説明

液体配合物及び凍結乾燥した配合物

本発明は、非タンパク性の化合物である新種の化合物を含有する安定な非経口の配合物、その配合物を製造するための方法及びその配合物を安定化させるための特定の化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非タンパク性の化合物である、新種の化合物の液体配合物及び凍結乾燥した配合物、その配合物を製造するための方法及びその配合物を安定化させるための特定の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、凍結乾燥法は、配合物中の医薬的活性物質の劣化、及び凍結乾燥した状態での安定性又は懸濁液若しくは溶液に戻した後での安定性に著しい影響を及ぼす。
【0003】
また、液体配合物の場合、活性、効率及び活性物質の比率並びに長時間の液体の透明性を維持することは困難である。
【0004】
先行文献では、凍結乾燥した及び液体の配合物を安定させるための様々なアプローチが議論されてきた。
【0005】
例えば、非経口注入用の、凍結乾燥して調整された形態の医薬的組成物が、科学出版物「Stabilisation of Octastation, a somatostatin analogue. Preparation of freeze-dried products for parenteral injection」(H. Pourrat & Al, Biological and Pharmaceutical Bulletin, Vol. 18, No. 5, pp 766-771、The Pharmaceutical society of Japan)に記載されている。前記出版物では、グルタミン酸−グルタミン酸ナトリウムバッファを安定剤として添加した配合物が記載されており、発見された凍結乾燥方法は、下流の産業製品に適している。
【0006】
医薬的配合物中のタンパク質については、糖を安定剤として使用することが知られている。国際特許出願WO00/56365では、キャリア蛋白質に結合した多糖類及びトレハロースからなる抗原を含んだ組成物について報告している。
【0007】
科学出版物「Efficacy of chimeric molecules directed towards multiple somatostatin and dopamine receptors on inhibition of GH and prolactin secretion from GH-secreting pituitary adenomas classified as partially responsive to somatostatin analog therapy」(P Jaquet & Al, European Journal of Endocrinology, Vol 153, Issue 1, pp 135-141)では、特定のレセプターにおいていろいろ異なる強化された活性を有する新規なドーパミン−ソマトスタチンキメラ分子の重要性が示されている。これらの種類の化合物は、オクトレオチド治療法に部分的にしか応答しないとされた患者から採取した腫瘍において、オクトレオチド又は単独のレセプターと相互作用するリガンドのいずれかよりも、GH(成長ホルモン)やPRL(プロラクチン)の著しく大きな抑制を一貫してもたらした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第00/56365号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】H. Pourrat & Al, Biological and Pharmaceutical Bulletin, Vol. 18, No. 5, pp 766-771、The Pharmaceutical society of Japan
【非特許文献2】P Jaquet & Al, European Journal of Endocrinology, Vol 153, Issue 1, pp 135-141
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、特定の凍結乾燥方法及び/又は適切な賦形剤の選定によって、凍結乾燥状又は液状のこれらキメラ化合物を含有する、長期間安定した配合物を提供することにある。本発明は少なくとも24ヶ月液状又は凍結乾燥状態で安定な組成物を提供し、さらにはそのような組成物を凍結乾燥するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明で用いる活性物質は、ドーパミンアゴニスト及び環状ペプチドのソマトスタチンアナログのN末端に共有結合する小分子成分の2つから構成されるキメラ分子であり、キメラ化合物として作用する。
【0012】
具体的には、本発明は+5℃〜+40℃の温度範囲で安定な配合物であり、非経口投与経由で投与するための、溶媒添加により液状に再構築されることができる配合物に関する。
【0013】
更なる対象として、本発明は、+5℃〜+40℃の温度範囲及び60〜85%RH(相対湿度)、好ましくは75%RHで安定な液体医薬的配合物を包含する。この液体配合物は、バイアル中又はシリンジ型の装置内ですぐ使用可能な(ready to use)配合物として保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は3、6、9、及び18ヶ月間の種々の温度での保存性能に関して、BIM23A760の活性物質の含有量(初期%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで本発明を記述するために用いられる様々な用語の意味及び範囲を示しかつ定義すべく、以下の定義を説明する。
【0016】
ここで使用される用語「凍結乾燥した」、「凍結乾燥」は、溶液を凍結し、真空下で氷を蒸発させることによって、溶液から固体物質を分離する方法のことである。
ここで使用される用語「凍結乾燥物(lyophilisate)」は、凍結乾燥を経た後の、それ自身又は異なる注入可能なバルキング剤を添加した薬剤物質のことである。
【0017】
ここで使用される用語「バルキング剤」は、非還元性の糖又は多価アルコール(ポリオール)から成る物質のことである。
【0018】
本発明で使用される用語「安定性」は、化学的及び物理的安定性のことである。
ここで使用される用語「注入溶液用の粉末」は、非経口のルートで投与するために、水の溶液に迅速に(即座に)戻され得る凍結乾燥物等の粉末から成る物質のことである。
ここで使用される用語「即時放出性配合物」(immediate release formulation)は、1日〜1週間の持続期間で活性物質を放出する配合物である。
【0019】
本発明で使用される用語「アミノ酸」は、アルギニン、グリシン、リシン(lysine)、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、メチオニン、プロリンを含めたアミノ酸を表すがそれらに限定されるものではない。前記アミノ酸は単独でも又は組み合せて用いてもよい。
【0020】
本明細書の文章中では、用語「医薬的に許容可能な」とは、哺乳類又はヒトにおいて生理学的に充分許容されるという意味である。
本発明中の「高濃度の」とは、通常0.1mg/ml〜20mg/ml、好ましくは1バイアルにおいて1〜10mgの活性物質の含有量を意味する。
用語「緩衝等張溶液」及び「緩衝生理食塩水溶液」は、バッファに更に塩を含有する溶液のことである。
【0021】
ここで使用される用語「注入用の水(water for injection: WFI)」は、濾過や当業者に知られた技術で得られる滅菌水を意味する。
【0022】
液体配合物に使用されるSolutol(登録商標)は、マクロゴール(商品名)12ヒドロキシステアリン酸、注入溶液用の非イオン性溶解剤である。
【0023】
本発明では、単糖類若しくは二糖類若しくはポリオール又はそれらの混合物等の糖を、配合物の安定性、及び液体又は凍結乾燥した調製物の保存安定性のために使用することが更なる対象である。
【0024】
従って、単糖類、二糖類及びポリオールには、キシリトール、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンニトール、ソルビトール、デキストラン及びトレハロース(threalose)又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
マンニトール、キシリトール及びトレハロースが好ましく、トレハロースがさらに好ましい。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明の配合物、凍結乾燥した配合物及び/又は液体配合物は、配合物中1〜50重量%の活性物質BIM23A760(BIM23A760は、Dop2−DLys(Dop2)−c(Cys−Tyr−DTrp−Lys−Abu−Cys)−Thr−NH2である)若しくは他のドーパミン誘導体又はそれらの塩、好ましくは配合物中15〜30重量%のBIM23A760若しくは他のドーパミン誘導体又はそれらの塩を含む。
【0026】
本発明の凍結乾燥配合物によるポリオール、糖類、単糖類又は二糖類の量は、配合物の約50〜95重量%を含み、好ましくはポリオール、又は単糖類若しくは二糖類等の糖類の量が配合物に対して70重量%〜85重量%である。
【0027】
本発明の液体配合物によるポリオール、糖類、単糖類又は二糖類の量は、配合物の約1〜15重量%を含み、好ましくはポリオール、又は単糖類若しくは二糖類等の糖類の量が配合物に対して5重量%〜8重量%である。
【0028】
配合物の好ましいpH範囲は3.0〜7.0であり、ここで4.0〜6.0が特に好ましい。
【0029】
組成物は、凍結乾燥した製品の状態が好ましく、溶媒の添加によって戻すことができる。前記溶媒は、等張溶液、緩衝等張溶液、緩衝生理食塩水溶液又は注入用の水でもよい。
【0030】
上記に加えて、本発明の前記組成物は、アミノ酸又は、ホウ酸、リン酸、酢酸及びクエン酸並びに/又はそれらの塩を含む有機塩等の従来の緩衝剤を更に含んでもよい。
【0031】
本明細書で公開する前記配合物には、等張剤も含めることができる。本発明による前記配合物の適切な等張剤として、0.1〜5%(w/w)の量、好ましくは0.9〜3%(w/w)の量の、プロピレングリコール、グリセロール、塩化ナトリウム、塩化カリウムが含まれる。
【0032】
本発明による組成物に有用な活性物質の医薬的塩は、有機酸及び無機酸との酸付加塩によって生成することができる。酸付加塩化合物の例として;例えば塩酸、臭化水素及びヨウ化水素等のハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、その他の無機酸の塩;例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の、アルキルスルホン酸やアリールスルホン酸等の有機スルホン酸の塩;並びに、例えば酢酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、フマル酸、シュウ酸、ステアリン酸、サリチル酸、アスコルビン酸又はパモ酸等の不溶性の塩等の有機カルボン酸塩及びそれに類するもの、が挙げられる。
【0033】
活性物質がカルボキシル基を含有する場合、そのカルボキシル基は塩基と医薬的に許容可能な塩を形成する。そのような塩の例として、例えばナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;例えばジイソプロピルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、Nメチルモルホリン、ピリジン、ピペラジン、N−エチルピペリジン、N−メチル−D−グルカミン及びプロカイン等のアミンとの塩、その他の有機塩基との塩;又はアルギニン及びリシン等のアミノ酸の塩が挙げられる。
好ましいペプチド塩は、有機酸と共に形成される塩である。
【0034】
本発明の対象として、BIM23A760等のドーパミン誘導体の凍結乾燥した、及び液体の配合物を提供することであり、配合物の製造期間中及び/又はそれに引き続く保存期間中における向上した安定性を示す。従って、更なる対象として、本発明は方法も包含する。
【0035】
本発明の化合物を製造する方法は、例示的な目的において示され、開示された本発明を限定するものとして、構成されるべきものではない。
【0036】
液体又は凍結乾燥した配合物を製造するための本発明の方法は下記の通り行われることができる:
a)活性物質及び賦形剤の導入及び重量測定すること;
b)攪拌しながら水に化合物を溶解させること;
c)溶液のバブリングのために窒素を用いること;
d)濾過すること;
e)バイアルに充填し、プレストッパーをするか、溶液状で窒素下で栓をすること;
f)真空下で凍結乾燥させる工程;
g)真空状態を解除し、及び窒素下で栓をすること;
【0037】
本発明に従い、医薬的配合物が適切に製造される:
− 活性薬剤及び賦形剤を適量導入し、
− 攪拌しながら溶解し、任意で前記活性物質及び賦形剤を溶解するために水を用い、前記水は、注入用の水、緩衝溶液又は等張溶液でもよい。予め決められた濃度の活性物質及び賦形剤を含有する前記溶液は、窒素でバブリングしてもよい。その後、前記溶液は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜フィルターで滅菌濾過してもよい。その後任意で滅菌バイアルに無菌的に充填してもよい。
− 保護された雰囲気を維持し、酸化を防止するために、任意で室温のもと、液状で窒素バブリングしながら、バイアルに栓をし、
− 更に工程は、室温でバイアルにプレストッパーをすることから成り、そして、予め凍結する工程を行ってもよい。前記予備凍結温度は、不活性条件下で約−20℃〜−50℃の範囲であり、好ましくは約−20℃〜−30℃であり、さらに好ましくは約−25℃〜−30℃である。
− 続いて前記溶液は、任意で窒素雰囲気下で又は当分野で知られた他の制御された雰囲気下で、凍結乾燥することができ、約100〜400マイクロバール、好ましくは約150〜300マイクロバールの減圧で、約8〜12時間、約−50℃〜+5℃の温度、好ましくは約−25℃〜+5℃の温度で一次乾燥する。
− その後窒素下で減圧して、二次乾燥工程を行うことができる。前記減圧は、約40〜150、好ましくは約60〜100マイクロバール、3〜5時間、そして約−5℃〜+25℃の温度、好ましくは約+5℃〜+15℃の温度であってよい。
− 滅菌フィルターした窒素を用いて、当業者に知られた適切な方法で真空状態を解除し、その後、窒素下でバイアルに栓をし、クリンピング(crimping)のために凍結乾燥機から取り出す。
【0038】
本発明の方法による凍結乾燥した調製物は極めて容易に再溶解する。
【0039】
本発明は更に、医薬的配合物が水性の生理学的環境に置かれた時に、即時放出性配合物(IRF)、及び/又は1日〜1週間の期間にわたる活性物質の継続的放出を提供する。
【0040】
本発明の特定の実施形態において、前記即時放出性配合物は注入可能なものである。この医薬的組成物は、皮下の、筋肉内の、静脈内の又は注入(infusion)ルート等の非経口的方法で用いられることができる。
【0041】
更に好ましい実施形態として、本発明の前記医薬的配合物は、非経口ルートで投与される即時放出性配合物(IRF)である。
【0042】
そして、本発明によれば、前記非経口投与は、好ましくは毎日7日間繰り返す皮下投与であり、患者によっては数日又は数週間症状に応じて繰り返す治療、好ましくは継続的な治療でもよいが、これら投与方法に限定されない。
【0043】
本発明の更なる対象として、医薬的配合物は放出の高度なコントロールを示し、それは、ゼロオーダーの曲線又は擬似のゼロオーダーの曲線(ゼロオーダーのキネティクス曲線とは、前記活性物質の放出が定率であることを意味する)で表され、その低いCmax(Cmaxは、活性物質のプラズマ中の濃度において観察される最大ピークである)により、初期バーストのコントロールが示される。
【0044】
本発明の目的はインビボ及びインビトロの試験及び、本発明で提供される安定性データによって達成される。
さらに、無菌調製物を得るために、放射性滅菌やオートクレーブ滅菌等の様々な技術を本発明で公開されている配合物に使用できる。
【0045】
前述した活性物質は、先端巨大症、脳下垂体腫瘍及び神経内分泌性の(特にカルチノイド)腫瘍に関連した症状等の慢性的な障害又は症状を治療及び/又は予防するために使用することができる。
前記化合物は、兆候的な、非機能性脳下垂体腫瘍の長期治療のためにも必要とされる。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明を制限することなく、例示として寄与するものである。
【0047】
実施例1
Dop2−DLys(Dop2)−c(Cys−Tyr−DTrp−Lys−Abu−Cys)−Thr−NH2に対応するBIM23A760の図及び式
BIM23A760は粉末製品であり、ホワイト〜オフホワイト色である。
分子量: 〜1690da
式:Dop2−DLys(Dop2)−c(Cys−Tyr−DTrp−Lys−Abu−Cys)−Thr−NH2
分子構造 : C8611616124
【化1】

【0048】
Dop2−DLys(Dop2)−c(Cys−Tyr−DTrp−Lys−Abu−Cys)−Thr−NH2の式中、Dop2は以下の式を意味する:
【化2】

【0049】
実施例2
配合物安定性−測定方法及び結果
安定性測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で行った。HPLCシステムは、検出システム2487 Dual λ Absorbance Detectorで完了する、HPLC Waters Alliance 2695である。使用したカラムは、C18、250×4.6mmである。装置の条件に関する全ての詳細は、表6に記載した。溶出条件は表7に記載した。
【0050】
2つの医薬的形状を並行して、安定性試験について、6ヶ月間、+5℃及び+25℃/60%RH(相対湿度)、並びに+40℃/75%RHで検証した。測定はWFI(注入用の水)中、凍結乾燥物(薬剤物質単独)、並びにマンニトール、グリシン及びトレハロース等の追加的なバルキング剤を添加した第二配合物を、(wfi又はwfi溶媒の5%デキストロースにより)並行して行った。組成物及び安定性期間に関する時間を表1及び2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
安定性の結果は表4及び5に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
希釈はマイクロピペットを用いて行った。
【0058】
検証された液体配合物と比較して、トレハロース凍結乾燥配合物は+5℃及び+25℃で、最初の3ヶ月間最も安定した形状であることを示す結果となった。+5℃及び+25℃で6ヵ月後、物質(ケーキ)の外観、溶液の再構成、pH、クロマトグラフィプロファイル及びアッセイの観点から、トレハロースベースの凍結乾燥物が最も安定に存在した。凍結乾燥物及び液体配合物は±5℃で少なくとも24ヶ月安定である。
【0059】
トレハロースをベースとした凍結乾燥物では、長期間、活性薬剤の可溶化及び安定性が確保されている。マンニトール及びグリシンも、凍結乾燥し、+25℃又は+40℃で、3又は6ヶ月間保存された状態で検証した。
【0060】
単糖類又は二糖類(キシリトール、マルトース、ラクトース、ガラクトース、デキストラン)について試験を行い、これら配合物中での化合物の安定性を検証した。
【0061】
上記結果からやはり、トレハロースは、BIM23A760の物理化学的安定性を確保し、向上させていた。トレハロースは、凍結乾燥した配合物中の活性薬剤を保護し、安定化させることを可能にする。
【0062】
皮下投与用の分子BIM23A760は、透明なバイアル中に注入溶液用の粉末として提供された。前記薬剤の最終製品は、注入用の水又はその5%デキストロース溶液のいずれかで水に戻した。
【0063】
前記溶液(BIM23A760、注入用水中)を、Tゼロ時、T1ヶ月時及びT3ヶ月時に、40℃/相対湿度75%で分析した。
【0064】
安定性の結果については、表4及び5にまとめ、図1に表した。
【0065】
C(初期%)は、Tゼロ時の含有量に対して、Tの時のパーセンテージで表した含有量を意味する。
【数1】

【0066】
P(%a/a)は、面積比のパーセンテージで表した溶液の純度を意味する:
【数2】

【0067】
試験的な安定性分析に用いるためのHPLC法
本発明で開示する配合物中の活性物質の安定性を測定するための方法及び装置について、表6に開示する。
【0068】
【表6】

【0069】
溶出プログラム、即ち配合物安定性の測定の為に用いる各溶離液(移動相)の比率を、表7に記載した。
【0070】
【表7】

【0071】
濃度0.5mg/mlのBIM23A760の標準溶液を、約10mgの活性物質BIM23A760をフラスコガラス中で溶解して調製した。その後、ボルテックス(商品名)を用いて振とうさせながら20mlの0.1N酢酸を添加した。必要であれば、完全に溶解させるために、超音波バス中で更に溶解させた。BIM23A760の粗(brut)重量は、以下の関係から計算した。
【数3】

【0072】
希釈はマイクロピペットを用いて行った。
【0073】
検証された液体配合物と比較して、トレハロース凍結乾燥配合物は+5℃及び+25℃で、最初の3ヶ月間最も安定した形状であることを示す結果となった。+5℃及び+25℃で6ヵ月後、物質(ケーキ)の外観、溶液の再構成、pH、クロマトグラフィプロファイル及びアッセイの観点から、トレハロースベースの凍結乾燥物が最も安定に存在した。凍結乾燥物及び液体配合物は±5℃で少なくとも24ヶ月安定である。
【0074】
トレハロースをベースとした凍結乾燥物では、長期間、活性薬剤の可溶化及び安定性が確保されている。マンニトール及びグリシンも、凍結乾燥し、+25℃又は+40℃で、3又は6ヶ月間保存された状態を検証した。
【0075】
上記結果からやはり、トレハロースはBIM23A760の物理化学的安定性を確保し、向上させていた。トレハロースは、凍結乾燥した配合物中の活性薬剤を保護し、安定化させることを可能にする。
【0076】
皮下投与用の分子BIM23A760は、透明なバイアル中に注入溶液用の粉末として提供された。前記薬剤の最終製品は、注入用の水又はその5%デキストロース溶液のいずれかで水に戻された。
【0077】
実施例3
凍結乾燥した配合物の実施例
材料(用量)は下記の通り:
BIM23A760 pur(純粋)(5.0mg)、トレハロース(17.0mg)及び、窒素(窒素下でバイアルを封入した)
【0078】
前記凍結乾燥物は、11mlのタイプIガラスバイアル中で使用可能で、窒素下でグレーのクロロブチルストッパーで栓をされている。
【0079】
必要とされる臨床上の投与量に従って、凍結乾燥物は、充分な量の注入用の水又はデキストロース5%(=1ml)のいずれかで戻される。水に戻した分量は1ml〜10mlである。
【0080】
実施例4
凍結乾燥した配合物を製造する方法
BIM23A760凍結乾燥物5.0mgは、活性薬剤及び成分を攪拌しながら注入用の水に溶解して製造した。この溶液は、窒素下でバブリングし、0.22マイクロメートルPVDF膜フィルターで濾過滅菌し、そして、滅菌バイアルに無菌的に充填した。理論的な充填量は、溶液1.0g±3%であった。
【0081】
充填されたバイアルをプレストッパーして、凍結乾燥機へ移した。凍結時間は、−25℃で約3時間30分であった。
【0082】
一次乾燥は、150〜300マイクロバールの窒素及び真空下で10時間、−25℃〜+5℃で行った。
【0083】
二次乾燥は、窒素下で行い、真空は60〜100マイクロバール、4時間30分、+5℃〜+15℃の温度に調整された。
【0084】
栓をしたバイアルを自動的にクリンプした。そして、バイアルをワイプを一度だけ使用して外部を洗浄した。バルク製品は、100%視覚的に検査して、シールされた容器に+5℃±3℃で保存した。
【0085】
方法のフローチャート
凍結乾燥の方法及び配合物の製造方法を表8に要約する。
【0086】
【表8】

【0087】
実施例5
薬物速度論データ及び前記データを提供するために用いる方法
臨床前研究で用いられる液体配合物(wfi中2%Solutol配合物)に対する、Sprague Dawleysラットでの薬物速度論を評価するために、水に戻された凍結乾燥物は(及び1mlのwfi)を、皮下ルートで動物に投与した。
【0088】
2シリーズの希釈溶液を調製した。1シリーズ目は2%solutolを添加し、2番目はトレハロースを添加した。BIM23A760について、0.1mg/ml、1mg/ml及び10mg/mlと異なる希釈液を調製した。
【0089】
異なる濃度で、Sprague−DawleyラットにおけるBIM23A760の単一皮下注射後の予備的な薬物速度論調査を表9に開示する。
【0090】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ分子及び、少なくとも1つの、糖若しくはポリオール又はそれらの混合物を含有し、凍結乾燥によって得られる、+5℃〜+40℃の温度範囲で安定な固体医薬的配合物。
【請求項2】
前記キメラ分子がBIM23A760又はドーパミン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記安定な固体医薬的配合物中の糖が、キシリトール、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンニトール、ソルビトール、デキストラン及びトレハロース(threalose)又はそれらの混合物、好ましくはキシリトール、マンニトール又はトレハロースを包含する、単糖類若しくは二糖類又はポリオールから選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の配合物。
【請求項4】
請求項1に記載の医薬的配合物の製造方法であって:
(a)活性物質及び賦形剤を導入及び重量測定すること;
(b)攪拌しながら又は窒素下でバブリングしながら水に化合物を溶解させること;
(c)濾過すること;
(d)バイアルに充填し、プレストッパーをすること;
(e)予め凍結させる工程及び真空下で凍結乾燥させる工程;
(f)真空状態を解除し、及び制御された雰囲気下で栓をすること;
を含む方法。
【請求項5】
工程(e)の予め凍結させる温度が、不活性条件下で約−20℃〜−50℃、好ましくは約−20℃〜−30℃、より好ましくは約−25℃〜−30℃であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記真空状態の解除が、窒素でバブリングすることに特徴づけられる制御された雰囲気下で行われる請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
キメラ分子、及び少なくとも1つの、糖若しくはポリオール又はそれらの混合物を含有し、任意で等張剤及び/又は緩衝剤を含有し、請求項4に記載の方法の工程(a)〜(d)で得られる、+5℃〜+40℃の温度範囲で安定な液体医薬的配合物。
【請求項8】
前記キメラ分子がBIM23A760又はドーパミン誘導体であることを特徴とする請求項7に記載の安定な液体医薬的配合物。
【請求項9】
等張剤がプロピレングリコール、グリセロール、塩化ナトリウム又は塩化カリウムから選択されることを特徴とする請求項7又は8に記載の安定な液体医薬的配合物。
【請求項10】
前記糖が、キシリトール、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンニトール、ソルビトール、デキストラン及びトレハロース又はそれらの混合物、好ましくはトレハロース、キシリトール又はマンニトールを包含する単糖類若しくは二糖類又はポリオールから選択されることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の安定な液体医薬的配合物。
【請求項11】
先端巨大症、脳下垂体腫瘍及び神経内分泌性の(特にカルチノイド)腫瘍に関連した症状等の慢性的な障害又は症状を治療及び/又は予防するための、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法で製造された凍結乾燥した配合物であるBIM23A760の使用。
【請求項12】
先端巨大症、脳下垂体腫瘍及び神経内分泌性の(特にカルチノイド)腫瘍に関連した症状等の慢性的な障害又は病状を治療及び/又は予防するための、請求項4方法の工程(a)〜(d)によって製造された液体配合物であるBIM23A760の使用。
【請求項13】
前記で定義される発明。

【図1】
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【公表番号】特表2011−516461(P2011−516461A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502456(P2011−502456)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005441
【国際公開番号】WO2009/122288
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(509120469)イプセン ファルマ ソシエテ パール アクシオン サンプリフィエ (51)
【氏名又は名称原語表記】IPSEN PHARMA S.A.S.
【住所又は居所原語表記】65 Quai Georges Gorse,F−92100 Boulogne Billancourt FRANCE
【Fターム(参考)】