説明

液冷式回転X線ターゲット用の回転ユニオン継手

【課題】回転ユニオン継手からの流体漏れを防ぐ。
【解決手段】X線ターゲット(58)用の回転ユニオン継手(50)は、筐体(86)と、冷却材振り回し装置であって、内径及び外径、基部側端部(61)及び末梢側端部(102)、並びに内部に中孔を有する回転シャフト(60)と、回転シャフト(60)の基部側端部(61)に結合されている振り回し器(66)とを含んでいる冷却材振り回し装置と、振り回し器(66)に結合されている排出環(64)であって、振り回し器(66)は冷却材を排出環(64)に向けるように構成されており、排出環(64)は冷却材を一次冷却材出口(78)に通すように構成されている、排出環(64)と、第一の端部(63)及び第二の端部(65)を有する静止管(62)であって、当該静止管(62)の少なくとも一部が回転シャフト(60)の中孔の内部に配設されている静止管(62)とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の各実施形態は一般的には、静止供給源から回転部材へ流体を伝達する回転ユニオン継手に関する。さらに具体的には、本発明の各実施形態は、X線管方式のイメージング・システムの回転部材と静止供給源との間での流体の漏れを防ぐ回転ユニオン継手に関する。
【背景技術】
【0002】
計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム及び非破壊試験システムのようなX線管方式のイメージング・システムは、ガントリに位置するX線源を用いている。典型的には、これらのX線管はアノード方式のX線管である。アノードX線管は典型的には、X線を発生するために高電圧を要求する。残念ながら、アノードX線管は、X線を発生する間に熱せられる傾向にある。現在、真空容器から突出した回転シャフトを用いるX線管は、雰囲気から真空を分離するために磁性流体シールを用いる場合がある。液体冷却材は回転シャフトに通されて、X線ターゲット、磁性流体シール及びシャフト軸受けを冷却することができる。この構成は、非回転部分から回転部分へ漏れのない状態での冷却材の供給を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらにまた、CTシステムでは、ガントリは極めて高速で対象の周りを回転する。このガントリの高速回転は、典型的には重力の何倍にもなり得る遠心力を生じ、これにより回転物体に大きい重力荷重(G荷重)を生成する。標準的な面シール回転ユニオン継手では、大きいG荷重によって生ずる漏れを防ぐことができない場合がある。この大きいG荷重は、X線ターゲットに結合されている回転シャフトを屈曲させ、これにより回転する面シールが回転しない面シールの相手部材に対して整列不正となり得る。これにより、不均等な摩耗が生じて冷却材の漏れを招き得る。加えて、シール面同士の間に間隙が形成されて冷却材の漏れを生じ得る。また、X線管の様々な構成要素を冷却するための液体冷却材が、回転ユニオン継手、特に標準的な面シールを用いた回転ユニオン継手の設計によって、回転ユニオン継手から漏れる場合がある。冷却材漏れはまた、幾つかの構成要素の摩耗又は回転ユニオン継手のあらゆる故障によって生じ得る。冷却材漏れは、回転ユニオン継手を含むイメージング・システムにとって、又はイメージング・システムが動作している環境にとって不利であり得る。さらにまた、機械的な面シールの界面でのシャフトの撓みが圧力勾配を生じ、すると機械的な面シールの不均等な摩耗、漏れ及び短寿命を招き得る。
【0004】
従って、機械的な面シールを用いずに回転ユニオン継手からの流体漏れを防ぐことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単に述べると、本発明の手法の一観点によれば、冷却材振り回し(slinging)装置を提供する。冷却材振り回し装置は、基部側端部及び末梢側端部を有する回転シャフトと、回転シャフトの基部側端部に結合されている1又は複数の振り回し器と、1又は複数の振り回し器に結合されている排出環とを含んでおり、1又は複数の振り回し器は冷却材を排出環へ向けるように構成されており、排出環は冷却材を一次冷却材出口に通すように構成されている。
【0006】
本発明の手法のもう一つの観点によれば、X線ターゲット用の回転ユニオン継手を提供する。X線ターゲット用の回転ユニオン継手は、筐体と、冷却材振り回し装置であって、内径及び外径、基部側端部及び末梢側端部、並びに内部に中孔を有する回転シャフトと、回転シャフトの基部側端部に結合されている1又は複数の振り回し器と、1又は複数の振り回し器に結合されている排出環であって、1又は複数の振り回し器は冷却材を排出環へ向けるように構成されており、排出環は冷却材を一次冷却材出口に通すように構成されている、排出環とを含んでいる冷却材振り回し装置と、第一の端部及び第二の端部を有する静止管であって、当該静止管の少なくとも一部が回転シャフトの中孔の内部に配設されている静止管とを含んでいる。
【0007】
本発明の手法のさらにもう一つの観点によればX線源を提供する。X線源は回転ユニオン継手を含んでおり、回転ユニオン継手は、筐体と、冷却材振り回し装置であって、内径及び外径、基部側端部及び末梢側端部、並びに内部に中孔を有する回転シャフトと、回転シャフトの基部側端部に結合されている1又は複数の振り回し器と、1又は複数の振り回し器に結合されている排出環であって、1又は複数の振り回し器は冷却材を排出環へ向けるように構成されており、排出環は冷却材を一次冷却材出口に通すように構成されている、排出環とを含んでいる冷却材振り回し装置と、第一の端部及び第二の端部を有する静止管であって、当該静止管の少なくとも一部が回転シャフトの中孔の内部に配設されている静止管とを含んでいる。さらに、X線源は、回転中空シャフトを介して回転シャフトの末梢側端部に結合されて動作するターゲットを含んでいる。
【0008】
本手法のさらにもう一つの観点によれば、計算機式断層写真法システムを提供する。計算機式断層写真法システムは、X線ビームを発生するX線源を含んでおり、X線源は、X線ターゲットと回転ユニオン継手とを含んでおり、回転ユニオン継手は、筐体と、冷却材振り回し装置であって、内径及び外径、基部側端部及び末梢側端部、並びに内部に中孔を有する回転シャフトと、回転シャフトの基部側端部に結合されている1又は複数の振り回し器と、1又は複数の振り回し器に結合されている排出環であって、1又は複数の振り回し器は冷却材を排出環へ向けるように構成されており、排出環は冷却材を一次冷却材出口に通すように構成されている、排出環とを含んでいる冷却材振り回し装置と、第一の端部及び第二の端部を有する静止管であって、当該静止管の少なくとも一部が回転シャフトの中孔の内部に配設されている静止管とを含んでいる。さらに、計算機式断層写真法システムは、撮像対象からの減弱したX線ビームを検出する検出器素子のアレイと、撮像対象の画像を表示する表示器とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明のこれらの特徴、観点及び利点、並びに他の特徴、観点及び利点は、添付図面に関連して以下の詳細な説明を読むとさらに十分に理解されよう。図面では、類似の文字は図面全体を通して類似の部材を表わす。
【図1】CTイメージング・システムの見取り図である。
【図2】図1に示すシステムのブロック模式図である。
【図3】本発明の手法の各観点によるX線ターゲットに結合された例示的な回転ユニオン継手の断面図である。
【図4】本発明の手法の各観点によるもう一つの例示的な回転ユニオン継手の断面図である。
【図5】本発明の手法の各観点による静止管、及びX線ターゲットの回転中空シャフトと併せた静止管の構成の展開断面図である。
【図6】本発明の手法の各観点による例示的な冷却材振り回し装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の各実施形態は一般的には、医療イメージング・システムの液冷式X線ターゲット用の回転ユニオン継手に関し、さらに具体的には、X線管のX線ターゲット用の回転ユニオン継手に関する。計算機式断層写真法システムのようなX線管方式のイメージング・システムに設けられる例示的な回転ユニオン継手について示す。
【0011】
図1及び図2を参照して述べると、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム10が、「第三世代」CTスキャナに典型的なガントリ12を含んでいる。ガントリ12はX線源14を含んでおり、X線源14はX線のビーム16をガントリ12の反対側に設けられている検出器アレイ18に向かって投射する。一実施形態では、ガントリ12は、X線のビームを投射する多数のX線源を有し得る。検出器アレイ18は複数の検出器20によって形成されており、各検出器20は共に、患者22のような撮像対象を透過した投射されたX線を感知する。X線投影データを取得する1回の走査の間に、ガントリ12及びガントリ12に装着された構成要素は回転中心24の周りを回転する。CTイメージング・システム10は患者22に関連して図示されているが、イメージング・システム10が医療分野以外の応用を有し得ることを認められたい。例えば、CTイメージング・システム10は、鞄及び小荷物等のような閉じられた物品の内容を確認するために、また爆発物及び/又は生物危害性物質のような密輸品を捜索するために、鞄スクリーニング能力として用いられる場合もある。
【0012】
ガントリ12の回転及びX線源14の動作は、CTシステム10の制御機構26によって制御される。制御機構26は、X線制御器28とガントリ・モータ制御器30とを含んでおり、X線制御器28はX線源14に電力信号及びタイミング信号を供給し、ガントリ・モータ制御器30はガントリ12の構成要素の回転速度及び位置を制御する。制御機構26内に設けられているデータ取得システム(DAS)32が検出器素子20からのアナログ・データをサンプリングして、後続の処理のためにこのデータをディジタル信号へ変換する。画像再構成器34が、サンプリングされてディジタル化されたX線データをDAS32から受け取って高速画像再構成を実行する。再構成された画像はコンピュータ36への入力として印加され、コンピュータ36は大容量記憶装置38に画像を記憶させる。
【0013】
また、コンピュータ36は、キーボード(図1及び図2には示されていない)のような入力装置を有するコンソール40を介して操作者から指令及び走査用パラメータを受け取る。付設されている表示器42によって、操作者は、再構成された画像及びコンピュータ36からのその他のデータを観測することができる。操作者が供給した指令及びパラメータはコンピュータ36によって用いられて、DAS32、X線制御器28及びガントリ・モータ制御器30に制御情報及び信号情報を供給する。加えて、コンピュータ36は、電動式テーブル46を制御するテーブル・モータ制御器44を動作させて、患者22及びガントリ12を位置決めする。具体的には、テーブル46は患者22の各部分をガントリ開口48を通して移動させる。幾つかの実施形態では、コンピュータ36は、コンベヤ・システム46を制御するコンベヤ・システム制御器44を動作させて、手荷物又は鞄のような物体及びガントリ12を位置決めしてもよい。さらに具体的には、コンベヤ・システム46は、ガントリ開口48を通して物体を移動させる。
【0014】
図3には、図1及び図2のX線源14のようなX線源に結合されている回転ユニオン継手50を示す。X線源は回転ユニオン継手50と共に、電子放出器52を含んでおり、電子放出器52は、内部が真空56になっている真空容器54に封入された電子放出カソードであってよい。電子放出器52は、高電圧を供給されると電子のビームを放出する。電子放出器52によって放出された電子ビームは、真空容器54内で加速されて、ターゲット58のようなアノードに衝突してX線を発生する。本実施形態では、ターゲット58は、ターゲット58に衝突した電子ビームが金属を溶融させることのないように、回転する。ターゲット58は、限定しないがタングステン、モリブデン又は銅のような材料を含み得ることが特記され得る。
【0015】
本発明の手法の各観点によれば、ターゲット58は、回転ユニオン継手50に結合されて動作することができる。従って、回転ユニオン継手50の回転シャフト60及びX線ターゲット58が共に回転する。本発明の手法の各観点によれば、回転ユニオン継手50の回転シャフト60は、X線ターゲット58の回転中空シャフト88に結合され得る。さらにまた、本発明の手法の各観点によれば、回転ユニオン継手50は、静止供給源(図示されていない)からX線ターゲット58へ液体冷却材を供給し、また静止供給源に戻すように構成されている。
【0016】
液体冷却材は、回転ユニオン継手50の回転シャフト60の中孔を通過し得る静止管62を介してターゲット58に供給され、回転シャフト60は内径及び外径を含み得る。さらに具体的には、静止管62は回転シャフト60の内径を通過し得る。一実施形態では、回転ユニオン継手50は、回転ユニオン継手50に対する支持を設けるように構成されている筐体86に配設されることができ、また様々な構成要素を含み得る。このことについては後述する。上で述べたように、X線源14(図1及び図2を参照)の様々な構成要素は、X線ビームを発生するための高電圧の印加時に加熱され得る。従って、限定しないが水のような液体冷却材の利用を介して、限定しないが回転するターゲット58及び磁性流体シール84のようなX線源14の様々な構成要素から熱を発散させることが望ましい。さらに、本発明の手法の例示的な各観点によれば、回転ユニオン継手50は、液体冷却材の漏れを防ぐ態様で設計され得る。このことについて以下に述べる。
【0017】
上で述べたように、静止管62を用いて、液体冷却材の流れを静止供給源(図3には示されていない)から回転するX線ターゲット58まで向けることができる。また、上に記載しているように、静止管62の少なくとも一部が回転ユニオン継手50の回転シャフト60の中孔の内部に配設され得るような態様で静止管62を配設することができる。静止管62は、第一の端部63及び第二の端部65を含んでいる。一実施形態では、静止管62の第一の端部63は、回転シャフト60の中孔から突出していてよい。もう一つの実施形態では、静止管62の第二の端部65が回転シャフト60の中孔から突出していてよい。代替的には、静止管の第一の端部63及び第二の端部65が回転シャフト60の中孔から突出していてよい。液体冷却材は、静止管62の第一の端部63から供給され得る。参照番号76は、静止管62の第一の端部63から静止管62の第二の端部65へ向かう液体冷却材の流れを全体的に表わし得る。静止管62の第二の端部65に到達すると、液体冷却材を管軸受け82を介して回転シャフト60と静止管62との間の環状空間へ向けることができる。さらに明確に述べると、液体冷却材の流れ76は静止管62の第二の端部65に達すると反転される。具体的には、液体冷却材は、X線ターゲット58の回転中空シャフト88と静止管62との間の空間に流入することができる。この後に、液体冷却材は例示的な冷却材振り回し装置を通過することができる。
【0018】
上で述べたように、液体冷却材は、標準的な面シールの対を成す表面から漏れて、イメージング・システムの各構成要素に損傷を招き、またこれによりイメージング・システムを損傷する場合がある。本発明の手法の各観点によれば、冷却材振り回し装置は、漏れたあらゆる液体冷却材の収集を容易にして、漏れた液体冷却材が回転ユニオン継手50から出て静止供給源に戻るようにすることにより、液体冷却材の漏れを防ぐように構成され得る。
【0019】
本発明の手法の例示的な各観点によれば、冷却材振り回し装置はまた、1又は複数の振り回し器66を含み得る。加えて、冷却材振り回し装置は、1又は複数の振り回し器66を包囲する排出環を含み得る。1又は複数の振り回し器66は第一の端部及び第二の端部を有することができ、1又は複数の振り回し器66の第一の端部は第二の端部よりも径が小さくてよい。一実施形態では、1又は複数の振り回し器66は、回転シャフト60の第一の端部又は基部側端部61に配設され得る。さらにまた、1又は複数の振り回し器66は液体冷却材を排出環64へ向けるように構成されることができ、排出環64は液体冷却材を一次冷却材出口78に通すように構成される。
【0020】
一実施形態では、回転シャフト60の基部側端部61を機械加工して1又は複数の振り回し器66を形成することができる。代替的な実施形態では、1又は複数の振り回し器66は、接着材を介して回転シャフト60の基部側端部61に結合され又は接着されていてもよい。一実施形態では、1又は複数の振り回し器を回転シャフト60の基部側端部61に、「焼嵌め」として広く知られる手法によって取り付けることができる。焼嵌め手法は、外側部材を加熱すると共に内側部材を冷却し、内側部材及び外側部材を互いに対して配置することを含んでいる。内側部材及び外側部材を同じ温度になるまで放置する。外側部材の温度低下及び内側部材の温度上昇のため、外側部材は収縮し、内側部材は膨張し、これにより互いに固定し合う。冷却材振り回し装置については、図6に関して後にあらためて説明する。
【0021】
さらに、本発明の手法の各観点によれば、回転シャフト60の基部側端部61に配設されている1又は複数の振り回し器66は、筐体86の排出環64のような中空の空洞部によって包囲されていてよい。さらに具体的には、1又は複数の排出環64は、1又は複数の振り回し器66の各々を包囲していてよい。1又は複数の振り回し器66は排出環64の内部で回転する。1又は複数の排出環64は、あらゆる漏れた液体冷却材を収集するのに用いることができる。また、排出環64の各々が少なくとも一つの一次冷却材出口78に結合され得る。加えて、1又は複数の排出環64は、あらゆる漏れた液体冷却材を回転ユニオン継手50から1又は複数の一次冷却材出口78へ向けるような形態に形成され得る。一実施形態では、1又は複数の排出環64は、筐体86の第一の部材及び第二の部材を機械加工することにより形成され得る。筐体86の第一の部材及び第二の部材は、限定しないがボルト締め、溶接及びロウ付けのような手法を用いて共に接合されて、排出環64の形状にある単一の部材を形成することができる。
【0022】
本発明の手法のさらに他の各観点によれば、回転シャフト60はさらに、複数の螺旋吸込み吐出し溝68を含み得る。複数の螺旋吸込み吐出し溝68は一実施形態では、回転シャフト60の外径に配設され得る。さらに具体的には、複数の螺旋吸込み吐出し溝68は、回転シャフト60の基部側端部61に沿って外径に配設され得る。複数の螺旋吸込み吐出し溝68は、液体冷却材を1又は複数の排出環64へ向けるように構成されることができ、これによりこの例示的な回転ユニオン継手50からの液体冷却材の漏れを防ぐ。
【0023】
続けて図3を参照して述べると、一実施形態では、回転シャフト60はまた、1又は複数の二次振り回し器70を含んでいてよい。さらに具体的には、1又は複数の二次振り回し器70は、回転シャフト60の外径に沿って配設され得る。また、1又は複数の二次振り回し器70の各々が少なくとも一つの二次冷却材出口80に結合されることができ、漏れた冷却材が1又は複数の振り回し器66及び複数の螺旋吸込み吐出し溝68を通過するようにする。
【0024】
加えて、この例示的な回転ユニオン継手50の回転シャフト60は高速で回転し得ることが特記され得る。この高速回転は、回転シャフト60が所定位置から撓んで、これにより例えば回転シャフト60と複数の螺旋吸込み吐出し溝68との間に不均等な摩耗を生じ得る。この不均等な摩耗は、回転ユニオン継手50の短寿命を招き得る。故に、回転ユニオン継手50の筐体86に1又は複数の軸受け74を用いて、回転シャフト60に垂直に働くG荷重によって生じ得る回転シャフト60の撓みを防ぐ。
【0025】
また、一実施形態では、1又は複数の軸受け74は、回転シャフト60が周囲部材と接触するのを防ぐような態様で配設され得る。さらに具体的には、1又は複数の軸受け74は、螺旋吸込み吐出し溝68と筐体86との間に離隔距離を設けることにより、回転シャフト60が、特に複数の螺旋吸込み吐出し溝68が配設されている領域の周囲部材と接触するのを防ぐことができる。螺旋吸込み吐出し溝68と筐体86との間の距離は、約1000分の1インチ程度であってよいことが特記され得る。
【0026】
図4に移ると、本発明の手法の各観点による円周シール108を用いた回転ユニオン継手90の断面図が示されている。一実施形態では、円周シール108は、限定しないがグラファイトのようなカーボンを含み得る。他の各実施形態では、円周シールは、限定しないがテフロン(商標)、ルロン(Rulon)、ナイロン、黄銅及び青銅等のような材料を含み得る。ここでも、第一の端部63及び第二の端部65を有する静止管62が図示されている。冷却材は第一の端部63から静止管62に流入する。参照番号76は、静止管62の第一の端部63からの冷却材流を全体的に表わしている。冷却材流76は、静止管62の第二の端部65に達すると反転される。次いで、冷却材は図3の静止管62と回転中空シャフト88との間の環状領域106を流れることができる。図3の回転中空シャフト88は、回転シャフト60の第二の端部又は末梢側端部102に結合され得る。冷却材は回転シャフト60の末梢側端部102を介して環状領域106に入り、1又は複数の振り回し器66を介して複数の排出環64まで振り飛ばされ得る。この後に、冷却材は、図示のように対応する一次冷却材出口78を介して回転ユニオン継手90から外に向かい得る。一実施形態では、少なくとも一つの一次冷却材出口78が図3に示すような各々の排出環64に結合され得る。
【0027】
上で述べたように、1又は複数の振り回し器66の各々が第一の端部98及び第二の端部96を含み得る。第一の端部98は、第二の端部96の径よりも小さい径を有し得る。さらに、一実施形態では、1又は複数の振り回し器66の第一の端部98は、回転シャフト60の基部側端部61に配設され得る。
【0028】
もう一つの実施形態では、1又は複数の振り回し器66を回転シャフト60の基部側端部61から機械加工で切り出してもよい。代替的には、1又は複数の振り回し器66は、回転シャフトの基部側端部61に接着されていてもよい。さらに具体的には、1又は複数の振り回し器66の第一の端部98は、回転シャフト60の基部側端部61に接着され得る。
【0029】
さらに、複数の螺旋吸込み吐出し溝68が回転シャフト60の外径に配設され得る。図3に関して記載したように、螺旋吸込み吐出し溝68は一実施形態では、回転シャフト60の基部側端部61の近くに配設され得る。さらに具体的には、螺旋吸込み吐出し溝68は、回転シャフト60の外径において1又は複数の振り回し器66に隣接して配設され得る。螺旋吸込み吐出し溝68は、冷却材を排出環64に押し出すように構成され、これにより冷却材が軸受け74に到達するのを防ぐことができる。この冷却材は、一次冷却材出口78を介して回転ユニオン継手90の外へ向けられ得る。さらに具体的には、反対向きの圧力勾配が回転シャフト60の外径において複数の螺旋吸込み吐出し溝68によって確立され、これにより冷却材を排出環64に押し出すことができる。
【0030】
加えて、この例示的な回転ユニオン継手90は、複数の螺旋吸込み吐出し溝68を越えて漏れた冷却材がこの例示的な回転ユニオン継手90の外へ向かうように構成されている1又は複数の二次冷却材出口110、112を含み得る。
【0031】
上で述べたように、円周シール108は本発明の手法の各観点によれば、冷却材が本発明の手法の各観点による冷却材流構成から逸失する又は漏れ出ることのないようにすることができる。さらにまた、図示の実施形態に示すように、円周シール108は、軸受け74を越えて回転シャフト60の末梢側端部102に向かって配設され得る。加えて、幾つかの他の実施形態では、円周シール108は、回転ユニオン継手90の筐体86に配設され得る。上に記載しているような円周シール108を具現化することにより、螺旋吸込み吐出し溝68を越えて漏れ得る冷却材を有利に防ぐことができる。
【0032】
図5には、静止管62、及びX線ターゲット58の回転中空シャフト88(図3を参照)と併せた静止管62の構成の展開断面図120が示されている。X線ターゲットの回転中空シャフト88は、図3の回転ユニオン継手50の図3の回転シャフト60に結合され得る。第二の端部65は、図3の回転ユニオン継手50のような例示的な回転ユニオン継手の静止管62の片持ち式端部であり、ユニオン継手がガントリに配置されたときの回転によって生じ得る非対称の「G」力に起因して及び/又は他の機械振動に起因して中心回転軸から変位し得ることが特記され得る。一実施形態では、回転中空シャフト88は、回転シャフト中孔140に圧入されている回転部品128を含み得る。回転部品128は、矢筈形状の複数の対向溝144を含み得る。複数の対向溝144は、静止管62の第二の端部65の内部に配設され得る。加えて、対向溝144は一実施形態では、回転部品128に機械加工されて、向心力を生成することができる。代替的な実施形態では、対向溝144を、当該対向溝144が回転部品128の外径の滑らかな表面に半径方向に対向して延在するような態様で、静止管62の内径130に形成してもよい。代替的には、対向溝144を回転部品128の外径に形成して静止管62の内径130の滑らかな表面に半径方向に対向して延在するようにしてもよい。回転中空シャフト88が回転するにつれて、回転部品128は静止管62の内部で自転する。本発明の手法の各観点によれば、回転部品128の対向溝144は、自然に向心する流体力学的力を生じ、これによりガントリの回転からのG力が静止管62に作用しているときでも静止管62の適正な同心整列性を確保することができる。図5に示すように、参照番号134は、静止管62の第一の端部から静止管62の第二の端部65へ向かう冷却材流を全体的に表わし得る。回転部品128は1又は複数の細長い切込み142を含んでいてよく、これらの切込みは、図示のように冷却材を回転中空シャフト88の内径125と静止管62との間の環状空間138に流すことにより、冷却材流を反転させることができる。さらに具体的には、細長い切込み142は、吸込み吐出し力を発生することにより冷却材流の方向を反転させるような態様に成形され得る。参照番号146は、反転した冷却材流を表わし得る。次いで、静止管62と回転中空シャフト88の内径125との間の環状空間138を流れる冷却材は、参照番号148によって示すような冷却材振り回し装置に向けられ得る。
【0033】
図6には、冷却材流210を示した例示的な冷却材振り回し装置160の展開断面図が図示されている。図3において説明したように、冷却材は、静止管62の第一の端部63から流されることができ、図3のX線ターゲット58のようなX線ターゲットまで走行することができる。液体冷却材の流方向210は、図5を参照して説明したような態様で反転させられ得る。冷却材は、X線ターゲット及び磁性流体シール(図6には示されていない)からの熱を運んで、環状空間106に沿って流れる。回転シャフト60が、基部側端部61及び末梢側端部(図示されていない)を含んでいる。回転シャフト60は、基部側端部61に配設された1又は複数の振り回し器66を有する。1又は複数の振り回し器66は第一の端部98及び第二の端部96を含んでおり、振り回し器66の第一の端部98は回転シャフト60の基部側端部61に配設されている。本発明の手法の各観点によれば、冷却材は、回転シャフト60の基部側端部61において環状空間106から出ると、振り回し器66の第一の端部から外向きに、1又は複数の排出環64の壁面まで振り飛ばされ得る。加えて、幾分かの冷却材は振り回し器66に滴下して、やはり1又は複数の排出環64の壁面まで外向きに振り飛ばされ得る。一実施形態では、排出環64は、図6に示すように成形されて、冷却材を一次冷却材出口78を介して例示的な回転ユニオン継手90(図4を参照)から外に向けることができる。参照番号214は、この例示的な回転ユニオン継手90(図4を参照)からの冷却材流を表わし得る。
【0034】
さらに、1又は複数の振り回し器66の背面のクリアランス空間188に蓄積され得る冷却材は、回転シャフト60によって発生され得る遠心力によって排出環74に押し出され得る。さらにまた、回転シャフト60の基部側端部61と回転ユニオン継手の筐体86との間のクリアランス空間188に蓄積され得る冷却材は、複数の螺旋吸込み吐出し溝68によって排出環64に押し出され、続いて一次冷却材出口78を通過し得る。さらに具体的には、反対向きの圧力勾配が回転シャフト60の外径において複数の螺旋吸込み吐出し溝68によって確立され、これにより冷却材をクリアランス空間188に押し出し、続いて排出環64に押し出すことができる。加えて、冷却材は、摩耗によって複数の螺旋吸込み吐出し溝68を通過して漏れる場合がある。この冷却材が複数の螺旋吸込み吐出し溝68を通過して漏れる問題は、本発明の手法の例示的な各観点によれば二次振り回し器70を含めることを介して回避することができる。一実施形態では、二次振り回し器70は、回転シャフト60の外径174に配設され得る。さらに、二次振り回し器70は、漏れた冷却材を二次冷却材出口80を通して押し出すように構成されることができ、これにより冷却材漏れを防ぐことができる。従って、この例示的な冷却材振り回し装置160は、冷却材がさらに回転シャフト60を伝って軸受け及びモータ(図示されていない)に向かって走行して損傷を生じることのないようにすることができる。
【0035】
本書に記載されているような液冷式X線ターゲット用の回転ユニオン継手は、特に高速回転するCTガントリでの液体冷却材の漏れの防止のような幾つかの利点を有する。この例示的な回転ユニオン継手では、信頼性が向上し耐久性が高まっており、大きいG荷重での動作に適している。
【0036】
本書では発明の幾つかの特徴のみを図示して説明したが、当業者には多くの改変及び変形が想到されよう。従って、特許請求の範囲は、発明の要旨に含まれるような全ての改変及び変形を網羅するものと理解されたい。
【符号の説明】
【0037】
10 CTイメージング・システム
12 ガントリ
14 X線源
16 X線
18 検出器アレイ
20 複数の検出器
22 患者
24 回転中心
26 制御機構
28 X線制御器
30 ガントリ・モータ制御器
32 データ取得システム
34 画像再構成器
36 コンピュータ
38 大容量記憶装置
40 コンソール
42 表示器
44 テーブル・モータ制御器
46 コンベヤ・システム/テーブル
48 ガントリ開口
50 回転ユニオン継手
52 電子放出器
54 真空容器
56 真空
58 X線ターゲット
60 回転シャフト
61 回転シャフトの基部側端部
62 静止管
63 静止管の第一の端部
64 排出環
65 静止管の第二の端部
66 振り回し器
68 螺旋吸込み吐出し溝
70 二次振り回し器
74 軸受け
76 冷却材流
78 一次冷却材出口
80 二次冷却材出口
82 管軸受け
84 磁性流体シール
86 筐体
88 回転中空シャフト
90 例示的な回転ユニオン継手の断面図
96 振り回し器の第二の端部
98 振り回し器の第一の端部
102 回転シャフトの末梢側端部
106 環状空間
108 カーボン円周シール
110 二次冷却材出口
112 二次冷却材出口
120 静止型シャフト及び回転シャフトの構成を示す断面図
125 回転中空シャフトの内径
128 回転部品
130 静止管の内径
134 冷却材流
138 環状空間
140 中孔
142 細長い切込み
144 対向溝
146 反転した冷却材流
148 冷却材振り回し装置へ向かう冷却材流
160 冷却材振り回し装置の断面図
174 回転シャフトの外径
188 クリアランス空間
210 流入冷却材流
214 流出冷却材流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部側端部(61)及び末梢側端部(102)を有する回転シャフト(60)と、
該回転シャフト(60)の前記基部側端部(61)に結合されている1又は複数の振り回し器(66)と、
該1又は複数の振り回し器(66)に結合されている排出環(64)と
を備えた冷却材振り回し装置であって、
前記1又は複数の振り回し器(66)は冷却材を前記排出環(64)へ向けるように構成されており、前記排出環(64)は前記冷却材を一次冷却材出口(78)に通すように構成されている、冷却材振り回し装置。
【請求項2】
前記1又は複数の振り回し器(66)は第一の端部(98)及び第二の端部(96)を含んでおり、前記第一の端部(98)は前記回転シャフト(60)の前記基部側端部(61)に結合されている、請求項1に記載の冷却材振り回し装置。
【請求項3】
振り回し器(66)の前記第一の端部(98)の径が前記振り回し器(66)の前記第二の端部(96)の径よりも小さい、請求項2に記載の冷却材振り回し装置。
【請求項4】
前記冷却材を前記排出環(64)に向けるように前記回転シャフト(60)の外径に配設された複数の螺旋吸込み吐出し溝(68)をさらに含んでいる請求項1に記載の冷却材振り回し装置。
【請求項5】
前記回転シャフト(60)の前記外径に配設されており、前記冷却材を二次冷却材出口(80)に通すように構成されている1又は複数の二次振り回し器(70)をさらに含んでいる請求項4に記載の冷却材振り回し装置。
【請求項6】
X線ターゲット(58)用の回転ユニオン継手(50)であって、
筐体(86)と、
該筐体(86)の内部に配設されている冷却材振り回し装置であって、
内径及び外径、基部側端部(61)及び末梢側端部(102)、並びに内部に中孔を有する回転シャフト(60)と、
該回転シャフト(60)の前記基部側端部(61)に結合されている1又は複数の振り回し器(66)と、
該1又は複数の振り回し器(64)に結合されている排出環(64)であって、前記1又は複数の振り回し器(64)は冷却材を当該排出環(64)へ向けるように構成されており、当該排出環(64)は前記冷却材を一次冷却材出口(78)に通すように構成されている、排出環(64)と
を含んでいる冷却材振り回し装置と、
第一の端部(63)及び第二の端部(65)を有する静止管(62)であって、当該静止管(62)の少なくとも一部が前記回転シャフト(60)の前記中孔の内部に配設されている静止管(62)と
を備えた回転ユニオン継手(50)。
【請求項7】
前記静止管(62)の前記第一の端部(63)、前記第二の端部(65)又は前記第一の端部(63)及び前記第二の端部(65)の両方が前記回転シャフト(60)の前記中孔から突出している、請求項6に記載の回転ユニオン継手。
【請求項8】
前記回転シャフト(60)の撓みを防ぐように前記筐体(86)に配設されている1又は複数の軸受け(82)と、
冷却材漏れを防ぐように前記回転シャフト(60)の前記外径に沿って円周方向に配設されている円周シール(108)と
をさらに含んでいる請求項6に記載の回転ユニオン継手。
【請求項9】
回転ユニオン継手(50)と、
ターゲット(58)と
を備えたX線源(14)であって、前記回転ユニオン継手(50)は、
筐体(86)と、
該筐体(86)の内部に配設されている冷却材振り回し装置であって、
内径及び外径、基部側端部(61)及び末梢側端部(102)、並びに内部に中孔を有する回転シャフト(60)と、
該回転シャフト(60)の基部側端部(61)に結合されている1又は複数の振り回し器(66)と、
該1又は複数の振り回し器(64)に結合されている排出環(64)であって、前記1又は複数の振り回し器(64)は冷却材を当該排出環(64)へ向けるように構成されており、当該排出環(64)は前記冷却材を一次冷却材出口(78)に通すように構成されている、排出環(64)と
を含んでいる冷却材振り回し装置と、
第一の端部(63)及び第二の端部(65)を有する静止管(62)であって、当該静止管(62)の少なくとも一部が前記回転シャフト(60)の前記中孔の内部に配設されている静止管(62)と
を含んでおり、
前記ターゲット(58)は、回転中空シャフト(88)を介して前記回転シャフト(60)の前記末梢側端部(102)に結合されて動作する、
X線源(14)。
【請求項10】
X線ビーム(16)を発生するX線源(14)と、
撮像対象(22)からの減弱したX線ビームを検出する検出器素子(18)のアレイと、
前記撮像対象(22)の画像を表示する表示器(42)と
を備えた計算機式断層写真法システム(10)であって、
前記X線源(14)は、
X線ターゲット(58)と、
回転ユニオン継手(50)と
を含んでおり、該回転ユニオン継手(50)は、
筐体(86)と、
該筐体(86)の内部に配設されている冷却材振り回し装置であって、
内径及び外径、基部側端部(61)及び末梢側端部(102)、並びに内部に中孔を有する回転シャフト(60)と、
該回転シャフト(60)の前記基部側端部(61)に結合されている1又は複数の振り回し器(66)と、
該1又は複数の振り回し器(64)に結合されている排出環(64)であって、前記1又は複数の振り回し器(64)は冷却材を当該排出環(64)へ向けるように構成されており、当該排出環(64)は前記冷却材を一次冷却材出口(78)に通すように構成されている、排出環(64)と
を含んでいる冷却材振り回し装置と、
第一の端部(63)及び第二の端部(65)を有する静止管(62)であって、当該静止管(62)の少なくとも一部が前記回転シャフト(60)の前記中孔の内部に配設されている静止管(62)と
を含んでいる、計算機式断層写真法システム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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