液体鏡
液体鏡を備える装置。液体鏡は、液体に隣接する流体との界面を形成する液体を含む。液体鏡はまた、界面に位置し、反射面を形成する反射粒子の層も含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、鏡を対象とし、より詳細には液体鏡ならびに液体鏡の使用方法および製造方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
この項では、本発明のより良好な理解を促すのに有用になり得る態様について紹介する。したがって、この項の記述は、この観点において読み取られるものである。この項の記述は、従来技術に存在するもの、または従来技術に存在しないものについての承認として理解されるものではない。
【0003】
反射光学素子(たとえば鏡)の使用が、屈折光学素子(たとえばレンズ)の使用よりも好まれる光学素子用途が多く存在する。たとえば、望遠鏡から微小電気機械システム(MEMS)に及ぶ光学デバイスでは、可能な限り小型のデバイスを製造することがしばしば重要になる。反射光学素子を使用する光学構成要素は、屈折光学素子を使用する光学構成要素よりも小さい焦点距離および少ない信号損失を実現することができ、それによって光学デバイスの小型化が可能になる。別の利点は、鏡の反射率を波長に対して非感受性にすることができ、色収差が低減されることである。さらに、鏡は、回折光学素子が存在できないスペクトル領域、たとえば紫外線および赤外線において機能することができる。
【0004】
しかし、反射光学素子を使用する現在利用可能な光学構成要素の中には、能力が限定されているものもある。これは、さらにそれらの用途の範囲を限定し、あるいはデバイスの小型化の範囲を限定する。たとえば、特定のMEMSは、固体材料から作り出された鏡を有する。こうした固体の鏡は、それらの曲率を変更する能力を全くまたはわずかしか有さない。さらに、MEMSの鏡は、その回転範囲が限定されるため、限定された範囲で入射光線を屈折し得る。
【0005】
また、反射光学素子および屈折光学素子の両方を相補的なやり方で使用することが望ましい状況も存在する。そのような場合、反射光学素子および屈折光学素子を使用する光学構成要素の両方を、類似の製造プロセスを用いて作製することができる場合が有利である。しかし、従来のMEMSの鏡は、レンズの製造用の類似のプロセスを有さないやり方で作製されることが多い。したがって、鏡およびレンズを作製するために2つの異なる作製プロセスが使用されなければならず、それによってMEMSを構築するコストおよび複雑性が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,538,823号
【特許文献2】米国特許第6,891,682号
【特許文献3】米国特許第6,936,196号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、液体鏡を使用する装置、ならびにその製造方法および使用方法を提供することによってこうした欠点を克服する。
【0008】
上記で論じた欠点の1つまたは複数に対処するには、1つの実施形態は装置となる。装置は、液体鏡を備える。液体鏡は、液体に隣接する流体との界面を形成する液体を含む。液体鏡はまた、界面に位置する反射粒子の層も含み、この層は反射面を形成する。
【0009】
別の実施形態は、液体鏡を用いて光信号を送信するステップを含む方法である。光信号を送信するステップは、液体鏡の反射面に光信号を反射するステップを含む。反射面は、液体鏡の液体と液体に隣接する流体の間の界面に位置する反射粒子を含む。
【0010】
別の実施形態は、液体鏡を製造するステップを含む方法である。液体鏡の製造方法は、液体と流体の間の界面に反射粒子の層を形成するステップを含む。反射粒子の一方の側面は、親水性表面を有し、反射粒子の反対の側面は、疎水性表面を有する。
【0011】
本発明は、添付の図面と併せて読み取ることにより、以下の詳細な説明から良好に理解される。明確に論じるために、様々な特徴は、縮尺通りに図示せず、サイズを適宜拡大または縮小することがある。ここで、以下の添付の図と併せ以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の液体鏡を備える例示的な装置の断面図である。
【図2】本発明の液体鏡を備える第2の例示的な装置の断面図である。
【図3】図1に示す液体鏡の平面図である。
【図4】本発明の液体鏡を備える第3の例示的な装置の平面図である。
【図5】異なる段階の使用における図2に示す液体鏡の平面図である。
【図6】異なる段階の使用における図2に示す液体鏡の平面図である。
【図7】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図8】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図9】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図10】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図11】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図12】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図13】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図14】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図15】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は、特定のタイプの液体鏡が従来の固体の鏡よりも利点を有するという認識から利益を享受する。たとえば、本発明の液体鏡は、調節可能なやり方でそれらの曲率を変更するように構成することができ、それによって入射光線が反射され得る大きなダイナミック・レンジを提供する。さらに、本発明の特定の液体鏡は、特定の液体レンズの構築に使用されるプロセスに類似するプロセスを使用して構築することができ、それによって液体のレンズおよび鏡の両方を含む光学装置の作製のコストおよび複雑性が低減する。
【0014】
さらに、液体と流体(ガスまたは第2の液体)の間の界面に位置する反射粒子の層を含む液体鏡を使用することによっていくつかの利益が得られることが認識される。反射粒子中には多種多様なタイプの反射材料を組み込むことができる。その結果、反射粒子は、室温で液体状態にある反射金属(たとえば、水銀)に比べ、より高い反射率およびより低い毒性を有することができる。さらに、粒子の組成を慎重に選択することにより、連続反射面を形成するように反射粒子の層を構成することができる。さらに、液体の形状を変更することにより、反射層の形状を変化させることができ、こうした変更は、所望であれば動的に行うことができる。
【0015】
本発明の1つの実施形態は、装置である。一部の場合、装置は、調節可能なライト・プロセシング・デバイス(light−processing device)でよい。調節可能なデバイスでは、液体に電圧をかけて鏡の反射面の形状を変更することによって、液体鏡から反射された光の方向を調整することができる。例示的なデバイスは、画像投射器、テレビ、コンピュータまたは携帯電話のディスプレイに組み込まれるMEMSデバイスを含む。しかし、他の場合、装置は、受動型のライト・プロセシング・デバイスでよい。そのようなデバイスでは、液体鏡から反射する光の方向は、電圧をかけて反射面の形状を変更することによって変化しない。例示的なデバイスは、振動センサまたは装飾用鏡を含む。
【0016】
図1は、例示的な装置100の断面図を示す。(図1に使用するのと同様の参照番号を使用する)図2は、第2の例示的な装置200の断面図を示す。装置100は、液体鏡105を備える。液体鏡105は、液体110に隣接する流体115との界面112を形成する液体110を含む。液体鏡105はまた、液体110と流体115の間の界面112に位置する反射粒子125の層120も含む。層120は、反射面130を形成する。
【0017】
より好ましくは、層120は、連続反射面130を形成する。本明細書で使用する連続反射面という用語は、表面130から反射された光132の大部分が、反射粒子125間のギャップ133から伝播されることなく反射されることを意味する。さらに、反射面130は、局所的に平坦であることが好ましい。すなわち、任意の粒子125によって角度134で反射される光132は、粒子位置にある表面130に向けられた入射光138の角度136と実質的に同じである(たとえば約10パーセント以内)。
【0018】
界面112を形成するには、液体110が流体115と混合しないことが望ましい。流体115は、ガスまたは第2の液体を含む。たとえば、液体110が、水またはエタノールなどの極性液体を含むとき、流体115は、アルカンまたは別の炭化水素ベースの油などの非極性の液体またはガスを含むことができる。本明細書で使用する極性液体という用語は、約20以上の比誘電率を有する液体を示す(たとえば、水およびアセトンの比誘電率は、それぞれ約80および21である)。本明細書で使用する非極性液体という用語は、約5を超えない比誘電率を有する液体を示す(たとえば、ヘキサンおよび様々な炭化水素ベースの油の比誘電率は、それぞれ約2および約2〜5である)。
【0019】
一部の例では、流体115は、液体110を蒸発から保護することができるという理由から、ガスよりも第2の液体を含むことが好ましい。流体115に第2の液体を含ませることにより、たとえば装置100の移動または振動による液体110の望ましくない移動を防止することもできる。そのような実施形態では、流体115が液体110のすべてまたは一部分を封入することが有利である。
【0020】
また、液体110が、極性または非極性のうち一方の液体であり、流体115が、極性または非極性のうち他方の液体もしくはガスであることが望ましい。たとえば、液体110が水などの極性液体を含むとき、流体115はアルカンまたは空気などの非極性の液体またはガスを含む。液体110および流体115を互いに異なる極性を有するように構成することは、界面112の反射粒子125の望ましい配向を促進するのに有利である。
【0021】
液体110が極性または非極性のうち一方の液体を含み、流体115が極性のまたは非極性のうち他方の液体もしくはガスを含むことが好ましいが、一部の場合、液体110および流体115は、混合することなく、本明細書で説明したように粒子125の適切な配置および配向を促進するのに十分な特性の相違を提供する限り、より一般的な化学組成のものであってよい。
【0022】
一部の場合、液体110または流体115の一方または両方が、反射面130に反射される光132に対して透過性であることが望ましい。これは、光132、138が、反射面130に反射される前またはその後に液体110もしくは流体115、またはその両方を通り抜けるように装置100が構成される場合に望ましい。
【0023】
一部の場合、液体110が導電性であることが有利である。たとえば、液体110は、そのすべての全体を参照によって本明細書に組み込む米国特許第6,538,823号、同第6,891,682号、および同第6,936,196号に記載されているような、融解塩、または塩の水溶液もしくは有機溶液を含むことができる。導電性の液体110の使用は、液体鏡105が、液体110に電圧をかけて反射面130の形状を変更することによって調節可能になるように構成される実施形態において望ましい。
【0024】
図1に示すような一部の例では、反射面130は、平面であることができる。たとえば、液体110は、平面基板などの基板140に配設された液体の平坦な層を含むことができる。図2に示すような他の例では、反射面130は、凹面または凸面でよい。たとえば、液体110は、基板140上に配設された液滴を含むことができる。図2に示すように、反射面130が液滴110に面するとき、反射面130は凹面である。他の場合、反射面が流体に面するとき、反射面は凸面である。
【0025】
しかし、液体110は、凹面または凸面の反射面130を有するために液滴を含む必要はない。たとえば、基板140は、液体を含むための側壁145を含むことができる。側壁145は、液体110を側壁145から離れるようにまたはそれに向うように引き離すまたは引き付けるために、疎水性または親水性の材料でコーティングすることができ、それによって表面がそれぞれ凸面または凹面にされる。
【0026】
図1に示すように、反射粒子125は、第1および第2の側面150、152を含むことができる。反射面130は、液体と流体115の相対極性、ならびに反射粒子125の側面150、152がどのように構成されているかに応じて、液体110または流体115のいずれかに面することができる。反射粒子125は、親水性表面155または疎水性表面157のうち一方を有する第1の側面150を含むことができ、第2の側面152は、疎水性表面155または親水性表面157のうち他方を有することができる。疎水性または親水性の表面155、157は、第1および第2の側面150、152のそれぞれのすべてまたは一部(たとえば10〜90パーセント)を占有することができる。
【0027】
側面150、152のうち一方が疎水性表面155を有し、他方の側面150、152が親水性表面157を有するように構成することにより、界面112において連続反射面130を形成するように反射粒子125の自然で一様な組織化を促進することができる。すなわち、疎水性表面155を有する側面150、152は、非極性である液体110または流体115に面する。親水性表面157を有する側面150、152は、極性である液体110または流体115に面する。
【0028】
図2に示すように、第1の側面150が親水性表面155を有するように構成される場合、第1の側面150は極性液体を含む液体110に面するはずである。疎水性表面157を有する第2の側面152は、非極性の第2の液体またはガスを含む流体115に面する。当然ながら、第1の側面150が疎水性表面155を有するように構成された場合は、第1の側面150は非極性の流体115に面するはずである。あるいは、液体110および流体115がそれぞれ非極性および極性の液体である場合、親水性表面157を有する第1の側面150は、流体115に面するはずである。当業者は、極性および非極性の液体110および流体115、ならびに疎水性および親水性表面の155、157の様々な組合せを、所望に応じて粒子125の側面150、152を配向するためにどのようにして構成することができるかを理解するであろう。
【0029】
反射粒子125の一部の実施形態は、反射コーティング160を含む。反射コーティング160は、各々の粒子125の一方または両方の側面150、152に存在してよい。一部の場合、反射コーティング160は、金または銀などの固体材料、アルミニウムまたはその合金を含む。たとえば、反射コーティングは、金とシリコンの結合を容易にするためにクロムなどの接着材料を使用してシリコン粒子125と結合させた反射コーティングの金を含むことができる。他の場合、反射コーティング160は、積層誘電体を含む。たとえば、反射コーティング160は、実質的に異なる屈折率を有する少なくとも2つの材料から構成された複数の層(たとえば酸化ケイ素の層および窒化ケイ素の層)を含むことができる。しかし、さらに他の場合では、反射粒子125自体が、金または銀などの固体材料、アルミニウム、またはその合金を含み、それによって反射コーティングの必要性が解消される。
【0030】
反射コーティング160は、その上に疎水性または親水性の表面155、157を形成することにより、所望に応じて液体110または流体115に向けて配向することができる。一部の好ましい実施形態では、各々の粒子125の第1の側面150は、疎水性または親水性の分子165の一方に結合された金属または積層誘電体の反射コーティング160によって被覆される。本明細書で使用する疎水性分子という用語は、非極性液体には溶性であるが、極性液体にはそうではないと考えられる分子を示す。親水性分子という用語は、極性液体には溶性であるが、非極性液体にはそうではない分子を示す。
【0031】
疎水性または親水性の分子165を、それらが自己集合単分子層(SAM)を形成するように選択することが有利である。というのは、これにより、反射コーティング160上における疎水性または親水性の表面155、157の一様な形成を促進することができるからである。たとえば疎水性の分子165は、約6〜20個の炭素原子を有する非置換の炭化水素鎖(たとえばアルカン鎖)を含むことができる。親水性分子165は、類似の炭化水素鎖であるが、末端がヒドロキシル(−OH)基などの極性基で置換されているものを含むことができる。当業者は、SAMを形成する能力に合わせて他の様々なタイプの親水性または疎水性の分子165を選択することができることを理解するであろう。
【0032】
反射コーティング160との結合を促進するために、疎水性または親水性の分子165の一方の末端を、反射コーティングの材料との共有結合を形成することができる官能基で終端させることができる。たとえば、反射コーティング160が金属を含む場合、非置換または置換の炭化水素鎖は、チオール基(−SH)で終端させることができる。たとえば、疎水性または親水性の分子165の炭化水素鎖のn位の炭素にたとえば1個〜3個のチオール基が存在することができる。反射コーティング160が積層誘電体(たとえば酸化ケイ素および窒化ケイ素の層)を含む場合、非置換または置換の炭化水素鎖は、クロロ基(−Cl)で終端させることができる。たとえば疎水性または親水性の分子165の炭化水素鎖のn位の炭素に1個〜3個のクロロ基が存在することができる。結合を促進するために他の様々なタイプの官能基を使用することは、当業者には容易に明白になるであろう。
【0033】
図1に示すように、反射コーティングで被覆されていない第2の側面152は、酸化ケイ素を含むことができ(たとえば粒子125がケイ素を含む場合など)、親水性表面157(たとえば図1)であり得る。あるいは、図2に示すように、反射コーティングで被覆されていない側面152はまた、それに結合された疎水性または親水性の分子167を含むこともできる。たとえば親水性分子165は、極性液体110に面する被覆された側面150に結合することができ、疎水性分子167は、非極性流体115に面する被覆されていない側面152に結合することができる。
【0034】
本発明の一部として、反射粒子125のサイズおよび形状が、連続反射面130の特性の重要な、一部の場合では極めて重大な決定要因であることが初めて認識された。
【0035】
(同様の参照番号を使用する)図3は、反射面130の一部の、図1の線3−3の部分に対応する平面図を示す。一部の好ましい実施形態では、反射粒子125は、液体110または流体115中のコロイド粒子である。コロイド反射粒子125は、液体110中にある場合そのような粒子125にかかる重力の影響が無視できるほど小さく、それによって粒子125が界面112に集結するのが可能になるため(図1)、好ましいものである。一部の場合、粒子125は、約100ナノメートル〜100ミクロンの範囲の直径305および約10ナノメートルから1ミクロンの範囲の厚さ170(図1)を有する。一部の好ましい実施形態では、粒子125は、約200ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の直径305および約20ナノメートル〜30ナノメートルの範囲の厚さ170を有する。
【0036】
一部の実施形態では、反射粒子125を反射面130に向けられた光の波長と比べて小さくし、その結果、表面130に反射される光が個々の粒子125によって(たとえば光散乱のために)影響されないようになることが有利である。たとえば、一部の場合、粒子125は、反射面130に向けられる光の波長の約10〜50パーセントの範囲の直径305を有する。たとえば、可視光線が使用される場合では、直径305は、約40ナノメートル〜200ナノメートルの範囲であることが好ましい。たとえば、赤外線が使用される場合では、直径305は、約100ナノメートル〜約50ミクロンの範囲であることが好ましい。
【0037】
また、各々の反射粒子125が、個々の粒子間にわずかしかまたは全くギャップ133を有さない連続表面130を形成する助けとなる形状を有することも重要である。図3に示すように、一部の好ましい実施形態では、反射粒子125の各々は、平坦な六角形を有する。なぜなら、この形状は粒子125間の幾何学的フラストレーションを最小限に抑え、それによって粒子125間のギャップ133のサイズが低減されるためである。
【0038】
図2は、液体鏡105が調節可能な液体鏡として構成される場合の装置200の好ましい実施形態の追加の態様を示している。そのような実施形態では、液体110は導電性である。装置200はさらに、基板140上の絶縁層205および絶縁層205によって液体110から絶縁された複数の電極210を含む。一部の場合、絶縁層205は、液体110と接触しているバイアス電極220に液体110が接触することを可能にするために開口部215を含むことができる。
【0039】
さらに図2に示すように、基板140は、バイアス電極220を含むことができる。一部の場合、連続反射面130の形成を妨げることがあるため、バイアス電極220を反射粒子125に接触させないことが望ましい。別の好ましい実施形態では、基板140自体が、導電性であり、そのためバイアス電極として働くことができる。有利には、これにより、基板140内において別個のバイアス電極を構築する必要が回避される。
【0040】
図2に示すように、液体110が、絶縁層205の表面225上に配設されている。図示するように、基板140および絶縁層205は共にほぼ平面でよい。複数の電極210は、電圧(V)が(たとえばバイアス電極220を介して)液体110と電極210のうち1つまたは複数との間にかけられたとき、液体の形状(たとえば表面225に対する液体110の横位置230または接触角度235)を調整するように構成される。
【0041】
一部の実施形態では、液体110、絶縁層205、基板140および電極210が、液体鏡105に反射される光138に対して透過性であることが望ましい。これは、図2に示すような状況において、液体110がそれに面する反射コーティング160を有する凹面の反射面130を形成する液滴である場合に望ましくあり得る。たとえば、透過性液体110は、水を含むことができ、透過性の絶縁層205は、ポリイミドを含むことができ、透過性の導電基板140は、ガラス、二酸化ケイ素、石英、サファイア、ダイアモンドまたは他の透過性の固体材料を含むことができ、透過性の電極210は、インジウムスズ酸化物を含むことができる。
【0042】
一部の場合、絶縁層の表面225は、低表面エネルギー材料240のコーティングで被覆される。コーティング240は、液体110の接触角度235を所定の値(たとえば、一部の実施形態では約80〜100°)に調整する働きをする。有利には、接触角度235を調整することにより、液体鏡の反射特性(たとえば、反射の焦点距離または角度)を変更することができる。本明細書で使用する低表面エネルギー材料という用語は、約22ダイン/cm(約22×10−5N/cm)以下の表面エネルギーを有する材料を示す。当業者であれば、材料の表面エネルギーを測定するための方法に精通しているであろう。一部の例では、コーティング240は、ポリテトラフルオロエチレンもしくは他の高度にフッ素化された炭化水素のようなフッ素化ポリマー、またはポリジメチルシランのようなアルキルシランを含む。一部の例では、絶縁層205および低表面エネルギー・コーティング240は、電気絶縁体でも低表面エネルギー材料でもあるフッ素重合体である、Cytop(登録商標)(旭硝子株式会社、東京、日本国)などの単一の材料を含む。
【0043】
図4は、1つまたは複数の液体鏡405を備える光電子デバイスとして構成された装置400の別の好ましい実施形態の平面図を示す。液体鏡405は、図1〜3の文脈において上記で論じた液体鏡のいずれの実施形態も含むことができる。図4に示すように、装置400は、送信機410(たとえばレーザまたはランプ)および受信機415(たとえば光検知器またはカメラ)を含む。送信機は、受信機415によって受信された光信号420を与える。液体鏡405は、光信号420を送信機410から受信機415に反射するように構成される。鏡405、送信機410、および受信機415は、基板425(たとえば印刷回路板)上に取り付けることができる。
【0044】
液体鏡405は、当業者が精通しているあらゆる方法で光信号420を変化させるように構成することができる。たとえば、液体鏡405は、信号420を反射させることによって光信号420の方向を変えることができ、あるいは任意選択で光信号420を集束させることができる。液体鏡405が調節可能な液体鏡として構成される場合、装置400の構成要素間の光結合を向上させるように液体の形状または位置を調整することができる。
【0045】
図4に示すように、装置400は、さらに、米国特許第6,538,823号に記載されているような液体レンズ430を含むことができる。たとえば、液体鏡405から反射された光信号420を液体レンズ430に向けることができ、次いでこの液体レンズ430は、光信号420が受信機415に到達する前にそれを集束させる。当業者は、液体鏡405および液体レンズ430を光電子デバイス内に配置することができる様々な方法を理解するであろう。有利には、調節可能な液体鏡405および液体レンズ430の両方を同一の装置400に有することはまた、光信号420が距離および焦点距離のより大きな範囲にわたって調整され最適化されることを可能にする。
【0046】
本発明の別の態様は、液体鏡を用いて光信号を送信するステップを含む使用方法である。図1〜4の文脈で説明した液体鏡はいずれも本方法に使用することができる。たとえば、図4に示すように、光信号420を送信するステップは、光信号420を液体鏡405の反射面435に反射するステップを含む。
【0047】
図2に示すものなどの一部の場合、液体110、流体115またはその両方は、透過性であり、光信号(たとえば、光138)は、液体110を通り抜けて反射面130に進む。さらに図2に示すように、液体110は、液滴として構成することができ、それによって反射面130が液滴110の凹面の内面として構成される。そのような例では、反射面130に入射光132の光信号を反射するステップは、光線を集束させるステップを含む。図2では例示のために、光138は、液体110を通り抜け凹面の反射面130に反射するように示している。しかし、鏡105は、粒子125の凹面もしくは凸面のいずれかの表面、またはその両方の表面から一度に反射された光132を使用することができる。図1に示すようにさらに他の場合、液体110を平面基板140上に配設することができ、それによって反射面130が平面の反射面として構成される。そのような例では、反射面130に入射光132の平行光線の光信号を反射するステップは、入射光138を光の平行光線として保持するステップを含む。
【0048】
一部の好ましい実施形態、すなわち光信号を送信するステップは、さらに、液体の形状を変更することによって液体鏡を調節するステップを含む。たとえば、図2に示すように、鏡105を調節するステップは、導電性の液体110と液体110から絶縁された複数の電極210のうち1つまたは複数との間に電圧(V)をかけ、それによって液体の横位置または液体110の接触角度のうち一方またはその両方を調整することを含む。電圧(V)は、液体110と接触するバイアス電極220(または導電性基板140)に対して電極210を選択的にバイアスすることによって生じさせることができる。
【0049】
しかし、液体105を調節するステップは、液滴を調節するステップに限定されない。たとえば、反射面130は、図1に示すような平面の反射面として構成することができる。装置100は、液体110の下方に配置された二次元電極アレイ210、流体115、および図2に示すものに類似する反射面130を含むことができる。選択された電極210を適切に作動させることにより、平面130の形状を、局所的に非平面にすることができる。すなわち、液体110の形状に局所的な変更が存在し、この変更は、図2に示す液滴の文脈で論じたものに類似する、液体100の横方向の位置または接触角度における局所的な変更を特徴とすることができる。この非平面130によって引き起こされた歪曲は、入射光138の収差を補償するように調節することができる。これは、たとえば固体MEMS鏡に基づいたマスクレス・リソグラフィまたは他の適応光学波面の補償方法の簡単な代替策を提供することができる。
【0050】
様々な使用段階における例示的な調節可能な液体鏡500を、図5および図6に示しており、これらの図では、線5−5に沿った、図2に示した装置200の部分の半透明の平面図を示している。明確にするために、疎水性分子167およびその上を覆っている流体115などの特定の特徴は、示していない。(図2に示す電極210に類似する)各々の電極505、510、515、520にかけられた電圧V1、V2、V3、V4がすべて互いに等しいとき(たとえば、V1=0、V2=0、V3=0、V4=0)、反射粒子120の層は、電極505、510、515、520の間の中央に位置する。図6に示すように、反射粒子120の層は、ゼロボルトを超え、対角線上に配置された電極520を超えるバイアス電圧を有する電極510に向って移動し(たとえば、V2>V4>0)、残りの2つの電極505、515は、ゼロ電圧を有する(V1=V3=0)。
【0051】
しかし、他の実施形態では、液体鏡105を調節する必要なく使用することができる。たとえば、装置200を振動検知器として構成することができる。液体鏡105の反射面130が、(たとえば装置200の移動または装置200近傍の動きによる)振動によって妨げられたとき、鏡105に反射された光132の強度または方向は変化する。光132の変化が検知され得、それによって振動を検知する手段が提供される。
【0052】
本発明のさらに別の態様は、液体鏡を製造するステップを含む方法である。液体鏡を製造するための方法は、図1〜6の文脈で説明した例示的な装置のすべてを製造するプロセスの一部になり得る。図7〜15は、液体鏡700を製造する例示的な方法における選択されたステップの横断面図を示す。
【0053】
図7〜12は、液体鏡700の反射粒子705を形成するための方法における選択されたステップを示す。本方法は、酸化ケイ素層730上にケイ素層720を有する基板710(たとえばシリコン・オン・インシュレータ基板710)を提供するステップを含む(図7)。図8は、ケイ素層720をパターン成形して絶縁領域を形成した後の基盤710を示している。たとえば、従来のフォトリソグラフィ手順を使用してケイ素層720内に溝820を形成することができ、このとき酸化ケイ素層730はエッチング停止層として働く。一部の好ましい実施形態では、ケイ素の絶縁領域810は、図3に示すような六角形を有するようにパターン成形される。しかし、他の形状タイプ(たとえば円または四角形)を代替的にまたは付加的にパターン成形することもできる。
【0054】
図9は、絶縁領域810の間に位置する酸化ケイ素層730の部分910を部分的に取り除いた後の基板710を示している。図9に示すように、取り除かれた部分910は、ケイ素の絶縁領域810の下方に延びることができる。たとえば、基板710は、所定の期間フッ化水素酸浴中に浸漬することができる。フッ化水素酸は、エッチングの間、溝820によって暴露された酸化ケイ素層730の部分をエッチングし、さらに、絶縁領域が各々の絶縁領域810に対してアンダーカット領域920を形成するように、絶縁領域810の下方に位置する酸化ケイ素730をエッチングする。基板710がフッ化水素酸浴から取り出され、水で濯がれた後、酸化ケイ素層730は完全に取り除かれる。
【0055】
図10は、絶縁領域810の一方の側面1020、一部の場合側壁1025に反射コーティング1010を形成した後の基板710を示している。好ましくは、被着プロセスは、アンダーカット領域920によって暴露された絶縁領域810の反対の側面1030が反射コーティング1010によって被覆されないように、したがって非コーティングの側面1030になるように選択される。たとえば、物理的気相成長(PVD)プロセス(たとえば、スパッタリング)を使用して反射材料1035(たとえば金属または積層誘電体)を絶縁領域810の一方の側面1020に被着させることができる。一部の場合、反射コーティング1010(たとえば金またはアルミニウム)とケイ素の絶縁領域810の接着を促すために最初に接着コーティング(たとえばPVD蒸着クロム)を側面1020に被着させることが望ましい。
【0056】
図11は、基板710から絶縁領域810を外して反射粒子705を形成した後の基板710を示している。たとえば基板710は、完全に酸化ケイ素層730(図10)を取り除くことによって絶縁領域810のアンダーカット形成を完了するのに十分な期間フッ化水素酸浴中に浸漬することができ、それによって基板710から絶縁領域810を外すことができる。
【0057】
図12は、疎水性または親水性のうち一方の分子1210を反射コーティング1010を有する側面1020に付着させ、それによってそれぞれ疎水性または親水性のうち一方の表面1220を提供した後の反射粒子705を示している。非コーティングの側面1030は、疎水性または親水性のうち他方の表面1230を有することが好ましい。すなわち、疎水性または親水性のうち他方の分子を非コーティングの側面1030に付着させることができる。たとえば、親水性分子が反射コーティング1010を有する側面1020に付着される場合、疎水性分子を非コーティングの側面1030に付着させることができる。あるいは、図12に示すように、非コーティングの側面1030を、疎水性または親水性の分子が無い状態にすることもできる。たとえば、チオ末端アルカン鎖(thio−terminated alkane chain)の自己集合分子を含む疎水性分子1210を側面1020に付着させることができ、それと同時にケイ素の非コーティングの側面1030は親水性表面1230をもたらす。
【0058】
図13は、第2の基板1320に含有された液体1310に反射粒子705を加えてコロイド懸濁液を生成した後の液体鏡705を示している。図1の文脈で論じたように、反射粒子705は、液体1310中に粒子705のコロイド懸濁液を生成するのを助けるサイズを有するように構築される。
【0059】
図14は、流体1410を液体1310上に配置した後の液体鏡705を示している。液体1310は流体1410と混合しないため、液体1310と流体1410の間に界面1420が生じる。また、図1の文脈でも論じたように、液体1310および流体1410は、液体が極性または非極性のうち一方の液体であり、流体が極性または非極性のうち他方の液体もしくはガスであるように選択される。代替の実施形態では、反射粒子705を流体1410に加えて流体1410中に粒子705のコロイド懸濁液を生成することができ、その後、流体1410は、液体1310上に配置される。図1の文脈で上記に論じたように、液体1310および流体1410の選択、ならびに反射粒子705の両側1020、1030の疎水性および親水性の表面1220、1230の形成はすべて、鏡705の連続反射面の形成に対する重要な要因となる。
【0060】
図15は、反射粒子705が液体1310と流体1410の間の界面1420に集結して界面1420のところに反射粒子705の層1510を形成した後の液体鏡705を示している。好ましくは、反射粒子705は、疎水性表面1220が非極性である液体1310または流体1410に面するように、一方で親水性表面1230が極性である液体1310または流体1410に面するようにそれ自体が自然に配置される。その結果、反射粒子705の層1510が集結して反射面1520、より好ましくは連続反射面を形成する。
【0061】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更、代用、および改変を加えることができることを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、鏡を対象とし、より詳細には液体鏡ならびに液体鏡の使用方法および製造方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
この項では、本発明のより良好な理解を促すのに有用になり得る態様について紹介する。したがって、この項の記述は、この観点において読み取られるものである。この項の記述は、従来技術に存在するもの、または従来技術に存在しないものについての承認として理解されるものではない。
【0003】
反射光学素子(たとえば鏡)の使用が、屈折光学素子(たとえばレンズ)の使用よりも好まれる光学素子用途が多く存在する。たとえば、望遠鏡から微小電気機械システム(MEMS)に及ぶ光学デバイスでは、可能な限り小型のデバイスを製造することがしばしば重要になる。反射光学素子を使用する光学構成要素は、屈折光学素子を使用する光学構成要素よりも小さい焦点距離および少ない信号損失を実現することができ、それによって光学デバイスの小型化が可能になる。別の利点は、鏡の反射率を波長に対して非感受性にすることができ、色収差が低減されることである。さらに、鏡は、回折光学素子が存在できないスペクトル領域、たとえば紫外線および赤外線において機能することができる。
【0004】
しかし、反射光学素子を使用する現在利用可能な光学構成要素の中には、能力が限定されているものもある。これは、さらにそれらの用途の範囲を限定し、あるいはデバイスの小型化の範囲を限定する。たとえば、特定のMEMSは、固体材料から作り出された鏡を有する。こうした固体の鏡は、それらの曲率を変更する能力を全くまたはわずかしか有さない。さらに、MEMSの鏡は、その回転範囲が限定されるため、限定された範囲で入射光線を屈折し得る。
【0005】
また、反射光学素子および屈折光学素子の両方を相補的なやり方で使用することが望ましい状況も存在する。そのような場合、反射光学素子および屈折光学素子を使用する光学構成要素の両方を、類似の製造プロセスを用いて作製することができる場合が有利である。しかし、従来のMEMSの鏡は、レンズの製造用の類似のプロセスを有さないやり方で作製されることが多い。したがって、鏡およびレンズを作製するために2つの異なる作製プロセスが使用されなければならず、それによってMEMSを構築するコストおよび複雑性が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,538,823号
【特許文献2】米国特許第6,891,682号
【特許文献3】米国特許第6,936,196号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、液体鏡を使用する装置、ならびにその製造方法および使用方法を提供することによってこうした欠点を克服する。
【0008】
上記で論じた欠点の1つまたは複数に対処するには、1つの実施形態は装置となる。装置は、液体鏡を備える。液体鏡は、液体に隣接する流体との界面を形成する液体を含む。液体鏡はまた、界面に位置する反射粒子の層も含み、この層は反射面を形成する。
【0009】
別の実施形態は、液体鏡を用いて光信号を送信するステップを含む方法である。光信号を送信するステップは、液体鏡の反射面に光信号を反射するステップを含む。反射面は、液体鏡の液体と液体に隣接する流体の間の界面に位置する反射粒子を含む。
【0010】
別の実施形態は、液体鏡を製造するステップを含む方法である。液体鏡の製造方法は、液体と流体の間の界面に反射粒子の層を形成するステップを含む。反射粒子の一方の側面は、親水性表面を有し、反射粒子の反対の側面は、疎水性表面を有する。
【0011】
本発明は、添付の図面と併せて読み取ることにより、以下の詳細な説明から良好に理解される。明確に論じるために、様々な特徴は、縮尺通りに図示せず、サイズを適宜拡大または縮小することがある。ここで、以下の添付の図と併せ以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の液体鏡を備える例示的な装置の断面図である。
【図2】本発明の液体鏡を備える第2の例示的な装置の断面図である。
【図3】図1に示す液体鏡の平面図である。
【図4】本発明の液体鏡を備える第3の例示的な装置の平面図である。
【図5】異なる段階の使用における図2に示す液体鏡の平面図である。
【図6】異なる段階の使用における図2に示す液体鏡の平面図である。
【図7】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図8】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図9】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図10】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図11】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図12】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図13】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図14】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【図15】液体鏡の例示的な製造方法における選択されたステップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は、特定のタイプの液体鏡が従来の固体の鏡よりも利点を有するという認識から利益を享受する。たとえば、本発明の液体鏡は、調節可能なやり方でそれらの曲率を変更するように構成することができ、それによって入射光線が反射され得る大きなダイナミック・レンジを提供する。さらに、本発明の特定の液体鏡は、特定の液体レンズの構築に使用されるプロセスに類似するプロセスを使用して構築することができ、それによって液体のレンズおよび鏡の両方を含む光学装置の作製のコストおよび複雑性が低減する。
【0014】
さらに、液体と流体(ガスまたは第2の液体)の間の界面に位置する反射粒子の層を含む液体鏡を使用することによっていくつかの利益が得られることが認識される。反射粒子中には多種多様なタイプの反射材料を組み込むことができる。その結果、反射粒子は、室温で液体状態にある反射金属(たとえば、水銀)に比べ、より高い反射率およびより低い毒性を有することができる。さらに、粒子の組成を慎重に選択することにより、連続反射面を形成するように反射粒子の層を構成することができる。さらに、液体の形状を変更することにより、反射層の形状を変化させることができ、こうした変更は、所望であれば動的に行うことができる。
【0015】
本発明の1つの実施形態は、装置である。一部の場合、装置は、調節可能なライト・プロセシング・デバイス(light−processing device)でよい。調節可能なデバイスでは、液体に電圧をかけて鏡の反射面の形状を変更することによって、液体鏡から反射された光の方向を調整することができる。例示的なデバイスは、画像投射器、テレビ、コンピュータまたは携帯電話のディスプレイに組み込まれるMEMSデバイスを含む。しかし、他の場合、装置は、受動型のライト・プロセシング・デバイスでよい。そのようなデバイスでは、液体鏡から反射する光の方向は、電圧をかけて反射面の形状を変更することによって変化しない。例示的なデバイスは、振動センサまたは装飾用鏡を含む。
【0016】
図1は、例示的な装置100の断面図を示す。(図1に使用するのと同様の参照番号を使用する)図2は、第2の例示的な装置200の断面図を示す。装置100は、液体鏡105を備える。液体鏡105は、液体110に隣接する流体115との界面112を形成する液体110を含む。液体鏡105はまた、液体110と流体115の間の界面112に位置する反射粒子125の層120も含む。層120は、反射面130を形成する。
【0017】
より好ましくは、層120は、連続反射面130を形成する。本明細書で使用する連続反射面という用語は、表面130から反射された光132の大部分が、反射粒子125間のギャップ133から伝播されることなく反射されることを意味する。さらに、反射面130は、局所的に平坦であることが好ましい。すなわち、任意の粒子125によって角度134で反射される光132は、粒子位置にある表面130に向けられた入射光138の角度136と実質的に同じである(たとえば約10パーセント以内)。
【0018】
界面112を形成するには、液体110が流体115と混合しないことが望ましい。流体115は、ガスまたは第2の液体を含む。たとえば、液体110が、水またはエタノールなどの極性液体を含むとき、流体115は、アルカンまたは別の炭化水素ベースの油などの非極性の液体またはガスを含むことができる。本明細書で使用する極性液体という用語は、約20以上の比誘電率を有する液体を示す(たとえば、水およびアセトンの比誘電率は、それぞれ約80および21である)。本明細書で使用する非極性液体という用語は、約5を超えない比誘電率を有する液体を示す(たとえば、ヘキサンおよび様々な炭化水素ベースの油の比誘電率は、それぞれ約2および約2〜5である)。
【0019】
一部の例では、流体115は、液体110を蒸発から保護することができるという理由から、ガスよりも第2の液体を含むことが好ましい。流体115に第2の液体を含ませることにより、たとえば装置100の移動または振動による液体110の望ましくない移動を防止することもできる。そのような実施形態では、流体115が液体110のすべてまたは一部分を封入することが有利である。
【0020】
また、液体110が、極性または非極性のうち一方の液体であり、流体115が、極性または非極性のうち他方の液体もしくはガスであることが望ましい。たとえば、液体110が水などの極性液体を含むとき、流体115はアルカンまたは空気などの非極性の液体またはガスを含む。液体110および流体115を互いに異なる極性を有するように構成することは、界面112の反射粒子125の望ましい配向を促進するのに有利である。
【0021】
液体110が極性または非極性のうち一方の液体を含み、流体115が極性のまたは非極性のうち他方の液体もしくはガスを含むことが好ましいが、一部の場合、液体110および流体115は、混合することなく、本明細書で説明したように粒子125の適切な配置および配向を促進するのに十分な特性の相違を提供する限り、より一般的な化学組成のものであってよい。
【0022】
一部の場合、液体110または流体115の一方または両方が、反射面130に反射される光132に対して透過性であることが望ましい。これは、光132、138が、反射面130に反射される前またはその後に液体110もしくは流体115、またはその両方を通り抜けるように装置100が構成される場合に望ましい。
【0023】
一部の場合、液体110が導電性であることが有利である。たとえば、液体110は、そのすべての全体を参照によって本明細書に組み込む米国特許第6,538,823号、同第6,891,682号、および同第6,936,196号に記載されているような、融解塩、または塩の水溶液もしくは有機溶液を含むことができる。導電性の液体110の使用は、液体鏡105が、液体110に電圧をかけて反射面130の形状を変更することによって調節可能になるように構成される実施形態において望ましい。
【0024】
図1に示すような一部の例では、反射面130は、平面であることができる。たとえば、液体110は、平面基板などの基板140に配設された液体の平坦な層を含むことができる。図2に示すような他の例では、反射面130は、凹面または凸面でよい。たとえば、液体110は、基板140上に配設された液滴を含むことができる。図2に示すように、反射面130が液滴110に面するとき、反射面130は凹面である。他の場合、反射面が流体に面するとき、反射面は凸面である。
【0025】
しかし、液体110は、凹面または凸面の反射面130を有するために液滴を含む必要はない。たとえば、基板140は、液体を含むための側壁145を含むことができる。側壁145は、液体110を側壁145から離れるようにまたはそれに向うように引き離すまたは引き付けるために、疎水性または親水性の材料でコーティングすることができ、それによって表面がそれぞれ凸面または凹面にされる。
【0026】
図1に示すように、反射粒子125は、第1および第2の側面150、152を含むことができる。反射面130は、液体と流体115の相対極性、ならびに反射粒子125の側面150、152がどのように構成されているかに応じて、液体110または流体115のいずれかに面することができる。反射粒子125は、親水性表面155または疎水性表面157のうち一方を有する第1の側面150を含むことができ、第2の側面152は、疎水性表面155または親水性表面157のうち他方を有することができる。疎水性または親水性の表面155、157は、第1および第2の側面150、152のそれぞれのすべてまたは一部(たとえば10〜90パーセント)を占有することができる。
【0027】
側面150、152のうち一方が疎水性表面155を有し、他方の側面150、152が親水性表面157を有するように構成することにより、界面112において連続反射面130を形成するように反射粒子125の自然で一様な組織化を促進することができる。すなわち、疎水性表面155を有する側面150、152は、非極性である液体110または流体115に面する。親水性表面157を有する側面150、152は、極性である液体110または流体115に面する。
【0028】
図2に示すように、第1の側面150が親水性表面155を有するように構成される場合、第1の側面150は極性液体を含む液体110に面するはずである。疎水性表面157を有する第2の側面152は、非極性の第2の液体またはガスを含む流体115に面する。当然ながら、第1の側面150が疎水性表面155を有するように構成された場合は、第1の側面150は非極性の流体115に面するはずである。あるいは、液体110および流体115がそれぞれ非極性および極性の液体である場合、親水性表面157を有する第1の側面150は、流体115に面するはずである。当業者は、極性および非極性の液体110および流体115、ならびに疎水性および親水性表面の155、157の様々な組合せを、所望に応じて粒子125の側面150、152を配向するためにどのようにして構成することができるかを理解するであろう。
【0029】
反射粒子125の一部の実施形態は、反射コーティング160を含む。反射コーティング160は、各々の粒子125の一方または両方の側面150、152に存在してよい。一部の場合、反射コーティング160は、金または銀などの固体材料、アルミニウムまたはその合金を含む。たとえば、反射コーティングは、金とシリコンの結合を容易にするためにクロムなどの接着材料を使用してシリコン粒子125と結合させた反射コーティングの金を含むことができる。他の場合、反射コーティング160は、積層誘電体を含む。たとえば、反射コーティング160は、実質的に異なる屈折率を有する少なくとも2つの材料から構成された複数の層(たとえば酸化ケイ素の層および窒化ケイ素の層)を含むことができる。しかし、さらに他の場合では、反射粒子125自体が、金または銀などの固体材料、アルミニウム、またはその合金を含み、それによって反射コーティングの必要性が解消される。
【0030】
反射コーティング160は、その上に疎水性または親水性の表面155、157を形成することにより、所望に応じて液体110または流体115に向けて配向することができる。一部の好ましい実施形態では、各々の粒子125の第1の側面150は、疎水性または親水性の分子165の一方に結合された金属または積層誘電体の反射コーティング160によって被覆される。本明細書で使用する疎水性分子という用語は、非極性液体には溶性であるが、極性液体にはそうではないと考えられる分子を示す。親水性分子という用語は、極性液体には溶性であるが、非極性液体にはそうではない分子を示す。
【0031】
疎水性または親水性の分子165を、それらが自己集合単分子層(SAM)を形成するように選択することが有利である。というのは、これにより、反射コーティング160上における疎水性または親水性の表面155、157の一様な形成を促進することができるからである。たとえば疎水性の分子165は、約6〜20個の炭素原子を有する非置換の炭化水素鎖(たとえばアルカン鎖)を含むことができる。親水性分子165は、類似の炭化水素鎖であるが、末端がヒドロキシル(−OH)基などの極性基で置換されているものを含むことができる。当業者は、SAMを形成する能力に合わせて他の様々なタイプの親水性または疎水性の分子165を選択することができることを理解するであろう。
【0032】
反射コーティング160との結合を促進するために、疎水性または親水性の分子165の一方の末端を、反射コーティングの材料との共有結合を形成することができる官能基で終端させることができる。たとえば、反射コーティング160が金属を含む場合、非置換または置換の炭化水素鎖は、チオール基(−SH)で終端させることができる。たとえば、疎水性または親水性の分子165の炭化水素鎖のn位の炭素にたとえば1個〜3個のチオール基が存在することができる。反射コーティング160が積層誘電体(たとえば酸化ケイ素および窒化ケイ素の層)を含む場合、非置換または置換の炭化水素鎖は、クロロ基(−Cl)で終端させることができる。たとえば疎水性または親水性の分子165の炭化水素鎖のn位の炭素に1個〜3個のクロロ基が存在することができる。結合を促進するために他の様々なタイプの官能基を使用することは、当業者には容易に明白になるであろう。
【0033】
図1に示すように、反射コーティングで被覆されていない第2の側面152は、酸化ケイ素を含むことができ(たとえば粒子125がケイ素を含む場合など)、親水性表面157(たとえば図1)であり得る。あるいは、図2に示すように、反射コーティングで被覆されていない側面152はまた、それに結合された疎水性または親水性の分子167を含むこともできる。たとえば親水性分子165は、極性液体110に面する被覆された側面150に結合することができ、疎水性分子167は、非極性流体115に面する被覆されていない側面152に結合することができる。
【0034】
本発明の一部として、反射粒子125のサイズおよび形状が、連続反射面130の特性の重要な、一部の場合では極めて重大な決定要因であることが初めて認識された。
【0035】
(同様の参照番号を使用する)図3は、反射面130の一部の、図1の線3−3の部分に対応する平面図を示す。一部の好ましい実施形態では、反射粒子125は、液体110または流体115中のコロイド粒子である。コロイド反射粒子125は、液体110中にある場合そのような粒子125にかかる重力の影響が無視できるほど小さく、それによって粒子125が界面112に集結するのが可能になるため(図1)、好ましいものである。一部の場合、粒子125は、約100ナノメートル〜100ミクロンの範囲の直径305および約10ナノメートルから1ミクロンの範囲の厚さ170(図1)を有する。一部の好ましい実施形態では、粒子125は、約200ナノメートル〜300ナノメートルの範囲の直径305および約20ナノメートル〜30ナノメートルの範囲の厚さ170を有する。
【0036】
一部の実施形態では、反射粒子125を反射面130に向けられた光の波長と比べて小さくし、その結果、表面130に反射される光が個々の粒子125によって(たとえば光散乱のために)影響されないようになることが有利である。たとえば、一部の場合、粒子125は、反射面130に向けられる光の波長の約10〜50パーセントの範囲の直径305を有する。たとえば、可視光線が使用される場合では、直径305は、約40ナノメートル〜200ナノメートルの範囲であることが好ましい。たとえば、赤外線が使用される場合では、直径305は、約100ナノメートル〜約50ミクロンの範囲であることが好ましい。
【0037】
また、各々の反射粒子125が、個々の粒子間にわずかしかまたは全くギャップ133を有さない連続表面130を形成する助けとなる形状を有することも重要である。図3に示すように、一部の好ましい実施形態では、反射粒子125の各々は、平坦な六角形を有する。なぜなら、この形状は粒子125間の幾何学的フラストレーションを最小限に抑え、それによって粒子125間のギャップ133のサイズが低減されるためである。
【0038】
図2は、液体鏡105が調節可能な液体鏡として構成される場合の装置200の好ましい実施形態の追加の態様を示している。そのような実施形態では、液体110は導電性である。装置200はさらに、基板140上の絶縁層205および絶縁層205によって液体110から絶縁された複数の電極210を含む。一部の場合、絶縁層205は、液体110と接触しているバイアス電極220に液体110が接触することを可能にするために開口部215を含むことができる。
【0039】
さらに図2に示すように、基板140は、バイアス電極220を含むことができる。一部の場合、連続反射面130の形成を妨げることがあるため、バイアス電極220を反射粒子125に接触させないことが望ましい。別の好ましい実施形態では、基板140自体が、導電性であり、そのためバイアス電極として働くことができる。有利には、これにより、基板140内において別個のバイアス電極を構築する必要が回避される。
【0040】
図2に示すように、液体110が、絶縁層205の表面225上に配設されている。図示するように、基板140および絶縁層205は共にほぼ平面でよい。複数の電極210は、電圧(V)が(たとえばバイアス電極220を介して)液体110と電極210のうち1つまたは複数との間にかけられたとき、液体の形状(たとえば表面225に対する液体110の横位置230または接触角度235)を調整するように構成される。
【0041】
一部の実施形態では、液体110、絶縁層205、基板140および電極210が、液体鏡105に反射される光138に対して透過性であることが望ましい。これは、図2に示すような状況において、液体110がそれに面する反射コーティング160を有する凹面の反射面130を形成する液滴である場合に望ましくあり得る。たとえば、透過性液体110は、水を含むことができ、透過性の絶縁層205は、ポリイミドを含むことができ、透過性の導電基板140は、ガラス、二酸化ケイ素、石英、サファイア、ダイアモンドまたは他の透過性の固体材料を含むことができ、透過性の電極210は、インジウムスズ酸化物を含むことができる。
【0042】
一部の場合、絶縁層の表面225は、低表面エネルギー材料240のコーティングで被覆される。コーティング240は、液体110の接触角度235を所定の値(たとえば、一部の実施形態では約80〜100°)に調整する働きをする。有利には、接触角度235を調整することにより、液体鏡の反射特性(たとえば、反射の焦点距離または角度)を変更することができる。本明細書で使用する低表面エネルギー材料という用語は、約22ダイン/cm(約22×10−5N/cm)以下の表面エネルギーを有する材料を示す。当業者であれば、材料の表面エネルギーを測定するための方法に精通しているであろう。一部の例では、コーティング240は、ポリテトラフルオロエチレンもしくは他の高度にフッ素化された炭化水素のようなフッ素化ポリマー、またはポリジメチルシランのようなアルキルシランを含む。一部の例では、絶縁層205および低表面エネルギー・コーティング240は、電気絶縁体でも低表面エネルギー材料でもあるフッ素重合体である、Cytop(登録商標)(旭硝子株式会社、東京、日本国)などの単一の材料を含む。
【0043】
図4は、1つまたは複数の液体鏡405を備える光電子デバイスとして構成された装置400の別の好ましい実施形態の平面図を示す。液体鏡405は、図1〜3の文脈において上記で論じた液体鏡のいずれの実施形態も含むことができる。図4に示すように、装置400は、送信機410(たとえばレーザまたはランプ)および受信機415(たとえば光検知器またはカメラ)を含む。送信機は、受信機415によって受信された光信号420を与える。液体鏡405は、光信号420を送信機410から受信機415に反射するように構成される。鏡405、送信機410、および受信機415は、基板425(たとえば印刷回路板)上に取り付けることができる。
【0044】
液体鏡405は、当業者が精通しているあらゆる方法で光信号420を変化させるように構成することができる。たとえば、液体鏡405は、信号420を反射させることによって光信号420の方向を変えることができ、あるいは任意選択で光信号420を集束させることができる。液体鏡405が調節可能な液体鏡として構成される場合、装置400の構成要素間の光結合を向上させるように液体の形状または位置を調整することができる。
【0045】
図4に示すように、装置400は、さらに、米国特許第6,538,823号に記載されているような液体レンズ430を含むことができる。たとえば、液体鏡405から反射された光信号420を液体レンズ430に向けることができ、次いでこの液体レンズ430は、光信号420が受信機415に到達する前にそれを集束させる。当業者は、液体鏡405および液体レンズ430を光電子デバイス内に配置することができる様々な方法を理解するであろう。有利には、調節可能な液体鏡405および液体レンズ430の両方を同一の装置400に有することはまた、光信号420が距離および焦点距離のより大きな範囲にわたって調整され最適化されることを可能にする。
【0046】
本発明の別の態様は、液体鏡を用いて光信号を送信するステップを含む使用方法である。図1〜4の文脈で説明した液体鏡はいずれも本方法に使用することができる。たとえば、図4に示すように、光信号420を送信するステップは、光信号420を液体鏡405の反射面435に反射するステップを含む。
【0047】
図2に示すものなどの一部の場合、液体110、流体115またはその両方は、透過性であり、光信号(たとえば、光138)は、液体110を通り抜けて反射面130に進む。さらに図2に示すように、液体110は、液滴として構成することができ、それによって反射面130が液滴110の凹面の内面として構成される。そのような例では、反射面130に入射光132の光信号を反射するステップは、光線を集束させるステップを含む。図2では例示のために、光138は、液体110を通り抜け凹面の反射面130に反射するように示している。しかし、鏡105は、粒子125の凹面もしくは凸面のいずれかの表面、またはその両方の表面から一度に反射された光132を使用することができる。図1に示すようにさらに他の場合、液体110を平面基板140上に配設することができ、それによって反射面130が平面の反射面として構成される。そのような例では、反射面130に入射光132の平行光線の光信号を反射するステップは、入射光138を光の平行光線として保持するステップを含む。
【0048】
一部の好ましい実施形態、すなわち光信号を送信するステップは、さらに、液体の形状を変更することによって液体鏡を調節するステップを含む。たとえば、図2に示すように、鏡105を調節するステップは、導電性の液体110と液体110から絶縁された複数の電極210のうち1つまたは複数との間に電圧(V)をかけ、それによって液体の横位置または液体110の接触角度のうち一方またはその両方を調整することを含む。電圧(V)は、液体110と接触するバイアス電極220(または導電性基板140)に対して電極210を選択的にバイアスすることによって生じさせることができる。
【0049】
しかし、液体105を調節するステップは、液滴を調節するステップに限定されない。たとえば、反射面130は、図1に示すような平面の反射面として構成することができる。装置100は、液体110の下方に配置された二次元電極アレイ210、流体115、および図2に示すものに類似する反射面130を含むことができる。選択された電極210を適切に作動させることにより、平面130の形状を、局所的に非平面にすることができる。すなわち、液体110の形状に局所的な変更が存在し、この変更は、図2に示す液滴の文脈で論じたものに類似する、液体100の横方向の位置または接触角度における局所的な変更を特徴とすることができる。この非平面130によって引き起こされた歪曲は、入射光138の収差を補償するように調節することができる。これは、たとえば固体MEMS鏡に基づいたマスクレス・リソグラフィまたは他の適応光学波面の補償方法の簡単な代替策を提供することができる。
【0050】
様々な使用段階における例示的な調節可能な液体鏡500を、図5および図6に示しており、これらの図では、線5−5に沿った、図2に示した装置200の部分の半透明の平面図を示している。明確にするために、疎水性分子167およびその上を覆っている流体115などの特定の特徴は、示していない。(図2に示す電極210に類似する)各々の電極505、510、515、520にかけられた電圧V1、V2、V3、V4がすべて互いに等しいとき(たとえば、V1=0、V2=0、V3=0、V4=0)、反射粒子120の層は、電極505、510、515、520の間の中央に位置する。図6に示すように、反射粒子120の層は、ゼロボルトを超え、対角線上に配置された電極520を超えるバイアス電圧を有する電極510に向って移動し(たとえば、V2>V4>0)、残りの2つの電極505、515は、ゼロ電圧を有する(V1=V3=0)。
【0051】
しかし、他の実施形態では、液体鏡105を調節する必要なく使用することができる。たとえば、装置200を振動検知器として構成することができる。液体鏡105の反射面130が、(たとえば装置200の移動または装置200近傍の動きによる)振動によって妨げられたとき、鏡105に反射された光132の強度または方向は変化する。光132の変化が検知され得、それによって振動を検知する手段が提供される。
【0052】
本発明のさらに別の態様は、液体鏡を製造するステップを含む方法である。液体鏡を製造するための方法は、図1〜6の文脈で説明した例示的な装置のすべてを製造するプロセスの一部になり得る。図7〜15は、液体鏡700を製造する例示的な方法における選択されたステップの横断面図を示す。
【0053】
図7〜12は、液体鏡700の反射粒子705を形成するための方法における選択されたステップを示す。本方法は、酸化ケイ素層730上にケイ素層720を有する基板710(たとえばシリコン・オン・インシュレータ基板710)を提供するステップを含む(図7)。図8は、ケイ素層720をパターン成形して絶縁領域を形成した後の基盤710を示している。たとえば、従来のフォトリソグラフィ手順を使用してケイ素層720内に溝820を形成することができ、このとき酸化ケイ素層730はエッチング停止層として働く。一部の好ましい実施形態では、ケイ素の絶縁領域810は、図3に示すような六角形を有するようにパターン成形される。しかし、他の形状タイプ(たとえば円または四角形)を代替的にまたは付加的にパターン成形することもできる。
【0054】
図9は、絶縁領域810の間に位置する酸化ケイ素層730の部分910を部分的に取り除いた後の基板710を示している。図9に示すように、取り除かれた部分910は、ケイ素の絶縁領域810の下方に延びることができる。たとえば、基板710は、所定の期間フッ化水素酸浴中に浸漬することができる。フッ化水素酸は、エッチングの間、溝820によって暴露された酸化ケイ素層730の部分をエッチングし、さらに、絶縁領域が各々の絶縁領域810に対してアンダーカット領域920を形成するように、絶縁領域810の下方に位置する酸化ケイ素730をエッチングする。基板710がフッ化水素酸浴から取り出され、水で濯がれた後、酸化ケイ素層730は完全に取り除かれる。
【0055】
図10は、絶縁領域810の一方の側面1020、一部の場合側壁1025に反射コーティング1010を形成した後の基板710を示している。好ましくは、被着プロセスは、アンダーカット領域920によって暴露された絶縁領域810の反対の側面1030が反射コーティング1010によって被覆されないように、したがって非コーティングの側面1030になるように選択される。たとえば、物理的気相成長(PVD)プロセス(たとえば、スパッタリング)を使用して反射材料1035(たとえば金属または積層誘電体)を絶縁領域810の一方の側面1020に被着させることができる。一部の場合、反射コーティング1010(たとえば金またはアルミニウム)とケイ素の絶縁領域810の接着を促すために最初に接着コーティング(たとえばPVD蒸着クロム)を側面1020に被着させることが望ましい。
【0056】
図11は、基板710から絶縁領域810を外して反射粒子705を形成した後の基板710を示している。たとえば基板710は、完全に酸化ケイ素層730(図10)を取り除くことによって絶縁領域810のアンダーカット形成を完了するのに十分な期間フッ化水素酸浴中に浸漬することができ、それによって基板710から絶縁領域810を外すことができる。
【0057】
図12は、疎水性または親水性のうち一方の分子1210を反射コーティング1010を有する側面1020に付着させ、それによってそれぞれ疎水性または親水性のうち一方の表面1220を提供した後の反射粒子705を示している。非コーティングの側面1030は、疎水性または親水性のうち他方の表面1230を有することが好ましい。すなわち、疎水性または親水性のうち他方の分子を非コーティングの側面1030に付着させることができる。たとえば、親水性分子が反射コーティング1010を有する側面1020に付着される場合、疎水性分子を非コーティングの側面1030に付着させることができる。あるいは、図12に示すように、非コーティングの側面1030を、疎水性または親水性の分子が無い状態にすることもできる。たとえば、チオ末端アルカン鎖(thio−terminated alkane chain)の自己集合分子を含む疎水性分子1210を側面1020に付着させることができ、それと同時にケイ素の非コーティングの側面1030は親水性表面1230をもたらす。
【0058】
図13は、第2の基板1320に含有された液体1310に反射粒子705を加えてコロイド懸濁液を生成した後の液体鏡705を示している。図1の文脈で論じたように、反射粒子705は、液体1310中に粒子705のコロイド懸濁液を生成するのを助けるサイズを有するように構築される。
【0059】
図14は、流体1410を液体1310上に配置した後の液体鏡705を示している。液体1310は流体1410と混合しないため、液体1310と流体1410の間に界面1420が生じる。また、図1の文脈でも論じたように、液体1310および流体1410は、液体が極性または非極性のうち一方の液体であり、流体が極性または非極性のうち他方の液体もしくはガスであるように選択される。代替の実施形態では、反射粒子705を流体1410に加えて流体1410中に粒子705のコロイド懸濁液を生成することができ、その後、流体1410は、液体1310上に配置される。図1の文脈で上記に論じたように、液体1310および流体1410の選択、ならびに反射粒子705の両側1020、1030の疎水性および親水性の表面1220、1230の形成はすべて、鏡705の連続反射面の形成に対する重要な要因となる。
【0060】
図15は、反射粒子705が液体1310と流体1410の間の界面1420に集結して界面1420のところに反射粒子705の層1510を形成した後の液体鏡705を示している。好ましくは、反射粒子705は、疎水性表面1220が非極性である液体1310または流体1410に面するように、一方で親水性表面1230が極性である液体1310または流体1410に面するようにそれ自体が自然に配置される。その結果、反射粒子705の層1510が集結して反射面1520、より好ましくは連続反射面を形成する。
【0061】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更、代用、および改変を加えることができることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に隣接する流体との界面を形成する液体と、
前記界面に位置し、反射面を形成する反射粒子の層とを含む液体鏡を備える装置。
【請求項2】
前記反射面が、連続反射面である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記液体が、前記流体に混合せず、前記液体が、極性または非極性のうち一方の液体であり、前記流体が前記極性または非極性のうち他方の液体もしくはガスである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記反射粒子が、親水性または疎水性のうち一方の表面を有する第1の側面と、前記親水性または前記疎水性のうち他方の表面を有する第2の側面とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記液体鏡が、調節可能な液体鏡として構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
基板上の絶縁層と、
前記絶縁層によって前記液体から絶縁された複数の電極とをさらに含み、
前記基板が、前記液体と接触するバイアス電極を備え、
前記液体が、導電性であり、前記絶縁層の表面上に配設され、
前記複数の電極が、前記バイアス電極と前記電極のうち1つまたは複数との間に電圧がかけられたとき、前記表面に対する前記液体の横位置または接触角度を調整するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
光電子デバイスとして構成され、
光信号を与える送信機と、
前記光信号を受信する受信機とを含み、前記液体鏡が、前記光信号を前記送信機から前記受信機に向けるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
液体鏡を用いて光信号を送信するステップを含む方法であって、前記送信するステップが、
前記液体鏡の反射面に前記光信号を反射するステップを含み、前記反射面が、前記液体鏡の液体と前記液体に隣接する流体の間の界面に位置する反射粒子を含む、方法。
【請求項9】
液体鏡を製造するステップを含む方法であって、前記製造するステップが、
液体と流体の間の界面に反射粒子の層を形成するステップを含み、前記反射粒子の一方の側面が、親水性表面を有し、前記反射粒子の反対の側面が、疎水性表面を有する、方法。
【請求項10】
反射粒子の前記層を形成するステップが、前記反射粒子を前記液体に付加してコロイド懸濁液を生成するステップと、前記流体を前記液体上に配置するステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
液体に隣接する流体との界面を形成する液体と、
前記界面に位置し、反射面を形成する反射粒子の層とを含む液体鏡を備える装置。
【請求項2】
前記反射面が、連続反射面である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記液体が、前記流体に混合せず、前記液体が、極性または非極性のうち一方の液体であり、前記流体が前記極性または非極性のうち他方の液体もしくはガスである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記反射粒子が、親水性または疎水性のうち一方の表面を有する第1の側面と、前記親水性または前記疎水性のうち他方の表面を有する第2の側面とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記液体鏡が、調節可能な液体鏡として構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
基板上の絶縁層と、
前記絶縁層によって前記液体から絶縁された複数の電極とをさらに含み、
前記基板が、前記液体と接触するバイアス電極を備え、
前記液体が、導電性であり、前記絶縁層の表面上に配設され、
前記複数の電極が、前記バイアス電極と前記電極のうち1つまたは複数との間に電圧がかけられたとき、前記表面に対する前記液体の横位置または接触角度を調整するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
光電子デバイスとして構成され、
光信号を与える送信機と、
前記光信号を受信する受信機とを含み、前記液体鏡が、前記光信号を前記送信機から前記受信機に向けるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
液体鏡を用いて光信号を送信するステップを含む方法であって、前記送信するステップが、
前記液体鏡の反射面に前記光信号を反射するステップを含み、前記反射面が、前記液体鏡の液体と前記液体に隣接する流体の間の界面に位置する反射粒子を含む、方法。
【請求項9】
液体鏡を製造するステップを含む方法であって、前記製造するステップが、
液体と流体の間の界面に反射粒子の層を形成するステップを含み、前記反射粒子の一方の側面が、親水性表面を有し、前記反射粒子の反対の側面が、疎水性表面を有する、方法。
【請求項10】
反射粒子の前記層を形成するステップが、前記反射粒子を前記液体に付加してコロイド懸濁液を生成するステップと、前記流体を前記液体上に配置するステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−501906(P2010−501906A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526663(P2009−526663)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/018813
【国際公開番号】WO2008/027329
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/018813
【国際公開番号】WO2008/027329
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】
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