説明

液体配管のエアー抜き構造および液滴吐出装置

【課題】エアー抜きの分岐部を越えて下流側に気泡(エアー)が流れてしまっても、これを確実にエアー抜きすることができる液体配管のエアー抜き構造および液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】液体が流れる機能液主管91の途中に設けたT字継手101により、機能液中の気泡Bを除去するエアー抜き配管104を上向きに分岐させた液体配管のエアー抜き構造であって、T字継手101は、機能液主管91の上流側となる上流側液体主管102が接続される流入ポート111と、機能液主管91の下流側となる下流側液体主管103が接続される流出ポート112と、エアー抜き配管104の上流側が接続される上向きのエアー抜きポート113と、を備え、流出ポート113は、斜め下向きに配設されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が流れる液体主管の途中に設けた分岐継手により、液体中の気泡を除去するエアー抜き配管を分岐させた液体配管のエアー抜き構造および液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体配管のエアー抜き構造(気泡の排出構造)として、インクを貯留したインクタンクと、上流端をインクタンクに接続され下流端をインクジェットヘッドに接続したインクチューブと、インクタンクの近傍に位置してインクチューブに介設され、インクタンクからインクジェットヘッドにインクを送液するポンプと、ポンプとインクジェットヘッドとの間のインクチューブに介設され、インクチューブ内の気泡を除去する泡抜き用分岐弁と、泡抜き用分岐弁の分岐側に接続された排出チューブと、を有するものが知られている(特許文献1参照)。
この気泡の排出構造では、インクチューブおよび排出チューブを連通させるように泡抜き用分岐弁を切換えた後、ポンプを駆動する。これにより、インクチューブ内の気泡が、インクタンクから供給されたインクに押し出されるようにして排出チューブから排出される。
【特許文献1】特開平10−239510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の気泡の排出構造では、泡抜き用分岐弁が三方弁で構成されているため、泡抜き用分岐弁を越えてその下流側に達した気泡は、例え泡抜き用分岐弁を開放しても除去する(抜く)ことができない問題があった。例えば、泡抜き用分岐弁を越えたところで気泡に気づきポンプを停止しても、気泡は、水平に配管されているインクチューブの直上の天面まで浮上はするが、水平方向には移動せず、泡抜き用分岐弁を開放してもこれを抜くことはできない。
【0004】
そこで、本発明は、エアー抜きの分岐部を越えて下流側に気泡(エアー)が流れてしまっても、これを確実にエアー抜きすることができる液体配管のエアー抜き構造および液滴吐出装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体配管のエアー抜き構造は、液体が流れる液体主管の途中に設けた分岐継手により、液体中の気泡を除去するエアー抜き配管を上向きに分岐させた液体配管のエアー抜き構造であって、分岐継手は、液体主管の上流側となる上流側液体主管が接続される流入ポートと、液体主管の下流側となる下流側液体主管が接続される流出ポートと、エアー抜き配管の上流側が接続される上向きのエアー抜きポートと、を備え、流出ポートは、斜め下向きに配設されていることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、上流側から気泡混じりの液体が流れてきた場合、液体中の気泡は、浮力により浮上し、上向きに分岐したエアー抜きポートを介してエアー抜き配管へ流れ込む。また、気泡混じりの液体が、分岐継手のエアー抜きポート(分岐部)を越えて流出ポートに流れ込んだ場合であっても、液体中の気泡は、その浮力により浮上し、斜め下向きの流出ポートの天面を伝わって、エアー抜きポートに流れ込む。すなわち、流出ポートが斜め下向きに配設されているため、気泡混じりの液体がエアー抜きポートを越えて流出ポートに流れ込んでも、液体の流速が極端に速いものでないかぎり、液体中の気泡をエアー抜き配管に抜き取ることができ、液体主管を流れる液体に対し確実にエアー抜きを行うことができる。なお、「エアー抜き」の「エアー」の言は、空気だけでなく不活性ガス等、広く気体を意味するものである。
【0007】
この場合、分岐継手は、分岐ポートをエアー抜きポートとするT字継手であり、流出ポートは、斜め下向き略45°の角度に配設されていることが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、流入ポートからエアー抜きポートへの気泡の円滑な流れ込みを阻害することなく、流出ポートからエアー抜きポートへの気泡の流れ込みを促進することができ、単純な構造で確実にエアー抜きを行うことができる。
【0009】
また、上流側液体主管は、下方からループ状に配管され、斜め下向き略45°の角度で流入ポートに接続されていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、上流側液体主管を屈曲させ或いは別途継手を用いることなく、上流側液体主管をT字継手に繋ぎ込むことができ、流体の圧力損失を極力少なくすることができる。
【0011】
さらに、エアー抜き配管の下流端には、気泡をトラップする廃液タンクが接続されていることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、気泡混じりの液体が貯留した場合、その液体から気泡を除去すれば、液体を再利用することができる。
【0013】
これらの場合、流入ポート近傍の上流側液体主管に臨み、上流側液体主管を流れる液体中の気泡を検出する気泡検出センサと、エアー抜きポート近傍のエアー抜き配管に介設され、エアー抜き配管を開閉するエアー抜きバルブと、気泡検出センサの気泡検出に基づいて、エアー抜きバルブを開放させるバルブ制御手段と、を更に備えることが、好ましい。
【0014】
この場合、流出ポートの近傍の下流側液体主管に介設され、下流側液体主管を開閉する開閉バルブを、更に備え、バルブ制御手段は、エアー抜きバルブの開放に同期して開閉バルブを閉塞することが、好ましい。
【0015】
これらの構成によれば、気泡検出センサが気泡を検出すると、バルブ制御手段がエアー抜きバルブを開放する。これにより、上流側液体主管内を流れる気泡をエアー抜きポートに効率良く導くことができる。また、液体主管に液体を充填する場合に、特に有用である。
【0016】
本発明の液滴吐出装置は、ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行う描画手段と、液体が機能液であり、下流側液体主管の下流端が機能液滴吐出ヘッドに接続された上記の液体配管のエアー抜き構造と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、気泡のない機能液を機能液滴吐出ヘッドに供給することができるため、機能液滴吐出ヘッドによる描画を良好に行なうことができる。
【0018】
この場合、上流側液体主管の上流端には、液体を貯留した一対の液体タンクと、一対の液体タンクと上流側液体主管とを選択的に連通する流路切替え手段と、が接続されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、一方の液体タンクから他方の液体タンクに流路切替えした際に、上流側液体主管に気泡が混入した場合であっても、これを確実に除去することができ、気泡のない機能液を機能液滴吐出ヘッドに供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の液体配管のエアー抜き構造(以下、単に「エアー抜き構造」という。)を備えた液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0021】
図1ないし図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース21上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、複数本の支柱11を介してX軸テーブル2を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース31上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、Y軸テーブル3に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド13が搭載された13個のキャリッジユニット4と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を、温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ5と、チャンバ5を貫通して、機能液滴吐出ヘッド13に機能液を供給する機能液供給ユニット6と、を備えており、チャンバ5の側壁の一部には、機能液を貯留するメインタンク(液体タンク)81等を収納するタンクキャビネット14が設けられている。液滴吐出装置1は、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド13を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット6から供給された6色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0022】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット15、吸引ユニット16、ワイピングユニット17、吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置7を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド13の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド13の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル2とY軸テーブル3とが交わる部分にキャリッジユニット4を臨ませてワークWの描画を行い、Y軸テーブル3とメンテナンス装置7(吸引ユニット16、ワイピングユニット17)が交わる部分にキャリッジユニット4を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド13の機能維持・機能回復を行う。
【0023】
図2および図3に示すように、X軸テーブル2は、ワークWを吸着セットすると共にθ軸方向に補正可能な機構を有するセットテーブル22と、セットテーブル22をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダ23と、上記のフラッシングユニット15および吐出性能検査ユニット18をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダ24と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダ23およびX軸第2スライダ24をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。
【0024】
Y軸テーブル3は、13個のキャリッジユニット4をそれぞれ吊設した13個のブリッジプレート32と、13個のブリッジプレート32を両持ちで支持する13組のY軸スライダ(図示省略)と、一対のY軸支持ベース31上に設置され、ブリッジプレート32をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル3は、各キャリッジユニット4を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド13を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド13を吸引ユニット16およびワイピングユニット17に臨ませる。この場合、各キャリッジユニット4を独立させて個別に移動させることも可能であるし、13個のキャリッジユニット4を一体として移動させることも可能である。なお、請求項に言う描画手段とは、X軸テーブル2、Y軸テーブル3およびキャリッジユニット4(機能液滴吐出ヘッド13およびヘッドユニット42)から構成されている。
【0025】
各キャリッジユニット4は、R・G・B・C・M・Yの6色、各2個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド13と、12個の機能液滴吐出ヘッド13を6個ずつ2群に分けて支持するヘッドプレート41と、から成るヘッドユニット42を備えている(図4参照)。また、各キャリッジユニット4は、ヘッドユニット42をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構43と、θ回転機構43を介して、ヘッドユニット42をブリッジプレート32に支持させる吊設部材44と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット4は、その上部にサブタンク72が配設されており(実際には、ブリッジプレート32上に配設)、このサブタンク72から自然水頭を利用し、かつ圧力調整弁115を介して各機能液滴吐出ヘッド13に機能液が供給されるようになっている。なお、本実施形態においては、キャリッジユニット4の個数および各キャリッジユニット4に搭載される機能液滴吐出ヘッド13の個数は任意である。
【0026】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド13は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針54を有する機能液導入部51と、機能液導入部51に連なる2連のヘッド基板52と、ヘッド基板52の下方に連なり機能液を吐出するヘッド本体53と、を備えている(図5(a))。
【0027】
機能液導入部51は、一対の接続針54を有しており、サブタンク72から機能液の供給を受けるようになっている。また、ヘッド本体53は、ピエゾ素子等で構成される2連のポンプ部55と、複数の吐出ノズル57が形成されたノズル面58を有するノズルプレート56と、を有している。ノズルプレート56のノズル面58に形成された多数の吐出ノズル57は、相互に平行且つ半ノズルピッチ位置ズレして列設された2列のノズル列NLを構成しており、各ノズル列NLは、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル57で構成されている(図5(b)参照)。制御装置114から出力された駆動波形がヘッド基板52を介して各ポンプ部55(圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル57から機能液が吐出される。
【0028】
次に、図1および図6を参照して、機能液供給ユニット6について説明する。機能液供給ユニット6は、R・G・B・C・M・Yの6色に対応した6組の機能液供給装置61を備えている。また、機能液供給ユニット6は、メインタンク81およびサブタンク72等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備62と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備63と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備64と、を備えている。6組の機能液供給装置61は、それぞれR・G・B・C・M・Yの6色に対応した機能液滴吐出ヘッド13に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド13には対応する色の機能液が供給される。
【0029】
各機能液供給装置61は、機能液の供給源を構成する一対のメインタンク81を有するメインタンクユニット71と、各キャリッジユニット4に対応して設けた13個のサブタンク72と、メインタンクユニット71と各サブタンク72を接続する上流側機能液流路73と、各サブタンク72と各機能液滴吐出ヘッド13とを接続する13組の下流側機能液流路74と、を備えている。各メインタンク81内の機能液は、これに接続して窒素ガス供給設備62からの圧縮窒素ガスにより加圧され、上流側機能液流路73を介して13個のサブタンク72に選択的に供給される。また同時に、各サブタンク72は、ガス排気設備64を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。そして、各サブタンク72の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド13の駆動により、所定の水頭圧を維持しながら、下流側機能液流路74を介して機能液滴吐出ヘッド13に供給される。なお、上流側機能液流路73および下流側機能液流路74は、気体非透過性の樹脂チューブで構成されている。
【0030】
メインタンクユニット71は、機能液の供給源となる一対のメインタンク(液体タンク)81,81と、一対のメインタンク81の重量をそれぞれ測定する一対の重量測定装置82,82と、メインタンク81に貯留されている機能液の液位が減少することで吸い上げた気泡Bを検出する一対の気泡センサ83,83と、気泡B検出の結果に基づいて、上流側機能液流路73への連通状態を一方のメインタンク81から他方のメインタンク81に切替える切替え機構(流路切替え手段)84と、を備えている。
【0031】
重量測定装置82は、例えばロードセル等で構成され、機能液滴吐出ヘッド13に機能液を送液することで、メインタンク81内の機能液の液位が徐々に減少し、一方のメインタンク81が所定の重量まで減量すると警告を発するようになっている。気泡センサ83は、いわゆる光センサであり、上記の警告後、さらに機能液の送液を続けることで、その液位がメインタンク81の底面付近まで挿入されたタンク配管85の先端より下側に移行した場合に、タンク配管85から吸い上げた気泡Bを検出する。この際、検出された気泡Bは、後述する第1エアー抜きユニット93によって除去され、機能液滴吐出ヘッド13に送られることはない。
【0032】
切替え機構84は、一対のメインタンク81に接続した一対のタンク流路86,86と、上流側が一対のタンク流路86,86に接続されると共に、下流側が上流側機能液流路73に接続されたタンク流路継手87と、各タンク流路86,86に介設されたタンク開閉弁88と、を備えている。上記の気泡センサ83が気泡Bを検出すると、一方のタンク開閉弁88を閉弁し、他方のタンク開閉弁88を開弁することにより、他方のメインタンク81に流路切替えが行われる(自動または手動)。
【0033】
上流側機能液流路73は、上流端をタンク流路86に接続され、下流端を13分岐流路90に接続した機能液主管(液体主管)91と、上流端を13分岐流路90に接続され下流端を各サブタンク72に接続した13本の機能液分岐管92と、で構成されている。そして、機能液主管91には、上流側から、主にメインタンク81の交換時に流入した気泡Bを除去(エアー抜き)する第1エアー抜きユニット(エアー抜き構造)93と、気体通過膜を介して機能液中に溶け込んでいる気泡B(この場合は、主にマイクロバブル)を除去する気泡除去ユニット94と、主に初期充填時に使用され、機能液主管91内のエアーを除去する第2エアー抜きユニット95と、が順に介設されている。すなわち、機能液主管91には、気泡Bを取り除く3つのユニット93,94,95が介設されており、これらを用いて、描画に支障を生じないレベルまで気泡Bを除去した機能液をサブタンク72に供給する。
【0034】
次に、図6および図7を参照して、第1エアー抜きユニット93について説明する。第1エアー抜きユニット93は、メインタンクユニット71の近傍において機能液主管91に介設されたT字継手101と、T字継手101の流入側に接続された流入側液体主管(機能液主管91のT字継手101より上流側)102と、T字継手101の流出側に接続された流出側液体主管(機能液主管91のT字継手101より下流側)103と、T字継手101の分岐側に接続されたエアー抜き配管104と、T字継手101の近傍においてエアー抜き配管104に介設したエアー抜きバルブ(第1流路開閉手段)105と、T字継手101の近傍において流出側液体主管103に介設した開閉バルブ(第2流路開閉手段)106と、流入側液体主管102に臨む気泡検出センサ107と、エアー抜き配管104の下流端が接続した廃液タンク108と、から構成されている。また、両バルブ105,106および気泡検出センサ107は、上記の制御装置114に接続されている。
【0035】
T字継手101は、流入側液体主管102が接続される流入ポート111と、流出側液体主管103が接続される流出ポート112と、エアー抜き配管104が接続されるエアー抜きポート113と、を備えている。また、T字継手101は、分岐ポートであるエアー抜きポート113が鉛直に向く、エアー抜きの一般的な設置状態から、全体として略45°の角度傾いて配設されている。すなわち、このT字継手101では、分岐部を基点として、流入ポート111が斜め上向き略45°の角度で、流出ポート112が斜め下向き略45°の角度で、さらにエアー抜きポート113が鉛直から略45°の角度で、それぞれ配設されている。これに対応して、樹脂チューブで構成された流入側液体主管102は45°の角度で流入ポート111に接続され、同様に、流出側液体主管103は45°の角度で流出ポート112に、エアー抜き配管104は45°の角度でエアー抜きポート113に接続されている。流入側液体主管102を流れてきた気泡Bは、エアー抜きポート113に向って、その浮力により浮上し、エアー抜き配管104にエアー抜きされる。
【0036】
流入側液体主管102は、上流端がタンク流路86に接続されており、この下流端(下方)からループ状に配管(凸状に湾曲配管)され、斜め下向き略45°の角度で流入ポート111に接続されている。これにより流入側液体主管102を屈曲させ或いは別途継手を用いることなく、流入側液体主管102をT字継手101に繋ぎ込むことができるため、流体の圧力損失を極力少なくすることができる。そして、流入側液体主管102のループ状部分の頂部近傍(T字継手101寄りの位置)には、機能液と共に流入側液体主管102を流れる気泡Bを検出する気泡検出センサ107が、外側から臨んでいる。頂部に達した気泡Bは、その浮力により機能液に比して流れる速度が遅くなるため、気泡検出センサ107により容易に検出される。
【0037】
一方、T字継手101の近傍に位置して流出側液体主管103には、流出側液体主管103を開閉する開閉バルブ106が設けられている。詳細は後述するが、エアー抜きを実施する場合には、この開閉バルブ106を「閉」とし、上記のエアー抜きバルブ105を「開」として、機能液混じりの気泡Bがエアー抜き配管104に導かれる一方、流出側液体主管103に流れないようにする。
【0038】
また、T字継手101近傍に位置してエアー抜き配管104には、エアー抜き配管104を開閉するエアー抜きバルブ105が設けられている。気泡検出センサ107により検出されなかった小さな気泡B等は、エアー抜きポート113部分に差し掛かったときにその浮力で上昇し、エアー抜きバルブ105の下側に溜まるようになっている。このエアー抜きバルブ105の下側に溜まった気泡Bは、エアー抜きバルブ105が開放されたときに除去されることになる。エアー抜き配管104の下流端は、気泡Bをトラップする廃液タンク108に接続されており、廃液タンク108に達した気泡B混じりの機能液は、ここで気−液分離される。なお、廃液タンク108は、廃液処理を容易に行えるようにチャンバ5外、例えば上記のタンクキャビネット14に収容することが、好ましい。
【0039】
次に、図8および図9を参照して、エアー抜き方法について説明する。このエアー抜き方法は、主に、メインタンク81の交換時に吸い上げられた気泡Bをエアー抜きする場合に用いられる。メインタンク81から流入側液体主管102に気泡B混じりの機能液が送られてくると、この気泡Bを気泡検出センサ107が検出する(図8(a)参照)。この検出信号は制御装置(バルブ制御手段)114に出力され、制御装置114は、エアー抜きバルブ105を「開」とすると同時に、開閉バルブ106を「閉」とし、流入側液体主管102とエアー抜き配管104とを連通(以下、単に「エアー抜き制御」という。)する(図8(b)参照)。これにより、気泡B混じりの機能液は、エアー抜き配管104に送り込まれる。この場合の、エアー抜き制御のタイミングは、予め気泡Bが気泡検出センサ107から流出ポート112に到達する通過時間を求めておき、気泡Bが検出されてから通過時間経過直前に、両バルブ105,106を制御するようにしている。もっとも、開閉バルブ106の「閉」のタイミングが遅れ、気泡Bが流出ポート112に達することがあっても、開閉バルブ106が「閉」となったところで、気泡Bはその浮力で流出ポート112の天面を伝わってエアー抜き配管104に流れ込む。
【0040】
そして、気泡B(気泡B混じりの機能液)をエアー抜きした後に、エアー抜きバルブ105を「閉」とすると同時に、開閉バルブ106を「開」とし、流入側液体主管102および流出側液体主管103を連通(以下、単に「復帰制御」という。)して、エアー抜きを終了する(図8(c)参照)。なお、復帰制御のタイミングは、気泡検出センサ107による気泡Bの検出時間に対応させるようにするか、一定時間経過後に行うようにしてもよい。
【0041】
ところで、上記した方法によってエアー抜きが終了した場合であっても、タンク配管85の先端などに付着した気泡Bが、メインタンク81内の機能液によって、徐々に押し出されて断続的に送られてくる場合がある。この場合にも、気泡検出センサ107が気泡Bを検出する度にエアー抜きを行う。すなわち、気泡検出センサ107が気泡Bを検出すると、両バルブ105,106をエアー抜き制御し、エアー抜きした後、両バルブ105,106を復帰制御する。これを気泡Bごとに繰り返すことで、機能液を無駄に廃液することなく、機能液中の気泡Bを確実にエアー抜きすることができる。なお、復帰制御前に気泡検出センサ107が、次に流れてきた気泡Bを検出した場合には、次の気泡Bをエアー抜きした後、復帰制御を行うようにしてもよい。
【0042】
また、気泡Bが、気泡検出センサ107で検出されずに機能液の流れに乗って流出ポート112に達した場合であっても(図9(a)参照)、気泡Bは、その浮力でエアー抜きポート113に向って浮上し(図9(b)参照)、エアー抜きバルブ105のところにトラップされる。トラップされた気泡Bは、上記のエアー抜き制御のときに、検出された気泡B(気泡B混じりの機能液)と共に、タンク108に排出される(図9(c)参照)。また、小さな気泡Bが流入側液体主管102の頂部に貯留してしまった場合であっても、小さな気泡Bは、経時的にその頂部に集まるため、やがて大きな気泡Bとなり、気泡検出センサ107で検出され、エアー抜きされる(図示省略)。
【0043】
なお、上記したエアー抜き方法は、機能液の機能液滴吐出ヘッド13への機能液の初期充填時に用いてもよい。その際、流出ポート112に気泡Bが残った場合であっても、その気泡Bは、機能液により押し上げられ(浮上)て、エアー抜きバルブ105のところに貯留して、最終的にエアー抜きされた際にエアー抜きポート113に流れ込む(図示省略)。
【0044】
以上の構成によれば、機能液中の気泡Bは、浮力により浮上し、分岐したエアー抜きポート113を介してエアー抜き配管104へ流れ込む。また、気泡B混じりの機能液が、エアー抜きポート113を越えて流出ポート112に流れ込んだ場合であっても、気泡Bは、その浮力により浮上し、斜め下向きに配設されている流出ポート112の天面を伝わってエアー抜きポート113に流れ込む。すなわち、いずれにしても、機能液中の気泡Bをエアー抜き配管104に抜き取ることができ、機能液に対し確実にエアー抜きを行うことができる。
【0045】
次に、図10を参照して、第2実施形態に係る第1エアー抜きユニット93について説明する。この第1エアー抜きユニット93は、T字継手101に代えて、Y字継手130を上下反転して用いられているところが第1実施形態と異なる。すなわち、エアー抜きポート113を鉛直上向きとし、流入ポート111および流出ポート112を斜め下向きになるように、Y字継手130を配置する。この場合でも、気泡Bは、エアー抜きポート113に向って、その浮力により浮上し、エアー抜き配管104にエアー抜きされる。特に、エアー抜きポート113が配管の頂部に位置するため、全ての気泡Bは、浮力により上昇してエアー抜きポート113に集まり、気泡検出センサ107により検出されない場合であっても、効率よくトラップされる。
【0046】
上記実施形態の変形例として、流出ポート112が斜め下向きで、エアー抜きポート113が上向きであれば、Y字継手130を横に倒すようにして使用してもよい。この場合、エアー抜きポート113を斜め上向きとし、流入ポート111を横(水平)向きとし、流出ポート112を斜め下向きになるように、Y字継手130を配置する。この場合でも、気泡Bは、エアー抜き配管104にエアー抜きされる。
【0047】
なお、気泡B混じりの機能液が流れる流速が遅い場合には、気泡Bは、浮力によりエアー抜きポート113に向って上昇するため、開閉バルブ106の閉塞動作を行う必要がなく、開閉バルブ106を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】ヘッドユニットの平面模式図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の配管系統図である。
【図7】第1エアー抜きユニット廻りの配管図である。
【図8】エアー抜き方法(1)を説明するための説明図である。
【図9】エアー抜き方法(2)を説明するための説明図である。
【図10】第2実施形態に係る第1エアー抜きユニット廻りの配管図である。
【符号の説明】
【0049】
1…液滴吐出装置 2…X軸テーブル 3…Y軸テーブル 4…キャリッジ 13…機能液滴吐出ヘッド 73…上流側機能液流路 81…メインタンク 84…切替え機構 86…タンク流路 88…タンク開閉弁 93…第1エアー抜きユニット 101…T字継手 104…エアー抜き配管 108…廃液タンク 111…流入ポート 112…流出ポート 113…エアー抜きポート 114…制御装置 106…開閉バルブ 107…気泡検出センサ 130…Y字継手 W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる液体主管の途中に設けた分岐継手により、液体中の気泡を除去するエアー抜き配管を上向きに分岐させた液体配管のエアー抜き構造であって、
前記分岐継手は、前記液体主管の上流側となる上流側液体主管が接続される流入ポートと、前記液体主管の下流側となる下流側液体主管が接続される流出ポートと、前記エアー抜き配管の上流側が接続される上向きのエアー抜きポートと、を備え、
前記流出ポートは、斜め下向きに配設されていることを特徴とする液体配管のエアー抜き構造。
【請求項2】
前記分岐継手は、分岐ポートを前記エアー抜きポートとするT字継手であり、
前記流出ポートは、斜め下向き略45°の角度に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の液体配管のエアー抜き構造。
【請求項3】
前記上流側液体主管は、下方からループ状に配管され、斜め下向き略45°の角度で前記流入ポートに接続されていることを特徴とする請求項2に記載の液体配管のエアー抜き構造。
【請求項4】
前記エアー抜き配管の下流端には、前記気泡をトラップする廃液タンクが接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体配管のエアー抜き構造。
【請求項5】
前記流入ポート近傍の前記上流側液体主管に臨み、前記上流側液体主管を流れる前記液体中の気泡を検出する気泡検出センサと、
前記エアー抜きポート近傍の前記エアー抜き配管に介設され、前記エアー抜き配管を開閉するエアー抜きバルブと、
前記気泡検出センサの気泡検出に基づいて、前記エアー抜きバルブを開放させるバルブ制御手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体配管のエアー抜き構造。
【請求項6】
前記流出ポートの近傍の前記下流側液体主管に介設され、前記下流側液体主管を開閉する開閉バルブを、更に備え、
前記バルブ制御手段は、前記エアー抜きバルブの開放に同期して前記開閉バルブを閉塞することを特徴とする請求項5に記載の液体配管のエアー抜き構造。
【請求項7】
ワークに対し、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出させて描画を行う描画手段と、
前記液体が前記機能液であり、前記下流側液体主管の下流端が前記機能液滴吐出ヘッドに接続された請求項1ないし6のいずれかに記載の液体配管のエアー抜き構造と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
前記上流側液体主管の上流端には、前記液体を貯留した一対の液体タンクと、前記一対の液体タンクと前記上流側液体主管とを選択的に連通する流路切替え手段と、が接続されていることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−22953(P2010−22953A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188264(P2008−188264)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】