヘッドに設けられた微細な噴射ノズルか
ら、正確な分量のインクを正確な位置に噴射することによって、高画質の画像を印刷する
ことが可能である。また、この技術を利用して、インクの代わりに各種の液体(例えば、
機能材料の微粒子が分散された液体)を基板に向けて噴射すれば、電極や、センサ、バイ
オチップなどを製造することも可能である。
【0003】
このような技術では、噴射ヘッド内に供給されたインクなどの液体は、噴射ノズルから
時間とともに水分が蒸発、あるいは成分が揮発して粘度が増加する。そして、こうした粘
度の増加により、正確な分量の液体を噴射することができなくなってしまう。そこで、液
体を噴射しないときには、キャップを噴射ヘッドに当接させて噴射ノズルの周囲に閉空間
を形成すること(いわゆるキャッピング)によって、液体の増粘を抑制するようになって
いる。
【0004】
もっとも、キャッピングしていても、長時間の経過により増粘してしまうので、このよ
うな場合には、キャッピングしたままの状態でキャップ内を吸引ポンプで負圧にすること
によって、噴射ヘッド内の増粘した液体を噴射ノズルから吸い出して排出する動作(いわ
ゆるクリーニング)が行われる。また、クリーニングの終了後は、吸い出された液体が噴
射ノズルの周囲に付着しており、そのまま放置すると噴射ノズルが目詰まりするなどの不
具合の原因になることから、クリーニングを行ったら、噴射ノズルの周囲に付着している
液体を拭き取るために、複数の噴射ノズルが配列されたノズル面に対してワイパーを摺動
させる動作(いわゆるワイピング)が行われる。
【0005】
また、噴射ヘッドに複数の噴射ノズルを有するインクジェットプリンター(液体噴射装
置)では、複数のキャップを備え、各キャップが、噴射ヘッドに当接した状態で、それぞ
れ異なる噴射ノズルの周囲に閉空間を形成することによって、一部の噴射ノズルに対して
選択的にクリーニングを行う技術が提案されている(特許文献1)。液体の増粘の程度は
噴射ノズル毎に異なることがあるので、増粘が進んだ噴射ノズルに対して選択的にクリー
ニングを行うことによって、本来の目的に使用されることなく排出される液体の量を減ら
すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−181034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、提案の技術を用いて、複数の噴射ノズルの中から一部の噴射ノズルに対して選
択的にクリーニングを行うと、その後に液体の噴射を開始したときに、液体が適切に噴射
されない噴射ノズルができてしまうという不具合(いわゆるドット抜け)が発生すること
があるという問題があった。
【0008】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、
複数の噴射ノズルの中から一部の噴射ノズルに対して選択的にクリーニングを行った場合
でも、ドット抜けを防止することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体噴射装置は次の構成を
採用した。すなわち、噴射ヘッドに設けられた複数のノズルから液体を噴射する液体噴射
装置であって、前記噴射ヘッドに当接されることで、所定数ずつの前記ノズルの周囲に閉
空間を形成する複数のキャップ部と、前記複数のキャップ部に通路を介して接続された吸
引ポンプと、前記通路上に、前記キャップ部毎に設けられた開閉弁と、前記複数のキャッ
プ部を前記噴射ヘッドに当接した状態で、一部の前記キャップ部については前記開閉弁を
閉じたまま、残余の前記キャップ部の前記開閉弁を開いて前記吸引ポンプの負圧を導くこ
とにより、該残余のキャップ部内の前記ノズルから液体を吸引する選択クリーニングを行
う選択クリーニング実行手段と、前記選択クリーニングで閉じていた前記開閉弁を、前記
選択クリーニングの終了に伴って前記通路内の負圧が該選択クリーニングの開始前の圧力
に戻るよりも前の時点で開く開弁制御手段とを備えることを要旨とする。
【0010】
このような本発明の液体噴射装置においては、噴射ヘッドに当接することで、所定数ず
つのノズルの周囲に閉空間を形成するキャップ部を複数備えている。各キャップ部は、通
路を介して吸引ポンプと接続されており、この通路上には、キャップ部毎に開閉弁が設け
られている。そして、これら複数のキャップ部を噴射ヘッドに当接した状態で、一部のキ
ャップ部の開閉弁を閉じたまま、残余のキャップ部の開閉弁を開いて吸引ポンプの負圧を
導くことで、当該残余のキャップ部内のノズルから液体を吸引する選択クリーニングを行
う。また、選択クリーニングで閉じていた開閉弁を、選択クリーニングの終了に伴って通
路内の負圧が選択クリーニングの開始前の圧力に戻るよりも前の時点で開くようになって
いる。尚、選択クリーニングで閉じていた開閉弁を開くタイミングは、通路内の負圧が選
択クリーニングの開始前の圧力に戻るよりも前の時点であればよく、吸引ポンプを停止し
た後で通路内に負圧が残っている間に開いてもよいし、吸引ポンプを停止する直前に開い
てもよい。
【0011】
このような構成によれば、以下のような理由から、選択クリーニングによって複数のノ
ズルのうち一部のノズルから液体を吸引した場合でも、いわゆるドット抜け(液体が適切
に噴射されないノズルが発生するという不具合)を防止することができる。先ず、前述し
たように、クリーニングの終了後には、吸引された液体がノズルの周囲に付着しているの
で、これを拭き取るために、ノズル面(複数のノズルが設けられた面)のワイピングが行
われる。ところが、選択クリーニングの後、ノズル面のワイピングが行われると、選択ク
リーニングで液体が吸引されなかったノズルでドット抜けが生じることがある。本発明の
発明者らは、こうしたドット抜けの主な原因が、以下のようにノズルの乾拭きにあること
を見出した。すなわち、選択クリーニングで液体が吸引されたノズルの周囲には、液体が
付着しているのに対して、選択クリーニングで吸引されなかったノズルの周囲には、液体
が付着していないので、ノズル面のワイピングが行われると、選択クリーニングで吸引さ
れなかったノズルは乾拭きされることになる。このようなノズルの乾拭きは、ノズル内で
形成されている液体表面のメニスカスを乱してしまい、その結果、ドット抜けが生じる。
【0012】
こうした点に鑑み、本発明の液体噴射装置では、選択クリーニングで閉じていた開閉弁
を、選択クリーニングの終了に伴って通路内の負圧が選択クリーニングの開始前の圧力に
戻るよりも前の時点で開くことにより、選択クリーニング中に負圧を導かなかったキャッ
プ部にも負圧を作用させている。これにより、選択クリーニング中に負圧を導かなかった
キャップ部内のノズル(吸引されなかったノズル)については、通路内に蓄積されていた
負圧でノズル面上に液体が出ている状態にすることができる。その結果、選択クリーニン
グで吸引されなかったノズルがワイピングの際に乾拭きされることはなく、ドット抜けを
防止することができる。
【0013】
こうした本発明の液体噴射装置においては、次のようにしてもよい。先ず、複数のノズ
ルが設けられたノズル面を所定方向に摺動するワイパー部材を設けておくとともに、各キ
ャップ部を、このワイパー部材の摺動方向に沿って配置しておく。そして、ワイパー部材
が摺動を開始する側のキャップ部(上流キャップ部)が、選択クリーニング中に負圧を導
かれなかった場合には、少なくとも上流キャップ部に対応する開閉弁を、選択クリーニン
グの終了に伴って通路内の負圧が選択クリーニングの開始前の圧力に戻るよりも前の時点
で開く。
【0014】
選択クリーニングを実行し、その後、ワイパー部材を摺動させてノズル面に付着してい
る液体を払拭する(ワイピングする)と、選択クリーニング中に負圧を導かれたキャップ
部(負圧導入キャップ部)内のノズルを払拭する際に、このノズルの周囲に付着している
液体でワイパー部材が濡れた状態となる。そのため、負圧導入キャップ部よりもワイピン
グの下流側にあるキャップ部内のノズルについては、たとえ選択クリーニングで吸引され
ていなくても、ワイパー部材で乾拭きされることはない。一方、負圧導入キャップ部より
もワイピングの上流側にあるキャップ部内のノズルについては、未だワイパー部材が液体
で濡れていない状態で乾拭きされてしまう。特に、ワイパー部材が摺動を開始する側のキ
ャップ部(上流キャップ部)内のノズルについては、選択クリーニングで液体が吸引され
ない限り(すなわち、上流キャップ部が負圧導入キャップ部とならない限り)、ワイピン
グの度に乾拭きされてしまうことになる。この点、上流キャップ部が、負圧導入キャップ
部でなかった場合に、上流キャップ部の開閉弁を、通路内の負圧が選択クリーニングの開
始前の圧力に戻るよりも前の時点で開いて、上流キャップ部にも負圧を作用させるように
すれば、上流キャップ部内のノズルについては、選択クリーニングで吸引されないときで
も、ノズル面上に液体が出ている状態にすることができる。そのため、上流キャップ部内
のノズルがワイピングの際に乾拭きされてしまうことはなく、ドット抜けを防止すること
ができる。
【0015】
また、上述した本発明の液体噴射装置では、上流キャップ部の開閉弁から吸引ポンプま
での通路の長さを、他のキャップ部の開閉弁から吸引ポンプまでの通路の長さに比べて長
く設定しておいてもよい。
【0016】
選択クリーニングで閉じていた開閉弁を開くことで、その開閉弁に対応するキャップ部
に作用する負圧は、開閉弁から吸引ポンプまでの通路に蓄積されていたものである。また
、開閉弁から吸引ポンプまでの通路を長くすることによって、負圧をより多く蓄積するこ
とが可能となる。そして、前述したように、上流キャップ部内のノズルについては、選択
クリーニングで液体が吸引されない限り、こうした蓄積負圧を作用させてノズル面上に液
体が出ている状態にする必要がある。そのため、上流キャップ部内のノズルから液体をノ
ズル面上に出すのに十分な負圧を確保する観点からは、上流キャップ部の開閉弁から吸引
ポンプまでの通路の長さを、他のキャップ部の開閉弁から吸引ポンプまでの通路の長さに
比べて長く設定しておくことが望ましい。尚、上流キャップ部の開閉弁から吸引ポンプま
での通路上に、負圧を蓄積するための蓄圧部を形成しておいてもよく、こうすることで、
上流キャップ部に作用させる負圧をより多く蓄積することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】インクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】噴射ヘッドを底面側から見た様子を示す説明図である。
【図3】本実施例のインクジェットプリンターに搭載されたメンテナンス機構の構成を示した説明図である。
【図4】本実施例のインクジェットプリンターがクリーニングを行う際に実行する処理の流れを示したフローチャートである。
【図5】クリーニング動作でノズル列からインクを吸引する様子を示した説明図である。
【図6】第2ノズル列に対して選択的にクリーニングを行って吸引ポンプを停止した後、第1開閉バルブを「開」状態としたときの様子を示した説明図である。
【図7】クリーニング処理の終了後にワイピング動作が行われる様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.装置構成:
A−1.液体噴射装置の構成:
A−2.メンテナンス機構の構成:
B.本実施例のクリーニング動作:
【0019】
A.装置構成 :
A−1.液体噴射装置の構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体噴射装置の大
まかな構成を示した説明図である。図示されているように、インクジェットプリンター1
0は、主走査方向に往復動しながら印刷用紙などの印刷媒体2上にインクドットを形成す
るキャリッジ20と、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30と、印刷媒体2の紙送
りを行うためのプラテンローラー40と、正常に印刷可能なようにメンテナンスを行うメ
ンテナンス機構100などから構成されている。キャリッジ20には、インクを収容した
インクカートリッジ26や、インクカートリッジ26が装着されるキャリッジケース22
、キャリッジケース22の底面側(印刷媒体2に向いた側)に搭載された噴射ヘッド24
などが設けられている。後述するように、噴射ヘッド24にはインクを噴射する複数の噴
射ノズルが形成されており、インクカートリッジ26内のインクを噴射ヘッド24に導い
て、噴射ノズルから印刷媒体2に正確な分量だけインクを噴射することによって、画像が
印刷されるようになっている。
【0020】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、主走査方向に延設されたガイドレール
38と、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32
の歯形と噛み合う駆動プーリ34と、駆動プーリ34を駆動するためのステップモーター
36などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジケース22に固
定されており、タイミングベルト32を駆動することによって、ガイドレール38に沿っ
てキャリッジケース22を移動させることができる。また、タイミングベルト32と駆動
プーリ34とは歯形によって互いに噛み合っているので、ステップモーター36で駆動プ
ーリ34を駆動すると、駆動量に応じて精度良くキャリッジケース22を移動させること
が可能となっている。
【0021】
印刷媒体2の紙送りを行うプラテンローラー40は、図示しない駆動モーターやギア機
構によって駆動されて、印刷媒体2を副走査方向に所定量ずつ紙送りすることが可能であ
る。
【0022】
また、メンテナンス機構100は、印刷領域外のホームポジションと呼ばれる領域に設
けられており、噴射ヘッド24の底面側で噴射ノズルが形成されている面(ノズル面)を
払拭するワイパーブレード110や、ワイパーブレード110を昇降させるための昇降機
構112、噴射ヘッド24のノズル面に押しつけられて噴射ノズルの周囲に閉空間を形成
するキャップユニット120、キャップユニット120の下方の位置に設けられた吸引ポ
ンプユニット140などから構成されている。メンテナンス機構100の詳細な構成につ
いては、後述する。
【0023】
図2は、噴射ヘッド24を底面側(印刷媒体2の側)から見た様子を示す説明図である
。図示されているように、噴射ヘッド24の底面(ノズル面)には、複数のノズル列25
が設けられている。各ノズル列25は、一定の間隔を開けて形成された複数の噴射ノズル
によって構成されており、これらの噴射ノズルから、インクを噴射することによって、印
刷媒体2上に画像を印刷することができる。尚、本実施例のインクジェットプリンター1
0には、ノズル列25が2列設けられている。これは、本実施例のインクジェットプリン
ター10が2種類のインクを噴射可能であり、インクの種類毎にノズル列25が設けられ
ているためである。もちろん2つのノズル列25から同じ種類のインクを噴射することも
可能である。また、本明細書中では、2つのノズル列25のうち、キャリッジ20をホー
ムポジションに移動させた状態でワイパーブレード110に近い側のノズル列を「第1ノ
ズル列25a」と呼び、遠い側のノズル列を「第2ノズル列25b」と呼ぶことがあるも
のとする。
【0024】
A−2.メンテナンス機構の構成 :
図3は、本実施例のインクジェットプリンター10に搭載されたメンテナンス機構10
0の構成を示した説明図である。前述したように、メンテナンス機構100は、ワイパー
ブレード110、昇降機構112、キャップユニット120、吸引ポンプユニット140
などから構成されているが、ここでは、キャップユニット120および吸引ポンプユニッ
ト140について詳しく説明することとし、図3では、ワイパーブレード110および昇
降機構112については、図示が省略されている。
【0025】
図3に示されているように、キャップユニット120は、略矩形形状をしたキャッププ
レート124の上面側(噴射ヘッド24と向き合う側)に、ゴムなどの弾性材料を用いて
凹状に形成されたキャップ122が設けられて構成されている。このキャップユニット1
20は、図示しないアクチュエーターによって上下動させることが可能となっている。印
刷を行っていないときには、キャリッジ20をホームポジションまで移動させた後、キャ
ップユニット120を上昇させて、キャップ122を噴射ヘッド24のノズル面に押し付
けることによって、噴射ノズルの周囲に閉空間を形成することができる。本実施例のイン
クジェットプリンター10では、噴射ヘッド24にノズル列25が2列設けられているこ
とと対応して、キャップ122が2つ設けられており、各キャップ122は、それぞれ異
なるノズル列25の周囲に閉空間を形成するようになっている。尚、本明細書中では、キ
ャップ122によってノズル列25の周囲に閉空間を形成することを「キャッピング」と
呼ぶことにする。また、第1ノズル列25aをキャッピングするキャップ(ワイパーブレ
ード110に近い側のキャップ)を「第1キャップ122a」と呼び、第2ノズル列25
bをキャッピングするキャップ(ワイパーブレード110から遠い側のキャップ)を「第
2キャップ122b」と呼ぶことがあるものとする。こうしてキャッピングしておくこと
によって、噴射ノズルからインクの水分が蒸発、あるいは成分が揮発すること抑制するこ
とが可能となる。
【0026】
また、凹状に形成されたキャップ122の底面には、図示しない吸引口が設けられてお
り、この吸引口は、樹脂製のチューブ130によって、吸引ポンプユニット140に接続
されている。
【0027】
吸引ポンプユニット140の内部には、各キャップ122からのチューブ130が接続
される切換ユニット142や、負圧を発生させる吸引ポンプ146などが設けられている
。各キャップ122からのチューブ130は、切換ユニット142の内部で1つの通路に
まとめられた後、樹脂製の接続チューブ144を介して吸引ポンプ146に接続される。
【0028】
前述したように、インクジェットプリンター10が印刷を行っていない間は、キャップ
122を噴射ヘッド24のノズル面に押し付けてキャッピングしているものの、噴射ヘッ
ド24内では少しずつインクの水分や揮発成分が減少して増粘が進んでいくので、印刷を
行わないまま長期間が経過すると、適切にインクを噴射することができなくなってしまう
。このような場合には、キャップ122を噴射ヘッド24のノズル面に押し付けた状態で
吸引ポンプ146を作動させて、キャップ122の内側(噴射ノズルの周辺の閉空間)を
負圧にすることにより、噴射ヘッド24内の増粘したインクを噴射ノズルから吸い出す動
作(いわゆるクリーニング)を行うことが可能となっている。また、前述したように、本
実施例のインクジェットプリンター10では、2つのキャップ122a,122bを備え
ており、各キャップ122a,122bは、2つのノズル列25a,25bのそれぞれの
周囲に閉空間を個別に形成することから、切換ユニット142の内部に設けられた開閉バ
ルブの開閉を切り換えることにより、2つのノズル列25a,25bの何れかに対して選
択的にクリーニングを行うことが可能である。そして、吸引ポンプ146によって吸引さ
れたインクは、吸引ポンプユニット140の下方に設けられた図示しない廃液タンクに流
入する。尚、本実施例のクリーニング動作の詳細については、後述する。
【0029】
加えて、上述したクリーニングを行うと、噴射ノズルの周囲には吸い出されたインクが
付着した状態となっており、そのまま放置しておけば、噴射ノズルが目詰まりするなどの
不具合の原因になる。そこで、クリーニング動作の終了後は、噴射ノズルの周囲に付着し
ているインクを、ワイパーブレード110(図1参照)を用いて拭き取る動作(ワイピン
グ)を行うようになっている。
【0030】
本実施例のインクジェットプリンター10では、以上のようなメンテナンス機構100
によって各種のメンテナンスを行うことにより、正常に印刷可能な状態を維持している。
以下では、本実施例のインクジェットプリンター10で行われるクリーニング動作につい
て詳しく説明する。
【0031】
B.本実施例のクリーニング動作 :
図4は、本実施例のインクジェットプリンター10がクリーニングを行う際に実行する
処理(クリーニング処理)の流れを示したフローチャートである。この処理は、キャリッ
ジ20をホームポジションまで移動させて、キャップ122によって噴射ヘッド24の対
応するノズル列25をキャッピングした状態で開始される。
【0032】
クリーニング処理を開始すると、先ず初めに、クリーニングを行うノズル列25の指定
を行う(ステップS100)。前述したように、本実施例のインクジェットプリンター1
0では、噴射ヘッド24にノズル列25が2列設けられており、何れかに対して選択的に
クリーニングを行うことが可能となっている。ここで、クリーニングを行うノズル列25
は、例えば、所定のテストパターンを印刷するなどして、インクジェットプリンター10
のユーザーがクリーニングの必要なノズル列25を予め調べておき、インクジェットプリ
ンター10に設けられた操作パネル(図示は省略)によって選択することができる。また
、インクを噴射することのないまま所定時間が経過したノズル列25からはインクの増粘
が進んだものと判断してクリーニングを行うこととしてもよい。ステップS100では、
こうした操作パネルでの選択情報や、インクの増粘が進んだとの判断情報に基づいて、ク
リーニングを行うノズル列25の指定を行う。尚、2つのノズル列25の両方を指定する
ことも可能である。
【0033】
こうしてクリーニングを行うノズル列25を指定したら、吸引ポンプ146を作動させ
て、指定したノズル列25からのインクの吸引を開始する(ステップS102)。図5は
、指定したノズル列25からインクを吸引する様子を示した説明図である。図示した例で
は、2つのノズル列25のうち第2ノズル列25bのみを指定して選択的にクリーニング
が行われる様子が示されている。尚、図5では、キャッププレート124についての図示
が省略されている。
【0034】
図5に示されているように、2つのノズル列25をそれぞれキャッピングする2つのキ
ャップ122は、切換ユニット142を介して吸引ポンプ146に接続されている。この
切換ユニット142の内部には、各キャップ122からのチューブ130が接続される通
路に、1つずつ開閉バルブ143が設けられている。クリーニングを行う際には、ステッ
プS100で指定されたノズル列25のキャップ122に対応する開閉バルブ143を「
開」状態とすることにより、吸引ポンプ146の作動で発生する負圧をキャップ122に
導いて、指定されたノズル列25からインクを吸い出すことが可能となる。
【0035】
図5では、指定された第2ノズル列25bをキャッピングしている第2キャップ122
bに対応する開閉バルブ(以下、第2開閉バルブ)143bを「開」状態としているので
、吸引ポンプ146の負圧が第2キャップ122bに及んで、第2ノズル列25bの各噴
射ノズルからインクが吸い出される。尚、吸い出されたインクは、第2キャップ122b
からのチューブ130b、切換ユニット142内の通路、接続チューブ144を経由して
、最終的には吸引ポンプ146から排出される。
【0036】
一方、指定されなかった第1ノズル列25aをキャッピングしている第1キャップ12
2aに対応する開閉バルブ(以下、第1開閉バルブ)143aは「閉」状態であり、吸引
ポンプ146の負圧は第1キャップ122aに及ばないので、第1ノズル列25aからは
インクが吸い出されない。このように、本実施例のインクジェットプリンター10では、
切換ユニット142内の開閉バルブ143の開閉を切り換えることで、実際にクリーニン
グが必要なノズル列25に対してのみ、選択的にクリーニングを行うことが可能であるこ
とから、必要以上のクリーニングによって無駄に排出されてしまうインク量を減らすこと
ができる。
【0037】
図4のクリーニング処理では、以上のようにして、指定したノズル列25からのインク
の吸引を開始した後、所定時間が経過すると、吸引ポンプ146を停止させて、クリーニ
ングを終了する(ステップS104)。また、吸引ポンプを停止させたら、続いて、第1
ノズル列25aに対してクリーニングを行ったか否か(すなわち、ステップS100で第
1ノズル列25aを指定したか否か)の判断を行う(ステップS106)。そして、第1
ノズル列25aに対してクリーニングを行わなかった場合、すなわち、第2ノズル列25
bに対して選択的にクリーニングを行った場合は(ステップS106:no)、第1キャ
ップ122aに対応する第1開閉バルブ143aを「開」状態とする処理を行う(ステッ
プS108)。一方、第1ノズル列25aに対してクリーニングを行った場合は(ステッ
プS106:yes)、既に第1開閉バルブ143aは「開」状態となっているので、そ
のまま次のステップS110に移行する。
【0038】
図6は、第2ノズル列25bに対して選択的にクリーニングを行って吸引ポンプ146
を停止させた後、第1開閉バルブ143aを「開」状態としたときの様子を示した説明図
である。第2ノズル列25bに対して選択的にクリーニングを行った場合、吸引ポンプ1
46を停止させると、切換ユニット142内の通路の分岐点から第1開閉バルブ143a
までの区間(図中の「A」の部分。以下、区間Aという)では負圧が蓄積された状態とな
っている。そして、この状態で第1開閉バルブ143aを「開」状態にすると、区間Aに
蓄積されていた負圧が第1キャップ122aに及ぶので、第1ノズル列25aの各噴射ノ
ズルからインクが僅かに吸い出される。尚、このとき第1キャップ122aに及ぶ負圧の
強さは、区間Aの長さ(体積)によって異なることから、第1ノズル列25aの噴射ノズ
ルからインクを吸い出すのに十分な負圧を確保するには、図6に示されているように、区
間Aの長さを、分岐点から第2開閉バルブ143bまでの区間よりも長く設定しておくこ
とが望ましい。換言すれば、区間Aの長さを予め適切に設定しておくことにより、第1ノ
ズル列25aの噴射ノズルから吸い出すインク量を調節することが可能である。また、第
1キャップ122aに及ぶ負圧を強くするには、通路の径を大きくする等により区間Aに
負圧を蓄積するための蓄圧部を形成しておくこととしてもよい。本実施例のインクジェッ
トプリンター10では、第1ノズル列25aの各噴射ノズルから吸い出されたインクが第
1キャップ122a内に溜まることはなく、噴射ノズルからインクがノズル面上にはみ出
す程度となっている。
【0039】
図4のクリーニング処理では、第1開閉バルブ143aを「開」状態として、第1ノズ
ル列25aの噴射ノズルからもインクを僅かに吸い出すと、第1キャップ122aおよび
第2キャップ122b内の負圧を開放した後(ステップS110)、図4のクリーニング
処理を終了する。本実施例の各キャップ122には、図示しない大気開放弁が接続されて
おり、この大気開放弁を開いてキャップ122内に大気を導入することにより、キャップ
122内の負圧を開放している。これにより、キャップ122から吸引ポンプ146に到
るまでの経路は大気圧に戻ることになる。
【0040】
以上のようにしてクリーニング処理を終了すると、前述したように、噴射ノズルの周囲
には吸い出されたインクが付着した状態となっており、そのまま放置しておけば、噴射ノ
ズルが目詰まりするなどの不具合の原因になる。そこで、ワイパーブレード110を用い
て噴射ノズルの周囲のインクを拭き取る動作(ワイピング)を行うようになっている。以
下では、本実施例のインクジェットプリンター10で行われるワイピング動作について簡
単に説明する。
【0041】
図7は、クリーニング処理の終了後にワイピング動作が行われる様子を示した説明図で
ある。ここでは、第2ノズル列25bに対する選択的なクリーニングが終了した後に、ワ
イピングが行われるものとする。図7(a)には、クリーニングが終了して、第1キャッ
プ122aおよび第2キャップ122bを下降させた状態が示されている。この状態では
、クリーニングが行われた第2ノズル列25bの噴射ノズルの周囲には吸い出されたイン
クが付着している。また、前述したように、本実施例のインクジェットプリンター10で
は、クリーニングが行われなかった第1ノズル列25aについても、切換ユニット142
の通路内(区間A)に残っている負圧を作用させるので、第1ノズル列25aの噴射ノズ
ルからはインクが僅かにはみ出している。そこで、噴射ヘッド24のノズル面に付着して
いるこれらのインクを、ワイピングによって拭き取る。ワイピングは、先ず、ワイパーブ
レード110を昇降させる昇降機構112を作動させることで、ワイパーブレード110
を上昇させ、続いて、噴射ヘッド24が搭載されたキャリッジ20をワイパーブレード1
10に向けて(すなわち印刷領域側に向けて)移動させることによって行う。
【0042】
図7(b)には、ワイピングが行われている様子が示されている。キャリッジ20を移
動させていくと、ゴムなどの弾性材料で形成されたワイパーブレード110の先端は、噴
射ヘッド24のノズル面に当接して変形した状態となり、この状態でノズル面上を摺動す
る。そして、先ず第1ノズル列25aの噴射ノズルからはみ出しているインクがワイパー
ブレード110によって拭き取られ、続いて、第2ノズル列25bの噴射ノズルの周囲に
付着しているインクが拭き取られる。こうしてワイピングが終了すると、ワイパーブレー
ド110を下降させた後、キャリッジ20を再びホームポジションに移動させるとともに
、第1キャップ122aおよび第2キャップ122bを上昇させて、第1ノズル列25a
および第2ノズル列25bをそれぞれキャッピングする。
【0043】
以上に説明したように、本実施例のインクジェットプリンター10では、噴射ヘッド2
4に設けられた2つのノズル列25のうち、第2ノズル列25bに対して選択的にクリー
ニングを行った場合には、切換ユニット142の通路内(図6の区間A)に残っている負
圧を第1キャップ122aに作用させることで第1ノズル列25aの噴射ノズルからも僅
かにインクを吸引するようになっている。こうすることで、本実施例のインクジェットプ
リンター10では、複数のノズル列の中から一部のノズル列に対して選択的にクリーニン
グを行った場合に生じ得る、適切にインクが噴射されない噴射ノズルが発生するという不
具合(いわゆるドット抜け)を防止することが可能となっている。以下では、この点につ
いて詳しく説明する。
【0044】
先ず、本実施例とは異なり、第2ノズル列25bに対して選択的にクリーニングを行っ
た際に、もう一方の第1ノズル列25aの噴射ノズルから全くインクを吸引しない(第1
キャップ122aに対応する第1開閉バルブ143aを「開」状態としない)こととした
場合には、クリーニングに続いてワイピングを行い、その後に印刷を開始すると、第1ノ
ズル列25aの噴射ノズルでドット抜けが発生し、画像等を適切に印刷できないことがあ
る。これは、次のような理由によるものである。すなわち、第1ノズル列25aの噴射ノ
ズルから全くインクを吸引することなくワイピングを行うと、第1ノズル列25aの噴射
ノズルの周囲にはインクが出ていないので、第1ノズル列25aはワイパーブレード11
0によって乾拭きされることになる。通常、噴射ノズル内ではインクの表面がメニスカス
を適切に形成しているが、こうした乾拭きによって、メニスカスが乱されてしまい、結果
として、ドット抜けが発生する。かといって、乾拭きを避けるために、本来クリーニング
の必要がない第1ノズル列25aからも、第2ノズル列25bと同様にインクを吸引した
のでは、大量のインクが無駄になってしまう。
【0045】
これに対して、本実施例のように、第2ノズル列25bに対して選択的にクリーニング
を行った場合には、切換ユニット142の通路内(図6の区間A)に負圧が残っている状
態で第1開閉バルブ143aを「開」状態として、第1キャップ122aにも残存負圧を
作用させるようにすれば、クリーニングを行わなかった第1ノズル列25aの噴射ノズル
からインクを僅かに吸引することができる。これにより、ワイピングを行う際には、第1
ノズル列25aの噴射ノズルからもインクが出ているので、ワイパーブレード110によ
って第1ノズル列25aが乾拭きされることを回避することができる。その結果、第2ノ
ズル列25bに対して選択的にクリーニングを行った場合でも、ドット抜けを防止するこ
とが可能となる。
【0046】
ここで、本実施例のインクジェットプリンター10では、クリーニングを行わなかった
ノズル列25が第1ノズル列25aである場合(第2ノズル列25bに対して選択的にク
リーニングを行った場合)に、切換ユニット142の通路内に残っている負圧を、クリー
ニングを行わなかったノズル列25(第1ノズル列25a)に作用させることとしている
が(図4のステップS106,108参照)、これは次のような理由によるものである。
すなわち、第1ノズル列25aに対して選択的にクリーニングを行うと、その後のワイピ
ング動作では、先ず上流側(ワイピングを開始する側)にある第1ノズル列25aの噴射
ノズルの周囲に付着しているインクをワイパーブレード110で払拭する際に、ワイパー
ブレード110がインクで濡れた状態となり、続いて、この濡れた状態のワイパーブレー
ド110で下流側にある第2ノズル列25bを拭くことになる。このようにワイピングの
下流側にある第2ノズル列を拭くときには乾拭きにならないので、第1ノズル列25aに
対して選択的にクリーニングを行った場合は、クリーニングを行わなかった第2ノズル列
25bに残存負圧を作用させなくてもよい。
【0047】
もっとも、上流側の第1ノズル列25aを払拭する際にワイパーブレード110がイン
クで十分に濡れないことも起こり得るので、第1ノズル列25aに対して選択的にクリー
ニングを行った場合にも、クリーニングを行わなかった第2ノズル列25bに残存負圧を
作用させることとしてもよい。この場合は、図4のクリーニング処理において、吸引ポン
プの停止(ステップS104)に続いて、クリーニングを行わなかったノズル列25に対
応する開閉バルブを「開」状態とするようにすればよい。
【0048】
以上、本発明の液体噴射装置について実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態
に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施すること
が可能である。
【0049】
例えば、前述した実施例では、クリーニングを行わなかった第1ノズル列25aに対応
する第1開閉バルブ143aを、吸引ポンプ146を停止させた後に「開」状態としてい
た(図4のステップS108)。しかし、第1開閉バルブ143aを「開」状態にするタ
イミングは、切換ユニット142の通路内の負圧が開放される(大気圧に戻る)よりも前
であればよく、吸引ポンプ146を停止させる直前に、第1開閉バルブ143aを「開」
状態にしてもよい。
【0050】
また、前述した実施例では、吸引ポンプ146の負圧を導く経路は、切換ユニット14
2内で2つに分岐されて、第1キャップ122aおよび第2キャップ122bにそれぞれ
接続されていた。しかし。途中で分岐させることなく、1つの駆動で同時に負圧を発生さ
せる2つのポンプ(いわゆる2連ポンプ)に、第1キャップ122aおよび第2キャップ
122bをそれぞれ接続しておいてもよい。このような構成においても、例えば、第1キ
ャップ122aに対応する第1開閉バルブ143aを「閉」状態にしておき、第2キャッ
プに対応する第2開閉バルブ143bを「開」状態として2連ポンプを作動させれば、第
2ノズル列25bに対して選択にクリーニングを行うことができる。また、このとき、第
1開閉バルブ143aと2連ポンプとの間には負圧が蓄積されるので、負圧が開放される
よりも前に第1開閉バルブ143aを「開」状態にすれば、第1キャップ122aに負圧
が及び、クリーニングを行わなかった第1ノズル列25aの噴射ノズルからも僅かにイン
クが吸引される。その結果、ワイピングの際に第1ノズル列25aがワイパーブレード1
10によって乾拭きされることはなく、ドット抜けを防止することができる。
【0051】
さらに、前述した実施例では、噴射ヘッド24に2つのノズル列25a,25bが設け
られているとともに、2つのキャップ122a,122bが各ノズル列25を個別にキャ
ッピングしていた。しかし、噴射ヘッドには3列以上の複数のノズル列を設けることも可
能である。この場合には、次のようにしてもよい。先ず、ノズル列を所定数ずつキャッピ
ングするキャップを複数備えるとともに、複数のキャップと吸引ポンプとを接続する通路
上には、キャップ毎に開閉バルブを設けておく。そして、指定した一部のキャップの開閉
バルブを「開」状態にし、残りのキャップの開閉バルブを「閉」状態にして吸引ポンプを
作動させることにより、指定したキャップでキャッピングされるノズル列に対して選択的
にクリーニングを行う。また、ワイピングを開始する側のキャップ(上流キャップ)でク
リーニングを行わなかった場合には、少なくとも上流キャップの開閉バルブについては、
通路内の負圧が開放される(大気圧に戻る)よりも前に「開」状態にする。こうすれば、
上流キャップでクリーニングを行わない場合でも、上流キャップでキャッピングされるノ
ズル列(上流ノズル列)からインクを僅かに吸引することができることから、ワイピング
の際に上流ノズル列が乾拭きされることはない。しかも、上流ノズル列よりもワイピング
の下流側にあるノズル列については、濡れた状態のワイパーブレードで拭くことになるの
で、ドット抜けを防止することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…インクジェットプリンター、 20…キャリッジ、
22…キャリッジケース、 24…噴射ヘッド、 25…ノズル列、
30…駆動機構、 40…プラテンローラー、 100…メンテナンス機構、
110…ワイパーブレード、112…昇降機構、 120…キャップユニット、
122…キャップ、 124…キャッププレート、 130…チューブ、
140…吸引ポンプユニット、 142…切換ユニット、
143…開閉バルブ、 144…接続チューブ、 146…吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ヘッドに設けられた複数のノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、
前記噴射ヘッドに当接されることで、所定数ずつの前記ノズルの周囲に閉空間を形成す
る複数のキャップ部と、
前記複数のキャップ部に通路を介して接続された吸引ポンプと、
前記通路上に、前記キャップ部毎に設けられた開閉弁と、
前記複数のキャップ部を前記噴射ヘッドに当接した状態で、一部の前記キャップ部につ
いては前記開閉弁を閉じたまま、残余の前記キャップ部の前記開閉弁を開いて前記吸引ポ
ンプの負圧を導くことにより、該残余のキャップ部内の前記ノズルから液体を吸引する選
択クリーニングを行う選択クリーニング実行手段と、
前記選択クリーニングで閉じていた前記開閉弁を、前記選択クリーニングの終了に伴っ
て前記通路内の負圧が該選択クリーニングの開始前の圧力に戻るよりも前の時点で開く開
弁制御手段と
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記噴射ヘッドで前記複数のノズルが設けられたノズル面を、所定方向に摺動するワイ
パー部材を備え、
前記キャップ部は、前記ワイパー部材の摺動方向に沿って配置されており、
前記開弁制御手段は、前記ワイパー部材が摺動を開始する側の前記キャップ部である上
流キャップ部が、前記選択クリーニング中に負圧を導かれなかった場合に、少なくとも該
上流キャップ部に対応する前記開閉弁を開く手段である液体噴射装置。
【請求項3】
前記上流キャップ部の前記開閉弁から前記吸引ポンプまでの前記通路の長さは、他の前
記キャップ部の前記開閉弁から前記吸引ポンプまでの前記通路の長さに比べて長く設定さ
れている請求項2に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−140122(P2011−140122A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−455(P2010−455)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】