説明

液体用紙容器の予備加熱装置および加熱量の管理方法

【課題】液体用紙容器の頂部などの密封される部分の予備加熱装置で、熱風の加熱量の管理を容易にした液体用紙容器の予備加熱装置及び加熱量の管理方法の提供にある。
【解決手段】液体用紙容器20の熱圧着で密封される部分21に、熱風hで表面の熱可塑性樹脂層31を溶融する液体用紙容器の予備加熱装置1で、前記密封される部分21の近傍に移動して位置せしめるセンターオーブン11aを具備しており、このオーブン11aの密封される部分21に臨む面に、複数段にわたり多数の熱風吹き出し用孔bが貫設され、この多数の熱風吹き出し用孔bの一段目で、前記密封される部分21のうちのシール強度を多く要しない部分に臨む部位に熱風吹き出し用孔bより順に内径が大きくなる3個の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔k1、k2、k3が貫設されている液体用紙容器の予備加熱装置1としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁や清酒などを収納し、ゲーブルトップ(切妻屋根)型などの液体用紙容器の製函、充填工程において、仮折りされた液体用紙容器の頂部や底部などの熱圧着でシールされる部分の熱圧着を容易にするため、予め表面や内面の熱可塑性樹脂層を均一にかつ適量の加熱で熱溶融する液体用紙容器の予備加熱装置およびその予備加熱装置による加熱量の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、清酒などを収納するゲーブルトップ型などの液体用紙容器が知られ、その液体用紙容器を構成する熱可塑性樹脂層を積層した積層材料として、例えば、表面側から、熱可塑性樹脂層としてのポリエチレン層(30μm)/紙材料層(310g/m2 )/ポリエチレン層(25μm)/アルミニウム箔(9μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/熱可塑性樹脂層としてのポリエチレン層(60μm)の順に積層された紙積層材料などが広く用いられている。
【0003】
なお、上記積層材料の中のアルミニウム箔は、果汁や清酒などの内容物が空気中の酸素や内容物の香り成分などを遮断するガスバリア層として積層されているものである。
【0004】
以上のような構成の紙積層材料を用いた液体用紙容器の製函、(内容物の)充填工程において、仮折りされた液体用紙容器の頂部や底部などの開口部の内面側全周(外面側一部周も含む)の密封する部分の熱圧着(シール)を容易にするため、予めこの密封する部分に、その近傍に位置する加熱装置の加熱オーブンより熱風を吹き付け、表面や内面の熱可塑性樹脂層を溶融し、密封する部分を合わせシールする工程がある。
【0005】
上記熱可塑性樹脂層の溶融は、例えば、図5(a)の部分説明図に示すように、予備加熱装置(1)の加熱オーブン(11)を液体用紙容器(20)の仮折りされた頂部の密封される部分(21)にあてがって、この加熱オーブン(11)から熱風を液体用紙容器(20)の熱圧着で密封される部分(21)に吹き付ける液体用紙容器の予備加熱装置(1)で成されている。
【0006】
さらに詳しくは、例えば、図5(b)の側面図に示すように、加熱オーブン(11)は、液体用紙容器(20)の頂部の端部である、密封される部分(21)を内外から囲むようなセンターオーブン(11a)とサイドオーブン(11b)とで構成されている。また、例えば、図5(c)に示すように、液体用紙容器の内面に熱風を吹き付ける加熱オーブン(11)を構成するセンターオーブン(11a)の全周の密封される部分(21)に臨む面には、1.0〜2.0mmφ程度の多数の熱風吹き出し用孔(b)が横に複数段にわたり千鳥足状あるいは並列に貫設されている液体用紙容器の予備加熱装置(1)がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平9−226725号公報(図3等) 上記のような構成の液体用紙容器の予備加熱装置(1)を用いて、容器の内面等を加熱して溶融するに際し、その加熱量を管理する方法として、例えば、図6(a)の側断面図に示すように、液体用紙容器(20)の内面の密封される部分(21)に、加熱オーブン(11)の熱風吹き出し用孔(b)から適量の熱風(h)を吹き付けると、密封される部分(21)の熱可塑性樹脂層(31)が溶融されて凹凸状となり、それを正面から見ると、中間に積層されているガスバリア層(32)としてのアルミニウム箔の表面が白濁したような状態として視認されるようになり、この白濁の程度によって、加熱量の適度を判断していた。
【0008】
また、さらに多量の熱風(h)が吹き付けられると、例えば、図6(b)に示すように、熱可塑性樹脂層(31)にピンホール様の孔(31a)が開き、アルミニウム箔が直に視認されるようになるが、この時は過剰の加熱量となっているとして液体用紙容器(20)を不良品としてリジェクトされるようにして加熱量の管理をしていた。
【0009】
このように、目視で熱可塑性樹脂層(31)の白濁の程度で加熱量の適度を判定することは、かなり難しいことに加え、熱可塑性樹脂層(31)にピンホール様の孔が開いてからでは遅すぎるという問題点があった。
【0010】
ところが、近年の環境問題に鑑み、この液体用紙容器(20)のリサイクルあるいは廃棄処理において、ガスバリア層(32)として使用しているアルミニウム箔は、分別回収が極めて困難であり、廃棄処理してもアルミニウム箔が残留して環境破壊を引起し、また、焼却処理に際しても、焼却炉を傷めたり、埋め立て処分場での焼却灰から有毒ガスが発生するなどがあり、さらに金属系の異物混入を検査する金属探知機が使用できないなどの問題点があり、最近では、このアルミニウム箔に代え、プラスチック基材の表面に、酸化珪素、酸化アルミニウムあるいは酸化マグネシウム等無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法等物理気相成長法(PVD法)、あるいはプラズマ化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等を利用し、その無機酸化物の蒸着膜を形成してなる透明ガスバリアフィルムがガスバリア層(32)としはて使用されるようになってきた。
【0011】
このように、アルミニウム箔の代替として透明ガスバリアフィルムをガスバリア層(32)として使用すると、上記のような白濁状態の目視による加熱量の管理では、熱可塑性樹脂層(31)の白濁状態がバックにある白色の紙層(33)とのコントラストで見るようになるのでますます視認しにくくなり、よって、密封される部分のシール強度にバラツキが多くでるようになり、かつ液体用紙容器(20)としての不良品も多くなるという問題点がでるようになってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、液体用紙容器の製函、充填工程で、その頂部や底部の熱圧着で密封される部分の予備加熱装置において、熱風の吹き付けのための加熱量の管理を容易にし、たとえ透明ガスバリアフィルムを使用した液体用紙容器であっても加熱量の管理が容易な液体用紙容器の予備加熱装置および加熱量の管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、紙を基材とし、その表面に熱可塑性樹脂層を積層した紙積層材料からなる液体用紙容器の仮折りされた頂部や底部を熱圧着で密封される部分に、熱風を吹き付けて、予め表面の 熱可塑性樹脂層を溶融する液体用紙容器の予備加熱装置であって、前記熱圧着で密封される部分の近傍に移動して位置せしめる加熱オーブンを具備しており、該加熱オーブンの前記密封される部分に臨む面に、複数段にわたりそれぞれ異なる位置に多数の熱風吹き出し用孔が貫設され、該多数の熱風吹き出し用孔の一段で、前記密封される部分のうちのシール強度を多く要しない部分に臨む部位に少なくとも前記多数の熱風吹き出し用孔より順に内径が大きくなる複数個の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔が貫設されていることを特徴とする液体用紙
容器の予備加熱装置としたものである。
【0014】
また、請求項2の発明では、上記加熱量管理用の熱風吹き出し用孔の数が2〜5個、好ましくは3〜4個であることを特徴とする請求項1記載の液体用紙容器の予備加熱装置としたものである。
【0015】
また、請求項3の発明では、上記請求項1または2記載の液体用紙容器の予備加熱装置を用いた加熱量の管理方法であって、密封される部分のうちのシール強度を多く要しない部分の熱可塑性樹脂層に加熱量管理用の熱風吹き出し用孔の熱風により溶融されてピンホール様の孔が開いた個所が該加熱量管理用の熱風吹き出し用孔のいずれによるかによって適正な加熱量を判定することを特徴とする加熱量の管理方法としたものである。
【0016】
上記請求項1、3でいう密封される部分のうちのシール強度を多く要しない部分とは、表面の熱可塑性樹脂層にピンホール様の孔が開いていて、シール強度が多少弱くなっていても構わない部分であり、例えば、ゲーブルトップ型の頂部の密封される部分の上端縁などをいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0018】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、紙を基材とし、その表面に熱可塑性樹脂層を積層した紙積層材料からなる液体用紙容器の仮折りされた頂部や底部を熱圧着で密封される部分に、熱風を吹き付けて、予め表面の 熱可塑性樹脂層を溶融する液体用紙容器の予備加熱装置であって、前記熱圧着で密封される部分の近傍に移動して位置せしめる加熱オーブンを具備しており、該加熱オーブンの前記密封される部分に臨む面に、複数段にわたりそれぞれ異なる位置に多数の熱風吹き出し用孔が貫設され、該多数の熱風吹き出し用孔の一段で、前記密封される部分のうちのシール強度を多く要しない部分に臨む部位に少なくとも前記多数の熱風吹き出し用孔より順に内径が大きくなる複数個の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔が貫設されていることによって、この複数個の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔からの熱風で熱可塑性樹脂層に開けられたピンホール様の孔がどの加熱量管理用の熱風吹き出し用孔によるのかを判定し、その加熱量の適否を容易に判断できる液体用紙容器の予備加熱装置とすることができる。
【0019】
上記容易にできる加熱量の適否の判定とは、多数の熱風吹き出し用孔および複数個の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔が貫設されている加熱オーブンで、密封される部分を加熱すると、少なくとも内径の大きい加熱量管理用の熱風吹き出し用孔からの熱風で熱可塑性樹脂層にピンホール様の孔が開くようになるので、たとえガスバリア層が透明なバリアフィルムを使用したもので、バックが白色の紙であっても正面からそのピンホール様の孔が容易に視認できるためである。
【0020】
また、上記請求項2に係る発明によれば、上記加熱量管理用の熱風吹き出し用孔の数を2〜5個、好ましくは3〜4個とすることによって、適正な加熱量を容易に判定できる液体用紙容器の予備加熱装置とすることができる。この数が2個に満たない、即ち1個では、たとえこの1個の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔に相当する熱可塑性樹脂層にピンホール様の孔が開いても、開かなくても加熱の適量が判断できず、また、5個を越えるとシール強度を要しない密封される部分の選定が難しくなることに加え、必要以上に細かい判定法となって逆に判断しにくくなるので好ましくない。
【0021】
また、上記請求項3に係る発明によれば、上記のような液体用紙容器の予備加熱装置を用いた加熱量の管理方法において、密封される部分のうちのシール強度を多く要しない部
分の熱可塑性樹脂層に加熱量管理用の熱風吹き出し用孔の熱風により溶融されてピンホール様の孔が開いた個所が該加熱量管理用の熱風吹き出し用孔のいずれによるかによって適正な加熱量を判定する加熱量の管理方法とすることによって、従来のように熱可塑性樹脂層の白濁状態により判断する加熱量の管理方法と異なり、たとえガスバリア層に透明ガスバリアフィルムを使用している液体用紙容器であっても、容易に孔開きの状態、即ちいずれの加熱量管理用の熱風吹き出し用孔によるピンホール様の孔かが容易に視認できるので、加熱量の適否を判定できる加熱量の管理方法とすることができる。
【0022】
従って、本発明は、液体用紙容器の製函、充填工程において、仮折りされた容器の頂部や底部の熱圧着で密封される部分に、予め表面の熱可塑性樹脂層を加熱して熱圧着を容易にする液体用紙容器の予備加熱装置およびその加熱量の管理方法として、優れた実用上の効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の液体用紙容器の予備加熱装置の1事例を示す説明図であり、図2は、本発明の液体用紙容器の予備加熱装置を用いた加熱量の管理方法を説明する上側から見た断面図である。また、図3は、本発明の液体用紙容器の予備加熱装置およびその加熱量の管理方法に用いられる液体用紙容器の製函、充填工程の1事例を示す説明図であり、図4は、本発明に係る液体用紙容器を構成する紙積層材料の一事例を側断面で表した説明図である。
【0025】
まず、上記請求項1に係る発明では、例えば、図4の積層断面図に示すように、表面からポリオレフィン系樹脂でなる熱可塑性樹脂層(31)と、板紙でなる紙層(33)と、ポリエチレン樹脂の押し出しでなる押し出しラミネート層(35)を介して、12μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を基材とし、その上に酸化アルミニウムなどが蒸着された透明ガスバリアフィルムをガスバリア層(32)としてラミネートされ、最内面にポリオレフィン系樹脂でなる熱可塑性樹脂層(31)が設けられている紙積層材料(30)を用いて、例えば、図3(b)の部分斜視図に示すように、ゲーブルトップ(切妻屋根)型の液体用紙容器(20)の仮折りされた頂部の熱圧着で密封される部分(21)および接着される部分(21a)のフラップに、例えば、図1(a)の上面図に示すように、加熱オーブン(11)からの熱風(h)を吹き付けて、予め表面の熱可塑性樹脂層(31)を溶融する液体用紙容器の予備加熱装置(1)であって、この液体用紙容器の予備加熱装置(1)は、液体用紙容器(20)の熱圧着で密封される部分(21)および接着される部分(21a)の近傍に移動して位置せしめるセンターオーブン(11a)とサイドオーブン(11b)を具備しており、これらオーブン(11a、11b)に対応する密封される部分(21)および接着される部分(21a)に臨む面に、例えば、図1(b)の側面図に示すように、センターオーブン(11a)の4段にわたりそれぞれ異なる位置に多数の熱風吹き出し用孔(b)が貫設されていて、それらの上から1段目の熱風吹き出し用孔(b)の部位に、この熱風吹き出し用孔(b)より大きい孔径を有する3種類の孔、すなわち、小の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k1)、中の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k2)、および大の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k3)と順に孔径が大きくなるように貫設されている液体用紙容器の予備加熱装置(1)とするものである。
【0026】
また、上記請求項2に係る発明では、例えば、加熱量管理用の熱風吹き出し用孔の数を2〜5個とし、好ましくは、例えば図1(b)に示すように、小中大の3個の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k1、k2、k3)、あるいは図示しないが4個の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔とするものである。
【0027】
上記加熱量管理用の熱風吹き出し用孔の孔径として、例えば、図1(b)に示すような容器溶融用の多数の熱風吹き出し用孔(b)の孔径が1mmφ程度のものに対し、小中大3種類の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k1、k2、k3)の孔径は、それぞれ1.5mmφ、2.5mmφ、3.5mmφ程度とすると、加熱量の管理に好適な加熱量管理用の熱風吹き出し用孔の孔径とすることができる。
【0028】
上記のように、例えば図1(a)および図1(b)に示すセンターオーブン(11a)の、密封される部分(11a)の一部に臨む面に小中大の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k1、k2、k3)が貫設されていることによって、例えば、図2(a)に示すように、加熱量管理用の熱風吹き出し用孔が貫設されているセンターオーブン(11a)で、密封される部分(21)を加熱すると、この小中大の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k1、k2、k3)からの熱風(h)で、少なくとも溶融用の熱風吹き出し用孔(b)より内径の大きい加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k1、k2、k3)からの熱風(h)で熱可塑性樹脂層(31)にピンホール様の孔(31a)が開くようになるので、たとえ液体用紙容器(20)を構成するガスバリア層(32)が透明なバリアフィルムを使用したもので、バックが白色の紙層(33)であっても、正面からそのピンホール様の孔(31a)が容易に視認できるようになり、よって、従来のように熱可塑性樹脂層(31)の白濁程度によって加熱量の適否を判断していたものと異なり、容易に的確に加熱量の適否を判断できる液体用紙容器の予備加熱装置とすることができるものである。
【0029】
また、上記請求項3に係る発明は、例えば、図1(a)および図1(b)に示すような液体用紙容器の予備加熱装置(1)を用いた加熱量の管理方法であって、密封される部分(21)のうちのシール強度を多く要しない部分、例えば、図3(a)および図3(b)に示す密封される部分(21)を構成するフラップの上端縁で、例えば、図2(a)に示すセンターオーブン(11a)に貫設された大中小の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k3、k2、k1)の熱風(h)により熱可塑性樹脂層(31)が溶融されてピンホール様の孔(31a)が開いた個所、すなわちどの加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k3、k2、k1)の熱風(h)によるものなのかで、適正な加熱量を判定する加熱量の管理方法である。
【0030】
上記液体用紙容器の予備加熱装置を用いた加熱量の管理方法を具体的に説明すると、例えば、図2(a)に示すように、大中小の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k3、k2、k1)の熱風(h)で密封される部分(21)の熱可塑性樹脂層(31)を加熱した時に、大中の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k3、k2)の部分に対応する熱可塑性樹脂層(31)にピンセール様の孔(31a)が発生し、小の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k1)では発生しなかった場合、最適な加熱量と判定される。
【0031】
また、例えば、図2(b)に示すように、大の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k3)の部分の熱可塑性樹脂層(31)にピンホール様の孔(31a)が発生し、中小の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k2、k1)では発生しなかった場合、加熱量が不足気味であると判定されるが、加熱量が不足しているため液体用紙容器(20)が不良品となるまでには到らないものである。それは少なくとも大の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k3)からの熱風(h)ではピンホール様の孔が開くからである。
【0032】
また、例えば、図2(c)に示すように、大中小のいずれの加熱量管理用の熱風吹き出し用孔(k3、k2、k1)の部分に対応する熱可塑性樹脂層(31)にピンホール様の孔(31a)が発生した場合、加熱量が増加気味であると判定されるが、加熱量が増大しているため液体用紙容器(20)が不良品となるまでには到らないものである。それは熱可塑性樹脂層(31)を予め溶融するための熱風吹き出し用孔(b)からの熱風(h)で
はピンホール様の孔が開かないからである。
【0033】
以上のような加熱量の管理方法とすることによって、従来のように、熱可塑性樹脂層の白濁状態により判断する加熱量の管理方法と異なり、図2(a)に示すように、たとえガスバリア層(32)に透明ガスバリアフィルムを使用していて、バックが白色の紙層(33)で構成されている液体用紙容器(20)であっても、正面から見ると容易にピンホール様の孔(31a)の開き状態、即ちいずれの加熱量管理用の熱風吹き出し用孔((k3、k2、k1)によるピンホール様の孔(31a)かが容易に視認できるので、より容易で、かつ的確な加熱量の適否の判定を可能にする加熱量の管理方法を提供することができる。
【0034】
以下に、本発明の液体用紙容器の予備加熱装置(1)およびその装置を用いた加熱量の管理方法が適用される液体用紙容器について説明する。
【0035】
上記液体用紙容器(20)の製函、充填工程は、例えば、図3(a)に示すように、頂部に密封される部分(21)と接着される部分(21a)としでなるフラップを有するゲーブルトップ型容器のブランク(2)を用いて、図3(b)に示すように、糊代片(29)を熱圧着して仮折りした液体用紙容器(20)とする。
【0036】
上記のように仮折りした液体用紙容器(20)の底部(図示せず)を液体用紙容器の予備加熱装置を用いて熱可塑性樹脂層(31)を溶融し、その部分を熱圧着して密封し、底部が密封された液体用紙容器(20)に、内容物を充填し、続いて、図1(a)および図1(b)に示すような液体用紙容器の予備加熱装置(1)により、液体用紙容器(20)の頂部の密封される部分(21)および接着される部分(21a)の面を、加熱オーブン(11)を構成するセンターオーブン(11a)およびサイドオーブン(11b)で予備加熱し、図3(c)に示すように、密封される部分(21)および接着される部分(21a)を熱圧着で密封して液体用紙容器(20)とするものである。
【0037】
上記清酒や果汁等を収納する液体用紙容器(20)を構成する熱可塑性樹脂層(31)を積層した紙積層材料(30)は、例えば、図4の側断面図に示すように、表面側から、熱可塑性樹脂層(31)、紙層(33)、押し出しラミネート層(35)、ガスバリア層(32)、熱可塑性樹脂層(31)が順に積層されているのが一般的であり、その表面の熱可塑性樹脂層(31)としては、例えば、厚み30μm程度の高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)がヒートシール性に優れていることから一般的に使用されているが、本発明に係る液体用紙容器の予備加熱装置を用いることを考慮すると中密度ポリエチレン(MDPE)も使用することができる。
【0038】
また、紙層(33)としては、坪量200〜500g/m2 の板紙が使用され、この紙層(33)にガスバリア層(32)をラミネートするための押し出しラミネート層(35)としては、厚み25μm程度の無添加の高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)が一般的に使用されるが、接着性に優れたアイノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などを使用することもできる。
【0039】
また、ガスバリア層(32)としては、従来のように厚み9μm程度のアルミニウム箔を使用することもできるが、前述のように主に環境問題に考慮されていないことなどから、透明ガスバリアフィルムが使用されるようになってきた。その透明ガスバリアフィルムとしては、厚み12μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルムに、無機酸化物、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムなどの薄膜を真空蒸着法、スパッタリング法等物理気相成長法(PVD法)、あるいはプラズマ化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等で形成したものが挙げられる。
【0040】
また、液体用紙容器(20)の内面に使用される熱可塑性樹脂層(31)としては、低温シール性に優れる高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)が使用されるが、この高圧法低密度ポリエチレンに含まれる低分子量物質が内容物に移行して味覚を劣化させる危惧があることから、中密度ポリエチレン(MDPE)やエチレン−αオレフィン共重合体などが使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の液体用紙容器の予備加熱装置の一実施の形態を示すもので、(a)は、その上面図であり、(b)は、(a)の予備加熱装置を構成するオーブンの正面図である。
【図2】本発明の液体用紙容器の予備加熱装置を用いた加熱量の管理方法を説明するもので、(a)は、加熱量が適正の時の状態を側断面で表した説明図であり、(b)は、加熱量が不足気味の時の状態を側断面で表した説明図であり、(c)は、加熱量が過剰気味の時の状態を側断面で表した説明図である。
【図3】本発明の液体用紙容器の予備加熱装置を用いた、容器の製函、充填工程を説明するもので、(a)は、そのブランクを示す平面図であり、(b)は、仮折りされた液体用紙容器の部分斜視図であり、(c)は、密封された液体用紙容器の部分斜視図である。
【図4】本発明の液体用紙容器の予備加熱装置に用いられる液体用紙容器を構成する紙積層材料の一事例を側断面で表した説明図である。
【図5】従来の液体用紙容器の予備加熱装置の一事例を説明するもので、(a)は、予備加熱装置の部分説明図であり、(b)は、予備加熱装置を構成する加熱オーブンを側面から見た説明図であり、(c)は、予備加熱装置を構成する加熱オーブンのセンターオーブンに設けられた熱風吹き出し用孔を側面から見た説明図である。
【図6】従来の液体用紙容器の予備加熱装置を用いた加熱量の管理方法の一事例を説明するもので、(a)は、加熱量が適正の時の状態を側断面で表した説明図であり、(b)は、加熱量が過剰の時の状態を側断面で表した説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1‥‥液体用紙容器の予備加熱装置
2‥‥液体用紙容器のブランク
11‥‥加熱オーブン
11a‥‥センターオーブン
11b‥‥サイドオーブン
20‥‥液体用紙容器
21‥‥密封される部分
21a‥‥接着される部分
29‥‥糊代片
30‥‥紙積層材料
31‥‥熱可塑性樹脂層
31a‥‥ピンホール様の孔
32‥‥ガスバリア層
33‥‥紙層
35‥‥押し出しラミネート層
40‥‥注出口栓
b‥‥熱溶融のための熱風吹き出し用孔
h‥‥熱風
k1‥‥小の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔
k2‥‥中の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔
k3‥‥大の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を基材とし、その表面に熱可塑性樹脂層を積層した紙積層材料からなる液体用紙容器の仮折りされた頂部や底部を熱圧着で密封される部分に、熱風を吹き付けて、予め表面の
熱可塑性樹脂層を溶融する液体用紙容器の予備加熱装置であって、前記熱圧着で密封される部分の近傍に移動して位置せしめる加熱オーブンを具備しており、該加熱オーブンの前記密封される部分に臨む面に、複数段にわたりそれぞれ異なる位置に多数の熱風吹き出し用孔が貫設され、該多数の熱風吹き出し用孔の一段で、前記密封される部分のうちのシール強度を多く要しない部分に臨む部位に少なくとも前記多数の熱風吹き出し用孔より順に内径が大きくなる複数個の加熱量管理用の熱風吹き出し用孔が貫設されていることを特徴とする液体用紙容器の予備加熱装置。
【請求項2】
上記加熱量管理用の熱風吹き出し用孔の数が2〜5個、好ましくは3〜4個であることを特徴とする請求項1記載の液体用紙容器の予備加熱装置。
【請求項3】
上記請求項1または2記載の液体用紙容器の予備加熱装置を用いた加熱量の管理方法であって、密封される部分のうちのシール強度を多く要しない部分の熱可塑性樹脂層に加熱量管理用の熱風吹き出し用孔の熱風により溶融されてピンホール様の孔が開いた個所が該加熱量管理用の熱風吹き出し用孔のいずれによるかによって適正な加熱量を判定することを特徴とする加熱量の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−224977(P2006−224977A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38682(P2005−38682)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】