説明

液噴射飛翔体

【課題】本発明は、運搬時には飛翔体自体を小さくすることができるとともに、圧縮空気の供給源等を必要とすることなく、短時間で飛翔させられるようにする。
【解決手段】本発明は、内圧を付与することにより一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な液充填部21と、この液充填部21に充填した液体Qを噴射するための噴射ノズル70とを設けたタンク20と、上記噴射ノズル70に対して着脱可能な封止栓30と、上記液充填部21に配設され、その液充填部21の内圧を付与するためのガスを発生するガス発生器50とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば災害救助時において、例えば要救助者に対して救助ロープを投射するために使用する液噴射飛翔体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液噴射飛翔体として、例えば引用文献1に開示された構成のものがある。
引用文献1に記載された液噴射飛翔体は災害時に使用され、要救助者に物資を輸送するための輸送ロープを要救助者側へ引き渡すためのものであり、その飛翔体には、輸送ロープの送出し機構が備えられており、前記送出し機構には、予め輸送ロープが所定長だけ巻き取られていて、飛翔体の飛翔に合わせて輸送ロープを送り出すようにしたものである。
【特許文献1】特開2003−210601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている液噴射飛翔体では、飛翔距離に応じて大きな容積となる推進室等が嵩張るとともに、圧縮気体の供給源としての自転車のタイヤ等に空気を充填する時等に用いられる空気入れ等を必要とするために、それらの運搬等が煩雑である。
【0004】
また、短時間で要救助者に対して救助ロープを投射しなければならないが、空気入れ等によって空気を供給する場合には、空気の供給作業に時間を要するために迅速な救助活動が難しい。
さらに、例えば空気入れ等に替えて、コンプレッサ等を使用する場合には、そのための電源をも必要となり、それらの運搬等がますます煩雑になる。
【0005】
そこで本発明は、運搬時には容積を小さくしてコンパクトにできるとともに、圧力を付与するための空気等の供給源等を必要とすることなく、容易に短時間で飛翔させられる液噴射飛翔体の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、内圧を付与することにより一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な液充填部と、この液充填部に充填した液体を噴射するための噴射ノズルとを設けたタンクと、その噴射ノズルに対して着脱可能な封止栓と、上記液充填部に配設され、その液充填部の内圧を付与するためのガスを発生するガス発生器とを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運搬時には容積を小さくしてコンパクトにできるとともに、圧力を付与するための空気等の供給源等を必要とすることなく、容易に短時間で飛翔させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る液噴射飛翔体を示すものであり、(A)は、その正断面図、(B)は、その側面図、図2(A)は、その液噴射飛翔体を軸線に沿って所謂蛇腹状に縮退させた様子を示す正面図、(B)は、その側面図である。
【0009】
本発明の一実施形態に係る液噴射飛翔体Aは、図1に示すように、外殻体10、タンク20、封止栓30、第一のガス発生器40,40、第二のガス発生器50及び四枚の安定翼60…を有している。
なお、本実施形態においては、第一のガス発生器を二つ設けた構成について示しているが、一つ又は三つ以上設けてもよいことは勿論である。
【0010】
外殻体10は、例えばナイロン等の合成樹脂から形成されており、内圧を付与することにより一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な構造になっている。
【0011】
すなわち、本実施形態においては、中心軸線O1に沿って全長Lが伸縮する所謂蛇腹構造にしている。
具体的には、後述する内圧を付与しないときには、中心軸線O1に沿って全長が短くなり、また、所定の内圧を付与することにより、先端部11から中央部13にかけて次第に太径になり、かつ、その中央部13から後端部12にかけて次第に小径になる所謂紡錘型のものである。
【0012】
後端部12には、円形のノズル用孔14が開口形成されており、そのノズル用孔14に噴射ノズル70がガス密的かつ液密的に取り付けられている。
先端部11には、詳細を後述する第二のガス発生器50の操作部51を外方から操作するための円形の操作用孔15が開口形成されている。
【0013】
また、操作用孔15には円筒部16の外端縁が全周にわたって溶着され、また、その円筒部16の内端縁は、第二のガス発生器50の収容部52が全周にわたり溶着されている。
なお、柔軟性部材の外面に外傷を防止するための皮革等の外傷防止部材を被覆するようにしてもよい。これにより、再使用の際の耐用回数を増やすことができる。
【0014】
タンク20は、外殻体10内に配置しているとともに、内圧を付与することにより、その外殻体10との間に与圧用空間αを区画形成する一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な充填部21と、噴射ノズル70とからなる。
【0015】
本実施形態において示す液充填部21は、例えばナイロン等の合成樹脂から形成されており、内圧を付与することにより、先端部22から中央部26にかけて次第に太径になり、かつ、その中央部26から後端部23にかけて次第に小径になる所謂紡錘型となるものである。
また、内圧を付与しないときには、図2(A),(B)に示す外殻体10と同様に、軸線O1に沿って所謂蛇腹状に縮退可能な構造となっている。
【0016】
上記液充填部21の後端部23には、円形のノズル用孔24が開口形成されており、その
ノズル用孔24に上記噴射ノズル70がガス密的かつ液密的に溶着されている。
先端部22には、詳細を後述する第二のガス発生器50の収容部52をガス密的かつ液密的に溶着するための円形の操作用孔25が開口形成されている。
【0017】
噴射ノズル70は、ノズル用孔24から液充填部21内に突入するとともに、その液充填部21の内周壁面21aに沿う喇叭形状にした突入部71と、液充填部21と外殻体10のノズル用孔14,24を液密的かつガス密的に取り付けるための取付け部72とを一体に成型したものである。
また、噴射ノズル70には円筒形の液噴射口72aが両端に開口して形成されており、これの後端開口に、封止栓30が着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0018】
取付け部72の後半部には、安定翼60をそれぞれ嵌合固定するための四つの翼嵌合溝73…が、中心軸線O1を中心とする90度間隔で形成されている。なお、74は、例えば救助用ロープ(図示しない)を連結するための連結リングである。
【0019】
安定翼60は、正面視において略直方体形のものであり、前側辺縁61の下半部には、外殻体10の外面形状に沿う円弧形の切欠き62が形成されているとともに、下側辺縁の後半部63を、上記翼嵌合溝73に嵌入するための嵌入片部としている。
【0020】
第一のガス発生器40は、与圧用空間αに充填するためのガスを発生する機能を有するものであり、ガス発生剤を収容した収容部42と、そのガス発生剤によってガスを発生させるための操作を行う操作部41とを有している。
ガス発生剤は、例えばアジ化ナトリウムと金属酸化物の組成物、テトラゾールと硝酸ストロンチウムあるいは硝酸ナトリウムの混合物、硝酸銅と硝酸グアニジンの混合物等である。
【0021】
第二のガス発生器50は、液充填部21の内圧を付与するためのガスを発生するものであり、上記第一のガス発生器40と同等の構成になっている。
【0022】
第一,第二のガス発生器40,50は、第二のガス発生器50により発生するガスによる圧力が、第一のガス発生器40で発生するガスによる圧力よりも大きくなるように設定している。
【0023】
具体的には、第二のガス発生器50で発生するガスによる圧力は、噴射ノズル70から、例えば水等の液体を飛翔に必要な流速で噴射できる程度の圧力となるようにしている。また、第一のガス発生器40で発生するガスによる圧力は、外殻体10が飛翔しているときに、所期の一定の形状に保持できる程度のものである。
従って、第一のガス発生器40と第二のガス発生器50で使用するガス発生剤は、上記例示したガス発生剤を任意に組み合わせて使用するとよい。
【0024】
以上の構成からなる液噴射飛翔体Aの動作について、図3をも参照して説明する。図3は、液噴射飛翔体の発射状態を示す説明図である。
救助者は、図2(A),(B)に示すように、液噴射飛翔体Aを折り畳んだ状態にして携行する。
【0025】
必要が生じたとき、噴射ノズル70の翼嵌合溝73…に、安定翼60…をそれぞれ嵌合固定するとともに、ロープ連結リング74に救助用ロープ80を連結し、また、液充填部21内に水等の液体を所要量だけ充填する。
その後、第一のガス発生器40と、第二のガス発生器50の各操作部41,51を操作する。
【0026】
各操作部41,51の操作により、各収容部42,52のガス発生剤を点火してガスを発生させ、それらのガスが与圧用空間αと液充填部21内にそれぞれ充填され、それらが所期の圧力となる。
【0027】
すなわち、液充填部21が所期の圧力となることによって、本液噴射飛翔体Aが想定した距離を飛翔することができるとともに、与圧用空間αが所期の圧力となることによって、外殻体10が、上述した所謂紡錘型になる。
【0028】
そして、必要に応じ、図3に示す発射台100を使用する。その発射台100は、台座101に、発射ガイド部材102を傾設したものである。
上記発射台100に、液噴射飛翔体Aを設置して、封止栓30を取り外すことにより、液充填部21内の水Qが噴射ノズル70から噴射されて、本液噴射飛翔体Aが飛翔する。
【0029】
飛翔に伴って液充填部21内の水Qが噴出されるのに従い、液充填部21の圧力が低下し、当該液充填部21は萎み始めるが、外殻体10は、与圧用空間αの内圧によって一定に保持され、これにより、飛翔経路が不安定になることがなく、要救助者に救助用ロープ80を確実に渡すことができる。
【0030】
以上のように、運搬時には容積を小さくしてコンパクトにできるとともに、圧力を付与するための空気等の供給源等を必要とすることなく、容易に短時間で飛翔させられる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
上述した実施形態においては、内圧を付与することにより一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な外殻体と、外殻体内に配置しているとともに、内圧を付与することにより、その外殻体との間に与圧用空間を区画形成する一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な液充填部、及びその液充填部に充填した液体を噴射するための噴射ノズルを設けたタンクと、上記噴射ノズルに対して着脱可能な封止栓と、上記与圧用空間に充填するためのガスを発生する第一のガス発生器と、上記タンクに内圧を付与するためのガスを発生する第二のガス発生器とを有する構成のものについて説明したが、次のような構成にすることができる。
【0032】
上述した実施形態から外殻体と第一のガス発生器を除いた構成にした他の実施形態に係る液噴射飛翔体について、図4を参照して説明する。図4は、他の実施形態に係る液噴射飛翔体の発射状態を示す説明図であり、(A)は液充填部に液体が残存している状態、(B)は、液充填部の液体がなくなった状態を示している。なお、上述した実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
他の実施形態に係る液噴射飛翔体Bは、内圧を付与することにより一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な液充填部21と、この液充填部21に充填した液体Qを噴射するための液噴射口72aを形成した噴射ノズル70とを設けたタンク20と、上記液噴射口72aに対して着脱可能な封止栓30と、上記液充填部21に配設され、その液充填部21の内圧を付与するためのガスを発生するガス発生器50と、液充填部21内に配設されたチョーキング部材90とを有して構成されている。
【0034】
チョーキング部材90は、液充填部21内に充填されている液体Qよりも比重の小さい材質からなりものであり、液充填部21内に充填されていた液体Qがなくなったときには、噴射ノズル70の液噴射口72aの前端開口を閉塞するようになっている。
本実施形態においては、図4(B)に示すように、液噴射口72aの前端開口をしっかりと閉塞するように変形可能なものであり、例えばスポンジ製のものである。
【0035】
上記の構成からなる液噴射飛翔体Bによれば、図4(A)に示すように、液充填部21内に液体Qが残存しているときには、チョーキング部材90は液体Q上に浮んだ状態になっており、液噴射口72aからの液体Qの噴射を阻害することがない。
【0036】
そして、液充填部21内に液体Qが無くなったときには、液充填部21の内圧によって、噴射ノズル70の液噴射口72aの前端開口を塞ぐように変形して、液噴射口72aを閉塞する。
【0037】
液噴射口72aを閉塞することにより、ガス発生器によって継続して発生するガスが液噴射口72aから漏れることがなくなり、液充填部21の内圧を保たせて外形を保持し、飛翔が不安定になることを回避できる。
【0038】
この構成によっても、運搬時には容積を小さくしてコンパクトにできるとともに、圧力を付与するための空気等の供給源等を必要とすることなく、容易に短時間で飛翔させられる。
また、外殻体10と第一のガス発生器40とを設けていない分、安価に製造することができる。
【0039】
上述した実施形態においては、使用しないときには、折り畳んでおく構成のものについて説明したが、折り畳むことなく、必要な飲料水を入れた水筒として使用することもできる。
この場合、充填した飲料水を噴射ノズルから噴射させられるので、そのための水等の液体を必要としないという利点がある。
【0040】
上述した実施形態においては、容積を縮小可能な液充填部として、蛇腹構造のものを例として説明したが、その構造に限るものではなく、例えば中心軸線を含む平板状やロール状に巻回することにより、液充填部の容積を縮小するようにしてもよい。
【0041】
上述した実施形態においては、液充填部に充填した液体を噴射ノズルから噴射する構成のものについて説明したが、液体を液充填部に充填することなく、第二のガス発生器で発生したガスを、噴射ノズルから噴出させるようにしてもよい。
【0042】
すなわち、内圧を付与することにより一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な液充填部と、噴射ノズルとを設けたタンクと、上記噴射ノズルに対して着脱可能な封止栓と、上記液充填部に配設され、その液充填部に内圧を付与しかつ噴射ノズルから噴出させるためのガスを発生するガス発生器とを有する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る液噴射飛翔体を示すものであり、(A)は、その正断面図、(B)は、その側面図である。
【図2】(A)は、同上の液噴射飛翔体を軸線に沿って所謂蛇腹状に縮退させた様子を示す正面図、(B)は、その側面図である。
【図3】同上の液噴射飛翔体の発射状態を示す説明図である。
【図4】他の実施形態に係る液噴射飛翔体の発射状態を示す説明図であり、(A)は液充填部に液体が残存している状態、(B)は、液充填部に液体が残存していない状態を示している。
【符号の説明】
【0044】
10 外殻体
20 タンク
21 液充填部
30 封止栓
40 第一のガス発生器(ガス発生器)
41,51 操作部
42,52 収容部
50 第二のガス発生器(ガス発生器)
70 噴射ノズル
72a 液噴射口
α 与圧用空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧を付与することにより一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な液充填部と、この液充填部に充填した液体を噴射するための噴射ノズルとを設けたタンクと、
上記噴射ノズルに対して着脱可能な封止栓と、
上記液充填部に配設され、その液充填部に内圧を付与するためのガスを発生するガス発生器とを有していることを特徴とする液噴射飛翔体。
【請求項2】
内圧を付与することにより一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な外殻体と、
外殻体内に配置しているとともに、内圧を付与することにより、その外殻体との間に与圧用空間を区画形成する一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な液充填部、及びその液充填部に充填した液体を噴射するための噴射ノズルを設けたタンクと、
噴射ノズルに対して着脱可能な封止栓と、
与圧用空間に充填するためのガスを発生する第一のガス発生器と、
液充填部に内圧を付与するためのガスを発生する第二のガス発生器とを有していることを特徴とする液噴射飛翔体。
【請求項3】
液充填部を、伸縮可能な蛇腹構造としていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液噴射飛翔体。
【請求項4】
第一,第二のガス発生器は、ガス発生剤を収容した収容部と、そのガス発生剤によってガスを発生させるための操作を行う操作部とを有しており、
上記操作部を、外殻体の外方から操作可能に配設したことを特徴とする請求項2又は3に記載の液噴射飛翔体。
【請求項5】
内圧を付与することにより一定の形状となり、かつ、内圧を付与しないときには容積を縮小可能な液充填部、及び液充填部に充填した液体を噴射するための液噴射口を形成した噴射ノズルを設けたタンクと、
噴射ノズルに対して着脱可能な封止栓と、
上記液充填部に配設され、その液充填部に内圧を付与するためのガスを発生するガス発生器と、液充填部内に配設されたチョーキング部材とを有しており、
液充填部内の液体がなくなったときには、チョーキング部材により噴射ノズルの液噴射口を閉塞することを特徴とする液噴射飛翔体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−293827(P2009−293827A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145673(P2008−145673)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【Fターム(参考)】