説明

液化二酸化炭素の気化熱回収装置および気化熱回収方法

【課題】水またはブライン流体を直接冷却できるとともに、冷却装置内での凍結の問題を解消するために複雑な装置構成を必要としない、装置および方法を提供する。
【解決手段】液化二酸化炭素の気化熱を回収する気化熱回収装置であって、液化二酸化炭素を貯蔵する第1の貯蔵タンクと、第1の流路と、水またはブライン流体を貯蔵する第2の貯蔵タンクと、第2の流路と、ポンプと、熱交換器と、制御装置とを備え、該制御装置が、水またはブライン流体を熱交換器へ送り、熱交換器における液化二酸化炭素との熱交換を介して、水またはブライン流体が液化二酸化炭素の気化熱によって冷却されるように、ポンプの動作を制御し、熱交換器が、プレート式構造を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール、発泡酒、または炭酸飲料などの食品工場で使用される気体状の二酸化炭素を得るために液化二酸化炭素を気化させるときに生じる気化熱(冷熱)を回収する気化熱回収装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビール、発泡酒、または炭酸飲料などの製品を製造するために、気体状の二酸化炭素がプロセスガスとして使用されていた。二酸化炭素は、貯蔵タンク内に液化二酸化炭素の状態で貯蔵されていた。プロセスガスとして二酸化炭素を使用する際には、貯蔵タンクから液化二酸化炭素を取り出して気化し、気体状に変える気化工程が必要であった。この気化工程において、液化二酸化炭素を加熱するために、スチームまたは電力を用いる気化器(蒸発器)が使用されていた。
【0003】
一方、ビール、発泡酒、炭酸飲料などの製品の製造には、製品液または原料などを冷却する冷却工程が含まれていた。この冷却工程は、チルド水、あるいはプロピレングリコールまたはエチレングリコールなどを主成分とする冷却されたブライン流体を用いて、製品液または原料などを冷却することからなり、水またはブライン流体自体は、冷凍機を用いて冷却されていた。
【0004】
液化二酸化炭素を気化する気化工程と、製品液または原料などを冷却する冷却工程とは、別々に行われており、それぞれの工程にエネルギーが必要であった。
【0005】
無駄に消費されるエネルギーを減らしてエネルギー効率を高めるために、液化二酸化炭素を気化する気化工程で発生する気化熱(冷熱)を、冷却工程に有効利用することが提案されている。
【0006】
例えば、特開2005−133827号には、液化二酸化炭素の気化熱を中間媒体で熱回収した後、冷却工程に使用される冷却媒体の冷却に利用するシステムが開示されている。また、特開2001−194039号には、液化二酸化炭素の気化潜熱を冷水の製造に有効利用する装置が開示されている。
【0007】
ビール、発泡酒、または炭酸飲料などの食品工場において、通常使用されるブライン流体の凍結温度は、一般的に−10℃程度であり、また水の凍結温度は0℃である。それに対して、液化二酸化炭素の蒸発圧力を1.7MPaG〜2.0MPaGとすると、液化二酸化炭素の蒸発温度は、−23℃〜−17℃となる。このように、水またはブライン流体の凍結温度が、液化二酸化炭素の蒸発温度より高いために、液化二酸化炭素の気化熱を利用して水またはブライン流体を冷却する場合、冷却装置内で水またはブライン流体が凍結する問題があった。
【0008】
前述の特開2005−133827号に開示されるシステムは、ブライン流体が冷却装置内で凍結する問題を解消するために、液化二酸化炭素との熱交換によって凍結しない中間媒体を用いる構成を有するものである。すなわち、液化二酸化炭素の気化熱を利用してまず中間媒体を冷却し、その冷却された中間媒体を用いてブライン流体を冷却するシステムである。したがって、特開2005−133827号に開示されるシステムは、液化二酸化炭素と中間媒体との間の熱交換器と、中間媒体とブライン流体との間の熱交換器との2つの種類の熱交換器を必要とするものであり、装置構成が複雑になり装置コストが増大し、装置が大型化して設置場所の制約を受ける問題があった。
【0009】
また、特開2001−194039号に開示される装置では、冷水用水槽に設けられる冷水のレベルセンサおよび氷厚センサ、ならびに冷水送出管に設けられる冷水温度センサを必要とし、各センサからの出力信号に応じて装置の動作を制御するものである。したがって、特開2001−194039号に開示される装置も、装置構成が複雑になり装置コストが増大し、装置が大型化して設置場所の制約を受ける問題があった。
【特許文献1】特開2005−133827号公報
【特許文献2】特開2001−194039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
液化二酸化炭素を気化する気化工程で発生する気化熱(冷熱)を用いて水またはブライン流体を冷却する気化熱回収装置および方法であって、中間媒体を使用することなく水またはブライン流体を直接冷却できるとともに、冷却装置内で水またはブライン流体が凍結する問題を解消するために複雑な装置構成を必要としない、装置および方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、液化二酸化炭素の気化熱を回収する気化熱回収装置であって、液化二酸化炭素を貯蔵する第1の貯蔵タンクと、第1の貯蔵タンクに貯蔵された液化二酸化炭素を熱交換器を介して送るための第1の流路と、水またはブライン流体を貯蔵する第2の貯蔵タンクと、第2の貯蔵タンクに貯蔵された水またはブライン流体を熱交換器を介して送るための第2の流路と、第2の流路を通して水またはブライン流体を送るためのポンプと、液化二酸化炭素と水またはブライン流体との熱交換を行う熱交換器と、ポンプに接続される制御装置とを備え、制御装置が、第2の貯蔵タンクに貯蔵された水またはブライン流体を、第2の流路を通してポンプによって熱交換器へ送り、熱交換器における液化二酸化炭素との熱交換を介して、水またはブライン流体が液化二酸化炭素の気化熱によって冷却されるように、ポンプの動作を制御し、
熱交換器が、プレート式構造を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、熱交換器が、プレート式構造に代えて、二重管構造またはシェルチューブ式構造のいずれかの構造を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、熱交換器内の液化二酸化炭素の流れ方向と水またはブライン流体の流れ方向とが、向流、対向流、または直交流のいずれかであることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、熱交換器内の液化二酸化炭素の流れ方向と水またはブライン流体の流れ方向とが、並流と向流とを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、第2の流路の熱交換器への入口近傍に設けられ、水またはブライン流体の温度または流速を検知して、検知した水またはブライン流体の温度または流速に対応する検知信号を出力するセンサと、第1の流路に設けられ、液化二酸化炭素を第1の流路に沿って熱交換器へ流す第1の方向と、液化二酸化炭素を熱交換器を通らないバイパス流路へ流す第2の方向とのいずれかの方向に、液化二酸化炭素を流す方向を切り替える第1の切り替え装置とをさらに備え、制御装置が、センサおよび第1の切り替え装置にさらに接続され、かつセンサからの検知信号を受け、
センサからの検知信号が、所定温度以上の水またはブライン流体の温度、または所定流速以上の水またはブライン流体の流速を示すときには、制御装置は、液化二酸化炭素を第1の方向に流すように第1の切り替え装置を制御し、センサからの検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときには、制御装置は、液化二酸化炭素を第2の方向に流すように第1の切り替え装置を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、第2の流路の熱交換器への入口近傍に設けられ、水またはブライン流体の温度または流速を検知して、検知した水またはブライン流体の温度または流速に対応する検知信号を出力するセンサと、ポンプと熱交換器との間の第2の流路に設けられ、熱交換器内の水またはブライン流体の流れる方向を、熱交換器の入口から出口へ向かう第3の方向と、熱交換器の出口から入口へ向かう第4の方向とのいずれかの方向に切り替える第2の切り替え装置とをさらに備え、制御装置が、センサおよび第2の切り替え装置に接続され、かつセンサからの検知信号を受け、
センサからの検知信号が、所定温度以上の水またはブライン流体の温度、または所定流速以上の水またはブライン流体の流速を示すときには、制御装置は、水またはブライン流体が熱交換器内で第3の方向に流れるように第2の切り替え装置を制御し、センサからの検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときには、制御装置は、水またはブライン流体が熱交換器内で第4の方向に流れるように第2の切り替え装置を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る発明によれば、液化二酸化炭素の蒸発温度が、−50℃から−10℃の範囲にあり、熱交換器内の水またはブライン流体の流速が、0.5m/s以上であることを特徴とする。
【0018】
請求項8に係る発明によれば、液化二酸化炭素の気化熱を回収する気化熱回収方法であって、液化二酸化炭素を貯蔵する第1の貯蔵タンクから液化二酸化炭素を熱交換器へ送るステップと、水またはブライン流体を貯蔵する第2の貯蔵タンクから水またはブライン流体を熱交換器へ送るステップと、熱交換器において、水またはブライン流体を、液化二酸化炭素との熱交換を介して液化二酸化炭素の気化熱によって冷却するステップとを含み、
熱交換器が、プレート式構造を有することを特徴とする。
【0019】
請求項9に係る発明によれば、熱交換器が、プレート式構造に代えて、二重管構造またはシェルチューブ式構造のいずれかの構造を有することを特徴とする。
【0020】
請求項10に係る発明によれば、熱交換器内の液化二酸化炭素の流れ方向と水またはブライン流体の流れ方向とが、向流、対向流、または直交流のいずれかであることを特徴とする。
【0021】
請求項11に係る発明によれば、熱交換器内の液化二酸化炭素の流れ方向と水またはブライン流体の流れ方向とが、並流と向流とを含むことを特徴とする。
【0022】
請求項12に係る発明によれば、気化熱回収方法がさらに、
熱交換器への水またはブライン流体の流路の入口近傍に設けられたセンサを用いて検知された水またはブライン流体の温度または流速に対応する検知信号を出力するステップと、
検知信号が、所定温度以上の水またはブライン流体の温度、または所定流速以上の水またはブライン流体の流速を示すときには、液化二酸化炭素を熱交換器へ向かう流路へ流し、一方、検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときには、液化二酸化炭素を、熱交換器を通らないバイパス流路へ流すステップとを含むことを特徴とする。
【0023】
請求項13に係る発明によれば、気化熱回収方法がさらに、
熱交換器への水またはブライン流体の流路の入口近傍に設けられたセンサを用いて検知された水またはブライン流体の温度または流速に対応する検知信号を出力するステップと、
検知信号が、所定温度以上の水またはブライン流体の温度、または所定流速以上の水またはブライン流体の流速を示すときには、水またはブライン流体を熱交換器の入口から出口へ向かう方向に流し、一方、検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときには、水またはブライン流体を熱交換器の出口から入口へ向かう方向に流すステップとを含むことを特徴とする。
【0024】
請求項14に係る発明によれば、液化二酸化炭素の蒸発温度が、−50℃から−10℃の範囲にあり、熱交換器内の水またはブライン流体の流速が、0.5m/s以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る発明によって、液化二酸化炭素の気化熱を回収するための熱交換器に、単純な構造を有するプレート式構造の熱交換器を用いることで、複雑な装置構成を必要とせず、そのため、装置構成が複雑になり装置コストが増大し、装置が大型化して設置場所の制約を受けるという課題を解決することができる。
【0026】
請求項2に係る発明によって、プレート式構造と同様に単純な構造を有する二重管構造またはシェルチューブ式構造のいずれかの熱交換器を用いることで、複雑な装置構成を必要とせず、そのため、装置構成が複雑になり装置コストが増大し、装置が大型化して設置場所の制約を受けるという課題を解決することができる。
【0027】
請求項3に係る発明によって、熱交換器内の水またはブライン流体の流速を速めて、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結の発生をより抑制するという課題を解決することができる。
【0028】
請求項4に係る発明によって、熱交換器内の水またはブライン流体の流速を速めて、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結の発生をより抑制するという課題を解決することができる。
【0029】
請求項5に係る発明によって、センサからの検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときに、すなわち、センサによって熱交換器内での水またはブライン流体の凍結開始の可能性があることが示されるときに、液化二酸化炭素をバイパス流路へ流すことで熱交換器への液化二酸化炭素の供給を中断して、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結を防止するという課題を解決することができる。
【0030】
請求項6に係る発明によって、センサからの検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときに、すなわち、センサによって熱交換器内での水またはブライン流体の凍結開始の可能性があることが示されるときに、水またはブライン流体の熱交換器内の流れ方向を反転し、水またはブライン流体が凍結する可能性が高い熱交換器の出口に、液化二酸化炭素との熱交換によって冷却される前の水またはブライン流体を供給して加熱することによって、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結を防止するという課題を解決することができる。
【0031】
請求項7に係る発明によって、液化二酸化炭素の蒸発温度が、水またはブライン流体の凍結温度より低い場合でも、熱交換器内の水またはブライン流体の流速を速くすることによって、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結の発生をより抑制するという課題を解決することができる。
【0032】
請求項8に係る発明によって、液化二酸化炭素の気化熱を回収するための熱交換器に、単純な構造を有するプレート式構造の熱交換器を用いることで、複雑な装置構成を必要とせず、そのため、装置構成が複雑になり装置コストが増大し、装置が大型化して設置場所の制約を受けるという課題を解決することができる。
【0033】
請求項9に係る発明によって、プレート式構造と同様に単純な構造を有する二重管構造またはシェルチューブ式構造のいずれかの熱交換器を用いることで、複雑な装置構成を必要とせず、そのため、装置構成が複雑になり装置コストが増大し、装置が大型化して設置場所の制約を受けるという課題を解決することができる。
【0034】
請求項10に係る発明によって、熱交換器内の水またはブライン流体の流速を速めて、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結の発生をより抑制するという課題を解決することができる。
【0035】
請求項11に係る発明によって、熱交換器内の水またはブライン流体の流速を速めて、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結の発生をより抑制するという課題を解決することができる。
【0036】
請求項12に係る発明によって、検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときに、すなわち、センサによって熱交換器内での水またはブライン流体の凍結開始の可能性があることが示されるときに、液化二酸化炭素をバイパス流路へ流すことで熱交換器への液化二酸化炭素の供給を中断して、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結を防止するという課題を解決することができる。
【0037】
請求項13に係る発明によって、センサからの検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときに、すなわち、センサによって熱交換器内での水またはブライン流体の凍結開始の可能性があることが示されるときに、水またはブライン流体の熱交換器における流れ方向を反転し、水またはブライン流体が凍結する可能性が高い熱交換器の出口に、液化二酸化炭素との熱交換によって冷却される前の水またはブライン流体を供給して加熱することによって、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結を防止するという課題を解決することができる。
【0038】
請求項14に係る発明によって、液化二酸化炭素の蒸発温度が、水またはブライン流体の凍結温度より低い場合でも、熱交換器内の水またはブライン流体の流速を速くすることによって、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結の発生をより抑制するという課題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1に、本願発明の液化二酸化炭素の気化熱回収装置1の一例を示す。
【0040】
気化熱回収装置1は、第1の熱交換器10を備え、第1の熱交換器10で、液化二酸化炭素と水またはブライン流体との熱交換を行い、液化二酸化炭素の気化熱により水またはブライン流体を冷却する。第1の熱交換器10は、好ましくは、プレート式構造を有する熱交換器であるが、二重管構造を有する熱交換器あるいはシェルチューブ式構造を有する熱交換器であってもよい。二重管構造の場合には、一方の管に液化二酸化炭素を流し、他方の管に水またはブライン流体を流す。シェルチューブ式構造の場合には、例えば、チューブ側に液化二酸化炭素を流し、シェル側に水またはブライン流体を流す。
【0041】
本発明による気化熱回収装置1の実施形態の一例では、液化二酸化炭素は、1.7MPaG〜2.0MPaGの蒸発圧力を有し、液化二酸化炭素の蒸発温度は、−23℃〜−17℃である。水またはブライン流体は、チルド水、あるいはプロピレングリコールまたはエチレングリコールなどを主成分とするものであって、例えば、凍結温度−9.6℃のエチレングリコール系ブラインである。このように、水またはブライン流体の凍結温度は、液化二酸化炭素の蒸発温度より高く、水またはブライン流体は、第1の熱交換器10内で凍結する可能性がある。
【0042】
図2に、プレート式構造を有する第1の熱交換器10にエチレングリコール系のブライン流体を20NL/分および15NL/分の流量で流したときの、液化二酸化炭素の流量(NL/分)に対する冷熱回収効率の測定値を示す。ここで、冷熱回収効率は、ブライン流体が冷却された熱量を、液化二酸化炭素の潜熱及び顕熱量で割った値とする。図2に示される測定値から分かるように、ブライン流体の流量が20NL/分の場合には、冷熱回収効率が90%以上となり、高効率で冷熱を回収できる。一方、ブライン流体の流量が小さい場合には、冷熱回収効率は悪くなる。このように、プレート式構造を有する熱交換器10を用いる場合には、ブライン流体の流量が大きいことが冷熱回収効率の観点から好ましい。
【0043】
図3に、凍結温度−9.6℃のエチレングリコール系のブライン流体を用いて、そのブライン流体の流速を変えたときの、凍結開始温度およびブライン流体の温度差の測定結果を示す。ここで、凍結開始温度とは、第1の熱交換器10内でブライン流体が凍結を開始する場合の、第1の熱交換器10へ入るブライン流体の温度である。また、ブライン流体の温度差とは、第1の熱交換器10へ入るときのブライン流体の温度と第1の熱交換器10を出るときのブライン流体の温度との差である。なお、ブライン流体の流速は、プレート式熱交換器10の最大流間の断面積より推算した。また、熱交換器10内でのブライン流体の凍結開始温度は、熱交換器10を流れるブライン流体の流量が低下し始める温度により求めた。図3に示される測定において、液化二酸化炭素の流量は、336NL/分であり、その蒸発圧力は2.0MPaGであった。
【0044】
例えば、ブライン流体の流速が2m/秒であれば、第1の熱交換器10へ入るときのブライン流体の温度が、約−1.5℃以下の場合に第1の熱交換器10内でのブライン流体の凍結が生じ、その際のブライン流体の温度差は約2℃である。第1の熱交換器10内に偏流が存在すると、その場所で凍結が開始するため、第1の熱交換器10へ入るときのブライン流体の温度が約−1.5℃であって、第1の熱交換器10内で約2℃温度が低下されて、第1の熱交換器10を出るときに−3.5℃になる条件であっても、第1の熱交換器10内でのブライン流体の凍結が生じことになる。一方、ブライン流体の流速が1m/秒のときは、第1の熱交換器10へ入るときのブライン流体の温度が、約2℃から第1の熱交換器10内での凍結が生じ、その際のブライン流体の温度差は約4℃である。すなわち、第1の熱交換器10を出るときに−2.0℃になる条件であっても、第1の熱交換器10内でのブライン流体の凍結が生じことになる。このように、プレート式構造を有する熱交換器10内のブライン流体の流速が速いほど、熱交換器10内でのブライン流体の凍結は生じ難いことが示されている。
【0045】
図4に、凍結温度−9.6℃のエチレングリコール系ブライン流体を用いて、そのブライン流体の流速を変えたときに、第1の熱交換器10内でのブライン流体の凍結開始から、ブライン流体が完全に凍結しプレートを閉塞するまでの時間の測定結果を示す。図3の場合と同様に、液化二酸化炭素の流量は、336NL/分であり、その蒸発圧力は2.0MPaGであった。
【0046】
例えば、ブライン流体の流速が2m/秒であれば、第1の熱交換器10において、ブライン流体の凍結開始が検知されてから約15分後に、ブライン流体が完全に凍結しプレートを閉塞するので、この15分間に適切な処置を行うことによってブライン流体が完全に凍結することを防止することができる。ブライン流体の流速が遅くなると、ブライン流体が完全に凍結までの時間は短くなるので、熱交換器10内でのブライン流体の凍結防止処置を確実に行う観点からも、ブライン流体の流速が速いことが望ましく、0.5m/s以上であることが必要である。
【0047】
さて、図1に戻って、本発明の液化二酸化炭素の気化熱回収装置1の構成について詳しく説明する。
【0048】
気化熱回収装置1は、以下の構成要素を備える。
【0049】
制御装置100が設けられるが、気化熱回収装置1の各構成要素との接続線は、図1には示されていない。制御装置100は、水またはブライン流体の流速センサ32および温度センサ31からの出力信号を受けるとともに、水またはブライン流体の製造工程への供給、ならびに第1の熱交換器10内での水またはブライン流体の凍結防止のために必要な動作を行うために、ポンプ21および弁41〜45の動作を制御する。
【0050】
液化二酸化炭素の貯蔵タンク2は、第1の流路L1を介して第1の熱交換器10に接続される。第1の流路L1には、第1の弁41が設けられる。さらに、液化二酸化炭素の貯蔵タンク2と第1の弁41との間の第1の流路L1から、第1の熱交換器10を通ることなく第2の熱交換器11へ液化二酸化炭素を送るバイパス流路である第4の流路L4が設けられる。第4の流路L4には、第3の弁43が設けられる。通常動作のときは、第3の弁43を閉鎖し且つ第1の弁41を解放して、貯蔵タンク2からの液化二酸化炭素は、第1の流路L1を通って第1の熱交換器10へ送出される。一方、第1の熱交換器10内でのブライン流体の凍結防止動作のときには、第3の弁43を解放し且つ第1の弁41を閉鎖して、貯蔵タンク2からの液化二酸化炭素は、第1の熱交換器10へ送出されず、バイパス流路である第4の流路L4を通って第2の熱交換器11へ送出される。
【0051】
液化二酸化炭素の貯蔵タンク2内には、図1に示されるように、液相とガス相の二酸化炭素が存在する。貯蔵タンク2内のガス相の二酸化炭素によって、液相の二酸化炭素は気液平衡状態で貯蔵されている。第2の熱交換器11の下流側にあるプロセス側での気体状の二酸化炭素の消費に応じる流量で、液化二酸化炭素は、貯蔵タンク2から送出される。第2の熱交換器11とプロセス側との間に第6の弁46が設けられている。また、液化二酸化炭素の貯蔵タンク2の上部には、第5の流路L5が設けられ、貯蔵タンク2の上部に存在するガス相の二酸化炭素を第4の弁44を介して、第1の流路L1へ送出することができる。この貯蔵タンク2からの気体状の二酸化炭素を第1の熱交換器10へ供給することについては、後述する。
【0052】
図1に示される実施形態では、第1の熱交換器10は、プレート式構造を有する熱交換器であり、図1に示される例では、矢印A1で示される方向、すなわち図面において下から上に液化二酸化炭素が流れる。一方、水またはブライン流体は、矢印A2で示されるように液化二酸化炭素の流れ方向とは反対方向、すなわち図面において下から下に流れる。この流れ方向の概念図が、図5に示される。このように、第1の熱交換器10内での液化二酸化炭素の流れと水またはブライン流体の流れとを、向流または対向流に構成することが、熱交換の効率の観点から好ましく、また水またはブライン流体の流れの流速が速くなり、水またはブライン流体の凍結防止の観点でも好ましい。なお、図6の概念図に示されるように、第1の熱交換器10内での液化二酸化炭素の流れと水またはブライン流体の流れとを、直交流に構成してもよい。さらに、図7の概念図に示されるように、第1の熱交換器10内での水またはブライン流体の流路を何段かの経路に分けて、液化二酸化炭素の流れと水またはブライン流体の流れとを、一部に並流を含む複数の向流または対向流に構成することもでき、その場合には、水またはブライン流体の流速が速くなり第1の熱交換器10内での水またはブライン流体の凍結防止の観点で好ましい。
【0053】
第1の熱交換器10内で液化二酸化炭素は、水またはブライン流体との熱交換によって加熱され、一部が気化されるか、あるいは全てが気化される。第1の熱交換器10から出る液体状態を一部含み得る二酸化炭素は、液化二酸化炭素の第2の熱交換器11へ向かう第3の流路L3へ向かう。第3の流路L3には第2の弁42が設けられ、第4の流路L4へ向かう第5の流路L5には第5の弁45が設けられる。通常動作のときは、第5の弁45を閉鎖し且つ第2の弁42を解放して、第1の熱交換器10からの二酸化炭素を第2の熱交換器11へ送出する。一方、第1の熱交換器10内での水またはブライン流体の凍結を防止する動作のときには、第5の弁45および第2の弁42を閉鎖して、また第4の弁を解放し、貯蔵タンク2からの気体状の二酸化炭素を第1の熱交換器10内に張る。
【0054】
第1の熱交換器10から送出された一部に気体状の二酸化炭素を含む液化二酸化炭素は、第2の熱交換器11で加熱気化されて、完全な気体状の二酸化炭素のプロセスガスとして、第6の弁46を介して製造工程へ送られて使用される。
【0055】
第2の貯蔵タンク4は、水またはブライン流体を貯蔵する。第2の貯蔵タンク4は、ポンプ21に接続される。水またはブライン流体は、必要に応じてポンプ21によって第2の流路L2を通って、第1の熱交換器10に送出される。第1の熱交換器10の入口近傍に、水またはブライン流体の流速センサ32と温度センサ31とが設けられる。流速センサ32は、第1の熱交換器10を流れる水またはブライン流体の流速を検知し、検知信号を制御装置100に有線または無線で出力する。温度センサ31は、第1の熱交換器10の入口近傍の水またはブライン流体の温度を検知し、検知信号を制御装置100に有線または無線で出力する。水またはブライン流体は、第1の熱交換器10内で、液化二酸化炭素との熱交換によって冷却されて第2の貯蔵タンク4へ戻る。なお、図示されていない分岐流路を介して、冷却された水またはブライン流体は、製造工程における必要な冷却工程に送られて使用され、加熱されて第2の貯蔵タンク4へ戻る。
【0056】
制御装置100は、温度センサ31によって検知される水またはブライン流体の温度が、所定温度以上の場合には通常の動作を行い、所定温度未満の場合には、凍結防止のためのバイパス動作を行い、あるいは、流速センサ32によって検知される水またはブライン流体の流速が所定流速以上の場合には通常の動作を行い、所定流速未満の場合には、凍結防止のためのバイパス動作を行う。例えば、図3に示されるように、水またはブライン流体の流速が2m/秒の場合には、所定温度は、−2℃の凍結開始温度に動作マージンを見込んだ値であり例えば0℃である。また例えば、所定流速は、水またはブライン流体の2m/秒の流速に対して動作マージンを見込んだ値であり、例えば1.8m/秒である。
【0057】
通常動作では、ポンプ21を運転し、第1の弁41を開放し、第3の弁43を閉鎖し、第2の弁42を開放し、第5の弁45を閉鎖し、第6の弁46を開放する。液化二酸化炭素は、第1の貯蔵タンク1から第1の流路L1を通って第1の熱交換器10に進み、第1の熱交換器10で水またはブライン流体と熱交換して、第1の熱交換器10を出て第3の流路L3を通って第2の熱交換器11へ進み、第2の熱交換器11で完全気化して、気体状の二酸化炭素になる。水またはブライン流体は、第2の貯蔵タンク4から第2の流路L2を通って第1の熱交換器10に進み、第1の熱交換器10で液化二酸化炭素と熱交換して冷却され、第1の熱交換器10を出て再び第2の貯蔵タンク4に戻る。
【0058】
一方、凍結防止のためのバイパス動作では、ポンプ21を運転し、第1の弁41を閉鎖し、第3の弁43を開放し、第4の弁44を開放し、第5の弁45を開放し、第2の弁42を閉鎖する。液化二酸化炭素は、第1の貯蔵タンク1から第4の流路L4を通って第2の熱交換器11へ進み、第2の熱交換器11で完全に気化して、気体状の二酸化炭素になる。貯蔵タンク2からの気体状の二酸化炭素は、第1の熱交換器10に進み、気体状の二酸化炭素および第1の熱交換器10に残っていた液化二酸化炭素は、第4の流路L4を通って第2の熱交換器11へ進む。その後、第4の弁44は閉鎖される。これは、第1の熱交換器10に液化二酸化炭素が残っている状態で第1の弁41が閉鎖されると、第1の熱交換器10内の液化二酸化炭素の蒸発圧力が低下して、液化二酸化炭素の蒸発温度がさらに低下することを防止するためである。水またはブライン流体は、第2の貯蔵タンク4から第2の流路L2を通って第1の熱交換器10を通過して第2の貯蔵タンク4に戻る。
【0059】
このような構成を有することによって、温度センサ31または流速センサ32によって第1の熱交換器10内での水またはブライン流体の凍結開始の可能性があることが示されるときには、第1の熱交換器10への液化二酸化炭素の供給を中断して、液化二酸化炭素をバイパス流路L4へ流し、第1の熱交換器10内での水またはブライン流体の凍結を防止することができる。
【0060】
図8に、本願発明の液化二酸化炭素の気化熱回収装置1の他の実施形態を示す。
【0061】
図1に示される例との差異は、第1の弁41、第2の弁42、第3の弁43、第4の弁44、第5の弁45が無く、代わりに、第7の弁47、第8の弁48、第9の弁49、第10の弁50、第11の弁51、および第12の弁52が設けられる。
【0062】
第1の熱交換器10には、図1に示される例と同様に、流速センサ32および温度センサ31が設けられる。
【0063】
制御装置100は、通常動作では以下を行う。ポンプ21を運転し、第7の弁47を開放し、第8の弁48を開放し、第9の弁49を開放し、第10の弁50を開放し、第11の弁51を閉鎖し、第12の弁52を閉鎖する。液化二酸化炭素は、第1の貯蔵タンク1から第1の熱交換器10に進み、第1の熱交換器10で水またはブライン流体と熱交換して、第1の熱交換器10を出て第2の熱交換器11へ進み、第2の熱交換器11で完全気化して、気体状の二酸化炭素になる。水またはブライン流体は、第2の貯蔵タンク4から第2の流路L2を通って第1の熱交換器10の流速センサ32および温度センサ31がその近傍に設けられる入口12へ進み、第1の熱交換器10で液化二酸化炭素と熱交換して冷却され、第1の熱交換器10を出口13から出て再び第2の貯蔵タンク4に戻る。
【0064】
一方、制御装置100は、凍結防止のための動作では以下を行う。ポンプ21を運転し、第7の弁47を閉鎖し、第8の弁48を開放し、第9の弁49を閉鎖し、第10の弁50を開放し、第11の弁51を開放し、第12の弁52を開放する。液化二酸化炭素は、第1の貯蔵タンク1から第1の熱交換器10に進み、第1の熱交換器10で水またはブライン流体と熱交換して、第1の熱交換器10を出て第2の熱交換器11へ進み、第2の熱交換器11で完全気化して、気体状の二酸化炭素になる。水またはブライン流体は、第2の貯蔵タンク4から第1の熱交換器10の出口13へ進み、出口13近傍を加熱した後、第1の熱交換器10で液化二酸化炭素と熱交換して冷却され、第1の熱交換器10を入口12から出て再び第2の貯蔵タンク4に戻る。
【0065】
このように、センサによって第1の熱交換器10内での水またはブライン流体の凍結開始の可能性があることが示されるときには、水またはブライン流体の第1の熱交換器10内の流れ方向を反転し、水またはブライン流体が凍結する可能性が高い第1の熱交換器10の出口13に、液化二酸化炭素との熱交換によって冷却される前の水またはブライン流体を供給して加熱することによって、熱交換器内での水またはブライン流体の凍結を防止する。
【0066】
なお、図8に示される本願発明の液化二酸化炭素の気化熱回収装置1において、第2の熱交換器11を使用しないことも可能である。
【0067】
記載された実施形態に示されるように、本発明は、液化二酸化炭素を気化する気化工程で発生する気化熱(冷熱)を用いて水またはブライン流体を冷却する気化熱回収装置および方法であって、中間媒体を使用することなく水またはブライン流体を直接冷却できるとともに、冷却装置内で水またはブライン流体が凍結する問題を解消するために複雑な装置構成を必要としない、装置および方法が提供できるものである。なお、本発明は、記載された具体的な実施形態に示される、液化二酸化炭素および水またはブライン流体の組成、蒸発温度、凍結温度、または流量、ならびに弁およびポンプの配置、センサの種類などに限定されず、様々な変更、または修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本願発明の液化二酸化炭素の気化熱回収装置の一例を示す構成図である。
【図2】二酸化炭素の流量に対する冷熱回収効率の測定値を示すグラフである。
【図3】凍結開始温度およびブライン流体の温度差の測定結果を示すグラフである。
【図4】ブライン流体の凍結開始からプレートを閉塞するまでの時間の測定結果を示すグラフである。
【図5】向流または対向流に構成された、液化二酸化炭素と水またはブライン流体の流れとを示す模式図である。
【図6】直交流に構成された、液化二酸化炭素と水またはブライン流体の流れとを示す模式図である。
【図7】一部に並流を含む複数の向流または対向流に構成された、液化二酸化炭素と水またはブライン流体の流れとを示す模式図である。
【図8】本願発明の液化二酸化炭素の気化熱回収装置の他の実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0069】
1 気化熱回収装置
2、3 貯蔵タンク
10、11 熱交換器
12 入口
13 出口
21 ポンプ
31 流速センサ
32 温度センサ
41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52 弁
100 制御装置
L1、L2、L3、L4、L5 流路
A1、A2 方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化二酸化炭素の気化熱を回収する気化熱回収装置(1)であって、
液化二酸化炭素を貯蔵する第1の貯蔵タンク(2)と、
第1の貯蔵タンク(2)に貯蔵された液化二酸化炭素を熱交換器(10)を介して送るための第1の流路(L1)と、
水またはブライン流体を貯蔵する第2の貯蔵タンク(4)と、
第2の貯蔵タンク(4)に貯蔵された水またはブライン流体を熱交換器(10)を介して送るための第2の流路(L2)と、
第2の流路(L2)を通して水またはブライン流体を送るためのポンプ(21)と、
液化二酸化炭素と水またはブライン流体との熱交換を行う熱交換器(10)と、
ポンプ(21)に接続される制御装置(100)とを備え、該制御装置(100)が、第2の貯蔵タンク(4)に貯蔵された水またはブライン流体を、第2の流路(L2)を通してポンプ(21)によって熱交換器(10)へ送り、熱交換器(10)における液化二酸化炭素との熱交換を介して、水またはブライン流体が液化二酸化炭素の気化熱によって冷却されるように、ポンプ(21)の動作を制御し、
熱交換器(10)が、プレート式構造を有することを特徴とする気化熱回収装置。
【請求項2】
熱交換器(10)が、プレート式構造に代えて、二重管構造またはシェルチューブ式構造のいずれかの構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の気化熱回収装置。
【請求項3】
熱交換器(10)内の液化二酸化炭素の流れ方向と水またはブライン流体の流れ方向とが、向流、対向流、または直交流のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の気化熱回収装置。
【請求項4】
熱交換器(10)内の液化二酸化炭素の流れ方向と水またはブライン流体の流れ方向とが、並流と向流とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の気化熱回収装置。
【請求項5】
第2の流路(L2)の熱交換器(10)への入口近傍に設けられ、水またはブライン流体の温度または流速を検知して、検知した水またはブライン流体の温度または流速に対応する検知信号を出力するセンサ(31、32)と、
第1の流路(L1)に設けられ、液化二酸化炭素を第1の流路(L1)に沿って熱交換器(10)へ流す第1の方向と、液化二酸化炭素を熱交換器(10)を通らないバイパス流路(L4)へ流す第2の方向とのいずれかの方向に、液化二酸化炭素を流す方向を切り替える第1の切り替え装置(41、43)とをさらに備え、
制御装置(100)が、センサ(31、32)および第1の切り替え装置(41、43)にさらに接続され、かつセンサ(31、32)からの検知信号を受け、
センサ(31、32)からの検知信号が、所定温度以上の水またはブライン流体の温度、または所定流速以上の水またはブライン流体の流速を示すときには、制御装置(100)は、液化二酸化炭素を第1の方向に流すように第1の切り替え装置(41、43)を制御し、センサ(31、32)からの検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときには、制御装置(100)は、液化二酸化炭素を第2の方向に流すように第1の切り替え装置(41、43)を制御することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の気化熱回収装置。
【請求項6】
第2の流路(L2)の熱交換器(10)への入口近傍に設けられ、水またはブライン流体の温度または流速を検知して、検知した水またはブライン流体の温度または流速に対応する検知信号を出力するセンサ(31、32)と、
ポンプ(21)と熱交換器(10)との間の第2の流路(L2)に設けられ、熱交換器(10)内の水またはブライン流体の流れる方向を、熱交換器(10)の入口(12)から出口(13)へ向かう第3の方向と、熱交換器(10)の出口(13)から入口(12)へ向かう第4の方向とのいずれかの方向に切り替える第2の切り替え装置(47、48、49、50、51、52)とをさらに備え、
制御装置(100)が、センサ(31、32)および第2の切り替え装置(47、48、49、50、51、52)に接続され、かつセンサ(31、32)からの検知信号を受け、
センサ(31、32)からの検知信号が、所定温度以上の水またはブライン流体の温度、または所定流速以上の水またはブライン流体の流速を示すときには、制御装置(100)は、水またはブライン流体が熱交換器(10)内で第3の方向に流れるように第2の切り替え装置(47、48、49、50、51、52)を制御し、センサ(31、32)からの検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときには、制御装置(100)は、水またはブライン流体が熱交換器(10)内で第4の方向に流れるように第2の切り替え装置(47、48、49、50、51、52)を制御することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の気化熱回収装置。
【請求項7】
液化二酸化炭素の蒸発温度が、−50℃から−10℃の範囲にあり、熱交換器(10)内の水またはブライン流体の流速が、0.5m/s以上であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の気化熱回収装置。
【請求項8】
液化二酸化炭素の気化熱を回収する気化熱回収方法であって、
液化二酸化炭素を貯蔵する第1の貯蔵タンク(2)から液化二酸化炭素を熱交換器(10)へ送るステップと、
水またはブライン流体を貯蔵する第2の貯蔵タンク(4)から水またはブライン流体を熱交換器(10)へ送るステップと、
熱交換器(10)において、水またはブライン流体を、液化二酸化炭素との熱交換を介して液化二酸化炭素の気化熱によって冷却するステップとを含み、
熱交換器(10)が、プレート式構造を有することを特徴とする気化熱回収方法。
【請求項9】
熱交換器(10)が、プレート式構造に代えて、二重管構造またはシェルチューブ式構造のいずれかの構造を有することを特徴とする、請求項8に記載の気化熱回収方法。
【請求項10】
熱交換器(10)内の液化二酸化炭素の流れ方向と水またはブライン流体の流れ方向とが、向流、対向流、または直交流のいずれかであることを特徴とする、請求項8に記載の気化熱回収方法。
【請求項11】
熱交換器(10)内の液化二酸化炭素の流れ方向と水またはブライン流体の流れ方向とが、並流と向流とを含むことを特徴とする、請求項8に記載の気化熱回収方法。
【請求項12】
気化熱回収方法がさらに、
熱交換器(10)への水またはブライン流体の流路(L2)の入口近傍に設けられたセンサ(31、32)を用いて検知された水またはブライン流体の温度または流速に対応する検知信号を出力するステップと、
検知信号が、所定温度以上の水またはブライン流体の温度、または所定流速以上の水またはブライン流体の流速を示すときには、液化二酸化炭素を熱交換器(10)へ向かう流路(L1)へ流し、一方、検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときには、液化二酸化炭素を、熱交換器(10)を通らないバイパス流路(L4)へ流すステップとを含むことを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の気化熱回収方法。
【請求項13】
気化熱回収方法がさらに、
熱交換器(10)への水またはブライン流体の流路(L2)の入口近傍に設けられたセンサ(31、32)を用いて検知された水またはブライン流体の温度または流速に対応する検知信号を出力するステップと、
検知信号が、所定温度以上の水またはブライン流体の温度、または所定流速以上の水またはブライン流体の流速を示すときには、水またはブライン流体を熱交換器(10)の入口(12)から出口(13)へ向かう方向に流し、一方、検知信号が、所定温度より低い水またはブライン流体の温度、または所定流速より遅い水またはブライン流体の流速を示すときには、水またはブライン流体を熱交換器(10)の出口(13)から入口(12)へ向かう方向に流すステップとを含むことを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の気化熱回収方法。
【請求項14】
液化二酸化炭素の蒸発温度が、−50℃から−10℃の範囲にあり、熱交換器(10)内の水またはブライン流体の流速が、0.5m/s以上であることを特徴とする、請求項8から13のいずれか一項に記載の気化熱回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−185959(P2009−185959A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28437(P2008−28437)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000187149)昭和炭酸株式会社 (60)
【Fターム(参考)】