説明

液圧ユニット

【課題】油温センサを取り除いて、油圧ユニットのコストを低減する。
【解決手段】油圧ユニット(10)には、通電時に発熱するパワーモジュール(53)が設けられている。このパワーモジュール(53)は、タンク(30)内の作動油に面した凹部(35)の底面に設けられている。そのため、パワーモジュール(53)は、タンク(30)内の作動油によって冷却され、その結果、パワーモジュール(53)とタンク(30)内の作動油との温度差が小さくなる。油圧ユニット(10)では、温度センサ(59)によってパワーモジュール(53)の温度が検出される。そして、その温度センサ(59)の検出温度に基づいて、タンク(30)内の油温が推定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内の作動液を液圧アクチュエータへ供給する液圧ユニットに関し、特に、コスト低減に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、タンク内の作動液を液圧アクチュエータへ供給する液圧ユニットが知られている。例えば、特許文献1には、この種の液圧ユニットが開示されている。この液圧ユニットは、作動油を油圧アクチュエータに供給する油圧ユニットであり、タンク、ポンプ、モータ、及び電力変換器を備えている。この油圧ユニットでは、電力変換器が電源電力を所定の電力に変換してモータに供給することで、モータに接続されたポンプが回転駆動する。そして、そのポンプがタンク内の作動油を吸引して吐出することで、作動油が油圧アクチュエータに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4245065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の油圧ユニットを含め、従来の液圧ユニットでは、作動液の過熱によってパッキン等の配管部品が劣化するのを防ぐため、タンクに専用の液温センサを設けてタンク内の液温を管理していた。さらに、電力変換器のパワーモジュールが過熱して故障するのを防ぐため、パワーモジュールの近傍またはパワーモジュール内部に専用の温度センサを設けて、パワーモジュールの過熱保護をしていた。そのため、従来では、これら2つの温度センサの取付コストがかかってしまい、液圧ユニットの低コスト化が困難であった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、液温センサを取り除いて、液圧ユニットのコストを低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、作動液を貯留するタンク(30)と、上記タンク(30)の吐出口(34)から作動液を吸引するポンプ(23)と、上記ポンプ(23)によって吸引された作動液を液圧アクチュエータへ供給する供給路(21)と、上記液圧アクチュエータから上記タンク(30)の戻り口(33)へ作動液を戻す戻し路(22)と、上記ポンプ(23)を回転駆動する電動機(24)と、電源電力を所定の電力に変換して上記電動機(24)に供給する電力変換器(50)とを備えた液圧ユニットを対象としている。そして、この液圧ユニットは、上記電力変換器(50)が、放熱部(35a,38a)がタンク(30)内の作動液に面したパワーモジュール(53)と、該パワーモジュール(53)の温度を検出する温度センサ(59)とを有し、上記温度センサ(59)の検出温度に基づいて上記タンク(30)内の作動液の温度を推定する液温推定部(76)を備えているものである。
【0007】
上記第1の発明では、パワーモジュール(53)の放熱部(35a,38a)がタンク(30)内の作動液に面している。そのため、パワーモジュール(53)は作動液によって冷却され、その結果、パワーモジュール(53)はタンク(30)内の作動液と概ね同じ温度になる。
【0008】
そして、上記第1の発明では、パワーモジュール(53)の検出温度に基づいてタンク(30)内の液温が推定される。上述のように、パワーモジュール(53)の温度とタンク(30)内の液温が概ね同じになっている状態では、パワーモジュール(53)の検出温度に基づいてタンク(30)内の液温を推定してもその誤差は小さく、推定値としてタンク(30)内の液温を取得することができる。そのため、従来のように、専用の液温センサでタンク(30)内の液温を測定する必要がなくなる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、上記温度センサ(59)は、上記パワーモジュール(53)の放熱部(35a,38a)に設けられているものである。
【0010】
上記第2の発明では、温度センサ(59)がタンク(30)内の作動液に面した放熱部(35a,38a)に設けられている。そのため、タンク(30)内の液温が温度センサ(59)に反映され易くなり、温度センサ(59)の検出温度をタンク(30)内の液温に近づけることができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、上記パワーモジュール(53)の放熱部(35a,38a)は、上記タンク(30)の戻り口(33)よりも吐出口(34)に近い位置に設けられているものである。
【0012】
上記第3の発明では、放熱部(35a,38a)が戻り口(33)から離れた位置に設けられている。そのため、戻り口(33)を通過してタンク(30)内に戻った直後の作動液が放熱部(35a,38a)に接触することが抑制され、戻った後にタンク(30)内で拡散した作動液が放熱部(35a,38a)に接触し易くなる。従って、温度センサ(59)では、拡散した作動液によって冷却されたパワーモジュール(53)の温度が検出され、液温推定部(76)では、拡散した作動液の温度が導出される。
【0013】
第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、上記タンク(30)内に、上記戻り口(33)から上記吐出口(34)への作動液の流れを抑制する邪魔板(39)が設けられているものである。
【0014】
第4の発明では、邪魔板(39)が設けられているため、作動液がタンク(30)内に戻ってから放熱部(35a,38a)に到達するまでの時間が長くなり、その間に、作動液は充分に拡散する。従って、液温推定部(76)では、充分に拡散した作動液の温度が導出される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タンク(30)内の作動液に面した放熱部(35a,38a)にパワーモジュール(53)を設けるようにした。そして、そのパワーモジュール(53)の温度を検出し、その検出温度に基づいてタンク(30)内の液温を推定するようにした。これにより、パワーモジュール(53)は作動液によって冷却され、パワーモジュール(53)はタンク(30)内の作動液と概ね同じ温度になる。そして、その状態で、パワーモジュール(53)の検出温度に基づいてタンク(30)内の液温が推定されるため、誤差の小さい推定値としてタンク(30)内の液温を得ることができる。そのため、従来のように、専用の液温センサでタンク(30)内の液温を測定する必要がなくなり、液圧ユニット(10)のコストを低減することができる。
【0016】
第2の発明によれば、パワーモジュール(53)の温度を検出する温度センサ(59)をパワーモジュール(53)の放熱部(35a,38a)に設けるようにした。これにより、温度センサ(59)の検出温度をタンク(30)内の液温に近づけることができるため、温度センサ(59)の検出温度に基づいた液温の推定を一層精度良く行うことができる。
【0017】
第3の発明によれば、パワーモジュール(53)の放熱部(35a,38a)をタンク(30)の戻り口(33)よりも吐出口(34)に近い位置に設けるようにした。そのため、戻り口(33)を通過してタンク(30)内に戻った作動液を拡散させてから放熱部(35a,38a)に接触させることができる。従って、高温の作動液が戻る場合でも、その高温の作動液は戻った後に拡散することとなり、戻り直後の高温の作動液の温度ではなく、タンク(30)内における平均的な液温を得ることができる。
【0018】
第4の発明によれば、タンク(30)内に、戻り口(33)から吐出口(34)への作動液の流れを抑制する邪魔板(39)を設けるようにした。そのため、タンク(30)内に戻ってから放熱部(35a,38a)に到達するまでの間に、作動液を充分に拡散させることができる。よって、タンク(30)内における平均的な液温をより確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施形態の油圧ユニットの全体構成を示す概略図である。
【図2】図2は、本実施形態のタンクの構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、本実施形態のタンクの構成を示す断面図である。
【図4】図4は、本実施形態の電力変換器の回路構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本実施形態のパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【図6】図6は、本実施形態の油温異常検知部の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、その他の実施形態のタンクの構成を示す断面図である。
【図8】図8は、その他の実施形態のタンクの構成を示す平面図である。
【図9】図9は、その他の実施形態のタンクの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の油圧ユニット(10)は、油圧シリンダ(1)等の油圧アクチュエータに作動油を供給し、該油圧アクチュエータを作動させるものであり、本発明の液圧ユニットを構成している。この油圧ユニット(10)は、例えば、マシニングセンタ等の工作機械に搭載され、ワークや工具を挟んで固定するチャック機構を開閉動作させる油圧シリンダ(1)に接続されている。
【0022】
油圧ユニット(10)は、タンク(30)と、該タンク(30)と油圧シリンダ(1)を繋ぐ2つの油流路(供給路(21)及び戻し路(22))と、コントローラ(70)とを備えている。供給路(21)は、タンク(30)から油圧シリンダ(1)へ作動油を供給する油流路であり、戻し路(22)は、油圧シリンダ(1)からタンク(30)へ作動油を戻す油流路である。供給路(21)には、ポンプ(23)が接続され、供給路(21)及び戻し路(22)には、方向切換弁(25)が接続されている。
【0023】
ポンプ(23)は、例えばギアポンプ、トロコイドポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプ等の固定容量型ポンプであり、タンク(30)から作動油を吸入して油圧シリンダ(1)へ吐出するものである。このポンプ(23)は、吸入側が後述するタンク(30)の吐出口(34)に接続され、吐出側が後述する方向切換弁(25)のPポートに接続されている。
【0024】
また、ポンプ(23)には、回転駆動させるための電動機(24)が接続されている。この電動機(24)は、可変速モータであり、電力変換器(50)によって回転制御される。尚、電力変換器(50)については後述する。
【0025】
方向切換弁(25)は、第1電磁ソレノイド(25a)および第2電磁ソレノイド(25b)を有する4ポート3位置スプリングセンタ式電磁切換弁である。方向切換弁(25)は、4ポートのうち、Pポートがポンプ(23)の吐出側に接続され、Tポートが後述するタンク(30)の戻り口(33)に接続されている。また、方向切換弁(25)のAポートが油圧シリンダ(1)のヘッド室(1a)に接続され、Bポートが油圧シリンダ(1)のロッド室(1b)に接続されている。
【0026】
方向切換弁(25)は、各電磁ソレノイド(23a,23b)のON/OFF動作によって、中立位置と第1位置と第2位置とに切り換わる。方向切換弁(25)は、中立位置では4つのポートが互いに遮断状態になり、第1位置ではPポートとAポートが連通し且つBポートとTポートが連通し、第2位置ではPポートとBポートが連通し且つAポートとTポートが連通する。
【0027】
タンク(30)は、図2及び図3に示すように、作動油を貯留するものであり、上面が開口し作動油が貯留される矩形体のタンク本体(31)と、そのタンク本体(31)の上面を閉鎖する蓋体(32)とを備えている。
【0028】
蓋体(32)には、戻り口(33)と吐出口(34)がそれぞれ貫通形成されている。戻り口(33)は、タンク本体(31)の左側の側壁(図3参照)に近い側に形成され、方向切換弁(25)のTポートから延びる配管(戻し路(22))に接続されている。一方、吐出口(34)は、タンク本体(31)の右側の側壁(図3参照)に近い側に形成され、ポンプ(23)の吸入側へ延びる配管(供給路(21))に接続されている。
【0029】
タンク本体(31)には、右側の側壁を内側へ箱状に凹陥した凹部(35)が形成され、さらに、この凹部(35)の開口を閉鎖するプレート(36)が設けられており、この凹部(35)とプレート(36)によって、制御ボックス(37)が形成されている。この制御ボックス(37)(凹部(35))は、タンク(30)の戻り口(33)よりも吐出口(34)に近い位置に形成され、貯留された作動油に面している。そして、この制御ボックス(37)には、電力変換器(50)が収納されている。
【0030】
〈電力変換器〉
電力変換器(50)は、交流電源から供給される電力を所定の電力に変換する所謂インバータである。この電力変換器(50)は、図4に示すように、コンバータ回路(51)とインバータ回路(52)によって回路構成されている。コンバータ回路(51)は、交流電源(例えば200Vの三相交流)に接続され、交流が直流に変換される。インバータ回路(52)では、スイッチング素子(図示せず)のオンオフ動作によって、コンバータ回路(51)の出力が所定の周波数の電力に変換され、その変換された電力が電動機(24)に供給される。このスイッチング素子のオンオフ動作は、後述するコントローラ(70)の電力制御部(71)で制御される。
【0031】
電力変換器(50)は、図2及び図3に示すように、基板(57)、パワーモジュール(53)、パワーモジュール(53)以外の電子部品(58)、及び温度センサ(59)を備えている。
【0032】
パワーモジュール(53)は、IGBTやパワーMOSFET等、通電時に多量の熱が発生するパワー半導体(55)が内蔵された電子部品である。このパワーモジュール(53)には、図5に示すように、ベース板(54)が凹部(35)の底面(底壁(35a)の内面)に固定され、そのベース板(54)の上に、パワー半導体(55)が配列されている。パワー半導体(55)が発熱すると、その熱はベース板(54)から凹部(35)の底壁(35a)へ伝導し、タンク(30)内の作動油へ放熱される。凹部(35)の底壁(35a)は、本発明のパワーモジュール(53)の放熱部を構成している。
【0033】
基板(57)は、図2及び図3に示すように、パワーモジュール(53)上に固定されている。そして、その基板(57)において、パワーモジュール(53)が裏側(図3の左側)から実装され、その他の電子部品(58)が表側(図3の右側)から実装されることによって、コンバータ回路(51)とインバータ回路(52)が形成されている。
【0034】
その他の電子部品(58)は、非パワー半導体や、コンデンサや抵抗等の表面実装部品であり、通電時における発熱量が比較的小さいものである。
【0035】
温度センサ(59)は、サーミスタや測温抵抗体等によって形成された接触式温度センサである。この温度センサ(59)は、パワーモジュール(53)の温度を検出するものであり、凹部(35)の底面上で且つパワーモジュール(53)に近接する位置に固定されている。また、この温度センサ(59)は、検出値Tが後述するコントローラ(70)の油温推定部(76)へ出力するように構成されている。
【0036】
〈コントローラ〉
コントローラ(70)は、電力制御部(71)と油温異常検知部(75)を備えている。
【0037】
電力制御部(71)は、インバータ回路(52)のスイッチング素子のオンオフ動作を制御する。具体的に、電力制御部(71)では、電動機(24)の回転数の検出値と目標値(設定値)を入力して比例積分(PI)制御を行うことで、スイッチング素子をオンオフ動作するための制御信号が生成され、その制御信号がインバータ回路(52)へ出力される。
【0038】
油温異常検知部(75)は、タンク(30)内における油温異常を検知するものであり、油温推定部(76)、異常判定部(77)、警告部(78)を備えている。
【0039】
油温推定部(76)は、温度センサ(59)の検出値Tに基づいて、タンク(30)内における油温の推定値Tesを算出する。油温推定部(76)は、本発明の液温推定部を構成している。この油温の推定値Tesは、異常判定部(77)に出力される。
【0040】
異常判定部(77)は、油温推定部(76)で算出された油温の推定値Tesと所定の閾値Tshを比較して、油温異常であるか否かを判定する。異常判定部(77)において、油温異常と判定されると、その判定結果は、警告部(78)に出力される。
【0041】
警告部(78)は、異常判定部(77)から油温異常という判定結果が入力されることで、その油温異常を警告する。この警告部(78)の警告手段は、警告ランプ等のように表示するものであっても、ブザー等のように音を発するものであっても構わない。
【0042】
−運転動作−
以下、油圧ユニット(10)の運転動作について説明する。
【0043】
電力変換器(50)が電源電力を変換して電動機(24)に供給すると、その電動機(24)に接続されたポンプ(23)が回転駆動する。そして、そのポンプ(23)がタンク(30)内の作動油を吸引して吐出することで、作動油は油圧シリンダ(1)へ供給される。
【0044】
方向切換弁(25)が第1位置に切り換わると、作動油はタンク(30)から油圧シリンダ(1)のヘッド室(1a)へ供給されると共にロッド室(1b)からタンク(30)へ戻され、油圧シリンダ(1)は右方向へ作動する。一方、方向切換弁(25)が第2位置に切り換わると、作動油はタンク(30)から油圧シリンダ(1)のロッド室(1b)へ供給されると共にヘッド室(1a)からタンク(30)へ戻され、油圧シリンダ(1)は左方向へ作動する。
【0045】
このように作動油が供給されている間、電力変換器では、パワーモジュール(53)が発熱してしまう。しかし、本実施形態では、パワーモジュール(53)が、タンク(30)内の作動油に面した凹部(35)の底面(底壁(35a)の内面)に設けられている。そのため、パワーモジュール(53)が発熱しても、その熱は、タンク(30)内の作動油によって冷却され、その結果、パワーモジュール(53)はタンク(30)内の作動油と概ね同じ温度を維持することとなる。
【0046】
また、作動油は昇圧されて油圧シリンダ(1)に供給されるため、温度上昇してしまう。しかし、本実施形態では、油温異常検知部(75)において、タンク(30)内の油温の推定値Tesを導出しつつ、その推定値Tesに基づいて油温の異常を検知している。
【0047】
〈油温異常検知部の制御動作〉
油温異常検知部(75)では、図6に示すように、タンク(30)内における油温の異常検知が行われる。
【0048】
先ず、ステップST1では、パワーモジュール(53)の温度が温度センサ(59)によって検出される。そして、その検出値Tが油温推定部(76)に入力される。
【0049】
ステップST2では、油温推定部(76)において、タンク(30)内の油温の推定値Tesが導出される。具体的には、ステップST1で検出された検出値Tと幾つかのパラメータ(例えば、底壁(35a)の厚さや熱伝導率)を演算することによって、油温の推定値Tesが導出される。そして、この油温の推定値Tesは、異常判定部(77)へ出力される。
【0050】
ステップST3では、異常判定部(77)において、ステップST2で算出された油温の推定値Tesと所定の閾値Tshが比較され、油温の異常が判定される。具体的に、油温の推定値Tesが所定の閾値Tshを上回る状態が所定時間以上継続した場合は、油温異常と判定され、ステップST4へと進む。一方、油温の推定値Tesが所定の閾値Tshを上回らない、または、上回る状態が所定時間以上継続しない場合は、油温異常と判定されずに、ステップST1へ戻る。
【0051】
ステップST4では、油温異常の判定結果が警告部(78)に入力されることによって、油温異常の警告が行われる。
【0052】
油温異常検知部(75)では、油圧ユニット(10)の運転中、所定時間毎にステップST1からステップST3を繰り返し実行することで、油温異常であるか否かの判定が繰り返し行われる。そして、油温異常と判定されると、ステップST4において油温異常の警告が行われる。
【0053】
−実施形態1の効果−
本実施形態によれば、タンク(30)内の作動油に面した凹部(35)の底壁(35a)にパワーモジュール(53)を設けるようにした。そして、そのパワーモジュール(53)の温度を検出し、その検出値Tに基づいてタンク(30)内の油温を推定するようにした。これにより、パワーモジュール(53)は作動油によって冷却され、パワーモジュール(53)はタンク(30)内の作動油と概ね同じ温度になる。そして、その状態で、パワーモジュール(53)の検出温度に基づいてタンク(30)内の油温が推定されるため、誤差の小さい推定値Tesとしてタンク(30)内の油温を得ることができる。そのため、従来のように、専用の油温センサでタンク(30)内の油温を測定する必要がなくなり、油圧ユニット(10)のコストを低減することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、パワーモジュール(53)の温度を検出する温度センサ(59)を、パワーモジュール(53)と同じ凹部(35)の底壁(35a)に設けるようにした。これにより、温度センサ(59)の検出温度をタンク(30)内の油温に近づけることができるため、温度センサ(59)の検出温度に基づいた油温の推定を一層精度良く行うことができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、パワーモジュール(53)が設けられた凹部(35)の底壁(35a)をタンク(30)の戻り口(33)よりも吐出口(34)に近い位置に形成するようにした。そのため、戻り口(33)を通過してタンク(30)内に戻った作動油を拡散させてから底壁(35a)に接触させることができる。従って、高温の作動液が戻る場合でも、その高温の作動油は戻った後に拡散することとなり、戻り直後の高温の作動油の温度ではなく、タンク(30)内における平均的な油温を得ることができる。
【0056】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成にしてもよい。
【0057】
上記実施形態では、温度センサ(59)の検出値Tと幾つかのパラメータ(例えば、底壁(35a)の厚さ、熱伝導率)を演算することによって、油温の推定値Tesを導出している。しかし、油温の推定値Tesの導出方法はこれに限らず、例えば、温度センサ(59)の検出値Tとタンク(30)内の油温の関係を示すテーブルを予め準備し、そのテーブルを参照して油温の推定値Tesを導出するようにしても構わない。また、温度センサ(59)の検出値Tとタンク(30)内の油温の差が非常に小さい場合は、温度センサ(59)の検出値Tをそのまま油温の推定値Tesとしても構わない。
【0058】
また、上記実施形態では、タンク(30)内の戻り口(33)と吐出口(34)の間に、作動油の流れを規制するものが形成されていないが、戻り口(33)から吐出口(34)の間を作動油が蛇行するように、邪魔板(39)を設けても構わない。邪魔板(39)は、図7に示すように、タンク(30)内に戻った作動油が、邪魔板(39)を乗り越えて吐出口(34)へ流れるように設けても構わないし、図8に示すように、タンク(30)内に戻った作動油が、横方向に蛇行するように設けても構わない。このように、邪魔板(39)を設けることによって、作動油がタンク(30)内に戻ってから凹部(35)の底壁(35a)に到達するまでの間に、作動油を充分に拡散させることができる。そのため、戻り直後の作動油の温度ではなく、タンク(30)内における平均的な油温を確実に得ることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、凹部(35)とプレート(36)によって制御ボックス(37)を構成しているが、例えば、図9に示すように、凹部(35)に箱体(38)を挿入し、凹部(35)と箱体(38)によって制御ボックス(37)を構成しても構わない。その場合、パワーモジュール(53)は、箱体(38)の背面板(38a)の内面に設けられる。また、本発明のパワーモジュール(53)の放熱部は、凹部(35)の底壁(35a)とその底壁(35a)に密着した箱体(38)の背面板(38a)によって構成される。
【0060】
また、上記実施形態では、温度センサ(59)が、パワーモジュール(53)と同じ、凹部(35)の底面(底壁(35a)の内面)に設置されている。しかし、温度センサ(59)の設置場所はこれに限らず、パワーモジュール(53)の温度が検出できる場所であれば、例えば、パワーモジュール(53)の内部でも、パワーモジュール(53)の設置面とは異なる面上でも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ユニットとして有用である。
【符号の説明】
【0062】
10 油圧ユニット(液圧ユニット)
21 供給路
22 戻し路
23 ポンプ
24 電動機
30 タンク
33 戻り口
34 吐出口
35a 底壁(放熱部)
38a 背面板(放熱部)
39 邪魔板
50 電力変換器
53 パワーモジュール
59 温度センサ
76 油温推定部(液温推定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液を貯留するタンク(30)と、
上記タンク(30)の吐出口(34)から作動液を吸引するポンプ(23)と、
上記ポンプ(23)によって吸引された作動液を液圧アクチュエータへ供給する供給路(21)と、
上記液圧アクチュエータから上記タンク(30)の戻り口(33)へ作動液を戻す戻し路(22)と、
上記ポンプ(23)を回転駆動する電動機(24)と、
電源電力を所定の電力に変換して上記電動機(24)に供給する電力変換器(50)とを備えた液圧ユニットであって、
上記電力変換器(50)は、放熱部(35a,38a)がタンク(30)内の作動液に面したパワーモジュール(53)と、該パワーモジュール(53)の温度を検出する温度センサ(59)とを有し、
上記温度センサ(59)の検出温度に基づいて上記タンク(30)内の作動液の温度を推定する液温推定部(76)を備えている
ことを特徴とする液圧ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
上記温度センサ(59)は、上記パワーモジュール(53)の放熱部(35a,38a)に設けられている
ことを特徴とする液圧ユニット。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記パワーモジュール(53)の放熱部(35a,38a)は、上記タンク(30)の戻り口(33)よりも吐出口(34)に近い位置に設けられている
ことを特徴とする液圧ユニット。
【請求項4】
請求項3において、
上記タンク(30)内には、上記戻り口(33)から上記吐出口(34)への作動液の流れを抑制する邪魔板(39)が設けられている
ことを特徴とする液圧ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72453(P2013−72453A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210384(P2011−210384)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【特許番号】特許第5141810号(P5141810)
【特許公報発行日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】