説明

液体導出方法、加圧ユニット及び液体噴射装置

【課題】 液体を加圧して導出する液体収容体内の圧力を設定圧力以上に調整して円滑に液体を導出する液体導出方法、加圧ユニット及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】 加圧動作ルーチンを実行するCPUが、拡大位置を検出する検出信号SGHに基づいて、ROMに格納される設定圧力Pthに対してASICの算出する実圧力Pacの大小を判断する。そして、検出信号SGHがLレベルのとき、実圧力Pacが設定圧力Pth以上であっても(ステップS11においてNO)、CPUは、ASICにポンプモータM3を正転駆動させる(ステップS13)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体導出方法、加圧ユニット及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して液体を噴射させる液体噴射装置には、記録用紙に対して液体としてのインクを噴射させるインクジェット式プリンタが知られている。このインクジェット式プリンタでは、記録用紙に対して往復動するキャリッジに記録ヘッドを搭載し、インクカートリッジ(以下単に、カートリッジという。)に収容されたインクをその記録ヘッドから噴射することによって記録用紙上に印刷を施している。
【0003】
こうしたインクジェット式プリンタには、カートリッジをキャリッジ上に搭載しない、いわゆるオフキャリッジタイプが知られている。このオフキャリッジタイプでは、カートリッジの荷重をキャリッジに付加しない分だけ、キャリッジの駆動機構などに対する負荷を軽減することができる。さらには、カートリッジの容積をキャリッジに付加しない分だけ、キャリッジの移動空間を縮小することができ、ひいてはプリンタの小型や薄型化を図ることができる。
【0004】
ところで、こうしたオフキャリッジタイプでは、カートリッジ内のインクを記録ヘッドに供給するため、同カートリッジ内に圧縮空気を導入し、その空気の加圧によってインクを導出するものがある。その圧縮空気の導入には、従来より、ダイヤフラムで形成されるポンプ室の容積を拡大・縮小して吸気・排気を繰り返す加圧ユニットが採用されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
そして、こうした加圧ユニットでは、所定容量のインクを供給するために、排気する圧縮空気の圧力調整を行うようにしている。この圧力調整は、一般に、ポンプ室とカートリッジとの間の給気管路に設けられる圧力センサの検出する圧力検出信号に基づいて行われる。すなわち、圧力センサの圧力検出信号に基づいて演算される給気管路内の圧力(実圧力)が、インクを導出するための圧力(設定圧力)未満になると、加圧ユニットは、ポンプモータなどを駆動して、ポンプ室の容積を拡大・縮小してカートリッジ内に圧縮空気を導入するようにしている。そして、この実圧力が設定圧力値以上になると、同加圧ユニットは、ポンプモータを停止して、ポンプ室の容積を維持して実圧力を保持するようにしている。これよって、実圧力を設定圧力以上に維持することができ、記録ヘッドに対するインクの供給不良を回避することができる。
【特許文献1】特開2000−352379号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした圧力調整では、ポンプ室の排気する圧縮空気が給気管路の流路抵抗に応じて流動するために以下の問題を生じる。すなわち、給気管路に排気される圧縮空気の殆どは、まず給気管路内のポンプ室側に偏倚した後、給気管路の流路抵抗に応じて、徐々にカートリッジ側へと流動する。
【0007】
このため、給気管路内で検出する実圧力は、図22に示しように、ポンプ室が縮小する度に、カートリッジ内の圧力(カートリッジ内圧Pi)よりも高い圧力にオーバーシュートする。オーバーシュートした実圧力Pacは、カートリッジ内圧Piを増加する分だけ低下して、やがてカートリッジ内圧Piと等しくなる。
【0008】
したがって、オーバーシュートする時に、実圧力Pacが、設定圧力Pthを超えると(図22における加圧動作終了時間Tedになると)、カートリッジ内圧Piが設定圧力Pthに到達ないにも関わらず、加圧ユニットが圧縮空気の排気を停止する。その結果、インクを導出するためのカートリッジ内圧Piが不足してインクの供給不良を招く問題になる。こうした問題は、給気管路の内径を拡大して流路抵抗を小さくすることによって軽減できると考えられるが、給気管路の内径の拡大にともなうプリンタ本体のサイズの拡大を招く問題になる。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体を加圧して導出する液体収容体内の圧力を設定圧力以上に調整して円滑に液体を導出する液体導出方法、加圧ユニット及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体導出方法は、駆動モータの駆動力を受けてポンプ室の容積を拡大及び縮小させる押圧部材を、前記ポンプ室の容積を縮小する縮小位置から前記ポンプ室の容積を拡大する拡大位置に復動して前記ポンプ室内に加圧流体を排出不能に吸入した後に、前記押圧部材を前記拡大位置から前記縮小位置に往動して、前記ポンプ室内に吸入した前記加圧流体を前記ポンプ室と液体収容体との間に設けられる流体管路を介して前記液体収容体内に圧送し、その圧送する加圧流体の加圧によって前記液体収容体内に収容される液体を導出する液体導出方法において、前記押圧部材が前記拡大位置に位置するときに前記流体管路内の圧力が前記液体収容体の収容する液体を導出するための基準圧力以上になると、前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止する。
【0011】
本発明の液体導出方法によれば、駆動モータの駆動力を受けてポンプ室の容積を拡大及び縮小させる押圧部材を、縮小位置から拡大位置に復動してポンプ室内に加圧流体を排出不能に吸入する。その後に、押圧部材を拡大位置から縮小位置に往動して、ポンプ室内の加圧流体を流体管路から液体収容体内に圧送し、液体収容体内に収容される液体を導出する。このとき、押圧部材が拡大位置に位置するときに流体管路内の圧力が液体収容体の収容する液体を導出するための基準圧力以上になると、前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止するようになる。
【0012】
したがって、押圧部材が拡大位置に位置するとき、すなわち流体管路内の圧力と液体収容体内の圧力とが等圧になるとき、その流体管路内の圧力を基準圧力以上にして、液体収容体内への加圧流体の圧送を停止することができる。その結果、例えば、押圧部材が往動するときに、流体管路内の圧力が一時的に液体収容体内の圧力よりも高くなって基準圧力以上となる場合であっても、液体収容体内の圧力が基準圧力以上になるまで加圧流体の圧送を継続することができる。ひいては、液体収容体内の圧力を基準圧力以上に調整して円滑に液体を導出することができる。
【0013】
本発明の液体導出方法は、駆動モータの駆動力を受けてポンプ室の容積を拡大及び縮小させる押圧部材を、前記ポンプ室の容積を縮小する縮小位置から前記ポンプ室の容積を拡大する拡大位置に復動して前記ポンプ室内に加圧流体を排出不能に吸入した後に、前記押圧部材を前記拡大位置から前記縮小位置に往動して、前記ポンプ室内に吸入した前記加圧流体を前記ポンプ室と液体収容体との間に設けられる流体管路を介して前記液体収容体内に圧送し、その圧送する加圧流体の加圧によって前記液体収容体内に収容される液体を導出する液体導出方法において、前記流体管路内の圧力が前記液体収容体の収容する液体を導出するための基準圧力以上になった時、前記流体管路内の圧力が前記液体収容体内の圧力と等しくなる第1の追加時間だけ前記押圧部材の往復動を継続し、前記第1の追加時間を経過した時の前記流体管路内の圧力が前記基準圧力以上になっている時、前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止する。
【0014】
本発明の液体導出方法によれば、駆動モータの駆動力を受けてポンプ室の容積を拡大及び縮小させる押圧部材を、縮小位置から拡大位置に復動してポンプ室内に加圧流体を排出不能に吸入する。その後に、押圧部材を拡大位置から縮小位置に往動して、ポンプ室内に吸入した加圧流体を流体管路から液体収容体内に圧送し、その圧送する加圧流体の加圧によって液体収容体内に収容される液体を導出する。この際、流体管路内の圧力が前記液体収容体の収容する液体を導出するための基準圧力以上になった時、流体管路内の圧力が液体収容体内の圧力と等しくなる第1の追加時間だけ押圧部材の往復動を継続するようになる。そして、第1の追加時間を経過した時の流体管路内の圧力が基準圧力以上になっている時、液体収容体内への加圧流体の圧送を停止するようになる。
【0015】
したがって、流体管路内の圧力が液体収容体の収容する液体を導出するための基準圧力以上になると、第1の追加時間を経過することによって、流体管路内の圧力を液体収容体内の圧力と等しくすることができる。しかも、第1の追加時間を経過したときの流体管路内の圧力が基準圧力以上になるときに液体収容体内への加圧流体の圧送を停止するため、液体収容体内の圧力が基準圧力以上になるときに液体収容体内への加圧流体の圧送を停止する。その結果、例えば、押圧部材が往動するときに、流体管路内の圧力が一時的に液体収容体内の圧力よりも高くなって基準圧力以上となる場合であっても、液体収容体内の圧力が基準圧力以上になるまで液体収容体内への加圧流体の圧送を継続することができる。ひいては、液体収容体内の圧力を基準圧力以上に調整して円滑に液体を導出することができる。
【0016】
この液体導出方法は、前記第1の追加時間は、前記押圧部材が前記拡大位置から前記縮小位置まで往動する時間である。
この液体導出方法によれば、流体管路内の圧力が基準圧力以上になると、押圧部材が拡大位置から前記縮小位置まで往動する時間だけ、押圧部材の往復動を継続するようになる。したがって、押圧部材が往動するときに、流体管路内の圧力が基準圧力以上になると、その押圧部材が復動するまで、押圧部材の往復動を継続することができる。その結果、流体管路内の圧力を確実に液体収容体内の圧力と等しくすることができ、その液体収容体内の圧力を基準圧力以上にすることができる。
【0017】
この液体導出方法は、前記第1の追加時間を経過した時の前記流体管路内の圧力が前記基準圧力以上になると、前記押圧部材を前記拡大位置に復動した後に前記駆動モータを停止して前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止する。
【0018】
この液体導出方法によれば、第1の追加時間を経過したときの流体管路内の圧力が基準圧力以上になると、押圧部材を拡大位置に復動して駆動モータを停止し、液体収容体内への加圧流体の圧送を停止するようになる。したがって、液体収容体内への加圧流体の圧送を停止する間、押圧部材を拡大位置に位置させることができ、ポンプ室の容積を拡大した状態にすることができる。その結果、例えば、長期間にわたり加圧流体の圧送を停止する場合、ポンプ室のクリープ変形などによる劣化を回避することができる。
【0019】
この液体導出方法は、前記液体収容体内の圧力が前記基準圧力以上になると、前記流体管路内の圧力をさらに昇圧する第2の追加時間だけ前記押圧部材の往復動を継続し、前記第2の追加時間を経過すると、前記押圧部材を前記拡大位置に復動して前記駆動モータを停止し、前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止する。
【0020】
この液体導出方法によれば、液体収容体内の圧力が基準圧力以上になると、流体管路内の圧力をさらに昇圧する第2の追加時間だけ前記押圧部材の往復動を継続する。そして、その第2の追加時間を経過すると、押圧部材を拡大位置に復動して前記駆動モータを停止
し、前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止するようになる。
【0021】
したがって、第2の追加時間に相対する加圧流体分だけ、液体収容体内の圧力を基準圧力以上にさらに昇圧することができる。その結果、例えば、流体管路内の圧力を低下させる微小リークなどがある場合、第2の追加時間に相対する加圧流体分だけ、液体収容体内の圧力を基準圧力以上に維持することができる。ひいては、駆動モータを駆動及び停止させる回数を低減することができ、駆動モータなどの駆動機構の劣化を軽減することができる。
【0022】
さらには、液体収容体内への加圧流体の圧送を停止する間、押圧部材を拡大位置に配置させることができ、ポンプ室の容積を拡大した状態にすることができる。その結果、例えば、長期間にわたり加圧流体の圧送を停止する場合、ポンプ室のクリープ変形などによる劣化を回避することができる。
【0023】
この液体導出方法は、前記第2の追加時間は、前記押圧部材の往復動する周期である。
この液体導出方法によれば、液体収容体内の圧力が基準圧力以上になると、押圧部材を往復動する周期に相対する時間だけ駆動モータを継続して駆動するようになる。したがって、液体収容体内の圧力を、基準圧力から、押圧部材の往復動の周期に相対する分だけ昇圧することができる。その結果、例えば、流体管路内の圧力を低下させる微小リークなどがある場合、押圧部材の往復動の周期に相対する加圧流体分だけ、液体収容体内の圧力を基準圧力以上に維持することができる。
【0024】
本発明の加圧ユニットは、駆動モータと、前記駆動モータの駆動力を受けて拡大位置と縮小位置との間を往復動する押圧部材と、前記押圧部材の位置を検出する位置検出手段と、前記押圧部材が前記縮小位置から前記拡大位置に復動することによって容積を拡大して加圧流体を吸入し、前記押圧部材が前記拡大位置から前記縮小位置に往動することによって容積を縮小して前記加圧流体を圧送するポンプと、前記ポンプと液体を収容する液体収容体とを連通して前記ポンプから圧送される加圧流体を前記液体収容体内に導入する流体管路と、前記流体管路内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記位置検出手段の検出する位置検出信号と前記圧力検出手段の検出する圧力検出信号とに基づいて前記駆動モータの駆動及び停止を制御する制御部とを備える加圧ユニットにおいて、前記制御部は、上記する液体導出方法に基づいて駆動モータの駆動及び停止を制御する。
【0025】
本発明の加圧ユニットによれば、流体管路内の圧力が一時的に液体収容体内の圧力よりも高くなって基準圧力以上となる場合であっても、液体収容体内の圧力が基準圧力以上になるまで、制御部が駆動モータの駆動を継続する。その結果、液体収容体内の圧力を基準圧力以上に調整して円滑に液体を導出することができる。
【0026】
本発明の液体噴射装置は、液体を収容する液体収容体から導出される液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置において、上記加圧ユニットを備えた。
本発明の液体噴射装置によれば、流体管路内の圧力が一時的に液体収容体内の圧力よりも高くなって基準圧力以上となる場合であっても、液体収容体内の圧力が基準圧力以上になるまで駆動モータの駆動を継続することができる。その結果、液体収容体内の圧力を基準圧力以上に調整して円滑に液体を導出することができ、液体噴射ヘッドの液体噴射不良を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図13にしたがって説明する。図1は、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ10(以下、単にプリンタ10という。
)を示す平面図である。
【0028】
図1に示すように、プリンタ10には、本体ケース11が備えられている。本体ケース11は略箱体形状に形成され、その内側には、長手方向に沿う棒状のガイド軸12が架設されている。そのガイド軸12には、キャリッジ13が挿通支持されている。そのキャリッジ13には、駆動プーリ14と従動プーリ15とにより張設されてキャリッジモータM1(以下単に、CRモータM1という。)に駆動される無端のタイミングベルト16が取り付けられている。そして、CRモータM1を駆動すると、キャリッジ13は、タイミングベルト16を介してCRモータM1の回転駆動力を受け、ガイド軸12に沿う方向(主走査方向X)に往復動する。
【0029】
キャリッジ13の下側には、記録ヘッド17が取り付けられている。その記録ヘッド17には、液体としてのインクを噴射する図示しない多数の噴射ノズルが備えられている。その記録ヘッド17の下方には、ガイド軸12と平行にプラテン18が配設されている。プラテン18は、紙送り機構19(図11参照)によって給送されるターゲットとしての記録用紙を支持する支持台であって、その記録用紙を記録ヘッド17と相対向するように配置する。ちなみに、紙送り機構19は、紙送りモータ(以下単に、PFモータという。)M2(図11参照)により駆動され、主走査方向Xと直行する方向(副操作方向Y)に記録用紙を給送する。
【0030】
キャリッジ13の上側には、導入されるインクを所定圧に調整し、そのインクを記録ヘッド17に供給する4体のバルブユニット20が配設されている。これらバルブユニット20は、それぞれ対応する各色のインク(例えば、ブラック、イエロ、マゼンタ、シアン)を圧力調整し、総数4色のインクを記録ヘッド17に供給する。これら4体のバルブユニット20は、対応する連結チューブ21を介して、それぞれ本体ケース11の右端部に配設される4体の液体収容体としてのインクカートリッジ22(以下単に、カートリッジ22という。)に連結されている。つまり、プリンタ10は、カートリッジ22をキャリッジ13に搭載していない、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンタである。
【0031】
そのカートリッジ22には、図2に示すように、箱体形状に形成されるカートリッジケース23が備えられている。そのカートリッジケース23の一側面(図2において上面23a)中央位置には、連結チューブ21と連結可能なインク導出口24が形成されている。インク導出口24は、上面23aからカートリッジケース23内部までを貫通形成されている。また、そのカートリッジケース23の上面23aにあってインク導出口24の左側には、同じく上面23aからカートリッジケース23内部までを貫通する圧縮空気導入口25が形成されている。
【0032】
そのカートリッジケース23の内側には、図3に示すように、1対の可撓性部材26a、26bの外周を溶着して形成される袋状のインクパック26が収納されている。そのインクパック26には、同インクパック26内に収容されるインクを導出可能に封入するインク導出部27が備えられている。このインク導出部27がインク導出口24に嵌装され、カートリッジケース23内には、インク導出口24(連結チューブ21)と連通するインクパック26内の空間(インク収容空間28)と、そのインク収容空間28以外であって圧縮空気導入口25と連通する加圧空間29とが区画形成されている。そして、加圧空間29内を加圧すると、1対の可撓性部材26a、26bが押し潰され、インクパック26内のインクがインク導出口24から導出する。
【0033】
図1に示すように、4体のカートリッジ22の上側には、加圧ユニット30が搭載されている。加圧ユニット30は、吸引した空気を加圧流体(圧縮空気)として排気するユニットである。その加圧ユニット30の排気側には、図1に示すように、加圧ユニット30
側から順に、分配器31とその分配器31によって分岐される4本の分配チューブ32とを介して、それぞれのカートリッジ22の圧縮空気導入口25(加圧空間29)が連結されている。
【0034】
そして、加圧ユニット30を稼動すると、各インクパック26に収容されるインクは、下記の液体導出方法に基づいて記録ヘッド17まで導出される。すなわち、加圧ユニット30から排気される圧縮空気が、順に分配器31、分配チューブ32及び圧縮空気導入口25を介して各カートリッジ22(加圧空間29)内に導入される。加圧空間29内に圧縮空気が導入されると、各インクパック26が押し潰され、インク収容空間28内に収容されるインクが、そのインク収容空間28から順にインク導出部27、インク導出口24及び連結チューブ21を介して、各バルブユニット20に供給される。各バルブユニット20に供給されるインクは、それぞれ所定圧に圧力調整された後、記録ヘッド17に供給される。
【0035】
ついで、CRモータM1及びPFモータM2を駆動してキャリッジ13及び紙送り機構を駆動し、画像データに基づいて作成される印刷信号を記録ヘッド17に入力すると、同駆動信号に即した各色のインクが噴射ノズルから噴射され、画像データに即した印刷が記録用紙上に施される。
【0036】
次に、上記する加圧ユニット30について図4〜図7に従って以下に説明する。図4及び図5は、それぞれ加圧ユニット30を示す斜視図及び平面図である。
図4に示すように、加圧ユニット30には、四角形状に形成される金属製の取付板35が備えられている。取付板35は、図示しないネジなどによって、図1に示すように、カートリッジ22上方に配置固定されている。その取付板35には、上側に向かって立設される5体の第1支持片35a、第2支持片35b、第3支持片35c、第4支持片35d及び第5支持片35eが備えられている。
【0037】
第1支持片35aには、図4に示すように、駆動モータとしてのポンプモータM3が配設固定されている。ポンプモータM3は、例えば小型の正転・逆転を可能とするDCモータであって、図5に示すように、第2支持片35b側に延びる出力軸M3aには、モータ歯車M3bが固着されている。
【0038】
第2支持片35bには、図5に示すように、ポンプモータM3側に延びる第1支軸36及び第2支軸37が一体形成されている。その第1支軸36及び第2支軸37には、それぞれ第1歯車38及び第2歯車39が回動可能に軸支されている。その第1歯車38には、ポンプモータM3側にあってモータ歯車M3bと噛合う大径歯車38aと、第2支持片35b側にあって第2歯車39と噛合う小径歯車38bとが形成されている。
【0039】
その第2歯車39と第2支持片35bとの間には、図6に示すように、第2歯車39と連れ回り回動可能な従動部材40が取り付けられている。従動部材40は略円柱状に形成され、その中心位置には、図6において上下方向に貫通する貫挿孔40aが形成されている。従動部材40は、その貫挿孔40aに第2支軸37を貫挿して、第2支軸37に対し回転可能に軸支されている。その従動部材40の外周面には、径方向に延びる押圧レバー40bが形成されている。
【0040】
その従動部材40と第2支持片35bとの間には、図6に示すように、コイルばねSP1が介装されている。コイルばねSP1は、その両端部がそれぞれ第2支持片35bと従動部材40内の凸部40cとに当接し、その弾性力によって従動部材40を常に第2歯車39側に付勢している。コイルばねSP1の弾性力を受ける第2歯車39は、ピンPによって第2支軸37の軸方向に対する移動を規制され、従動部材40側の側面(摩擦クラッ
チ面39a)を介して従動部材40と接触している。
【0041】
そして、ポンプモータM3を正転駆動すると、押圧レバー40b(従動部材40)は、モータ歯車M3b、第1歯車38及び第2歯車39を介して、第1支軸36側(図4における正転方向Rd側)の回転駆動力を受ける。これにしたがい、従動部材40が正転方向Rdに回転すると、押圧レバー40bが第1支軸36に当接する。すると、従動部材40は、第2歯車39から受ける回転駆動力が第1支軸36を正転方向Rdに押圧する押圧力と、摩擦クラッチ面39aと従動部材40との間の摩擦力とに変換されて、その正転方向Rdへの回転が規制される。
【0042】
第3及び第4支持片35c,35dには、図5に示すように、これら第3及び第4支持片35c,35dを貫通する押圧部材41が取り付けられている。図7に示すように、押圧部材41は、平板状に形成され、第4支持片35dの第5支持片35e側に配置される基部42と、その基部42に一体形成され、第3及び第4支持片35c,35dに貫通支持される円柱状のピストン43とを備えている。
【0043】
基部42の一側面であって第5支持片35e側の面には、図8に示すように、その中央位置から一側面(図8における挿入面42a)に向かって延びるように形成される係止溝42bと、その係止溝42bから基部42内方に拡開形成される収容部42cとが形成されている。
【0044】
また、ピストン43の外周面には、図7及び図8に示すように、カム溝44が形成されている。カム溝44は、第3支持片35c側の端部(図7における溝基端部44a)から第4支持片35d側の端部(図8における溝終端部44b)に向かって螺旋状に形成される往動溝44cと、同溝終端部44bから同溝基端部44aに向かって螺旋状に形成される復動溝44dとが、互いに溝基端部44a及び溝終端部44bとで連結して形成されている。
【0045】
第3支持片35cと第4支持片35dとの間には、図4に示すように、ピストン43に挿通される第3歯車45が回動可能に挟入されている。その第3歯車45には、図7及び図8に示すように、第1歯車38と噛合う大径部分の歯車46と、小径部分の円筒部47とが形成されている。円筒部47の外周面には、その筒内までを貫通する円形孔47aと、その円形孔47aを挟むように一対の掛止部47b,47cとが形成されている。その円形孔47a内には、ピストン43のカム溝44に摺動可能に係合する案内片48が嵌装されている。また、掛止部47b,47cには、その案内片48を円形孔47a内に位置決め固定するコの字状の掛止片49が掛け止めされている。
【0046】
そして、案内片48が溝基端部44aに位置する状態でポンプモータM3を正転駆動すると、第3歯車45(案内片48)は、モータ歯車M3b及び第1歯車38を介して、正転方向Rdの回転駆動力を受ける。回転駆動力を受ける案内片48は、係合する往動溝44c内を溝基端部44aから溝終端部44bに向かって相対移動する。このとき、第3歯車45(案内片48)が第3支持片35cと第4支持片35dとの間に位置決めされるため、案内片48は、ピストン43の軸芯方向Aに対して位置決めされ、ピストン43の周方向に沿った回転のみを許容する。したがって、案内片48が溝終端部44b側に相対移動すると、螺旋状の往動溝44c(基部42)がピストン43の軸芯方向Aに沿って第4支持片35d側から第5支持片35e側(縮小排気方向So)に直線移動(往動)する。
【0047】
ついで、ポンプモータM3をさらに正転駆動すると、案内片48は、溝終端部44bに到達し、係合する復動溝44d内をその溝終端部44bから溝基端部44aに向かって相対移動する。つまり、復動溝44d(基部42)が第5支持片35e側から第4支持片3
5d側(拡大吸気方向Ei)に向かって直線移動(復動)する。
【0048】
すなわち、ポンプモータM3の回転駆動力を受ける押圧部材41(基部42)は、縮小排気方向So及び拡大吸気方向Eiに沿って往復動を繰り返す。
なお、案内片48が溝基端部44aに位置するときの押圧部材41(基部42)の配置位置、すなわち往復動において最も第4支持片35d側に位置する押圧部材41(基部42)の配置位置を拡大位置X0(図5参照)とする。反対に、案内片48が溝終端部44bに位置するときの押圧部材41(基部42)の配置位置、すなわち往復動において最も第5支持片35e側に位置する押圧部材41(基部42)の配置位置を縮小位置Xmとする(図5における二点鎖線)。
【0049】
第4支持片35dの近傍にあって図5における右側端部には、基部42の配置位置を検出する位置検出手段としての拡大位置検出器Shが配設されている。拡大位置検出器Shは、例えば、リミットスイッチや光センサ等である。その拡大位置検出器Shは、基部42の往復動経路上に検出器本体Sh1に対して回動可能な検出押圧レバーSh2を備えている。
【0050】
そして、基部42が復動して拡大位置X0に位置すると、検出押圧レバーSh2は、基部42に押圧されて第4支持片35d側に回動する。すると、拡大位置検出器Shは、基部42の配置位置が拡大位置X0にあることを検出する。反対に、基部42が拡大位置X0から往動すると、基部42が検出押圧レバーSh2から離間して、拡大位置検出器Shは、基部42の配置位置が拡大位置X0にないことを検出する。
【0051】
第4及び第5支持片35d,35eの間にあって基部42の第5支持片35e側には、図4に示すように、その長手方向(図4における縮小排気方向So及び拡大吸気方向Ei)に沿った伸縮動を可能にするベローズ50が配設されている。そのベローズ50の第4支持片35d側端部には、図9に示すように、径方向に向かって延びる凸部50aが形成されている。この凸部50aが基部42に形成される収容部42c内に収容されることにより、凸部50aが係止溝42bに係止され、ベローズ50の凸部50a側が、押圧部材41に位置決めされている。
【0052】
そのベローズ50の第5支持片35e側端部には、図9に示すように、円形状に開口する開口部50bが形成されている。その開口部50bには、図4及び図9に示すように、第5支持片35eに配置固定される蓋体51が固着されている。つまり、ベローズ50は、その第4支持片35d側が押圧部材41に位置決めされ、第5支持片35e側が第5支持片35eに位置決めされている。
【0053】
その蓋体51には、ベローズ50内と大気とを連通する排気管路52及び吸気管路53が設けられている。これら排気管路52及び吸気管路53には、それぞれベローズ50内の空気の流出を許容する一方弁(排気弁52a)と、ベローズ50内への空気の流入を許容する一方弁(吸気弁53a)とが配設されている。この排気弁52aは、ベローズ50が収縮するときに開弁し、同ベローズ50が延伸するときに閉弁する。反対に、吸気弁53aは、ベローズ50が収縮するときに閉弁し、同ベローズ50が延伸するときに開弁する。この蓋体51が開口部50bを密封することにより、ベローズ50内には、その伸縮動に連動して容積を拡大縮小させるポンプ室54が形成される。
【0054】
そして、基部42が拡大位置X0にあるときにポンプモータM3を正転方向に駆動すると、押圧部材41が縮小排気方向Soに往動して、ベローズ50を収縮する、すなわちポンプ室54の容積を縮小する(図10参照)。すると、ポンプ室54は、排気弁52aを介し、その縮小した容積に相対する容量の圧縮空気を排出する。ついで、基部42が縮小
位置Xmに到達して(図5における二点鎖線)、拡大位置X0側への復動を開始すると、ベローズ50を延伸する、すなわちポンプ室54の容積を拡大する(図9参照)。すると、ポンプ室54は、吸気弁53aを介し、その拡大した容積に相対する容量の空気を吸入する。つまり、これらポンプモータM3、押圧部材41、ベローズ50及び蓋体51によって、押圧部材41が往復動する都度圧縮空気を排気する加圧ポンプが構成されている。
【0055】
蓋体51の排気管路52には、図1に示すように、流体管路としての排気チューブ55を介して分配器31の吸気側が連結されている。その排気チューブ55の途中には、図4に示すように、蓋体51側から順に、圧力検出手段としての圧力センサSpと大気解放弁56とが連結されている。圧力センサSpは、排気チューブ55内の空気圧を検出するセンサである。大気解放弁56は、前記従動部材40近傍に配設されて、開弁することにより排気チューブ55内の圧縮空気を大気に解放する。その大気解放弁56の従動部材40側には、従動部材40が正転方向Rdと反対方向(図4における逆転方向Ri)に回転するときに、その押圧レバー40bに押圧されて大気解放弁56を開弁する開弁レバー56aが備えられている。
【0056】
そして、ポンプモータM3を逆転駆動すると、従動部材40は、モータ歯車M3b、第1歯車38及び第2歯車39を介して、逆転方向Ri側の回転駆動力を受ける。これにしたがい、従動部材40が逆転方向Riに回転すると、その押圧レバー40bが開弁レバー56aを押圧して大気解放弁56を開弁する。大気解放弁56が開弁すると、排気チューブ55、分配器31及び分配チューブ32を介して、カートリッジ22(加圧空間29)内の圧縮空気が大気に解放され、インクパック26を押しつぶす押圧力が緩和さる。このとき、開弁レバー56aを押圧する従動部材40は、その逆転方向Riの回転駆動力が開弁レバー56aを押圧する押圧力と、摩擦クラッチ面39aと従動部材40との間の摩擦力とに変換されて、それ以上の逆転方向Riの回転が規制される。
【0057】
なお、こうした大気解放弁56の開弁動作は、加圧空間29内の圧力(カートリッジ内圧Pi)が過剰に昇圧されるときや、カートリッジ22(インク導出口24)を分配チューブ32から取り外すとき、さらにはプリンタ10の電源がオフされる時などに行われる。
【0058】
次に、上記するプリンタ10の電気的構成について図11に従い以下に説明する。
図11は、プリンタ10の電気構成を示すブロック図である。なお、図11において各構成要を接続する実線は電気的な接続を示し、各構成要素を接続する破線は機械的な接続を示す。
【0059】
プリンタ10は制御部を構成するCPU61、ROM62、RAM63、I/F64及びASIC65を備え、これら各種デバイスがバス66を介して電気的に接続されている。また、ASIC65には、CRモータ駆動回路71、PFモータ駆動回路72、ヘッド駆動回路73及びポンプモータ駆動回路74を介して、それぞれCRモータM1、PFモータM2、記録ヘッド17及びポンプモータM3が接続されている。さらにまた、ASIC65には、圧力センサSp及び拡大位置検出器Shが電気的に接続されている。
【0060】
CPU61は、I/F64に接続されるホストコンピュータ67(例えば、パーソナルコンピュータ)からの印刷命令など、各種操作命令を実行する。ROM62は、CPU61が各種操作命令を実行するための各種プログラム、例えばCPU61が印刷命令を実行するための印刷プログラムを格納する。その印刷プログラムには、加圧ユニット30による加圧動作を実行するための加圧動作ルーチンなどが形成されている。また、ROM62は、各種プログラムを実行するための各種データ、例えばカートリッジ22内のインクを導出可能にする排気チューブ55内の圧力データ(基準圧力としての設定圧力Pth)な
どが格納されている。
【0061】
そして、CPU61は、入力される各種操作命令に基づいてROM62に格納される各種プログラムを呼び出し、RAM63を作業領域として同プログラムを実行する。
ASIC65は、各種プログラムを実行するCPU61からの命令に基づき、CRモータ駆動回路71、PFモータ駆動回路72、ヘッド駆動回路73、ポンプモータ駆動回路74を介して、それぞれCRモータM1、PFモータM2、記録ヘッド17及びポンプモータM3を駆動制御する。
【0062】
また、ASIC65は、圧力センサSpからの圧力検出信号に基づき、排気チューブ55内の空気圧(実圧力Pac)を算出する。さらにまた、ASIC65は、拡大位置検出器Shからの位置検出信号(検出信号SGH)に基づき、基部42の位置を検出する。なお、拡大位置検出器Shは、基部42が拡大位置X0にあるとき、検出信号SGHとしてASIC65にHレベル(高電位の信号)を出力し、基部42が拡大位置X0にないとき、検出信号SGHとしてASIC65にLレベル(低電位の信号)を出力する。
【0063】
そして、本実施形態では、CPU61は、ASIC65が算出したその時の実圧力Pacが設定圧力Pth以上であってかつ検出信号SGHがHレベルであるとき、カートリッジ22のカートリッジ内圧Piが設定圧力Pth以上になったと判断するようになっている。従って、実圧力Pacが設定圧力Pth以上であっても検出信号SGHがLレベルであるとき、カートリッジ内圧Piが設定圧力Pthに到達していないと判断する。つまり、検出信号SGHがLレベルのときは、加圧ユニット30(ベローズ50)は加圧動作にあって、実圧力Pacが過渡的なオーバーシュートを起こすタイミングにあり、定常状態の実圧力Pacでないからである。詳述すると、検出信号SGHがLレベルの時には、正確な実圧力Pac(カートリッジ内圧Pi)が検出できないため、実圧力Pacと設定圧力Pthとの比較判定を無効にしている。
【0064】
次に、上記する加圧ユニット30の加圧動作について図12及び図13に従い以下説明する。図12は加圧動作ルーチンを示すフローチャートであり、図13は加圧動作における実圧力Pac及び検出信号SGHを示すタイムチャートである。
【0065】
今、電源の投入されたプリンタ10に対してホストコンピュータ67から印刷を開始する操作信号が入力されると、CPU61は、ROM62に格納される印刷プログラムを呼び出し、記録ヘッド17にインクを供給するための加圧動作(加圧動作ルーチン)を実行する。
【0066】
なお、このとき、プリンタ10は、前回の電源オフによりカートリッジ22内の圧縮空気が開放された状態にあって、基部42(押圧部材41)を拡大位置X0に配置するものとする。これにしたがい、拡大位置検出器Shは、ASIC65にHレベルの検出信号SGHを出力している。また、ポンプ室54内には、前回の加圧動作によって圧縮空気が吸入されているものとする。そして、この加圧動作ルーチンを実行する間、ASIC65は、圧力センサSpからの圧力検出信号に基づいて、常に、実圧力Pacを算出するものとする。
【0067】
まず、加圧動作ルーチンを実行するCPU61は、検出信号SGHがHレベルの状態で、ROM62に格納される設定圧力PthとASIC65の算出する実圧力Pacの大小を比較し、実圧力Pacが設定圧力Pth以上か否かを判断する(ステップS11)。そして、実圧力Pacが設定圧力Pth以上でないものと判断すると(ステップS11においてNO)、CPU61は、ASIC65に対してポンプモータ駆動回路74を介してポンプモータM3を正転駆動させる(ステップS12)。
【0068】
ASIC65がポンプモータM3を正転駆動させると、ベローズ50の最初(1回目)の往動が開始する。このとき、基部42も、拡大位置検出器Shの検出押圧レバーSh2(拡大位置X0)から離間して最初(1回目)の往動を開始する。基部42が拡大位置X0から離間すると、図13に示すように、拡大位置検出器Shからの検出信号SGHがHレベルからLレベルになる。このときのポンプモータM3の駆動開始時間(ポンプ駆動開始時間)を第1往動開始時間T1とする。
【0069】
基部42が往動を開始すると、ポンプ室54は、押圧部材41(基部42)に押圧されてその容積を縮小する。ポンプ室54がその容積を縮小すると、吸気弁53aが閉弁して、排気弁52aが開弁する。排気弁52aが開弁すると、ポンプ室54は、縮小した容積に相対する圧縮空気を排気チューブ55内に排出する。この際、ポンプ室54内から排出される圧縮空気の殆どは、排気チューブ55の上流側(圧力センサSp近傍)に、一旦偏倚した後、排気チューブ55や圧力センサSpなどの流路抵抗に応じて徐々にカートリッジ22(加圧空間29)側へと流動する。
【0070】
そのため、実圧力Pacは、図13に示すように、第1往動開始時間T1から加圧空間29内の圧力(カートリッジ内圧Pi)よりも高い圧力に急激に増加する、いわゆるオーバーシュートをする(第1のオーバーシュートOs1をする)。そして、第1のオーバーシュートOs1を経過すると、実圧力Pacは、増加したカートリッジ内圧Piまで戻り定常状態となる。
【0071】
すなわち、基部42が1回目の往動を実施すると、まず検出信号SGHがLレベルになる。検出信号SGHがLレベルになると、実圧力Pacが第1のオーバーシュートOs1し、やがてカートリッジ内圧Piと等しくなるように低下する。
【0072】
この1回目の往動において、実圧力Pacは、図13に示すように、設定圧力Pthよりも低い圧力で変動する。そのため、基部42が1回目の往動を実施する間、実圧力Pacが設定圧力Pth以上なることはなく、CPU61は、ASIC65にポンプモータM3の正転駆動を継続させる(ステップS13においてNO)。
【0073】
ASIC65がポンプモータM3の正転駆動を継続すると、基部42は、縮小位置Xmに到達して、拡大位置X0側への最初(1回目)の復動を開始する。基部42が1回目の復動を開始すると、ポンプ室54は、押圧部材41(基部42)によってその容積を拡大する。ポンプ室54が容積を拡大すると、吸気弁53aが開弁して、排気弁52aが閉弁する。排気弁52aが閉弁すると、排気チューブ55内が密封され、図13に示すように、実圧力Pacが、増加したカートリッジ内圧Piと等しい圧力で安定する、いわゆる定常状態になる。
【0074】
実圧力Pacが定常状態になると、やがて復動する基部42が拡大位置X0に到達して拡大位置検出器Shの検出押圧レバーSh2を回動する。基部42が検出押圧レバーSh2を回動すると、図13に示すように、拡大位置検出器Shからの検出信号SGHがLレベルからHレベルになる。
【0075】
すなわち、基部42が1回目の復動を実施すると、図13に示すように、実圧力Pacが定常状態になる。そして、実圧力Pacが定常状態となって基部42が拡大位置X0に到達し、検出信号SGHが再びHレベルになる。
【0076】
CPU61は、この検出信号SGHがHレベルになった状態で実圧力Pacと設定圧力Pthの比較判定を行う(ステップS13)。この1回目の往復動作では、図13に示す
ように、実圧力Pacが設定圧力Pth以上でないため(ステップS13においてNO)、CPU61は、ASIC65にポンプモータM3の正転駆動を継続させる。
【0077】
続いて、ASIC65がポンプモータM3の正転駆動を継続すると、基部42は、再び拡大位置X0から離間して2回目の往動を開始する。基部42が2回目の往動を開始すると、図13に示すように、検出信号SGHが再びHレベルからLレベルになる。このときの時間を第2往動開始時間T2とする。
【0078】
その第2往動開始時間T2から、1回目の往動と同じく、実圧力Pacがオーバーシュートをする(第2のオーバーシュートOs2をする)。すると、第2のオーバーシュートOs2の実圧力Pacが、図13に示すように、一旦、実圧力到達時間T2aにおいて設定圧力Pth以上の圧力になる。
【0079】
この実圧力到達時間T2aにおける検出信号SGHは、第1のオーバーシュートOs1時の検出信号SGHと同じく、Lレベルである。そのため、基部42が2回目の往動を実施する間、実圧力Pacが第2のオーバーシュートOs2によって設定圧力Pth以上になったにも関わらず、ASIC65にポンプモータM3の正転駆動を継続させる(ステップS13においてNO)。つまり、CPU61は、加圧動作中においては実圧力Pacが設定圧力Pth以上であっても、ポンプモータM3の正転駆動を継続させる。そして、定常状態になると、基部42の往動を継続する分だけ、実圧力Pac(カートリッジ内圧Pi)が増加する。
【0080】
続いて、ASIC65がポンプモータM3の正転駆動を継続すると、基部42は、縮小位置Xmに到達して、拡大位置X0側への2回目の復動を開始する。基部42が2回目の復動を開始すると、1回目の復動と同じく、図13に示すように、実圧力Pacが増加したカートリッジ内圧Piと等しい圧力で定常状態になり、やがて検出信号SGHが再びLレベルからHレベルになる。
【0081】
このとき、実圧力Pacは、図13に示すように、1回目の定常状態よりもポンプ室54の容積分だけ昇圧される。しかし、図13に示すように、昇圧された実圧力Pacが設定圧力Pthよりも低い圧力にあるため、CPU61は、実圧力Pacが設定圧力Pth以上でないものと判断し、ASIC65にポンプモータM3の正転駆動を継続させる(ステップS13においてNO)。
【0082】
つまり、基部42を往復動させる毎に(検出信号SGHがHレベルになる毎に)、実圧力Pacと設定圧力Pthとを比較判定する。
こうして、CPU61は、基部42の2回目の往復動を終了しても、ASIC65がポンプモータM3の正転駆動を継続するため、基部42は、再び拡大位置X0から離間して3回目の往動を開始する。基部42が3回目の往動を開始すると、検出信号SGHが再びHレベルからLレベルになる。この時間を第3往動開始時間T3とする。
【0083】
そして、ポンプ駆動時間がその第3往動開始時間T3を経過すると、1回目及び2回目の往動と同じくして、実圧力Pacが再びオーバーシュートをする(第3のオーバーシュートOs3をする)。すると、第3のオーバーシュートOs3の実圧力Pacが、第2のオーバーシュートOs2と同じく、図13に示すように、実圧力到達時間T3aにおいて設定圧力Pth以上の圧力になる。
【0084】
この実圧力到達時間T3aにおける検出信号SGHは、第2のオーバーシュートOs2時の検出信号SGHと同じく、Lレベルである。そのため、CPU61は、実圧力Pacが設定圧力Pth以上であるにも関わらず、ASIC65にポンプモータM3の正転駆動
を継続させる(ステップS13においてNO)。定常状態になると、基部42の往動を継続する分だけ、実圧力Pac(カートリッジ内圧Pi)が増加する。
【0085】
続いて、ASIC65がポンプモータM3の正転駆動を継続すると、基部42は、縮小位置Xmに到達して、拡大位置X0側への3回目の復動を開始する。基部42が3回目の復動を開始すると、実圧力Pacは、図13に示すように、増加したカートリッジ内圧Piと等しい圧力であって、しかも設定圧力Pth以上の圧力で定常状態になる。
【0086】
実圧力Pacが設定圧力Pth以上の圧力で定常状態になり、1回目及び2回目の復動と同じく、復動する基部42が拡大位置X0に到達すると、検出信号SGHがHレベルになる。
【0087】
すると、検出信号SGHがHレベルであってかつ実圧力Pacが設定圧力Pth以上となるため(ステップS13においてYES)、CPU61は、ASIC65にポンプモータ駆動回路74を介してポンプモータM3を停止させる(ステップS14)。
【0088】
ASIC65がポンプモータM3を停止すると、ポンプ室54の容積が保持され、吸気弁53aと排気弁52aの双方が閉弁する。これによって、排気チューブ55(圧力センサSp)内が密封され、カートリッジ内圧Piが設定圧力Pth以上の圧力に保持される、すなわち加圧空間29内がインクを供給可能にする圧力に保持される。なお、この時間を第1設定圧力到達時間T3cとする。
【0089】
そして、ポンプ駆動時間がこの第1設定圧力到達時間T3cになると、CPU61は、基部42の3回目の往復動を終了して、加圧動作ルーチンを終了する。
なお、ポンプモータM3の正転駆動を開始する前に、実圧力Pacが設定圧力Pth以上であると(ステップS11においてNO)、CPU61は、加圧動作ルーチンを終了する。
【0090】
従って、上記実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、CPU61が、検出信号SGHのHレベルのとき、設定圧力Pthに対する実圧力Pacの大小を判断し、実圧力Pacが設定圧力Pth以上のとき、ポンプモータM3を停止させる。そして、CPU61が、検出信号SGHのLレベルのとき、実圧力Pacが設定圧力Pth以上であってもポンプモータM3の正転駆動を継続するようにした。したがって、検出信号SGHがHレベルになるときの実圧力Pac、すなわちカートリッジ内圧Piと等しくなるときの実圧力Pacに基づいて、ポンプモータM3の正転駆動を制御することができる。その結果、カートリッジ内圧Piが設定圧力Pth以上になるまでポンプモータM3を正転駆動することができる。ひいては、加圧動作におけるカートリッジ22(加圧空間29)内への圧力の供給不良を回避することができ、記録ヘッド17へのインクの供給不良を解消することができる。
【0091】
(2)しかも、実圧力Pacがオーバーシュートによって一旦設定圧力Pth以上になる場合であっても、検出信号SGHがLレベルであるために、ポンプモータM3の正転駆動を継続することができる。その結果、ポンプモータM3の正転駆動を継続させる分だけ、オーバーシュート後の実圧力Pac、すなわち定常状態時の実圧力Pacを増加することができる。ひいては、カートリッジ内圧Piをより早く設定圧力Pth以上にすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を、図14及び図15に従って説明する。尚、第2実施形態では、第1実施形態における加圧動作ルーチンを変更したものであり、その他の点では第1実施形態と同一の構成になっている。そのため以下では、加圧動作ルーチ
ンの変更点について詳細に説明する。図14は第2実施形態の加圧動作ルーチンを示すフローチャートであり、図15は第2実施形態の加圧動作における実圧力Pac及び検出信号SGHを示すタイムチャートである。
【0092】
なお、本実施形態では、第1実施形態における第1往動開始時間T1と第2往動開始時間T2との間の時間を基部42の往復周期Dcyとする。そして、ROM62には、基部42が往動する時間、すなわち往復周期Dcyの半分の時間を第1の追加時間Dt1として格納するものとする。また、ASIC65内には、図示しないタイマが設けられ、そのタイマは、実圧力Pacが設定圧力Pth以上になるときからの経過時間を計測するものであって、加圧動作ルーチンを実行する前に初期値である0秒が設定されるものとする。
【0093】
今、加圧動作ルーチンを実行するCPU61は、ROM62に格納される設定圧力Pthに対してASIC65の算出する実圧力Pacの大小を比較し、実圧力Pacが設定圧力Pth以上か否かを判断する(ステップS21)。そして、実圧力Pacが設定圧力Pth以上でないものと判断すると(ステップS21においてNO)、CPU61は、ASIC65にポンプモータ駆動回路74を介してポンプモータM3を正転駆動させる(ステップS22)。ASIC65がポンプモータM3を正転駆動すると、CPU61は、その時々で実圧力Pacが設定圧力Pth以上になるまで、設定圧力Pthに対する実圧力Pacの大小を判断する(ステップS23)。
【0094】
そして、基部42が1回目の往復動を終了して2回目の往動を開始すると、図15に示すように、第2のオーバーシュートOs2の実圧力Pacが、実圧力到達時間T2aにおいて設定圧力Pth以上になる(ステップS23においてYES)。
【0095】
すると、ASIC65は、タイマを駆動して実圧力到達時間T2aからの経過時間を計時し、その計時時間がROM62に格納される第1の追加時間Dt1になるまでポンプモータM3の正転駆動を継続する(ステップS24)。そして、タイマの計時時間が第1の追加時間Dt1になると、CPU61は、再び、設定圧力Pthに対する実圧力Pacの大小を比較し、実圧力Pacが設定圧力Pth以上か否かを判断する(ステップS25)。
【0096】
このとき、第1の追加時間Dt1(往復周期Dcyの半分の時間)を経過した実圧力Pacは、2回目の復動における定常状態にあって、図15に示すように、設定圧力Pthよりも低い圧力になる。つまり、CPU61は、実圧力Pacが設定圧力Pth以上でないものと判断する(ステップS25においてNO)。実圧力Pacが設定圧力Pth以上でないものと判断すると、CPU61は、再び、実圧力Pacが設定圧力Pth以上になるまで、設定圧力Pthに対する実圧力Pacの大小を判断し、ASIC65にポンプモータM3の正転駆動を継続させる(ステップS23)。
【0097】
やがて、基部42が3回目の往動を開始すると、図15に示すように、第3のオーバーシュートOs3における実圧力Pacが、実圧力到達時間T3aにおいて、再び、設定圧力Pth以上の圧力になる(ステップS23においてYES)。
【0098】
すると、ASIC65は、再び、タイマを駆動して実圧力到達時間T3aからの経過時間を計時し、その計時時間が第1の追加時間Dt1になるまでポンプモータM3の正転駆動を継続する(ステップS24)。そして、タイマの計時時間が第1の追加時間Dt1になると、CPU61は、再び、設定圧力Pthに対する実圧力Pacの大小を比較し、実圧力Pacが設定圧力Pth以上か否かを判断する。
【0099】
このとき、第1の追加時間Dt1を経過した実圧力Pacは、3回目の復動における定
常状態、すなわちカートリッジ内圧Piと等しい圧力にあって、しかも、図15に示すように、設定圧力Pth以上の圧力になっている。つまり、CPU61は、実圧力Pacが設定圧力Pth以上であるものと判断する(ステップS25においてYES)。
【0100】
実圧力Pacが設定圧力Pth以上であるものと判断すると、CPU61は、ASIC65にポンプモータ駆動回路74を介してポンプモータM3を停止させる(ステップS26)。このときの時間を第2設定圧力到達時間T3bとする。
【0101】
そして、ポンプ駆動時間がその第2設定圧力到達時間T3bになると、CPU61は、基部42の3回目の往復動を終了して、加圧動作ルーチンを終了する。
なお、ポンプモータM3の正転駆動を開始する前に、実圧力Pacが設定圧力Pth以上であると(ステップS21においてNO)、CPU61は、第1実施形態と同じく、加圧動作ルーチンを終了する。
【0102】
従って、上記実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、実圧力Pacが設定圧力Pth以上になると、CPU61は、第1の追加時間Dt1だけ、すなわち基部42が往動する時間(往復周期Dcyの半分の時間)だけポンプモータM3を継続して正転駆動するようにした。そして、第1の追加時間Dt1を経過したとき、CPU61は、実圧力Pacが設定圧力Pth以上になるときに限り、ポンプモータM3を停止するようにした。
【0103】
したがって、実圧力Pacがオーバーシュートによって一旦設定圧力Pth以上になる場合であっても、第1の追加時間Dt1を経過することにより、カートリッジ内圧Piと等しくなる実圧力Pacに基づいて、ポンプモータM3の正転駆動を制御することができる。
【0104】
その結果、カートリッジ内圧Piが設定圧力Pth以上になるまでポンプモータM3を正転駆動することができる。ひいては、加圧動作におけるカートリッジ22(加圧空間29)内への圧力の供給不良を回避することができ、記録ヘッド17へのインクの供給不良を解消することができる。
【0105】
(2)しかも、第1の追加時間Dt1の間、すなわちオーバーシュートの間にポンプモータM3の正転駆動を継続させる分だけ、定常状態時の実圧力Pacを増加することができる。ひいては、カートリッジ内圧Piをより早く設定圧力Pth以上にすることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を、図16及び図17に従って説明する。尚、第3実施形態では、第1実施形態における加圧動作ルーチンを変更したものであり、その他の点では第1実施形態と同一の構成になっている。そのため以下では、加圧動作ルーチンの変更点について詳細に説明する。図16は第3実施形態の加圧動作ルーチンを示すフローチャートであり、図17は第3実施形態の加圧動作における実圧力Pac及び検出信号SGHを示すタイムチャートである。
【0106】
なお、本実施形態のROM62は、基部42の往復周期Dcyと等しい時間を第2の追加時間Dt2として格納するものとする。また、ASIC65内には、図示しないタイマが設けられ、そのタイマは、実圧力Pacが設定圧力Pth以上であって、かつ検出信号SGHがHレベルになるときからの経過時間を計時するものとする。また、タイマは、加圧動作ルーチンを実行する前に初期値である0秒が設定されるものとする。
【0107】
今、第1実施形態と同じくして、CPU61が加圧動作ルーチンを実行し、基部42が
3回目の復動を開始すると、実圧力Pacが設定圧力Pth以上の圧力で定常状態になる(ステップS11〜S13)。そして、第1設定圧力到達時間T3cになると、検出信号SGHがHレベルになる(ステップS13においてYES)。
【0108】
すると、ASIC65は、タイマを駆動して第1設定圧力到達時間T3cからの経過時間を計時し、その計時時間がROM62に格納される第2の追加時間Dt2になるまでポンプモータM3の正転駆動を継続する(ステップS31)。
【0109】
タイマの計時時間が第2の追加時間Dt2になると、CPU61は、拡大位置検出器Shの検出信号SGHに基づいて基部42(押圧部材41)の位置検出を開始する(ステップS32)。そして、基部42が拡大位置X0に到達して検出信号SGHがHレベルになると(ステップS33においてYES)、CPU61は、ASIC65にポンプモータ駆動回路74を介してポンプモータM3を停止させる(ステップS34)。つまり、CPU61は、第2の追加時間Dt2を経過した後に、基部42を拡大位置X0まで復動し、ベローズ50を延伸した状態でポンプモータM3を停止する。この時間を第1追加圧時間T4cとする。
【0110】
ちなみに、第1設定圧力到達時間T3cは、検出信号SGHがHレベルになるときであって、3回目の復動を終了するときである。そのため、第1追加圧時間T4cは、図17に示すように、第1設定圧力到達時間T3cから第2の追加時間Dt2(往復周期Dcy)を経過して検出信号SGHがHレベルになるとき、すなわち4回目の復動を終了するときである。
【0111】
したがって、第1追加圧時間T4cにおける実圧力Pacは、図17に示すように、第4のオーバーシュートOs4を経過して加圧される分だけ、すなわち往動周期Dcy分だけ設定圧力Pthよりもさらに増加される(追加圧される)。
【0112】
実圧力Pacが追加圧されて、ポンプ駆動時間が第1追加圧時間T4cになると、CPU61は、基部42の3回目の往復動を終了して、加圧動作ルーチンを終了する。
従って、上記実施形態によれば第1実施形態に加えて以下の効果を得ることができる。
【0113】
(1)本実施形態によれば、実圧力Pacが設定圧力Pth以上であって、かつ検出信号SGHがHレベルになる状態から、さらに第2の追加時間Dt2だけポンプモータM3の正転駆動を継続するようにした。したがって、第2の追加時間Dt2の分だけ、カートリッジ内圧Piを追加圧することができる。その結果、排気チューブ55などの接続部位に微小リークなどがある場合であっても、追加圧する分だけ、カートリッジ内圧Piを設定圧力Pth以上に保持させることができる。そのため、加圧動作の実施回数を低減することができ、ポンプユニットの耐久性を向上することができる。
【0114】
(2)本実施形態によれば、追加圧を行った後に、基部42を拡大位置X0に配置してポンプモータM3を停止するようにした。したがって、ベローズ50を延伸した状態で加圧動作を終了することができる。その結果、クリープ変形などによるベローズ50の劣化を回避することができ、加圧ユニット30の加圧性能に対する長期安定化を図ることができる。
【0115】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第2実施形態では、ポンプ駆動時間が第2設定圧力到達時間T3bになる、すなわち第1の追加時間Dt1後の実圧力Pacが設定圧力Pth以上になると(ステップS25においてYES)、CPU61がポンプモータM3を停止するようにした。これを変更し、図18に示すように、第1の追加時間Dt1後の実圧力Pacが設定圧力Pth以
上になると(ステップS25においてYES)、CPU61が、第3実施形態と同じく、基部42(押圧部材41)の位置検出を開始し、検出信号SGHがHIGHレベルになるときにポンプモータM3を停止するようにしてもよい。
【0116】
これによれば、ポンプモータM3を停止するタイミングが、図20に示すように、第2設定圧力到達時間T3b以降であって、検出信号SGHがHレベルになる時間(第1設定圧力到達時間T3c)となる。
【0117】
したがって、第2設定圧力到達時間T3bにポンプモータM3を停止する場合に比べ、基部42を確実に拡大位置X0に配置してポンプモータM3を停止することができる。すなわち、ベローズ50を確実に延伸した状態で加圧動作を終了することができる。その結果、クリープ変形などによるベローズ50の劣化を回避することができ、加圧ユニット30の加圧性能に対する長期安定化を図ることができる。
【0118】
・上記第2実施形態では、第1の追加時間Dt1後の実圧力Pacが設定圧力Pth以上になると(ステップS25においてYES)、CPU61がポンプモータM3を停止するようにした。これを変更し、図19に示すように、第1の追加時間Dt1後の実圧力Pacが設定圧力Pth以上になると(ステップS25においてYES)、CPU61が、第3実施形態と同じく、以下の加圧動作を実行するようにしてもよい。
【0119】
すなわち、ポンプ駆動時間が第2設定圧力到達時間T3bになると(ステップS25においてYES)、ASIC65が、タイマを駆動して第2設定圧力到達時間T3bからの経過時間を計時する。その計時時間が第2の追加時間Dt2になるまで、CPU61は、ASIC65にポンプモータM3の正転駆動を継続させる(ステップS31)。そして、
その計時時間が第2の追加時間Dt2になると、CPU61は、基部42の位置検出を
開始して(ステップS32)、検出信号SGHがHレベルになるまでポンプモータM3を正転駆動する(ステップS33)。
【0120】
これによれば、図21に示すように、第2設定圧力到達時間T3bを経過した後に、経過時間が第2の追加時間Dt2になるまで(ポンプ駆動時間が第2追加圧時間T4bになるまで)、確実にカートリッジ内圧Piを追加圧することができる。したがって、排気チューブ55などの接続部位に微小リークなどがある場合であっても、追加圧する分だけ、カートリッジ内圧Piを設定圧力Pth以上に保持させることができる。しかも、同追加圧を行った後に、基部42を拡大位置X0に配置してポンプモータM3を停止することができる。その結果、クリープ変形などによるベローズ50の劣化を回避することができ、加圧ユニット30の加圧性能に対する長期安定化を図ることができる。
【0121】
・上記実施形態では、ROM62に設定圧力Pthを格納し、定常状態の実圧力Pacがこの設定圧力Pth以上になるまで、CPU61がASIC65にポンプモータM3を正転駆動させるようにした。これに加え、ROM62に、実圧力Pacの上限値としての閾値圧力を格納し、定常状態の実圧力Pacがこの最大設定圧力を超える場合には、CPU61がASIC65にポンプモータM3を逆転駆動させ、大気解放弁56を開弁してカートリッジ内圧Piを緩和するようにしてもよい。
【0122】
これによれば、設定圧力Pthのみによる加圧動作の制御に比べ、カートリッジ内圧Piをより正確に制御することができる。
・上記実施形態では、基部42の3回目の往復動によって、定常状態の実圧力Pacが設定圧力Pth以上になるようにした。これに限らず、1又は2回目、もしくは4回目以上の往復動によって、定常状態の実圧力Pacが設定圧力Pth以上になるようにしてもよく、この往復動の回数を特に限定するものではない。
【0123】
・上記実施形態では、ポンプ室54をベローズ50によって形成するようにしたが、これに限らず、例えば、シリンダで形成してもよく、基部42の往復動に応じて容積を拡大・縮小するものであれば何でもよい。
【0124】
・上記実施形態では、ASIC65が圧力センサの検出信号に基づいて、常に、実圧力Pacを算出するようにした。これに限らず、圧力センサSpは、実圧力Pacが所定の圧力値(例えば、設定圧力Pth)に到達したとき、圧力検出信号としてASIC65にHIGHレベルを出力するセンサであってもよい。 ・上記実施形態では、位置検出手段を、基部42が拡大位置X0に位置したときに検出信号SGHとしてHレベルを出力する拡大位置検出器Shとして具体化した。これに限らず、位置検出手段は、ベローズ50の伸縮状態に応じたレベルの信号を出力可能なセンサであればよい。
【0125】
・上記実施形態では、ポンプモータM3の回転を従動部材40に伝達する機構を摩擦クラッチ機構に具体化したが、これに限らず、ポンプモータM3を逆転駆動したときに、大気解放弁56を開弁する構造のものであれば特に限定されない。
【0126】
・上記実施形態では、カートリッジ22内を加圧する加圧流体を圧縮空気として具体化したが、これに限らず液体等を用いてもよい。
・上記第2実施形態では、第1の追加時間Dt1を往復周期Dcyの半分の時間としたが、これに限らず、第1の追加時間Dt1経過後の実圧力Pacがカートリッジ内圧Piと等しい圧力(定常状態)となる時間であればよい。
【0127】
・上記第3実施形態では、第2の追加時間Dt2を基部42の往復周期Dcyとしたが、これに限らず、第1設定圧力到達時間T3c後に、基部42が1往復以上して追加圧する時間であればよい。
【0128】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェットプリンタに具体化した。これに限らず、栄気体噴射装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造装置、有機ELディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極形成装置、バイオチップ製造用の生体有機物を噴射する噴射装置、精密ピペット用の製造装置等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】第1実施形態のインクジェット式プリンタを示す平断面図。
【図2】同じく、インクカートリッジを示す斜視図。
【図3】同じく、インクカートリッジを示す側断面図。
【図4】同じく、加圧ユニットを示す斜視図。
【図5】同じく、加圧ユニットを示す平面図。
【図6】同じく、従動部材を示す分解平面図。
【図7】同じく、押圧部材を示す分解斜視図。
【図8】同じく、押圧部材を示す分解斜視図。
【図9】同じく、ポンプ室を示す側断面図。
【図10】同じく、ポンプ室を示す側断面図。
【図11】同じく、電気的構成を示すブロック図。
【図12】同じく、加圧動作ルーチンを示すフローチャート。
【図13】同じく、加圧動作における実圧力と検出信号を示すタイムチャート。
【図14】第2実施形態の加圧動作ルーチンを示すフローチャート。
【図15】第2実施形態の加圧動作における実圧力と検出信号を示すタイムチャート。
【図16】第3実施形態の加圧動作ルーチンを示す。
【図17】第3実施形態の加圧動作における実圧力と検出信号を示すタイムチャート。
【図18】変更例の加圧動作ルーチンを示すフローチャート。
【図19】変更例の加圧動作ルーチンを示すフローチャート。
【図20】変更例の加圧動作における実圧力と検出信号を示すタイムチャート。
【図21】変更例の加圧動作における実圧力と検出信号を示すタイムチャート。
【図22】従来技術の加圧動作における実圧力を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0130】
10…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、17…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、22…液体収容体としてのインクカートリッジ、29…加圧空間、30…加圧ユニット、41…押圧部材、42…基部、50…ベローズ、54…ポンプ室、55…流体管路としての排気チューブ、56…大気解放弁、61…制御部を構成するCPU、62…ROM、63…RAM、65…ASIC、Dcy…周期としての往復周期、Dt1…第1の追加時間、Dt2…第2の追加時間、M3…駆動モータとしてのポンプモータ、Pac…実圧力、Pth…基準圧力としての設定圧力、Sh…位置検出手段としての拡大位置検出器、Sp…圧力検出手段としての圧力センサ、X0…拡大位置、Xm…縮小位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータの駆動力を受けてポンプ室の容積を拡大及び縮小させる押圧部材を、前記ポンプ室の容積を縮小する縮小位置から前記ポンプ室の容積を拡大する拡大位置に復動して前記ポンプ室内に加圧流体を排出不能に吸入した後に、前記押圧部材を前記拡大位置から前記縮小位置に往動して、前記ポンプ室内に吸入した前記加圧流体を前記ポンプ室と液体収容体との間に設けられる流体管路を介して前記液体収容体内に圧送し、その圧送する加圧流体の加圧によって前記液体収容体内に収容される液体を導出する液体導出方法において、
前記押圧部材が前記拡大位置に位置するときに前記流体管路内の圧力が前記液体収容体の収容する液体を導出するための基準圧力以上になると、前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止することを特徴とする液体導出方法。
【請求項2】
駆動モータの駆動力を受けてポンプ室の容積を拡大及び縮小させる押圧部材を、前記ポンプ室の容積を縮小する縮小位置から前記ポンプ室の容積を拡大する拡大位置に復動して前記ポンプ室内に加圧流体を排出不能に吸入した後に、前記押圧部材を前記拡大位置から前記縮小位置に往動して、前記ポンプ室内に吸入した前記加圧流体を前記ポンプ室と液体収容体との間に設けられる流体管路を介して前記液体収容体内に圧送し、その圧送する加圧流体の加圧によって前記液体収容体内に収容される液体を導出する液体導出方法において、
前記流体管路内の圧力が前記液体収容体の収容する液体を導出するための基準圧力以上になった時、
前記流体管路内の圧力が前記液体収容体内の圧力と等しくなる第1の追加時間だけ前記押圧部材の往復動を継続し、前記第1の追加時間を経過した時の前記流体管路内の圧力が前記基準圧力以上になっている時、前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止することを特徴とする液体導出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液体導出方法において、
前記第1の追加時間は、前記押圧部材が前記拡大位置から前記縮小位置まで往動する時間であることを特徴とする液体導出方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の液体導出方法において、
前記第1の追加時間を経過した時の前記流体管路内の圧力が前記基準圧力以上になると、前記押圧部材を前記拡大位置に復動した後に前記駆動モータを停止して前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止することを特徴とする液体導出方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載する液体導出方法において、
前記液体収容体内の圧力が前記基準圧力以上になると、前記流体管路内の圧力をさらに昇圧する第2の追加時間だけ前記押圧部材の往復動を継続し、前記第2の追加時間を経過すると、前記押圧部材を前記拡大位置に復動して前記駆動モータを停止し、前記液体収容体内への前記加圧流体の圧送を停止することを特徴とする液体導出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の液体導出方法において、
前記第2の追加時間は、前記押圧部材の往復動する周期であることを特徴とする液体導出方法。
【請求項7】
駆動モータと、前記駆動モータの駆動力を受けて拡大位置と縮小位置との間を往復動する押圧部材と、前記押圧部材の位置を検出する位置検出手段と、前記押圧部材が前記縮小位置から前記拡大位置に復動することによって容積を拡大して加圧流体を吸入し、前記押圧部材が前記拡大位置から前記縮小位置に往動することによって容積を縮小して前記加圧流
体を圧送するポンプと、前記ポンプと液体を収容する液体収容体とを連通して前記ポンプから圧送される加圧流体を前記液体収容体内に導入する流体管路と、前記流体管路内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記位置検出手段の検出する位置検出信号と前記圧力検出手段の検出する圧力検出信号とに基づいて前記駆動モータの駆動及び停止を制御する制御部とを備える加圧ユニットにおいて、
前記制御部は、請求項1〜6のいずれか1つに記載する液体導出方法に基づいて駆動モータの駆動及び停止を制御すること特徴とする加圧ユニット。
【請求項8】
液体を収容する液体収容体から導出される液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置において、
請求項7に記載する加圧ユニットを備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−69067(P2006−69067A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255988(P2004−255988)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】