説明

液剤塗布装置

【課題】 液剤の厚みを均一にして線状塗布を遂行可能な液剤塗布装置を得る。
【解決手段】 液剤21を対象部位に塗布するための液剤塗布装置11であって、開口部38に液剤21が線状に臨む液溜まり部37と、前記液溜まり部37に液剤21を供給する液剤供給部33,35と、前記液溜まり部37を前記対象部位に位置させると共に、該液溜まり部37の線状液剤21を前記開口部38から前記対象部位に接触させる塗布動作を行う塗布動作部17と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば接着剤や電子材料等の液剤を線状に塗布するための液剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば接着剤や電子材料等の液剤を塗布するために、複数個の吐出細孔から液剤を吐出する構成の液剤吐出用マルチノズルが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の液剤吐出用マルチノズルは、液剤が供給される液剤流入口と、液剤を吐出する複数の吐出細孔との間の流路内に、前記複数の吐出細孔の相対的な口径又は配置に応じて前記複数の吐出細孔のそれぞれから所望量の液剤を吐出させる吐出量調整手段を設けて構成される。
【0004】
上記特許文献1に記載の液剤吐出用マルチノズルによれば、複数個の吐出細孔から所望量の接着剤や電子材料等の液剤を吐出させることができる。
【0005】
しかしながら、従来のマルチノズルでは、個々のノズルは相互に独立しており、隣接するノズル間に所定の隙間が存在する。このため、従来のマルチノズルを用いて液剤の線状塗布を試みた場合、ノズル吐出口の対面部位では液剤が厚く塗布されるが、ノズル吐出口の非対面部位では液剤が塗布されない。要するに、従来のマルチノズルを用いた液剤の線状塗布では、点状の液剤塗布スポットの集合によって線状塗布を行っていた。従って、液剤の厚みを均一にして線状塗布を行うことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−25121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、従来のマルチノズルを用いた液の塗布では、液剤の厚みを均一にして線状塗布を行うことは困難であった点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液剤の厚みを均一にして線状塗布を遂行可能な液剤塗布装置を得ることを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る液剤塗布装置は、液剤を対象部位に塗布するための液剤塗布装置であって、開口部に液剤が線状に臨む液溜まり部と、前記液溜まり部に液剤を供給する液剤供給部と、前記液溜まり部を前記対象部位に位置させると共に、該液溜まり部の線状液剤を前記開口部から前記対象部位に接触させる塗布動作を行う塗布動作部と、を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液剤塗布装置によれば、開口部に液剤が線状に臨む液溜まり部と、前記液溜まり部に液剤を供給する液剤供給部と、前記液溜まり部を前記対象部位に位置させると共に、該液溜まり部の線状液剤を前記開口部から前記対象部位に接触させる塗布動作を行う塗布動作部と、を備えたので、液剤の厚みを均一にして線状塗布を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る液剤塗布装置の外観を表す正面図である。
【図2】実施例に係る液剤塗布装置の要部である線状塗布ヘッドの説明図であり、図2(A)は、線状塗布ヘッドの斜視図、図2(B)は、線状塗布ヘッドを下方から視た平面図である。
【図3】線状塗布ヘッドのうち液溜まり部に注目した説明図であり、図3(A)は、図2(B)のIIIA−IIIA線に沿う液溜まり部の矢視拡大断面図、図3(B)は、図2(B)のIIIB−IIIB線に沿う液溜まり部の矢視拡大断面図である。
【図4】液溜まり部に溜められた線状液剤の説明図であり、図4(A)は、図3(A)の液溜まり部に線状液剤が溜められた様子を示す説明図、図4(B)は、図3(B)の液溜まり部に線状液剤が溜められた様子を示す説明図である。
【図5】実施例に係る液剤塗布装置を用いてワークに線状塗布を行う工程を示す説明図であり、図5(A)は、ワークの対象部位上に線状塗布ヘッドが位置付けられた状態を示す説明図、図5(B)は、ワークの対象部位に線状塗布ヘッドが接触した状態を示す説明図である。
【図6】アクチュエータベースにおける線状塗布の対象部位を拡大して示す説明図であり、図6(A)は、アクチュエータベースの平面図、図6(B)は、図6(A)のVIB−VIB線に沿うアクチュエータベースの矢視断面図である。
【図7】図6に示す隙間部に液剤を充填するための、変形例に係る液剤塗布装置の要部である線状塗布ヘッドの説明図であり、図7(A)は、線状塗布ヘッドの斜視図、図7(B)は、線状塗布ヘッドを下方から視た平面図である。
【図8】他の変形例に係る液剤塗布装置の塗布ヘッドを示し、図8(A)は図2BのIIIA−IIIA線に沿う矢視拡大断面図、図8(B)は図2BのIIIB−IIIB線に沿う矢視拡大断面図である。
【図9】更に他の変形例に係る液剤塗布装置の塗布ヘッドを示し、図9(A)は図2BのIIIA−IIIA線に沿う矢視拡大断面図、図9(B)は図2BのIIIB−IIIB線に沿う矢視拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
液剤の厚みを均一にして線状塗布を遂行可能な液剤塗布装置を得るといった目的を、開口部に液剤が線状に臨む液溜まり部を対象部位に位置させると共に、該液溜まり部の線状液剤を前記開口部から対象部位に接触させる塗布動作を行う塗布動作部によって実現した。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例に係る液剤塗布装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
初めに、実施例に係る液剤塗布装置の概要について説明する。
[液剤塗布装置の概要]
図1は、本発明の実施例に係る液剤塗布装置の説明図である。
【0015】
実施例に係る液剤塗布装置11は、図1に示すように、XY軸アーム機構部13と、Z軸駆動機構部15と、接着剤塗布動作部17と、を備える。
【0016】
前記XY軸アーム機構部13は、不図示のX軸アーム、Y軸アーム、及びこれらXY軸アームの駆動モータを有する。前記駆動モータによって、前記Y軸アームを前記X軸アームに沿って往復移動させると共に、前記Z軸駆動機構部15を前記Y軸アームに沿って往復移動させることができる。
【0017】
上述のように構成されたXY軸アーム機構部13では、制御部25からの駆動制御信号が与えられると、前記駆動モータが駆動して前記XY軸アーム機構部13が動作する。これによって、前記接着剤塗布動作部17は、XY軸方向の指令位置まで移動するように動作する。
【0018】
前記Z軸駆動機構部15は、図1に示すように、前記XY軸アーム機構部13の側から、基部15a、ロッド15b、中間支持部15c、ロッド15d、及び係止部15eを順次設けてなる。
【0019】
前記基部15aは、前記XY軸アーム機構部13に対して往復移動可能に支持されている。この基部15aには、前記ロッド15bをZ軸方向に往復移動させる不図示のZ軸駆動モータが設けられている。
【0020】
前記ロッド15bは、前記Z軸駆動モータの駆動動作を、前記中間支持部15c及びロッド15dに伝達する役割を果たす。
【0021】
上述のように構成されたZ軸駆動機構部15では、前記駆動制御部25からの駆動制御信号が与えられると、前記Z軸駆動モータが駆動して前記Z軸駆動機構部15が動作する。これによって、前記接着剤塗布動作部17は、Z軸方向の指令位置まで移動するように動作する。
【0022】
前記接着剤塗布動作部17は、図1に示すように、略円筒形状のシリンジ17aと、同シリンジ17aの上端側に設けた蓋部17bと、チューブ17cと、同シリンジ17aの下端側に着脱自在に設けた線状塗布ヘッド19と、を備えて構成されている。この接着剤塗布動作部17は、前記ロッド15dを介して、このロッド15dの先端側に設けた前記係止部15eによって垂直(Z軸)方向に係止固定されている。
【0023】
前記シリンジ17aには、対象部位に線状塗布される液剤として、例えば接着剤21が収容されている。この接着剤21は、ディスペンサ23から前記シリンジ17a内に送り込まれた圧縮空気によって、後に詳述するように、前記線状塗布ヘッド19の下端側から線状に塗布されるようになっている。前記接着剤21としては、例えば、熱硬化性、紫外線硬化性、若しくは嫌気硬化性のもの、又は導電性若しくは非導電性のもの等を好適に採用することができる。
【0024】
前記蓋部17cには、前記シリンジ17a内に圧縮空気を送り込むためのチューブ17dが設けられている。このチューブ17dの他側には、前記ディスペンサ23が接続されている。このディスペンサ23は、前記駆動制御部25に接続されており、同駆動制御部25からの駆動制御信号が与えられると、前記シリンジ17a内に圧縮空気が送り込まれる。これによって、前記接着剤塗布動作部17は、ディスペンサ23から前記シリンジ17a内に送り込まれた圧縮空気によって、前記線状塗布ヘッド19から接着剤21を線状塗布するように動作する。
【0025】
次に、実施例に係る液剤塗布装置の要部である線状塗布ヘッドの構成について説明する。
[線状塗布ヘッドの構成]
図2は、実施例に係る液剤塗布装置の要部である線状塗布ヘッドの説明図であり、図2(A)は、線状塗布ヘッドの斜視図、図2(B)は、線状塗布ヘッドを下方から視た平面図、図3は、線状塗布ヘッドのうち液溜まり部に注目した説明図であり、図3(A)は、図2(B)のIIIA−IIIA線に沿う液溜まり部の矢視拡大断面図、図3(B)は、図2(B)のIIIB−IIIB線に沿う液溜まり部の矢視拡大断面図、図4は、液溜まり部に溜められた線状液剤の説明図であり、図4(A)は、図3(A)の液溜まり部に線状液剤が溜められた様子を示す説明図、図4(B)は、図3(B)の液溜まり部に線状液剤が溜められた様子を示す説明図である。
【0026】
前記線状塗布ヘッド19は、接着剤21等の液剤を、対象部位に線状塗布する役割を果たす。
【0027】
前記線状塗布を的確に行うために、前記線状塗布ヘッド19は、図2(A)に示すように、箱状の筐体31と、貯液部33と、複数の液導部35と、液溜まり部37とを有して構成されている。
【0028】
前記筐体31は、例えば、ステンレス等の金属または合成樹脂等を素材としてなる。この筐体31は、所定幅の上側筐体部31aと、この上側筐体部31aよりも幅の狭い下側筐体部31bとの間を、一対の傾斜面31cを介して接続して形成されている。前記下側筐体部31bは、下方に向かってなだらかに幅狭となる一対の傾斜面31dを外方に有する。
【0029】
前記貯液部33は、前記筐体31の内部空間に形成されて前記接着剤21を一時的に貯める役割を果たす。
【0030】
前記複数の液導部35は、前記貯液部33から前記液溜まり部37に至るまで前記接着剤21を横並びで均等に導く役割を果たす。
【0031】
前記複数の液導部35は、図2(A)〜図3(B)に示すように、前記貯液部33から前記液溜まり部37に至る貫通孔35aを、前記下側筐体部31bの内部に並列状に複数形成してなる。前記複数の各液導部35は、円筒状に形成され、該円筒の内径R(例えば0.05〜0.15mm程度)及び軸高H1(例えば0.1〜0.5mm程度)は均等とされる。これにより、前記貯液部33から前記液溜まり部37に到達するまでに接着剤21が受ける流動抵抗を、前記複数の各液導部35相互間で均等に保つことができる。従って、前記複数の各液導部35を通過して前記液溜まり部37に至る接着剤21の吐出量を、前記複数の各液導部35相互間で均等に保つことができる。
【0032】
前記複数の各液導部35は、図2(B)に示すように、相互に均等な間隔L1(例えば0.2〜0.3mm程度)を置いて設けられている。前記複数の各液導部35間の間隔L1は、可能な限り小さいことが好ましい。前記液溜まり部37に形成される線状液剤の高さH2を長さ(L0)方向にわたって均等化するのに有利であることに基づく。
【0033】
前記貯液部33及び前記液導部35は、本発明の“液剤供給部”に相当する。
【0034】
各液導部35は、液溜まり部37に対する開口部の開口縁部に角部36が形成されている。角部36は、液導部35の内周面と後述する液溜まり部37の溝部37a上面との間で略直角に形成されている。
【0035】
前記液溜まり部37は、前記複数の各液導部35を通過してきた接着剤21が線状に溜められる部分である。
【0036】
前記液溜まり部37は、図2(A),(B)に示すように、接着剤21を塗布すべき対象部位側に開口部38を有する直方形状の溝部37aからなる。この液溜まり部37は、図3(A),(B)に拡大して示すように、接着剤21の液滴を線状に溜めるために適した幅W0(例えば1〜2mm程度)、高さH0(例えば0.3〜1mm程度)、及び長さL0(例えば1〜5mm程度)をそれぞれ有する。従って、前記液溜まり部37は、前記開口部38に液剤21が線状に臨む構成となっている。
【0037】
なお、前記液溜まり部37の幅W0、高さH0、及び長さL0の各寸法は、接着剤21の粘度、または対象部位への接着剤21の塗布量などの諸要素を勘案して適宜設定すればよい。
【0038】
液溜まり部37は、溝部37aの開口部38の開口縁部に角部40が形成されている。角部40は、溝部37aの内周面と下側筐体部31bの下面との間で略直角の角部となっている。
【0039】
上述のように構成された液溜まり部37では、線状に溜められた接着剤21に由来する分子間力及び表面張力が、重力に拮抗して作用する。これにより、前記液溜まり部37の溝部37aに溜められた線状液剤21は、図4(A),(B)に拡大して示すように、前記液溜まり部37の開口部38からドーム状に垂下した部分21aを生じる。前記ドーム状とは、前記線状液剤21の等張力点間を相互接続した面形状を意味する。このドーム状の垂下部分21aを対象部位に接触させることによって、前記線状液剤21を前記対象部位に線状塗布することができる。
【0040】
なお、前記液溜まり部37のうち前記溝部37aの周面及び前記開口部38の周辺部位には、撥液処理が施されているのが好ましい。このように構成すれば、前記液溜まり部37に溜められた液剤(接着剤)の液離れが良好となって、液剤の糸引き現象(この現象は、液剤が比較的低粘度の場合に生じがちである。)を抑止すると共に、塗布量の高精度化に寄与することができる。ただし、ワークとして次述するヘッドサスペンション41を採用する場合には、比較的高粘度の接着剤が使用される。この場合、接着剤の糸引き現象はほとんど生じない。
【0041】
また、前記液溜まり部37に溜められる液剤21を的確に保持するために、前記溝部37aに対し、格子状又は網目状の保持部材(不図示)を設けてもよい。このように構成すれば、前記液溜まり部37に溜められる液剤21を的確に保持することができる。
【0042】
前記筐体31の素材がステンレス等の金属製である場合、前記貯液部33、前記液導部35、及び前記液溜まり部37は、金属の切削加工及び微細孔加工等の処理を施すことで形成することができる。
【0043】
一方、前記筐体31の素材が合成樹脂製である場合、前記貯液部33、前記液導部35、及び前記液溜まり部37は、所定形状の型を用いたインサート成形等の処理を施すことで形成することができる。
【0044】
次に、本実施例に係る液剤塗布装置11の適用範囲について説明する。
[液剤塗布装置の適用例]
本実施例に係る液剤塗布装置11は、液剤を線状に塗布すべき対象部位を有する全てのワークに適用することができる。前記ワークの一例として、図5に示すように、ヘッドサスペンション41の半製品を例示することができる。
【0045】
図5は、実施例に係る液剤塗布装置を用いてワークに線状塗布を行う工程を示す説明図であり、図5(A)は、ワークの対象部位上に線状塗布ヘッドが位置付けられた状態を示す説明図、図5(B)は、ワークの対象部位に線状塗布ヘッドが接触した状態を示す説明図である。
【0046】
前記ヘッドサスペンション31は、図5(A),(B)に示すように、磁気ディスク装置(不図示)における情報の読み書きに用いられるもので、ベースプレート43と、ロードビーム45と、アクチュエータベース46となどを備えている。
【0047】
前記ベースプレート43は、前記アクチュエータベース46を介して、前記ロードビーム45を弾性支持する役割を果たす。このベースプレート43は、例えば、150〜200μm程度の板厚の、ステンレス鋼などの金属製薄板からなる。
【0048】
前記ロードビーム45は、その先端側に設けられる磁気ヘッドスライダ(不図示)に負荷荷重を与える役割を果たす。このロードビーム45は、例えば、50〜150μm程度の板厚の、ばね性を有するステンレス鋼などの金属製薄板からなる。
【0049】
前記アクチュエータベース46は、前記ベースプレート43と前記ロードビーム45との間に介在させて設けられ、電圧の印加状態に応じて圧縮変形する圧電素子47の取付部としての役割を果たす。このアクチュエータベース46は、前記ベースプレート43と一体に形成してもよい。
【0050】
前記ヘッドサスペンション41の半製品は、前記アクチュエータベース46に設けた開口部49と、この開口部49の下部から内方側にせり出して前記圧電素子47の下側電極面を受ける受け部49a(図6(B)参照)とを有する。
【0051】
次に、実施例に係る液剤塗布装置11の塗布動作について説明する。
【0052】
[液剤塗布装置の塗布動作]
前記開口部49に前記圧電素子47を実装するにあたり、次述する二段階の線状塗布工程を実行する。
【0053】
第1の線状塗布工程では、前記受け部49aに液剤、具体的には非導電性接着剤21bを線状に塗布する。その後、前記線状に塗布した非導電性接着剤21bを介在させて、前記受け部49aに前記圧電素子47を固着接合する(図6(B)参照)。
【0054】
第2の線状塗布工程では、前記開口部49における周縁部49bと、圧電素子47の周側面との間に生じた矩形枠形状の間隙部51内に、非導電性接着剤を線状に塗布することによって、前記間隙部51内に非導電性接着剤21bを充填する。これにより、前記充填された非導電性接着剤21bを介在させて、前記開口部39に圧電素子47を固着接合する。
【0055】
前述した二段階の線状塗布工程を実行するにあたり、まず、前記接着剤塗布動作部17の塗布動作によって、図5(A)に示すように、前記線状塗布ヘッド19を前記開口部39のうち対象部位に位置決め移動させる。
【0056】
次いで、前記接着剤塗布動作部17の塗布動作によって、図5(A),(B)に示すように、前記線状塗布ヘッド19を前記対象部位で下降移動させる。
【0057】
すると、図5(B)に示すように、前記液溜まり部37に溜められた線状液剤21のうち前記開口部38からの前記ドーム状の垂下部分21aが前記対象部位に接触する。これにより、前記線状液剤21を前記対象部位に線状塗布することができる。
【0058】
前記二段階の線状塗布工程を経て、前記ヘッドサスペンション41は製品となって、前記圧電素子37の変形に従ってロードビーム45の先端側をスウェイ方向に変位させる機能を獲得することができる。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施例に係る液剤塗布装置11では、開口部38に液剤21が線状に臨む液溜まり部37と、前記液溜まり部37に液剤21を供給する液剤供給部と、前記液溜まり部37を前記対象部位に位置させると共に、該液溜まり部37の線状液剤21を前記開口部38から前記対象部位に接触させる塗布動作を行う接着剤塗布動作部17と、を備える構成を採用した。
【0060】
また、前記液溜まり部37は、開口部38を対象部位側に有する溝部37aからなり、前記接着剤塗布動作部17は、前記溝部37aに溜められた線状液剤21のうち前記開口部38からの垂下部分21aを対象部位に接触させることによって前記線状液剤21を対象部位に塗布する構成を採用した。
【0061】
従って、実施例に係る液剤塗布装置11によれば、液剤の厚みを均一にして線状塗布を遂行することができる。
【0062】
さらに、液剤が貯められる貯液部33と、該貯液部33から前記液溜まり部37に至るまで液剤21を導く複数の液導部35とを含んでなる液剤供給部の構成を作用したので、線状塗布すべき液剤を液溜まり部まで的確に供給することができる。
【0063】
しかも、前記複数の液導部35は、円筒状に形成され、該円筒の内径R及び長さH1は均等にされた。また、前記複数の液導部35は、相互に均等な間隔をおいて設けられた。このため、前記液溜まり部37に形成される線状液剤の高さH2を、長さ(L0)方向にわたって均等にすることができる。
【0064】
従って、線状液剤の塗布動作をムラなく正確な量をもって遂行することができる。
【0065】
さらに、前記液溜まり部35は、撥液処理が施されたので、前記液溜まり部37に溜められた液剤(接着剤)の液離れが良好となって、液剤の糸引き現象を抑止すると共に、塗布量の高精度化に寄与することができる。
【0066】
[変形例に係る線状塗布ヘッドの構成]
前記第2の線状塗布工程では、液剤(非導電性接着剤)21を線状塗布すべき対象部位は、矩形枠形状である。こうした所定の形状を有する対象部位に、ムラなく適量の液剤を塗布する目的で、変形例に係る線状塗布ヘッドを好適に用いることができる。
【0067】
図6は、アクチュエータベースにおける線状塗布の対象部位を拡大して示す説明図であり、図6(A)は、アクチュエータベースの平面図、図6(B)は、図6(A)のVIB−VIB線に沿うアクチュエータベースの矢視断面図、図7は、図6(A),(B)に示す隙間部に液剤を充填するための、変形例に係る液剤塗布装置の要部である線状塗布ヘッドの説明図であり、図7(A)は、線状塗布ヘッドの斜視図、図7(B)は、線状塗布ヘッドを下方から視た平面図である。
【0068】
前記第1の線状塗布工程を実行後の前記アクチュエータベース46には、図6に示すように、開口部49における周縁部49bと、前記受け部49aに固着接合された圧電素子47の周側面との間に、矩形枠形状の間隙部51が生じる。なお、符号53は、前記アクチュエータベース46周りの剛性向上のために、同アクチュエータベース46の両側部にU字形状に突出形成された一対の可撓連結部である。
【0069】
実施例に係る液剤塗布装置11と、変形例に係る液剤塗布装置とは、基本的な構成要素が共通であるため、その重複した説明を省略して、両者の相違点に注目して説明を進めることにする。
【0070】
実施例と変形例との相違点は次の通りである。すなわち、実施例に係る液剤塗布装置11では、線状塗布ヘッド11は、直線状の液溜まり部37を有する構成である。
【0071】
これに対し、変形例に係る液剤塗布装置では、線状塗布ヘッド55は、前記矩形枠形状の間隙部51を埋める液剤(非導電性接着剤)21を一挙に塗布または充填するために、図7(A),(B)に示すように、当該矩形枠形状の間隙部51と同一形状に形成された液溜まり部57を有する構成を採用している。要するに、変形例に係る線状塗布ヘッド55は、液溜まり部57が有する形状の点で、実施例1に係る線状塗布ヘッド11とは大きく相違している。
【0072】
前記液溜まり部57は、前記間隙部51の矩形枠形状と同一形状の溝部57aを有する。この液溜まり部57の溝部57a内に液剤21が線状に溜められる。前記液溜まり部57では、線状に溜められた液剤(非導電性接着剤)21に由来する分子間力及び表面張力が、重力に拮抗して作用する。これにより、前記液溜まり部57の溝部57aに溜められた線状液剤21は、前記液溜まり部57の開口部58からドーム状に垂下した部分を生じる。このドーム状の垂下部分は、前記間隙部51の矩形枠形状と同一形状である。従って、このドーム状の垂下部分を前記間隙部51に接触させることによって、前記液剤21を前記間隙部51に線状塗布することができる。
【0073】
また、前記間隙部51内に前記液剤(非導電性接着剤)21を充填するには、前記液溜まり部57の開口部58を前記間隙部51内に、前記受け部49a上に塗布された液剤(非導電性接着剤)21bに接触するまで挿し込むようにすればよい。こうして前記線状塗布ヘッド55の開口部58を前記間隙部51内に挿し込んだ状態で、前記ディスペンサ23から前記シリンジ17a内に圧縮空気を送り込む。これによって、前記液剤(非導電性接着剤)21を前記間隙部51内に強制的に送り込みながら充填することができる。
【0074】
変形例に係る線状塗布ヘッド55を備えた液剤塗布装置によれば、前記液溜まり部57は、前記間隙部51が有する矩形枠形状と同一形状に形成されたので、矩形枠形状の間隙部51に対して液剤(非導電性接着剤)21を一挙に塗布又は充填することができる。
【0075】
なお、上述した変形例では、矩形枠形状の液溜まり部57を有する線状塗布ヘッド55を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明は、対象部位が有する形状と同一形状に形成された液溜まり部である限り、いかなる形状のものでも採用することができる。
【0076】
[他の変形例]
上記実施例の他の変形例に係る液剤塗布装置の塗布ヘッドについて図8(A)〜図9(B)を参照して説明する。
【0077】
図8(A)及び図8(B)は、図2の実施例の他の変形例に係る液剤塗布装置の塗布ヘッドを示し、図8(A)は図2(B)のIIIA−IIIA線に沿う矢視拡大断面図、図8(B)は図2(B)のIIIB−IIIB線に沿う矢視拡大断面図である。
【0078】
図9(A)及び図9(B)は、図2の実施例の更に他の変形例に係る液剤塗布装置の塗布ヘッドを示し、図9(A)は図2(B)のIIIA−IIIA線に沿う矢視拡大断面図、図9(B)は図2(B)のIIIB−IIIB線に沿う矢視拡大断面図である。
【0079】
なお、本変形例では、上記実施例1と基本構成が共通しているため、対応する構成部分に同符号又は同符号にA或いはBを付して詳細な説明を省略する。
【0080】
図8(A)〜図9(B)の変形例は、上記実施例及び変形例に対し、塗布ヘッドの液導部及び液溜まり部の開口縁部に液剤21をガイドするガイド面を形成したものである。
【0081】
図8(A)及び図8(B)の変形例では、各液導部35A及び液溜まり部37Aの開口縁部にガイド面であるテーパ面42及び44が形成されている。
【0082】
液導部35Aのテーパ面42は、液導部35Aの周面と液溜まり部37Aの溝部37Aa上面との間に形成され、開口縁部を液溜まり部37Aに向けて漸次拡径するように傾斜設定されている。
【0083】
液溜まり部37Aのテーパ面44は、溝部37Aaの周面と下側筐体部31Abの下面との間に設けられ、開口部38A側に向けて溝部37Aaの断面積を幅方向及び長さ方向の双方で漸次大きくするように傾斜設定されている。
【0084】
図9(A)及び図9(B)の変形例は、上記図8(A)及び図8(B)の変形例のテーパ面42及び44に代えて、各液導部35B及び液溜まり部37Bの開口縁部にガイド面である所定曲率の曲面48及び50を設けたものである。
【0085】
上記図8(A)〜図9(B)の変形例によれば、液導部35A及び35Bのテーパ面42及び曲面48により、液導部35A及び35Bから液溜まり部37A及び37Bへ液剤(接着剤)21をガイドすることができる。
【0086】
このため、変形例では、液剤21を液溜まり部37A及び37B全体へ行き渡らせて確実に線状に保持することができる。
【0087】
また、液溜まり部37A及び37Bのテーパ面44及び曲面50によって液剤21をガイドすることで、液溜まり部37A及び37Bに溜められた液剤21の液離れが良好となって、液剤の糸引き現象を抑止すると共に、塗布量の高精度化に寄与することができる。
【0088】
なお、テーパ面42及び44並びに曲面48及び50は、何れか一方のみを設けて他方を省略してもよい。また、複数の液導部35A及び35Bのいくつかについてのみテーパ面42及び曲面48を設けてもよい。また、一つ以上の液導部にテーパ面42を設け、残りに曲面48を設けてもよい。
【0089】
また、各液導部及び液溜まり部の何れか一方にテーパ面を設け、同他方に曲面を設けてもよい。
【0090】
また、図8(A)〜図9(B)の液導部及び液溜まり部の断面形状は、図7(A)の変形例にも適用することができる。
【0091】
[その他]
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは技術思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液剤塗布装置もまた、本発明における技術的範囲の射程に包含されるものである。
【0092】
すなわち、本発明実施例中、液剤の塗布対象としてヘッドサスペンション31の半製品を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明は、液剤を塗布する要請のあるあらゆる対象物に適用することができる。
【0093】
また、本発明実施例中、液剤として接着剤を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明は、液剤であるという条件を満たす限りにおいて、いかなる性質の液剤でも採用することができる。
【0094】
さらに、本発明実施例中、貯液部33から液溜まり部37に至るまで液剤21を導く複数の液導部35を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明は、隣り合う液導部同士が相互に連通する構成の複数の液導部35を採用してもよい。
【0095】
最後に、本発明実施例中、直線状または矩形枠線状の液溜まり部を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。本発明は、線状であるという条件を満たす限りにおいて、例えば曲線状またはつづら折り線状などの、いかなる形状を有する液溜まり部でも採用することができる。
【符号の説明】
【0096】
11 液剤塗布装置
17 接着剤塗布動作部(塗布動作部)
19 実施例に係る線状塗布ヘッド
21 接着剤(液剤)
33 貯液部(液剤供給部)
35 液導部(液剤供給部)
37 液溜まり部
37a 溝部
38 開口部
41 ヘッドサスペンションの半製品
55 変形例に係る線状塗布ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤を対象部位に塗布するための液剤塗布装置であって、
開口部に液剤が線状に臨む液溜まり部と、
前記液溜まり部に液剤を供給する液剤供給部と、
前記液溜まり部を前記対象部位に位置させると共に、該液溜まり部の線状液剤を前記開口部から前記対象部位に接触させる塗布動作を行う塗布動作部と、
を備えたことを特徴とする液剤塗布装置。
【請求項2】
請求項1記載の液剤塗布装置であって、
前記液溜まり部は、前記開口部を前記対象部位側に有する溝部からなり、
前記塗布動作部は、前記溝部に溜められた線状液剤のうち前記開口部からの垂下部分を前記対象部位に接触させることによって前記線状液剤を前記対象部位に塗布する、
ことを特徴とする液剤塗布装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液剤塗布装置であって、
前記液剤供給部は、液剤が貯められる貯液部と、該貯液部から前記液溜まり部に至るまで液剤を導く複数の液導部とを含んでなる、
ことを特徴とする液剤塗布装置。
【請求項4】
請求項3記載の液剤塗布装置であって、
前記複数の液導部は、円筒状に形成され、該円筒の内径及び長さは均等にされた、
ことを特徴とする液剤塗布装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の液剤塗布装置であって、
前記複数の液導部は、相互に均等な間隔をおいて設けられた、
ことを特徴とする液剤塗布装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液剤塗布装置であって、
前記液溜まり部は、撥液処理が施された、
ことを特徴とする液剤塗布装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の液剤塗布装置であって、
前記液溜まり部は、前記対象部位が有する形状と同一形状に形成された、
ことを特徴とする液剤塗布装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液剤塗布装置であって、
前記液溜まり部は、開口縁部に前記液剤をガイドするガイド面を備えた、
ことを特徴とする液剤塗布装置。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか一項に記載の液剤塗布装置であって、
前記液導部は、前記液溜まり部に対する開口縁部に前記液剤をガイドするガイド面を備えた、
ことを特徴とする液剤塗布装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載の液剤塗布装置であって、
前記液溜まり部又は液導部のガイド面は、テーパ面又は曲面である、
ことを特徴とする液剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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