説明

液冷式電力変換装置

【課題】 鉄道車両用電力変換装置内の温度上昇を抑制し、かつ装置内の汚損を防止することが可能な液冷式電力変換装置の提供を目的とする。
【解決手段】 鉄道車両200の機関室201内に設けられる電力変換装置1及び冷却装置100と、電力変換装置1内に設けられる電気部品13、複数の半導体素子2と、電気部品13と電動送風機12の間に位置する第3熱交換器5と、複数の半導体素子2が取り付けられる冷却体4と、冷却装置100内に設けられる第1熱交換器111bと、冷却装置内に設けられる第1熱交換器111bよりも小さい第2熱交換器111aと、第3の熱交換器5と第2熱交換器111aを接続する配管7aと、冷却体4と第1熱効交換器111bを接続する配管7bを有する液冷式電力変換装置。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一般に、鉄道車両は、架線から電力が供給され、その電力を鉄道車両用の電力変換装置が、車両に搭載されているモータが駆動できるような電力に変換する。モータが変換された電力を受け取り、回転することで鉄道の走行が可能となる。上記の鉄道用電力変換装置内には、半導体素子及びその周辺回路の電気部品で構成される半導体モジュールが内蔵される。その半導体素子のスイッチング動作により電力変換を行っている。半導体素子のスイッチング動作は多くの熱損失を発生するため、この熱を効率よく電力変換装置外部へ放出し、半導体素子の温度を動作許容温度範囲に保つような冷却技術が必要となる。
【0002】
電力変換装置内には上記の半導体モジュールのほかにも送風機や制御装置等の電気機器が収納され、この電気機器からも熱損失は発生する。この熱損失により機器室及び装置内が温度上昇し、搭載されている電気機器は高温環境下に曝される。電気機器は、正常動作のための使用温度範囲で使用しなければ故障の原因となり、寿命が想定されている期間よりも早くなる。そのため鉄道車両用電力変換装置に収納している半導体モジュールや電気機器の保護のために温度上昇を抑制しなければならない。
【0003】
半導体素子の冷却に必要な技術として、半導体素子から発生する熱損失を受熱する受熱部と、この熱損失を半導体モジュール外部に放出する放熱部とがある。この放熱部を冷やす方法として液冷方式がある。この液冷式は、鉄道車両用電力変換装置内の受熱部と、鉄道車両用電力変換装置外部に設置された放熱部の間を、配管で接続し、ポンプを使用して配管内の冷却液を強制循環させ、熱を輸送することで高い冷却効率を得ている。
【0004】
また半導体モジュールの他の電気機器や配線等の冷却技術として、従来では、鉄道車両用電力変換装置の筐体表面に通気口を開け、外気を装置内に取り入れてものがある。通風を利用して、装置内の温度上昇を抑制している。この構成の鉄道車両用電力変換装置内にファンを追加して設け、装置内の空気を強制的に換気する構成も挙げられている。以下にこの従来構成について詳細に説明する。
【0005】
従来装置について図17を用いて具体的に説明する。図17は、従来の液冷式電力変換装置の構成図である。図17中の実線矢印は電力変換装置1の取り込む機器室201内の空気を示し、破線矢印は冷却装置100が取り込む外気を示す。車両200には機器室201があり、機器室201には電力変換装置1や、主変圧器のような制御装置50、冷却装置100が設置されている。車両200は、架線300からパンタグラフ301で電力を受け、制御装置50や電力変換装置1を経由し、台車302の軸に設置された電動機303へ電力が供給され、レール304上を走行する。電力変換装置1には、複数の半導体素子2a〜2fが冷却体3a〜3cに取付けられ、冷却体3a〜3cの内部には冷却液が流れる流路4があり、電力変換装置1に備えられる配管7と接続される。冷却装置100では、外気入風口101から外気を取り込み、ダクト102〜106を通風し、外気排風口107から外気は排出されている。ダクト103には電動送風機110、ダクト105には熱交換器111を有する。配管60は、電力変換装置1の冷却液入口8と熱交換器111とポンプ10とを閉ループで接続し、ポンプ10により冷却体がこの閉ループ内を循環することで熱輸送する。つまり、半導体素子2より発生した熱損失は冷却体3で受熱され、冷却体3の内部の流路4を強制的に流れる冷却液に熱伝達され、配管7の内部を流れる冷却液により熱交換器111の放熱部分から大気に熱放出することで、半導体素子2から発生した熱損失を効率よく大気に放出し、半導体素子2の温度上昇を許容温度範囲内に保つ。熱交換器111は大気との熱交換効率を高めるため、電動送風機110により強制通風するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−62694
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来の鉄道車両用電力変換装置では、電気機器を冷却するための空気を取り込む通気口を有し、密閉構造ではない。この空気には塵埃が含まれるため、内部が汚損するとうい問題がある。装置内の汚損防止対策として、通気口にフィルターを設置する場合もあるが、フィルターでは塵埃を完全に除去しきれないだけでなく、フィルターは塵埃により徐々にフィルターの目がつまるため、定期的にフィルターを交換または清掃するなどメンテナンスが増加するといった問題が生じる。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、鉄道車両用電力変換装置内の温度上昇を抑制し、かつ装置内の汚損を防止することが可能な液冷式電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の液冷式電力変換装置は、鉄道車両の機関室内に設けられる電力変換装置及び冷却装置と、電力変換装置内に設けられる電気部品、複数の半導体素子と、電気部品と電動送風機の間に位置する第3熱交換器と、複数の半導体素子が取り付けられる冷却体と、冷却装置内に設けられる第1熱交換器と、冷却装置内に設けられる第1熱交換器よりも小さい第2熱交換器と、第3の熱交換器と第2熱交換器を接続する配管と、冷却体と第1熱効交換器を接続する配管を有している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の液冷式電力変換装置。
【図2】第2の実施形態の液冷式電力変換装置。
【図3】第3の実施形態の液冷式電力変換装置。
【図4】第4の実施形態の液冷式電力変換装置。
【図5】第5の実施形態の液冷式電力変換装置。
【図6】第6の実施形態の液冷式電力変換装置。
【図7】第7の実施形態の強制循環電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。
【図8】第8の実施形態の液冷式電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。
【図9】第9の実施形態の液冷式電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。
【図10】第10の実施形態の液冷式電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。
【図11】第11の実施形態の液冷式電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。
【図12】第12の実施形態の液冷式電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。
【図13】第13の実施形態の液冷式電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。
【図14】第14の実施形態の液冷式電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。
【図15】従来装置の構成を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、液冷式電力変換装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
(構成)
まず、図1を用いて第1の実施形態を説明する。図1は、液冷式電力変換装置の全体構成を表した図である。図1中実線矢印は、電力変換装置1内の空気の流れを示し、破線矢印は外気の流れを示す。従来技術を示した図17と同一構成は同じ符号とし、重複する説明は省略する。
【0013】
図1に示す実線矢印は電力変換装置1の取り込む機器室201内の空気を示し、破線矢印は冷却装置100が取り込む外気を示す。車両200には機器室201があり、機器室201には電力変換装置1及び冷却装置100が設置されている。車両200は、架線300からパンタグラフ301で電力を受ける。受けた電力は電力変換装置1を経由し、台車302の軸に設置された電動機303へ供給される。電動機303は、電力を駆動力として車輪を回転させ、車両200がレール304上を走行する。 電力変換装置1内には、電気部品13、複数の半導体素子2a〜2fが設けられている。
【0014】
電気部品13は第3熱交換器5と並列に、第3熱交換器5は電気部品13と電動送風機12の間で並列に位置している。第3熱交換器5の配管7bは、内部及び外部に設けられ、配管7bの一端は配管接続部9bに、もう一端は配管接続部8bにポンプ10bを介して接続される。
【0015】
複数の半導体素子2a〜2fが冷却体3a〜3cに取付けられ、冷却体3a〜3cの内部には冷却液が流れるそれぞれ流路4a〜4cが設けられている。流路4a〜4cの一端は、配管7aを介して電力変換装置1の筐体11と外部が接続される配管接続部9aと接続され、もう一端は配管7a及びポンプ10aを介して別の配管接続部8aに接続される。電力変換装置1内の配管7bは、電気部品の冷却系の冷却液入口8bと、ポンプ10bと、電気部品13の熱損失の受熱部となる第3熱交換器5と、第3熱交換器5に強制通風する電動送風機6と、電気部品13の冷却系の冷却液出口9bと電気部品の冷却系に備わる部品間を接続している。
【0016】
冷却装置100は、風洞102、電動送風機取付部103、風洞104、熱交換器収納部105a〜bで構成される。筒状の風洞102は、最上部であり電動送風機取付部103の上部に位置する。電動送風機取付部103は、筒状の風洞上部に位置し、内部には電動送風機110が設けられている。風洞104は、熱交換器収納部105a〜bの上部に位置する。熱交換器収納部105a〜bは、風洞106の上部に位置する。熱交換器収納部105bは、電力変換装置1内の電気部品13の熱損失の放熱部となる第2熱交換器111bが設けられ、冷却水が流入するための熱交換器入口108bと、熱交換器出口109bを有する。熱交換器収納部105aは、電力変換装置1内の半導体素子2a〜2fの熱損失の放熱部となる第1熱交換器111aが設けられ、冷却水が流入するための熱交換器入口108aと、熱交換器出口109aを有する。風洞106は、熱交換器収納部105a〜bの下部に位置し最下部となる。風洞102の天井部には入風口101が設けられ、106の底面部には排風口107が設けられ。それぞれ外部と通じている。
【0017】
上述した冷却装置100と電力変換装置1は、熱交換器入口108bと冷却液出口9b、熱交換器出口109bと冷却液入口8b、熱交換器入口108aと冷却液出口9a、熱交換器出口109aと冷却液入口8aが配管を介して接続されている。
【0018】
(作用)
まず1つ目の電力変換装置内の温度抑制作用について説明する。
【0019】
電力変換装置1内では半導体素子2a〜2fが最も発熱する。半導体素子2a〜2fの熱は自然対流により電力変換装置1の上側(天井側)に集まり滞留する。電動送風機12は上側に設置され、送風方向は上側から下側(床部)に向かっている。そのため、電力変換装置1内の上側に滞留している熱を含んだ空気は上側から下側に向かって流れ、さらに床面にぶつかった空気は左右に分かれ、また上側に向かって上昇するという2つの大きな気流が生じる。そのため、筐体11内の空気は常に拡散されることになり、それに伴い筐体11内の温度が均一化される。
【0020】
次の温度抑制作用について説明する。上記の筐体11内の空気を拡散し、温度均一を図る電動送風機12の回転は、電気部品13の温度抑制作用を有する。
【0021】
電動送風機12が回転すると、空気が第3熱交換器5に送られる。このとき、第3熱交換器5の熱交換器内流路6には、ポンプ10の押し出し力により配管7bを通って冷却液が流入する。熱交換機内流路6には、電動送風機12の回転によって送風される空気がぶつかる。筐体11内または半導体素子2の熱を含んだ空気は、熱交換器内流路6の壁面に沿って流れることで、空気内の熱が配管内を通る冷却液によって奪われる。そのため、熱交換器内流路6を通過した後、空気は熱を奪われた状態となっている。この冷却された空気が電動送風機12に電気部品13に送風される。送風された空気は、電気部品13で発生した熱は吸収し、筐体11内に拡散されることになる。また、熱交換機5にて空気からの熱を吸収した冷却液は、配管7bを通って放熱部となる第2熱交換器111bに送られる。第2熱交換器111bは、電動機送風機110からの送風により冷却液の熱を大気に放出する。そして熱を放散し再び熱を含まない冷却液となったところで再び第3熱交換器5へと送られる。そのため電気部品12は常に熱が吸収された後の空気によって冷却されることになる。このように、それぞれ電動送風機12または電動送風機110により強制通風することで、空気との熱交換効率を高めている。
【0022】
また次に半導体素子2についての温度抑制作用について述べる。
【0023】
上述した半導体素子2a〜2fの熱は、冷却体3で受熱される。冷却体3で受熱された熱は、冷却体3内部の冷却体内流路4をポンプ10aの作用によって強制的に流れる冷却液に熱伝達される。それぞれの冷却体内流路4a〜4cを通り、熱を吸収した冷却液は、配管7aを通って第1熱交換器111aに運ばれる。熱交換器111では電動送付機111からの送風によって冷却液の熱が奪われる。またこのとき、第2熱交換器111b<111aとなっているため、電動送風機によって熱を含まない空気が第2熱交換器111bと第1熱交換器111aのどちらにも当てられる。そのため、第2熱交換器111bでは冷却液に含まれた熱が大気に熱放出することが可能となる。そして熱を放散し再び熱を含まない冷却液となったところで半導体素子2a〜2fに送られる。このように、半導体素子2a〜2fの熱損失により発生した熱を効率よく大気に放出し、半導体素子2の温度上昇を許容温度範囲内に保つことができる。
【0024】
また、このような作用は筐体11を密閉空間によって実現されている。そのため、機器室201内の塵埃は電力変換装置1内に侵入しないため、電力変換装置1内の汚損度は大きく改善される。
【0025】
(効果)
よって以上の効果により、電力変換装置1を密閉構造の状態で、装置内をほぼ汚損せずに、筐体11内は温度上昇を抑制され、電力変換装置2の信頼性向上及び長寿命化が図れる。
【0026】
尚、図面では、冷却体が循環系にそれぞれ3個の冷却配管系統図を示しているが、この冷却体がそれぞれ単体または複数個接続されていたり、並列に複数個接続されていたりする場合が多いが、1個においても、複数個においても、本実施形態の効果に変わりはないため、3個の場合の図で説明している。
【0027】
(第2の実施形態)
(構成)
液冷式電力変換装置の第2の実施形態について図2を用いて説明する。図2は、液冷式電力変換装置の全体構成を表した図である。なお第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0028】
第2の実施形態において第1の実施形態と異なる点は、冷却装置100内に熱交換器収納部105cを有し、熱交換器収納部105c内には電力変換装置1aの電気部品13aの熱損失と、電力変換装置1bの電気部品13bの熱損失の放熱部となる熱交換器111cが収納される。
【0029】
電力変換装置1aに設置された電気機器13aの熱損失の受熱部となる第3熱交換器5aと、他方の電力変換装置1bに設置された電気機器13bの熱損失の受熱部となる第3熱交換器5bと、ポンプ10cと、冷却装置100内の熱交換器105cが同一の閉ループで接続された冷却系統とする。
【0030】
(作用)
第2の実施形態は、第1の実施形態における電力変換装置内及び半導体素子の温度抑制作用と同様の作用を有する。
【0031】
さらに、第2の実施形態では電力変換装置内を冷却する熱交換器12a、12bを直列に接続し、同一の閉ループとしている。冷却液と電力変換装置内の空気の温度差が大きい方が熱交換効率は向上するので、温度上昇の小さい電力変換装置1b内の第3熱交換器5bを通過した後に、温度上昇の大きい電力変換装置1a内の第3熱交換器5aを配置することにより効率よく電力変換装置1a、1b内を冷却できる。
【0032】
(効果)
よって以上の効果により、電力変換装置1a、1b内を同一の冷却系に接続することにより電力変換装置1に対し個別に冷却装置100を備えるよりも省スペースであり、部品点数の削減が図れる。
【0033】
尚、図3のように電力変換装置1だけでなく、電力変換装置1と電気機器を収納した装置(以下、機器箱)50内の第3熱交換器52を冷却装置100内の熱交換器111gと配管にて接続した場合でも同様に本実施形態の効果は変わらない。
【0034】
(第3の実施形態) (請求項1,3対応)
次に、液冷式電力変換装置の第3の実施形態について図4を用いて説明する。図3は、液冷式電力変換装置の全体構成を表した図である。なお第1の実施形態〜2と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
第3の実施形態において第1の実施形態〜2と異なる点は、車両200で、複数の電力変換装置1a〜1bを有する。冷却装置100には熱交換器収納部105d〜105gがある。熱交換器収納部105d内に電力変換装置1aの半導体素子2a〜2fの熱損失の放熱部となる熱交換器111dが収納される。熱交換器収納部105eは、熱交換器収納部105dの上方に配置し、電力変換装置1aの電気部品13aの熱損失の放熱部となる熱交換器111eが収納される。熱交換器収納部105fは、熱交換器収納部105dの下方に配置し、電力変換装置1bの半導体素子2g〜2lの熱損失の放熱部となる熱交換器111fが収納される。(番号の訂正が必要)熱交換器収納部105gは、熱交換器収納部105eと隣接し、電力変換装置1bの電気部品13bの熱損失の放熱部となる熱交換器111gが収納される。
【0036】
上述した電力変換装置1a、1bと冷却装置100は、熱交換器入口108dと冷却液出口9a、熱交換器出口109dと冷却液入口8a、熱交換器入口108eと冷却液出口9b、熱交換器出口109eと冷却液入口8b、熱交換器入口108fと冷却液出口9c、熱交換器出口109fと冷却液入口8c、熱交換器入口108gと冷却液出口9d、熱交換器出口109gと冷却液入口8dが配管を介して接続されている。
【0037】
(作用)
冷却装置100内において入風口101から取り込んだ外気は熱交換器111eと熱交換器111gへ外気は送られる。外気は、熱交換器111eにおいて電力変換装置1a内の空気に受熱された熱損失により温まった冷却液と熱交換し、温度が上昇する。同様に熱交換器111gにおいて電力変換装置1b内の空気に受熱された熱損失により温まった冷却液と熱交換し、温度が上昇する。温まった外気は、熱交換器111e、111gの下方に設置された熱交換器111dに送られ、電力変換装置1aの半導体素子2a〜2fの空気に受熱された熱損失により温まった冷却液と熱交換し、温度が上昇する。さらに温まった外気は、熱交換器111dの下方に設置された熱交換器111fに送られ、電力変換装置1bの半導体素子2g〜2lの空気に受熱された熱損失により温まった冷却液と熱交換し温度が上昇する。熱損失を受け温まった外気は、風洞106を通り排風口107より車両200外へ放出される。
【0038】
(効果)
第2の実施形態と比べ、電力変換装置1a、1bの熱損失に対し熱交換器111が独立して冷却装置100内に設置されているため、同一の冷却系に複数の装置が接続されるよりも冷却効率が向上する。
【0039】
尚、図5のように電力変換装置1だけでなく、電力変換装置1と電気機器を収納した装置(以下、機器箱)50内の第3熱交換器52を冷却装置100内の熱交換器111gと配管にて接続した場合でも同様に本実施形態の効果は変わらない。
【0040】
(第4の実施形態)
(構成)
液冷式電力変換装置の第4の実施形態について図6を用いて説明する。図6は、電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。なお、第1の実施形態〜3と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図6中の矢印は、空気の流れを示す。
【0041】
第4の実施形態において第1の実施形態と異なる点は、車両1に設置している電力変換装置1内を筐体11により筐体密閉部23と筐体開放部24に仕切っている。筐体密閉部24内で電気部品13は第3熱交換器5と、第3熱交換器5は電気部品13と電動送風機6の間で並列に位置している。配管7bは第3熱交換器5の内部及び外部に設けられ、配管7bの一端は配管接続部9bに、もう一端は配管接続部8bにポンプ10bを介して接続される。また、複数の半導体素子2a〜2fが冷却体3a〜3cに取付けられ、冷却体3a〜3cの内部には冷却液が流れるそれぞれ流路4a〜4cが設けられている。流路4a〜4cの一端は、配管7aを介して電力変換装置1の筐体11と外部が接続される配管接続部9aと接続され、もう一端は配管7a及びポンプ10aを介して別の配管接続部8aに接続される。筐体開放部24内には、第1の実施形態において車両200に設置されていた冷却装置100を内蔵している。
【0042】
(作用)
電動送風機12が回転すると、空気が第3熱交換器5に送られる。このとき、第3熱交換器5の熱交換器内流路6には、ポンプ10の押し出し力により配管7bを通って冷却液が流入する。熱交換機内流路6には、電動送風機12の回転によって送風される空気がぶつかる。筐体11内または半導体素子2の熱を含んだ空気は、熱交換器内流路6の壁面に沿って流れることで、空気内の熱が配管内を通る冷却液によって奪われる。そのため、熱交換器内流路6を通過した後、空気は熱を奪われた状態となっている。この冷却された空気が電動送風機12に電気部品13に送風される。送風された空気は、電気部品13で発生した熱は吸収し、筐体11内に拡散されることになる。また、熱交換機5にて空気からの熱を吸収した冷却液は、配管7bを通って放熱部となる第2熱交換器111bに送られる。第2熱交換器111bは、電動機送風機110からの送風により冷却液の熱を大気に放出する。そして熱を放散し再び熱を含まない冷却液となったところで再び第3熱交換器5へと送られる。そのため電気部品12は常に熱が吸収された後の空気によって冷却されることになる。このように、それぞれ電動送風機12または電動送風機110により強制通風することで、空気との熱交換効率を高めている。
【0043】
電力変換装置1内では半導体素子2a〜2fが最も発熱する。その熱は電力変換装置1の上側で滞留する。電動送風機12の送風方向は上側から下側に向かっている。そのため、電力変換装置1内の上側に滞留している熱を含んだ空気は対流し、筐体11内の温度のばらつきが均一化される。
【0044】
配管7aは、電力変換装置1の冷却液入口8と熱交換器111とポンプ10とを閉ループで接続し、ポンプ10により冷却体がこの閉ループ内を循環することで熱輸送する。つまり、半導体素子2より発生した熱損失は冷却体3で受熱され、冷却体3の内部の流路4を強制的に流れる冷却液に熱伝達され、配管7の内部を流れる冷却液により熱交換器111の放熱部分から大気に熱放出することで、半導体素子2から発生した熱損失を効率よく大気に放出し、半導体素子2の温度上昇を許容温度範囲内に保つ。
【0045】
(効果)
第1の実施形態と比べ、冷却系統を電力変換装置内に内蔵することにより省スペース化、機器配置の自由度の向上、及び部品点数の削減が図れる。
【0046】
(第5の実施形態)
(構成)
係る液冷式電力変換装置の第5の実施形態について図7を用いて説明する。図7は、電力変換装置内に収納された電気機器13の冷却系統の構成を表した図である。なお、第1の実施形態〜4と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図7の構成は、第1の実施形態の電力変換装置1、電気機器の受熱部となる第3熱交換器5、電動送風機12、筐体11、電気部品13のみを記載し、他の構成を省略する。図7中の矢印は、空気の流れを示す。
【0047】
第5の実施形態は、電力変換装置1で、電気機器13と、電気機器13の受熱部となる第3熱交換器5と、熱交換器内流路6と、電動送風機12と、筐体11と、ダクト14を備える。電動送風機12と第3熱交換器5は並列に配置され、第3熱交換器5に対し電動送風機12と反対側にダクト14を敷設する。ダクト14の吹出口付近に電気部品13はある。
【0048】
(作用)
電動送風機12が回転すると、電気部品13の熱損失により温められた空気が第3熱交換器5に送られる。空気は第3熱交換器5で冷却液と熱交換し冷却され、冷えた空気がダクト14を介し電気部品13に直接通風される。
【0049】
(効果)
第1の実施形態と比べ、電気部品13に直接冷やされた空気を通風できるため、電気部品13の冷却効率が向上する。
【0050】
尚、図8のように並列に配置された複数の電気部品13a〜13cを冷却する場合、ダクト14の吹出口を変えることで本実施形態の効果を買えず対応できる。他の応用例として、図9は上下に並列に配置された電気部品を冷却する場合、図10は上下左右に配置された電気部品を冷却する場合を示す。図8〜10のいずれにおいても、第5の実施形態の発明の効果は変わらない。
【0051】
(第6の実施形態)
(構成)
液冷式電力変換装置の第6の実施形態について図11を用いて説明する。図11は、電力変換装置1内に収納された電気機器13の冷却系統の構成を表した図である。なお、第1の実施形態〜5と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図11の構成は、第1の実施形態の電力変換装置1、電気機器13、電気機器13の受熱部となる第3熱交換器5、熱交換器内流路6、電動送風機12、筐体11、電気部品13a〜13cのみを記載し、他の構成を省略する。図11中の矢印は、空気の流れを示す。
【0052】
第6の実施形態において電力変換装置1は仕切板においてブロック16a〜16cに分けられている筐体11を有する。電気部品13aはブロック16aに、電気部品13bはブロック16bに、電気部品13cはブロック16cに収納される。
【0053】
(作用)
電動送風機12が回転すると、電気部品13の熱損失により温められた空気が第3熱交換器5に送られる。空気は第3熱交換器5で冷却液と熱交換し冷却される。電動送風機12が起こす風は上から下に向かい吹いているため、熱交換により冷えた空気は筐体11内の対流によってブロック16a〜16cへと拡散する。各ブロック16a〜16cに収納された電気部品13a〜13cは、冷風により冷却される。
【0054】
(効果)
電動送風機12による電気機器の受熱部となる第3熱交換器5への強制通風を、熱損失の大きい電気機器またはモジュールに対し直接行うため、強制通風した電気機器またはモジュールの信頼性向上及び長寿命化が図れ、また他の機器やモジュールに対する熱的影響を抑制できる。
【0055】
尚、図中の筐体仕切板16a〜16bは2個、ブロック13a〜13cは3個示したが、1個でも複数個でも本実施形態の効果は変わらないため、仕切板2個、ブロック3個の場合の図にて説明する。
【0056】
応用例として、図12のようにブロック16aに収納されている電気部品13aを特に冷却する場合、電動送風機12を垂直に設置することで可能となる。図12においても第6の実施形態の発明の効果は変わらない。
【0057】
(第7の実施形態)
(構成)
液冷式電力変換装置の第7の実施形態について図13を用いて説明する。図13は、電力変換装置内に収納された電気機器の冷却系統の構成を表した図である。なお、第1の実施形態〜6と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図13の構成は、第1の実施形態の電力変換装置1、電気機器の受熱部となる第3熱交換器5、熱交換器内流路6、電動送風機12、筐体11、電気部品13、ダクト14のみを記載し、他の構成を省略する。図13中の矢印は、空気の流れを示す。
【0058】
第7の実施形態において第6の実施形態と異なる点は、電力変換装置1で、筐体11に複数の仕切板を設けブロック16a〜16cに区切っている部分にダクト14を敷設し、ダクト14の吹出口を各ブロック16a〜16c毎に設ける。
【0059】
(作用)
電動送風機12が回転すると、電気部品13の熱損失により温められた空気が第3熱交換器5に送られる。空気は第3熱交換器5で冷却液と熱交換し冷却される。電動送風機12が起こす風はダクト14を通り、ブロック16a〜16cに送風する。送られてきた冷風は、ブロック16a〜16c内の空気よりも冷たく重いため、ダクト14の吹出口から下方へと下がる。下がった空気は、電気部品13a〜13cを冷却する。各ブロック16a〜16cは下方の仕切板の隙間で空間がつながっているため、電動送風機12のあるブロック16cへと流れる。よって、電力変換装置1内の空気は対流している。
【0060】
(効果)
電動送風機12による電気機器13の受熱部となる第3熱交換器5への強制通風を、複数のブロック16a〜16cまで送風することで、空気の対流が発生し、電力変換装置1内の温度を所定値内に抑えられ、信頼性向上及び長寿命化が図れる。
【0061】
尚、図中の筐体仕切板16a〜16bは2個、ブロック13a〜13cは3個示したが、1個でも複数個でも本実施形態の効果は変わらないため、仕切板2個、ブロック3個の場合の図にて説明する。
【0062】
応用例として、図14のようにダクト14を筐体11内の中央に設置し、左右方向に並列なブロックだけでなく、上下方向に並列なブロックも同様に冷却が可能である。図14においても第7の実施形態の発明の効果は変わらない。
【0063】
上記で説明された全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。そのため、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1(a〜b)… 電力変換装置
2(a〜l)… 半導体素子
3(a〜f)… 冷却体
4(a〜f)… 冷却体内流路
5(a〜c)… 受熱部となる熱交換器
6(a〜c)… 熱交換器内流路
7(a〜d)… 配管
8(a〜d)… 冷却液入口
9(a〜d)… 冷却液出口
10(a〜e)… ポンプ
11(a〜b)… 筐体
12(a〜e)… 電動送風機
13(a〜b)… 電気部品
14… ダクト
50… 機器箱(電気機器を収納している箱)
51… 電気機器
52… 熱交換器
53… 電動送風機
54… 冷却液入口
55… 冷却液出口
56… 配管
100…冷却装置
101…入風口
102…風洞
103…電動送風機収納部
104…風洞
105…熱交換器収納部
106…風洞
107…排風口
111a
111b
200…車体
201…機器室(電車が走行に必要な電気装置を収納している車両)
300…架線
301…パンタグラフ
302…台車
303…モータ
304…レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の機関室内に設けられる電力変換装置及び冷却装置と、
前記電力変換装置内に設けられる電気部品、複数の半導体素子と、
前記電気部品と電動送風機の間に位置する第3熱交換器と、
前記複数の半導体素子が取り付けられる冷却体と、
前記冷却装置内に設けられる第1熱交換器と、
前記冷却装置内に設けられる前記第1熱交換器よりも小さい第2熱交換器と、
前記第3の熱交換器と前記第2熱交換器を接続する配管と、
前記冷却体と第1熱効交換器を接続する配管と、
を有する液冷式電力変換装置。
【請求項2】
前記鉄道車両に設けられる前記電力変換装置と、
前記電力変換装置内に設けられ開放部を有する筐体開放部と、
前記電力変換装置内に設けられ密閉されている筐体開放部と、
前記筐体開放部内に設置される冷却装置と、
前記筐体密閉部内で電動送風機と電気部品を間に位置する第3の熱交換器と、
前記筐体密閉部内で複数の半導体素子が取り付けられる冷却体と、
前記冷却装置内に設けられる第1熱交換器と、
前記冷却装置内に設けられる前記第1熱交換器よりも小さい第2熱交換器と、
前記第3の熱交換器と前記第2熱交換器を接続する配管と、
前記冷却体と第1熱効交換器を接続する配管と、
を有する液冷式電力変換装置。
【請求項3】
鉄道車両の前記機器室内または前記筐体密閉部に設けられる複数の電力変換装置及び冷却装置と、
前記複数の電力変換装置内のそれぞれに設けられる電気部品と、
前記電気部品と並列かつ、前記電気部品と電動送風機の間に設けられる熱交換器と、
前記冷却装置内に設けられる熱交換器と、
前記複数の電力変換装置内に設けられる熱交換器と前記冷却装置内に設けられる熱交換器は配管を介して接続している前記請求項1乃至2記載の液冷式電力変換装置。
【請求項4】
前記冷夏装置内の熱交換器は、冷却装置内を分割するように並列して配置されている請求項3記載の液冷式電力変換装置。
【請求項5】
前記熱交換器に対して前記電動送風機と反対側に設けられるダクトと、
前記ダクトの吹出口付近に電気部品を配置する請求項1乃至4のいずれか1項記載の液冷式電力変換装置。
【請求項6】
鉄道車両の機関室内に設けられる電力変換装置及び冷却装置と、
前記電力変換装置内を仕切る仕切り板と、
前記電力変換装置内に設けられる電気部品と、
前記電気部品と電動送風機の間に位置する第3熱交換器と、
前記複数の半導体素子が取り付けられる冷却体と、
前記冷却装置内に設けられる第2熱交換器と、
を有する液冷式電力変換装置。
【請求項7】
前記電動送風機は、前記電力変換装置内で上部に設置され、前記電力変換装置の下側に熱交換器が設置され、前記熱交換器の下側に電気部品が配置する請求項1乃至4のいずれか1項記載の液冷式電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−71482(P2013−71482A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209994(P2011−209994)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】