液体検出システム、液体容器、取付部材、液体供給システム。
【課題】カートリッジ式の液体容器のコストを増大させることなく、液体容器内の液体が無くなったことを迅速に検出する。
【解決手段】液体収容部から液体が流入する液体室、液体室の変形部を液体の圧力とは逆向きに付勢する第1付勢部材、および変形部の変位を増幅するレバー部材を液体容器側に設け、変位を検出するセンサー、増幅された変位をセンサーに伝達する伝達部材、および伝達部材を付勢する第2付勢部材を液体消費装置側に設けて、液体容器を液体消費装置に装着すると、第2付勢部材の付勢力によって伝達部材がレバー部材に当接するとともに、レバー部材を変形部に押し当てる。こうすれば、液体検出システムを液体消費装置側と液体容器側とに分離できるので、液体容器のコストを増加させることなく、液体が無くなったことを直ちに検出することが可能となる。
【解決手段】液体収容部から液体が流入する液体室、液体室の変形部を液体の圧力とは逆向きに付勢する第1付勢部材、および変形部の変位を増幅するレバー部材を液体容器側に設け、変位を検出するセンサー、増幅された変位をセンサーに伝達する伝達部材、および伝達部材を付勢する第2付勢部材を液体消費装置側に設けて、液体容器を液体消費装置に装着すると、第2付勢部材の付勢力によって伝達部材がレバー部材に当接するとともに、レバー部材を変形部に押し当てる。こうすれば、液体検出システムを液体消費装置側と液体容器側とに分離できるので、液体容器のコストを増加させることなく、液体が無くなったことを直ちに検出することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置に液体を供給する液体容器内の液体の有無を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置の一例として、インクなどの液体を噴射ヘッドから噴射することで画像等を印刷する、いわゆるインクジェットプリンターが知られている。噴射ヘッドから噴射される液体は、液体カートリッジなどの専用の液体容器に収容されており、接続チューブなどを介して噴射ヘッドに供給される。そして、液体カートリッジ内の液体が無くなると、カートリッジごと新しいものに交換するのが一般的である。
【0003】
こうした液体消費装置では、液体カートリッジ内の液体が無くなって噴射ヘッドに液体が供給されない状態で噴射動作が行われると、噴射ヘッドの損傷を招くおそれがある。そこで、液体カートリッジ内の液体が無くなったことを検出する検出システムを搭載したカートリッジが提案されている(特許文献1)。検出システムが液体カートリッジ自体に搭載されているので、カートリッジ内の液体が無くなったことを迅速に検出することができる。
【0004】
また、液体が無くなったことを検出するシステムは、各種提案されている。例えば、噴射ヘッドとともにキャリッジ上に搭載され、キャリッジ以外の移動のないところに設置されたメインタンクからチューブを介してインクが供給されるサブタンクにおいて、サブタンク内のインクが少なくなった状態を検知する検出システムが提案されている(特許文献2)。このサブタンクでは、壁面に開口部を有するケースの当該開口部が可撓性の変形可能部材で塞がれ、その変形可能部材はケース内部から圧縮ばねによって外方に押圧付勢されている。また、変形可能部材に板状部材(レバー)が接するように付勢されており、インクの消費によって生じるサブタンク内の負圧によってサブタンク内側に引き込まれる変形可能部材に追従して板状部材(レバー)が回転する。この回転に伴い、板状部材(レバー)の自由端側が光学センサーによって検知されると、サブタンク内のインクが少なくなったと判断されて、供給ポンプが作動されてサブタンク内にインクが補充される(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−307894号公報
【特許文献2】特開2007−136807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のように検出システムを液体カートリッジ自体に搭載しようとすると、カートリッジの交換の度に高価なセンサーも含めて交換することになるため、カートリッジのコストが増大してしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に提案されている検出システムでは、センサーでレバーを直接的に検出しているので、液体室のダイアフラムと接するレバーにインクなどの液体が漏れて付着すると、センサーまで汚染されるおそれがあり、その結果、液体が無くなったことを検出する精度が低下するおそれがあるという問題があった。
【0008】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、カートリッジ式の液体容器のコストを増大させることなく、センサーが液体で汚染されて検出精度が低下することを防止可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体検出システムは次の構成を採用した。すなわち、
液体消費装置に対して着脱可能に構成された液体容器内の液体の有無を検出する液体検出システムであって、
前記液体容器には、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられ、第1接点で接する前記変形部の変位を所定のレバー比で増幅して第2接点に伝達するレバー部材と
が設けられており、
前記液体消費装置には、
前記レバー部材の前記第2接点に当接して、該第2接点の変位を前記液体消費装置の内部に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材によって伝達された変位を検出することで、前記液体容器内の液体の有無を検出するセンサーと、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着されると前記レバー部材に当接する方向に前記伝達部材を付勢し、当該付勢によって該レバー部材を前記変形部に押し当てる第2付勢部材と
が設けられていることを要旨とする。
【0010】
このような本発明の液体検出システムにおいては、液体容器の液体収容部から液体が流入する液体室の一部に変形可能な変形部が設けられており、この変形部には、液体消費装置への液体の供給に伴う液体室の圧力変化による変形部の変形とは逆向きに第1付勢部材の付勢力が作用している。液体収容部内の液体が無くなると、液体室の液体の圧力が変化することで変形部が変形し、その変形部の変位はレバー部材によって所定のレバー比で増幅される。また、第2付勢部材で付勢されてレバー部材に当接する伝達部材が、増幅された変位をセンサーに伝達することから、センサーは、伝達部材によって伝達された変位を検出することで、液体容器内の液体の有無を検出することができる。そして、本発明の液体検出システムでは、液体収容部、液体室、第1付勢部材、およびレバー部材は、液体容器側に設けられているのに対して、伝達部材、第2付勢部材、およびセンサーは、液体消費装置側に設けられており、液体容器を液体消費装置に装着すると、第2付勢部材の付勢力によって伝達部材がレバー部材に当接するとともに、レバー部材を変形部に押し当てるようになっている。
【0011】
上述した構成によれば、液体検出システムを液体消費装置側と液体容器側とに分離可能となり、液体消費装置の内部に設けられたセンサーとは切り離して液体容器を交換することができるので、センサーまでを液体容器に一体に設ける場合に比べて、液体容器のコストを低減することが可能となる。その一方で、液体収容部内の液体が無くなったことを反映して変形部が変形する液体室や、変形部の変位を増幅するレバー部材については、液体容器側に設けて液体収容部の近傍に配置しておくことができるので、液体容器の液体収容部に収容された液体が無くなったことを直ちに検出することが可能となる。
【0012】
また、伝達部材は、第2付勢部材の力によってレバー部材に当接する方向に付勢されており、その付勢力を利用して、レバー部材を液体室の変形部に押し当てるようになっている。これにより、液体室の変形部の変形に従って回動するようにレバー部材を付勢しておく付勢部材を別途設ける必要がないので、液体消費装置側と液体容器側とに分離可能な液体検出システムの構成を簡素化することができる。
【0013】
加えて、本発明の液体検出システムでは、センサーがレバー部材の変位を直接的に検出するのではなく、伝達部材によって伝達された変位を検出することから、センサーの検出精度の低下を防止することができる。すなわち、液体室の変位部に接するレバー部材には、液体が漏れて付着していることがある。そこで、伝達部材を用いてレバー部材の変位をセンサーまで伝達するようにすれば、レバー部材を直接的にセンサーで検出する場合に比べて、レバー部材に付着した液体でセンサーが汚染されるリスクを低減できる。その結果、センサーの検出精度の低下を防止することが可能となる。
【0014】
さらに、新たな液体容器を液体消費装置に装着する際には、伝達部材は、レバー部材に当接することにより、第2付勢部材の付勢力に抗して移動する。そのため、センサーは、このときの伝達部材の変位を検出することで、新たな液体容器の装着の有無を検出することが可能である。このように、1つのセンサーを、液体容器内の液体の有無の検出だけでなく、液体容器の装着の有無の検出にも兼用することができるので、液体検出システムを搭載した液体消費装置の装置構成を全体として簡略化することが可能となる。
【0015】
上述した前記液体容器は、前記レバー部材が前記変形部の変位によって回動する際に、前記レバー部材を案内するガイド部を備えているようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、レバー部材の回動動作がガイド部によって規制されるので、レバー部材の第1接点に接する変形部の変位を所定のレバー比で適切に増幅して、第2接点に当接する伝達部材に確実に伝達することができる。その結果、液体検出システムによって液体容器内の液体の有無を検出する精度を高めることが可能となる。
【0017】
また、こうした本発明の液体検出システムは、次のようにしてもよい。先ず、第1付勢部材は、レバー部材と接する方向に液体室の変形部を付勢し、その付勢力によって第2付勢部材とは逆向きにレバー部材を回動させる。そして、第1付勢部材の付勢力は、第2付勢部材の付勢力よりも大きく設定されていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、液体収容部内に液体があるときには、第1付勢部材の付勢力によってレバー部材を第2付勢部材の付勢力に抗して回動させて、その状態(レバー部材が開いた状態)を保持することができる。一方、液体収容部内の液体が無くなって液体室の液体の圧力が変化することにより、第1付勢部材の付勢力に抗して変形部が変形すると、第2付勢部材の付勢力によってレバー部材を変形部の変形に従って回動させ、その状態(レバー部材が閉じた状態)を保持することができる。
【0019】
上述した本発明の液体検出システムでは、特に、第2付勢部材の付勢力に対する第1付勢部材の付勢力の比率が、レバー部材の所定のレバー比以上に設定されていてもよい。
【0020】
本発明の他の観点によれば、以下の構成をとる。
液体消費装置に対して着脱可能に構成された液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられたレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、
前記液体消費装置への装着時に、
前記液体消費装置に設けられ変位が前記液体消費装置に設けられたセンサーにより検出可能な伝達部材と接し、かつ、前記レバー部材の第1接点で接する前記変形部の変位が所定のレバー比に増幅される第2の接点を有する、液体容器。
【0021】
このような構成の液体容器を上述の液体検出システムに係る液体噴射装置に装着して用いれば、上述の液体検出システムと同様の効果を得ることができる。
【0022】
上述の液体容器において、上述の液体消費装置の伝達部材を前記第2の接点に案内する貫通孔が設けるようにしてもよい。
【0023】
このようにすることで、貫通孔によって液体消費装置の伝達部材を案内することができ、検出精度が向上する。
【0024】
本発明の他の観点によれば、以下の構成をとる。
液体消費装置に対して着脱可能に構成された取付部材であって、
外部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられ、第1接点で接する前記変形部の変位を所定のレバー比で増幅して第2の接点に伝達するレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、
前記液体消費装置への装着時に、
前記液体消費装置に設けられ変位が前記液体消費装置に設けられたセンサーにより検出可能な伝達部材と接し、かつ、前記レバー部材の第1接点で接する前記変形部の変位が所定のレバー比に増幅される第2の接点を有する、取付部材。
【0025】
このような構成によれば、上述した液体容器と同様の効果を有する。
【0026】
上述の取付部材は、外部から前記液体室に流入する液体を輸送する液体輸送管が接続される接続部を備えることとしても良い。接続部を設けることで液体輸送管の接続が容易となる。
【0027】
本発明の他の観点として、上述の取付部材を用いて以下の構成をとることができる。
液体貯留部と、
当該液体貯留部に接続され、液体貯留部に貯留された液体を輸送する液体輸送管と、
当該液体輸送管と接続される上述の取付部材とからなる液体供給システム。
【0028】
このような構成によれば、液体消費装置の外部に設けられる液体貯留部から液体供給管を介して液体消費装置に液体供給する態様において、上述の液体検出システム及び上述の液体容器と同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて第1実施例に係る液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】カートリッジホルダーにインクカートリッジを装着する様子を示した説明図である。
【図3】第1実施例のインクカートリッジの構成を示した分解斜視図である。
【図4】第1実施例のインクカートリッジに搭載されたインク検出機構の構成を示した分解斜視図である。
【図5】インクパック内のインクがインクジェットプリンターに供給される様子を示した断面図である。
【図6】第1実施例のインクカートリッジに設けられたレバー部材の構成を示した説明図である。
【図7】第1実施例のカートリッジホルダーに設けられたロッドおよびセンサーの構成を示した斜視図である。
【図8】インクカートリッジ内のインクの有無を、カートリッジホルダーの内部に設けられたセンサーによって検出する様子を示した説明図である。
【図9】第2実施例に係る液体消費装置としてのインクジェットプリンターの大まかな構成を示した説明図である。
【図10】カートリッジホルダーに第2実施例に係るアダプターを装着する様子を示した図である。
【図11】第2実施例のアダプターの構成を示した分解斜視図である。
【図12】第2実施例のアダプターに搭載されたインク検出機構の構成を示した分解斜視図である。
【図13】インク供給管を介してインクが液体供給装置に供給される様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.第1実施例:
A−1.インクジェットプリンターの構成:
A−2.インクカートリッジの構成:
A−3.ロッドおよびセンサーの構成:
A−4.インクカートリッジ内のインクの有無の検出:
B.第2実施例
【0031】
A.第1実施例:
A−1.インクジェットプリンターの構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。図示したインクジェットプリンター10は、略箱形の外観形状をしており、前面のほぼ中央には前面カバー11が設けられ、その左隣には複数の操作ボタン15が設けられている。前面カバー11は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷媒体としての印刷用紙2が排出される細長い排紙口12が現れる。また、インクジェットプリンター10の背面側には、図示しない給紙トレイが設けられており、給紙トレイに印刷用紙2をセットして操作ボタン15を操作すると、給紙トレイから印刷用紙2が給紙されて、内部で印刷用紙2の表面に画像等が印刷された後、排紙口12から印刷用紙2が排出されるようになっている。
【0032】
また、インクジェットプリンター10の上面側には上面カバー14が設けられている。上面カバー14は、奥側で軸支されており、手前側を持ち上げて上面カバー14を開くと、インクジェットプリンター10の内部の状態を確認したり、あるいはインクジェットプリンター10の修理などを行ったりすることが可能となっている。
【0033】
インクジェットプリンター10の内部には、主走査方向に往復動しながら印刷用紙2上にインクドットを形成するキャリッジ20や、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30などが設けられている。キャリッジ20の底面側(印刷用紙2に向いた側)には、複数の噴射ノズルが形成された噴射ヘッド22が搭載されており、噴射ノズルから印刷用紙2に向かってインクを噴射して画像等の印刷を行う。本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを用いてカラー画像を印刷することが可能であり、このことと対応して、キャリッジ20に搭載された噴射ヘッド22には、インクの種類毎に噴射ノズルが設けられている。
【0034】
噴射ヘッド22に形成された噴射ノズルから噴射するインクは、インクカートリッジ40と呼ばれる専用容器に収容されている。インクカートリッジ40は、キャリッジ20とは別の位置に設けられたカートリッジホルダー42に装着され、インクカートリッジ40内のインクは、カートリッジホルダー42およびインクチューブ24を介してキャリッジ20の噴射ヘッド22に供給される。本実施例のインクジェットプリンター10では、前面カバー11の右隣に、前面カバー11と同様に下端側で軸支されたカートリッジ交換用カバー13が設けられており、カートリッジ交換用カバー13の上端側を手前に倒すと、カートリッジホルダー42が現れて、インクカートリッジ40を着脱可能となっている。カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する様子や、インクカートリッジ40の詳細な構成については、後ほど別図を用いて説明する。
【0035】
尚、本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを使用することから、インクカートリッジ40もインクの種類毎に設けられている。ぞれぞれのインクカートリッジ内のインクは、インクの種類毎に設けられたインクチューブ24を介して、噴射ヘッド22の対応する噴射ノズルに供給される。
【0036】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動するための駆動モーター34などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジ20に固定されており、タイミングベルト32を駆動すると、主走査方向に延設された図示しないガイドレールによってガイドしながら、キャリッジ20を主走査方向に往復動させることができる。
【0037】
また、キャリッジ20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションには、正常に印刷可能なようにメンテナンスを行うメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、噴射ヘッド22の底面側(印刷用紙2に向いた側)で噴射ノズルが形成されている面(ノズル面)に押し付けられて、噴射ノズルを取り囲むように閉空間を形成するキャップ部材50や、噴射ヘッド22のノズル面に押し付けるためにキャップ部材50を昇降させる昇降機構(図示せず)や、キャップ部材50が噴射ヘッド22のノズル面に押し付けられることで形成される閉空間に負圧を導入する吸引ポンプ(図示せず)などから構成されている。
【0038】
更に、インクジェットプリンター10の内部には、印刷用紙2を紙送りするための図示しない紙送機構や、インクジェットプリンター10の全体の動作を制御する制御部60なども搭載されている。キャリッジ20を往復動させる動作や、印刷用紙2を紙送りする動作や、噴射ノズルからインクを噴射する動作や、正常に印刷可能なようにメンテナンスを実行する動作などは、全て制御部60によって制御されている。
【0039】
図2は、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する様子を示した説明図である。図示されているように、カートリッジホルダー42には、手前側から奥側に向けてインクカートリッジ40を挿入する挿入孔44が、インクカートリッジ40毎に設けられている。この挿入孔44の奥側の面には、インクカートリッジ40からインクを取り入れるためのインク取入針46が手前側に向けて立設されている。また、インクカートリッジ40の背面には、図示しないインク供給口が設けられている。カートリッジホルダー42の挿入孔44にインクカートリッジ40を奥側まで挿入して装着すると、インク取入針46がインク供給口に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。
【0040】
インクジェットプリンター10には、図示しないインク通路や供給ポンプが内蔵されている。インク取入針46から取り入れられたインクは、インク通路によって、カートリッジホルダー42の背面側に接続されたインクチューブ24(図1参照)に導かれる。また、インク通路の途中に設けられた供給ポンプ(例えば、ダイアフラムポンプ)は、インクカートリッジ40内のインクを吸入して、キャリッジ20内に設けられた図示しないサブタンクに向けてインクを圧送するようになっている。尚、前述したように本実施例のインクジェットプリンター10は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4色分のインクカートリッジ40を搭載しており、インクカートリッジ40内のインクは、それぞれ独立して噴射ヘッド22に供給される。このため、カートリッジホルダー42の内部には、インク通路や供給ポンプがインクカートリッジ40毎に設けられている。
【0041】
また、カートリッジホルダー42の挿入孔44の奥側の面からは、ロッド48が手前側に向けて突出している。詳しくは後述するが、カートリッジホルダー42の内部には、インクカートリッジ40内のインクの有無を検出するためのセンサーが設けられており、ロッド48は、インクカートリッジ40内の状態をセンサーに伝達する役割を果たしている。尚、ロッド48およびセンサーの構成については、後ほど詳しく説明する。
【0042】
A−2.インクカートリッジの構成 :
図3は、本実施例のインクカートリッジ40の構成を示した分解斜視図である。図示されているように、インクカートリッジ40は、インクを収容するインクパック70と、インクパック70を収納するカートリッジケース72などから構成されている。インクパック70は、インクなどの液体を通さないフィルムを袋状に張り合わせて、インク供給ユニット74を挟んだ状態で袋の開口部を閉じることで形成されている。尚、本実施例のインクカートリッジ40は、本発明の「液体容器」に相当しており、本実施例のインクパック70は、本発明の「液体収容部」に相当している。
【0043】
インク供給ユニット74には、インクカートリッジ40の製造段階でインクパック70にインクを注入するためのインク注入口76や、前述したカートリッジホルダー42側のインク取入針46が挿入されるインク供給口78や、インクパック70内のインクの有無を検出するためのインク検出機構80などが設けられている。尚、インク検出機構80の詳細な構成については後述する。
【0044】
インクパック70を収納するカートリッジケース72は、前ケース82および後ケース84から構成されている。後ケース84は、箱形状に形成されており、内部にインクパック70の袋部分を収納可能となっている。一方、前ケース82は、インクパック70のインク供給ユニット74を覆うとともに、後ケース84と嵌合して開口部を封じる(蓋をする)部材である。また、前ケース82には、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した際にカートリッジホルダー42側のインク取入針46が差し込まれる取入針用貫通孔86と、ロッド48が差し込まれるロッド用貫通孔88とが設けられている。
【0045】
図4は、本実施例のインクカートリッジ40に搭載されたインク検出機構80の構成を示した分解斜視図である。尚、図4では、インク供給口78を鉛直上方に向けた状態で、上方からインクパック70のインク検出機構80を見た様子を示している。図示されているように、インク検出機構80には、略円筒形状の液体室100が設けられており、この液体室100には、インクパック70内のインクが流入する流入口102や、インク供給口78に向けてインクが流出する流出口104が開口している。また、液体室100は、可撓性の材料で形成されたフィルム118によって上端面が覆われている。
【0046】
液体室100の内部には、流入口102から液体室100に流入したインクが逆流するのを阻止する逆止弁106や、フィルム118を液体室100の外側に向けて付勢する付勢バネ108などが設けられている。付勢バネ108は、液体室100の底面から上方に向けて立設された突起110に嵌合して位置決めされ、圧縮した状態で設けられている。また、付勢バネ108とフィルム118との間には、受圧板112が挿入されている。この受圧板112は、付勢バネ108の付勢力をフィルム118に伝える受圧部114と、逆止弁106の移動を規制する規制部116とを連結して一体に構成されている。受圧板112の規制部116を液体室100の流入口102に嵌め込むと、逆止弁106が上方へ移動するのが規制されるとともに、受圧部114が付勢バネ108とフィルム118との間に挟まれた状態で位置決めされる。尚、本実施例では、受圧部114と規制部116とが一体に構成されているが、別体に構成されていてもよい。
【0047】
また、液体室100の一端面(図中では上端面)を構成するフィルム118に液体室100の外側から接するレバー部材120が設けられている。レバー部材120は、一端側に軸穴122が設けられており、液体室100の外側面に設けられた軸ピン126と嵌合して、回動可能に軸支される。一方、レバー部材120の他端側にはガイド孔124が設けられており、インク供給ユニット74に固定されたガイドピン128がこのガイド孔124に差し通されて、レバー部材120の回動動作をガイドするようになっている。さらに、レバー部材120の上面(フィルム118に接する面とは反対側の面)には、前述したカートリッジホルダー42側のロッド48の先端が当接する当接部132としての凸部が設けられている。このような構成のインク検出機構80を備えたインクパック70では、次のようにしてインクパック70内のインクがカートリッジホルダー42に供給される。
【0048】
図5は、インクパック70内のインクがインクジェットプリンター10に供給される様子を示した断面図である。尚、図5では、図示が煩雑になるのを避けるため、レバー部材120や受圧板112の規制部116などについては図示が省略されている。前述したように、インクジェットプリンター10には図示しない供給ポンプが内蔵されており、インクカートリッジ40側からインクを吸入して、キャリッジ20に向けてインクを圧送するようになっている。図5(a)には、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動していないときの様子が示されており、図5(b)には、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動しているときの様子が示されている。
【0049】
前述しように、液体室100内には付勢バネ108が設けられており、フィルム118を液体室100の外側に向けて付勢するようになっている。図5(a)に示したように、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動していないときには、液体室100の容積を増加させるように付勢バネ108がフィルム118を押し出しており、液体室100の容積の増加に伴い、インクパック70と流入口102とを接続する流入通路140を通ってインクが液体室100に流入する。流入口102には、逆止弁106が設けられており、液体室100へのインクの流入を許容して、逆流を阻止するようになっている。尚、図中の破線の矢印は、インクの流れを表している。
【0050】
インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動すると、インク供給口78からインクが吸引されて、液体室100内のインクは、流出口104とインク供給口78とを接続する流出通路142を通ってカートリッジホルダー42に供給される。そして、本実施例のインクカートリッジ40では、流出通路142の内径が流入通路140の内径よりも大きく設定されていることから、液体室100からのインクの流出に対して、液体室100へのインクの流入が追い付かず、液体室100内は負圧となる。そのため、図5(b)に示したように、付勢バネ108の力に抗して、フィルム118が液体室100の内側に引き込まれるように変形する。
【0051】
この液体室100内に発生した負圧は、インクパック70内のインクが流入通路140を通って液体室100に流入することによって徐々に解消される。すると、付勢バネ108の力によって、フィルム118は再び液体室100の外側に押し出されて、液体室100の容積が復元するので、インクジェットプリンター10の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後は、図5(a)に示した状態に復帰する。そして、インクジェットプリンター10の供給ポンプが再び作動すると、液体室100内は負圧となり、図5(b)に示したようにフィルム118が液体室100の内側に引き込まれた状態となる。尚、本実施例の付勢バネ108は、本発明の「第1付勢部材」に相当している。
【0052】
こうして液体室100を介してインクパック70内のインクをカートリッジホルダー42に供給するうちにインクパック70内のインクが無くなると、液体室100内が負圧であっても液体室100にインクパック70からインクが流入しなくなるので、インクジェットプリンター10の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後も、液体室100内の負圧は解消されず、図5(b)に示したようにフィルム118は液体室100の内側に引き込まれた状態のままとなる。
【0053】
このように本実施例のインクカートリッジ40では、インクパック70内のインクが無くなると、液体室100の一端面を構成するフィルム118が液体室100の内側に引き込まれるように変形した状態のままとなることから、このようなフィルム118の変位を検出することによって、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することができる。ただし、本実施例のフィルム118の変位は小さいので、次のようなレバー部材120を用いて変位を増幅するようになっている。
【0054】
図6は、本実施例のインクカートリッジ40に設けられたレバー部材120の構成を示した説明図である。図示されているように、レバー部材120の一端側には軸穴122が設けられており、液体室100の外側面に設けられた軸ピン126(図4参照)が軸穴122に嵌め込まれた状態で、この軸穴122を中心にレバー部材120は回動可能となっている。また、レバー部材120の他端側にはガイド孔124が設けられており、インク供給ユニット74に固定されたガイドピン128(図4参照)がガイド孔124に差し通されている。レバー部材120が回動する際には、ガイドピン128がガイド孔124に沿って移動することによってレバー部材120の回動動作をガイドすることから、レバー部材120の回動(変位)を高い精度で規制することができる。尚、本実施例のガイド孔124およびガイドピン128は、本発明の「ガイド部」に相当している。
【0055】
また、レバー部材120のフィルム118と向かい合う側の面には、フィルム118に接する半球体状の凸部130が設けられており、レバー部材120のフィルム118と向かい合う側とは反対側の面には、カートリッジホルダー42側に設けられたロッド48の先端が当接する凸部である当接部132が設けられている。そして、レバー部材120の支点となる軸穴122から当接部132までの距離D2は、軸穴122から凸部130までの距離D1よりも大きく設定されていることから、凸部130に接するフィルム118が変形すると、その変位はレバー比R(=D2/D1>1,本実施例では3.1)で増幅されて、当接部132に伝わることになる。このようにレバー部材120で増幅されたフィルム118の変位は、前述したようにカートリッジホルダー42の内部に設けられたセンサーにロッド48を用いて伝達される。
【0056】
A−3.ロッドおよびセンサーの構成 :
図7は、本実施例のカートリッジホルダー42に設けられたロッド48およびセンサー136の構成を示した斜視図である。尚、図7では、図2に示したカートリッジホルダー42の奥側からロッド48およびセンサー136を見た様子を示している。図示されているように、ロッド48には付勢バネ134が取り付けられており、カートリッジホルダー42に装着されるインクカートリッジ40に向けて(図中の白抜きの矢印の方向に)ロッド48を付勢している。尚、本実施例のロッド48は、本発明の「伝達部材」に相当しており、本実施例の付勢バネ134は、本発明の「第2付勢部材」に相当している。
【0057】
また、本実施例のセンサー136には、凹字形状のいわゆる透過型フォトセンサーが用いられている。このセンサー136には、図示しない発光部と受光部とが対向して設けられており、発光部が発する光を受光部が受けるようになっている。尚、図中の破線の矢印は、光の透過方向を示している。
【0058】
そして、ロッド48のインクカートリッジ40を向いた側とは反対側の端部には、遮光部138が設けられている。ロッド48が付勢バネ134の力によってインクカートリッジ40側に移動すると、遮光部138がセンサー136の発光部と受光部との間に挿入されて、発光部からの光を遮る。その結果、センサー136の受光部では、発光部からの光を受けられなくなるので、ロッド48の位置が変化したことを検出することができる。尚、本実施例のセンサー136には、透過型フォトセンサーが用いられているが、ロッド48の変位を検出できるものであればよく、フォトセンサーに限定されるものではない。
【0059】
A−4.インクカートリッジ内のインクの有無の検出 :
図8は、インクカートリッジ40内のインクの有無を、カートリッジホルダー42の内部に設けられたセンサー136によって検出する様子を示した説明図である。先ず、図8(a)には、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する前の状態が示されている。前述したように、カートリッジホルダー42側に設けられたロッド48には、付勢バネ134が取り付けられており、ロッド48をインクカートリッジ40に向けて付勢している。インクカートリッジ40を装着していないときには、付勢バネ134の力によってロッド48がインクカートリッジ40側に移動するので、ロッド48の遮光部138がセンサー136の発光部と受光部との間に挿入されて(図7参照)、発光部からの光を遮った状態となっている。
【0060】
そして、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着すると、図8(b)に示すように、インクカートリッジ40側に設けられたレバー部材120の当接部132にロッド48の先端が当接することによって、付勢バネ134の力に抗して、ロッド48はカートリッジホルダー42の奥側に移動する。すると、ロッド48の遮光部138がセンサー136から離れるので、センサー136は光を透過した状態になる。このように、センサー136は、ロッド48の遮光部138の移動により光の遮断状態から透過状態に変化したことに基づいて、インクカートリッジ40が装着されたことを検出することが可能である。
【0061】
ここで、前述したように、ロッド48が当接するインクカートリッジ40側のレバー部材120は、液体室100の一端面を構成するフィルム118の変位を、所定のレバー比R(=D2/D1>1,図6参照)で増幅してロッド48に伝えるようになっている。また、レバー部材120の凸部130に接するフィルム118は、液体室100の内部に設けられた付勢バネ108によって、液体室100の外側に向けて付勢されている。そして、本実施例では、液体室100の付勢バネ108の付勢力Aと、ロッド48の付勢バネ134の付勢力Bとの関係が、A≧R×Bの式を満たすように設定されている。このように、液体室100の付勢バネ108の付勢力Aは、ロッド48の付勢バネ134の付勢力Bよりも大きく設定されていることから、図8(b)に示したように、付勢バネ108の付勢力Aによってフィルム118が液体室100の外側に押し出され、レバー部材120は開いた状態に保持される。また、レバー部材120に当接するロッド48は、付勢バネ134の付勢力Bに抗して、カートリッジホルダー42の奥側に押し戻された状態(センサー136が光を透過した状態)となる。
【0062】
また、図5を用いて前述したように、カートリッジホルダー42の内部に設けられた供給ポンプが作動して、インクカートリッジ40のインク供給口78からインクが吸引されると、液体室100内は負圧になるので、付勢バネ108の力に抗して、フィルム118は液体室100の内側に引き込まれるように変形する。このとき、インクパック70内にインクが残っていれば、インクパック70から液体室100にインクが流入することよって、液体室100内の負圧は解消されるので、フィルム118は再び液体室100の外側に押し出されて、カートリッジホルダー42の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後は、図8(b)に示したように、センサー136は光を透過した状態となっている。
【0063】
一方、インクパック70内のインクが無くなると、インクパック70から液体室100にインクが流入せず、液体室100内の負圧は解消されないので、図8(c)に示すようにフィルム118は、液体室100の内側に引き込まれた状態のままとなる。このフィルム118とレバー部材120の凸部130とは接着固定されていないものの、付勢バネ134の力によってレバー部材120に当接する方向に付勢されているロッド48が、その付勢力を利用して、レバー部材120をフィルム118の変形に追従させて回動させるので、レバー部材120は閉じた状態に保持される。また、レバー部材120の凸部130に接するフィルム118の変位は小さいものの、その変位が当接部132において所定のレバー比R(=D2/D1>1,図6参照)で増幅される。その結果、ロッド48がインクカートリッジ40側に移動して、ロッド48の遮光部138がセンサー136に挿入されるので、センサー136は光が遮られた状態となる。このように、センサー136は、ロッド48の遮光部138によって光が遮られたこと(ロッド48が移動したこと)に基づいて、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することができる。
【0064】
尚、前述したように、インクジェットプリンター10の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過するまでの間は、インクパック70内にインクが残っていても液体室100内の負圧が解消されないことがあるため、本実施例では、供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後に、センサー136の光が遮られているか否かを検出するようになっている。
【0065】
以上に説明したように、本実施例のインクジェットプリンター10では、インクカートリッジ40内のインクが無くなったことを検出するシステム(液体検出システム)のうち、一端面がフィルム118で構成された液体室100や、フィルム118の変位を増幅させるレバー部材120は、インクカートリッジ40側に設けられているのに対して、変位を検出するセンサー136や、レバー部材120によって増幅された変位を内部のセンサー136に伝達するロッド48は、カートリッジホルダー42側に設けられており、ロッド48は、インクカートリッジ40がカートリッジホルダー42に装着されるとレバー部材120に当接する方向に付勢バネ134によって付勢されている。これにより、液体検出システムをカートリッジホルダー42側とインクカートリッジ40側とに分離可能となり、カートリッジホルダー42に内蔵された高価なセンサー136とは切り離してインクカートリッジ40の交換ができるので、センサー136をインクカートリッジ40に一体に設ける場合に比べて、インクカートリッジ40のコストを低減することが可能となる。一方、インクパック70内のインクが無くなってインクが流入しなくなることでフィルム118が変形した状態となる液体室100や、フィルム118の変位を増幅させるレバー部材120については、インクカートリッジ40側に設けてインクパック70の近傍に配置することができるので、インクパック70内のインクが無くなったことを誤差なく直ちに検出することが可能となる。
【0066】
また、本実施例のセンサー136は、フィルム118の変位を増幅させるレバー部材120を直接的に検出するのではなく、レバー部材120によって増幅された変位を伝達するロッド48を検出するようになっている。液体室100のフィルム118に接するレバー部材120には、インクが漏れて付着していることがあるところ、ロッド48を用いてレバー部材120の変位をセンサー136に伝達すれば、レバー部材120を直接的にセンサー136で検出する場合に比べて、レバー部材120に付着したインクでセンサー136が汚染されるリスクを低減できるので、センサー136の検出精度が低下することを防止可能となる。
【0067】
また、本実施例のロッド48は、付勢バネ134の力によって、レバー部材120に当接する方向に付勢されており、その付勢力を利用して、レバー部材120を液体室100のフィルム118に押し当てるようになっている。これにより、フィルム118の変位に連動するようにレバー部材120をフィルム118に向けて付勢しておく付勢部材を別途設ける必要がないので、液体検出システムの構造を簡素化することができる。
【0068】
また、前述しように、液体室100の付勢バネ108の付勢力Aと、ロッド48の付勢バネ134の付勢力Bとの関係は、レバー部材120のレバー比(軸穴122と当接部132との距離D2/軸穴122と凸部130との距離D1>1)をRとして、A≧R×Bの式を満たすように設定されており、液体室100の付勢バネ108の付勢力Aがロッド48の付勢バネ134の付勢力Bよりも大きくなっている。このため、インクパック70内にインクが残っているうちは、付勢バネ108の付勢力Aによってフィルム118を液体室100の外側に押し出して、レバー部材120を開いた状態に保持することができる。その一方で、インクパック70内のインクが無くなった際には、液体室100内が負圧になることでフィルム118が液体室100の内側に引き込まれるように変形すると、付勢バネ134の付勢力Bによってロッド48がレバー部材120をフィルム118の変形に追従させて回動させるので、レバー部材120を閉じた状態に保持することができる。
【0069】
また、前述したように、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40が装着されると、本実施例のロッド48は、レバー部材120に当接することで、付勢バネ134の力に抗して、カートリッジホルダー42の奥側に移動するようになっている。そのため、センサー136は、ロッド48の遮光部138の移動によって光の遮断状態から透過状態に変化したことに基づいて、インクカートリッジ40が装着されたことを検出することができる。このように、インクパック70内のインクの有無の検出に加えて、インクカートリッジ40が装着されたことの検出も1つのセンサー136で行うことが可能となるので、液体検出システムを搭載したインクジェットプリンター10全体として構造を簡素化することができる。
【0070】
また、前述したように、フィルム118の変位を増幅するレバー部材120には、ガイド孔124が設けられており、レバー部材120が軸穴122を中心に回動する際には、インク供給ユニット74に固定されたガイドピン128がガイド孔124に沿って移動することによって、レバー部材120の回動動作をガイドするようになっている。このようにレバー部材120の回動動作を規制することよって、レバー部材120の凸部130に接するフィルム118の変位を所定のレバー比Rで適切に増幅して、当接部132に当接するロッド48に確実に伝えることができるので、インクパック70内のインクが無くなったことを検出する精度を高めることができる。
【0071】
B.第2実施例 次に、図9から図13を用いて第2実施例に係るアダプター、液体供給システムについて説明する。図9は、図1に記載の第1実施例に係る液体消費装置としてのインクジェットプリンター10を一部改変して得られる第2実施例としてのインクジェットプリンター10である。第1の実施例と異なる部分を中心に以下に説明する。
【0072】
第2の実施例においては、第1実施例のインクカートリッジ40に替えてアダプター400がカートリッジホルダー42に装着される(図9および図10参照)。アダプター400には、外部から可撓性のインク供給管600をアダプター400の内部に導くためのインク供給管挿入穴410が設けられている。アダプター400がカートリッジホルダー42に装着された状態で、アダプター400からインク供給管600が延びているため、カートリッジ交換カバー13を閉じることはできない。そこで、第2実施例に係るインクジェットプリンター10では第1実施例のインクジェットプリンター10のカートリッジ交換カバー13は設けられていない。インク供給管600は、シリコーンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、塩化ビニルなどからなる可撓性のチューブである。
【0073】
インクジェットプリンター10に供給されるインクを貯留した外部大容量インクタンク500がインクジェットプリンター10の外部に設けられている。外部大容量インクタンク500はダンボールなどでできたケース510内部にポリエチレンなどのプラスチックからなる可撓性の外部インクパック520が収容されている。外部インクパック520には、第1実施例のインクカートリッジ40のインクパック70に収容可能なインク量よりも大容量のインクを収容することができる。外部インクパック520にはポリプロピレン等のプラスチックからなるスパウト530が外部インクパック520の内壁に対して液密に溶着されており、このスパウト530を介して外部インクパック520に貯留されたインクがインクジェットプリンター10に供給される。
【0074】
インク供給管600の一端は、スパウト530に接続されている。また、インク供給管600の他端は、後述するアダプター400のインク供給ユニット474に設けられた液体流入コネクター480に接続されている。従って、外部インクパック520に貯留されたインクは、スパウト530、インク供給管600、インク供給ユニット474、インク供給口478を介してインクジェットプリンター10に供給される。図9においては、説明を容易にするために、一のアダプター400と外部大容量インクタンク500が接続されている様子を示し、他のアダプターについては図示を省略している。しかし、実際には、図9に示した4つのアダプター400のいずれもが対応する色や対応する種類のインクを貯留した外部大容量インクタンク500に接続されている。
【0075】
次に、アダプター400の構成について説明する。図11は、アダプター400及びアダプター400内部に挿通されるインク供給管600の分解斜視図である。アダプター400は、第1実施例のインクカートリッジ40と同様に、前ケース482、後ケース484およびインク供給ユニット474から構成されている。アダプター400を構成する各部材は実施例1のインクカートリッジ40の部材と共通している。異なる部分としては、インクカートリッジ40のインクパック70の替わりに、インク供給管600が接続されていることが挙げられる。
【0076】
次に、インク供給ユニット474について詳しく説明する。図12は、第2実施例に係るインク供給ユニット474に係る分解斜視図である。第1実施例のインクカートリッジのインク供給ユニット74とほとんどの部分で共通している。しかし、第2実施例では、インクカートリッジ40のインクパック70に相当するものが無いので、インク注入口76は設けられていない。また、インク供給管600を接続するための液体流入コネクター480が設けられている点も異なる。その他の構成、特に検出機構80の構成については第1実施例と同一である。
【0077】
図13は、インク供給管600からアダプター400のインク供給ユニット474を介してインクジェットプリンター10へインクが供給される様子を説明した断面図である。第1実施例で述べたのと同様に、インクジェットプリンター10には図示しない供給ポンプが内蔵されており、アダプター400側からインクを吸入して、インクジェットプリンター10の噴射ヘッド22へインクを圧送するようになっている。図13(a)には、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動していないときの様子が示されており、図13(b)には、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動しているときの様子が示されている。これらの様子は、第1実施例におけるインクカートリッジ40のインク供給ユニット74のインク供給の様子と同じである。第1実施例ではインクパック70からインク供給ユニット74にインクが供給されるのに対し、第2実施例では、外部大容量インクタンク500に貯留されたインクがインク供給管600を介して供給される点が異なるのみである。すなわち、インクジェットプリンター10の供給ポンプが動作していないとき、および、供給ポンプが動作しているときのインクの流れ、液体室100の負圧の状況、付勢バネ108・フィルム118の変形の状況等は、第1の実施例の場合と同じである。
【0078】
第2実施例において、外部大容量インクタンク500のインクの有無の検出について詳細な説明は省略するが、第1実施例の「A−4.インクカートリッジ内のインクの有無の検出」と同様の方法により行うことができる。すなわち、外部大容量インクタンク500のインクが無くなると、外部大容量インクタンク500から液体室100にインクが流入せず、液体室100の負圧が解消されないので、図8(c)に示すようにフィルム118が液体室100の内側に引き込まれた状態のままとなる。そして、第1実施例で説明したように、ロッド48の遮光部138がセンサー136に挿入されて、センサー136は光が遮られた状態となり、外部大容量インクタンク500内のインクが無くなったことを検出できる。
【0079】
上記の通り、第2実施例においても第1実施例と同様に外部大容量インクタンク500内のインクの有無が検出されるので、第2実施例においても第1実施例と同様の効果を得ることができる。ここで、アダプター400は本発明の取付部材に相当し、アダプター400、インク供給管600、外部大容量インクタンク500が本発明の液体供給システムに相当する。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0081】
例えば、前述した実施例では、カートリッジホルダー42に内蔵された供給ポンプを作動させてインクカートリッジ40のインク供給口78からインクを吸引するようになっていた。しかし、インクパック70を外部から加圧して、インクパック70内のインクを圧送するようにしてもよい。尚、この場合は、液体室100の付勢バネ108は、圧縮バネではなく、フィルム118を液体室100の内側に引き込む方向に付勢する引張バネとしておけばよい。インクパック70内にインクが残っているうちは、インクパック70から圧送されるインクの圧力によってフィルム118は液体室100の外側に押し出される。一方、インクパック70内のインクが無くなると、インクが供給されず液体室100の圧力が低下するので、フィルム118は付勢バネ108の力によって液体室100の内側に引き込まれる。このようなフィルム118の変位をレバー部材120で増幅するとともに、ロッド48を用いてカートリッジホルダー42内のセンサー136に伝達することによって、前述した実施例と同様に、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することが可能となる。
【0082】
さらに、前述した実施例では、インク供給口78からインクを吸引してから一定期間が経過してもセンサー136の光が遮られていることに基づいて、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することとしていた。しかし、センサー136の配置を変更して、これとは逆に、インク供給口78からインクを吸引してから一定期間が経過した後においてセンサー136が光を透過している状態にあることに基づいて、インクパック70内のインクが無くなったことを検出するようにしてもよい。この場合においては、インク供給口78からインクを吸引してから一定期間が経過した際に、センサー136の光が遮られている場合には、インクパック70内にインクが残っていることになる。
【符号の説明】
【0083】
10…インクジェットプリンター、 20…キャリッジ、 22…噴射ヘッド、
40…インクカートリッジ、 42…カートリッジホルダー、 44…挿入孔、
46…インク取入針、 48…ロッド、 70…インクパック、
74…インク供給ユニット、 76…インク注入口、 78…インク供給口、
80…インク検出機構、 100…液体室、 102…流入口、
104…流出口、 106…逆止弁、 108…付勢バネ、
110…突起、 112…受圧板、 118…フィルム、
120…レバー部材、 122…軸穴、 124…ガイド孔、
126…軸ピン、 128…ガイドピン、 130…凸部、
132…当接部、 134…付勢バネ、 136…センサー、
138…遮光部、 140…流入通路、 142…流出通路、
400…アダプター、 410…インク供給管挿入穴、
474…インク供給ユニット、 478…インク供給口、
480…液体流入コネクター、 500…外部大容量インクタンク、
510…ケース、 520…外部インクパック、 530…スパウト、
インク供給管…600。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置に液体を供給する液体容器内の液体の有無を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置の一例として、インクなどの液体を噴射ヘッドから噴射することで画像等を印刷する、いわゆるインクジェットプリンターが知られている。噴射ヘッドから噴射される液体は、液体カートリッジなどの専用の液体容器に収容されており、接続チューブなどを介して噴射ヘッドに供給される。そして、液体カートリッジ内の液体が無くなると、カートリッジごと新しいものに交換するのが一般的である。
【0003】
こうした液体消費装置では、液体カートリッジ内の液体が無くなって噴射ヘッドに液体が供給されない状態で噴射動作が行われると、噴射ヘッドの損傷を招くおそれがある。そこで、液体カートリッジ内の液体が無くなったことを検出する検出システムを搭載したカートリッジが提案されている(特許文献1)。検出システムが液体カートリッジ自体に搭載されているので、カートリッジ内の液体が無くなったことを迅速に検出することができる。
【0004】
また、液体が無くなったことを検出するシステムは、各種提案されている。例えば、噴射ヘッドとともにキャリッジ上に搭載され、キャリッジ以外の移動のないところに設置されたメインタンクからチューブを介してインクが供給されるサブタンクにおいて、サブタンク内のインクが少なくなった状態を検知する検出システムが提案されている(特許文献2)。このサブタンクでは、壁面に開口部を有するケースの当該開口部が可撓性の変形可能部材で塞がれ、その変形可能部材はケース内部から圧縮ばねによって外方に押圧付勢されている。また、変形可能部材に板状部材(レバー)が接するように付勢されており、インクの消費によって生じるサブタンク内の負圧によってサブタンク内側に引き込まれる変形可能部材に追従して板状部材(レバー)が回転する。この回転に伴い、板状部材(レバー)の自由端側が光学センサーによって検知されると、サブタンク内のインクが少なくなったと判断されて、供給ポンプが作動されてサブタンク内にインクが補充される(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−307894号公報
【特許文献2】特開2007−136807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のように検出システムを液体カートリッジ自体に搭載しようとすると、カートリッジの交換の度に高価なセンサーも含めて交換することになるため、カートリッジのコストが増大してしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に提案されている検出システムでは、センサーでレバーを直接的に検出しているので、液体室のダイアフラムと接するレバーにインクなどの液体が漏れて付着すると、センサーまで汚染されるおそれがあり、その結果、液体が無くなったことを検出する精度が低下するおそれがあるという問題があった。
【0008】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、カートリッジ式の液体容器のコストを増大させることなく、センサーが液体で汚染されて検出精度が低下することを防止可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体検出システムは次の構成を採用した。すなわち、
液体消費装置に対して着脱可能に構成された液体容器内の液体の有無を検出する液体検出システムであって、
前記液体容器には、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられ、第1接点で接する前記変形部の変位を所定のレバー比で増幅して第2接点に伝達するレバー部材と
が設けられており、
前記液体消費装置には、
前記レバー部材の前記第2接点に当接して、該第2接点の変位を前記液体消費装置の内部に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材によって伝達された変位を検出することで、前記液体容器内の液体の有無を検出するセンサーと、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着されると前記レバー部材に当接する方向に前記伝達部材を付勢し、当該付勢によって該レバー部材を前記変形部に押し当てる第2付勢部材と
が設けられていることを要旨とする。
【0010】
このような本発明の液体検出システムにおいては、液体容器の液体収容部から液体が流入する液体室の一部に変形可能な変形部が設けられており、この変形部には、液体消費装置への液体の供給に伴う液体室の圧力変化による変形部の変形とは逆向きに第1付勢部材の付勢力が作用している。液体収容部内の液体が無くなると、液体室の液体の圧力が変化することで変形部が変形し、その変形部の変位はレバー部材によって所定のレバー比で増幅される。また、第2付勢部材で付勢されてレバー部材に当接する伝達部材が、増幅された変位をセンサーに伝達することから、センサーは、伝達部材によって伝達された変位を検出することで、液体容器内の液体の有無を検出することができる。そして、本発明の液体検出システムでは、液体収容部、液体室、第1付勢部材、およびレバー部材は、液体容器側に設けられているのに対して、伝達部材、第2付勢部材、およびセンサーは、液体消費装置側に設けられており、液体容器を液体消費装置に装着すると、第2付勢部材の付勢力によって伝達部材がレバー部材に当接するとともに、レバー部材を変形部に押し当てるようになっている。
【0011】
上述した構成によれば、液体検出システムを液体消費装置側と液体容器側とに分離可能となり、液体消費装置の内部に設けられたセンサーとは切り離して液体容器を交換することができるので、センサーまでを液体容器に一体に設ける場合に比べて、液体容器のコストを低減することが可能となる。その一方で、液体収容部内の液体が無くなったことを反映して変形部が変形する液体室や、変形部の変位を増幅するレバー部材については、液体容器側に設けて液体収容部の近傍に配置しておくことができるので、液体容器の液体収容部に収容された液体が無くなったことを直ちに検出することが可能となる。
【0012】
また、伝達部材は、第2付勢部材の力によってレバー部材に当接する方向に付勢されており、その付勢力を利用して、レバー部材を液体室の変形部に押し当てるようになっている。これにより、液体室の変形部の変形に従って回動するようにレバー部材を付勢しておく付勢部材を別途設ける必要がないので、液体消費装置側と液体容器側とに分離可能な液体検出システムの構成を簡素化することができる。
【0013】
加えて、本発明の液体検出システムでは、センサーがレバー部材の変位を直接的に検出するのではなく、伝達部材によって伝達された変位を検出することから、センサーの検出精度の低下を防止することができる。すなわち、液体室の変位部に接するレバー部材には、液体が漏れて付着していることがある。そこで、伝達部材を用いてレバー部材の変位をセンサーまで伝達するようにすれば、レバー部材を直接的にセンサーで検出する場合に比べて、レバー部材に付着した液体でセンサーが汚染されるリスクを低減できる。その結果、センサーの検出精度の低下を防止することが可能となる。
【0014】
さらに、新たな液体容器を液体消費装置に装着する際には、伝達部材は、レバー部材に当接することにより、第2付勢部材の付勢力に抗して移動する。そのため、センサーは、このときの伝達部材の変位を検出することで、新たな液体容器の装着の有無を検出することが可能である。このように、1つのセンサーを、液体容器内の液体の有無の検出だけでなく、液体容器の装着の有無の検出にも兼用することができるので、液体検出システムを搭載した液体消費装置の装置構成を全体として簡略化することが可能となる。
【0015】
上述した前記液体容器は、前記レバー部材が前記変形部の変位によって回動する際に、前記レバー部材を案内するガイド部を備えているようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、レバー部材の回動動作がガイド部によって規制されるので、レバー部材の第1接点に接する変形部の変位を所定のレバー比で適切に増幅して、第2接点に当接する伝達部材に確実に伝達することができる。その結果、液体検出システムによって液体容器内の液体の有無を検出する精度を高めることが可能となる。
【0017】
また、こうした本発明の液体検出システムは、次のようにしてもよい。先ず、第1付勢部材は、レバー部材と接する方向に液体室の変形部を付勢し、その付勢力によって第2付勢部材とは逆向きにレバー部材を回動させる。そして、第1付勢部材の付勢力は、第2付勢部材の付勢力よりも大きく設定されていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、液体収容部内に液体があるときには、第1付勢部材の付勢力によってレバー部材を第2付勢部材の付勢力に抗して回動させて、その状態(レバー部材が開いた状態)を保持することができる。一方、液体収容部内の液体が無くなって液体室の液体の圧力が変化することにより、第1付勢部材の付勢力に抗して変形部が変形すると、第2付勢部材の付勢力によってレバー部材を変形部の変形に従って回動させ、その状態(レバー部材が閉じた状態)を保持することができる。
【0019】
上述した本発明の液体検出システムでは、特に、第2付勢部材の付勢力に対する第1付勢部材の付勢力の比率が、レバー部材の所定のレバー比以上に設定されていてもよい。
【0020】
本発明の他の観点によれば、以下の構成をとる。
液体消費装置に対して着脱可能に構成された液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられたレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、
前記液体消費装置への装着時に、
前記液体消費装置に設けられ変位が前記液体消費装置に設けられたセンサーにより検出可能な伝達部材と接し、かつ、前記レバー部材の第1接点で接する前記変形部の変位が所定のレバー比に増幅される第2の接点を有する、液体容器。
【0021】
このような構成の液体容器を上述の液体検出システムに係る液体噴射装置に装着して用いれば、上述の液体検出システムと同様の効果を得ることができる。
【0022】
上述の液体容器において、上述の液体消費装置の伝達部材を前記第2の接点に案内する貫通孔が設けるようにしてもよい。
【0023】
このようにすることで、貫通孔によって液体消費装置の伝達部材を案内することができ、検出精度が向上する。
【0024】
本発明の他の観点によれば、以下の構成をとる。
液体消費装置に対して着脱可能に構成された取付部材であって、
外部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられ、第1接点で接する前記変形部の変位を所定のレバー比で増幅して第2の接点に伝達するレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、
前記液体消費装置への装着時に、
前記液体消費装置に設けられ変位が前記液体消費装置に設けられたセンサーにより検出可能な伝達部材と接し、かつ、前記レバー部材の第1接点で接する前記変形部の変位が所定のレバー比に増幅される第2の接点を有する、取付部材。
【0025】
このような構成によれば、上述した液体容器と同様の効果を有する。
【0026】
上述の取付部材は、外部から前記液体室に流入する液体を輸送する液体輸送管が接続される接続部を備えることとしても良い。接続部を設けることで液体輸送管の接続が容易となる。
【0027】
本発明の他の観点として、上述の取付部材を用いて以下の構成をとることができる。
液体貯留部と、
当該液体貯留部に接続され、液体貯留部に貯留された液体を輸送する液体輸送管と、
当該液体輸送管と接続される上述の取付部材とからなる液体供給システム。
【0028】
このような構成によれば、液体消費装置の外部に設けられる液体貯留部から液体供給管を介して液体消費装置に液体供給する態様において、上述の液体検出システム及び上述の液体容器と同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて第1実施例に係る液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】カートリッジホルダーにインクカートリッジを装着する様子を示した説明図である。
【図3】第1実施例のインクカートリッジの構成を示した分解斜視図である。
【図4】第1実施例のインクカートリッジに搭載されたインク検出機構の構成を示した分解斜視図である。
【図5】インクパック内のインクがインクジェットプリンターに供給される様子を示した断面図である。
【図6】第1実施例のインクカートリッジに設けられたレバー部材の構成を示した説明図である。
【図7】第1実施例のカートリッジホルダーに設けられたロッドおよびセンサーの構成を示した斜視図である。
【図8】インクカートリッジ内のインクの有無を、カートリッジホルダーの内部に設けられたセンサーによって検出する様子を示した説明図である。
【図9】第2実施例に係る液体消費装置としてのインクジェットプリンターの大まかな構成を示した説明図である。
【図10】カートリッジホルダーに第2実施例に係るアダプターを装着する様子を示した図である。
【図11】第2実施例のアダプターの構成を示した分解斜視図である。
【図12】第2実施例のアダプターに搭載されたインク検出機構の構成を示した分解斜視図である。
【図13】インク供給管を介してインクが液体供給装置に供給される様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.第1実施例:
A−1.インクジェットプリンターの構成:
A−2.インクカートリッジの構成:
A−3.ロッドおよびセンサーの構成:
A−4.インクカートリッジ内のインクの有無の検出:
B.第2実施例
【0031】
A.第1実施例:
A−1.インクジェットプリンターの構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。図示したインクジェットプリンター10は、略箱形の外観形状をしており、前面のほぼ中央には前面カバー11が設けられ、その左隣には複数の操作ボタン15が設けられている。前面カバー11は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷媒体としての印刷用紙2が排出される細長い排紙口12が現れる。また、インクジェットプリンター10の背面側には、図示しない給紙トレイが設けられており、給紙トレイに印刷用紙2をセットして操作ボタン15を操作すると、給紙トレイから印刷用紙2が給紙されて、内部で印刷用紙2の表面に画像等が印刷された後、排紙口12から印刷用紙2が排出されるようになっている。
【0032】
また、インクジェットプリンター10の上面側には上面カバー14が設けられている。上面カバー14は、奥側で軸支されており、手前側を持ち上げて上面カバー14を開くと、インクジェットプリンター10の内部の状態を確認したり、あるいはインクジェットプリンター10の修理などを行ったりすることが可能となっている。
【0033】
インクジェットプリンター10の内部には、主走査方向に往復動しながら印刷用紙2上にインクドットを形成するキャリッジ20や、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30などが設けられている。キャリッジ20の底面側(印刷用紙2に向いた側)には、複数の噴射ノズルが形成された噴射ヘッド22が搭載されており、噴射ノズルから印刷用紙2に向かってインクを噴射して画像等の印刷を行う。本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを用いてカラー画像を印刷することが可能であり、このことと対応して、キャリッジ20に搭載された噴射ヘッド22には、インクの種類毎に噴射ノズルが設けられている。
【0034】
噴射ヘッド22に形成された噴射ノズルから噴射するインクは、インクカートリッジ40と呼ばれる専用容器に収容されている。インクカートリッジ40は、キャリッジ20とは別の位置に設けられたカートリッジホルダー42に装着され、インクカートリッジ40内のインクは、カートリッジホルダー42およびインクチューブ24を介してキャリッジ20の噴射ヘッド22に供給される。本実施例のインクジェットプリンター10では、前面カバー11の右隣に、前面カバー11と同様に下端側で軸支されたカートリッジ交換用カバー13が設けられており、カートリッジ交換用カバー13の上端側を手前に倒すと、カートリッジホルダー42が現れて、インクカートリッジ40を着脱可能となっている。カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する様子や、インクカートリッジ40の詳細な構成については、後ほど別図を用いて説明する。
【0035】
尚、本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを使用することから、インクカートリッジ40もインクの種類毎に設けられている。ぞれぞれのインクカートリッジ内のインクは、インクの種類毎に設けられたインクチューブ24を介して、噴射ヘッド22の対応する噴射ノズルに供給される。
【0036】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動するための駆動モーター34などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジ20に固定されており、タイミングベルト32を駆動すると、主走査方向に延設された図示しないガイドレールによってガイドしながら、キャリッジ20を主走査方向に往復動させることができる。
【0037】
また、キャリッジ20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションには、正常に印刷可能なようにメンテナンスを行うメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、噴射ヘッド22の底面側(印刷用紙2に向いた側)で噴射ノズルが形成されている面(ノズル面)に押し付けられて、噴射ノズルを取り囲むように閉空間を形成するキャップ部材50や、噴射ヘッド22のノズル面に押し付けるためにキャップ部材50を昇降させる昇降機構(図示せず)や、キャップ部材50が噴射ヘッド22のノズル面に押し付けられることで形成される閉空間に負圧を導入する吸引ポンプ(図示せず)などから構成されている。
【0038】
更に、インクジェットプリンター10の内部には、印刷用紙2を紙送りするための図示しない紙送機構や、インクジェットプリンター10の全体の動作を制御する制御部60なども搭載されている。キャリッジ20を往復動させる動作や、印刷用紙2を紙送りする動作や、噴射ノズルからインクを噴射する動作や、正常に印刷可能なようにメンテナンスを実行する動作などは、全て制御部60によって制御されている。
【0039】
図2は、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する様子を示した説明図である。図示されているように、カートリッジホルダー42には、手前側から奥側に向けてインクカートリッジ40を挿入する挿入孔44が、インクカートリッジ40毎に設けられている。この挿入孔44の奥側の面には、インクカートリッジ40からインクを取り入れるためのインク取入針46が手前側に向けて立設されている。また、インクカートリッジ40の背面には、図示しないインク供給口が設けられている。カートリッジホルダー42の挿入孔44にインクカートリッジ40を奥側まで挿入して装着すると、インク取入針46がインク供給口に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。
【0040】
インクジェットプリンター10には、図示しないインク通路や供給ポンプが内蔵されている。インク取入針46から取り入れられたインクは、インク通路によって、カートリッジホルダー42の背面側に接続されたインクチューブ24(図1参照)に導かれる。また、インク通路の途中に設けられた供給ポンプ(例えば、ダイアフラムポンプ)は、インクカートリッジ40内のインクを吸入して、キャリッジ20内に設けられた図示しないサブタンクに向けてインクを圧送するようになっている。尚、前述したように本実施例のインクジェットプリンター10は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4色分のインクカートリッジ40を搭載しており、インクカートリッジ40内のインクは、それぞれ独立して噴射ヘッド22に供給される。このため、カートリッジホルダー42の内部には、インク通路や供給ポンプがインクカートリッジ40毎に設けられている。
【0041】
また、カートリッジホルダー42の挿入孔44の奥側の面からは、ロッド48が手前側に向けて突出している。詳しくは後述するが、カートリッジホルダー42の内部には、インクカートリッジ40内のインクの有無を検出するためのセンサーが設けられており、ロッド48は、インクカートリッジ40内の状態をセンサーに伝達する役割を果たしている。尚、ロッド48およびセンサーの構成については、後ほど詳しく説明する。
【0042】
A−2.インクカートリッジの構成 :
図3は、本実施例のインクカートリッジ40の構成を示した分解斜視図である。図示されているように、インクカートリッジ40は、インクを収容するインクパック70と、インクパック70を収納するカートリッジケース72などから構成されている。インクパック70は、インクなどの液体を通さないフィルムを袋状に張り合わせて、インク供給ユニット74を挟んだ状態で袋の開口部を閉じることで形成されている。尚、本実施例のインクカートリッジ40は、本発明の「液体容器」に相当しており、本実施例のインクパック70は、本発明の「液体収容部」に相当している。
【0043】
インク供給ユニット74には、インクカートリッジ40の製造段階でインクパック70にインクを注入するためのインク注入口76や、前述したカートリッジホルダー42側のインク取入針46が挿入されるインク供給口78や、インクパック70内のインクの有無を検出するためのインク検出機構80などが設けられている。尚、インク検出機構80の詳細な構成については後述する。
【0044】
インクパック70を収納するカートリッジケース72は、前ケース82および後ケース84から構成されている。後ケース84は、箱形状に形成されており、内部にインクパック70の袋部分を収納可能となっている。一方、前ケース82は、インクパック70のインク供給ユニット74を覆うとともに、後ケース84と嵌合して開口部を封じる(蓋をする)部材である。また、前ケース82には、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した際にカートリッジホルダー42側のインク取入針46が差し込まれる取入針用貫通孔86と、ロッド48が差し込まれるロッド用貫通孔88とが設けられている。
【0045】
図4は、本実施例のインクカートリッジ40に搭載されたインク検出機構80の構成を示した分解斜視図である。尚、図4では、インク供給口78を鉛直上方に向けた状態で、上方からインクパック70のインク検出機構80を見た様子を示している。図示されているように、インク検出機構80には、略円筒形状の液体室100が設けられており、この液体室100には、インクパック70内のインクが流入する流入口102や、インク供給口78に向けてインクが流出する流出口104が開口している。また、液体室100は、可撓性の材料で形成されたフィルム118によって上端面が覆われている。
【0046】
液体室100の内部には、流入口102から液体室100に流入したインクが逆流するのを阻止する逆止弁106や、フィルム118を液体室100の外側に向けて付勢する付勢バネ108などが設けられている。付勢バネ108は、液体室100の底面から上方に向けて立設された突起110に嵌合して位置決めされ、圧縮した状態で設けられている。また、付勢バネ108とフィルム118との間には、受圧板112が挿入されている。この受圧板112は、付勢バネ108の付勢力をフィルム118に伝える受圧部114と、逆止弁106の移動を規制する規制部116とを連結して一体に構成されている。受圧板112の規制部116を液体室100の流入口102に嵌め込むと、逆止弁106が上方へ移動するのが規制されるとともに、受圧部114が付勢バネ108とフィルム118との間に挟まれた状態で位置決めされる。尚、本実施例では、受圧部114と規制部116とが一体に構成されているが、別体に構成されていてもよい。
【0047】
また、液体室100の一端面(図中では上端面)を構成するフィルム118に液体室100の外側から接するレバー部材120が設けられている。レバー部材120は、一端側に軸穴122が設けられており、液体室100の外側面に設けられた軸ピン126と嵌合して、回動可能に軸支される。一方、レバー部材120の他端側にはガイド孔124が設けられており、インク供給ユニット74に固定されたガイドピン128がこのガイド孔124に差し通されて、レバー部材120の回動動作をガイドするようになっている。さらに、レバー部材120の上面(フィルム118に接する面とは反対側の面)には、前述したカートリッジホルダー42側のロッド48の先端が当接する当接部132としての凸部が設けられている。このような構成のインク検出機構80を備えたインクパック70では、次のようにしてインクパック70内のインクがカートリッジホルダー42に供給される。
【0048】
図5は、インクパック70内のインクがインクジェットプリンター10に供給される様子を示した断面図である。尚、図5では、図示が煩雑になるのを避けるため、レバー部材120や受圧板112の規制部116などについては図示が省略されている。前述したように、インクジェットプリンター10には図示しない供給ポンプが内蔵されており、インクカートリッジ40側からインクを吸入して、キャリッジ20に向けてインクを圧送するようになっている。図5(a)には、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動していないときの様子が示されており、図5(b)には、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動しているときの様子が示されている。
【0049】
前述しように、液体室100内には付勢バネ108が設けられており、フィルム118を液体室100の外側に向けて付勢するようになっている。図5(a)に示したように、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動していないときには、液体室100の容積を増加させるように付勢バネ108がフィルム118を押し出しており、液体室100の容積の増加に伴い、インクパック70と流入口102とを接続する流入通路140を通ってインクが液体室100に流入する。流入口102には、逆止弁106が設けられており、液体室100へのインクの流入を許容して、逆流を阻止するようになっている。尚、図中の破線の矢印は、インクの流れを表している。
【0050】
インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動すると、インク供給口78からインクが吸引されて、液体室100内のインクは、流出口104とインク供給口78とを接続する流出通路142を通ってカートリッジホルダー42に供給される。そして、本実施例のインクカートリッジ40では、流出通路142の内径が流入通路140の内径よりも大きく設定されていることから、液体室100からのインクの流出に対して、液体室100へのインクの流入が追い付かず、液体室100内は負圧となる。そのため、図5(b)に示したように、付勢バネ108の力に抗して、フィルム118が液体室100の内側に引き込まれるように変形する。
【0051】
この液体室100内に発生した負圧は、インクパック70内のインクが流入通路140を通って液体室100に流入することによって徐々に解消される。すると、付勢バネ108の力によって、フィルム118は再び液体室100の外側に押し出されて、液体室100の容積が復元するので、インクジェットプリンター10の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後は、図5(a)に示した状態に復帰する。そして、インクジェットプリンター10の供給ポンプが再び作動すると、液体室100内は負圧となり、図5(b)に示したようにフィルム118が液体室100の内側に引き込まれた状態となる。尚、本実施例の付勢バネ108は、本発明の「第1付勢部材」に相当している。
【0052】
こうして液体室100を介してインクパック70内のインクをカートリッジホルダー42に供給するうちにインクパック70内のインクが無くなると、液体室100内が負圧であっても液体室100にインクパック70からインクが流入しなくなるので、インクジェットプリンター10の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後も、液体室100内の負圧は解消されず、図5(b)に示したようにフィルム118は液体室100の内側に引き込まれた状態のままとなる。
【0053】
このように本実施例のインクカートリッジ40では、インクパック70内のインクが無くなると、液体室100の一端面を構成するフィルム118が液体室100の内側に引き込まれるように変形した状態のままとなることから、このようなフィルム118の変位を検出することによって、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することができる。ただし、本実施例のフィルム118の変位は小さいので、次のようなレバー部材120を用いて変位を増幅するようになっている。
【0054】
図6は、本実施例のインクカートリッジ40に設けられたレバー部材120の構成を示した説明図である。図示されているように、レバー部材120の一端側には軸穴122が設けられており、液体室100の外側面に設けられた軸ピン126(図4参照)が軸穴122に嵌め込まれた状態で、この軸穴122を中心にレバー部材120は回動可能となっている。また、レバー部材120の他端側にはガイド孔124が設けられており、インク供給ユニット74に固定されたガイドピン128(図4参照)がガイド孔124に差し通されている。レバー部材120が回動する際には、ガイドピン128がガイド孔124に沿って移動することによってレバー部材120の回動動作をガイドすることから、レバー部材120の回動(変位)を高い精度で規制することができる。尚、本実施例のガイド孔124およびガイドピン128は、本発明の「ガイド部」に相当している。
【0055】
また、レバー部材120のフィルム118と向かい合う側の面には、フィルム118に接する半球体状の凸部130が設けられており、レバー部材120のフィルム118と向かい合う側とは反対側の面には、カートリッジホルダー42側に設けられたロッド48の先端が当接する凸部である当接部132が設けられている。そして、レバー部材120の支点となる軸穴122から当接部132までの距離D2は、軸穴122から凸部130までの距離D1よりも大きく設定されていることから、凸部130に接するフィルム118が変形すると、その変位はレバー比R(=D2/D1>1,本実施例では3.1)で増幅されて、当接部132に伝わることになる。このようにレバー部材120で増幅されたフィルム118の変位は、前述したようにカートリッジホルダー42の内部に設けられたセンサーにロッド48を用いて伝達される。
【0056】
A−3.ロッドおよびセンサーの構成 :
図7は、本実施例のカートリッジホルダー42に設けられたロッド48およびセンサー136の構成を示した斜視図である。尚、図7では、図2に示したカートリッジホルダー42の奥側からロッド48およびセンサー136を見た様子を示している。図示されているように、ロッド48には付勢バネ134が取り付けられており、カートリッジホルダー42に装着されるインクカートリッジ40に向けて(図中の白抜きの矢印の方向に)ロッド48を付勢している。尚、本実施例のロッド48は、本発明の「伝達部材」に相当しており、本実施例の付勢バネ134は、本発明の「第2付勢部材」に相当している。
【0057】
また、本実施例のセンサー136には、凹字形状のいわゆる透過型フォトセンサーが用いられている。このセンサー136には、図示しない発光部と受光部とが対向して設けられており、発光部が発する光を受光部が受けるようになっている。尚、図中の破線の矢印は、光の透過方向を示している。
【0058】
そして、ロッド48のインクカートリッジ40を向いた側とは反対側の端部には、遮光部138が設けられている。ロッド48が付勢バネ134の力によってインクカートリッジ40側に移動すると、遮光部138がセンサー136の発光部と受光部との間に挿入されて、発光部からの光を遮る。その結果、センサー136の受光部では、発光部からの光を受けられなくなるので、ロッド48の位置が変化したことを検出することができる。尚、本実施例のセンサー136には、透過型フォトセンサーが用いられているが、ロッド48の変位を検出できるものであればよく、フォトセンサーに限定されるものではない。
【0059】
A−4.インクカートリッジ内のインクの有無の検出 :
図8は、インクカートリッジ40内のインクの有無を、カートリッジホルダー42の内部に設けられたセンサー136によって検出する様子を示した説明図である。先ず、図8(a)には、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する前の状態が示されている。前述したように、カートリッジホルダー42側に設けられたロッド48には、付勢バネ134が取り付けられており、ロッド48をインクカートリッジ40に向けて付勢している。インクカートリッジ40を装着していないときには、付勢バネ134の力によってロッド48がインクカートリッジ40側に移動するので、ロッド48の遮光部138がセンサー136の発光部と受光部との間に挿入されて(図7参照)、発光部からの光を遮った状態となっている。
【0060】
そして、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着すると、図8(b)に示すように、インクカートリッジ40側に設けられたレバー部材120の当接部132にロッド48の先端が当接することによって、付勢バネ134の力に抗して、ロッド48はカートリッジホルダー42の奥側に移動する。すると、ロッド48の遮光部138がセンサー136から離れるので、センサー136は光を透過した状態になる。このように、センサー136は、ロッド48の遮光部138の移動により光の遮断状態から透過状態に変化したことに基づいて、インクカートリッジ40が装着されたことを検出することが可能である。
【0061】
ここで、前述したように、ロッド48が当接するインクカートリッジ40側のレバー部材120は、液体室100の一端面を構成するフィルム118の変位を、所定のレバー比R(=D2/D1>1,図6参照)で増幅してロッド48に伝えるようになっている。また、レバー部材120の凸部130に接するフィルム118は、液体室100の内部に設けられた付勢バネ108によって、液体室100の外側に向けて付勢されている。そして、本実施例では、液体室100の付勢バネ108の付勢力Aと、ロッド48の付勢バネ134の付勢力Bとの関係が、A≧R×Bの式を満たすように設定されている。このように、液体室100の付勢バネ108の付勢力Aは、ロッド48の付勢バネ134の付勢力Bよりも大きく設定されていることから、図8(b)に示したように、付勢バネ108の付勢力Aによってフィルム118が液体室100の外側に押し出され、レバー部材120は開いた状態に保持される。また、レバー部材120に当接するロッド48は、付勢バネ134の付勢力Bに抗して、カートリッジホルダー42の奥側に押し戻された状態(センサー136が光を透過した状態)となる。
【0062】
また、図5を用いて前述したように、カートリッジホルダー42の内部に設けられた供給ポンプが作動して、インクカートリッジ40のインク供給口78からインクが吸引されると、液体室100内は負圧になるので、付勢バネ108の力に抗して、フィルム118は液体室100の内側に引き込まれるように変形する。このとき、インクパック70内にインクが残っていれば、インクパック70から液体室100にインクが流入することよって、液体室100内の負圧は解消されるので、フィルム118は再び液体室100の外側に押し出されて、カートリッジホルダー42の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後は、図8(b)に示したように、センサー136は光を透過した状態となっている。
【0063】
一方、インクパック70内のインクが無くなると、インクパック70から液体室100にインクが流入せず、液体室100内の負圧は解消されないので、図8(c)に示すようにフィルム118は、液体室100の内側に引き込まれた状態のままとなる。このフィルム118とレバー部材120の凸部130とは接着固定されていないものの、付勢バネ134の力によってレバー部材120に当接する方向に付勢されているロッド48が、その付勢力を利用して、レバー部材120をフィルム118の変形に追従させて回動させるので、レバー部材120は閉じた状態に保持される。また、レバー部材120の凸部130に接するフィルム118の変位は小さいものの、その変位が当接部132において所定のレバー比R(=D2/D1>1,図6参照)で増幅される。その結果、ロッド48がインクカートリッジ40側に移動して、ロッド48の遮光部138がセンサー136に挿入されるので、センサー136は光が遮られた状態となる。このように、センサー136は、ロッド48の遮光部138によって光が遮られたこと(ロッド48が移動したこと)に基づいて、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することができる。
【0064】
尚、前述したように、インクジェットプリンター10の供給ポンプが停止してから所定の時間が経過するまでの間は、インクパック70内にインクが残っていても液体室100内の負圧が解消されないことがあるため、本実施例では、供給ポンプが停止してから所定の時間が経過した後に、センサー136の光が遮られているか否かを検出するようになっている。
【0065】
以上に説明したように、本実施例のインクジェットプリンター10では、インクカートリッジ40内のインクが無くなったことを検出するシステム(液体検出システム)のうち、一端面がフィルム118で構成された液体室100や、フィルム118の変位を増幅させるレバー部材120は、インクカートリッジ40側に設けられているのに対して、変位を検出するセンサー136や、レバー部材120によって増幅された変位を内部のセンサー136に伝達するロッド48は、カートリッジホルダー42側に設けられており、ロッド48は、インクカートリッジ40がカートリッジホルダー42に装着されるとレバー部材120に当接する方向に付勢バネ134によって付勢されている。これにより、液体検出システムをカートリッジホルダー42側とインクカートリッジ40側とに分離可能となり、カートリッジホルダー42に内蔵された高価なセンサー136とは切り離してインクカートリッジ40の交換ができるので、センサー136をインクカートリッジ40に一体に設ける場合に比べて、インクカートリッジ40のコストを低減することが可能となる。一方、インクパック70内のインクが無くなってインクが流入しなくなることでフィルム118が変形した状態となる液体室100や、フィルム118の変位を増幅させるレバー部材120については、インクカートリッジ40側に設けてインクパック70の近傍に配置することができるので、インクパック70内のインクが無くなったことを誤差なく直ちに検出することが可能となる。
【0066】
また、本実施例のセンサー136は、フィルム118の変位を増幅させるレバー部材120を直接的に検出するのではなく、レバー部材120によって増幅された変位を伝達するロッド48を検出するようになっている。液体室100のフィルム118に接するレバー部材120には、インクが漏れて付着していることがあるところ、ロッド48を用いてレバー部材120の変位をセンサー136に伝達すれば、レバー部材120を直接的にセンサー136で検出する場合に比べて、レバー部材120に付着したインクでセンサー136が汚染されるリスクを低減できるので、センサー136の検出精度が低下することを防止可能となる。
【0067】
また、本実施例のロッド48は、付勢バネ134の力によって、レバー部材120に当接する方向に付勢されており、その付勢力を利用して、レバー部材120を液体室100のフィルム118に押し当てるようになっている。これにより、フィルム118の変位に連動するようにレバー部材120をフィルム118に向けて付勢しておく付勢部材を別途設ける必要がないので、液体検出システムの構造を簡素化することができる。
【0068】
また、前述しように、液体室100の付勢バネ108の付勢力Aと、ロッド48の付勢バネ134の付勢力Bとの関係は、レバー部材120のレバー比(軸穴122と当接部132との距離D2/軸穴122と凸部130との距離D1>1)をRとして、A≧R×Bの式を満たすように設定されており、液体室100の付勢バネ108の付勢力Aがロッド48の付勢バネ134の付勢力Bよりも大きくなっている。このため、インクパック70内にインクが残っているうちは、付勢バネ108の付勢力Aによってフィルム118を液体室100の外側に押し出して、レバー部材120を開いた状態に保持することができる。その一方で、インクパック70内のインクが無くなった際には、液体室100内が負圧になることでフィルム118が液体室100の内側に引き込まれるように変形すると、付勢バネ134の付勢力Bによってロッド48がレバー部材120をフィルム118の変形に追従させて回動させるので、レバー部材120を閉じた状態に保持することができる。
【0069】
また、前述したように、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40が装着されると、本実施例のロッド48は、レバー部材120に当接することで、付勢バネ134の力に抗して、カートリッジホルダー42の奥側に移動するようになっている。そのため、センサー136は、ロッド48の遮光部138の移動によって光の遮断状態から透過状態に変化したことに基づいて、インクカートリッジ40が装着されたことを検出することができる。このように、インクパック70内のインクの有無の検出に加えて、インクカートリッジ40が装着されたことの検出も1つのセンサー136で行うことが可能となるので、液体検出システムを搭載したインクジェットプリンター10全体として構造を簡素化することができる。
【0070】
また、前述したように、フィルム118の変位を増幅するレバー部材120には、ガイド孔124が設けられており、レバー部材120が軸穴122を中心に回動する際には、インク供給ユニット74に固定されたガイドピン128がガイド孔124に沿って移動することによって、レバー部材120の回動動作をガイドするようになっている。このようにレバー部材120の回動動作を規制することよって、レバー部材120の凸部130に接するフィルム118の変位を所定のレバー比Rで適切に増幅して、当接部132に当接するロッド48に確実に伝えることができるので、インクパック70内のインクが無くなったことを検出する精度を高めることができる。
【0071】
B.第2実施例 次に、図9から図13を用いて第2実施例に係るアダプター、液体供給システムについて説明する。図9は、図1に記載の第1実施例に係る液体消費装置としてのインクジェットプリンター10を一部改変して得られる第2実施例としてのインクジェットプリンター10である。第1の実施例と異なる部分を中心に以下に説明する。
【0072】
第2の実施例においては、第1実施例のインクカートリッジ40に替えてアダプター400がカートリッジホルダー42に装着される(図9および図10参照)。アダプター400には、外部から可撓性のインク供給管600をアダプター400の内部に導くためのインク供給管挿入穴410が設けられている。アダプター400がカートリッジホルダー42に装着された状態で、アダプター400からインク供給管600が延びているため、カートリッジ交換カバー13を閉じることはできない。そこで、第2実施例に係るインクジェットプリンター10では第1実施例のインクジェットプリンター10のカートリッジ交換カバー13は設けられていない。インク供給管600は、シリコーンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、塩化ビニルなどからなる可撓性のチューブである。
【0073】
インクジェットプリンター10に供給されるインクを貯留した外部大容量インクタンク500がインクジェットプリンター10の外部に設けられている。外部大容量インクタンク500はダンボールなどでできたケース510内部にポリエチレンなどのプラスチックからなる可撓性の外部インクパック520が収容されている。外部インクパック520には、第1実施例のインクカートリッジ40のインクパック70に収容可能なインク量よりも大容量のインクを収容することができる。外部インクパック520にはポリプロピレン等のプラスチックからなるスパウト530が外部インクパック520の内壁に対して液密に溶着されており、このスパウト530を介して外部インクパック520に貯留されたインクがインクジェットプリンター10に供給される。
【0074】
インク供給管600の一端は、スパウト530に接続されている。また、インク供給管600の他端は、後述するアダプター400のインク供給ユニット474に設けられた液体流入コネクター480に接続されている。従って、外部インクパック520に貯留されたインクは、スパウト530、インク供給管600、インク供給ユニット474、インク供給口478を介してインクジェットプリンター10に供給される。図9においては、説明を容易にするために、一のアダプター400と外部大容量インクタンク500が接続されている様子を示し、他のアダプターについては図示を省略している。しかし、実際には、図9に示した4つのアダプター400のいずれもが対応する色や対応する種類のインクを貯留した外部大容量インクタンク500に接続されている。
【0075】
次に、アダプター400の構成について説明する。図11は、アダプター400及びアダプター400内部に挿通されるインク供給管600の分解斜視図である。アダプター400は、第1実施例のインクカートリッジ40と同様に、前ケース482、後ケース484およびインク供給ユニット474から構成されている。アダプター400を構成する各部材は実施例1のインクカートリッジ40の部材と共通している。異なる部分としては、インクカートリッジ40のインクパック70の替わりに、インク供給管600が接続されていることが挙げられる。
【0076】
次に、インク供給ユニット474について詳しく説明する。図12は、第2実施例に係るインク供給ユニット474に係る分解斜視図である。第1実施例のインクカートリッジのインク供給ユニット74とほとんどの部分で共通している。しかし、第2実施例では、インクカートリッジ40のインクパック70に相当するものが無いので、インク注入口76は設けられていない。また、インク供給管600を接続するための液体流入コネクター480が設けられている点も異なる。その他の構成、特に検出機構80の構成については第1実施例と同一である。
【0077】
図13は、インク供給管600からアダプター400のインク供給ユニット474を介してインクジェットプリンター10へインクが供給される様子を説明した断面図である。第1実施例で述べたのと同様に、インクジェットプリンター10には図示しない供給ポンプが内蔵されており、アダプター400側からインクを吸入して、インクジェットプリンター10の噴射ヘッド22へインクを圧送するようになっている。図13(a)には、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動していないときの様子が示されており、図13(b)には、インクジェットプリンター10の供給ポンプが作動しているときの様子が示されている。これらの様子は、第1実施例におけるインクカートリッジ40のインク供給ユニット74のインク供給の様子と同じである。第1実施例ではインクパック70からインク供給ユニット74にインクが供給されるのに対し、第2実施例では、外部大容量インクタンク500に貯留されたインクがインク供給管600を介して供給される点が異なるのみである。すなわち、インクジェットプリンター10の供給ポンプが動作していないとき、および、供給ポンプが動作しているときのインクの流れ、液体室100の負圧の状況、付勢バネ108・フィルム118の変形の状況等は、第1の実施例の場合と同じである。
【0078】
第2実施例において、外部大容量インクタンク500のインクの有無の検出について詳細な説明は省略するが、第1実施例の「A−4.インクカートリッジ内のインクの有無の検出」と同様の方法により行うことができる。すなわち、外部大容量インクタンク500のインクが無くなると、外部大容量インクタンク500から液体室100にインクが流入せず、液体室100の負圧が解消されないので、図8(c)に示すようにフィルム118が液体室100の内側に引き込まれた状態のままとなる。そして、第1実施例で説明したように、ロッド48の遮光部138がセンサー136に挿入されて、センサー136は光が遮られた状態となり、外部大容量インクタンク500内のインクが無くなったことを検出できる。
【0079】
上記の通り、第2実施例においても第1実施例と同様に外部大容量インクタンク500内のインクの有無が検出されるので、第2実施例においても第1実施例と同様の効果を得ることができる。ここで、アダプター400は本発明の取付部材に相当し、アダプター400、インク供給管600、外部大容量インクタンク500が本発明の液体供給システムに相当する。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0081】
例えば、前述した実施例では、カートリッジホルダー42に内蔵された供給ポンプを作動させてインクカートリッジ40のインク供給口78からインクを吸引するようになっていた。しかし、インクパック70を外部から加圧して、インクパック70内のインクを圧送するようにしてもよい。尚、この場合は、液体室100の付勢バネ108は、圧縮バネではなく、フィルム118を液体室100の内側に引き込む方向に付勢する引張バネとしておけばよい。インクパック70内にインクが残っているうちは、インクパック70から圧送されるインクの圧力によってフィルム118は液体室100の外側に押し出される。一方、インクパック70内のインクが無くなると、インクが供給されず液体室100の圧力が低下するので、フィルム118は付勢バネ108の力によって液体室100の内側に引き込まれる。このようなフィルム118の変位をレバー部材120で増幅するとともに、ロッド48を用いてカートリッジホルダー42内のセンサー136に伝達することによって、前述した実施例と同様に、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することが可能となる。
【0082】
さらに、前述した実施例では、インク供給口78からインクを吸引してから一定期間が経過してもセンサー136の光が遮られていることに基づいて、インクパック70内のインクが無くなったことを検出することとしていた。しかし、センサー136の配置を変更して、これとは逆に、インク供給口78からインクを吸引してから一定期間が経過した後においてセンサー136が光を透過している状態にあることに基づいて、インクパック70内のインクが無くなったことを検出するようにしてもよい。この場合においては、インク供給口78からインクを吸引してから一定期間が経過した際に、センサー136の光が遮られている場合には、インクパック70内にインクが残っていることになる。
【符号の説明】
【0083】
10…インクジェットプリンター、 20…キャリッジ、 22…噴射ヘッド、
40…インクカートリッジ、 42…カートリッジホルダー、 44…挿入孔、
46…インク取入針、 48…ロッド、 70…インクパック、
74…インク供給ユニット、 76…インク注入口、 78…インク供給口、
80…インク検出機構、 100…液体室、 102…流入口、
104…流出口、 106…逆止弁、 108…付勢バネ、
110…突起、 112…受圧板、 118…フィルム、
120…レバー部材、 122…軸穴、 124…ガイド孔、
126…軸ピン、 128…ガイドピン、 130…凸部、
132…当接部、 134…付勢バネ、 136…センサー、
138…遮光部、 140…流入通路、 142…流出通路、
400…アダプター、 410…インク供給管挿入穴、
474…インク供給ユニット、 478…インク供給口、
480…液体流入コネクター、 500…外部大容量インクタンク、
510…ケース、 520…外部インクパック、 530…スパウト、
インク供給管…600。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消費装置に対して着脱可能に構成された液体容器内の液体の有無を検出する液体検出システムであって、
前記液体容器には、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられ、第1接点で接する前記変形部の変位を所定のレバー比で増幅して第2接点に伝達するレバー部材と
が設けられており、
前記液体消費装置には、
前記レバー部材の前記第2接点に当接して、該第2接点の変位を前記液体消費装置の内部に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材によって伝達された変位を検出することで、前記液体容器内の液体の有無を検出するセンサーと、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着されると前記レバー部材に当接する方向に前記伝達部材を付勢し、当該付勢によって該レバー部材を前記変形部に押し当てる第2付勢部材と
が設けられている液体検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液体検出システムであって、
前記液体容器は、前記レバー部材が前記変形部の変位によって回動する際に、前記レバー部材を案内するガイド部を備えている液体検出システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体検出システムであって、
前記第1付勢部材は、前記レバー部材と接する方向に前記変形部を付勢し、当該付勢によって前記第2付勢部材とは逆向きに該レバー部材を回動させる部材であり、
前記第1付勢部材の付勢力は、前記第2付勢部材の付勢力よりも大きく設定されている液体供給システム。
【請求項4】
請求項3に記載の液体検出システムであって、
前記第2付勢部材の付勢力に対する前記第1付勢部材の付勢力の比率は、前記レバー比以上に設定されている液体供給システム。
【請求項5】
液体消費装置に対して着脱可能に構成された液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられたレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、
前記液体消費装置への装着時に、
前記液体消費装置に設けられ変位が前記液体消費装置に設けられたセンサーにより検出可能な伝達部材と接し、かつ、前記レバー部材の第1接点で接する前記変形部の変位が所定のレバー比に増幅される第2の接点を有する、液体容器。
【請求項6】
請求項5に記載の液体容器であって、
前記液体消費装置の伝達部材を前記第2の接点に案内する貫通孔が設けられている液体容器。
【請求項7】
液体消費装置に対して着脱可能に構成された取付部材であって、
外部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられ、第1接点で接する前記変形部の変位を所定のレバー比で増幅して第2の接点に伝達するレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、
前記液体消費装置への装着時に、
前記液体消費装置に設けられ変位が前記液体消費装置に設けられたセンサーにより検出可能な伝達部材と接し、かつ、前記レバー部材の第1接点で接する前記変形部の変位が所定のレバー比に増幅される第2の接点を有する、取付部材。
【請求項8】
請求項7に記載の取付部材であって、
外部から前記液体室に流入する液体を輸送する液体輸送管が接続される接続部を備えた取付部材。
【請求項9】
液体貯留部と、
当該液体貯留部に接続され、液体貯留部に貯留された液体を輸送する液体輸送管と、
当該液体輸送管と接続される請求項7に記載の取付部材とからなる液体供給システム。
【請求項1】
液体消費装置に対して着脱可能に構成された液体容器内の液体の有無を検出する液体検出システムであって、
前記液体容器には、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられ、第1接点で接する前記変形部の変位を所定のレバー比で増幅して第2接点に伝達するレバー部材と
が設けられており、
前記液体消費装置には、
前記レバー部材の前記第2接点に当接して、該第2接点の変位を前記液体消費装置の内部に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材によって伝達された変位を検出することで、前記液体容器内の液体の有無を検出するセンサーと、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着されると前記レバー部材に当接する方向に前記伝達部材を付勢し、当該付勢によって該レバー部材を前記変形部に押し当てる第2付勢部材と
が設けられている液体検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液体検出システムであって、
前記液体容器は、前記レバー部材が前記変形部の変位によって回動する際に、前記レバー部材を案内するガイド部を備えている液体検出システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体検出システムであって、
前記第1付勢部材は、前記レバー部材と接する方向に前記変形部を付勢し、当該付勢によって前記第2付勢部材とは逆向きに該レバー部材を回動させる部材であり、
前記第1付勢部材の付勢力は、前記第2付勢部材の付勢力よりも大きく設定されている液体供給システム。
【請求項4】
請求項3に記載の液体検出システムであって、
前記第2付勢部材の付勢力に対する前記第1付勢部材の付勢力の比率は、前記レバー比以上に設定されている液体供給システム。
【請求項5】
液体消費装置に対して着脱可能に構成された液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられたレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、
前記液体消費装置への装着時に、
前記液体消費装置に設けられ変位が前記液体消費装置に設けられたセンサーにより検出可能な伝達部材と接し、かつ、前記レバー部材の第1接点で接する前記変形部の変位が所定のレバー比に増幅される第2の接点を有する、液体容器。
【請求項6】
請求項5に記載の液体容器であって、
前記液体消費装置の伝達部材を前記第2の接点に案内する貫通孔が設けられている液体容器。
【請求項7】
液体消費装置に対して着脱可能に構成された取付部材であって、
外部から液体が流入するとともに、変形可能な変形部を一部に有する液体室と、
前記液体消費装置への液体の供給に伴う前記液体室の圧力変化による前記変形部の変形とは逆向きの付勢力を該変形部に作用させる第1付勢部材と、
支点を中心に回動可能に設けられ、第1接点で接する前記変形部の変位を所定のレバー比で増幅して第2の接点に伝達するレバー部材と、を備え、
前記レバー部材は、
前記液体消費装置への装着時に、
前記液体消費装置に設けられ変位が前記液体消費装置に設けられたセンサーにより検出可能な伝達部材と接し、かつ、前記レバー部材の第1接点で接する前記変形部の変位が所定のレバー比に増幅される第2の接点を有する、取付部材。
【請求項8】
請求項7に記載の取付部材であって、
外部から前記液体室に流入する液体を輸送する液体輸送管が接続される接続部を備えた取付部材。
【請求項9】
液体貯留部と、
当該液体貯留部に接続され、液体貯留部に貯留された液体を輸送する液体輸送管と、
当該液体輸送管と接続される請求項7に記載の取付部材とからなる液体供給システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−144037(P2012−144037A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231414(P2011−231414)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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