説明

液体潤滑剤

【課題】 低粘度で、蒸発損失が少なく、かつ高引火点の液体潤滑剤を提供する
【解決手段】 40℃で液状である電解質(A)を含有し、40℃での動粘度が1〜20mm2/sである液体潤滑剤であり、特に、電解質(A)が、アミジニウムカチオン(a1)およびアニオン(a2)からなる分子量が1,000以下の電解質であることが好ましく、電解質(A)100重量部への水の溶解度が10重量部以下であって、電解質(A)を構成するアニオンの当量以上の過剰のアニオンの含有量が、電解質(A)を構成するアニオン1当量に対して0.1当量以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体潤滑剤に関する。詳しくは軸受油用の液体潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
HDDなどに使用されるスピンドルモータには、処理スピードの高速化から、年々、高速回転が要求されるようになってきている。
従来のスピンドルモータには玉軸受に代表される転がり軸受が使用されてきたが、性能及びコスト面から非接触型の流体軸受が用いられるようになってきている。この流体軸受の高速回転時の性能(主に回転トルク)は、用いられる潤滑剤の粘度によって定まることが多く、低粘度であるほど高速回転時の回転トルクは低くなる傾向にある。
一方、これらの潤滑剤は、使用時に高温にさらされるため、蒸発損失や引火点を抑える必要がある。
これらの潤滑剤としては、炭化水素系液体潤滑剤やエステル油が提案されている。(特許文献−1〜3参照)
【特許文献−1】特開平11−172267号公報
【特許文献−2】特開2001−240885号公報
【特許文献−3】特開2002−146374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の潤滑剤では、比較的粘度が高いことによる潤滑特性の不十分さ、高温での蒸発損失および引火性などにおいて満足できないものであり、改良が必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、鋭意検討した結果、上記課題を解決できることを見いだし、本発明に到達した。即ち、本発明は、40℃で液状である電解質(A)を含有し、40℃での動粘度が1〜20mm2/sである液体潤滑剤である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の液体潤滑剤は、従来の液体潤滑剤に比較して低粘度であり、蒸発損失が少なく、かつ、引火点が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の液体潤滑剤は40℃で液状の電解質(A)(以下において、単に、電解質(A)または(A)と表記する場合がある)を含有し、(A)の40℃における動粘度は、好ましくは1〜20mm2/s、さらに好ましくは2〜18mm2/s、特に好ましくは3〜15mm2/sである。(A)の動粘度が1mm2/s以上であると耐摩耗性がさらに良好になり、20mm2/s以下であればさらに粘性抵抗が低くなる。
本発明における40℃での動粘度は、JIS K 2283に記載された方法を用い測定されたものである。
本発明の液体潤滑剤は、電解質(A)そのものからなるか、または(A)とその他の成分からなる。
本発明の液体潤滑剤は、40℃における動粘度が1〜20mm2/s、好ましくは2〜18mm2/s、さらに好ましくは3〜15mm2/sである。液体潤滑剤の動粘度が1mm2/s未満であると、耐摩耗性に乏しくなり、20mm2/sを越えると、粘性抵抗が高くなる。
【0007】
本発明における電解質(A)を構成するカチオンとしては、例えばアミジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピペリジンカチオン、モルホリンカチオン、ピペラジンカチオンおよびピロールカチオンなどの第4級アンモニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン、並びにスルホニウムカチオンなどの第4級オニウムカチオンなどが挙げられ、2種以上の混合物であってもよい。好ましくは、第4級アンモニウムカチオン、特に一般式(1)または(2)で示されるアミジニウムカチオン(a1)である。
【0008】
【化3】

【0009】
【化4】

【0010】
一般式(1)および(2)においてR1は、水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子である。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、及び芳香族基含有の炭素数6〜20の炭化水素基が挙げられる。炭素数1〜20のアルキル基としてはメチル、エチル、イソプロピル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等、水酸基で置換された炭素数1〜20の炭化水素基としてはヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシヘキシル、1−ヒドロキシラウリル等のヒドロキシアルキル基が挙げられる。芳香族基含有の炭素数6〜20の炭化水素基としては、例えばフェニル基、ベンジル基が挙げられる。好ましくは、炭化水素数が1〜10の炭化水素基又は水素原子である。特に好ましくは炭素数が1〜5の炭化水素基又は水素原子である。
【0011】
Rは、それぞれ水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基、及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよい炭素数1〜10(官能基の炭素数は含まない)の炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。
Rとしては、上記R1にあげられた炭素数1〜10の炭化水素基、及びこれらの任意の位置に水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルデヒド基を有している基(例えば2−ヒドロキシブチル基、1−アミノエチル基、1−ニトロエチル基、2−シアノプロピル基、1−カルボキシプロピル基等)、また主鎖の中にエーテル基(例えばメトキシエチル基、エトキシプロピル基等)を有している基が挙げられる。R1およびRの一部または全部は、それらの2〜4個が相互に結合して2〜4価の基となり窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。
好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基および環形成基であり、特に好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基および環形成基である。
【0012】
アミジニウムカチオン(a1)の具体例としては、下記に例記するようなカチオンが挙げられる。
(i)イミダゾリニウムカチオン
1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−ヘプチルイミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(−2’ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(−3’ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(−4’ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−ドデシルイミダゾリニウム、1,1−ジメチルイミダゾリニウム、1,1,2−トリメチルイミダゾリニウム、1,1,2,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,1,2,5−テトラメチルイミダゾリニウム、1,1,2,4,5−ペンタメチルイミダゾリニウムなど。
(ii)イミダゾリウムカチオン
1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−ヘプチルイミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−(−2’ヘプチル)イミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−(−3’ヘプチル)イミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−(−4’ヘプチル)イミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−ドデシルイミダゾリウム、1,1−ジメチルイミダゾリウム、1,1,2−トリメチルイミダゾリウム、1,1,2,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,1,2,5−テトラメチルイミダゾリウム、1,1,2,4,5−ペンタメチルイミダゾリウムなど。
(iii)テトラヒドロピリミジニウムカチオン
1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウム、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、5−エチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウムなど。
これらのうちで好ましいのは(ii)イミダゾリウムカチオン及び(iii)テトラヒドロピリミジニウムカチオンであり、さらに好ましいのは、1、3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1、2、3トリメチルイミダゾリウムであり、特に好ましいものは、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムである。
【0013】
本発明におけるアニオン(a2)としては、公知のアニオンが使用でき、例えば下記に例示するような酸から水素原子を除いたアニオンである。アニオンは2種以上の混合物であってもよい。
【0014】
(1)無機強酸:
フッ酸、塩酸、硫酸、燐酸、HClO4、HBF4、HPF6、HAsF6、HSbF6、フルオロスルホン酸等;
(2)ハロゲン原子含有アルキル基置換無機強酸(アルキル基の炭素数1〜30):
HBFn(CF34-n、HPFn(CF36-n、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、ペンタクロロプロパンスルホン酸、ヘプタクロロブタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロブタン酸、トリクロロ酢酸、ペンタクロロプロピオン酸およびヘプタクロロブタン酸等;
(3)ハロゲン原子含有スルホニルイミド(炭素数1〜30):
ビス(フルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドおよびビス(フルオロスルホニル)イミド等;
(4)ハロゲン原子含有スルホニルメチド(炭素数3〜30):
トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド等;
(5)ハロゲン原子含有カルボン酸アミド(炭素数2〜30):
ビス(トリフルオロアセト)アミド等;
(6)ニトリル基含有イミド:
HN(CN)2等;
(7)ニトリル含有メチド:
HC(CN)3等;
(8)炭素数1〜30のハロゲン原子含有アルキルアミン:
HN(CF32
(9)チオシアン酸等;が挙げられる。
【0015】
これらのうちで好ましいものは、(2)ハロゲン原子含有アルキル基置換無機強酸および(3)ハロゲン原子含有スルホニルイミドであり、さらに好ましいのは(3)ハロゲン原子含有スルホニルイミド、特に好ましいのはビス(フルオロスルホニル)イミドおよびビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
【0016】
本発明における電解質(A)の具体例としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(フルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF4アニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF3(CF3)アニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF2(CF32アニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF3(C25)アニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとBF3(C49)アニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとN(CN)2アニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとC(CN)3アニオンからなる電解質、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとトリフルオロメタンスルホン酸アニオンからなる電解質、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなる電解質、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなる電解質、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなる電解質、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなる電解質、1−メトキシエチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなる電解質、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンとビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンからなる電解質、などが挙げられる。
【0017】
本発明において電解質(A)の製造方法は特に限定されないが、例えば、J.Am.Chem.Soc.,69,2269(1947)、米国特許第4892944号などに記載の方法(3級アミンを炭酸エステルで4級化後、塩交換する方法)などが挙げられる。
電解質(A)を形成するカチオンが第4級アンモニウムカチオンである場合の主な製造方法を以下に例示する
【0018】
製造方法−1
第3級アミン(第4級アンモニウムカチオン形成する前の第3級アミン)と同当量以上(好ましくは1.1〜5.0当量)の炭酸ジアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜5)を、溶媒(例えば、メタノール)の存在下(第3級アミンの重量に基づいて10〜1,000%)または非存在下、反応温度80〜200℃、好ましくは100〜150℃で反応させて第4級アンモニウム塩を形成し、さらに前記のアニオンを形成する酸を添加(第4級アンモニウムの当量に基づいて0.9〜1.0当量)し、10〜50℃で1時間撹拌して塩交換する。溶媒を80〜120℃で減圧留去して、目的の第4級アンモニウム塩を得る。炭酸ジアルキルエステルとしては、炭酸ジメチルおよび炭酸ジエチルが挙げられる。
第3級アミンとしては、例えば目的の第4級アンモニウムカチオンが上記のアミジニウムカチオン(a1)である場合は、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾールなどが挙げられる。
製造方法−2
第4級アンモニウム塩〔例えば、クロルアニオンからなる塩〕のアセトニトリル溶液(20〜70重量%)に前記の酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩またはカリウム塩など)を加え(第4級アンモニウム塩/塩の当量比は通常1/1〜1/1.5、好ましくは1/1.05〜1/1.3)、室温で約2時間撹拌混合する。生成した沈殿物を遠心分離により除去し、上層中の溶媒を減圧留去して、目的の第4級アンモニウム塩を得る。
【0019】
液体潤滑剤は、一般的に、吸湿すると使用中に粘度や体積が大きく変化し易く、腐食や錆を発生するおそれがあるため、電解質(A)は、吸湿性が少なく、電解質への水の溶解度が少ない方が好ましい。
本発明における電解質(A)100重量部への水の溶解度は、10重量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは6重量部以下、特に好ましくは4重量部以下、最も好ましくは2重量部以下である。
【0020】
本発明における水の溶解度は以下の方法で測定することができる。
200mlのビーカーに、電解質(A)50gに対して水50gを入れて、25℃で1時間攪拌(櫂型攪拌羽根で200rpm)した後、24時間静置することにより電解質相と水相に分液させる。電解質相を取り出し、JIS K 2275に記載された方法で水分を測定して溶解度を計算する。
【0021】
また、一般に、電解質の分子量が大きく、長鎖アルキル基を有しているものは水の溶解度の低いことが知られているが、一般的に、分子量の大きい電解質は粘度が高いため、分子量の低いことが液体潤滑剤の成分としては好ましい。従って、本発明の電解質(A)の分子量は1,000以下が好ましい。さらに好ましくは800以下、特に好ましくは600以下、最も好ましくは500以下である。なお、電解質(A)の分子量は(A)の化学式から算出できる。
【0022】
本発明の液体潤滑剤は、当量のカチオンとアニオンから構成される電解質(A)のみを含むものであってもよいが、その他の成分を含むものも含まれる。
【0023】
その他の成分としては、電解質の製造における未反応物または副生成物としての過剰のアニオンが挙げられる。
本発明の液体潤滑剤は、過剰のアニオンを含まないことが金属材料の腐食防止の観点から好ましい。
本発明の液体潤滑剤において、電解質(A)を構成するアニオンの当量以上の過剰のアニオンの含有量は、電解質(A)を構成するアニオン1当量に対して0.1当量以下、さらに好ましくは0.05当量以下、特に0.01当量以下、とりわけ好ましくは0当量であることが好ましい。
なお、過剰のアニオンが存在する場合、その対イオンであるカチオンは、該アニオンと該カチオンとの塩が電解質(A)に相当しない種類のカチオンであり、例えばアンモニウムカチオンおよびアミンカチオンなどの有機カチオン、並びにナトリウムカチオンおよびカリウムカチオンなどのアルカリ金属カチオンが挙げられる。
なお、本発明においては、過剰のアニオンがプロトンとから形成される酸として存在している場合も過剰のアニオンと見なされる。
【0024】
本発明において、過剰のアニオンを減らす方法は特に限定されない。
製造段階でのアニオン投入量を減らす方法や、製造後に水および有機溶剤を用いて抽出する方法などが挙げられる。アニオン投入量を減らす場合、通常、カチオンに対して1.0当量とするところを0.9〜0.999当量にすることが挙げられる。過剰のアニオンを抽出をする場合、目的とする電解質(A)が溶解せず、過剰のアニオンが溶解する溶剤を抽出剤として用いることができる。具体的には、疎水性の電解質(A)から酸を形成する過剰のアニオンを抽出する場合、抽出剤として水を使用することができる。
【0025】
液体潤滑剤中に含有する過剰のアニオンの当量は、核磁気共鳴(NMR)測定装置を用いて測定できる。カチオンおよびアニオンともに水素原子を含有している場合、1H−NMR測定におけるピーク強度からカチオンおよびアニオンの当量比を算出し、過剰当量を算出することができる。また、カチオンとアニオンが共通の元素を有していない場合も標準物質を添加して測定することによりカチオンおよびアニオンの当量比を算出し、過剰当量を算出することができる。例えば、また、カチオンがプロトンを含有し、アニオンがプロトンを含有せず、フッ素原子を含有する場合、標準物質として4−フルオロアセトフェノン(東京化成工業(株)製)を同重量添加し、19F−NMRおよび1H−NMR測定を行う。それぞれのピーク強度からカチオンおよびアニオンの当量比を算出することができる。
【0026】
本発明の液体潤滑剤のpHは、好ましくは5〜9、さらに好ましくは6〜8である。本発明におけるpHは、液体潤滑剤の10重量%水分散液を25℃でpHメーター(例えば、堀場製作所株式会社製「F−50」など)を用いて測定できる。なお、前述の過剰のアニオンがプロトンとから形成される酸として存在している場合はpHが酸性側になりやすい。
【0027】
本発明の液体潤滑剤は、腐食防止剤(B)を含有していることが好ましい。
本発明における腐食防止剤とは、金属表面に作用し金属の腐食速度を低下させる添加剤の総称であり、金属面に防腐食性の皮膜を形成させるものであれば全て使用することができる。
【0028】
腐食防止剤(B)としては、以下の化合物が挙げられる。
(B1):N−N結合、N=N結合、N−C−N結合、N=C−N結合、N−C−S結合、N=C−S結合、N−C=S結合およびC(=S)−S結合からなる群から選ばれる1種以上の結合を有する化合物;
(B2):カルボン酸エステル基、アミノ基およびカルボン酸アミド基からなる群から選ばれる1種以上の基を有する化合物;
(B3):炭素数4〜24の脂肪族アルコールおよびオキサゾール基含有化合物など。
【0029】
(B1)としては以下のものが挙げられる。
N−N結合またはN=N結合を有する化合物としては、例えばトリアゾール基含有化合物(具体的には、ベンゾトリアゾール、Nアルキル置換ベンゾトリアゾール、カルボキシル基置換ベンゾトリアゾールなど)およびインダゾール基含有化合物(具体的にはインダゾールなど)などが挙げられる。
【0030】
N−C−N結合またはN=C−N結合を有する化合物としては、例えばイミダゾール基含有化合物{具体的には、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)ベンゾイミダゾール、2−(デシルチオ)ベンゾイミダゾールなど}およびピリミジン基含有化合物(具体的には、ピリミジンなど)などが挙げられる。
【0031】
N−C−S結合、N=C−S結合またはN−C=S結合を有する化合物としては、例えば
チアゾール基含有化合物{具体的には、2−(ドデシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(ヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(デシルチオ)ベンゾチアゾールなど}およびチアジアゾール基含有化合物{具体的には、2,5−ビス(ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィドなど}などが挙げられる。
【0032】
C(=S)−S結合を有する化合物としては、例えばドデシルチオ−N,N−ジエチルジチオカーバメート、ドデシルチオN,N−シクロペンタメチレンジチオカーバメート、ドデシルチオN,N−ジフェニルジチオカーバメート、2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ベンゾチアゾール、2,5−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、テトラエチルチウラムジスルフィドおよびジシクロペンタメチレンチウラムジスルフィドなどが挙げられる。
【0033】
(B1)のうち好ましいのはトリアゾール基含有化合物であり、さらに好ましいのはベンゾトリアゾールである。
【0034】
(B2)としては、例えば炭素数3〜30のアルキルまたはアルケニルコハク酸のジエステル、炭素数3〜30の脂肪族アミン、並びに炭素数3〜30のアルキルまたはアルケニルコハク酸モノアミドまたはジアミドなどが挙げられる。
【0035】
(B3)のうちの炭素数4〜24の脂肪族アルコールとしては、ブタノール、デシルアルコールおよびドデシルアルコールなどが挙げられ、オキサゾール基含有化合物としては、2−(ドデシルジチオ)ベンゾオキサゾールおよび2−(デシルチオ)ベンゾオキサゾールなどが挙げられる。
【0036】
腐食防止剤(B)のうち好ましいのは、(B1)単独、(B1)および(B2)の併用、(B1)および(B3)の併用、並びに(B1)〜(B3)の併用であり、さらに好ましいのは(B1)および(B2)の併用である。(B1)の含有は銅など非鉄金属の腐食防止の観点から好ましく、(B2)の含有は鉄の腐食防止の観点から好ましい。
【0037】
腐食防止剤の含有量は、液体潤滑剤の重量に基づいて、通常10%以下(以下において、特に限定しない限り%は重量%を表す)、0.001〜10%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜6%、特に好ましくは0.05〜4%、最も好ましくは0.1〜2%である。
【0038】
腐食防止剤が2種以上の併用である場合の含有量は合計含有量が上記範囲にあることが好ましい。
(B1)および(B2)の併用の場合の重量比(B1)/(B2)は、好ましくは1/0.1〜10、さらに好ましくは1/0.2〜5である。
(B1)と(B2)もしくは(B3)を併用する場合の重量比は、(B1)/(B2)もしくは(B3)が1/0.1〜10、さらに好ましくは1/0.2〜8であり、特に好ましくは1/0.3〜5である。
(B1)〜(B3)の3種を併用する場合の重量比(B1)/(B2)/(B3)は、1/0.01〜10/0.01〜10、さらに好ましくは1/0.1〜8/0.1〜8であり、特に好ましくは1/0.2〜5/0.2〜5である。
【0039】
本発明の液体潤滑剤は、希釈剤(C)を含有していてもよい。
希釈剤の存在により腐食性が抑制されるうえ、低粘度の希釈剤の含有により電解質(A)単独よりも低粘度化できる。ところが、一般的に希釈剤は蒸発しやすく、その配合により液体潤滑剤の蒸発損失が大きくなってしまうため、希釈剤(C)は、数式(1)および(2)に基づいて含有することが好ましい。
希釈剤が下記の範囲内である場合、液体潤滑剤の粘度が低く、かつ蒸発損失が少ないという点で優れている。
0.0001≦r≦6×10-7exp(0.045Bp) (1)
ただし、Bp≧114
0≦[1−r]log(Va)+r×log(Vc)≦1.3 (2)
式中、rは電解質(A)と希釈剤(C)の合計重量に対する希釈剤(C)の重量比、Bpは希釈剤(C)の760mmHgにおける沸点(℃)であり、VaおよびVcはそれぞれ電解質(A)および希釈剤(C)の40℃での動粘度(mm2/sec)である。
【0040】
さらに好ましくは、数式(3)および(4)に基づいて含有することであり、
0.0001≦r≦4×10-7exp(0.045Bp) (3)
ただし、Bp≧123
0≦[1−r]log(Va)+r×log(Vc)≦1.3 (4)
特に好ましくは、数式(5)および(6)に基づいて含有することである。
0.001≦r≦2×10-7exp(0.045Bp) (5)
ただし、Bp≧190
0≦[1−r]log(Va)+r×log(Vc)≦1.3 (6)
【0041】
希釈剤(C)は、電解質(A)と配合する濃度範囲において均一に混合できることが好ましく、相溶性の観点から希釈剤(C)の双極子モーメント(Dm)は0.5以上が好ましく、0.5〜10.0がさらに好ましく、1.0〜9.0が特に好ましく、1.5〜8.0が最も好ましい。
なお、双極子モーメントはORGANIC SOLVENTS(JOHN A.RIDDICKおよびWILLIAM B.BUNGER著、WILEY−INTERSCIENCE発行)に記載された数値を用いることができる。記載のない化合物もCACheシステムにて計算することができる。例えば、富士通社製のCACheWORKSYSTEM5.02を利用して、Workspace上で計算したい分子構造を描き、構造最適化した後、MM/PM3geometryで計算することで求めることができる。
【0042】
希釈剤(C)としては、例えばテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド[Bp=285℃、Vc=4.7、Dm=4.81]、ジフェニルプロパノン[Bp=330℃、Vc=7、Dm=2.40]およびエチレングリコール[Bp=189℃、Vc=8.8、Dm=2.28]などが挙げられる。
【0043】
本発明の液体潤滑剤は、その用途により、もしくは要求される性能により、さらにその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、従来から公知の潤滑剤として使用されている鉱物油、エステル系潤滑剤(例えば、脂肪族二塩基酸エステル、ポリオールエステルなど)、またはリン酸エステル(例えば、トリクレジルフォスフェート、トリブチルフォスフェートなど)などを使用することができる。
これら公知の潤滑剤の含有量は、液体潤滑剤全体の重量に基づいて50%以下が好ましく、さらに好ましくは30%以下である。
【0044】
本発明の液体潤滑剤は、さらに、酸化防止剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤等の添加剤の1種又は2種以上を適宜配合することも可能である。
これらの添加剤の配合量は、所定の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、液体潤滑剤の全体の重量に基づいて、それぞれの好ましい配合量の例を以下に示す。
酸化防止剤は、0〜5%、好ましくは0.01〜3%;油性剤は、0〜5%、好ましくは0.01〜3%;摩耗防止剤・極圧剤は、0〜10%、好ましくは0.01〜5%;防錆剤は、0〜5%、好ましくは0.01〜2%;粘度指数向上剤または流動点降下剤は、0〜15%、好ましくは0.1〜7%;消泡剤は、0〜0.1%、好ましくは0.0005〜0.01%;である。
【0045】
本発明の液体潤滑剤は、低粘度でありながら低い蒸発損失と高い引火点を持つため、高速モータ等に使用される焼結含油軸受油 又は流体軸受油に適している。さらに好ましくは、CD,DVD,HDD,ポリゴンスキャナーなどに使用されるスピンドルモータの流体軸受油に適している。
【0046】
[実施例]
以下、製造例、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
製造例1〜7:電解質(A)の製造
[製造例1]
ジメチルカーボネート135部(1.5モル部)のメタノール192部溶液に、1−エチルイミダゾール96部(1.0モル部)を滴下して、130℃で40時間攪拌することで、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルカーボネート塩を生成した。さらにHBF487.8部(1.0モル部)を加えると炭酸ガスが激しく発生して、塩交換が起こった。1.0kPa以下の減圧度で120℃で加熱して、溶媒のメタノールを除去することで電解質1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・BF4 (E−1)を得た。
[製造例2]
HBF4をビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド281部(1.0モル部)に代える以外は製造例1と同様にして電解質1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(E−2)を得た。
[製造例3]
1−エチルイミダゾールを1−エチル−2−メチルイミダゾール110部(1.0モル部)に代える以外は製造例2と同様にして電解質1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(E−3)を得た。
[製造例4]
1−エチルイミダゾールを N,N−ジメチルプロピルアミン87部(1.0モル部)に代える以外は製造例2と同様にして電解質トリメチルプロピルアンモニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(E−4)を得た。
[製造例5]
ジメチルカーボネート135部(1.5モル部)のメタノール192部溶液に、1−エチルイミダゾール96部(1.0モル部)を滴下して、130℃で40時間攪拌することで、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルカーボネート塩を生成した。35%塩酸104.3部(1.0モル部)を加えた後、1.0kPa以下の減圧度で120℃で加熱して蒸留し、メタノールおよび水を除去することで1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩化物塩(1.0モル部)を得た。アセトニトリル410部(10モル部)およびKBF3(C49)326部(1.0モル部)を加え、25℃にて10時間攪拌すると、塩交換が起こり、塩化カリウムの沈殿が発生した。濾過により沈殿物を除去した後、1.0kPa以下の減圧度で120℃で加熱して、溶媒のアセトニトリルを除去することで電解質1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・BF3(C49)(E−5)を得た。
[製造例6]
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを309部(1.1モル部)に代える以外は製造例2と同様にしてアニオン過剰の電解質1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(E−6)を得た。
[製造例7]
HBF4をビス(フルオロスルホニル)イミド181部(1.0モル部)に代える以外は製造例1と同様にして電解質1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド(E−7)を得た。
【0048】
得られた電解質(E−1)〜(E−7)は、それぞれ以下の組成を有する。
<電解質>
(E−1):1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・BF4
(E−2):1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
(E−3): 1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
(E−4):トリメチルプロピルアンモニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
(E−5):1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・BF3(C49
(E−6):1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
(E−7):1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド
【0049】
それぞれの電解質の40℃での性状、40℃での動粘度、分子量、および水の溶解度を表1に示す。測定法は以下のとおりである。
[40℃での動粘度]
JIS K 2283に従って測定した。
[水の溶解度]
200mlのビーカーに、電解質(A)50gに対して水50gを入れて、25℃で1時間攪拌(櫂型攪拌羽根で200rpm)した後、24時間静置することにより電解質相と水相に分液させた。電解質相を取り出し、JIS K 2275に記載された方法で水分を測定して計算した。
【0050】
【表1】

【0051】
[実施例1〜10および比較例1〜4]
表2に記載のように、電解質(E−1)〜(E−7)、または下記の比較の液体潤滑剤を主成分とし、必要により、下記の腐食防止剤および/または希釈剤を添加、配合して、実施例および比較例の液体潤滑剤を調製した。表2中の( )内は配合重量部数である。
【0052】
<比較の液体潤滑剤>
(H−1):ポリアルファオレフィン(商品名:Nexbase2004(ネステ社製))
(H−2):リン酸トリブチル(和光純薬(株)製)
(H−3):1,3−ジフェニル−2−プロパノン(アルドリッチ(株)製)
(H−4):リン酸トリトリル(和光純薬(株)製)
(H−5):ジオクチルセバケート(和光純薬(株)製)
(H−6):スピンドル油(出光興産(株)製)
<腐食防止剤>
(I−1):ベンゾトリアゾール(和光純薬(株)製)
<希釈剤>
(S−1):テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド[Bp=285℃、Vc=4.7、Dm=4.81](和光純薬(株)製)
(S−2):エチレングリコール[Bp=189℃、Vc=8.8、Dm=2.28](和光純薬(株)製)
【0053】
【表2】

【0054】
得られた液体潤滑剤の40℃での動粘度、引火点、蒸発損失、アニオン過剰当量および金属腐食性を下記の測定方法で測定した結果を表3に示した。
【0055】
[40℃での動粘度]
JIS K 2283に従って測定した。
[引火点]
JIS K 2265に従って測定した。
[蒸発損失]
測定方法−1:TG−DTA法で、100℃で12時間の重量減少(重量%)を測定した。
測定方法−2:DIN51581記載の方法に従って測定した。
[アニオン過剰量]
前述のように核磁気共鳴(NMR)測定装置を用いて測定した。
[金属腐食性]
JIS K 2513に従って、研磨した銅板(材質C1100P)を試験液に浸漬し、温度80℃、湿度90%にて1週間保持した際の金属表面の変色を4段階で評価した。数字の小さいほうが腐食性の小さいことを示す。
【0056】
【表3】

【0057】
比較例の液体潤滑剤のうち、動粘度の低いものは蒸発損失が大きく引火点も低い。逆に蒸発損失の少なく引火点も高いものは動粘度が高くなる。
本発明の液体潤滑剤は低粘度と低蒸発が両立されている。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の液体潤滑剤は、電気機器、特にCD,DVD,HDD,ポリゴンスキャナーなどに使用されるスピンドルモータなどの流体軸受け油として有用である。また、真空装置や半導体製造装置にも好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃で液状である電解質(A)を含有し、40℃での動粘度が1〜20mm2/sである液体潤滑剤。
【請求項2】
電解質(A)が、一般式(1)または(2)で示されるアミジニウムカチオン(a1)、並びにアニオン(a2)からなる電解質である請求項1記載の液体潤滑剤。
【化1】

【化2】

[式中、R1は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜20の1価炭化水素基または水素原子;Rは、水酸基,アミノ基,ニトロ基,シアノ基,カルボキシル基,エーテル基もしくはアルデヒド基を有していてもよい、同一または異なる、炭素数1〜10の1価炭化水素基であるか;またはR1およびRの一部または全部は、それらの2〜4個が相互に結合して2〜4価の基となり窒素原子と共に複素環を形成していてもよい基である。]
【請求項3】
電解質(A)の分子量が1,000以下であり、電解質(A)100重量部への水の溶解度が10重量部以下である請求項1または2記載の液体潤滑剤。
【請求項4】
電解質(A)を構成するアニオンの当量以上の過剰のアニオンの含有量が、電解質(A)を構成するアニオン1当量に対して0.1当量以下である請求項1〜3のいずれか記載の液体潤滑剤。
【請求項5】
さらに腐食防止剤(B)を液体潤滑剤の重量に基づいて0.001〜10重量%含有してなる請求項1〜4いずれか記載の液体潤滑剤。
【請求項6】
腐食防止剤(B)が、N−N結合、N=N結合、N−C−N結合、N=C−N結合、N−C−S結合、N=C−S結合、N−C=S結合およびC(=S)−S結合からなる群から選ばれる1種以上の結合を有する化合物(B1)からなる請求項5記載の液体潤滑剤。
【請求項7】
腐食防止剤(B)が、前記(B1)、並びに、カルボン酸エステル基、アミノ基およびカルボン酸アミド基からなる群から選ばれる1種以上の基を有する化合物(B2)からなり、(B1)/(B2)の重量比が1/0.1〜10である請求項6記載の液体潤滑剤。
【請求項8】
さらに、数式(1)および(2)に基づく重量の希釈剤(C)を含有する請求項1〜7いずれか記載の液体潤滑剤。
0.0001≦r≦6×10-7exp(0.045×Bp) (1)
ただし、Bp≧114
0≦[1−r]log(Va)+r×log(Vc)≦1.3 (2)
[式中、rは電解質(A)と希釈剤(C)の合計重量に対する希釈剤(C)の重量比、Bpは希釈剤(C)の760mmHgにおける沸点(℃)であり、VaおよびVcはそれぞれ電解質(A)および希釈剤(C)の40℃での動粘度である。]
【請求項9】
該希釈剤(C)の双極子モーメントが0.5〜10である請求項8記載の液体潤滑剤。
【請求項10】
軸受油用である請求項1〜9いずれか記載の液体潤滑剤。

【公開番号】特開2007−39653(P2007−39653A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136533(P2006−136533)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】