説明

液体洗浄剤組成物

【課題】界面活性剤濃度を低減しても高い洗浄力を発揮し、且つ良好な濯ぎ性を有する液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)炭素数8〜18の炭化水素基を有するアミンオキシド型界面活性剤、(b)安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、桂皮酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上の化合物、並びに(c)水を含有し、(b)/(a)モル比が0.3〜0.9であり、(a)に対して、陰イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤の合計量が3モル%以下であり、実質的に次亜塩素酸塩を含まない液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に硬質面用の洗浄剤組成物には、組成物の貯蔵安定性や起泡性の向上や組成物の液粘度増加を目的として、芳香族スルホン酸又はその塩や芳香族カルボン酸又はその塩が用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1、2にはポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステルを含む特定の陰イオン界面活性剤とアミンオキシドとを含有する組成物の相安定性向上を目的としてp−トルエンスルホン酸をハイドロトロープ剤として用いることが記載されている。また、特許文献3、4にはトリガースプレー噴霧時の起泡性向上や高温時における次亜塩素酸ナトリウムの保存安定性向上を目的としてクメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩を用いることが記載されている。また、特許文献5、6、7には、非水平面に適用された時の滞留時間向上を目的とした組成物の増粘剤として、キシレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸又はその塩を用いることが記載されている。また、特許文献8には、アミド型アミンオキサイドと特定のアニオン性ポリマーを配合する技術が記載されている。
【0004】
一方、低環境負荷や低皮膚刺激性といった観点から低界面活性剤濃度、または低使用水量の洗浄剤組成物が望まれている。しかし、界面活性剤濃度を低減させると洗浄性能も低下し、使用水量を低減させる為にはさらなる界面活性剤の低減が必要になる。このため洗浄剤組成物本来の目的を達することが困難になるため、低界面活性剤濃度でも十分な洗浄性能を有し、かつ低使用水量である洗浄剤組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−155611号公報
【特許文献2】特開2009−185252号公報
【特許文献3】特開2002−212596号公報
【特許文献4】特開2002−241791号公報
【特許文献5】特開2008−260799号公報
【特許文献6】特開昭62−30199号公報
【特許文献7】特開昭63−90600号公報
【特許文献8】特開平10−176187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、界面活性剤濃度を低減しても高い洗浄力を発揮し、且つ良好な濯ぎ性を有する液体洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)炭素数8〜18の炭化水素基を有するアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(a)成分という〕、(b)安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、桂皮酸及びこれらの塩、好ましくはアルカリ金属塩から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(b)成分という〕、並びに(c)水〔以下、(c)成分という〕を含有し、(a)成分と(b)成分のモル比が(b)/(a)=0.3〜0.9であり、(a)成分に対して、陰イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤の合計量が3モル%以下であり、実質的に次亜塩素酸塩を含まない液体洗浄剤組成物に関する。
【0008】
本発明者らは、特定のアミンオキシドに、特定の芳香族スルホン酸もしくはその塩及び/又は特定の芳香族カルボン酸もしくはその塩を、特定モル比で組み合わせることで、低界面活性剤濃度でも十分な洗浄性能が発現し、同時に使用水量を低減させる(すすぎ性能が向上する)ことを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、界面活性剤濃度を低減しても高い洗浄力を発揮し、且つ良好な濯ぎ性を有する液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は炭素数10〜18の炭化水素基を有するアミンオキシド型界面活性剤であり、下記一般式(A)の化合物が好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R2は炭素数1〜6のアルキレン基であり、Aは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−から選ばれる基である。aは0又は1の数であり、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。〕
【0013】
一般式(A)において、R1は好ましくは炭素数10〜16、より好ましくは10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、特に好ましくはラウリル基及び/又はミリスチル基である。一般式(A)の構造によっては、R1は、ラウリン酸、ミリスチン酸等、脂肪酸の残基であってもよい。Aが存在する場合は、好ましくは−COO−又は−CONH−である。R2は好ましくは2又は3の数であり、R3、R4はそれぞれ好ましくはメチル基である。aは、洗浄力の観点から、0が好ましい。
【0014】
一般式(A)のR1は、単独のアルキル鎖長又はアルケニル鎖長でもよく、異なるアルキル鎖長又はアルケニル鎖長を有する混合アルキル基又はアルケニル基であってもよい。後者の場合には、ヤシ油、パーム核油から選ばれる植物油から誘導される混合アルキル鎖長又はアルケニル鎖長を有するものが好適である。具体的にはラウリル基/ミリスチル基(又は、ラウリン酸残基/ミリスチン酸残基)のモル比が95/5〜20/80、好ましくは90/10〜30/70であることが洗浄効果、及び濯ぎ性の点から好ましい。
【0015】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、桂皮酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上の化合物である。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属等が挙げられ、アルカリ金属塩が好ましい。(b)成分は、洗浄力の観点から、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、桂皮酸及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
【0016】
<(c)成分>
(c)成分の水は、蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。通常、本発明の液体洗浄剤組成物の残部は(c)成分の水である。
【0017】
<液体洗浄剤組成物>
本発明の液体洗浄剤組成物では、(a)成分と(b)成分のモル比は、(b)/(a)=0.3〜0.9であり、好ましくは0.35〜0.85であり、最も好ましくは0.4〜0.8である。この範囲において、界面活性剤濃度を低減しても優れた洗浄力が発現し、また優れた濯ぎ性が得られる。
【0018】
また、本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄力の観点から、(a)成分に対して、陰イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤の合計量が3モル%以下であり、好ましくは2モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。下限値は、好ましくは0モル%である。
【0019】
更に、本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄力の観点から、(a)成分に対して、(a)成分を除く非イオン界面活性剤が、5モル%以下であり、好ましくは2モル%以下である。下限値は、好ましくは0モル%である。
【0020】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、貯蔵安定性向上の観点から、実質的に次亜塩素酸塩を含まない。
【0021】
本発明の液体洗浄剤組成物は、濯ぎ性の観点から(a)成分を1〜30質量%、更に5〜20質量%、より更に10〜15質量%含有することが好ましい。
【0022】
また、本発明の液体洗浄剤組成物は、(b)成分を1〜20質量%、更に4〜15質量%、より更に7〜10質量%含有することが好ましい。
【0023】
本発明の液体洗浄剤組成物では、界面活性剤中、(a)成分の割合が70〜100質量%、更に80〜100質量%、より更に95〜100質量%であることが好ましい。
【0024】
本発明の液体洗浄剤組成物は、界面活性剤の含有量の合計が1〜30質量%、更に5〜25質量%、より更に10〜20質量%であることが好ましい。
【0025】
本発明の液体洗浄剤組成物には、目的とする性能を損なわない範囲で、通常の液体洗浄剤組成物に配合されている添加剤、防腐剤、各種着色料、無機塩、香料などの成分を配合することができる。
【0026】
本発明の液体洗浄剤組成物は、食器、調理器具、台所、壁、テーブル、浴室、各種ガラス製品など、様々な硬質表面の洗浄に使用できるが、食器用液体洗浄剤組成物として好適である。
【0027】
本発明の液体洗浄剤組成物のpHは、20℃で6〜9、更に6.5〜8とすることができる。食器用とする場合、pHは20℃で6〜9、更に6.5〜7.5が好ましい。
【実施例】
【0028】
<洗浄力試験>
菜種油(山桂産業株式会社製)に0.1質量%のスダンIII(東京化成工業株式会社製)を均一に混ぜ込んだものをモデル油とし、モデル油1mlをポリプロピレン皿(φ23cm、関東プラスティック工業株式会社製)に均一に塗り広げたものをモデル汚染食器とした。
【0029】
市販の新品スポンジ(115mm×75mm×35mm、商品名:キクロン、販売元:キクロン株式会社)を水道水でもみ洗いし、水道水の含有量が10gになるまで絞った後、表1の液体洗浄剤組成物1gと水道水20mlを染み込ませた。モデル汚染食器上で上記スポンジを2〜3回手でもみ泡立たせた後、モデル汚染食器を連続して擦り洗いし、洗浄(食器に付着した色およびヌル付いた感触が消えることにより確認)できた皿の枚数を求めた。
【0030】
<濯ぎ性試験>
500mlの丸型分液漏斗(IWAKI社製)に界面活性剤濃度が0.1質量%になるように3.5°DH硬水(25℃)にて希釈した表1の組成物を40ml封入し、上下に30回激しく振盪させて泡立てた。漏斗スタンドに静置させた後、コックを開いて水溶液と泡を排水し、落下する液滴間隔が約1秒になった時点でコックを閉じた。上方口より25℃に温調した3.5°DH硬水を40mlゆっくりと注ぎ、排出口側の長軸管部分を持ちながら分液漏斗本体を静かに10回転だけ歳差運動させた。漏斗スタンドに静置させた後、再びコックを開き同様の排水操作を行った。分液漏斗内の泡がなくなり、排液が水のみになるまでに要した3.5°DH硬水の添加回数をすすぎ回数とした。
【0031】
【表1】

【0032】
表中の成分は以下のものである。
(a−1):ドデシルジメチルアミンオキサイド
(a−2):テトラデシルジメチルアミンオキサイド
(b−1):安息香酸ナトリウム
(b−2):ベンゼンスルホン酸ナトリウム
(b−3):ベンゼンジスルホン酸ナトリウム
(b−4):桂皮酸ナトリウム
ES:アルキル鎖が、炭素数12のアルキル基:炭素数14のアルキル基=73:27(質量比)の天然アルコール1モルに、プロピレンオキシドを0.4モル付加、エチレンオキシドを1.5モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和したもの。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素数8〜18の炭化水素基を有するアミンオキシド型界面活性剤、(b)安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、桂皮酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上の化合物、並びに(c)水を含有し、(a)と(b)のモル比が(b)/(a)=0.3〜0.9であり、(a)に対して、陰イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤の合計量が3モル%以下であり、実質的に次亜塩素酸塩を含まない液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(a)が下記一般式(A)で表されるアミンオキサイド型界面活性剤である、請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【化1】


〔式中、R1は炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R2は炭素数1〜6のアルキレン基であり、Aは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−から選ばれる基である。aは0又は1の数であり、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。〕
【請求項3】
(a)を1〜30質量%含有する、請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
界面活性剤中、(a)の割合が70〜100質量%である、請求項1〜3の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
界面活性剤の含有量の合計が1〜30質量%である、請求項1〜4の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2011−126925(P2011−126925A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283694(P2009−283694)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】