説明

液体混合装置および液体混合方法

【課題】 供給配管を介して供給される原水または水溶液に薬液を混合して混合液体を作製するための混合槽を備えた液体混合装置及び液体混合方法において、より簡単な構成で且つ混合能力の高い液体混合装置、及び、より安定した品質の混合液体を製造可能な液体混合方法を提供する。
【解決手段】 混合槽M1,M2,M3に供給配管P1,P2と比して管路径の大きな流入部E1,E2,E3を設け、薬液を原水または水溶液に添加する添加位置Q1,Q2,Q3と、流入部内の溶液中に磁束によってイオン分極電流を発生させ混合を促進させる磁気処理装置B1,B2,B3とを、流入部または流入部よりも上流側に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体混合装置および液体混合方法に関する。本発明は、より具体的には、供給配管を介して供給される原水または水溶液に薬液を混合して混合液体を作製するための混合槽を備えた液体混合装置、及び、供給配管を介して供給される原水または水溶液に薬液を混合する混合工程によって混合液体を作製するための液体混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液体混合装置としては、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とpH調整液としての酸性水溶液とを混合して得られる弱酸性の次亜塩素酸水を殺菌水として生成する殺菌水製造装置(液体混合装置)が良く知られている。このような殺菌水製造装置では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と酸性水溶液とが直接反応すると塩素ガスが発生する虞があるので、例えば、先ず原水に濃度が5〜10%などの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を混合して一次水溶液を作製し、この一次水溶液に酸性水溶液を混合することで、二次水溶液(次亜塩素酸水)を得る必要があることが知られている。pH調整液によって、得られる次亜塩素酸水をpH3〜8(特にpH6付近)に調整すれば、特に良好な殺菌消臭効果を有する次亜塩素酸水が得られる。また、前述の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が高粘性であるために、特に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を原水や水溶液に混合する際には十分な撹拌作用を与える必要がある。
【0003】
上記の殺菌水製造装置(液体混合装置)としては、本発明に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1の発明がある。この特許文献1に記された殺菌水製造装置では、十分な撹拌作用を与える目的で、原水に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加混合する設備として、例えば原水の配管に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を注入する注入ポンプを設け、その下流側に、管路径を原水供給管よりも大きくした大脈流発生管路を一次混合槽として設けている。そして、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加された混合水は、この大脈流発生管路内へ流入することによって、大きな脈流となって緩やかに流れ、これによって、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と原水との希釈反応が緩やかに行われる。大脈流発生管路を通った混合水は、次に、二次混合槽として設けられた小脈流発生管路内に送られて、ここに設けられた複数の急角度の曲がり部で激しく撹拌されることで希釈反応がさらに促進される。小脈流発生管路を通った混合水は、さらに、流路内にネットを備えた三次混合槽として設けられた極小脈流発生管路に送られて、さらに急速度で希釈反応が行われると記されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−273452号公報(段落番号0022〜0025、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記された殺菌水製造装置(液体混合装置)では、原水に次亜塩素酸ナトリウム水溶液や酸性水溶液等の薬液を添加して希釈混合する混合槽として、流路内に曲がり部やネット等からなる脈流発生手段を設けた混合槽を用いている。しかし、各単一の混合槽では十分な混合効果が得られない、或いは、混合が急激になり過ぎる虞があるために、一次混合槽(大脈流発生管路)、その下流側に配置された二次混合槽(小脈流発生管路)、そして、更に下流側に配置された三次混合槽(極小脈流発生管路)という、次第に混合能力が高くなる三段構えからなる混合設備を、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の混合用と酸性水溶液の混合用との夫々に設ける必要があり、殺菌水製造装置が複雑化し、また、装置全体の製作コストも高くなるという問題があった。さらに、混合槽内に脈流発生手段として曲がり部やネットを設けているために、長期の使用に際して、これらの複雑な形状をした脈流発生手段の表面に、炭酸カルシウム(CaCO3)等が沈積し易く、脈流発生機能が衰える虞があるという問題があった。
【0006】
ところで、酸性領域の次亜塩素酸水が優れた殺菌力を有することは良く知られており、一般に、次亜塩素酸水製造装置の利用分野も、専ら殺菌水としての酸性領域の次亜塩素酸水を製造する装置、すなわち殺菌水製造装置に限られている。しかし、出願人は本発明による液体混合装置を検討中に、アルカリ性領域の次亜塩素酸水の利用法に視野を広げて検討したところ、アルカリ性領域の次亜塩素酸水が非常に優れた洗浄力を有するという知見を得た。そこで、一般に認識されている次亜塩素酸水製造装置の概念を、専ら酸性領域の次亜塩素酸水を製造する殺菌水製造装置としての範疇から、洗浄水としてのアルカリ性領域の次亜塩素酸水を製造する装置をも包含する範疇へと拡張することを試みて、一定の有効な結果を得た。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上に例示した従来技術による液体混合装置の持つ前述した欠点に鑑み、より簡単な構成で且つ混合能力の高い液体混合装置、及び、より安定した品質の混合液体を製造可能な液体混合方法を提供することにある。
また、本発明のもう一つの目的は、アルカリ性領域の次亜塩素酸水を製造する洗浄水製造装置としての液体混合装置、及び、アルカリ性領域の次亜塩素酸水を製造する洗浄水製造方法としての液体混合方法を提供することにある。
さらに、本発明の別の目的は、酸性領域の次亜塩素酸水(殺菌水)を製造する機能と、アルカリ性領域の次亜塩素酸水(洗浄水)を製造する機能とを兼ね備えた液体混合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴構成は、供給配管を介して供給される原水または水溶液に薬液を混合して混合液体を作製するための混合槽を備えた液体混合装置であって、
前記混合槽は前記供給配管と比して管路径の大きな流入部を備え、前記薬液を前記原水に添加する添加位置と、前記流入部内の溶液中に磁束によってイオン分極電流を発生させ混合を促進させる磁気処理装置とが、前記流入部または前記流入部よりも上流側に配置されている点にある。
【0009】
したがって、本発明の第1の特徴構成による液体混合装置では、原水または水溶液が、磁気処理装置から発生する磁束の作用を受けた状態で、或いは、前記磁束の作用を受けながら、添加された薬液と共に管路径の大きな流入部に進入することになる。すなわち、これらの原水または水溶液は、磁気処理装置から受ける強い磁束(約4000ガウス以上)の作用によって発生したイオン分極電流により、水分子と、薬液が生成するイオン(例えば次亜塩素酸イオン)、水素イオン(H+)或いは水酸化物イオン(OH-)との混合度が高まった状態で、薬液と共に流入部に進入するので、加圧状態から解放されることで発生する乱流による混合作用のみで薬液との十分な混合作用を受ける。
【0010】
その結果、多段式に構成された混合槽を設ける必要がなく、原水と薬液との混合用に一つの混合槽を設けるだけで、特に粘度の高い薬液を用いる場合や、比較的微量の薬液を大量の原水または水溶液に混合する際にも、良好な混合作用に基づいて薬液濃度の安定した混合液体を製造可能な液体混合装置が得られた。
また、液体に脈流を発生させるための特別な突起物や液体の流れを制御する邪魔板などを混合槽内に設けなくても十分な混合作用が得られるので、混合槽内は非常に単純で平滑な内面形状とすることができ、その結果、長期の使用に際しても、炭酸カルシウム(CaCO3)等の沈積が生じ難く、また、たとえ僅かに沈積が生じたとしても添加混合機能に支障を来たす虞がない、等の有利な効果が得られた。
【0011】
尚、前述したイオン分極電流とは、磁気処理装置から生じる強い磁束などによって、水溶液中に発生するローレンツ電場により、溶解している正イオンおよび負イオンの流れが対極に引き寄せられる状態を意味する。イオン分極電流が発生すると、例えば薬液の一例として次亜塩素酸塩水溶液を水と混合する場合には、次亜塩素酸イオンの水分子中における流れが乱れることから、水分子と次亜塩素酸イオンの間の混合度が高められると考えられる。同様に、酸性水溶液を水と混合する場合には、酸性水溶液中の水素イオンの水分子中における流れが乱れることから、水分子と水素イオンの間の混合度が高められ、アルカリ性水溶液を水と混合する場合には、アルカリ性水溶液中の水酸化物イオンの水分子中における流れが乱れることから、水分子と水酸化物イオンの間の混合度が高められると考えられる。
【0012】
本発明の第2の特徴構成は、原水または水溶液に前記薬液を添加する添加装置が、薬液をパルス式に吐出する定量ポンプで構成されており、且つ、前記供給配管を介して供給される原水または水溶液の流量を検出する検出装置、及び、前記検出装置によって検出された原水または水溶液の流量に応じて前記各定量ポンプからの吐出時期を指令する指令手段が設けられており、前記混合槽の容積は、最も希薄な混合液体を製造する際に、前記混合槽内の溶液が入れ替わる前に前記定量ポンプから少なくとも1パルスの吐出薬液を受け入れるように設定されている点にある。
【0013】
したがって、本発明の第2の特徴構成による液体混合装置では、供給される原水または水溶液の流量が変化しても、常に一定成分の混合液体が得られる。しかも、定量ポンプから1パルスの薬液も受け取らないまま原水や水溶液が混合槽を通過するといった事態が抑制されるので、常に薬液が当初設定された比率で添加混合され、成分が均一な混合液体が製造可能となる。
【0014】
本発明の第3の特徴構成は、前記混合槽が、第1供給配管を介して供給される原水に次亜塩素酸塩水溶液とpH調整液との一方からなる第1薬液を混合して一次水溶液を得るための一次混合槽と、前記一次混合槽から第2供給配管を介して供給される前記一次水溶液に前記次亜塩素酸塩水溶液と前記pH調整液との他方からなる第2薬液を混合して二次水溶液を得るための二次混合槽とを備え、
前記一次混合槽及び前記二次混合槽の少なくとも一方について、前記第1薬液または前記第2薬液を前記原水または前記一次水溶液に添加する添加位置と、前記磁気処理装置とが、前記流入部または前記流入部よりも上流側に配置されている点にある。
【0015】
したがって、本発明の第3の特徴構成による液体混合装置では、pH調整液の作用で一般の業務や一般家庭で使用し易いようにpH調整された次亜塩素酸水を製造可能な次亜塩素酸水製造装置が得られる。
尚、前述した磁気処理装置の作用は、粘性が高い次亜塩素酸塩水溶液を薬液として混合する際に必須であるが、他方のpH調整液を薬液として混合する混合槽には必ずしも設ける必要はない。
【0016】
本発明の第4の特徴構成は、前記第1薬液は次亜塩素酸塩水溶液からなり、前記一次水溶液に前記第2薬液として酸性水溶液を混合するための第1の二次混合槽と、前記一次水溶液に前記第2薬液としてアルカリ性水溶液を混合するための第2の二次混合槽とが設けられており、前記第2供給配管の前記一次水溶液を、前記第1の二次混合槽と前記第2の二次混合槽とに導く分岐手段が設けられている点にある。
【0017】
したがって、本発明の第4の特徴構成による液体混合装置では、pH調整液として酸性水溶液を適用すれば殺菌水製造装置として、また、pH調整液としてアルカリ性水溶液を適用すれば洗浄水製造装置としてという具合に、使用者の目的に応じて、或いは、その時の状況に応じて適宜切り換えて使用することができる。また、殺菌水製造装置と洗浄水製造装置のいずれとして用いる場合にも共通して適用される次亜塩素酸塩水溶液を先に添加して、殺菌水製造装置として適用する場合にのみ用いる酸性水溶液や洗浄水製造装置として適用する場合にのみ用いるアルカリ性水溶液は後で添加する構成であるので、順序が逆の構成に比して、次亜塩素酸塩水溶液と水との混合槽は一つだけ設ければ済み、小型で構造が簡単な装置が得られる。そして、一次水溶液を分岐手段から第1の二次混合槽に導けば酸性寄りの次亜塩素酸水が得られ、逆に、一次水溶液を分岐手段から第2の二次混合槽に導けばアルカリ性寄りの次亜塩素酸水が得られ、さらに、一次水溶液を分岐手段から第1と第2の双方の二次混合槽に導けば酸性寄りの次亜塩素酸水とアルカリ性寄りの次亜塩素酸水とが同時に得られる。
【0018】
すなわち、この本発明の第4の特徴構成とは逆に、殺菌水製造装置として適用する場合にのみ用いる酸性水溶液や洗浄水製造装置として適用する場合にのみ用いるアルカリ性水溶液を先に添加して、次亜塩素酸塩水溶液は後で添加する構成とすることも可能であるが、この場合には、次亜塩素酸塩水溶液と一次水溶液との混合槽を殺菌水製造装置用と洗浄水製造装置用との合計2個設けることが必要となろう。仮にこの場合に次亜塩素酸塩水溶液と一次水溶液との混合槽を単一に構成するなら、殺菌水製造装置としての使用から洗浄水製造装置としての使用に切り換える際に、次亜塩素酸塩水溶液と水との混合槽の内部に残留している酸を追い出すための煩雑な操作を経て初めて安定した成分の次亜塩素酸水が得られるようになる。洗浄水製造装置から殺菌水製造装置に切り換える場合も同様である。
【0019】
本発明の第5の特徴構成は、前記分岐手段は、前記第2供給配管を、前記一次水溶液を前記第1の二次混合槽に導く第3供給配管と、前記一次水溶液を前記第2の二次混合槽に導く第4供給配管とに接続する分岐管からなり、前記切換機構は、前記第1の二次混合槽の下流側に配置された第1コックと、前記第2の二次混合槽の下流側に配置された第2コックとからなる点にある。
【0020】
したがって、本発明の第5の特徴構成による液体混合装置では、第2コックは閉鎖しておき第1コックのみを開放することによって、自動的に一次水溶液は第1の二次混合槽のみに供給されるので、この供給に合わせて第3供給配管から第1の二次混合槽の流入部までの間で一次水溶液に酸を添加すれば、酸性の次亜塩素酸水からなる殺菌水が第1コックから得られる。これとは逆に、第1コックは閉鎖しておき第2コックのみを開放することによって、自動的に一次水溶液は第2の二次混合槽のみに供給されるので、この供給に合わせて第4供給配管から第2の二次混合槽の流入部までの間で一次水溶液にアルカリを添加すれば、アルカリ性の次亜塩素酸水からなる洗浄水が第2コックから得られる。また、第1コックと第2コックの双方を開放すると、自動的に一次水溶液は第1の二次混合槽と第2の二次混合槽とに同時に供給されるので、この供給に合わせて第3供給配管から第1の二次混合槽の流入部までの間で一次水溶液に酸を添加し、同時に、第4供給配管から第2の二次混合槽の流入部までの間で一次水溶液にアルカリを添加すれば、酸性の次亜塩素酸水からなる殺菌水が第1コックから得られ、同時に、アルカリ性の次亜塩素酸水からなる洗浄水が第2コックから得られる。第1コックと第2コックの双方を閉鎖しておけば、一次水溶液はいずれの二次混合槽にも供給されないので、第1の二次混合槽および第2の二次混合槽の内部の溶液を一定の状態に保つことができる。
【0021】
本発明の第6の特徴構成は、前記第3供給配管と前記第4供給配管には各々逆止弁が介装されている点にある。
したがって、本発明の第6の特徴構成による液体混合装置では、第1の二次混合槽内や第3供給配管内の水溶液が分岐部に向かって逆流すること、及び、第2の二次混合槽内や第4供給配管内の水溶液が分岐部に向かって逆流することが逆止弁によって防止される。したがって、第1コックを開放して殺菌水製造装置として使用する際に、第2の二次混合槽内の水溶液が第4供給配管内を逆流して第1の二次混合槽へと入り込む、或いは、逆に、第2コックを開放して洗浄水製造装置として使用する際に、第1の二次混合槽内の水溶液が第3供給配管内を逆流して第2の二次混合槽へと入り込む、等の現象によって最終的に二次混合槽から得られる次亜塩素酸水の成分やpH値に良くない影響を及ぼす虞が抑制される。
【0022】
また、本発明の特徴手段は、原水または水溶液に薬液を添加する添加工程と、前記原水または水溶液中に磁束によってイオン分極電流を発生させる磁気処理工程と、磁気処理された前記原水または水溶液中を前記薬液と混合する混合工程とを有する点にある。
【0023】
したがって、本発明の特徴手段による液体混合方法では、原水または水溶液が、磁気処理作用を受けた状態で、或いは、前記磁束の作用を受けながら、添加された薬液と混合されることになる。すなわち、これらの原水または水溶液は、強い磁束(約4000ガウス以上)の作用によって発生したイオン分極電流により、水分子と、次亜塩素酸イオン、水素イオン(H+)或いは水酸化物イオン(OH-)との混合度が高まった状態で、薬液と混合されるので、比較的単純で一般的な混合作用のみで薬液との十分な混合作用を受ける。尚、添加工程は磁気処理工程の前後および最中のいずれの時期に行われても良く、また、添加工程と混合工程とを同時に行っても良い。
【0024】
その結果、多段式に構成された混合槽で数段階に分かれた3段階以上の混合工程を受ける必要がなく、原水と薬液との混合用に1段階の混合工程を設けるだけで、良好な混合作用に基づいて安定した品質の混合液体を製造可能となった。
【0025】
本発明によるその他の特徴および利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明による液体混合装置の一実施形態をなす次亜塩素酸水製造装置の構成を示す概略図である。この次亜塩素酸水製造装置100の特徴は、混合槽の溶液中に磁束によってイオン分極電流を発生させ混合を促進させる磁気処理装置が設けられている点、及び、使用形態によって酸性の次亜塩素酸水からなる殺菌水を製造する殺菌水製造装置としても、また、アルカリ性の次亜塩素酸水からなる洗浄水を製造する洗浄水製造装置としても使用可能である点にある。尚、アルカリ性(特にpH11〜13)の次亜塩素酸水がタンパク質等に対して非常に優れた洗浄効果を有する点については実験結果と共に後述するが、これは出願人が得た新しい知見である。
【0027】
次亜塩素酸水製造装置100は、第1薬液としての次亜塩素酸ナトリウム水溶液を原水と混合するための一次混合槽M1、一方の第2薬液としての希塩酸を一次混合槽M1で得られた一次水溶液と混合するための第1の二次混合槽M2、及び、他方の第2薬液としての水酸化ナトリウム水溶液を一次混合槽M1で得られた一次水溶液と混合するための第2の二次混合槽M3を有する。尚、前述の次亜塩素酸ナトリウム水溶液は次亜塩素酸塩の一例であり、他に次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウムなどを使用可能である。また、溶液前述の希塩酸は酸性水溶液の一例であり、他に硝酸、硫酸、有機酸などの水溶液中で酸性を示すものも前記一方の第2薬液として使用可能である。同様に、前述の水酸化ナトリウム水溶液はアルカリ性水溶液の一例であり、他に水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどの水溶液中でアルカリ性を示すものも前記他方の第2薬液として使用可能である。
【0028】
一次混合槽M1の入口部には、水道水や井戸水などの原水を供給する第1供給管路P1が接続されている。また、一次混合槽M1の出口部には第2供給管路P2が接続されており、この第2供給管路P2の終端部は、分岐継手G(分岐手段の一例)によって、一次水溶液を第1の二次混合槽M2に導く第3供給管路P3と、一次水溶液を第2の二次混合槽M3に導く第4供給管路P4とに分岐されている。第1供給管路P1内の原水には常に略一定の水圧が加えられている。分岐継手Gは、第2供給管路P2に接続される単一の入力部と、第3供給管路P3と第4供給管路P4とに各々接続される2つの出力部とを有する。第1供給管路P1には、原水の水圧を略一定に調整するレギュレータRが介装されており、レギュレータRの下流側には第1供給管路P1内における原水の流量を検出する流量検出装置F1(検出装置の一例)が介装されている。尚、第3供給管路P3と第4供給管路P4にも、一次水溶液の流量を検出する流量検出装置F2,F3(検出装置の一例)がそれぞれ介装されている。さらに、第3供給管路P3と第4供給管路P4には、管路内の水溶液が分岐継手Gの側に逆流することを阻止する逆止弁VCが介装されている。
【0029】
そして、第1の二次混合槽M2の出口部は、一次混合槽M1や二次混合槽M2,M3と略同一形状の容器で構成された第1バッファ槽M2bと配管で接続されており、第1バッファ槽M2bの下流側には、得られた二次水溶液としての次亜塩素酸水を殺菌水として取り出すための第1取出し管路P3cが接続されている。同様に、第2の二次混合槽M3の出口部は、第1バッファ槽M2bと同一形状の容器で構成された第2バッファ槽M3bと配管で接続されており、第2バッファ槽M3bの下流側には、得られた二次水溶液としての次亜塩素酸水を洗浄水として取り出すための第2取出し管路P4cが接続されている。
【0030】
さらに、第1取出し管路P3cの一部から分岐した分岐管路P3dの内部には、得られた殺菌水のpH値を測定するpH測定器Jの電極が装着されている。同様に、第2取出し管路P4cの一部から分岐した分岐管路P4dの内部にも、得られた洗浄水のpH値を測定するpH測定器Jの電極が装着されている。
尚、第1供給管路P1と第2供給管路P2の配管を例えばJISの呼び径で40Aの樹脂管で構成した場合、第3供給管路P3及び第4供給管路P4以降の配管は、より細い例えば呼び径20Aの樹脂管で構成すると良い。
【0031】
また、第1薬液としての次亜塩素酸ナトリウム水溶液を第1供給管路P1内に添加する第1添加装置A1、一方の第2薬液としての希塩酸を第3供給管路P3内に添加する第2添加装置A2、及び、他方の第2薬液としての水酸化ナトリウム水溶液を第4供給管路P4内に添加する第3添加装置A3が設けられている。
第1添加装置A1は第1供給管路P1における一次混合槽M1よりも上流側の添加位置Q1で注入する。同様に、第2添加装置A2は、第3供給管路P3における第1の二次混合槽M2よりも上流側で、逆止弁VCと流量検出装置F2よりも下流側の添加位置Q2で注入し、第3添加装置A3は、第4供給管路P4における第2の二次混合槽M3よりも上流側で、逆止弁VCと流量検出装置F3よりも下流側の添加位置Q3で注入する。尚、第1、第2及び第3供給管路P1,P3,P4は、下向きに略垂直に延びた最終区間P1e,P3e,P4eを経て一次及び二次混合槽M1,M2,M3に接続されており、各添加位置Q1,Q2,Q3はこれら最終区間P1e,P3e,P4eに配置されている。
【0032】
各添加装置A1,A2,A3はいずれもソレノイド駆動式の定量ポンプで構成されており、それぞれ第1薬液タンクT1に貯留された第1薬液としての次亜塩素酸ナトリウム水溶液、第2薬液タンクT2に貯留された一方の第2薬液としての希塩酸、及び、第3薬液タンクT3に貯留された他方の第2薬液としての水酸化ナトリウム水溶液を、例えば定量ポンプに設けられた入力パネルから手動等で入力された一定の単位吐出量と指示された吐出間隔でパルス式に吐出する。第1薬液は殺菌水と洗浄水のいずれを製造する場合にも使用するので、第1薬液タンクT1は、より大量の第1薬液を貯留できるように、第2及び第3薬液タンクT2,T3の約2倍の容積を備えている。
また、流量検出装置F1によって検出される原水の流量値に基づいて、流量検出装置F1を所定量の原水が通過する毎に添加装置A1から1パルスの第1薬液を吐出させ、同様に、流量検出装置F2や流量検出装置F3によって検出される一次水溶液の流量値に基づいて、添加装置A2,A3から1パルスの第2薬液を吐出させる制御装置(不図示、指令手段の一例)が設けられている。
【0033】
一次混合槽M1及び第1と第2の二次混合槽M2,M3は、互いに基本的に同じ形状と構造を備えており、各供給管路P1,P3,P4よりも管路径の大きな流入部E1,E2,E3をそれぞれ形成するように、各供給管路P1,P3,P4の内径の少なくとも3倍以上、好ましくは3〜5倍の内径を備え、前記内径の少なくとも5倍、好ましくは5〜10倍の長さを備えた円筒状の容器で構成されている。そして、一次混合槽及び各二次混合槽の各流入部E1,E2,E3には、この流入部に約4000ガウス以上の磁束を発生する磁気処理装置B1,B2,B3が設けられている。磁気処理装置B1,B2,B3は、原水及び前記水溶液中にイオン分極電流を発生させることで、水分子および次亜塩素酸イオンの移動をより容易にする。
【0034】
したがって、例えば一次混合槽M1について述べれば、原水は添加位置Q1で注入された次亜塩素酸ナトリウム水溶液と共に、一次混合槽M1内の広い空間に進入するので、加圧状態から解放されることで発生する乱流による混合作用を受けると同時に、流入部E1にて強い磁束によってイオン分極電流が発生し水分子および次亜塩素酸イオンの混合度が高まるので、混合槽内に邪魔板などを設けなくても十分な混合作用が穏やかに得られる。同様に、二次混合槽M2,M3についても、一次混合槽M1で得られた一次水溶液と、添加位置Q2,Q3で注入された第2薬液(希塩酸または水酸化ナトリウム水溶液)との間で同様の良好な混合作用が得られる。
【0035】
磁気処理装置B1,B2,B3としては、例えば一対の永久磁石と、各永久磁石の背面に配置したバックヨークと、各バックヨークの脚部の間に配置された接続板とからなる磁気処理装置を用い、前記一対の永久磁石の間に形成される磁気閉回路の中心に流入部E1,E2,E3が位置するように磁気処理装置を配置すれば良い。尚、第1バッファ槽M2bと第2バッファ槽M3bには磁気処理装置は設けられていない。
また、磁気処理装置B1,B2,B3は、長期間の使用に応じて表面に沈着する固形成分などを取り除き易いように、一次混合槽M1及び第1と第2の二次混合槽M2,M3の各流入部E1,E2,E3の構成部材の内部に組込成形によって閉じ込める、或いは、リング状などの単純な形状の樹脂製保護容器内などに閉じ込めることが好ましい。
【0036】
ところで、原水と第1薬液とは、供給管路P1の最終区間P1eを経て、一次混合槽M1の上端に配置された流入部E1から下向きに供給されるように構成されている。同様に、一次混合槽M1で得られた一次水溶液と添加位置Q2,Q3で注入された第2薬液とは、第3供給管路P3及び第4供給管路P4の各最終区間P3e,P4eを経て、二次混合槽M2,M3の上端に配置された流入部E2,E3から下向きに供給されるように構成されている。尚、前述したように最終区間P1eは略垂直に延びており、最終区間P1eの上方にはエアー抜き用コックCが配置されている。
【0037】
また、第1バッファ槽M2bは第1の二次混合槽M2と平行に配置されており、第1の二次混合槽M2で得られた殺菌水は上向きに第1バッファ槽M2bに進入する。同様に、第2バッファ槽M3bは第2の二次混合槽M3と平行に配置されており、第2の二次混合槽M3で得られた洗浄水は上向きに第2バッファ槽M3bに進入する。一次混合槽M1の下方、第1の二次混合槽M2と第1バッファ槽M2bの下方、及び、第2の二次混合槽M3と第2バッファ槽M3bの下方には、各混合槽M1,M2,M3及びバッファ槽M2b,M3b内の洗浄時、及び、pH電極の交換時などに槽内の液体を抜き去るためのドレン配管Dが設けられている。
【0038】
この次亜塩素酸水製造装置100の運転中には、第1取出し管路P3cに設けられた第1コックK1から、または、第2取出し管路P4cに設けられた第2コックK2から次亜塩素酸水が採取されるように構成されている。また、第1コックK1と第2コックK2の双方から同時に次亜塩素酸水を採取することも可能である。
一次混合槽M1及び各二次混合槽M2,M3の容積は、使用者が求める最も次亜塩素酸濃度の希薄な殺菌水または洗浄水を製造する際に、第1コックK1からの殺菌水の採取、或いは、第2コックK2からの洗浄水の採取に応じて混合槽M1,M2,M3内の溶液が新しいものと入れ替わってしまう前に、各添加装置A1,A2,A3を構成する定量ポンプから少なくとも1パルスの薬液が吐出されるように設定されている。その結果、各添加装置A1,A2,A3から1パルスの薬液も受け取らないまま原水乃至は一次水溶液が一次混合槽M1または二次混合槽M2,M3を素通りするといった事態が生じないので、常に次亜塩素酸ナトリウム水溶液と酸性水溶液とが、または、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とアルカリ性水溶液とが設定された比率で添加混合され、成分が均一で一定濃度の殺菌水や洗浄水が製造可能となる。
【0039】
具体的には、この次亜塩素酸水製造装置100では、各添加装置A1,A2,A3ともに1ストローク当たりの吐出量が0.33mlの定量ポンプを用いており、また、第1薬液タンクT1には6%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が、第2薬液タンクT2には6%の希塩酸が、第3薬液タンクT2には1〜2%の水酸化ナトリウムが貯留させてあるので、一次混合槽M1及び各二次混合槽M2,M3の容積として約330mlを超える必要があり、実際には、一次混合槽M1及び各二次混合槽M2,M3ともに約350mlとされている。
【0040】
すなわち、例えば製造したい次亜塩素酸濃度が最も希薄な殺菌水の濃度を200mg/l(リットル)と設定し、処理水量(殺菌水の採取速度と同じ)を1m3/hとし、第1薬液として6%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた場合を例にすれば、第1薬液を27.8ml/minの供給速度で添加する必要がある計算となり、これは1ストローク当たりの吐出量が0.33mlの定量ポンプから84パルス/min、すなわち、1パルス/0.7秒のペースで吐出させる必要があることを意味する。他方、処理水量が1m3/hである場合、容積が約350mlの一次混合槽M1及び二次混合槽M2内の溶液が新鮮なものと入れ替わるのに約1.23秒を要する計算となるので、前述のように、1パルス/0.7秒のペースで吐出させれば、混合槽内の溶液が入れ替わる前に少なくとも1パルスの吐出が実施されることになる。
【0041】
尚、殺菌水製造装置として使用する場合を例にとって、一次混合槽M1及び各二次混合槽M2に必要な容積を算出する一般式を考えると以下のようになる。すなわち、処理水量(殺菌水の採取速度)をK(m3/h)とし、製造したい最も希薄な殺菌水の次亜塩素酸濃度をC(mg/l)とし、第1薬液として用いる次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度をD(%)とし、定量ポンプの1ストローク当たりの吐出量をS(ml)とし、一次及び二次混合槽M1,M2に必要な容積の下限値をV(ml)とすると、下限値Vは次の数式から求められる。
【0042】
V=(D×S×105)/(6K×C) ――(数式1)
【0043】
処理水量を1m3/hとし、製造したい最も希薄な殺菌水の次亜塩素酸濃度を50mg/l(リットル)と設定した場合の一次及び二次混合槽M1,M2の容積Vをこの数式を用いて計算すると、約660mlにする必要があることが判る。この一般式は、一次水溶液を他方の第2薬液としての1〜2%の水酸化ナトリウム水溶液と混合する二次混合槽M3にも同様に適用される。
【0044】
第1及び第2添加装置A1,A2から吐出する第1薬液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)、及び、一方の第2薬液(希塩酸などの酸性水溶液)の吐出量比を適宜調整することで、第1取出し管路P3cに設けられた第1コックK1から、特に殺菌効果の高い弱酸性(pH6付近)で、且つ、有効塩素濃度が10〜200ppmで取り扱い易い殺菌水を得ることができる。
同様に、第1及び第3添加装置A1,A3から吐出する第1薬液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)、及び、他方の第2薬液(水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液)の吐出量比を適宜調整することで、第2取出し管路P4cに設けられた第2コックK2から、特に洗浄効果の高い弱アルカリ性(pH11〜13)で、且つ、有効塩素濃度が200ppm付近で取り扱い易い洗浄水を得ることができる。
〔実験例〕
【0045】
ここでは次亜塩素酸水の洗浄力を調査するために行った実験の結果を示す。実験ではステンレス鋼に吸着したタンパク質汚れを対象として、次亜塩素酸水の洗浄力を検討し、同時に、次亜塩素酸水のpH値と洗浄力との関係も検討した。
【0046】
(1)実験に用いた材料:
基材:ステンレス鋼(SUS316L)の微粒子(比表面積:0.4m2/g)
タンパク質汚れ:牛血清アルブミン(BSA)
次亜塩素酸水:次亜塩素酸ナトリウム溶液(試薬)を原料とし、イオン交換水を用いて有効塩素濃度100ppm、200ppmの溶液を調製後、硝酸または水酸化ナトリウムにてpH5〜13.5に調整したもの。
比較溶液1:硝酸の水溶液(pH2〜6に調整したもの)
比較溶液2:水酸化ナトリウム水溶液(pH8〜13.5に調整したもの)
【0047】
(2)吸着方法:
50ml容のガラス製バイアル瓶中に20mlのBSA溶液(3g/l、pH5.2、10-3MKNO3)と4gのステンレス鋼微粒子を入れ、2時間振とう保温(40℃、140rpm)することにより吸着させ、得られたBSA吸着ステンレス鋼微粒子を別のバイアル瓶に取り出し、10mlのKNO3(10-3M)で3回洗浄後、40℃にて16時間乾燥させて、洗浄実験用の試料とした。
【0048】
(3)洗浄方法:
上記試料(BSA吸着ステンレス鋼微粒子)を25ml容のガラス製バイアル瓶中に入れ、次亜塩素酸水または比較溶液(1、2)を5ml添加後、2時間振とう保温(40℃、140rpm)することにより洗浄した。
【0049】
(4)除去率の算出方法:
洗浄後、溶液とステンレス鋼微粒子を別々に回収し、各溶液中に離脱されたBSA量とステンレス鋼微粒子に残留しているBSA量とを定量分析した。BSAの定量は、Lowry−Folin法(比色法)または全有機炭素(TOC)分析装置を用いて行った。
除去率は、初期吸着量に対する離脱量の割合と定義し、下記の数式によって求めた。
【0050】
BSAの除去率=(洗浄による離脱量/初期吸着量)×100 ――(数式2)
【0051】
(5)実験結果:
各水溶液のpH値を横軸にとり、各pH値に対応したBSAの除去率を縦軸にとった図2のグラフから次のような知見が得られた。
(i):酸性領域の硝酸水溶液(pH2〜6)はBSA除去作用(洗浄効果)を示さない。
(ii):水酸化ナトリウム水溶液は、強アルカリ性領域(pH11〜13.5)で明確な除去作用を示し、pHの増加と共に著しく除去率が向上するが、弱アルカリ性領域(pH8〜10)では除去作用を示さない。
【0052】
(iii):次亜塩素酸水(100ppm、200ppm)は、pH8〜13.5の広いアルカリ性領域で、水酸化ナトリウム水溶液を凌ぐ優れた除去作用(洗浄効果)を示し、とりわけ、強アルカリ性領域(pH11〜13.5)において、pHの増加と共に著しく除去率が向上する。特に、次亜塩素酸水(100ppm、200ppm)は、水酸化ナトリウム水溶液が除去作用を示さない弱アルカリ性領域(pH8〜10)でも明確な除去作用を示す。他方、弱酸性から中性の領域(pH5〜7)の次亜塩素酸水は除去作用を示さない。また、200ppmの次亜塩素酸水は100ppmの次亜塩素酸水に比して、同じpH値でもより大きな除去作用を示す。これらの結果から、弱酸性のpH領域、すなわち非解離型のHClOはステンレス鋼表面に吸着したBSAに対する除去作用を持たないこと、及び、次亜塩素酸水によるBSA除去作用の強さは、溶液中の解離型HClOの存在比率、すなわち次亜塩素酸イオン(OCl-)量に依存することが推測される。
【0053】
尚、第1コックK1および第2コックK2の開度に応じて、第1供給管路P1内における原水の流量、および、第3供給管路P3または第4供給管路P4内における一次水溶液の流量が変化するが、各供給管内での流量を検出する流量検出装置F1,F2,F3によって検出された原水または水溶液の流量に応じて各添加装置A1,A2,A3からの吐出時期を指令する制御装置(指令手段)の作用によって、コックの開度に関わらず一定割合の薬液が添加される。具体的には、上記の実施形態では、流量検出装置F1,F2,F3を25mlの原水または一次水溶液が通過する毎に各添加装置A1,A2,A3から1パルスの第1薬液または第2薬液を吐出させるように設定されている。但し、この吐出時期については自在に設定変更が可能であり、設定変更によって得られる次亜塩素酸の濃度やpHを調整することができる。
【0054】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明による液体混合装置の別の実施形態をなす次亜塩素酸水製造装置を示す。この次亜塩素酸水製造装置200は、第2薬液として希塩酸(他に硫酸、硝酸、有機酸なども使用可能)を用い、専ら弱酸性の次亜塩素酸水を製造する殺菌水製造装置として使用されることを想定したものである。
次亜塩素酸水製造装置200は、第1薬液としての次亜塩素酸ナトリウム水溶液を原水と混合するための一次混合槽M11、及び、第2薬液としての希塩酸(酸性水溶液の一例であり、他に硝酸、硫酸、有機酸なども使用可能)を一次混合槽M11で得られた一次水溶液と混合するための二次混合槽M12とを有する。
【0055】
一次混合槽M11の入口部には、水道水や井戸水などの原水を供給する第1供給管路P11が接続されている。また、一次混合槽M11の出口部と二次混合槽M12の入口部とは第2供給管路P12によって接続されている。第1供給管路P11内の原水には常に一定以上の水圧が加えられており、第1供給管路P11には、原水の水圧を略一定に調整するレギュレータRが介装されており、レギュレータRの下流側には第1供給管路P11内における原水の流量を検出する流量検出装置F(検出装置の一例)が介装されている。
【0056】
二次混合槽M2の出口部は、一次及び二次混合槽M1,M2と略同一形状の容器で構成されたバッファ槽M13と配管で接続されている。バッファ槽M13の下流側には、得られた二次水溶液としての次亜塩素酸水を殺菌水として取り出すための取出し管路P13が接続されている。
取出し管路P13の一部から分岐した分岐管路P13dの内部には、得られた殺菌水のpH値を測定するpH測定器Jの電極が装着されている。
【0057】
また、第1薬液としての次亜塩素酸ナトリウム水溶液を第1供給管路P11内に添加する第1添加装置A11、及び、第2薬液としての希塩酸を第2供給管路P12内に添加する第2添加装置A12が設けられている。第1添加装置A11は第1供給管路P11における一次混合槽M11よりも上流側の添加位置Q11で注入し、第2添加装置A12は第2供給管路P12における二次混合槽M12よりも上流側の添加位置Q12で注入する。
尚、第1及び第2供給管路P11,P12は、下向きに略垂直に延びた最終区間P11e,P12eを経て一次及び二次混合槽M11,M12に接続されており、各添加位置Q11,Q12はこれら最終区間P11e,P12eに配置されている。第1及び第2添加装置A11,A12はいずれもソレノイド駆動式の定量ポンプで構成されており、それぞれ第1薬液タンクT11に貯留された第1薬液、及び、第2薬液タンクT12に貯留された第2薬液を、例えば定量ポンプに設けられた入力パネルから手動等で入力された一定の単位吐出量と指示された吐出間隔でパルス式に吐出する。
また、流量検出装置Fによって検出される原水の流量値に基づいて、流量検出装置Fを所定量の原水が通過する毎に添加装置A11から1パルスの第1薬液を吐出させ、同時に、添加装置A12から1パルスの第2薬液を吐出させる制御装置(不図示、指令手段の一例)が設けられている。
【0058】
一次混合槽M11及び二次混合槽M12は、互いに基本的に同じ形状と構造を備えており、各供給管路P11,P12よりも管路径の大きな流入部E11,E12をそれぞれ形成するように、各供給管路P11,P12の内径の少なくとも3倍、好ましくは3〜5倍の内径を備え、内径の少なくとも5倍、好ましくは5〜10倍の長さを備えた円筒状の容器で構成されている。そして、一次混合槽及び二次混合槽の各流入部E11,E12には、この流入部に約4000ガウス以上の磁束を発生する磁気処理装置B11,B12が設けられている。磁気処理装置B11,B12は、原水及び前記水溶液中にイオン分極電流を発生させることで、水分子および次亜塩素酸イオンの移動をより容易にする。
【0059】
ところで、原水と第1薬液とは、供給管路P11の最終区間P11eを経て、一次混合槽M11の上端に配置された流入部E11から下向きに供給されるように構成されている。同様に、一次混合槽M11で得られた一次水溶液と添加位置Q12で注入された第2薬液とは、供給管路P12の最終区間P12eを経て、二次混合槽M12の上端に配置された流入部E12から下向きに供給されるように構成されている。前述したように最終区間P11e,P12eはいずれも略垂直に延びており、これら最終区間P11e,P12eの上方にはエアー抜き用コックCが配置されている。
また、バッファ槽M13は二次混合槽M12と平行に配置されており、二次混合槽M12で得られた殺菌水は上向きにバッファ槽M13に進入する。一次混合槽M11の下方、及び、二次混合槽M12とバッファ槽M13の下方には、各混合槽M11,M12及びバッファ槽M13内の洗浄時に槽内の液体を抜き去るためのドレン配管Dが設けられている。
【0060】
次亜塩素酸水製造装置200の運転中には、二次混合槽M12で製造された殺菌水が取出し管路P13から一定速度で採取されるように構成されている。
一次及び二次混合槽M1,M2の容積は、使用者が求める最も希薄な殺菌水を製造する際に、二次混合槽M2で得られた殺菌水のコックKからの採取に応じて混合槽M1,M2内の溶液が新しいものと入れ替わってしまう前に、第1及び第2添加装置A1,A2を構成する定量ポンプから少なくとも1パルスの薬液が吐出されるように設定されている。その結果、第1及び第2添加装置A1,A2から1パルスの薬液も受け取らないまま原水乃至は水溶液が一次混合槽M1または二次混合槽M2を通過するといった事態が生じないので、常に次亜塩素酸ナトリウム水溶液と酸性水溶液とが設定された比率で添加混合され、成分が均一で一定濃度の殺菌水が製造可能となる。
【0061】
具体的には、前述した次亜塩素酸水製造装置100と同様に、この次亜塩素酸水製造装置200でも、第1及び第2添加装置A11,A12ともに1ストローク当たりの吐出量が0.33mlの定量ポンプを用いており、また、第1薬液タンクT11には6%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が、第2薬液タンクT12には6%の希塩酸が貯留させてあるので、一次及び二次混合槽M11,M12の容積として約330mlを超える必要があり、実際には一次及び二次混合槽M11,M12ともに約350mlとされている。
【0062】
第1及び第2添加装置A11,A12から吐出する第1薬液(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)と、第2薬液(希塩酸などの酸性水溶液)との間の吐出量比を適宜調整することで、取出し管路P13の終端に設けたコックKから特に殺菌効果の高い弱酸性(pH6付近)で、且つ、有効塩素濃度が10〜200ppmで取り扱い易い殺菌水を得ることができる。
上記の別実施形態とは逆に、第1薬液タンクT11内の第1薬液として酸性水溶液を用い、第2薬液タンクT12内の第2薬液として次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いても良い。
尚、次亜塩素酸水製造装置200は、第2薬液として酸の代わりにアルカリを用いることによって、弱アルカリ性の次亜塩素酸水を製造する洗浄水製造装置として使用することも可能であることは勿論である。
【0063】
〔その他の実施形態〕
磁気処理装置の設置個所は、一次及び二次混合槽M1,M2,M3,M11,M12内の流入部E1,E2,E3,E11,E12付近に限らず、各供給管路P1,P3,P4,P11,P12内でも良い。但し、原水及び一次水溶液中に、磁束によるイオン分極電流を発生させることで混合促進効果が発揮されている間に一次及び二次混合槽M1,M2,M11,M12内に進入するように、第1薬液の添加位置Q1,Q11から流入部E1,E11の間の領域、及び、第2薬液の添加位置Q2,Q3,Q13から流入部E2,E3,E12の間の領域に設置するのが好適である。また、磁気処理装置はこれらの領域内の複数箇所に設置しても良い。
尚、上記の各実施形態では、磁気処理装置が各薬液の添加位置よりも下流側に配置されているが、磁気処理装置が各薬液の添加位置よりも上流側、或いは、添加位置と同じ個所に位置しても良い。また、各薬液の添加位置としては、上記の実施形態に記された位置から流入部E1,E2付近の間の範囲内の任意の位置であれば良い。
【0064】
二次混合槽M2,M3,M12の下流側に設けたバッファ槽M2b,M3b,M13は、二次混合槽M2,M3,M12で得られた二次水溶液に更に撹拌混合作用を与えるための設備である。このようなバッファ槽M2b,M3b,M13を設けることによって、定常的な運転状態に達する前の通水初期状態でも取出し管路P3d,P4d,P13から良好な混合状態の殺菌水または洗浄水が得られる。但し、次亜塩素酸水製造装置200の使用形態によってこのバッファ槽M2b,M3b,M13を省略することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
良好な混合状態が得られ難い複数の液体どうしを混合する液体混合装置及び液体混合方法の合理的で簡単な構成として有効であり、特に、レジオネラ菌などに対する殺菌力が次亜塩素酸ソーダよりも強い酸性の次亜塩素酸水からなる殺菌水、或いは、タンパク質などに対して高い洗浄力を有するアルカリ性の洗浄水を製造するための合理的な構成の次亜塩素酸水製造装置としても利用される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による液体混合装置の概略構成図
【図2】各溶液の洗浄効果比較結果を示す図
【図3】本発明の別実施形態による液体混合装置の概略構成図
【符号の説明】
【0067】
100 次亜塩素酸水製造装置(液体混合装置、殺菌水及び洗浄水製造装置)
200 次亜塩素酸水製造装置(液体混合装置、殺菌水製造装置)
T1,T11 第1薬液タンク
T2,T3,T12 第2薬液タンク
M1,M11 一次混合槽
M2,M3,M12 二次混合槽
M2b,M3b,M13 バッファ槽
A1,A11 第1添加装置
A2,A12 第2添加装置
A3 第2添加装置
Q1,Q2,Q3,Q11,Q12 添加位置
E1,E2,E3,E11,E12 流入部
B1,B2 磁気処理装置
P1,P11 第1供給管路
P2,P12 第2供給管路
P3 第3供給管路
P4 第4供給管路
P3c,P4c、P13 取出し管路
R レギュレータ
VC 逆止弁
J pH測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給配管を介して供給される原水または水溶液に薬液を混合して混合液体を作製するための混合槽を備えた液体混合装置であって、
前記混合槽は前記供給配管と比して管路径の大きな流入部を備え、前記薬液を前記原水に添加する添加位置と、前記流入部内の溶液中に磁束によってイオン分極電流を発生させ混合を促進させる磁気処理装置とが、前記流入部または前記流入部よりも上流側に配置されている液体混合装置。
【請求項2】
原水または水溶液に前記薬液を添加する添加装置が、薬液をパルス式に吐出する定量ポンプで構成されており、且つ、前記供給配管を介して供給される原水または水溶液の流量を検出する検出装置、及び、前記検出装置によって検出された原水または水溶液の流量に応じて前記各定量ポンプからの吐出時期を指令する指令手段が設けられており、前記混合槽の容積は、最も希薄な混合液体を製造する際に、前記混合槽内の溶液が入れ替わる前に前記定量ポンプから少なくとも1パルスの吐出薬液を受け入れるように設定されている請求項1に記載の液体混合装置。
【請求項3】
前記混合槽は、第1供給配管を介して供給される原水に次亜塩素酸塩水溶液とpH調整液との一方からなる第1薬液を混合して一次水溶液を得るための一次混合槽と、前記一次混合槽から第2供給配管を介して供給される前記一次水溶液に前記次亜塩素酸塩水溶液と前記pH調整液との他方からなる第2薬液を混合して二次水溶液を得るための二次混合槽とを備え、
前記一次混合槽及び前記二次混合槽の少なくとも一方について、前記第1薬液または前記第2薬液を前記原水または前記一次水溶液に添加する添加位置と、前記磁気処理装置とが、前記流入部または前記流入部よりも上流側に配置されている請求項1または2に記載の液体混合装置。
【請求項4】
前記第1薬液は次亜塩素酸塩水溶液からなり、前記一次水溶液に前記第2薬液として酸性水溶液を混合するための第1の二次混合槽と、前記一次水溶液に前記第2薬液としてアルカリ性水溶液を混合するための第2の二次混合槽とが設けられており、前記第2供給配管の前記一次水溶液を、前記第1の二次混合槽と前記第2の二次混合槽とに導く分岐手段が設けられている請求項3に記載の液体混合装置。
【請求項5】
前記分岐手段は、前記第2供給配管を、前記一次水溶液を前記第1の二次混合槽に導く第3供給配管と、前記一次水溶液を前記第2の二次混合槽に導く第4供給配管とに接続する分岐継手からなり、前記切換機構は、前記第1の二次混合槽の下流側に配置された第1コックと、前記第2の二次混合槽の下流側に配置された第2コックとからなる請求項4に記載の液体混合装置。
【請求項6】
前記第3供給配管と前記第4供給配管には各々逆止弁が介装されている請求項5に記載の液体混合装置。
【請求項7】
原水または水溶液に薬液を添加する添加工程と、前記原水または水溶液中に磁束によってイオン分極電流を発生させる磁気処理工程と、磁気処理された前記原水または水溶液中を前記薬液と混合する工程とを有する液体混合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−192419(P2006−192419A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70849(P2005−70849)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(504457913)株式会社シージーアイ (3)
【出願人】(591060980)岡山県 (96)
【Fターム(参考)】