説明

液体洗浄剤組成物

【課題】高濃度の界面活性剤を含有し、洗浄力及び保存安定性に優れ、水で希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下のない液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)二級アルキル基を有する特定のアルコキシル型の非イオン界面活性剤、(b)陰イオン界面活性剤、及び(c)水混和性有機溶剤を、それぞれ特定比率で含有する液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄性能と安定性、及び溶解性に優れた、衣料用及び住居用等の液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する意識が高まってきており、環境に対し負荷の少ない洗浄剤の登場が渇望されている。従来の洗浄剤より洗浄成分濃度が高い、いわゆる濃縮タイプの洗浄剤は、洗浄剤自身のサイズを小さくし、容器樹脂量の削減、輸送費の削減、使用後のゴミの削減等、環境に対する負荷を低減させるのに非常に有効であると考えられる。
【0003】
しかしながら、通常の液体洗浄剤において、洗浄成分である界面活性剤濃度を増加させる(例えば、50質量%以上)と増粘やゲル化が起こり、著しく使用性を損ねてしまうという課題があった。これは、界面活性剤濃度の上昇により、組成物中に液晶や結晶といった粘度が著しく高い相を形成してしまうためである。またこのような界面活性剤高濃度系において、溶剤や可溶化剤等を多量に配合し低粘度組成物を得る方法が一般に知られているが、水、特に冷水による希釈時に組成物が水で希釈されていくと、希釈された組成物は液晶を形成し溶解性不良を起こしたり、また界面活性剤濃度が高まってくると、低温保管時に組成物が固化し易くなるなど、溶解性や安定性に課題があった。
【0004】
特許文献1〜3には、特定の非イオン界面活性剤を配合した濃縮タイプの液体洗剤組成物が記載されているが、低温における安定性や冷水に対する溶解性に課題があった。
【0005】
特許文献4には、高級アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)を付加した非イオン界面活性剤と特定の溶剤を配合した濃縮タイプの液体洗浄剤組成物が記載されている。本文及び実施例において好ましい非イオン界面活性剤として、EOを付加した後、POを付加した、EO/POブロックタイプの非イオン界面活性剤が記載されているが、このようなタイプのノニオンは通常のEOタイプの非イオン界面活性剤より液晶、結晶抑制効果が高いもののその効果は不十分であり、低温における安定性や冷水に対する溶解性を完全に解決するものではなかった。
【0006】
更に、特許文献5には1級アルコールにエチレンオキサイドを5〜15付加したノニオンと2級アルコールにエチレンオキサイドを5〜15付加したノニオンを10/1〜1/10で併用する界面活性剤濃度が20〜60重量%の安定性及び脱脂性に優れる衣料用の液体洗浄剤が記載されている。
【0007】
また、特許文献6には非イオン界面活性剤を界面活性剤中80重量%以上を占める界面活性剤系と特定ポリマーを含有する濃厚系液体洗浄剤組成物が記載されており、その実施例には2級アルコール由来の非イオン界面活性剤であるソフタノール70(商品名、日本触媒製)を50重量%とアルキルベンゼンスルホン酸塩を6重量%含有する濃厚系液体洗浄剤が記載されている。
【0008】
また、特許文献7には、2級アルコールにアルキレンオキシドを例えば3〜15モル付加した非イオン界面活性剤を2〜60重量%とモノアルキルモノグリセリルエーテルを0.1〜40重量%配合する脱脂力及び保存安定性に優れた液体洗剤が記載されており、陰イオン界面活性剤を1/10〜10/1の割合で配合してもよいことが記載されている。
【0009】
また、特許文献8、9には、2級アルコール由来のポリオキシエチレンアルキルエーテルと酵素とを含有する、洗浄力、低温安定性及び酵素安定性に優れる液体洗浄剤が記載されており、非イオン界面活性剤/陰イオン界面活性剤を100/1〜100/10の割合で配合してもよいことが開示されている。
【0010】
上記特許文献のうち、特許文献6以外は界面活性剤濃度が高濃度の課題を開示するものではない。また、エチレンオキシド付加モル数の大きな化合物を用いる示唆はあるが、具体的に配合した場合の問題点である冷水での希釈時のゲル化の問題やその解決手段については何ら言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−7705号公報
【特許文献2】特開2008−7706号公報
【特許文献3】特開2008−7707号公報
【特許文献4】特開平8−157867号公報
【特許文献5】特開平9−169994号公報
【特許文献6】特開平10−060496号公報
【特許文献7】特開2001−064674号公報
【特許文献8】特開2002−069487号公報
【特許文献9】特開2002−069488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物において、洗浄力及び保存安定性に優れ、水で組成物を希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下のない液体洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記(a)〜(c)成分を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=50〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=50/50〜90/10である、液体洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤 40〜80質量%
1O(C24O)m/(AO)nH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22のアルキル基であり、R1O−の酸素原子が結合している炭素原子が第二炭素原子である。AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であり、mは10〜30の数であり、nは0〜5の数である。“/”はオキシエチレン基及びオキシアルキレン基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:水混和性有機溶剤 5〜40質量%
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、洗浄成分である界面活性剤を高濃度配合しているにもかかわらず、安定性、特に低温での保存安定性に優れ、溶解性、特に冷水に対する溶解性に優れ、また洗浄性能にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<(a)成分>
(a)成分の一般式(1)中、R1は炭素数8〜22のアルキル基であり、好ましくは炭素数10〜16、より好ましくは10〜14である。またアルキル基は直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0016】
本発明ではR1の酸素原子(R1OのO)が結合している炭素原子が第二炭素原子であることが特に重要である。このような化合物を得るためには、二級アルコールを用いる。
【0017】
一般式(1)の化合物は、該二級アルコールにエチレンオキシド又は、エチレンオキシドと炭素数3〜5のアルキレンオキシドとをランダム又はブロック的に付加反応することによって得ることができる。
【0018】
また、一般式(1)中のmはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、低温溶解性、及び洗浄力の点から12〜25が好ましく、12〜20がより好ましい。nは炭素数3〜5のアルキレンオキシドの平均付加モル数であり洗浄力の点から0〜3が好ましく0〜2が最も好ましい。本発明では特に、プロピレンオキシドの平均付加モル数nが0.1〜3、更には0.5〜3であって、且つエチレンオキシドの平均付加モル数mが10〜30、更には12〜20モル付加である化合物を用いることが、洗浄力、溶解性に優れた液体洗浄剤組成物を得られることから最も好ましい。
【0019】
一般式(1)中のAOであるオキシアルキレン基は、炭素数3〜5アルキレンオキシドを付加反応させることによって得られるものであり、付加反応により結合した部分はメチル分岐ないしプロピル分岐した構造を有する。AOは、プロピレンオキシドを付加反応させて得られるオキシプロピレン基(以下POという場合がある)が好ましい。
【0020】
一般式(1)において“/”は、本発明の(a)成分のEO又はAOの関係がランダム結合であってもよく、
1O−(AO)n−(EO)mH、
1O−(EO)m−(AO)nHや、
1O−(EO)n1−(AO)m−(EO)n2
〔但し、n=n1+n2である〕
であってもよいことを意味している。またAOのnは複数のブロック体として分かれていてもよい。なおn=0の場合は、オキシエチレン基だけが結合した化合物となる。なおn=0の時は、mは16以上であることが好ましい。
【0021】
(a)成分としては、R1O−(EO)m−(AO)nH、及びR1O−(EO)n1−(AO)m−(EO)n2Hから選ばれる非イオン界面活性剤が好ましい(各記号の意味は前記の通り。)。
【0022】
本発明の液体洗浄剤組成物において、(a)成分の配合量は、洗浄性能の観点から40〜80質量%であり、40〜75質量%が好ましく、40〜60質量%が特に好ましい。本発明ではこのように界面活性剤濃度が高くとも、洗濯の際の水希釈によるゲル化を起こすことなく、優れた洗浄性が得られる。
【0023】
<(b)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物には、洗浄性能、安定性、溶解性向上の点で、(b)陰イオン界面活性剤が配合される。(b)成分の含有量は、(a)成分との関係から後述する比率を満たす必要がある。(b)成分は、洗浄成分としての効果とともに、特定の比率で(a)成分と用いることにより、安定性、溶解性を向上させる。この理由は定かではないが、(a)成分の分子間に(b)成分の分子が混合されることで、(b)成分の陰イオン基の電気的反発から界面活性剤分子の整列が抑制され、結果として液晶、結晶形成が抑制されるものと予想される。
【0024】
陰イオン界面活性剤としては、例えば下記(b1)〜(b5)が使用できるが、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、(b1)、(b2)、(b4)が好ましく、更に(b1)を含有することがより好ましい。(b1)を含有する場合(b)成分中の80質量%以上、特には90質量%を占めることが洗浄性、低温安定性、溶解性の点で最も好ましい。また(b4)を泡調整剤、泥分散剤等の理由で含有する場合は、低温安定性の点から(b)成分中好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0025】
(b1)平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(b2)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシエチレン基の1つ又は2つがオキシプロピレン基であってもよい、平均付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
(b3)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩。
(b4)平均炭素数8〜20の脂肪酸塩。
(b5)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシエチレン基の1つ又は2つがオキシプロピレン基であってもよい、平均付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩
【0026】
(b)成分を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点からアルカノールアミン塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤は、液体洗浄剤中には酸型で添加して、系内でアルカリにより中和してもよい。本発明では、(b)成分はアルカノールアミン塩か、酸型で添加して系中でアルカノールアミン〔後述する(f)成分のアルカリ剤として用いるアルカノールアミン〕で中和することが好ましく、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属系の対イオンは、(a)成分の製造工程を経て、或いは金属イオン封鎖剤やその他の陰イオン性化合物の塩として含有する可能性があるが、保存安定性の点から金属イオン濃度は、低いことが好ましく、実質的には組成物中5質量%以下、特には3質量%以下であることが好ましい。
【0027】
本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄力、安定性の観点から、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=50〜90質量%であり、50〜80質量%が好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。本発明は界面活性剤濃度が50質量%以上の系であっても十分な効果を発揮することができる。なお(b)成分の陰イオン界面活性剤は、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩ではなく、酸型すなわち対イオンを水素原子イオンと仮定した時の質量を(b)成分の質量とする。
【0028】
また、本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄性能、溶解性、安定性の観点から(a)/(b)は質量比として50/50〜90/10であり、50/50〜85/15が好ましく、55/45〜80/20が更に好ましい。洗浄力の点から(a)成分の割合が下限値以上であり溶解性及び安定性の観点から上限値以下である。(a)成分は(b)成分を併用することで、組成物の洗浄力を高め、更に液晶形成を抑制することで溶解性を高めることが可能となる。
【0029】
<(c)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、安定性、溶解性向上の点で、(c)水混和性有機溶剤を5〜40質量%含有する。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0030】
(c)成分の含有量は、安定性、溶解性の点から、組成物中、5〜40質量%であり、10〜35質量%が好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。また、安定性、溶解性の観点から、(a)成分及び(b)成分の合計と(c)成分との質量比〔(a)+(b)〕/(c)は90/10〜65/35が好ましく、85/15〜70/30がより好ましい。
【0031】
(c)成分としては、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。
【0032】
水混和性有機溶剤としては、(c1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(c2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、又はヘキシレングリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール類やグリセリン、(c3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、又は重量平均分子量4000まで、好ましくは200〜1000のポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位からなるポリアルキレングリコール類、(c4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、又は1−エトキシ−2−プロパノールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位の(ポリ)アルキレングリコールと炭素数1〜5のアルカノールからなる(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル、(c5)1,3−ジメチルグリセリルエーテル、エチルグリセリルエーテル、1,3−ジエチルグリセリルエーテル、トリエチルグリセリルエーテル、ペンチルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル、又は2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、又はジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの炭素数1〜8のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル類、(c6)エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の炭素数2〜3のアルキレングリコール単位を有する(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類、が挙げられる。
【0033】
(c)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(c1)〜(c6)の分類から選ばれる2種以上を併用することが好ましく、より好ましくは(c2)、(c4)及び(c6)の分類から選ばれる2種以上、特に好ましくは(c2)及び(c6)の各分類から選ばれる2種以上、特にはジエチレングリコールモノブチルエーテルとモノ〜トリエチレングリコールモノフェニルエーテルとを併用することで効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成できる。
【0034】
<(d)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、安定性、溶解性向上の点で、(d)成分として、水を5〜40質量%、更に10〜30質量%含有することが好ましい。水はイオン交換水などの組成に影響しないものを用いることが好ましい。
【0035】
<その他の成分>
〔(e)成分〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤〔以下、(e)成分という〕を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。(e)成分としては、下記の(e1)〜(e3)が挙げられる。
(e1)(a)成分に該当しない非イオン界面活性剤。
例えば、下記(e1−1)、(e1−2)及び(e1−3)が挙げられる。
(e1−1)次の一般式で表されるアルキル多糖界面活性剤。
1e−(OR2exy
〔式中、R1eは直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基、R2eは炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基、xは平均値0〜6の数、yは平均値1〜10の数を示す。〕
(e1−2)脂肪酸アルカノールアミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
(e1−3)下記一般式で表される非イオン界面活性剤
2O(C24O)p/(C36O)q
〔式中、R2は炭素数8〜22、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基であり、また好ましくは直鎖のアルキル基である。R2の酸素原子が結合している炭素原子が第一炭素原子である。p、qは平均付加モル数であり、pは6〜20の数であり、qは0〜5の数である。/は前記と同じ。〕
(e2)陽イオン界面活性剤。
例えば、長鎖アルキル基を有する1級〜3級のアミン(但し後述のアルカノールアミンを除く)であって、好ましくは途中にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有してもよい炭素数8〜22のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基である陽イオン界面活性剤を挙げることができる。本発明では、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する3級アミンが好ましい。
(e3)両性界面活性剤
例えば、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
【0036】
なお、(a)成分に該当しない非イオン界面活性剤のうち、1級アルコール由来のポリオキシエチレンアルキルエーテルの併用は、冷水溶解時のゲル化を引き起こす可能性があるため、(a)成分に対して、ゲル化抑制の点から、質量比で0.3以下、更に0.2以下、より更に0.1未満の割合で用いることが好ましい。(e1−3)の非イオン界面活性剤であれば、洗浄性の点から、(a)成分に対して、質量比で0.01以上、好ましくは0.05以上の割合で配合することにより洗浄力を高めることができ、上限値としては、qが1以上の場合に、(a)成分に対して好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.2以下である。
【0037】
(e)成分の含有量は、本発明の液体洗浄剤組成物中、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。なお、(e)成分のうち非イオン界面活性剤(e1)は、前記(a)成分と合わせて、〔(a)+(e1)〕/(b)として、前記(a)/(b)の質量比の範囲内に入ることが好ましい。また第4級アンモニウム塩については、対陰イオンを除いた質量を該第4級アンモニウム塩の質量とし、3級アミンについては、窒素原子に結合する基のうち、有機基以外を水素原子に置換した構造の質量を該3級アミンの質量とする。
【0038】
〔(f)アルカリ剤〕
本発明の液体洗浄剤組成物には、アルカリ剤〔以下、(f)成分という〕を配合することが好ましい。アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの他に、液体洗浄剤では一般的なアルカノールの炭素数が2〜4の1〜3つのアルカノール基を有するアルカノールアミンをあげることができる。このうちアルカノールはヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子であるが、メチル基であってもアルカリ剤として使用することができる。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミンが最も好ましい。
【0039】
(f)成分は後述するpH調整剤として用いることができる。また前記した(b)成分の対塩として配合してもよい。
【0040】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(f)成分を、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なかでも、(f)成分としてアルカノールアミンを、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。
【0041】
以下、更に本発明に使用できるその他の成分を示す。
〔(g)成分〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、キレート剤〔以下、(g)成分という〕を含有することができる。(g)成分のキレート剤は、液体洗浄剤に用いられる公知のものを用いることができ、例えば、
ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、
ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、
アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属または低級アミン塩等が挙げられる。本発明では前記(b)成分であげたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤で中和した塩であってもよい。
【0042】
(g)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に0.1〜5質量%であり、好ましくは0.1〜4質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。
【0043】
〔その他の成分〕
更に本発明の液体洗浄剤組成物には、次の(i)〜(xi)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)過酸化水素、過炭酸ナトリウムまたは過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(iv)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(v)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vi)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(vii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(viii)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(ix)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(x)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤。
(xi)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0044】
以下に本発明の液体洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。(i)の再汚染防止剤及び分散剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(ii)の色移り防止剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(iii)の漂白剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(vi)の漂白活性化剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(v)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vi)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vii)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(viii)の酸化防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(ix)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(x)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(xi)のその他の成分は例えば公知の濃度で配合することができる。
【0045】
なお、上記任意成分のうち(ix)、(x)は液体洗浄剤組成物の安定性に影響を及ぼすのでその配合には特に注意を要する。
【0046】
本発明の組成物のpH(JIS Z 8802の7.2)は洗浄性能、安定性の点から6〜11、特には8〜10(25℃)が好ましい。
【0047】
本発明の液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。(c)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0048】
また本発明の液体洗浄剤組成物は、水による希釈時に、ゲル化や高粘度化が起こらない組成物である。従って、具体的には液体洗浄剤組成物は、組成物の温度が5〜40℃において、5℃の水で0倍を超え100倍の範囲で希釈する工程において、ゲル化しないことが好ましく、特にはこの希釈工程にて得られる希釈液の粘度が5℃において1500mPa・s以下である液体洗浄剤組成物が好ましい。
【0049】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物又は希釈液の粘度とする。
【0050】
本発明の液体洗浄剤組成物は、衣料、寝具、布帛等の繊維製品用として好適である。
【実施例】
【0051】
表1に示す各成分を混合して、実施例及び比較例の組成物を得た。得られた各組成物を用い、下記の各評価を行った。結果を表1に示す。表1中、比較例の一部は、(a)+(b)(質量%)、(a)/(b)(質量比)及び〔(a)+(b)〕/(c)の(a)成分として(e−3)〜(e−6)の数値を用いた。
【0052】
(1)洗浄力評価
JIS K3362:1998 記載の襟あか布を調製する。JIS K 3362:1998記載の衣料用合成洗剤の洗浄力評価方法に準じ、表1の液体洗浄剤組成物と洗浄力判定用指標洗剤の洗浄力を比較した。表1の液体洗浄剤組成物の使用濃度を0.33g/Lとした。洗浄力の判定は、指標洗剤より勝る場合を「◎」、指標洗剤と同等の場合を「○」、指標洗剤より劣る場合を「×」とした。
【0053】
(2)保存安定性評価
50mLのサンプルビン(No.6広口規格ビン、ガラス製、直径40mm、高さ80mmの円筒形)に、液体洗浄剤組成物を40mL充填し、蓋をした後、10℃の恒温室で20日間静置した。組成物の安定性は、目視で外観を観察し、下記の基準で判定した。また、結晶や液晶形成による固化や増粘についても検討を行った。なお、液晶、結晶の確認は、偏光板を用いたクロスニコル法により行った。
○;液晶、結晶を形成していない均一液体相であり、液安定性に優れる。
×;液晶形成、又は結晶形成、又は分離、又は析出が認められる。
【0054】
(3)溶解性のモデル評価
液体洗浄剤組成物とイオン交換水を、〔(液体洗浄剤組成物の質量)/(液体洗浄剤組成物の質量+イオン交換水の質量〕×100=5〜95質量%となるように、5質量%刻みで混合した計19サンプルを準備し、10℃の恒温室で1日間静置した後、このサンプルの10℃における粘度を以下の条件で測定し、以下の基準で判定した。これは10℃の水に対する溶解性モデル試験である。
測定機器 東京計器(株)製 デジタルB型粘度計(型番; DV M−B)
測定条件 60r/min 60秒
○;すべてのサンプルの粘度が1500mPa・s未満である。これは、冷水による希釈時に液晶形成や結晶形成等により増粘しないことを意味し、溶解性に優れると判断できる

×;サンプルの中に粘度が1500mPa・s以上のものがある。これは冷水による希釈時に液晶形成、又は結晶形成等により増粘する場合があることを意味し、溶解性が劣ると判断される。
【0055】
【表1】

【0056】
(注)表中の成分は以下のものである。なお、表中では、(e−3)〜(e−6)も(a)成分とみなして構造や量比を示した。また、実施例9のように(a)成分とその他の界面活性剤を併用する組成については、その他を界面活性剤を(a)成分に加えた量比をカッコ内に表示した。
(a)成分
(a−1):炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均12付加させたもの
(a−2):炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均20モル付加させたもの
(a−3):炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均25モル付加させたもの
(a−4):炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均20モル、POを平均2モルの順にブロック付加させたもの
(a−5):炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均10モル、POを平均2モル、EOを平均10モルの順にブロック付加させたもの
(a−6):炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均20モル、POを平均2モルランダム付加させたもの
【0057】
(b)成分
(b−1):炭素数10〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸
(b−2):ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(炭素数10〜14の直鎖アルキル、EO平均付加モル数3、モノエタノールアミン塩、但し表1記載の濃度は酸型に換算)
(b−3):ルナックL−55(商品名)(ヤシ油系脂肪酸;花王株式会社製)
【0058】
(c)成分
(c−1):ブトキシジグリコール
(c−2):プロピレングリコール
(c−3):トレチレングリコールフェニルエーテル
(c−4):エタノール
【0059】
(その他)
【0060】
(e−1):炭素数12〜14の2級アルコールにEOを平均3モル付加させたもの〔ソフタノール30(商品名)、株式会社日本触媒製〕
(e−2):炭素数12〜14の1級アルコールにEOを平均12モル付加させたもの〔エマルゲン120(商品名)、花王株式会社製〕
(e−3):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均20モル付加させたもの
(e−4):炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均40モル付加させたもの
(e−5):炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均6モル付加させたもの
(e−6):炭素数10〜14の2級アルコールにEOを平均20モル、POを平均6モルの順にブロック付加させたもの
ポリマー(1):特開平10−60476号公報の4頁段落0020の合成例1の方法で合成した高分子化合物
蛍光染料:チノパールCBS−X(商品名)(チバスペシャリティケミカルズ製)
酵素:エバラーゼ16.0L−EX(商品名)(プロテアーゼ、ノボザイム社製)
色素(1):緑色202号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)成分を含有する液体洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=50〜90質量%であり、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=50/50〜90/10である、液体洗浄剤組成物。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤 40〜80質量%
1O(C24O)m/(AO)nH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22のアルキル基であり、R1O−の酸素原子が結合している炭素原子が第二炭素原子である。AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であり、mは10〜30の数であり、nは0〜5の数である。“/”はオキシエチレン基及びオキシアルキレン基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤
(c)成分:水混和性有機溶剤 5〜40質量%
【請求項2】
前記炭素数3〜5のオキシアルキレン基がオキシプロピレン基である、請求項1記載の液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−189551(P2010−189551A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35429(P2009−35429)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】