説明

液体容器

【課題】振動防止部材による保温性能の低下を抑制する。
【解決手段】内容器11と外容器18とを備えた液体容器10において、内容器11および外容器18のうち、一方の口部13,20と対向する閉塞面16b,22cに、他方の口部13,20と対向する閉塞面16b,22cに向けて突出する振れ止め部材31を配設するとともに、内容器11および外容器18のうち、他方の閉塞面16b,22cに、振れ止め部材31を貫通させて振れ止め部材31の移動を抑制する振れ止め抑え部材35を配設し、振れ止め抑え部材35に、振れ止め部材31を中心として円環状に膨出する膨出部38を設けた構成としている。または、振れ止め抑え部材35に、所定領域を打ち抜いた打抜部53を設けた構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容した液体を保温する断熱性を有する液体容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の液体容器に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2601123号公報
【特許文献2】特許第3698114号公報
【特許文献3】特許第3662903号公報
【0004】
これらの特許文献には、内容器と、該内容器の外部に所定の隙間をあけて囲繞するように配設した外容器とを備え、これらの間の空間を真空引きした断熱性を有する液体容器が記載されている。この液体容器は、振動が加えられると、口部のみで固定されている内容器が外容器に対して揺動する。そして、内容器が外容器に干渉すると異音を発するうえ、最悪の場合には内容器と外容器とを接合した口部にリークが発生する。
【0005】
そのため、特許文献1では、内容器において、口部と対向する閉塞面に、外容器の閉塞面に向けて突出する円筒金具(支持部材)を固着するとともに、外容器の閉塞面に、前記円筒金具内に挿入される断面+字形状をなす金具(振動防止部材)を固着している。
【0006】
また、特許文献2では、外容器の閉塞面に開口部(支持部)を設け、内容器の閉塞面に開口部を貫通する振動防止部材を配設している。そして、前記開口部および振動防止部材は、外向きに突出するように凹状カバーを配設することにより閉塞する構成としている。または、内容器の閉塞面に口部に向けて内向きに窪む凹部(支持部)を設け、外容器の閉塞面に凹部内に挿入する振動防止部材を配設している。または、内容器に内向きに窪む凹部(支持部)を設けるとともに、外容器に外向きに窪む凹部(支持部)を設け、これら凹部にかけて球状の振動防止部材を配設している。
【0007】
さらに、特許文献3では、特許文献2と同様に、外容器の閉塞面に開口部を設け、内容器の閉塞面に開口部を貫通する振動防止部材を配設している。そして、この特許文献3では、開口部を覆うように振動防止部材を支持する支持部材を配設するとともに、これらを覆うように凹状カバーを配設している。
【0008】
しかしながら、これらの特許文献では、振動防止部材および支持部または支持部材を伝達部材として、内容器から外容器へ伝わる熱量が多いため、保温性能が低いという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、振動防止部材による保温性能の低下を抑制可能な液体容器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の第1の液体容器は、一端に開口した第1口部を有する内容器と、該内容器の外部に所定の隙間をあけて囲繞するように配設され一端に前記第1口部の外面に固着される第2口部を有する外容器とを備えた液体容器において、前記内容器および外容器のうち、一方の口部と対向する閉塞面に、他方の口部と対向する閉塞面に向けて突出する振れ止め部材を配設するとともに、前記内容器および外容器のうち、他方の閉塞面に、前記振れ止め部材を貫通させて該振れ止め部材の移動を抑制する振れ止め抑え部材を配設し、前記振れ止め抑え部材に、前記振れ止め部材を中心として円環状に膨出する膨出部を設けた構成としている。
【0011】
また、本発明の第2の液体容器は、一端に開口した第1口部を有する内容器と、該内容器の外部に所定の隙間をあけて囲繞するように配設され一端に前記第1口部の外面に固着される第2口部を有する外容器とを備えた液体容器において、前記内容器および外容器のうち、一方の口部と対向する閉塞面に、他方の口部と対向する閉塞面に向けて突出する振れ止め部材を配設するとともに、前記内容器および外容器のうち、他方の閉塞面に、前記振れ止め部材を貫通させて該振れ止め部材の移動を抑制する振れ止め抑え部材を配設し、前記振れ止め抑え部材に、所定領域を打ち抜いた打抜部を設けた構成としている。
そして、この第2の液体容器では、前記振れ止め抑え部材に、前記振れ止め部材を中心として円環状に膨出する膨出部を更に設けることが好ましい。
【0012】
これらの液体容器では、内容器および外容器のうち一方に振れ止め部材を配設するとともに、他方に振れ止め部材の移動を抑制する振れ止め抑え部材を配設しているため、振動が加わることによる内容器の外容器に対する揺動を防止できる。そのため、内容器が外容器に干渉することによる異音の発生を防止できるうえ、内容器と外容器とを接合した口部にリークが発生することを防止できる。
【0013】
また、振れ止め抑え部材には、振れ止め部材を中心として円環状に膨出する膨出部を設けているため、外容器において外気に曝された放熱量が多い領域までの断熱距離を確保できる。または、所定領域を打ち抜いた打抜部を設けているため、外容器において外気に曝された放熱量が多い領域までの伝熱面積を低減できる。その結果、振動防止部材を伝熱部材として外容器へ伝わる熱量を低減でき、保温性能が低下することを防止できる。
【0014】
これらの液体容器では、前記振れ止め抑え部材に、断面波状をなすように前記膨出部を複数設けることが好ましい。このようにすれば、更に断熱距離を確保できるため、放熱を更に低減できる。
【0015】
また、前記振れ止め抑え部材を配設する閉塞面に、前記振れ止め部材の突出方向と同一方向に窪む凹部、または、前記振れ止め部材の突出方向と同一方向に突出するように配設する凹状カバーによって閉塞する開口部を設けることが好ましい。
【0016】
この場合、前記凹部または凹状カバーの閉塞部と前記振れ止め抑え部材との間に所定の断熱空間を設けることが好ましい。このようにすれば、振動防止部材を配設することによる放熱を更に低減できる。
【0017】
また、前記膨出部を、前記凹部または開口部の開口縁に内嵌させることが好ましい。このようにすれば、振れ止め抑え部材を組み付ける際の作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液体容器では、振れ止め抑え部材に円環状に膨出する膨出部を設けているため、外容器において外気に曝された放熱量が多い領域までの断熱距離を確保できる。または、振れ止め抑え部材に所定領域を打ち抜いた打抜部を設けているため、外容器において外気に曝された放熱量が多い領域までの伝熱面積を低減できる。その結果、振動防止部材を伝熱部材として外容器へ伝わる熱量を低減でき、保温性能が低下することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る液体容器10を示す。この液体容器10は、大略、内容器11と、該内容器11の外側に配設する外容器18と、前記内容器11内に配設する整流板27と、前記内容器11および外容器18の間に配設する振動防止部材である振れ止め部材31および振れ止め抑え部材35とを備えている。
【0021】
この液体容器10は、例えば、車両の冷却水循環経路や、家庭の給湯機と蛇口とを接続する給湯経路などの所定位置に介設され、エンジンの始動時や給湯の開始時に、保温した常温以上の高温液体を供給できるようにするもので、前記内容器11の第1口部13には、経路の配管に分岐接続するための配管部材44が配設されている。
【0022】
前記内容器11はステンレス(SUS304)製であり、図2および図3に示すように、配管部材44との接続端に位置する第1内容器部材12と、中間部分に位置する第2内容器部材15と、第1内容器部材12と反対側の端部に位置する第3内容器部材16とを接合することにより形成されている。
【0023】
前記第1内容器部材12は、ステンレス鋼板を円筒状に丸めて突き合わせた端部を溶接し、または、引抜き加工等により得た鋼管に対し、拡管および縮管等の絞り加工を施して形成した肉厚0.6mmのものである。この第1内容器部材12は、第2内容器部材15の側より第1円筒部12aと、該第1円筒部12aから先端に向けて直径が徐々に小さくなるように縮径する円錐筒部12bと、該円錐筒部12bから円筒状に突出する第2円筒部12cと、第2円筒部12cの先端に設けた拡径したフレア部12dとが形成されている。そして、前記第2円筒部12cとフレア部12dとは、接合状態の内容器11において、開口した一端の第1口部13を構成する。また、本実施形態の第1内容器部材12には、内容器11の外周部を構成する第1円筒部12aに、内向きに突出する突部14が周方向に所定間隔をもって複数設けられている。
【0024】
前記第2内容器部材15は、ステンレス鋼板を円筒状に丸めて突き合わせた端部を溶接し、または、引抜き加工等により得た鋼管により、第1内容器部材12の第1円筒部12aと同一肉厚で同一直径をなすように形成した円筒状のものである。
【0025】
前記第3内容器部材16は、ステンレス鋼板に絞り加工を施して、第2内容器部材15と同一肉厚で同一直径をなす円筒部16aと、該円筒部16aから円弧状に張り出し変形された受皿状の第1閉塞面部16bとが形成されている。そして、この第1閉鎖面部16bには、組付状態で第1口部13と対向する位置、具体的には内容器11の軸線上の位置に、円形状をなすように内向きに窪む振れ止め部材配設凹部17が設けられている。
【0026】
前記外容器18は内容器11と同様のステンレス(SUS304)製であり、図2および図4に示すように、配管部材44との接続端に位置する第1外容器部材19と、中間部分に位置する第2外容器部材21と、第1外容器部材19と反対側の端部に位置する第3外容器部材22とを備え、これらを内容器11の外部に所定の隙間をあけて囲繞するように接合することにより形成されている。
【0027】
前記第1外容器部材19は、内容器11と同様にして形成した円筒状をなすステンレス鋼を、拡管および縮管等の絞り加工を施して形成した肉厚0.8mmのものである。この第1外容器部材19は、第2外容器部材21の側より第1円筒部19aと、該第1円筒部19aから先端に向けて直径が徐々に小さくなるように縮径する円錐筒部19bと、該円錐筒部19bから円筒状に突出する第2円筒部19cとが形成され、内容器11に示すフレア部は形成していない。そして、前記第2円筒部19cが、内面が第1口部13を構成するフレア部12dの外面に接触する直径で形成され、該第1口部13と接合される第2口部20を構成する。なお、本実施形態の第1円筒部19aは、内容器11の第1円筒部12aとの間に約2.5mmの隙間が形成される直径差で形成されている。
【0028】
前記第2外容器部材21は、円筒状をなすステンレス鋼を、第1外容器部材19の第1円筒部19aと同一肉厚で同一直径をなすように形成した円筒状のものである
【0029】
前記第3外容器部材22は、ステンレス鋼板に絞り加工を施して、第2外容器部材21と同一肉厚で同一直径をなす円筒部22aと、該円筒部22aから円弧状をなすように張り出し変形された円弧状筒部22bと、該円弧状筒部22bから更に円形状をなすように外向きに膨出された第2閉塞面部22cとが形成されている。そして、第2閉塞面部22cには、組付状態で第2口部20と対向する位置、具体的には外容器18の軸線上の位置に、振れ止め部材配設凹部17と対向し、円錐台形状をなすように外向きに膨出する凹部23が設けられている。この凹部23は、後述する振れ止め抑え部材35を配設した状態で、該振れ止め部材31の突出方向と同一方向に窪むもので、振れ止め抑え部材35と閉塞部23aとの間に所定の断熱空間24を確保できる深さで形成されている。また、第2閉塞面部22cの外周部には排気口25が設けられ、この排気口25にチップ管26が接合されている。
【0030】
前記整流板27は、ステンレス製の内容器11を腐食から保護する異種金属(例えばアルミニウム)または樹脂からなり、図2および図5に示すように、一端を開口し、他端を閉塞した受皿状をなす肉厚0.35mmのものである。この整流板27の外周部27aは、垂直に近い急傾斜状態で隔壁部27bに向けて直径が小さくなるように縮径した略円筒状をなす。また、この整流板27の隔壁部27bは、水平に近い緩傾斜状態で先端に向けて直径が小さくなるように縮径した円錐筒状をなし、その先端部(頂部)には水平方向に延びる平坦部27cが設けられている。
【0031】
そして、前記外周部27aには、内容器11の突部14と凹凸嵌合する陥没部28が内向きに窪むように円環状に設けられている。また、外周部27aは、この陥没部28を突部14に嵌合させて組み付けた状態で内容器11の円錐筒部12bに干渉しない寸法とされている。前記隔壁部27bには、液体を通過させる複数の通水孔29が設けられている。また、前記平坦部27cには、後述する配管部材44のオーバーフローパイプ47を貫通させる貫通孔30が設けられている。
【0032】
前記振れ止め部材31は、内容器11と同様のステンレス製であり、内容器11の第1閉塞面部16bに形成した振れ止め部材配設凹部17に対して接合することにより、外容器18の第2閉塞面部22cに向けて突出するように固着されるものである。この振れ止め部材31は、図2および図6に示すように、円板状をなす固着部32と、該固着部32から突出する振れ止め部33とを備えた凸状に形成されている。そして、本実施形態では、内容器11からの伝熱を低減するために、振れ止め部33から固着部32にかけて貫通する貫通孔34が設けられている。
【0033】
前記振れ止め抑え部材35は、外容器18と同様のステンレス製であり、外容器18の第2閉塞面部22cに形成した凹部23に接合により固着される肉厚0.6mmのもので、振れ止め部材31を貫通させることにより、該振れ止め部材31を介して内容器11の移動を抑制するものである。即ち、振れ止め抑え部材35は、塑性変形することなく内容器11の揺動を確実に防止できる範囲で、薄肉に形成されている。この振れ止め抑え部材35は、凹部23の開口端の直径より大径の円板状をなし、その中心には、振れ止め部33を挿通保持する挿通孔36が設けられている。そして、本実施形態では、挿通孔36の縁に所定間隔をもって複数の切欠部37を設け、振れ止め部33との接触面積を低減することにより、振れ止め部材31から振れ止め抑え部材35への伝熱を低減する構成としている。また、この振れ止め抑え部材35には、前記挿通孔36の中心である振れ止め部33を中心として同一方向へ環状に膨出する一対の同心円からなる膨出部38A,38Bが同一方向に設けられている。これら膨出部38A,38Bにより、振れ止め抑え部材35は、中心断面形状が波状をなすように構成されている。また、本実施形態では、外側に位置する大径の膨出部38Aは、その外径が凹部23の内径より僅かに小さくなるように形成され、この凹部23の開口縁に位置決めして内嵌できる構成としている。
【0034】
前記構成の液体容器10を組み立てる際には、例えば、内容器11の第1内容器部材12に対して、第1口部13と反対側の接合開口端から整流板27を隔壁部27bの側から挿入し、第1内容器部材12の突部14と整流板27の陥没部28とを凹凸嵌合させて組み付ける。そして、内容器11を構成する第1内容器部材12、第2内容器部材15および第3内容器部材16を溶接することにより接合する。また、内容器11の第3内容器部材16の振れ止め部材配設部に対して振れ止め部材31の固着部32を配設し、これらを溶接することにより接合する。なお、第3内容器部材16は、振れ止め部材31を接合した状態で、第2内容器部材15と接合してもよい。
【0035】
このようにして内容器11を組み立てると、第1口部13の第2円筒部12cから他端の振れ止め部材31にかけて輻射伝熱を防止するための金属箔39を配設する。
【0036】
ついで、外容器18の第1外容器部材19に対して、第2口部20と反対側の接合開口端から内容器11を第1口部13の側から挿入し、第1口部13の先端のフレア部12dと第2口部20の先端とを溶接することにより接合する。また、第3外容器部材22の凹部23に対して、開口端から振れ止め抑え部材35を膨出部38A,38Bの側から配設し、この膨出部38A,38Bが凹部23内に膨出するように位置させて、該振れ止め抑え部材35の外周部と外容器18の凹部23の外周部とを、接合することにより固着する。この際、本実施形態では、膨出部38Aを凹部23に内嵌可能な直径に形成しているため、組み付ける際の位置決め作業性を向上できる。さらに、第3外容器部材22の平坦部27cの内面に、ガスを吸着するゲッター40を取付部材41を介して接合することにより配設する。
【0037】
この状態で、内容器11に対して外容器18の第2外容器部材21を外嵌させ、該第2外容器部材21と第1外容器部材19とを溶接することにより接合する。その後、内容器11の第3内容器部材16を覆うように外容器18を構成する第3外容器部材22を配置し、該第3外容器部材22と第2外容器部材21とを溶接することにより接合する。
【0038】
ついで、外容器18に配設したチップ管26に排気装置の排気管を接続し、予め規定した真空度になるように真空排気する。そして、真空排気により規定の真空度に達すると、その真空度を維持した状態でリークテスト装置により、内容器11および外容器18の間に形成された真空空間42にリークが存在するか否かをテストする。その結果、リークが無いことが確認されると、チップ管26を封止して不要部分を切断する。また、残留したチップ管26の外周部にアルミニウム製のチップ管カバー43を配設する。
【0039】
なお、真空空間42に配設されたゲッター40は、前記排気工程で、所定の高温雰囲気下で加熱されることにより活性化される。または、前記排気工程は、活性化しない温度または常温の雰囲気下で行われ、排気孔の封止が完了した後、複数の液体容器10を纏めて加熱炉内に配置し、高温で加熱することにより活性化される。
【0040】
このように、本発明の液体容器10は、整流板27を内容器11に対して溶接することなく、陥没部28と突部14との凹凸嵌合により組み付けることができるため、これらの間に溶接の必要はない。そのため、組立作業性を向上できるとともに、コストダウンを図ることができる。また、腐食に伴う液体への異物質の混入を防止できるとともに、リークの発生を防止できる。
【0041】
このように製造された液体容器10は、車両の冷却水循環経路または家庭の給湯経路の所定位置に配管部材44を用いて介設される。ここで、この配管部材44は樹脂製であり、図1に示すように、内容器11の第1口部13に内嵌接続される装着部45と、液体が流通される図示しない経路において、上流側に接続される流入管部50と、下流側に接続される流出管部51とを備えている。
【0042】
前記装着部45は円筒状をなし、その外径は第1口部13の内径と略同一のものである。この装着部45の内部には、中心に向けて放射状に突出するリブ46が設けられ、その先端には、内容器11内に配設した整流板27の貫通孔30を貫通して第1閉塞面部16bにかけて延びるオーバーフローパイプ47が配設されている。このオーバーフローパイプ47には、該配管部材44および第1口部13への装着状態で、整流板27の平坦部27cの第1口部13の側の面に係止し、第1口部13に向けた整流板27の移動を阻止する係止部48が設けられている。なお、オーバーフローパイプ47において、第1閉塞面部16bの側に位置する先端は、斜めにカットした傾斜部49とされている。
【0043】
前記流入管部50は、装着部45の内部に連通するように下端外周部に接続され、オーバーフローパイプ47の外周部から内容器11内に液体を供給するものである。
【0044】
前記流出管部51は、装着部45の閉塞された下端を貫通するように設けられた略L字形状のものである。この流出管部51には、装着部45内に位置する先端には、オーバーフローパイプ47の端部に接続される接続部52が設けられ、オーバーフローパイプ47の先端から流入される内容器11内に貯留されていた液体を外部に流出させる構成としている。
【0045】
なお、冷却水循環経路または給湯経路に介設する場合には、図示のように、口部13,20を下向きに位置させ、閉塞面部16b,22cを上向きに位置させることにより、上側に溜まる高温液体を下側に位置する自然冷却された経路内液体から離間させることが好ましい。
【0046】
この配管部材44を介して冷却水循環経路または給湯経路に介設した液体容器10には、流入管部50を介して高温の液体が内容器11内において、オーバーフローパイプ47の外部に流入される。そして、この流入液体は整流板27により整流され、径方向にかけて略均等に整流された状態で、通水孔29を通って整流板27の第1閉塞面部16bの側に流入する。そうすると、既に貯留されていた液体は、オーバーフローパイプ47の先端の傾斜部49から内部に流入し、流出管部51を介して冷却水循環経路または給湯経路に流出される。
【0047】
この際、液体容器10は、車両の走行による振動や液体が流入することによる水圧などによって、固定された外容器18に対して口部13,20のみで接合された内容器11が揺動する。しかし、本実施形態では、内容器11に振れ止め部材31を配設するとともに、外容器18に振れ止め抑え部材35を配設しているため、振動が加わることによる内容器11の外容器18に対する揺動を防止できる。そのため、内容器11が外容器18に干渉することによる異音の発生を防止できるうえ、内容器11と外容器18とを接合した口部13,20にリークが発生することを防止できる。
【0048】
一方、車両のエンジンを停止したり給湯を停止したりすると、冷却水循環経路内や給湯経路内に残留した液体は自然冷却される。しかし、液体容器10内に貯留された液体は、該液体容器10の断熱性能により保温される。
【0049】
ここで、この液体容器10を介設していない通常の経路では、再びエンジンを始動させたり給湯を開始したりすると、当初はエンジンまたは蛇口には経路内に残留する自然冷却された液体のみが給水される。しかし、この液体容器10を介設した経路では、経路内の液体が液体容器10に流入し、液体容器10で保温した液体が流出管部51を介してエンジンまたは蛇口に給水される。そのため、当初から常温より高温の液体を供給することができる。
【0050】
但し、液体容器10による保温状態では、内容器11と外容器18との間の断熱のための真空空間42に振動防止部材として振れ止め部材31と振れ止め抑え部材35とを配設しているため、これらを伝熱部材として内容器11の熱が外容器18に伝わって放熱される。
【0051】
しかし、本実施形態では、振れ止め抑え部材35には、振れ止め部材31を中心として円環状に膨出する複数の膨出部38A,38Bを設けているため、外容器18において外気に曝された放熱量が多い領域までの断熱距離を確保できる。その結果、振れ止め部材31および振れ止め抑え部材35を介して外容器18へ伝わる熱量を低減でき、保温性能が低下することを防止できる。また、本実施形態では、凹部23の閉塞部23aと振れ止め抑え部材35との間に所定の断熱空間24を形成する構成とし、振れ止め部材31の近傍からの放熱を防止できるようにしているため、保温性能の低下を更に低減できる。
【0052】
図7は第2実施形態の液体容器10に適用する振れ止め抑え部材35を示す。この第2実施形態の振れ止め防止部材には、凹部23の開口縁に内嵌する1つのみの膨出部38を設け、この膨出部38と中央の挿通孔36との間に、周方向に所定間隔をもって扇形形状に打ち抜いた打抜部53を設けた点で、第1実施形態と相違している。なお、他の部材の構成は第1実施形態と同一である。
【0053】
この第2実施形態の振れ止め抑え部材35を適用した液体容器10は、第1実施形態と同様に、振れ止め抑え部材35に円環状に膨出する膨出部38を設けているため、外容器18において外気に曝された放熱量が多い領域までの断熱距離を確保できる。しかも、本実施形態の振れ止め抑え部材35には、所定領域を打ち抜いた打抜部53を設けているため、外容器18において外気に曝された放熱量が多い領域までの伝熱面積を低減できる。その結果、振動防止部材を伝熱部材として外容器18へ伝わる熱量を大幅に低減でき、保温性能が低下することを更に確実に防止できる。
【0054】
図8および図9は第3実施形態の液体容器10を示す。この第2実施形態では、外容器18の第2閉塞面部22cに、凹部23の代わりに開口部54を設け、この開口部54に凹状カバー55を接合することによって閉塞する構成とした点で、第1実施形態と相違している。なお、本実施形態では、複数の膨出部38A,38Bを設けた第1実施形態に示す振れ止め抑え部材35を適用しているが、1つの膨出部38を設けた第2実施形態の振れ止め抑え部材35を適用してもよい。
【0055】
前記開口部54は、組付状態での第2口部20と対向するように、外容器18の軸線上に膨出部38Aの外径より僅かに大きい内径で形成されている。また、凹状カバー55は、その開口端に接合用のフランジ部56を備え、外容器18への接合状態で閉塞部23aと振れ止め抑え部材35との間に、所定の断熱空間24を確保できる深さの円錐台形状に形成されている。
【0056】
この第3実施形態の液体容器10は、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができるうえ、開口部54および凹状カバー55の直径を変更するだけで、振れ止め抑え部材35の直径変更に容易に対応することができる。また、振れ止め部材31および振れ止め抑え部材35の嵌合状態を目視で確認できるため、組付作業性の向上を図ることができる。
【0057】
なお、本発明の液体容器10は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、前記各実施形態では、内容器11に振れ止め部材31を配設するとともに、外容器18に振れ止め抑え部材35を配設したが、図10に示すように、内容器11に内向きに窪む凹部23を設け、外容器18に振れ止め部材31を配設するとともに、内容器11に振れ止め抑え部材35を配設してもよい。勿論、この図10では内容器11に一体成形する凹部23を設ける構成としているが、内容器11の第1閉塞面部16bに開口部54を設け、該開口部54を別体の凹状カバー55で閉塞する構成としてもよい。また、これらの変形例でも、第2実施形態に示す打抜部53を設けた振れ止め抑え部材35を適用してもよい。さらに、前記実施形態では、内容器11内に整流板27を配設したが、この整流板27は配設しない構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態の液体容器を示す断面図である。
【図2】図1の断面斜視図である。
【図3】内容器の分解斜視図である。
【図4】外容器の分解斜視図である。
【図5】整流板の斜視図である。
【図6】振れ止め部材および振れ止め抑え部材を示す斜視図である。
【図7】第2実施形態の液体容器に使用する振れ止め抑え部材を示す斜視図である。
【図8】第3実施形態の液体容器を示す要部断面図である。
【図9】第3実施形態の外容器の要部を示す分解斜視図である。
【図10】液体容器の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
10…液体容器
11…内容器
13…第1口部
16b…第1閉塞面部
18…外容器
20…第2口部
22c…第2閉塞面部
23…凹部
23a…閉塞部
24…断熱空間
27…整流板
31…振れ止め部材
35…振れ止め抑え部材
36…挿通孔
38A,38B,38…膨出部
42…真空空間
53…打抜部
54…開口部
55…凹状カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口した第1口部を有する内容器と、該内容器の外部に所定の隙間をあけて囲繞するように配設され一端に前記第1口部の外面に固着される第2口部を有する外容器とを備えた液体容器において、
前記内容器および外容器のうち、一方の口部と対向する閉塞面に、他方の口部と対向する閉塞面に向けて突出する振れ止め部材を配設するとともに、
前記内容器および外容器のうち、他方の閉塞面に、前記振れ止め部材を貫通させて該振れ止め部材の移動を抑制する振れ止め抑え部材を配設し、
前記振れ止め抑え部材に、前記振れ止め部材を中心として円環状に膨出する膨出部を設けたことを特徴とする液体容器。
【請求項2】
一端に開口した第1口部を有する内容器と、該内容器の外部に所定の隙間をあけて囲繞するように配設され一端に前記第1口部の外面に固着される第2口部を有する外容器とを備えた液体容器において、
前記内容器および外容器のうち、一方の口部と対向する閉塞面に、他方の口部と対向する閉塞面に向けて突出する振れ止め部材を配設するとともに、
前記内容器および外容器のうち、他方の閉塞面に、前記振れ止め部材を貫通させて該振れ止め部材の移動を抑制する振れ止め抑え部材を配設し、
前記振れ止め抑え部材に、所定領域を打ち抜いた打抜部を設けたことを特徴とする液体容器。
【請求項3】
前記振れ止め抑え部材に、前記振れ止め部材を中心として円環状に膨出する膨出部を更に設けたことを特徴とする請求項2に記載の液体容器。
【請求項4】
前記振れ止め抑え部材に、断面波状をなすように前記膨出部を複数設けたことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の液体容器。
【請求項5】
前記振れ止め抑え部材を配設する閉塞面に、前記振れ止め部材の突出方向と同一方向に窪む凹部、または、前記振れ止め部材の突出方向と同一方向に突出するように配設する凹状カバーによって閉塞する開口部を設けたことを特徴とする請求項1、請求項3および請求項4に記載の液体容器。
【請求項6】
前記凹部または凹状カバーの閉塞部と前記振れ止め抑え部材との間に所定の断熱空間を設けたことを特徴とする請求項5に記載の液体容器。
【請求項7】
前記膨出部を、前記凹部または開口部の開口縁に内嵌させたことを特徴とする請求項4または請求項6に記載の液体容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−137720(P2008−137720A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328501(P2006−328501)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】