説明

液体調味料

【課題】 有用な生理効果を有するフラボノイド類を含有しても、特有の異味が低減された液体調味料を提供する。
【解決手段】 次の(A)、(B)及び、(C)
(A)ナトリウム 0.4〜8質量%
(B)フラボノイド類 0.01〜4質量%
(C)エタノール 1〜10質量%
を含有する液体調味料であって、(B)フラボノイド類が、1分子内に隣接するOH基を2つ以上有するものである液体調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラボノイド類を含有する液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、食品中に含まれる種々の成分の生理機能について、関心が高まってきている。生理機能を有する素材の一つとして、カテキンやルチンなどのフラボノイド類が挙げられる。これらのフラボノイド類は、植物性食品中に含まれ、生理機能として、例えば血中コレステロール上昇抑制作用、尿酸値低下作用、抗糖尿病作用、脂質代謝改善作用、血圧上昇抑制作用等を有することが知られている(特許文献1〜4、非特許文献1)。
【0003】
このようにフラボノイド類は、有用な生理機能を有することから、各種食品や食塩への利用について開示されている(特許文献5〜10)。この他、フラボノイド類を用いた煮魚調味液、液体調味料などが知られている(特許文献11〜14)。
【0004】
【特許文献1】特開昭60-156614号公報
【特許文献2】特開2002-370980号公報
【特許文献3】特開2007-70263号公報
【特許文献4】特開2007-70265号公報
【特許文献5】特表2001-503619号公報
【特許文献6】特開2005-312301号公報
【特許文献7】特開2006-22081号公報
【特許文献8】特開2001-240539号公報
【特許文献9】特開2000-78955号公報
【特許文献10】特開2000-78956号公報
【特許文献11】特開2002-291437号公報
【特許文献12】特開2004-49186号公報
【特許文献13】特開2006-166906号公報
【特許文献14】特開2004-290129号公報
【非特許文献1】Biosci.Biotech.Biochem.,70(4),933(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように有用な生理機能を有するフラボノイド類であるが、フラボノイド類自体の特有の異味、水への溶解性などの点から、実際の食品への適用は限られている。
本発明の目的は、有用なフラボノイド類を含有していて、しかも特有の異味が低減された液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、有用な生理機能を有するフラボノイド類を液体調味料に応用すべく検討してきた。その結果、ナトリウム、エタノール及び、特定のフラボノイド類を特定の割合で含有することにより、フラボノイド類を含有していて、しかも特有の異味が低減された液体調味料が得られることを見出した。更に、液体調味料の塩味の先味が強化されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の(A)、(B)及び、(C)
(A)ナトリウム 0.4〜8質量%
(B)フラボノイド類 0.01〜4質量%
(C)エタノール 1〜10質量%
を含有する液体調味料であって、(B)フラボノイド類が、1分子内に隣接するOH基を2つ以上有するものである液体調味料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フラボノイド類を含有させたものであるにもかかわらず、特有の異味が低減された液体調味料を得ることができる。更に、本発明の液体調味料を用いることで、塩味の先味が強化されることから、ナトリウム量の少ない食品の設計、製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の液体調味料においては、(A)ナトリウム、(B)特定のフラボノイド類、(C)エタノールを含有することが必要である。
【0010】
本発明において、(A)ナトリウムは、食品成分表示上の「ナトリウム」又は「Na」を指し、調味料中に塩の形態で配合されているものをいう(以下に記載するナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属についても同様である)。ナトリウムは、人体にとって重要な電解質のひとつであり、その大部分が細胞外液に分布している。濃度は135〜145mol/L程度に保たれており、細胞外液の陽イオンの大半を占める。そのため、ナトリウムの過剰摂取は濃度維持のための水分貯留により、高血圧の大きな原因となる。
【0011】
本発明の液体調味料は、(A)ナトリウムを0.4〜8質量%(以下、単に「%」で示す)含有するが、好ましくは1.4〜7.4%、より好ましくは2.2〜6.2%、更に3.1〜5.7%、特に3.6〜5.4%、殊更3.8〜5.1%含有するのが、塩味、保存性、食塩摂取量低減、工業的生産性の点で好ましい。
【0012】
本発明において、ナトリウムとして、無機ナトリウム塩、有機酸ナトリウム塩、アミノ酸ナトリウム塩、核酸ナトリウム塩等を用いることができる。具体的には、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、これらの2種以上の混合物が挙げられる。このうち、塩化ナトリウムを主成分とする食塩を使用するのが、コストの点で好ましい。
【0013】
食塩として、様々なものが市販されており、例えば、日本たばこ産業(株)が扱っている食塩、並塩、あるいは海外からの輸入天日塩等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、食塩は乾燥物基準で塩化ナトリウム100質量部(以下、単に「部」で示す)に対して、塩化マグネシウムを0.01〜2部、塩化カルシウムを0.01〜2部、塩化カリウムを0.01〜2部含有するものが、風味、工業的生産性の点で好ましい。本発明において、ナトリウムの含有量は原子吸光光度計(日立偏光ゼーマン原子吸光光度計Z−6100)により測定することができる。
【0014】
本発明において、液体調味料とは、醤油、たれ、つゆ、だし、ソース等の通常、食塩を含有する液体状の調味料をいう。
【0015】
食塩の過多な摂取は、腎臓病、心臓病、高血圧症に悪影響を及ぼすことから食塩の摂取量を制限するために、本発明の液体調味料が、使用頻度の高い醤油類であるのが好ましい。醤油類としては、製品100g中のナトリウム量が塩化ナトリウムとして5.5g超の醤油、3.55g超〜5.5g以下の低塩醤油、3.55g以下である減塩醤油が挙げられるが、食塩摂取量、成分(B)との風味の相性の点から、液体調味料が、低塩醤油、減塩醤油であるのが好ましい。
【0016】
本発明の液体調味料において、(B)フラボノイド類の含有量は0.01〜4%であるが、好ましくは0.06〜2%、更に0.1〜1.5%、特に0.2〜1%、殊更0.3〜0.8%であるのが風味バランス、生理効果の点で好ましい。
【0017】
更に、本発明において、液体調味料中のフラボノイド類の含有量は、ナトリウム100部に対して0.25〜50部であるのが好ましく、より好ましくは1.25〜40部、更に2.5〜30部、更に5〜25部、特に7〜23部、殊更9〜22部であるのが風味バランスの点で好ましい。
【0018】
本発明におけるフラボノイド類とは、フラボノイド、またはその配糖体(以下、「フラボノイド配糖体」または単に「配糖体」と表記する)、更にこれに糖が結合したもの(配糖体も糖が結合したものであるが、これと区別するため配糖体に更に糖が結合したものを、以下「糖付加物」と表記する)、酵素処理したものを含む。フラボノイドとは、狭義には、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノノール、イソフラボンをいうが、広義にはC−C−Cを基本骨格とする一群の化合物をいい、フラバン、フラバノール、イソフラバノン、アントシアニジン、ロイコアントシアニジン、プロアントシアニジン等も含まれる(「食品の変色の化学」木村進ら編著、光琳、平成7年)。本発明におけるフラボノイドは広義のものをいい、好ましくは狭義のものをいう。
【0019】
また、フラボノイド分子中の両端のベンゼン環をそれぞれA環、B環と称し、中間のピラン環(またはピロン環)をC環と称するが、それぞれの分子中のA環、B環に結合したOH基(水酸基)の数が異なったり、OCH3基(メトキシ基)が結合したもの等もフラボノイドに含まれる。
本発明において、(B)フラボノイド類は、1分子内に隣接するOH基を2つ以上有するものである。すなわち、フラボノイド1分子中のA環又はB環にOH基を2つ以上有し、少なくとも1つのOH基に隣接した位置(オルト位)に、別のOH基を有するもので、このような構造を有することで、所望の効果が得られる。
【0020】
本発明において、糖が結合していないアグリコンとしては、例えば、ケルセチン、ルテオリン、フィセチン、ゴッシペチン、ミリセチン、ラムネチン、ロビネチン、エリオジクチオール、タキシフォリン、フセチン、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、これらの糖付加物、これらの誘導体、及びこれらの酵素処理物から選択される1種又は2種以上の混合物が挙げられ、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、これらから選択される1種又は2種以上の混合物であるのが、風味、安定性、溶解性の点で好ましい。
【0021】
フラボノイド配糖体とは、前記フラボノイドに糖がグリコシド結合したものを指し、前記の糖が結合していないものをアグリコンと称す。配糖体には、フラボノイド分子中の水酸基にグリコシド結合したO−グリコシドと、A環、B環に結合したC−グリコシドがある(木村進ら、前出)。
フラボノイド配糖体は、フラボン配糖体、フラバン配糖体、フラバノン配糖体、フラバノール配糖体、フラバノノール配糖体、フラボノール配糖体、イソフラボン配糖体、イソフラバノン配糖体、アントシアニジン配糖体、ロイコアントシアニジン配糖体、プロアントシアニジン配糖体等が挙げられるが、フラボン配糖体、フラバン配糖体、フラバノン配糖体、フラバノール配糖体、フラバノノール配糖体、フラボノール配糖体、イソフラボン配糖体、イソフラバノン配糖体の1種又は2種以上の混合物であるのが好ましい。これらのうち、特に血圧降下作用を有するものが好ましい。
【0022】
フラボノイドに結合している糖類としては、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、アラビノース、アピオース等の単糖、ルチノース、ネオヘスペリドース、ソフォロース、サンブビオース、ラミナリビオース等の二糖、ゲンチオトリオース、グルコシルルチノース、グルコシルネオヘスペリドース等の三糖、これらの糖に更に糖類が結合したもの、酵素等により糖類を加水分解したもの、又はこれらの混合物が挙げられ、風味、水への溶解性の点から、糖に更に糖類が結合したものであることが好ましい。
【0023】
フラボノイド配糖体としては、上記アグリコンと糖類の結合したもので、具体的にはルチン、ミリシトリン、ロニセリン、イソクエルシトリン、クエルシトリン、エリオシトリン、これらの糖付加物、これらの誘導体、これらの酵素処理物、又はこれらの混合物が挙げられるが、風味、水への溶解性の点から、糖付加物、酵素処理物を使用するのが好ましい。尚、フラボノイド配糖体のうち、フラボノイド骨格のA環またはB環にあるOH基が隣接して3つ以上結合していないものが、安定性の点で好ましい。
【0024】
本発明において、(B)フラボノイド類は、フラボノイド配糖体を含むものであるのが、溶解性の点で好ましい。フラボノイド配糖体は、全フラボノイド類中、下記式(2)で表される配糖体の質量%が50%以上であるのが好ましく、より好ましくは70%以上、更に80%以上であるのが好ましく、更に85〜100%、特に90〜99.9%、殊更91〜99%であるのが、風味、溶解性の点で好ましい。
配糖体/(配糖体+アグリコン)×100 (%) 式(2)
【0025】
本発明において、(B)フラボノイド類の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、測定することができる(木村進ら、前出)。例えば、カテキンについては、特開2006−217815号公報記載の方法で測定できる。また、ルチンについては、下記方法により、測定できる。
【0026】
<HPLC分析例>
ルチン
溶離液;アセトニトリル/25mMリン酸2水素カリウム水溶液(pH2.4)=30:70
(v/v)
カラム;Mightysil RP-18 GP 150-4.6 5μm
検出器;UV340nm
流速;1ml/分
【0027】
本発明においては、(B)フラボノイド類が、カテキン類を含むものであるのが、風味、安定性の点で好ましい。カテキン類とは、カテキン(c)、エピカテキン(ec)、ガロカテキン(gc)、エピガロカテキン(egc)、カテキンガレート(cg)、エピカテキンガレート(ecg)、ガロカテキンガレート(gcg)、エピガロカテキンガレート(egcg)、これらから選択される1種又は2種以上の混合物である。
カテキン類中のエピカテキン含量は、2.5〜20%であるのが好ましく、更に3〜15%、特に7〜12%であるのが風味、安定性の点で好ましい。
カテキン類中のエピカテキンガレート含量は、0.1〜19%であるのが好ましく、更に1〜15%、特に3〜12%であるのが風味、安定性の点で好ましい。
カテキン類中のエピガロカテキン含量は、3〜43%であるのが好ましく、更に7〜40%、特に15〜35%であるのが風味、安定性の点で好ましい。
カテキン類中のエピガロカテキンガレート含量は、24〜66%であるのが好ましく、更に25〜50%、特に27〜42%であるのが風味、安定性の点で好ましい。
カテキン類中のカテキン含量は、0.1〜10%であるのが好ましく、更に0.5〜5%、特に1.5〜3.5%であるのが風味、安定性の点で好ましい。
カテキン類中のカテキンガレート含量は、0.1〜10%であるのが好ましく、更に0.5〜5%、特に0.8〜3%であるのが風味、安定性の点で好ましい。
カテキン類中のガロカテキン含量は、0.1〜20%であるのが好ましく、更に4〜15%、特に7〜10%であるのが風味、安定性の点で好ましい。
カテキン類中のガロカテキンガレート含量は、0.1〜10%であるのが好ましく、更に0.6〜4%、特に1〜3%であるのが風味、安定性の点で好ましい。
カテキン類中のガレート体含量(cg+gcg+ecg+egcg)は、32〜90%であるのが好ましく、更に35〜60%、特に40〜54%であるのが風味、安定性の点で好ましい。
【0028】
本発明において、フラボノイド配糖体を構成する糖が、下記式(1)を満たすものであるのが、保存性の点で好ましい。
R/Z=0〜0.5未満 式(1)
ここで、RとZは、それぞれ下記の数のことである。
R;フラボノイド配糖体1モル中のデオキシ糖のモル数
Z;フラボノイド配糖体1モル中の全構成糖のモル数
【0029】
本発明において、必要に応じて、配糖体にさらに糖を付加したり、糖を削除して、デオキシ糖の割合を低減することができる。デオキシ糖としては、ラムノース、フコースなどが例示され、ラムノースであるのが好ましい。
【0030】
本発明において、R/Z=0〜0.5未満(式1)であるのが好ましく、より好ましくは0〜0.45、更に0.05〜0.4、特に0.1〜0.35、殊更0.15〜0.32であるのが、水への溶解性の点から好ましい。本発明におけるR/Zが0.5未満に調製されたフラボノイド配糖体(以下、「糖比調整配糖体」と表記する。)とは、フラボノイドのアグリコン分子に結合している配糖体構成糖を単糖に分解した時に、全糖のモル数に対するラムノース等のデオキシ糖のモル数の割合が0.5未満であるフラボノイド配糖体及び、これを含むフラボノイド混合物である。
【0031】
糖比調整配糖体は、イソクエルシトリンのようなグルコース配糖体、及び/又は当該グルコース配糖体を含むフラボノイド混合物に、ロニセリン、ルチン等のルチノース配糖体のようなデオキシ糖を含む配糖体を混合し、R/Z比を調整したフラボノイド混合物でもよい。
【0032】
また、糖比調整配糖体は、ロニセリン(ルテオリン-7-ルチノサイド)、ルチン(ケルセチン-3-ルチノサイド)、エリオシトリン(エリオジクチオール-7-ルチノサイド)等のルチノース及び/又はネオヘスペリドース配糖体を、稲葉ら(日本食品工業学会誌、Vol.43、No.11、p1212(1996))の方法等による酸加水分解、又は増川ら(日本食品工業学会誌、Vol.32、No.12、p869(1985))の方法等による酵素加水分解により得られるルテオリン-7-グルコシド、ケルセチン-3-グルコシド、エリオジクチオール-3-グルコシド等の加水分解により得られるグルコース配糖体を含むフラボノイド混合物及び/又はグルコース配糖体と、ロニセリン、ルチン等のルチノース配糖体のようなデオキシ糖を含む配糖体とを混合し、R/Z比を調整したフラボノイド混合物でもよい。
更に、糖比調整配糖体は、ロニセリン(ルテオリン-7-ルチノサイド)、ルチン(ケルセチン-3-ルチノサイド)、エリオシトリン(エリオジクチオール-7-ルチノサイド))等のルチノース配糖体の糖鎖に米谷ら(Biosci. Biotech. Biochem.、Vol.58、No.11、p1990(1990))の方法等の糖付加反応によって得られる、グルコシルロニセリン、グルコシルルチン、グルコシルエリオシトリン等のルチノース配糖体糖付加物を含むフラボノイド混合物、及び/又はルチノース配糖体糖付加物と、ロニセリン、ルチン等のルチノース配糖体のようなデオキシ糖を含む配糖体とを混合し、R/Z比を調整したフラボノイド混合物でもよい。
【0033】
本発明において、フラボノイド類は、R/Z=0〜0.5未満のフラボノイド配糖体を
含むものであるのが好ましい。フラボノイド類中の該フラボノイド配糖体の含有量は、50%以上であるのが好ましく、更に60〜100%、特に70〜97%、殊更80〜95%であるのが好ましい。
【0034】
本発明において、R/Zを求めるためには、まず、塩酸を用いて、フラボノイド配糖体から結合糖を加水分解する(「植物色素」、林孝三著、養賢堂、昭和55年)。次いで、糖をトリメチルシリル化して、ガスクロマトグラフィーにより、全糖とデオキシ糖を定量して、R/Zを求める(「総合多糖類科学(上)」、原田篤也・小泉岳夫編、講談社、昭和48年)。
【0035】
本発明において、フラボノイド類の誘導体とは、2分子以上のフラボノイドが重縮合した重合物、又はフラボノイドのC環が開環したカルコン体をいう。
【0036】
本発明において、液体調味料中の(C)エタノールの含有量は1〜10%であるのが好ましく、より好ましくは2〜7%、更に2.5〜5%未満、特に3〜4.5%であるのが、フラボノイド類の溶解性を増大し、全体的にすっきりとした呈味性を付与するので好ましい。
【0037】
更に、液体調味料中の(C)エタノールの含有量は、(A)ナトリウム100部に対して25〜250部、好ましくは40〜200部、より好ましくは55〜175部、更に70〜150部、特に80〜135部、殊更85〜125部であるのが、フラボノイド類の溶解性、風味バランス、すっきりとした呈味の点で好ましい。
【0038】
本発明において、(C)エタノールの含有量は、原料由来のエタノール量と新たに添加したエタノール量との合計量をいう。すなわち、液体調味料の原料として日本酒、ワイン等の酒、醤油、味醂等の醸造調味料の他、発酵物等を用いると、原料由来のエタノールが含まれることがある。その場合には、原料由来のエタノール量と新たに添加したエタノール量との合計が、上記範囲内であるものとする。なお、(C)エタノールの含有量は、ガスクロマトグラフィー(GLC)を使用して、測定することができる。
【0039】
本発明において、液体調味料中の(D)うま味調味料の含有量は0.1〜10%であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜7%、更に1〜5%、特に1.5〜4%、殊更2〜3.5%含有するのが、うま味増強、風味バランスの点で好ましい。
【0040】
更に、(A)ナトリウム100部に対して、(D)うま味調味料を20〜250部含有するのが好ましく、より好ましくは25〜150部、更に30〜100部、特に35〜70部、殊更40〜50部含有するのが、うま味増強、風味バランスの点で好ましい。
【0041】
(D)うま味調味料としては、タンパク質・ペプチド系調味料、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、エキス系調味料、有機酸塩系調味料が挙げられるが、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸塩系調味料が好ましい。
【0042】
核酸系調味料としては、5′−グアニル酸、イノシン酸等のナトリウム、カリウムあるいはカルシウム塩等が挙げられる。核酸系調味料の含有量は0〜0.2%が好ましく、0.01〜0.1%が特に好ましい。なお、本発明においては、核酸ナトリウム塩を使用した場合は、ナトリウムの部分は成分(A)として、核酸の部分は成分(D)として本発明を構成するものとする。例えば、イノシン酸2ナトリウムの場合、2ナトリウムは成分(A)、グルタミン酸は成分(D)として含有量を換算する。
【0043】
アミノ酸系調味料としては酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、及びこれらの塩が挙げられる。なお、本発明においては、アミノ酸ナトリウム塩を使用した場合は、ナトリウムの部分は成分(A)として、アミノ酸の部分は成分(D)として本発明を構成するものとする。例えば、グルタミン酸ナトリウムの場合、ナトリウムは成分(A)、グルタミン酸は成分(D)として含有量を換算する。本発明の液体調味料において、アミノ酸系調味料の含有量は、酸性アミノ酸が2%超、及び/又は塩基性アミノ酸が1%超であるのが好ましい。また、酸性アミノ酸は2%超5%以下、更に2.4〜4.5%、特に2.5〜3.8%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。塩基性アミノ酸は1%超3%以下、更に1.2〜2.5%、特に1.5〜2%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。なお、本発明の液体調味料は、醸造調味料をベースとしたものが塩味の持続性、風味等の点から好ましいが、この場合には、アミノ酸は原料醤油由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸塩等を更に添加することが好ましい。なお、本発明にいう「酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸」は、遊離(フリー)のアミノ酸又はアミノ酸塩の状態のものを指すが、本発明に規定する含有量は、遊離のアミノ酸に換算した値をいう。
【0044】
また、本発明の液体調味料においては、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸の中でも酸性アミノ酸であるアスパラギン酸、グルタミン酸が塩味の持続性の点から好ましく、更に、アスパラギン酸とグルタミン酸を併用することが、塩味の持続性の点から好ましい。この場合、アスパラギン酸の含有量は1%超3%以下が好ましく、更に1.2〜2.5%、特に1.2〜2%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。アスパラギン酸は、醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム等を更に添加することが好ましい。また、グルタミン酸の含有量は1%超2%以下が好ましく、更に1.2〜2%、特に1.3〜1.8%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。グルタミン酸は、醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム等を更に添加することが好ましい。
【0045】
塩基性アミノ酸としては、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びオルニチンが挙げられるが、中でもリジン、ヒスチジンが好ましく、特にヒスチジンが好ましい。リジンの含有量は0.5〜1%であることが塩味の刺激感の点で好ましく、ヒスチジンの含有量は0.2〜2%、更に0.5〜1%であることが、塩味の増強及び持続性の点から好ましい。これらの塩基性アミノ酸も醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、更に添加することが好ましい。
【0046】
上記以外のものとしては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、シスチン、スレオニン、チロシン、イソロイシン、あるいはこれらのナトリウム塩又はカリウム塩等が挙げられ、これらを1種又は2種以上配合することができる。配合後のアミノ酸の含有量はそれぞれ遊離のアミノ酸に換算した場合、グリシンは0.3%超、アラニンは0.7%超、フェニルアラニンは0.5%超、シスチンは0%超、スレオニンは0.3%超、チロシンは0.2%超、イソロイシンは0.5%超であり、かつそれぞれ上限は1.5%以下が好ましい。中でもイソロイシンが塩味の持続性の点で好ましく、含有量は0.5〜1%であることが好ましい。
【0047】
アミノ酸の含有量は、アミノ酸分析計(日立L−8800)を用いて測定することができる。核酸、有機酸の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して測定することができる。
【0048】
本発明において、有機酸塩系調味料としては乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等の有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等を使用することができる。特にコハク酸二ナトリウム、グルコン酸ナトリウムが好ましい。これらの含有量は0〜0.3%が好ましく、0.05〜0.2%が特に好ましい。なお、本発明においては、有機酸ナトリウム塩を使用した場合は、ナトリウムの部分は成分(A)として、有機酸の部分は成分(D)として本発明を構成するものとする。例えば、グルコン酸ナトリウムの場合、ナトリウムは成分(A)、グルコン酸は成分(D)として含有量を換算する。
【0049】
本発明において、核酸系調味料、成分(D)以外のアミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料等を含有することが相乗的に塩味を増強できる点、及び塩味のみならず、苦味の低減、醤油感の増強等の点から好ましい。
【0050】
本発明において、ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いるのが、風味、ナトリウム摂取量低減の点で好ましい。
本発明において、ナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属として、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等を用いることが風味の点から好ましい。カリウム塩としては塩化カリウム、クエン酸カリウム、グルタミン酸カリウム、酒石酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、メタリン酸カリウムなどが挙げられるが、異味が少ない点から塩化カリウムが好ましい。マグネシウム塩としては塩化マグネシウム、グルタミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが挙げられるが、塩味が自然である点から塩化マグネシウムが好ましい。カルシウム塩としては、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、焼成カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リボヌクレタイドカルシウム、リボヌクレオチドカルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられるが、風味・味の質の点から乳酸カルシウムが好ましい。
【0051】
本発明の液体調味料において、(E)カリウムの含有量は0.02〜10%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜7%、更に0.5〜5%、特に1.1〜4.2%、殊更1.8〜3%であることが、苦味や刺激味といったカリウム由来の異味を生じない点から好ましい。また、カリウムは、フラボノイド類と一緒に用いることで、カリウムとフラボノイド類の異味を抑制することができる。カリウムは塩味があり、かつ異味が少ない点から塩化カリウムであることが好ましい。塩化カリウムを用いる場合は、その含有量を0.03〜10%、好ましくは0.19〜9%、更に0.95〜8%、特に2〜6%、殊更3.5〜5.7%とすることが好ましい。
【0052】
本発明において、(E)カリウムの含有量は原子吸光光度計(Z−2000形日立偏光ゼーマン原子吸光光度計)により測定することができる。
【0053】
本発明の液体調味料は、(A)ナトリウム、(B)フラボノイド類及び、(C)エタノールが所定量となるよう配合、攪拌、混合することにより、製造することができる。必要に応じて、(D)うま味調味料の他、水、無機塩、酸、アミノ酸類、核酸、糖類、賦形剤、香辛料、うま味以外の調味料、抗酸化剤、着色料、保存料、強化剤、乳化剤、ハーブ等の食品に使用可能な各種添加物を配合してもよい。
【0054】
本発明の液体調味料は、必要に応じて加熱処理を施してもよい。調味液を容器に充填後、加熱処理を行ったり、調味液を予めプレート式熱交換器などで加熱処理した後に、容器に充填して製造することができる。加熱温度は60℃以上であることが好ましく、より好ましくは70〜130℃、更に75〜120℃、特に80〜100℃、殊更85〜95℃で加熱することが、風味(塩味の先味が強化されかつまろやかとなる)、安定性、色等の点から好ましい。加熱時間は、加熱温度により異なるが、60℃の場合は10秒〜120分、更に30秒〜60分、特に1分〜10分、殊更2分〜5分であることが、風味、安定性、色等の点から好ましい。80℃の場合は、2秒〜60分、更に5秒〜30分、特に10秒〜10分、殊更30秒〜5分であるのが、風味、安定性、色等の点から好ましい。90℃の場合は、1秒〜30分、更に2秒〜10分、特に5秒〜5分、殊更10秒〜2分であるのが、風味、安定性、色等の点から好ましい。また、加熱温度と加熱時間を組合せて、60〜70℃で10分以上加熱した後、80℃で1分以上加熱する方法でもよい。
【0055】
本発明において、酸味料としては、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等を使用することができる。中でも乳酸、リンゴ酸、クエン酸が好ましく、特に乳酸が好ましい。乳酸の含有量は0〜2%が好ましく、0.3〜1%が特に好ましい。また、リンゴ酸、クエン酸の含有量は0〜0.2%が好ましく、0.02〜0.1%が特に好ましい。
【0056】
更に、塩味を増強させる添加剤としては塩化アンモニウム、乳酸カルシウム等も効果があるが、配合した醤油を用いて加熱調理した際に、前者においては異味を生じ、後者においては調理する食品が硬くなる等の不都合が生じるため、汎用の調味料としての機能も備える醤油としては好ましくない。
【0057】
本発明の液体調味料において、遊離の糖類の含有量は3.5%未満であるのが好ましく、更に0.1〜3%、特に0.2〜2%、殊更0.5〜1.5%であるのが、風味バランスの点で好ましい。糖類としては、グルコース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、シュークロース等のほか、グリセロール、ソルビトール、トレハロース、還元水あめ等の糖アルコールも例示される。
【0058】
本発明において、成分(B)以外に、更にその他の血圧降下作用を有する物質を添加してもよい。その他の血圧降下作用を有する物質としては、γ−アミノ酪酸、食酢、ニコチアナミン、核酸誘導体、醤油粕、スフィンゴ脂質、ポリフェノール類、アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する物質等が挙げられる。これらの物質の液体調味料中での含有量は0.05〜5%、更に0.2〜3%、特に0.5〜2%であるのが、生理機能、風味、安定性の点で好ましい。
【0059】
アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する物質としては、食品原料由来のペプチドを使用することができる。特に乳由来のペプチド、穀物由来のペプチド及び魚肉由来のペプチドが好ましい。ここで、穀物由来のペプチドとしては、穀物由来の分子量200〜4000のペプチド、特にとうもろこし由来の分子量200〜4000のペプチドが好ましい。さらにまた、とうもろこし蛋白、大豆蛋白、小麦蛋白等をプロテアーゼで処理して得られる分子量200〜4000のペプチド、特にとうもろこし蛋白をアルカリ性プロテアーゼで処理して得られる分子量200〜4000のペプチド(特開平7−284369号公報)が好ましい。魚肉由来のペプチドとしては、魚肉由来の分子量200〜10000のペプチド、さらにサバ、カツオ、マグロ、サンマ等の魚肉をプロテアーゼ処理して得られる分子量200〜10000のペプチド、特にカツオ蛋白をプロテアーゼ処理して得られる分子量200〜10000のペプチドが好ましい。
【0060】
アンジオテンシン変換酵素阻害活性の強さは、アンジオテンシン変換酵素の活性を50%阻害する濃度(IC50)で示される。本発明に用いられるアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドのIC50は50〜1000μg/mL程度であれば、本発明の液体調味料において、血圧降下作用が期待できる。
【0061】
本発明の液体調味料に配合できるペプチドの市販品としては、とうもろこし由来のペプチドとしてペプチーノ(日本食品化工、IC50:130μg/mL)、小麦由来のペプチドとしてグルタミンペプチドGP−1(日清ファルマ、IC50:508μg/mL)、大豆由来のペプチドとしてハイニュート(不二製油、IC50:455μg/mL)、カツオ由来のペプチドとしてペプチドストレート(日本サプリメント、IC50:215μg/mL)等が挙げられる。
【0062】
当該ペプチドのアンジオテンシン変換酵素阻害活性は、例えば合成基質p−ヒドロキシベンゾイル−グリシル−L−ヒスチジル−L−ロイシンを用いた簡便で再現性の良い測定キットのACEカラー(富士レビオ株式会社)を使用することにより測定することができる。
【0063】
本発明においては、調味料中、成分(B)及び血圧降下作用を有する物質を除いた部分の窒素含有量が1.6%以上であることが、フラボノイド類や血圧降下作用を有する物質を含有させたものであるにもかかわらず、風味を低下させず、またナトリウム含有量が低いにもかかわらず塩味を増強させる点から好ましい。また、窒素の含有量は1.6〜2%であることがより好ましい。
【0064】
通常の醤油の場合は窒素含有量は1.2〜1.6%であるが、窒素含有量を1.6%以上とするには、通常の方法で醸造した醤油に、アミノ酸等の窒素を含有する物質を本発明の規定範囲の量となるように添加すること、又は濃縮及び脱塩の工程を施すことにより達成できる。例えば、減塩濃縮法によってナトリウムや食塩を除去するとともに、水を主成分とする揮発成分での希釈率を調整する方法や、電気透析装置によってナトリウムや食塩を除去する際に起こるイオンの水和水の移動を利用して、窒素分も同時に濃縮する方法等がある。また、通常より食塩分の低い減塩醤油をRO膜や減圧濃縮により、窒素含有量を高める方法や、逆に、たまり醤油、再仕込み醤油のような窒素含有量の高い醤油から脱塩することによる方法等がある(「増補 醤油の科学と技術」 栃倉辰六郎編著、日本醸造協会発行、1994年)。
【0065】
本発明の液体調味料において、窒素の含有量を1.6%以上とするためには、上記方法の他に、アミノ酸系調味料、核酸系調味料等を含有させることもできる。
【0066】
また、本発明の液体調味料においては、pHが3〜6.5、更に4〜6、特に4.5〜5.5、殊更4.6〜5.0未満であることが、風味変化抑制の点で好ましい。更に、塩素量4〜9%、固形分量20〜45%の特数値を有することが好ましい。
【0067】
本発明の液体調味料を、食品の加工・調理を含む製造に使用することで、食品の風味改善効果、ナトリウム量の少ない食品の設計、製造が可能となる。従って、本発明は、食品の製造方法としても有用である。
【0068】
なお、本発明において、液体調味料として減塩醤油、低塩醤油を製造する場合は、醤油を含む調味液と成分(A)、(B)、(C)とを混合して製造することができる。すなわち、生醤油を電気透析、又は塩析/希釈により食塩含量の低下した生醤油(減塩生醤油、低塩生醤油)を調製し、火入れ工程後、成分(A)、(B)、(C)などを混合する方法、又は、火入れ工程後の醤油を電気透析、又は塩析/希釈により食塩含量の低下した醤油(減塩醤油、低塩醤油)を調製し、これを含む調味液と成分(A)、(B)、(C)などを混合する方法等により製造することができる。
【0069】
本発明の液体調味料は、液体調味料を容器に充填した容器詰液体調味料であるのが好ましい。本発明に使用される容器の容量は10mL〜5Lであるのが好ましく、より好ましくは50mL〜2L、更に100mL〜1L、特に300mL〜800mL、殊更450〜700mLであるのが、安定性、使い勝手の点で好ましい。本発明に使用される容器は、一般の液体調味料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、紙容器、ガラス瓶などの通常の形態で提供することができる。紙容器としては、紙基材とバリア性層(アルミニウム等の金属箔、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン系重合体など)とヒートシール性樹脂層とを含む積層材を製函したものなどが挙げられる。
【0070】
本発明の液体調味料は、各種食品に使用することができる。本発明の液体調味料を用いることで、塩味の持続性が増強することから、ナトリウム量や食塩量が少ない食品の設計、製造が可能となる。
【0071】
本発明の液体調味料を使用した食品としては、喫食時に食塩や醤油が含まれるものであれば特に制限はないが、例えば、吸い物、味噌汁、コンソメスープ、ポタージュスープ、卵スープ、ワカメスープ、フカヒレスープ等のスープ類、そば、うどん、ラーメン、パスタ等の麺類のつゆ・スープ・ソース類、おかゆ、雑炊、リゾット、お茶漬け等の米飯調理食品、カレー、ハヤシ等のルー、ハム、ソーセージ、ベーコン、チーズ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、せんべい、クッキー等の菓子類、刺身、お浸し、冷奴、湯豆腐、鍋物、煮物、揚げ物、焼き物、蒸し物等の調理食品等が挙げられる。すなわち、本発明の液体調味料の用途(使用方法)としては、(i)上記食品に本発明品をふりかける用途、(ii)上記食品を本発明品につける用途、(iii)本発明品と食材を用いて調理する用途、(iv)本発明品を用いて加工食品を製造する用途などが例示される。
【0072】
本発明の液体調味料の、食品中の含有量は0.01〜20%であるのが好ましく、更に0.05〜10%、特に0.1〜5%、殊更0.5〜3%であるのが風味バランス、食塩摂取量の点で好ましい。
【0073】
[試験例]
【0074】
(1)液体調味料1〜9
表1に示す配合で、ガラス製サンプル瓶(50mL容)に減塩醤油(「丸大豆減塩しょうゆ」、キッコーマン)、カテキン製剤K、ナリンギン(「サンフィックス」、三栄源FFI)、糖付加ルチン(「αGルチンP」、東洋精糖)、ケルセチン(関東化学)、エタノール(和光純薬工業)を添加し、閉栓して容器詰め液体調味料1〜9(ナトリウム含量3.2%、カリウム含量0.2%、エタノール含量4%)を調製した。尚、カテキン製剤中の各カテキン類の含量を表2に示す。
【0075】
これらの液体調味料について、官能で風味評価を行った。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示すように、オルト位にOH基を有するフラボノイド類として、カテキン類を配合した液体調味料3〜6では、トップに感じる塩味が増強され、塩味の先味が強化されることが明らかとなった。それに伴いフラボノイド類特有の異味(渋味・苦味)も感じられた。オルト位にOH基を有する糖付加ルチンやケルセチンを配合した液体調味料7、8でも、同様な傾向であった。これに対して、オルト位にOH基を有さないフラボノイドであるナリンギンを配合した液体調味料9では、苦味が非常に強くなり、好ましいものではなかった。
【0078】
【表2】

【0079】
(2)液体調味料10〜18
表3に示す配合で、ガラス製サンプル瓶(50mL容)に減塩醤油(「丸大豆減塩しょうゆ」、キッコーマン)、カテキン製剤K、U、A又はH、糖付加ルチン(「αGルチンP」、東洋精糖)、エタノール(和光純薬工業)、塩化カリウム(和光純薬工業)を添加し、閉栓して容器詰め液体調味料10〜18(エタノール含量4%)を調製した。尚、カテキン製剤中の各カテキン類の含量を表2に示す。
【0080】
これら液体調味料の「塩味の先味」、「カリウム由来の異味」、「フラボノイド類由来の異味」について、下記評価基準にて、官能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0081】
〔塩味の先味の評価基準〕
a:トップに感じる塩味が、対照品よりも非常に強い。
b:トップに感じる塩味が、対照品よりも強い。
c:トップに感じる塩味が、対照品よりもやや強い。
d:トップに感じる塩味が、対照品と同等である。
e:トップに感じる塩味が、対照品よりも弱い。
【0082】
〔カリウム由来の異味の評価基準〕
a:カリウム由来の苦味、刺激味といった異味を全く感じない。
b:カリウム由来の苦味、刺激味といった異味が対照品に比べかなり低減している。
c:カリウム由来の苦味、刺激味といった異味が対照品に比べやや低減している。
d:カリウム由来の苦味、刺激味といった異味が対照品と同等である。
e:カリウム由来の苦味、刺激味といった異味が対照品よりも強い。
【0083】
〔フラボノイド類由来の異味の評価基準〕
a:フラボノイド類由来の渋味、苦味といった異味を全く感じない。
b:フラボノイド類由来の渋味、苦味といった異味が対照品に比べかなり低減している。
c:フラボノイド類由来の渋味、苦味といった異味が対照品に比べやや低減している。
d:フラボノイド類由来の渋味、苦味といった異味が対照品と同等である。
e:フラボノイド類由来の渋味、苦味といった異味が対照品よりも強い。
【0084】
【表3】

【0085】
表3に示すように、オルト位にOH基を有するフラボノイド類を含有する液体調味料に、塩化カリウムを配合することにより、フラボノイド類特有の異味とカリウム由来の異味が、低下することが示された。
【0086】
(3)液体調味料19〜23(高温保存性試験)
表4に示す配合で、ガラス製サンプル瓶(50mL容)に濃口醤油(「丸大豆しょうゆ」、キッコーマン)、ルチン(和光純薬工業)、ナリンギン(関東化学)、糖付加ルチン(「αGルチンP」、東洋精糖、R/Z=0.34)、エタノール(和光純薬工業)を添加し、閉栓して容器詰め液体調味料19〜23(ナトリウム含量5.9%、カリウム含量0.4%、エタノール含量4%)を調製した。
これらの液体調味料を、スクリューキャップ式ガラス製遠心管(IWAKI、10mL容)に、4gずつ入れ、キャップを閉めて、60℃の恒温槽に静置した。5日後に取り出し、目視で状態を観察した。その結果を表4に示す。
【0087】
【表4】

【0088】
表4に示すように、液体調味料19〜21では沈殿が観察され、高温での保存性が良好ではないことが示された。これに対し、液体調味料22、23では沈殿が観察されず、高温での保存安定性が良好であることが判明した。
このようにオルト位にOH基有するフラボノイド配糖体で、配糖体の糖組成が特定範囲(R/Z=0.34)である糖付加ルチンを配合することで、高温保存時における沈殿発生が抑制され、保存安定性に優れていることが示された。
【0089】
(5)液体調味料24〜26(加熱処理)
濃口醤油(「丸大豆しょうゆ」、キッコーマン)500部と減塩醤油(「丸大豆減塩しょうゆ」、キッコーマン)500部とを混合したものに、表5に示す配合で、糖付加ルチン(「αGルチンP」、東洋精糖)、カテキン製剤K、塩化カリウム(和光純薬工業)を添加した後、エタノールを加え攪拌、混合した。これをガラス製三角フラスコに入れて、アルミ箔で蓋をして、70℃のウオーターバスで10分間加熱した。次いで、流水で冷却し、容器に充填した。密栓して冷蔵庫で1週間静置し、容器詰め液体調味料24〜26を製造した(低塩醤油、ナトリウム含量4.3%、カリウム含量2.4%、エタノール含量4.5%)。これらについて、官能で風味評価を行った。その結果を表5に示す。
【0090】
【表5】

【0091】
表5に示すように、加熱処理を施すと、全体的に風味がまとまることがわかった。フラボノイド類を添加した液体調味料25、26では、塩味の先味がやや強くなると共に、カリウム由来の異味が低減し、醤油の香りが立つ傾向にあった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)、(B)及び、(C)
(A)ナトリウム 0.4〜8質量%
(B)フラボノイド類 0.01〜4質量%
(C)エタノール 1〜10質量%
を含有する液体調味料であって、(B)フラボノイド類が、1分子内に隣接するOH基を2つ以上有するものである液体調味料。
【請求項2】
(B)フラボノイド類が、フラボノイド配糖体を含むものである請求項1記載の液体調味料。
【請求項3】
前記(B)において、フラボノイド配糖体を構成する糖が、下記式(1)を満たすものである請求項2記載の液体調味料。
R/Z=0〜0.5未満 式(1)
ここで、RとZは、それぞれ下記の数のことである。
R;フラボノイド配糖体1モル中のデオキシ糖のモル数
Z;フラボノイド配糖体1モル中の全構成糖のモル数
【請求項4】
(B)フラボノイド類が、ケルセチン、ルテオリン、フィセチン、ゴッシペチン、ミリセチン、ラムネチン、ロビネチン、エリオジクチオール、タキシフォリン、フセチン、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、これらの糖付加物、これらの誘導体、及びこれらの酵素処理物から選択される1種又は2種以上の混合物である請求項1に記載の液体調味料。
【請求項5】
液体調味料が、減塩醤油又は低塩醤油である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体調味料。
【請求項6】
液体調味料が、容器詰め液体調味料である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体調味料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体調味料を含む食品。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体調味料を用いる食品の製造方法。

【公開番号】特開2008−283877(P2008−283877A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129616(P2007−129616)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】