説明

液体容器、および液体検出システム

【課題】簡易な構成でありながら、液体容器内の液体を信頼性高く検出することを可能にする。
【解決手段】液体収容部と連通する液体室の一部を、変形可能な変形部とする。変形部には、レバー部材の一部を当接させ、変形部が変形すると、支点を中心にレバー部材を回動させる。これら液体収容部、液体室、およびレバー部材は、通孔を有するケース部材の内部に収容しておき、液体容器を液体消費装置に装着すると、液体消費装置側の可動棒が通孔から挿入されてレバー部材に当接するようにする。こうすれば、液体の検出に関与する液体室やレバー部材が人や物にぶつかって変形するなどの損傷によって誤検出が生じることを抑制でき、その結果、信頼性の高い液体検出を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に液体を収容する液体容器、および液体容器内の液体の有無を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置の一例として、インクなどの液体を噴射ヘッドから噴射することで画像等を印刷する、いわゆるインクジェットプリンターが知られている。噴射ヘッドから噴射される液体は、インクカートリッジなどの専用の液体容器に収容されており、この液体容器から噴射ヘッドに液体が供給される。また、液体容器は、内部の液体が無くなると新しい液体容器と交換できるように、液体消費装置に対して着脱可能に構成されているのが一般的である。
【0003】
こうした液体容器では、内部の液体が無くなったことを検出する検出システムを液体容器内に搭載したものが提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1の液体容器では、液体収容部と連通する液体検出室に、液体の残量に応じて変化する振動を検出するための圧電型検出手段が設けられている。検出システムが液体容器自体に搭載されているので、内部の液体が無くなったことを直ちに検出することができる。
【0004】
また、液体が無くなったことを検出する検出システムは、各種提案されている。例えば、サブタンク本体の一部を変形可能な変形部材で構成して、この変形部材の変形に追従する板状部材の変位を検出するセンサー(フォトセンサー)を備える検出システムが提案されている(特許文献2)。液体が消費されてサブタンク内が負圧になると、変形部材がサブタンク内に引き込まれることから、その変位をセンサーで検出することで、液体が無くなったことを簡便で且つ正確に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−307894号公報
【特許文献2】特開2007−136807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、液体収容部と連通する液体検出室に、液体の残量に応じて変化する振動を検出する圧電型検出手段を備えた構成の場合、圧電型検出手段を用いているため、圧電型検出手段からの信号出力のための配線が必要となり、液体容器の構造が複雑になってしまうという問題がある。一方、特許文献2には、サブタンクにおける液体の有無を検出するシステムとして、上記の圧電型検出手段を用いない検出システムが提案されているものの、液体収容部と連通する液体検出室を備えた液体容器に搭載した場合の具体的な構成については提案されていない。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成でありながら、液体容器内の液体を信頼性高く検出することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体容器は次の構成を採用した。すなわち、
軸方向に移動可能な可動棒と該可動棒の変位を検出するセンサーとを有する液体消費装置に装着可能な液体容器であって、
液体を収容するための液体収容部と、
前記液体収容部と連通して設けられ、且つ、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
支点を中心に回動可能に設けられ、一部が前記変形部に接すると共に、前記変形部の変形に伴って変位可能に配置されたレバー部材と、
前記液体収容部、前記液体室、および前記レバー部材を内部に収容すると共に、前記レバー部材に当接する前記可動棒が挿入される通孔を有するケース部材と
を備えたことを要旨とする。
【0009】
このような本発明の液体容器においては、液体収容部と連通する液体室が設けられており、液体室の一部が、変形可能な変形部となっている。変形部には、レバー部材の一部が接しており、変形部が変形すると、レバー部材が支点を中心に回動する。これら液体収容部、液体室、およびレバー部材は、通孔を有するケース部材の内部に収容されており、液体容器を液体消費装置に装着すると、可動棒が通孔から挿入されてレバー部材に当接するようになっている。このように液体収容部、液体室、およびレバー部材をケース部材の内部に収容しておけば、液体の検出に関与する液体室やレバー部材が人や物にぶつかって変形するなどの損傷によって誤検出(液体の検出精度の低下)が生じることを抑制でき、その結果、信頼性の高い液体検出を実現できる。
【0010】
上述した構成を有する本発明の液体容器では、さらに、液体消費装置に装着されていない状態において、通孔のレバー部材側の開口部がレバー部材によって覆われる構成とすることもできる。このような構成によれば、レバー部材が、通孔からの異物の侵入を妨げるので、ケース部材の内部に異物が入り難くすることができる。結果として、ケース部材の内部に入った異物に起因して液体検出の精度が低下することを抑制できる。
【0011】
尚、「通孔のレバー部材側の開口部がレバー部材によって覆われている」とは、必ずしも通孔の開口部にレバー部材が接していなくてもよく、通孔の開口部とレバー部材との間に隙間があっても、その隙間よりも大きな異物については侵入が妨げられるので、ケース部材の内部に異物が入ることを抑制する効果が得られる。もちろん、通孔の開口面にレバー部材が密接していれば、開口面が塞がれることとなって、通孔からケース部材の内部に異物が入ることを回避できる。
【0012】
上述した構成を有する本発明の液体容器では、さらに、ケース部材の通孔に、挿入される可動棒を内壁面によって誘導する誘導部を設けることとしてもよい。これにより、可動棒を適切に誘導することができるので、可動棒とレバー部材との位置ズレを抑制して、液体検出の信頼性を高めることができる。
【0013】
尚、レバー部材が、ケース部材の内壁面から離れた位置に設けられている場合には、誘導部を管状部材によって構成することとしてもよく、この管状部材をレバー部材の位置まで延設することによって、通孔の開口部をレバー部材によって覆うことが可能となる。
【0014】
上述した本発明の液体容器では、次のようにしてもよい。先ず、レバー部材に、可動棒と当接する当接部を含む平面である接平面を設ける。そして、液体容器が液体消費装置に装着されていない状態において、通孔のレバー部材側の開口面を、レバー部材の接平面に対して平行に設けておいてもよい。
【0015】
液体容器が液体消費装置に装着されていない状態において、通孔のレバー部材側の開口面と、レバー部材とを接触させる場合には、通孔の開口面をレバー部材の接平面に対して平行に設けておくことで、通孔の開口面にレバー部材を密接させることができる。これにより、通孔の開口面は隙間なくレバー部材によって覆われるので、通孔からケース部材の内部に異物が入ることを回避できる。
【0016】
一方、液体容器が液体消費装置に装着されていない状態において、通孔のレバー部材側の開口面と、レバー部材とを接触させない場合には、通孔の開口面をレバー部材の接平面に対して平行にすることによって、通孔の開口面とレバー部材の接平面との間隔(隙間)を均一化することができる。そのため、通孔の開口面とレバー部材の接平面との間で一部に大きく間隔があいた箇所がある場合に比べて、通孔からの異物の侵入を妨げる効果を高めることができる。
【0017】
また、こうした本発明の液体容器では、液体容器が液体消費装置に装着されていない状態において、通孔のレバー部材側の開口面を、レバー部材と所定の間隙が形成されるように設けてもよい。
【0018】
このように、液体容器が液体消費装置に装着されていない状態において、通孔のレバー部材側の開口面とレバー部材との間に所定の間隙を設けて、通孔の開口面にレバー部材が接触しないようにしておけば、例えば、液体消費装置の使用者が液体容器を揺するなどの動作に伴って内部のレバー部材が往復動した(僅かに回動して回動前の状態に戻った)としても、通孔の開口面にレバー部材が衝突することがないので、レバー部材が衝突の衝撃によって変形や破損することを回避できる。
【0019】
また、本発明の液体容器では、レバー部材を通孔に向かって弾性部材によって付勢しておいてもよい。
【0020】
また、前述した本発明の液体容器では、通孔のレバー部材側の開口面またはレバー部材の何れか一方には、何れか他方と接触する部分に緩衝部材を設けておいてもよい。
【0021】
このようにすれば、通孔のレバー部材側の開口面にレバー部材が接触(衝突)した際の衝撃が緩衝部材によって緩和される。そのため、液体消費装置の使用者が液体容器を揺するなどの動作に伴って内部のレバー部材が往復動しても、レバー部材が衝撃で変形や破損することを抑制できる。
【0022】
また、前述した本発明の液体容器は、液体消費装置に装着されると、可動棒がケース部材の通孔から挿入され、液体室の変形部の変位をレバー部材および可動棒を介してセンサーで検出することによって、内部の液体の有無が検出される。このため、本発明は、液体消費装置に装着された液体容器内の液体の有無を検出する液体検出システムの態様で把握することも可能である。そこで、本発明の液体検出システムは、次の構成を採用した。すなわち、
液体消費装置に装着された液体容器内の液体の有無を検出する液体検出システムであって、
前記液体消費装置には、
軸方向に移動可能な可動棒と、
前記可動棒の変位を検出するセンサーと
が設けられており、
前記液体容器には、
液体を収容するための液体収容部と、
前記液体収容部と連通して設けられ、且つ、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
支点を中心に回動可能に設けられ、一部が前記変形部に接すると共に、前記変形部の変形に伴って変位可能に配置されたレバー部材と、
前記液体収容部、前記液体室、および前記レバー部材を内部に収容すると共に、前記レバー部材に当接する前記可動棒が挿入される通孔を有するケース部材と
が設けられていることを要旨とする。
【0023】
このような本発明の液体検出システムにおいては、液体容器の液体収容部と連通する液体室が設けられており、液体室の一部が、変形可能な変形部となっている。また、変形部には、レバー部材の一部が接しており、変形部が変形すると、レバー部材が支点を中心に回動する。これら液体収容部、液体室、およびレバー部材は、通孔を有するケース部材の内部に収容されており、液体容器を液体消費装置に装着すると、可動棒が通孔から挿入されてレバー部材に当接するようになっている。
【0024】
このような本発明の液体検出システムでは、液体収容部、液体室、およびレバー部材がケース部材の内部に収容されているので、液体の検出に関与する液体室やレバー部材が人や物にぶつかって変形するなどの損傷によって誤検出(液体の検出精度の低下)が生じることを抑制でき、その結果、信頼性の高い液体検出を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】カートリッジホルダーにインクカートリッジを装着する様子を示した説明図である。
【図3】本実施例のインクカートリッジの構成を示した分解斜視図である。
【図4】本実施例のインクカートリッジに搭載されたインク検出機構の構成を示した分解斜視図である。
【図5】インクパック内のインクがカートリッジホルダーに供給される様子を示した断面図である。
【図6】本実施例のインクカートリッジに設けられたレバー部材の構成を示した説明図である。
【図7】本実施例のカートリッジホルダーに設けられたロッドおよびセンサーの構成を示した斜視図である。
【図8】インクカートリッジ内のインクの有無を、カートリッジホルダーに内蔵されたセンサーによって検出する様子を示した説明図である。
【図9】前ケースの断面を取ることによって、ロッド用通孔とレバー部材との位置関係を示した説明図である。
【図10】第1変形例のインクカートリッジにおいて、前ケースの断面を取って、ロッド用通孔のレバー部材側の開口面の周辺を拡大して示した説明図である。
【図11】第2変形例のインクカートリッジにおいて、前ケースの断面を取って、ロッド用通孔のレバー部材側の開口面の周辺を拡大して示した説明図である。
【図12】ロッド用通孔のレバー部材側の開口面とレバー部材の接平面とが平行でない場合を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成(第1実施例):
A−1.インクジェットプリンターの構成:
A−2.インクカートリッジの構成:
A−3.ロッドおよびセンサーの構成:
B.インクカートリッジ内のインクの有無の検出(第1実施例):
C.異物侵入の抑制対策(第1実施例):
D.変形例:
D−1.第1変形例:
D−2.第2変形例:
【0027】
A.装置構成 :
A−1.インクジェットプリンターの構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例として本実施例の液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。図示したインクジェットプリンター10は、略箱形の外観形状をしており、前面のほぼ中央には前面カバー11が設けられ、その左隣には複数の操作ボタン15が設けられている。前面カバー11は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷媒体としての印刷用紙2が排出される細長い排紙口12が現れる。また、インクジェットプリンター10の背面側には、図示しない給紙トレイが設けられており、給紙トレイに印刷用紙2をセットして操作ボタン15を操作すると、給紙トレイから供給された印刷用紙2が副走査方向に所定量ずつ紙送りされて、内部で印刷用紙2の表面に画像等が印刷された後、排紙口12から印刷用紙2が排出されるようになっている。
【0028】
また、インクジェットプリンター10の上面側には上面カバー14が設けられている。上面カバー14は、奥側で軸支されており、手前側を持ち上げて上面カバー14を開くと、インクジェットプリンター10の内部の状態を確認したり、あるいはインクジェットプリンター10の修理などを行ったりすることが可能となっている。
【0029】
インクジェットプリンター10の内部には、主走査方向に往復動しながら印刷用紙2上にインクドットを形成するキャリッジ20や、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30などが設けられている。キャリッジ20の底面側(印刷用紙2に向いた側)には、複数の噴射ノズルが形成された噴射ヘッド22が搭載されており、噴射ノズルから印刷用紙2に向かってインクを噴射して画像等の印刷を行う。本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを用いてカラー画像を印刷することが可能であり、このことと対応して、キャリッジ20に搭載された噴射ヘッド22には、インクの種類毎に噴射ノズルが設けられている。
【0030】
噴射ヘッド22に形成された噴射ノズルから噴射するインクは、インクカートリッジ40と呼ばれる専用の容器に収容されている。このインクカートリッジ40は、キャリッジ20とは別の位置に設けられたカートリッジホルダー42に対して着脱可能に構成されている。インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着すると、インクカートリッジ40内のインクが、カートリッジホルダー42およびインクチューブ24を介してキャリッジ20の噴射ヘッド22に供給される。本実施例のインクジェットプリンター10では、前面カバー11の右隣に、前面カバー11と同様に下端側で軸支されたカートリッジ交換用カバー13が設けられており、カートリッジ交換用カバー13の上端側を手前に倒すと、カートリッジホルダー42が現れて、インクカートリッジ40を着脱することが可能となる。尚、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する様子や、インクカートリッジ40の詳細な構成については、後ほど別図を用いて説明する。
【0031】
また、前述したように、本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを使用することから、インクカートリッジ40もインクの種類毎に設けられている。ぞれぞれのインクカートリッジ40内のインクは、インクの種類毎に設けられたインクチューブ24を介して、噴射ヘッド22の対応する色の噴射ノズルに供給される。
【0032】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動するための駆動モーター34などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジ20に固定されており、タイミングベルト32を駆動すると、主走査方向に延設された図示しないガイドレールによってガイドしながら、キャリッジ20を主走査方向に往復動させることができる。
【0033】
また、キャリッジ20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションには、正常に印刷可能なようにメンテナンスを行うメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、噴射ヘッド22の底面側(印刷用紙2に向いた側)に押し当てられて、噴射ノズルを覆うように閉空間を形成するキャップ部材50や、噴射ヘッド22の底面側に押し当てるためにキャップ部材50を昇降させる昇降機構(図示せず)や、キャップ部材50が噴射ヘッド22の底面側に押し当てられた状態でキャップ部材50内に負圧を導入する吸引ポンプ(図示せず)などから構成されている。
【0034】
更に、インクジェットプリンター10の内部には、印刷用紙2を副走査方向に紙送りするための図示しない紙送機構や、インクジェットプリンター10の全体の動作を制御する制御部60なども搭載されている。キャリッジ20を往復動させる動作や、印刷用紙2を紙送りする動作や、噴射ノズルからインクを噴射する動作や、正常に印刷可能なようにメンテナンスを実行する動作などは、全て制御部60によって制御されている。
【0035】
図2は、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する様子を示した説明図である。図示されているように、カートリッジホルダー42には、手前側から奥側に向けてインクカートリッジ40を挿入する挿入孔44が、インクカートリッジ40毎に設けられている。この挿入孔44の奥側の面には、インクカートリッジ40からインクを取り入れるためのインク取入針46が手前側に向けて立設されている。また、インクカートリッジ40の背面(挿入孔44の奥側に向いた面)には、図示しないインク供給口が設けられている。カートリッジホルダー42の挿入孔44にインクカートリッジ40を奥側まで挿入して装着すると、インク取入針46がインク供給口に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。
【0036】
カートリッジホルダー42には、図示しないインク通路や供給ポンプが内蔵されている。インク取入針46から取り入れられたインクは、インク通路によって、カートリッジホルダー42の背面側に接続されたインクチューブ24(図1参照)に導かれる。また、インク通路の途中に設けられた供給ポンプ(例えば、ダイアフラムポンプ)は、インクカートリッジ40内のインクを吸入して、キャリッジ20内に設けられた図示しないサブタンクに向けてインクを圧送するようになっている。尚、前述したように本実施例のインクジェットプリンター10は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4色分のインクカートリッジ40を搭載しており、各インクカートリッジ40内のインクは、独立して噴射ヘッド22に供給される。このため、カートリッジホルダー42の内部には、インク通路や供給ポンプがインクカートリッジ40毎に設けられている。
【0037】
また、カートリッジホルダー42の挿入孔44には、奥側の面から手前側に向けて棒状のロッド48が突出している。詳しくは後述するが、カートリッジホルダー42には、インクカートリッジ40内のインクの有無を検出するためのセンサーが内蔵されており、ロッド48は、インクカートリッジ40内の状態(インクの有無)をセンサーに伝達する役割を果たしている。尚、ロッド48およびセンサーの構成については、インクカートリッジ40の構成を説明した後で詳しく説明する。
【0038】
A−2.インクカートリッジの構成 :
図3は、本実施例のインクカートリッジ40の構成を示した分解斜視図である。図示されているように、インクカートリッジ40は、インクを収容するインクパック70と、インクパック70を収納するカートリッジケース72などから構成されている。インクパック70は、インクなどの液体を通さないフィルムを袋状に張り合わせて、袋の開口部にインク供給ユニット74を挟んだ状態で開口部を閉じることで形成されている。尚、本実施例のインクカートリッジ40は、本発明の「液体容器」に相当しており、本実施例のインクパック70は、本発明の「液体収容部」に相当している。
【0039】
インク供給ユニット74には、インクカートリッジ40の製造段階でインクパック70にインクを注入するためのインク注入口76や、前述したカートリッジホルダー42側のインク取入針46が挿入されるインク供給口78や、インクパック70内のインクの有無を検出するためのインク検出機構80などが設けられている。尚、インク検出機構80の詳細な構成については後述する。
【0040】
インクパック70を収納するカートリッジケース72は、前ケース82および後ケース84から構成されている。後ケース84は、箱形状に形成されており、内部にインクパック70を収納可能となっている。一方、前ケース82は、インク供給ユニット74を覆い、且つ、後ケース84と嵌合して蓋をする部材である。また、前ケース82には、インクカートリッジ40がカートリッジホルダー42に装着されると、カートリッジホルダー42側のインク取入針46を受け入れる取入針用通孔86や、ロッド48を受け入れるロッド用通孔88とが設けられている。尚、本実施例のカートリッジケース72は、本発明の「ケース部材」に相当している。
【0041】
図4は、本実施例のインクカートリッジ40に内蔵されたインク検出機構80の構成を示した分解斜視図である。尚、図4には、インク供給ユニット74のインク供給口78を上方に向けた状態が示されている。図示されているように、インク検出機構80には、略円筒形状の液体室100が設けられており、この液体室100には、インクパック70内のインクが流入する流入口102や、インク供給口78に向けてインクが流出する流出口104が開口している。また、液体室100の一端面(図中では上端面)は、可撓性の材料で形成されたフィルム118によって構成されている。
【0042】
液体室100の内部には、流入口102から液体室100に流入したインクが逆流するのを阻止する逆止弁106や、フィルム118を液体室100の外側に向けて付勢する付勢バネ108などが設けられている。付勢バネ108は、液体室100の底面から上方に向けて立設された突起110と嵌合して位置決めされ、圧縮状態で設けられている。また、付勢バネ108とフィルム118との間には、受圧板112が挿入されている。この受圧板112は、付勢バネ108の付勢力をフィルム118に伝える受圧部114と、逆止弁106の移動を規制する規制部116とを連結して一体に構成されている。受圧板112の規制部116を流入口102の上方の位置で固定すると、流入口と規制部116との間で逆止弁106の移動が規制され、且つ、受圧部114が付勢バネ108とフィルム118との間に挟まれた状態で位置決めされる。尚、本実施例では、受圧部114と規制部116とが一体に構成されているが、別体に構成されていてもよい。
【0043】
また、液体室100の上方には、液体室100の上端面を構成するフィルム118に液体室100の外側から接するレバー部材120が設けられている。ここで、レバー部材120が液体室100のフィルム118に接するとは、接離可能な状態で接している場合に限られるわけではなく、レバー部材120とフィルム118とが接着剤などで離れないように接着されている場合を含むものとする。レバー部材120は、一端に軸穴122を有しており、液体室100の外側面に設けられた軸ピン126が軸穴122と嵌合して、回動可能に軸支される。一方、レバー部材120の他端にはガイド孔124が設けられており、インク供給ユニット74に固定されたガイドピン128をガイド孔124に通すことによって、レバー部材120の回動動作がガイドされる。さらに、レバー部材120の上面(フィルム118に向き合う側とは反対側の面)には、前述したカートリッジホルダー42側のロッド48の先端が当接する当接部132が設けられている。インクカートリッジ40がインクジェットプリンター10に装着されていない状態では、レバー部材120は、液体室100内に設けられている付勢バネ108によって、前ケース82側に向かって付勢されている。これにより、詳しくは後述するが、前ケース82に設けられたロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面がレバー部材120によって覆われるようになっている。このような構成のインク検出機構80を有するインクカートリッジ40では、以下のようにしてインクパック70内のインクがカートリッジホルダー42に供給される。
【0044】
図5は、インク供給ユニット74の断面を取ることにより、インクパック70内のインクがカートリッジホルダー42に供給される様子を示した説明図である。尚、図5では、図示が煩雑になるのを避けるため、レバー部材120や受圧板112の規制部116などについては図示が省略されている。前述したように、カートリッジホルダー42には図示しない供給ポンプが内蔵されており、インクカートリッジ40内のインクを吸引して、キャリッジ20に向けてインクを圧送するようになっている。図5(a)には、カートリッジホルダー42の供給ポンプが作動していない状態が示されており、図5(b)には、カートリッジホルダー42の供給ポンプが作動している状態が示されている。
【0045】
前述しように、液体室100内には付勢バネ108が設けられており、この付勢バネ108がフィルム118を液体室100の外側に向けて付勢している。そのため、図5(a)に示すように、カートリッジホルダー42の供給ポンプが作動していない状態では、フィルム118は、付勢バネ108によって押し出されて液体室100の外側に向けて凸状となる。このとき、液体室100の容積が増加しても、図中に太い破線の矢印で示したように、インクパック70と流入口102とを接続する流入通路140を通ってインクパック70内のインクが液体室100に流入するので、液体室100内は負圧にならない。尚、前述したように流入口102には、逆止弁106が設けられており、液体室100からのインクの逆流は阻止されるが、液体室100へのインクの流入は許容される。
【0046】
次に、カートリッジホルダー42の供給ポンプが作動すると、インク供給口78からインクが吸引されて、液体室100内のインクは、流出口104とインク供給口78とを接続する流出通路142を通ってカートリッジホルダー42に供給される。そして、本実施例のインクカートリッジ40では、流出通路142の内径が流入通路140の内径よりも大きく設定されていることから、液体室100からのインクの流出に対して、液体室100へのインクの流入が追い付かなくなると、液体室100内は負圧となる。その結果、図5(b)に示したように、付勢バネ108の力に抗して、フィルム118が液体室100の内側に引き込まれるように変形する。
【0047】
この液体室100内に発生した負圧は、カートリッジホルダー42の供給ポンプが停止すると、インクパック70内のインクが流入通路140を通って液体室100に流入することによって徐々に解消される。すると、付勢バネ108の力によって、フィルム118は再び液体室100の外側に押し出されるので、カートリッジホルダー42の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後は、図5(a)に示した状態に復帰する。
【0048】
こうして液体室100を介してインクパック70内のインクをカートリッジホルダー42に供給するうちにインクパック70は徐々にしぼんでいく(容積が減少する)。そして、インクパック70内のインクが無くなる(所定量よりも減少する)と、液体室100内が負圧であっても液体室100にインクが供給されなくなる。そのため、カートリッジホルダー42の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後も、液体室100内の負圧は解消されず、図5(b)に示したようにフィルム118は液体室100の内側に引き込まれた状態のままとなる。
【0049】
このように本実施例のインクカートリッジ40では、インクパック70内のインクが無くなる(所定量よりも減少する)と、液体室100の一端面を構成するフィルム118が液体室100の内側に引き込まれるように変形した状態のままとなることから、このようなフィルム118の変位を検出することによって、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することができる。ただし、本実施例のインクカートリッジ40では、フィルム118の変位は小さいので、次のようなレバー部材120を用いて変位を増幅している。
【0050】
図6は、本実施例のインクカートリッジ40に内蔵されたレバー部材120の構成を示した説明図である。図示されているように、レバー部材120の一端には軸穴122が設けられており、液体室100の外側面に設けられた軸ピン126(図4参照)が軸穴122と嵌合することによって、レバー部材120は、この軸穴122を中心に回動可能となっている。また、レバー部材120の他端にはガイド孔124が設けられており、インク供給ユニット74に固定されたガイドピン128(図4参照)がガイド孔124に差し通されている。レバー部材120が回動する際には、ガイドピン128がガイド孔124に沿って移動することによってレバー部材120の回動動作がガイドされることから、レバー部材120の回動(変位)を高い精度で規制することができる。
【0051】
また、レバー部材120のフィルム118と向かい合う側の面には、フィルム118に接する半球体状の凸部130が設けられており、レバー部材120のフィルム118と向かい合う側とは反対側の面には、カートリッジホルダー42側に設けられたロッド48の先端が当接する当接部132が設けられている。そして、レバー部材120の支点となる軸穴122から当接部132までの距離は、軸穴122から凸部130までの距離よりも大きく設定されていることから、凸部130に接するフィルム118が変形すると、その変位は増幅されて、当接部132に伝わる。こうしてレバー部材120によって増幅されたフィルム118の変位は、レバー部材120の当接部132に当接するロッド48を介して、カートリッジホルダー42内のセンサーに伝達される。尚、本実施例の凸部130は、本発明の「第1接点」に相当し、本実施例の当接部132は、本発明の「第2接点」に相当している。
【0052】
A−3.ロッドおよびセンサーの構成 :
図7は、本実施例のカートリッジホルダー42に設けられたロッド48およびセンサー136の構成を示した斜視図である。尚、図7には、図2に示したカートリッジホルダー42の奥側からロッド48およびセンサー136を見た様子が示されている。ロッド48は、軸方向に移動可能に設けられた棒状の部材であり、中央部分に付勢バネ134が取り付けられている。この付勢バネ134は、カートリッジホルダー42に装着されるインクカートリッジ40に向けて(図中の白抜きの矢印の方向に)ロッド48を付勢している。尚、本実施例のロッド48は、本発明の「可動棒」に相当している。
【0053】
また、本実施例のセンサー136には、断面形状がコの字型のいわゆる透過型フォトセンサーが用いられている。このセンサー136には、図示しない発光素子と受光素子とが向かい合わせに設けられており、発光素子が発する光を受光素子が受けるようになっている。尚、図中の破線の矢印は、発光素子から受光素子への光の透過方向を示している。
【0054】
そして、ロッド48のインクカートリッジ40側とは反対側の端部には、遮光部138が設けられている。ロッド48が付勢バネ134の力によってインクカートリッジ40側に移動すると、遮光部138がセンサー136の発光素子と受光素子との間に挿入されて、発光素子からの光を遮る。その結果、センサー136の受光素子では、発光素子からの光を受けられなくなるので、ロッド48の位置が変化したことを検出することができる。尚、本実施例のセンサー136には、透過型フォトセンサーが用いられているが、センサー136は、ロッド48の変位を検出できるものであればよく、フォトセンサーに限定されるわけではない。
【0055】
B.インクカートリッジ内のインクの有無の検出 :
図8は、インクカートリッジ40内のインクの有無を、カートリッジホルダー42に内蔵されたセンサー136によって検出する様子を示した説明図である。尚、図8には、インクカートリッジ40がカートリッジホルダー42に装着された状態が示されているが、図示が煩雑になるのを避けるため、カートリッジケース72やカートリッジホルダー42などについては図示が省略されている。
【0056】
先ず、図8(a)には、インクカートリッジ40のインクパック70内にインクがある(所定量以上のインクが残っている)状態が示されている。図5を用いて前述したように、インクパック70内にインクがあると、液体室100の一端面を構成するフィルム118は、液体室100内の付勢バネ108によって押し出されて液体室100の外側に向けて凸状となっている。そのため、フィルム118と凸部130で接するレバー部材120は、液体室100から離れるように傾斜した状態(以下、この状態を「開いた状態」という)にある。尚、インクカートリッジ40がインクジェットプリンター10に装着されていない状態においても、同様に、レバー部材120は開いた状態にある。
【0057】
また、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着すると、ロッド48の先端にレバー部材120の当接部132が当接する。前述したように、ロッド48は、付勢バネ134によってインクカートリッジ40に向けて付勢されているものの、レバー部材120の当接部132が当接すると、ロッド48は、付勢バネ134の付勢力に抗して、カートリッジホルダー42の奥側(インクカートリッジ40とは反対側)に移動する。その結果、図8(a)に示すように、ロッド48の遮光部138がセンサー136から離れることとなって、センサー136では光が透過する。尚、ロッド48側の付勢バネ134の付勢力に比べて、液体室100側の付勢バネ108の付勢力は十分に大きく設定されているので、ロッド48にレバー部材120が当接することによって、液体室100のフィルム118が変形することはないものとする。
【0058】
一方、図8(b)には、インクパック70内のインクが無くなった(所定量よりも減少した)状態が示されている。前述したように、インクパック70内のインクが無くなって液体室100にインクが供給されなくなると、液体室100内に負圧が蓄積されるので、付勢バネ108の付勢力に抗して、フィルム118が液体室100の内側に引き込まれたままとなる。
【0059】
こうしてフィルム118が液体室100の内側に引き込まれると、付勢バネ134の負勢力でレバー部材120の当接部132に押し当てられていたロッド48が、レバー部材120をフィルム118の変形に追従させて回動させる。その結果、レバー部材120は、液体室100に寄り添った状態(以下では、この状態を「閉じた状態」という)になる。また、レバー部材120が回動するのに伴って、ロッド48は、インクカートリッジ40側に移動する。すると、ロッド48の遮光部138がセンサー136の発光素子と受光素子との間に挿入されることとなって、センサー136では光が透過しなくなる。
【0060】
このように、インクパック70内にインクがあれば、センサー136で光が透過するのに対して、インクパック70内のインクが無くなると、センサー136で光が透過しなくなる。前述したように、インクジェットプリンター10の全体の動作は制御部60が制御しており、この制御部60には、センサー136から光の透過の有無を示す信号が入力される。従って、制御部60は、センサー136からの信号に基づいて、インクパック70内のインクの有無を検出することができ、インクが無くなると、図示しない液晶パネルにおいて、新しいインクカートリッジ40への交換を促す表示を行う。尚、前述したように、カートリッジホルダー42の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過するまでの間は、インクパック70内にインクが残っていても液体室100内の負圧が解消されず、フィルム118が液体室100の内側に引き込まれていることがある。そこで、供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後に、センサー136で光が透過しているか否かを検出するようになっている。
【0061】
ここで、前述したように、インクパック内のインクの有無を検出するための構成のうち、液体室100およびレバー部材120は、前ケース82に収容されてインクカートリッジ40内に設けられており、ロッド48およびセンサー136は、インクジェットプリンター10側のカートリッジホルダー42に設けられている。そして、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着すると、ロッド48の先端にレバー部材120が当接して液体室100の変位をセンサー136に伝達している。こうしたシステムを採用している関係上、インクカートリッジ40の外殻を成すカートリッジケース72には、ロッド48を受け入れるための通孔(ロッド用通孔88)を設ける必要がある。しかし、カートリッジケース72にロッド用通孔88があると、インクカートリッジ40がカートリッジホルダー42に装着されていない状態では、このロッド用通孔88から紙片などの異物が入ることがある。特に、顔料などの沈降し易い成分を含んだインクである場合には、インクカートリッジ40を振って内部のインクを撹拌するために、インクカートリッジ40がカートリッジホルダー42から取り外される状況が度々あることから、カートリッジケース72内に異物が入る可能性が高くなる。そして、カートリッジケース72内に異物が入ると、レバー部材120の回動動作が異物によって妨げられて、インクパック70内のインクの有無を正しく検出できなくなるおそれがある。そこで、本実施例のインクカートリッジ40では、ロッド用通孔88からカートリッジケース72内に異物が入ることを抑制するために、以下のような構成を採用している。
【0062】
C.異物侵入の抑制対策 :
図9は、前ケース82の断面を取ることによって、ロッド用通孔88とレバー部材120との位置関係を示した説明図である。尚、図9には、インクパック70内にインクがある状態が示されており、レバー部材120は開いた状態となっている。図示されているように、カートリッジケース72の前ケース82には、内部に収納されたレバー部材120の当接部132に対応する位置に、ロッド48を通すためのロッド用通孔88が設けられている。このロッド用通孔88には、管状の誘導部90がカートリッジケース72の内側に向けて設けられている。ロッド用通孔88にロッド48が挿入されると、誘導部90の内壁面によってロッド48の挿入方向が正しくガイドされるので、ロッド48の先端をレバー部材120の当接部132に適切に当接させることができる。
【0063】
そして、本実施例のインクカートリッジ40では、ロッド用通孔88は、開いた状態のレバー部材120の位置(深さ)まで延設されていることから、レバー部材120が開いた状態にある(インクパック70内にインクがある)ときには、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面は、レバー部材120によって覆われている。
【0064】
また、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面は、レバー部材120が開いた状態では、レバー部材120の当接部132が設けられた側の面(接平面)に対して平行に設けられている。そのため、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面に、開いた状態のレバー部材120の接平面を隙間なく密接させることができる。
【0065】
以上のように、本実施例のインクカートリッジ40では、カートリッジケース72に、ロッド48を受け入れてレバー部材120に当接させるためのロッド用通孔88が設けられており、このロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面は、開いた状態のレバー部材120によって覆われるようになっている。これにより、ロッド用通孔88から異物が入り込もうとしても、ロッド用通孔88の開口面を覆うレバー部材120が、それよりも内側に異物が入ることを妨げるので、カートリッジケース72内に異物が入り難くすることができる。結果として、カートリッジケース72内に入った異物に起因してインクパック70内のインクの有無が検出できなくなること抑制できる。
【0066】
特に、本実施例のインクカートリッジ40では、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面を、開いた状態のレバー部材120の接平面に対して平行に設けて、ロッド用通孔88の開口面にレバー部材120の接平面を密接させている。これにより、ロッド用通孔88の開口面とレバー部材120との隙間を無くすことができるので、ロッド用通孔88からカートリッジケース72内に異物が入ることを防止することができる。
【0067】
また、液体室100のフィルム118の変位を増幅するためのレバー部材120を利用して、ロッド用通孔88の開口面を覆っているので、ロッド用通孔88からの異物の侵入を防ぐために新たな部材(例えば、ロッド用通孔88を覆うフィルムや蓋部材など)を追加する必要はなく、ロッド用通孔88から異物が入り難くすることを簡便に実現できる。
【0068】
また、レバー部材120は、誘導部90の深さの分だけ、カートリッジケース72の内側にあるので、インクジェットプリンター10の使用者がインクカートリッジ40を扱う(例えば、インクの撹拌のためにインクカートリッジ40を振る)際に、ロッド用通孔88からレバー部材120に触れ難くなる。その結果、レバー部材120に衝撃が加わったり、汚れが付着したりすることを抑制できる。
【0069】
D.変形例 :
以上に説明した本実施例のインクカートリッジ40には、幾つかの変形例が存在している。以下では、これら変形例について説明する。尚、変形例の説明にあたっては、前述した実施例と同様の構成部分については、先に説明した実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
D−1.第1変形例 :
上述した実施例では、レバー部材120が開いた状態において、ロッド用通孔88の開口面にレバー部材120の接平面が密接するようになっていた。しかし、ロッド用通孔88の開口面とレバー部材120の接平面とは、必ずしも接触していなくてもよく、ロッド用通孔88の開口面とレバー部材120の接平面との間に所定の隙間が設けられていてもよい。
【0071】
図10は、第1変形例のインクカートリッジ40において、前ケース82の断面を取って、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面の周辺を拡大して示した説明図である。尚、図10には、開いた状態のレバー部材120が示されている。図示されているように、第1変形例のインクカートリッジ40においても、前述した実施例(図9参照)と同様に、ロッド用通孔88に誘導部90が設けられている。ただし、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面と、開いた状態のレバー部材120の接平面との間には、所定の隙間G(例えば、0.5mm)が設けられており、互いに接触しないようになっている。
【0072】
このように、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面と、開いた状態のレバー部材120の接平面との間に隙間Gが設けられていても、隙間Gよりも大きい異物については、カートリッジケース72内に入ることを妨げることができる。従って、隙間Gを予め適切に設定しておけば、レバー部材120の回動動作の障害となるような大きな異物が入ることを抑制できる。尚、ロッド用通孔88から入る異物の大きさは、ロッド用通孔88の直径(例えば、6mm)よりも小さいことから、隙間Gは、ロッド用通孔88の直径よりも小さく設定しておくことが好ましい。
【0073】
そして、このようにロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面と、開いた状態のレバー部材120の接平面との間に所定の隙間Gを設けておくことによって、例えば、使用者がインクカートリッジ40を振った際に、その動きで内部のレバー部材120が回動したとしても、ロッド用通孔88の開口面にレバー部材120が衝突することはないので、レバー部材120が衝撃によって変形や破損することを回避できる。
【0074】
また、レバー部材120が開いた状態において、ロッド用通孔88の開口面にレバー部材120を密接させない場合でも、ロッド用通孔88の開口面をレバー部材120の接平面に対して平行に設けておけば、ロッド用通孔88の開口面とレバー部材120の接平面との間隔(隙間)が均一になるので、一部に大きく間隔があいた箇所がある場合に比べて、ロッド用通孔88からの異物の侵入を妨げる効果を高めることができる。
【0075】
D−2.第2変形例 :
上述した実施例のようにロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面に、開いた状態のレバー部材120を密接させる場合には、ロッド用通孔88のレバー部材120側の端部に、緩衝部材を設けておいてもよい。
【0076】
図11は、第2変形例のインクカートリッジ40において、前ケース82の断面を取って、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面の周辺を拡大して示した説明図である。尚、図11には、開いた状態のレバー部材120が示されている。第2変形例のインクカートリッジ40においても、前述した実施例(図9参照)と同様に、ロッド用通孔88に誘導部90が設けられており、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面には、開いた状態のレバー部材120が密接している。そして、ロッド用通孔88のレバー部材120と接触する端部には、ゴムなどで形成された緩衝部材92が設けられている。
【0077】
前述したように、ロッド用通孔88の開口面に、開いた状態のレバー部材120を密接させることにより、ロッド用通孔88の開口面とレバー部材120との隙間を無くすことができるので、ロッド用通孔88からカートリッジケース72内に異物が入ることを防止できる。尚且つ、ロッド用通孔88のレバー部材120と接触する端部に緩衝部材92を設けておけば、ロッド用通孔88の端部にレバー部材120が接触したときの衝撃が緩衝部材92によって緩和されるので、使用者がインクカートリッジ40を振った際に内部のレバー部材120が回動しても、レバー部材120が衝撃で破損することを抑制できる。
【0078】
尚、緩衝部材92は、ロッド用通孔88の端部ではなく、レバー部材120の接平面内でロッド用通孔88の端部と接触する部分に設けておいても、接触時の衝撃を緩和することができる。
【0079】
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0080】
例えば、前述した実施例および変形例では、ロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面が、開いた状態のレバー部材120の接平面に対して平行に設けられていた。しかし、ロッド用通孔88の開口面は、開いた状態のレバー部材120によって覆われる位置関係になっていれば、必ずしもレバー部材120の接平面に対して平行でなくてもよい。例えば、図12(a)に示すように、ロッド用通孔88の開口面の一部と、開いた状態のレバー部材120とが接触するものの、ロッド用通孔88の開口面は、レバー部材120の接平面の傾斜角度に拘らず、前ケース82の外壁面に対して平行に設けておいてもよい。この場合は、ロッド用通孔88の開口面の角度をレバー部材120の接平面の傾斜に合わせて調整する必要がないので、前ケース82の製造が容易となる。
【0081】
また、図12(a)のようにロッド用通孔88のレバー部材120側の開口面とレバー部材120の接平面とが平行でない場合には、図12(b)に示すように、レバー部材120の接平面に半球体状の当接部132を設けておいてもよい。このようにすれば、レバー部材120が開いた状態では、半球体状の当接部132がロッド用通孔88の開口面に当接して、開口面を塞ぐことができる。
【0082】
さらに、前述した実施例では、インクカートリッジ40がインクジェットプリンター10に装着されていない状態において、レバー部材120がロッド用通孔88のレバー部材120側の開口を覆うように、液体室100の付勢バネ108によってレバー部材120が前ケース82側に付勢されているが、前ケース82側へレバー部材120を付勢する態様はこれに限られるわけではない。例えば、液体室100の付勢バネ108とは別に設けた付勢バネを用いて前ケース82側にレバー部材を付勢するようにしてもよい。つまり、インクカートリッジ40がインクジェットプリンター10に装着されていない状態で、レバー部材120がロッド用通孔88のレバー部材120側の開口を覆うように、レバー部材120が付勢されていれば十分である。
【符号の説明】
【0083】
10…インクジェットプリンター、 20…キャリッジ、 22…噴射ヘッド、
40…インクカートリッジ、 42…カートリッジホルダー、 44…挿入孔、
46…インク取入針、 48…ロッド、 70…インクパック、
72…カートリッジケース、 74…インク供給ユニット、
76…インク注入口、 78…インク供給口、 80…インク検出機構、
86…取入針用通孔、 88…ロッド用通孔、 90…誘導部、
92…緩衝部材、 100…液体室、 108…付勢バネ、
118…フィルム、 120…レバー部材、 122…軸穴、
126…軸ピン、 130…凸部、 132…当接部、
134…付勢バネ、 136…センサー、 138…遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動可能な可動棒と該可動棒の変位を検出するセンサーとを有する液体消費装置に装着可能な液体容器であって、
液体を収容するための液体収容部と、
前記液体収容部と連通して設けられ、且つ、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
支点を中心に回動可能に設けられ、一部が前記変形部に接すると共に、前記変形部の変形に伴って変位可能に配置されたレバー部材と、
前記液体収容部、前記液体室、および前記レバー部材を内部に収容すると共に、前記レバー部材に当接する前記可動棒が挿入される通孔を有するケース部材と
を備えた液体容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体容器であって、
前記液体消費装置に装着されていない状態において、前記通孔の前記レバー部材側の開口部は、前記レバー部材によって覆われている液体容器。
【請求項3】
請求項2に記載の液体容器であって、
前記通孔には、前記可動棒の挿入時に該可動棒を内壁面によって誘導する誘導部が設けられている液体容器。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の液体容器であって、
前記レバー部材は、前記可動棒と当接する当接部を含む平面である接平面を有し、
前記液体消費装置に装着されていない状態において、前記通孔の前記レバー部材側の開口面は、前記レバー部材の前記接平面に対して平行に設けられている液体容器。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4の何れか一項に記載の液体容器であって、
前記液体消費装置に装着されていない状態において、前記通孔の前記レバー部材側の開口面は、前記レバー部材と所定の間隙を形成するように設けられている液体容器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の液体容器であって、
前記レバー部材は、前記通孔に向かって弾性部材によって付勢されている液体容器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の液体容器であって、
前記通孔の前記レバー部材側の開口面または前記レバー部材の何れか一方には、何れか他方と接触する部分に緩衝部材が設けられている液体容器。
【請求項8】
液体消費装置に装着された液体容器内の液体の有無を検出する液体検出システムであって、
前記液体消費装置には、
軸方向に移動可能な可動棒と、
前記可動棒の変位を検出するセンサーと
が設けられており、
前記液体容器には、
液体を収容するための液体収容部と、
前記液体収容部と連通して設けられ、且つ、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
支点を中心に回動可能に設けられ、一部が前記変形部に接すると共に、前記変形部の変形に伴って変位可能に配置されたレバー部材と、
前記液体収容部、前記液体室、および前記レバー部材を内部に収容すると共に、前記レバー部材に当接する前記可動棒が挿入される通孔を有するケース部材と
が設けられている液体検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−912(P2013−912A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130991(P2011−130991)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】