説明

液体容器用注出口構造及び注出具

【課題】空気流路を確実に形成することができると共に、液体用流路を流れる液体の流れを改善して、結果として、流量を多くすることができる液体容器用注出口構造または注出具を提供する。
【解決手段】液体容器12内部に連通する入口30a1、30a2と、該入口とは異なる方向を向き液体を注出する出口34a1、34a2とを有し、前記入口は、第1入口30a1と第2入口30a2とに分離され、前記出口は第1出口34a1と第2出口34a2とに分離され、第1入口30a1と第1出口34a2とを連通する液体用流路44,40と、第2入口30a2と第2出口34a2とを連通する空気用流路42,46と、を備え、空気用流路の途中にはオリフィス48が設けられ、空気用流路と液体用流路との途中には2つの流路を隔てる隔壁36cが設けられ、該隔壁36cは湾曲しながら液体用流路の向きを変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容する液体容器の口部に設けられる注出口構造及び液体容器の口部に取り付けられる注出具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の注出口構造または注出具としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された注出具では、液体容器の頸部または排出口内に掛合するようになったグランドと、グランドに一体のスリーブ部と、スリーブ部内で水密掛合にて回転することができるハンドルを備えた差込部とを備えている。グランドの軸線は、差込部の回転軸線に対して直角である。そして、グランドとスリーブ部とを連絡する液体開口が設けられ、グランド内には一体構造管状突起が設けられて空気口によってスリーブ部に連絡している。
【0004】
差込部内には内部隔壁が設けられ、内部隔壁によって差込部内が液体排出通路(または液体用流路とも言う)と空気還流通路(または空気用流路とも言う)とに隔たれて、さらに、差込部の壁には、液体排出通路に連通する液体入口と空気還流通路に連通する空気出口とが設けられている。差込部をスリーブ内で回動して、液体入口が液体開口と一致し同時に空気出口が空気口と一致するようにすると、液体を液体用流路を通して注出することができ、また、差込部をスリーブ内で回動して、液体入口が液体開口と不一致となり、空気出口が空気口と不一致となるようにすると、液体の注出が防止される構成となっている。
【0005】
ところで、このような注出具では、空気用流路が液体用流路と並列に形成されているために、液体が注出可能な状態になったときに、最初に液体用流路のみならず、空気用流路全体に液体が充満した状態で液体が流れ出る。この液体で完全に充満されている空気用流路に空気の流路を確立するためには、液体容器の内部圧力と外部圧力との圧力差を確実に形成する必要があるが、液体容器が変形するなどして、内部圧力と外部圧力との圧力差を確実に形成することができないと、液体の流れが停止してしまう、という事態が発生しやすい。特に、液体容器が易変形性を持つ材料から構成される場合には、そのような流体の流れの停止が発生しやすい。
【0006】
そこで、本出願人は、特願2008−9833でこのような問題を解決するための注出口構造または注出具として、空気用流路にオリフィスを形成することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭43−13898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特願2008−9833号で提案する注出口構造または注出具では、空気通路を確実に形成して液体の流れの停止は防止できるものの、その流量については未だ改善の余地がある。
【0009】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、空気流路を確実に形成することができると共に、液体用流路を流れる液体の流れを改善して、結果として、流量を多くすることができる液体容器用注出口構造または注出具を提供することをその目的とする。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記目的に加えて開閉状態を切替可能な注出具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明による液体容器用注出口構造は、液体容器内部に連通する入口と、該入口とは異なる方向を向き液体を注出する出口とを有し、前記入口は、第1入口と第2入口とに分離され、前記出口は第1出口と第2出口とに分離され、前記第1入口と前記第1出口とを連通する液体用流路と、前記第2入口と前記第2出口とを連通する空気用流路と、を備え、空気用流路の途中にはオリフィスが設けられ、空気用流路と液体用流路との途中には2つの流路を隔てる隔壁が設けられ、該隔壁は湾曲しながら液体用流路の向きを変えることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明による注出具は、液体容器の内部に連通する入口と該入口とは異なる方向を向き液体を注出する出口とを備えた本体と、本体内に挿入された軸体と、を備え、
前記入口は第1入口と第2入口とに分離され、前記出口は第1出口と第2出口とに分離され、
本体と軸体との間で、前記第1入口と前記第1出口とを連通する流体用流路と、前記第2入口と前記第2出口とを連通する空気用流路と、が形成され、該空気用流路の途中にはオリフィスが設けられ、
前記軸体には、流体用流路と空気用流路とを隔てる隔壁が形成され、該隔壁は流体用流路に面する湾曲面を備え、該隔壁は湾曲しながら液体用流路の向きを変えることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の前記隔壁の空気用流路に面する側に、前記空気用流路を構成する溝が形成されており、該溝の一部の断面積が小さくなった部分が前記オリフィスを構成することを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の前記軸体が、本体に対して回動可能となっており、第1回動位置で前記隔壁は前記入口と前記出口とを非連通とする位置にあり、第2回動位置で前記隔壁は前記第1入口と前記第1出口とを連通し、前記第2入口と前記第2出口とを連通する位置にあることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の前記入口と前記出口とは90度向きが異なっており、前記軸体は、入口及び出口の各面の垂線に対して直交する軸の周りを回動することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の前記本体が、入口に連通して入口の面の垂線に対して直交する中心軸線を有する第1円筒部と、第1円筒部の中心軸線に対して直交する中心軸線を有し出口に連通する第2円筒部と、を備えており、前記軸体は第1円筒部内に挿入されて、第1円筒部の中心軸線の周りを回動することを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の前記第2円筒部内に、隔壁が形成されて該隔壁により、前記液体用流路を構成する第1流路と前記空気用流路を構成する第2流路とが隔てられ、
前記第1円筒部内には、前記軸体の前記隔壁により、前記液体用流路を構成する第3流路と前記空気用流路を構成する第4流路とが隔てられ、
前記軸体が第2回動位置にあるときに、前記第1流路と前記第3流路とが連通し、前記第2流路と前記第4流路とが連通することを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の前記軸体の周面に、前記隔壁によって一方側に形成され前記第3流路を画成するための切欠部と、前記隔壁によって切欠部と反対側に形成され第4流路を画成するための溝とが形成されており、さらに軸体の周面には、切欠部と溝との間、及び切欠部の両側に、第1円筒部の内周面に当接して液密性を確保するためのリブが形成されることを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項6ないし8のいずれか1項に記載の前記軸体に第1円筒部の外部に配置されるレバーが設けられ、該レバーは、前記軸体が第1回動位置にあるときに、前記第2円筒部に並んで略平行に配設され、前記軸体が第2回動位置にあるときに、第2円筒部の中心軸線に対して略直交して配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、液体容器から液体を注出するときに、液体用流路を通り液体が流れると共に、注出開始時は空気用流路を通り液体が流れて、その際、オリフィスから液体が流れ出るものの、オリフィスの反液体容器側の近傍には空気が存在することができる。そのため、液体容器の内圧が下がり、オリフィス前後の圧力差がなくなると、オリフィスの反液体容器側近傍に存在する空気がオリフィスを通り、液体容器内へと侵入して、空気用流路及び液体容器内に空気流路を形成することができるため、液体の流れが停止することなく、円滑に液体を注出することができる。
【0021】
また、本発明によれば、隔壁が湾曲しながら液体用流路の向きを変えるために、液体が湾曲面に沿った流れを構成することができるため、流体の流れが円滑になり、大流量を注出することができる。
【0022】
また、湾曲面を備えた隔壁が形成された軸体が、本体に対して第1回動位置と第2回動位置との間で回動することで、注出具を、閉状態と開状態とに切り替えることができる。
【0023】
また、軸体に、第1円筒部の内周面に当接するリブを形成することで、軸体と第1円筒部との間での液密性を確保することができる。
【0024】
また、軸体に設けられたレバーが、軸体が第1回動位置にあるときに、前記第2円筒部に並んで平行に配設されることで、閉状態時にレバーが邪魔になり難い位置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の液体容器用注出口構造及び該注出口構造を構成する注出具及び液体容器を表す側面図である。
【図2】本発明の実施形態による注出具の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による注出具の分解平面図である。
【図4】本発明の実施形態による注出具の分解断面図である。
【図5】本発明の実施形態による注出具の本体と軸体の分解底面図である。
【図6】本発明の実施形態による注出具の軸体の(a)は開状態における平面図、(b)は閉状態における側面図、(c)は(b)の6c−6c線に沿って見た断面図、(d)は開状態における斜視図である。
【図7】本発明の実施形態による注出具の断面図であり、(a)は閉状態、(b)は開状態である。
【図8】本発明の実施形態による注出具の第1円筒部と軸体の部分断面図である。
【図9】注出具による液体の注出時を表す断面図であり、(a)は注出開始時、(b)は空気流路が形成された後を表す。
【図10】(a)は本発明の実施形態による注出具の(b)は特願2008−9833に記載の注出具のそれぞれの流体解析結果を表す図である。
【図11】実施例と比較例の注出開始から16秒後までの注出量の推移を示すグラフである。
【図12】実施例と比較例の5Lの水を出し切るまでに要する時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明の液体容器用注出口構造及び該注出口構造を構成する注出具を表す図である。この注出具10は、この例では、液体容器12の口部12aに着脱可能に取り付けられるものであり、液体容器12と別部品の単独のプラスチック部品となっている。例えば、店舗で液体容器12が販売されるときには、液体容器12と分離した状態にあり、液体容器から液体を小分けまたはその他の目的で注出するときに、注出具10を液体容器12に取り付けるといった使用が可能である。しかしながら、本発明の注出口構造は、液体容器12と分離した部品で構成されることに限らず、液体容器12の口部に着脱不可能に一体に取り付けられたもので構成されることも可能である。
【0027】
液体容器12としては、プラスチック材料からなるボトル、BIB(バッグインボックス)における柔軟性のある袋、その他任意の容器とすることができる。プラスチック材料からなるボトルの場合、そのボトルは、易変形性の高い比較的軟質な材料から構成されてもよく、または、易変形性の低い比較的硬質な材料から構成されてもよい。
【0028】
また、液体容器12に収容される液体は、低粘度〜中粘度(0.9〜420mPa・S)のものとすることができる。
【0029】
注出具10は、液体容器12の口部12aに取り付けられる環状の取付体20と、取付体20から延びる本体22と、本体22に挿入され回動可能となった軸体24と、を有している。取付体20、本体22及び軸体24は、それぞれ射出成形等によって成形される成形品とすることができ、その材料としては、ポリオレフィン系樹脂またはポリスチレン系樹脂等の任意の合成樹脂材料を用いることができる。
【0030】
図3〜図6を参照して、各部材について詳細に説明する。
【0031】
取付体20は、その内周面に、液体容器12の口部12aに螺着によって取り付けることができるようにネジ部20a(図4)が形成されており、頂面には円形開口20bが形成されている。
【0032】
本体22は、大まかに、取付体20に固定される帽子形状の基部30と、基部30の頂面から突出する第1円筒部32と、第1円筒部32の中央壁部から横方向に突出する第2円筒部34と、を備える。第1円筒部32の軸線は、円形開口20bの中心軸と直交する方向に延びており、第2円筒部34の軸線は、第1円筒部32の軸線及び円形開口20bの中心軸の両方に直交する方向に延びている。
【0033】
基部30は、前記円形開口20bを貫通しており、その外周面には、複数の小突起30c(図3)が形成されており、該小突起30cが円形開口20bの縁部に係止されることで、取付体20内外に配置されて固定される。基部30の頂面には、第1円筒部32の内部と連通すると共に液体容器12内に連通可能となった入口30aが形成されており、さらに入口30a内には入口30aを横切るように隔壁30bが形成されている。隔壁30bによって、入口30aは、第1入口30a1と第2入口30a2(図4、図5)とに分離される。
【0034】
第1円筒部32は、その一端部が閉塞され、その他端部は開放されており、その内部は空洞となっている。開放された端部の近傍の内周面には嵌合溝32a(図3)が形成されており、開放された端部からは後述の軸体24が差し込まれる。さらに第1円筒部32の開放された端部には、その円周方向に円弧状に延びる切欠溝32b(図3)が形成される。
【0035】
第2円筒部34は、その一端部が第1円筒部32内に連通しており、その他端部が出口34aとなり、その内部には軸方向に沿って隔壁34bが形成される。隔壁34bによって、出口34aは第1出口34a1と第2出口34a2(図4)とに分離され、また、第2円筒部34内は、第1流路40と第2流路42(図4)とに分離される。
【0036】
尚、隔壁34bは、完全に無孔で、第1流路40と第2流路42とを完全に隔てる必要はなく、図示の例のようにスリット34cが形成されていてもよい。スリット34cは、出口34aから第2円筒部34の一端部、即ち奥の方に向かって幅広から幅狭となるように漸次変化している。このスリット34cは、本体22の成形時に、第1流路40と第2流路42とを成形するためのコアピンを一体化してコアピンの偏心を防止し、スリットに相当するコアピンによって、出口34aまで隔壁34bとなるための溶融樹脂を流し込むためのものである。しかしながら、スリット34cを省略することも可能である。
【0037】
次に、図3〜図6を参照すると、軸体24は、大まかに、第1円筒部32内に挿入される軸部36と、第1円筒部32外に配置されるコック部38とを備える。
【0038】
軸部36には、前記第1円筒部32の嵌合溝32aに嵌合する嵌合突起36a(図3)が形成される。軸部36の両端部を除く軸方向中央部には、その軸側面から大きく切り欠かれた切欠部36bが形成されている。図4に示すように、切欠部36bの横断面形状は円弧状をなしており、切欠部36bを画成する壁は湾曲隔壁36cとなっている。
【0039】
さらに、湾曲隔壁36cの切欠部36bに面する側と反対側には溝が形成される。即ち、溝は、円周方向に延びており、その溝底は湾曲隔壁36cとなっている。そして、溝は、長さが長く幅の広い第1溝36dと、長さが短く幅の狭い第2溝36eとが連続したものからなる。第2溝36eの断面積は第1溝36dの断面積よりも小さい。
【0040】
さらには、軸部36の切欠部36bの軸方向の両側において円周方向に延びる高さの低いリブ36fが形成され、切欠部36bと第1溝36dとの間及び切欠部36bと第2溝36eとの間において軸方向に延びる高さの低いリブ36gが形成され、リブ36fとリブ36gは繋がっている。
【0041】
図7に示したように、軸部36が第1円筒部32内に挿入されたときに、後述のように開状態において(図7(b))、湾曲隔壁36cによって、第1円筒部32内の空洞が、切欠部36bと第1円筒部32の内周面で画成される第3流路44と、第1溝36dと第1円筒部32の内周面で画成される第4流路46とに分離される。そして、第2溝36eと第1円筒部32の内周面とによって、その前後の断面積に比較して断面積が小さくなったオリフィス48が形成される。
【0042】
コック部38は、第1円筒部32から突出して、軸部36に軸方向に連続するコック基部38aと、コック基部38aから延びるコックレバー部38bとからなる。
【0043】
コック基部38aの外周面には、必要に応じて、開閉を表す表示が付されている。また、コックレバー38bの基部の一部は、第1円筒部32の切欠溝32b内に挿入されて、この切欠溝32bをコックレバー38bが移動する範囲内で、軸体24が第1円筒部32に対して回動することができるようになっており、その回動角度は90度である。
【0044】
以上のように構成される注出具10において、図7(a)に示したように、コックレバー部38bが第2円筒部34に平行に並んだ状態では、軸体24が第1回動位置にあり、湾曲隔壁36cの両端が第1円筒部32の内周面に当接し、入口30aと出口34aとは湾曲隔壁36cによって隔たられるため、注出具10は閉状態となる。このとき、リブ36f、36gが第1円筒部32の内周面と確実に当接することで、液密性を確保することができる(図8)。コックレバー38bが、第2円筒部34に並んで平行に配設されることで、閉状態時にコックレバー38bが邪魔になり難い位置にすることができる。
【0045】
一方、図7(b)に示したように、コックレバー部38bが第2円筒部34に対して直角になった状態では、軸体24が第2回動位置にあり、湾曲隔壁36cは隔壁30b及び隔壁34bと連続する。これによって、第1入口30a1、第3流路44、第1流路40及び第1出口34a1が連通して液体用流路を構成し、また、第2入口30a2、第4流路46、オリフィス48、第2流路42及び第2出口34a2が連通して空気用流路を構成して、注出具10は開状態となる。
【0046】
注出具10の開状態で、出口34aが下向きになり且つ液体用流路が空気用流路よりも下側になるように設定すると、図9(a)に示すように、液体は、前記液体用流路を通過して第1入口30a1から第1出口34a1へと流れ出る。同時に、空気用流路にも液体が入るため、第2入口30a2から第2出口34a2へと流れ出る。但し、空気用流路にはオリフィス48が形成されているため、オリフィス48によって第2流路42は、液体が充満した状態にはならず、液体と空気が混在した状態となり、オリフィス48近傍の第2流路42は、大気開放状態となっている。
【0047】
液体が液体容器12からある程度注出され、液体容器12内の圧力が減圧状態になると、液体用流路からの液体の流量が少なくなってくる。オリフィス48前後の圧力差も小さくなるので、オリフィス48からの液体の流量も少なくなってくる。
【0048】
オリフィス48前後の圧力差が逆転すると、図9(b)に示すように、第2流路42に存在している空気がオリフィス48から第4流路46に侵入することができ(図9(b)中、破線で空気の流れを示す)、第4流路46を通り、液体容器12内の内部空間まで到達する空気の流路を形成する。そのため、液体容器12内の内圧が確保され、液体用流路からの液体の流れをそのまま維持することができるようになる。
【0049】
仮にオリフィス48がないと、液体容器12内の内圧の減少により、注出具内の液体の圧力が大気圧よりも下がり、液体の流れが停止することになるが、オリフィス48があることにより、オリフィス48前後の圧力差により空気の流れを発生することができて、これをトリガとして空気が順次液体容器12内へと取り込まれるために、内圧を上昇させることができ、よって、液体の流れを維持することができる。
【0050】
また、第4流路46は、オリフィス48の手前の液体の圧力を下げるための圧力損失を発生させる効果がある。よって、第4流路46はある程度長く、断面積はある程度小さいものとするとよい。圧力損失は、直管の場合、直径の5乗に反比例し、長さの1乗に比例するからである。
【0051】
さらに、この注出具10においては、第1入口30a1、第3流路44、第1流路40及び第1出口34a1によって構成される液体用流路において、湾曲隔壁36cが湾曲しているために、その湾曲面に沿った流れを構成することができる。即ち、入口30aと出口34aの面の向きが90°異なっているために、その流体用流路においてその方向転換をする必要があるが、方向転換を行う地点で、湾曲隔壁36cがあるために、湾曲面によって徐々に向きを変えることができる。このような湾曲隔壁36cは、湾曲隔壁36cが形成される軸体24の中心軸が、入口30aと出口34aの各面の垂線に対してそれぞれ直交する方向に延びており、また、その中心軸の周りで回動する構成を採用することにより、実現が可能である。
【0052】
これに対して、従来技術の構成では、このような湾曲隔壁36cを形成することはできず、必ず、隔壁に直角に曲がる部分が形成される。このような直角に曲がる部分には、空気の滞留が形成され、また、流体の反射、渦流が発生して、円滑な流れを阻害する。
【0053】
図10は、本実施形態による注出具10と特願2008−9833に記載の注出具との比較を表す流体解析例である。図において、白い部分は空気を、黒い部分は液体を表し、濃くなるに連れて液体の割合が多いことを示す。
【0054】
本実施形態による注出具によれば、第3流路に相当する部分において、湾曲隔壁36cによって上側に湾曲面が形成され、第1円筒部32によって下側に湾曲面が形成される。この上側の湾曲面に沿って流体が流れるため、図10(a)に示すように、この付近で空気の滞留、流体の反射、渦流の発生がなく、円滑に流れることが分かる。また、下側の湾曲面によって、流体が第2円筒部34の壁面に沿った流れを発生することが分かる。これに対して、従来のように、直角に曲がる部分が形成されていると、図10(b)のように上側の直角部分付近で液体が円滑に流れず、空気の滞留が生じ、また、下側の直角部分があることによって、液体の流れが第2円筒部34の壁面から離れてしまい、結果として液体の断面積は小さく、流量が少ないことが分かる。
【0055】
以上の比較をさらに裏付けるために、本件実施形態に相当する注出具(実施例)、特許文献1に相当する注出具(比較例1)、特願2008−9833号に相当する注出具(比較例2)に対して、それぞれ同じ液体容器12(容量5Lに5Lの水を充填)に取り付けた状態で、注出開始から16秒後までの注出量(図11)及び5L全て出し切るまでに要する時間(図12)を求めた。出口の径は全ての注出具で同じとした。
【0056】
図11及び図12に示されるように、実施例は、他の注出具と比較して、注出量が多く、注出時間が短いことが分かる。注出開始から約8秒前後で、空気用流路を通る空気の流れが形成されるようになる。比較例1と比較例2はほぼ注出量及び注出時間では同じであるが、比較例2は、オリフィスの効果によって、一旦、空気用流路における空気の流れが形成された後は脈動が生じることなく流れたが、比較例1では、空気用流路を通る空気の流れが形成された後も、空気の流れが安定せずに、脈動が発生した。
【0057】
実施例は、脈動が発生することもなく、大流量の液体を注出することができることが分かった。
【0058】
尚、以上の実施形態では、軸体24が第1円筒部32に対して回動可能となっており、これによって、注出具10の閉状態と開状態とを切替可能としていたが、これに限るものではなく、軸体24が第1円筒部32に対して回動不能に固定されていて、常に開状態を維持しているものとすることもできる。この場合には、別途、出口34aを閉塞可能となったキャップを、注出具10と一体または別体に設けることもできる。
【符号の説明】
【0059】
10 注出具
12 液体容器
12a 口部
22 本体
24 軸体
30a 入口
30a1 第1入口
30a2 第2入口
32 第1円筒部
34 第2円筒部
34a 出口
34a1 第1出口
34a2 第2出口
34b 隔壁
36b 切欠部
36c 湾曲隔壁
36d 第1溝
36e 第2溝
36f、36g リブ
40 第1流路
42 第2流路
44 第3流路
46 第4流路
48 オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器内部に連通する入口と、該入口とは異なる方向を向き液体を注出する出口とを有し、前記入口は、第1入口と第2入口とに分離され、前記出口は第1出口と第2出口とに分離され、前記第1入口と前記第1出口とを連通する液体用流路と、前記第2入口と前記第2出口とを連通する空気用流路と、を備え、空気用流路の途中にはオリフィスが設けられ、空気用流路と液体用流路との途中には2つの流路を隔てる隔壁が設けられ、該隔壁は湾曲しながら液体用流路の向きを変えることを特徴とする液体容器用注出口構造。
【請求項2】
液体容器の内部に連通する入口と該入口とは異なる方向を向き液体を注出する出口とを備えた本体と、本体内に挿入された軸体と、を備え、
前記入口は第1入口と第2入口とに分離され、前記出口は第1出口と第2出口とに分離され、
本体と軸体との間で、前記第1入口と前記第1出口とを連通する流体用流路と、前記第2入口と前記第2出口とを連通する空気用流路と、が形成され、該空気用流路の途中にはオリフィスが設けられ、
前記軸体には、流体用流路と空気用流路とを隔てる隔壁が形成され、該隔壁は流体用流路に面する湾曲面を備え、該隔壁は湾曲しながら液体用流路の向きを変えることを特徴とする注出具。
【請求項3】
前記隔壁の空気用流路に面する側には、前記空気用流路を構成する溝が形成されており、該溝の一部の断面積が小さくなった部分が前記オリフィスを構成することを特徴とする請求項2記載の注出具。
【請求項4】
前記軸体は、本体に対して回動可能となっており、第1回動位置で前記隔壁は前記入口と前記出口とを非連通とする位置にあり、第2回動位置で前記隔壁は前記第1入口と前記第1出口とを連通し、前記第2入口と前記第2出口とを連通する位置にあることを特徴とする請求項2記載の注出具。
【請求項5】
前記入口と前記出口とは90度向きが異なっており、前記軸体は、入口及び出口の各面の垂線に対して直交する軸の周りを回動することを特徴とする請求項4記載の注出具。
【請求項6】
前記本体は、入口に連通して入口の面の垂線に対して直交する中心軸線を有する第1円筒部と、第1円筒部の中心軸線に対して直交する中心軸線を有し出口に連通する第2円筒部と、を備えており、前記軸体は第1円筒部内に挿入されて、第1円筒部の中心軸線の周りを回動することを特徴とする請求項4記載の注出具。
【請求項7】
前記第2円筒部内には、隔壁が形成されて該隔壁により、前記液体用流路を構成する第1流路と前記空気用流路を構成する第2流路とが隔てられ、
前記第1円筒部内には、前記軸体の前記隔壁により、前記液体用流路を構成する第3流路と前記空気用流路を構成する第4流路とが隔てられ、
前記軸体が第2回動位置にあるときに、前記第1流路と前記第3流路とが連通し、前記第2流路と前記第4流路とが連通することを特徴とする請求項6記載の注出具。
【請求項8】
前記軸体の周面には、前記隔壁によって一方側に形成され前記第3流路を画成するための切欠部と、前記隔壁によって切欠部と反対側に形成され第4流路を画成するための溝とが形成されており、さらに軸体の周面には、切欠部と溝との間、及び切欠部の両側に、第1円筒部の内周面に当接して液密性を確保するためのリブが形成されることを特徴とする請求項7記載の注出具。
【請求項9】
前記軸体には第1円筒部の外部に配置されるレバーが設けられ、該レバーは、前記軸体が第1回動位置にあるときに、前記第2円筒部に並んで略平行に配設され、前記軸体が第2回動位置にあるときに、第2円筒部の中心軸線に対して略直交して配設されることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の注出具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−11813(P2011−11813A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160087(P2009−160087)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】