説明

液圧制御装置

【課題】通気孔が外部に露出することがなく、通気孔の位置に対して直接水が当たることを好適に回避すること。
【解決手段】ハウジング本体部68のフランジ部20aには、ハウジング取付ねじ62を介して基体12と固定するためのハウジング固定孔20bが形成され、ハウジング固定孔20bは、ハウジング室48と連通するように設けられ、ハウジング取付ねじ62で基体12とハウジング本体部68とを固定した際、ハウジング取付ねじ62とブッシュ78との螺合部位、合わせ面100、及び、固定面106を通じてハウジング室48と外部空間とが通気可能に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車輪ブレーキに付与されるブレーキ液圧を制御することが可能な液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車輪ブレーキのホィールシリンダに作用するブレーキ液圧を制御する液圧制御装置が知られている。この種の液圧制御装置として、例えば、特許文献1に開示されているように、ハウジングに取り付けられたケースに、ケース室内の空気を外気に排出し、または外気をケース室内に導入する連通口が設けられている。この連通口には、非透水性で、且つ気体透過性を有する膜が装着されている。
【0003】
また、特許文献2の液圧制御装置においては、ハウジング内の収納室と外部(大気)とを連通させる通気路が基体の下面の凹部に開口するように設けられ、前記凹部には、空気の出入りを許容しつつ水の出入りを阻止する透湿防水素材が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−99924号公報
【特許文献2】特開2008−105628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示された構造では、膜や透湿防水部材を備えた通気孔の位置が、外部に露出する部位(外部から視認可能な部位)に配置されているため、例えば、ノズルから高圧で吐出される洗浄水によってエンジンルーム内を洗浄する高圧洗浄作業を行うとき、洗浄水が通気孔の位置に直接当たるおそれがある。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、通気孔が外部に露出することがなく、前記通気孔の位置に対して直接水が当たることを好適に回避することが可能な液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために創案された本発明は、基体と、前記基体の一面に取り付けられ、電気部品を内部に収容するハウジングとを備え、前記ハウジングには、締結手段を介して前記基体と固定するための固定孔が形成された液圧制御装置において、前記固定孔は、前記ハウジング内のハウジング室と連通するように設けられ、前記締結手段で前記基体と前記ハウジングとを固定した際、前記固定孔の内径部を通じて前記ハウジング室と外部空間とが通気可能に設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、締結手段で基体とハウジングとを固定した際、固定孔の内径部を通じてハウジング室と外部空間とが通気可能に設けられている。このため、本発明では、従来技術のように通気孔が外部空間に露出することがなく、外部から水が浸入しにくい固定孔を利用して通気させることができる。
【0009】
また、ハウジング室は、基体とハウジングとの合わせ面、及び、締結手段の座面と基体との固定面の少なくともいずれか一方を通じて、外部空間と通気可能に設けられるとよい。このようにすると、通気孔の位置に対して水が直接当たることを効果的に防止しながら、ハウジング室と外部空間との通気を行うことができる。
【0010】
さらに、基体とハウジングとの合わせ面には、外部空間と通気する溝部が形成されるとよい。このようにすると、合わせ面に形成された溝部を介して、ハウジング室と外部空間とを簡便に通気させることができる。
【0011】
さらにまた、固定孔には、ハウジング室に臨む開口が形成され、開口は、ハウジングの内部側から防水通気部材によって被覆されるとよい。このようにすると、防水通気部材によって防水及び通気させることができると共に、例えば、高圧洗浄作業時において、高圧な洗浄水が防水通気部材(通気孔の位置)に対して直接当たることが好適に回避され、より確実な防水構造とすることができる。
【0012】
またさらに、締結手段は、ねじ部を有するねじ部材からなり、ねじ部材は、基体を貫通して固定孔に対して螺着されるとよい。このようにすると、固定孔の開口をハウジング室に臨むように容易に形成することができ、簡単な構造で防水通気構造とすることができる。
【0013】
またさらに、ハウジングには、ねじ部材のねじ部と螺合するブッシュが設けられ、ブッシュに固定孔が形成されるとよい。このようにすると、例えば、樹脂製材料でハウジングを形成した場合であっても、ねじ部材でハウジングと基体とを固定しつつ、ブッシュの固定孔に螺入されるねじ部材の螺合部位を通じてハウジング室と外部空間とを確実に通気することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通気孔が外部に露出することがなく、通気孔の位置に対して直接水が当たることを好適に回避することが可能な液圧制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキ液圧制御装置の分解斜視図である。
【図2】図1に示すブレーキ液圧制御装置の縦断面図である。
【図3】(a)は、図1に示すブレーキ液圧制御装置を構成するコントロールハウジングの斜視図であり、(b)は、(a)の反対側から見たコントロールハウジングの斜視図である。
【図4】図1に示すブレーキ液圧制御装置において、コントロールハウジングから蓋体及び制御基板等を外した状態の側面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った一部切り欠き拡大断面図である。
【図6】(a)は、第2実施形態に係る通気経路を示す一部切り欠き断面図、(b)は、(a)の部分拡大断面図である。
【図7】図4のVII−VII線に沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る液圧制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」という。)10は、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)、自動四輪車などの車両に好適に用いられるものであり、車両の車輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御する。以下においては、ブレーキ制御装置10を図示しない自動二輪車に適用した例について説明するが、ブレーキ制御装置10が搭載される車両を限定する趣旨ではない。
【0018】
図1に示されるように、ブレーキ制御装置10は、基本的に、後記する電磁弁等の各種部材が装着される基体12と、モータ14と、コントロールハウジング(ハウジング)16とを備え、これらが一体的に組み付けられたユニットとして構成されている。基体12とコントロールハウジング16との間には、シール部材18が介装されている。
【0019】
なお、シール部材18は、例えば、メタルガスケット、表面にゴムコーティングが被覆されたメタルガスケット、紙ガスケット、ゴム等の弾性部材や、シリコーン系等の液状ガスケットからなる液状シール剤によって形成されるとよい。また、このシール部材18は、基体12の前面12bとコントロールハウジング16の周壁部20との間で挟持されてシール機能を発揮する。
【0020】
モータ14は、略直方体状に形成された基体12の横方向に沿った後面12aに組み付けられ、一方、コントロールハウジング16は、前記後面12aと反対側の基体12の前面12bに組み付けられ、その内部に後記する電気部品等を収容している。
【0021】
モータ14は、図2に示されるように、モータハウジング22と、固定子(ステータ)24と、回転軸26と一体的に所定方向に回転する回転子(ロータ)28と、コンミュテータ(整流子)30と、前記回転軸26を回転自在に軸支する複数のベアリング32a〜32c等を含む。なお、前記モータ14は、ブラシモータ又はブラシレスモータのいずれであってもよい。
【0022】
また、モータ14には、回転軸26と略並行に突出した棒状体からなる給電部(モータ用バスバー)34が設けられる。この給電部34には、導電体からなり、基端部がモータ側接続端子(図示せず)と電気的に接続される帯状の二つの給電片36a、36b(図1中では、一方のみを図示)が絶縁体38の両側に配設される。モータ14を基体12に組み付けたとき、基体12の挿通孔40を貫通した給電部34の先端部はコントロールハウジング16の接続端子42と電気的に接続される。
【0023】
図2に示されるように、基体12の挿通孔40(内壁)とモータ14の給電部34との間には、間隙44が設けられる。この間隙44を通じて、モータハウジング22内のモータ室46と、コントロールハウジング16内の後記するハウジング室48とが連通するように設けられる。
【0024】
図1に戻って、モータ14が設けられた基体12の後面12aの左右側上端部には、一対の入口ポート(接続ポート)50、50が開口して形成されている。また、基体12の上面12cには、一対の出口ポート(接続ポート)52、52が開口して形成されている。
【0025】
基体12は、略直方体を呈する金属製の部材からなり、内部には、流体であるブレーキ液が流通する図示しない流体通路や、モータ14の回転軸収容穴54及びモータ14の給電部34が貫通する挿通孔40や、ポンプ収容孔56等が形成されている。回転軸収容穴54は、基体12の後面12aに開口する断面円形状の有底の穴で、モータ14の回転軸26やベアリング32b、32c等が収容される(図2参照)。
【0026】
一対のポンプ収容孔56は、回転軸収容穴54の両側にそれぞれ形成されており、回転軸収容穴54から基体12の左右側面までそれぞれ貫通している。また、一対のポンプ収容孔56は、それぞれ同軸状に配置され、左右側面に対して面法線の方向(直角方向)に延在するように設けられる。この場合、基体12の左右側面にそれぞれ形成された一対のポンプ収容孔56、56を通じて図示しないポンプが組み付けられる。さらに、基体12の前面12bには、電磁弁57を取り付けるための図示しない電磁弁取付穴がブレーキ液の流路に連通して形成される。
【0027】
図1に示されるように、基体12には、一対のハウジング取付用貫通孔58とモータ取付穴60が形成されている。ハウジング取付用貫通孔58は、基体12の後面12aから前面12bまで貫通する孔部によって構成される。ハウジング取付用貫通孔58に挿通されたハウジング取付ねじ62が、コントロールハウジング16の後記するハウジング固定孔20bに締結されることによって、コントロールハウジング16が基体12に固定される。
【0028】
ハウジング取付ねじ62は、ねじ部62aを有するねじ部材であり、ワッシャ63と共に締結手段として機能する。前記ハウジング取付ねじ62の軸方向に沿った一端部には、雄ねじからなるねじ部62aが設けられ、その軸方向に沿った他端部には、頭部62bが設けられる。また、頭部62bには環状のワッシャ63が装着され、前記ワッシャ63の座面が基体12の後面12aと接触することで後記する固定面が形成される。
【0029】
モータ取付穴60は、モータ取付ねじ66が螺入される有底孔部からなる。この場合、モータ取付穴60に形成された雌ねじ部にモータ取付ねじ66の雄ねじ部が螺合することにより、モータ14が基体12に固定される。ハウジング取付用貫通孔58とモータ取付穴60は、ポンプ収容孔56と干渉しない近接位置で、ポンプ収容孔56を間にして上下方向で跨ぐように配置される。
【0030】
なお、入口ポート50、50には、図示しないマスタシリンダ等の液圧源からの配管(図示せず)が接続され、前記液圧源からブレーキ液が導入される。また、入口ポート50、50は、図示しない流体通路を介して電磁弁取付穴に連通するように設けられる。出口ポート52、52には、車輪ブレーキに至る配管(図示せず)が接続され、この出口ポート52、52は、図示しない流体通路を介して電磁弁取付孔に連通するように設けられる。
【0031】
基体12の流体通路には、配管を通じて図示しない一対のリザーバが接続される。このリザーバは、車輪ブレーキの減圧制御時に、電磁弁57が開放されることによって、基体12の流体通路に連通する連通路を流通して逃がされるブレーキ液(すなわち、車輪ブレーキのホィールシリンダ側から流出したブレーキ液)を一時的に貯溜するものである。
【0032】
図1に示されるように、コントロールハウジング16は、後記する各種電気部品と、ハウジング本体部68と、コネクタ70とを備える。コネクタ70は、ハウジング本体部68と一体的に設けられた雄コネクタ部70aと、前記雄コネクタ70aと電気的に接続される雌コネクタ部70bとを有する。
【0033】
この場合、前記雄コネクタ部70aと前記雌コネクタ部70bとが一体的に嵌合されて、雄コネクタハウジング71と雌コネクタハウジング73との間で閉塞されたコネクタ室86が形成される(図7参照)。また、コントロールハウジング16には、電気部品として、電磁弁57に装着されるコイル組立体72や、電磁弁57の作動を制御する制御基板74(図2参照)等が含まれている。
【0034】
ハウジング本体部68は、樹脂製材料によって形成される。図3に示されるように、ハウジング本体部68は、略矩形状の外枠を形成するフレーム部75と、フレーム部75に連続する略矩形状の周壁部20と、周壁部20と雄コネクタ部70aとの間に設けられ、周壁部20と雄コネクタ部70aと連結する平板状の壁部77とを有する。
【0035】
図3(a)及び図4に示されるように、壁部77には、制御基板74を支持する4つの支柱79が膨出して形成される。また、図4に示されるように、壁部77には、環状の膨出部77aが形成され、前記膨出部77aの中心部には、ハウジング本体部68内のハウジング室48と外部空間とを通気させる通気孔96が形成される。さらに、前記壁部77には、連通孔88が形成されている。連通孔88は、通気孔96よりも端子部80側に位置し、前記ハウジング室48とコネクタ70内のコネクタ室86とを連通させる。なお、前記通気孔96が後記するハウジング固定孔20bを通じて外部空間と連通する点については、後記で詳細に説明する。本実施形態では、図3(b)に示されるように、2つ設けられているハウジング固定孔20bのうち、雄コネクタ部70aに近接して配置された単一のハウジング固定孔20bのみが、ハウジング室48と連通している場合を、その一例として以下説明する(後記する段落0048、0049参照)。
【0036】
通気孔96を設けてハウジング室48が大気圧に保持されることにより、温度変化に起因するハウジング室48の圧力変化(気圧変化)を抑制して、ハウジング室48内に水等が吸入されることを防止できる。
【0037】
また、コネクタ室86とハウジング室48とを連通させる連通孔88を設けることにより、コネクタ室86内の気圧を大気圧に保持することができる。この結果、雄コネクタハウジング71及び雌コネクタハウジング73の変形を回避して、雄コネクタハウジング71と雌コネクタハウジング73との良好な密着性を保持することができる。
【0038】
さらに、コネクタ室86内が負圧になることを防止することができるため、例えば、雌コネクタ部70bから外部に延出されたワイヤハーネス部106(図1参照)の先端部に接続された図示しない車輪速度センサ等の部品とワイヤハーネス部106の被膜との間から、毛細管現象によって水が進入することを好適に回避することができる。
【0039】
通気孔96の開口は、ハウジング本体部68の内部側(ハウジング室48側)から防水通気部材98によって被覆されている。
【0040】
前記防水通気部材98は、空気の出入りを許容しつつ水の出入りを阻止する機能を有する。この防水通気部材98は、例えば、ゴアテックス(登録商標)等のガス透過性多孔質膜からなり、通気孔96からハウジング室48内への水や塵埃等の進入を防止することができる。なお、図3(a)において、防水通気部材98の形状を円形状に形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、矩形状やその他の複合形状であってもよい。
【0041】
前記防水通気部材98は、固着手段を介してハウジング本体部68の内側(ハウジング室48側)から壁部77の膨出部77aに直接固着されている。防水通気部材98を膨出部77aに直接固着する固着手段としては、例えば、超音波溶着や、電気抵抗体に電流を流したジュール熱で膨出部77aの樹脂を溶融する熱溶着(例えば、IMPULSE WELDING)等がある。
【0042】
このような固着手段によって、防水通気部材98を膨出部77aに対して直接固着することができる。また、他の固着手段としては、例えば、接着剤等の粘着性物質を使用することにより、膨出部77aに対して防水通気部材98を直接貼着してもよい。
【0043】
このように、防水通気部材98を壁部77の膨出部77aに対して直接固着することにより、例えば、防水通気部材98を膨出部77aに固定するための金具等が不要となり、部品点数を削減して製造コストを低減することができる。
【0044】
なお、ハウジング本体部68及び雄コネクタハウジング71は、図示しない金型装置によって樹脂製材料で一体成形され、通気孔96及び連通孔88を図示しない金型装置で容易に形成することができる。
【0045】
図3に戻って、ハウジング本体部68の周壁部20には、シール部材18(図1、図2参照)を介して基体12側と接続される開口部68aが形成される。また、前記周壁部20には、外方に向かって突出する厚肉のフランジ部20aが形成される。前記フランジ部20aには、ハウジング取付ねじ62が螺入される一対のハウジング固定孔20bと、補強リブ20cが設けられる。
【0046】
また、図2に示されるように、ハウジング本体部68には、基体12側の面と反対側に形成された開口部を閉塞する蓋体76が設けられる。さらに、ハウジング本体部68には、基体12を貫通したモータ14の給電部34の先端部が挿入されて電気的に接続される接続端子42が設けられる。
【0047】
図3(b)、図5に示されるように、ハウジング固定孔(固定孔)20bは、ハウジング本体部68に対してインサート成形されたブッシュ78によって構成される。このブッシュ78は、金属製の円筒体からなり、円筒体の内周面に雌ねじからなるねじ部78aが刻設されている。ハウジング固定孔20bは、コントロールハウジング16を基体12に組み付けた際、ハウジング取付用貫通孔58と同軸状に位置するように配置されている。
【0048】
一対のハウジング固定孔20b、20bのうち、後記する雄コネクタハウジング71から離間する一方のハウジング固定孔20bを構成するブッシュ78(図3(b)の向かって右側のブッシュ78)の端部は、ハウジング本体部68内の途中で閉止されている。
【0049】
また、後記する雄コネクタハウジング71に近接する他方のハウジング固定孔20bを構成するブッシュ78(図3(b)の向かって左側のブッシュ78)の端部は、ハウジング本体部68内のハウジング室48と連通可能に設けられる。
【0050】
図5に示されるように、ハウジング固定孔20bは、通気孔96を介してハウジング室48と通気するように設けられる。ハウジング取付用貫通孔58に沿ってハウジング取付ねじ62を貫通させ、前記ハウジング取付ねじ62のねじ部62aをブッシュ78のねじ部78aと螺合させることにより、軸方向の締結力が作用して基体12とハウジング本体部68とが一体的に締結(固定)される。
【0051】
なお、本実施形態では、ブッシュ78のねじ孔によってハウジング固定孔20bを形成しているが、前記ブッシュ78を設けることがなくハウジング本体部68のフランジ部20aに直接ねじ孔を刻設してハウジング固定孔20bとしてもよい。また、本実施形態では、締結手段としてハウジング取付ねじ62を例示しているが、これに限定されるものではなく、例えば、一端部にねじ部が刻設されたボルトや他のねじ部材等を用いてもよい。
【0052】
ハウジング取付ねじ62を介してハウジング本体部68と基体12とが固定された際、基体12の前面12bとブッシュ78を含むフランジ部20aとが接触する合わせ面100が構成される。この合わせ面100には、何らシール部材が設けられておらずシールされていない。
【0053】
この結果、ハウジング本体部68内のハウジング室48は、防水通気部材98、通気孔96、ブッシュ78のねじ部78aとハウジング取付ねじ62のねじ部62aとの螺合部位、及び、合わせ面100からなる第1の通気経路102aを経由して外部空間と通気するように設けられる(図5の破線参照)。
【0054】
また、基体12のハウジング取付用貫通孔58の内壁面とハウジング取付ねじ62の外周面との間には、クリアランス104が形成されている。さらに、ハウジング取付ねじ62の頭部62bによる押圧力によって、ハウジング取付ねじ62の頭部62bと係合するワッシャ63の座面が基体12の後面12aと接触して固定面106が形成される。この固定面106には、何らシール部材が設けられておらずシールされていない。
【0055】
この結果、ハウジング本体部68内のハウジング室48は、前記した防水通気部材98、通気孔96、ブッシュ78のねじ部78aとハウジング取付ねじ62のねじ部62aとの螺合部位、クリアランス104、及び、固定面106からなる第2の通気経路102bを経由して外部空間と通気するように設けられる(図5中の破線参照)。なお、ハウジング取付ねじ62に軸方向に沿って延在する図示しない連通路を形成し、連通路を介して通気孔96と固定面106とを連通させるようにしてもよい。
【0056】
この場合、第1の通気経路102a及び第2の通気経路102bのいずれか一方の通気経路を経由して、ハウジング室48と外部空間とを通気させてもよい。又は、第1の通気経路102a及び第2の通気経路102bの両方の通気経路を経由して、ハウジング室48と外部空間とを通気させてもよい。
【0057】
なお、ブッシュ78とハウジング取付ねじ62との螺合部位は、ハウジング固定孔20bの内径部として機能するものであり、ハウジング取付ねじ62のねじ部62a(雄ねじ)の山部とブッシュ78のねじ部78a(雌ねじ)の谷部とが噛み合ったとき、その山部と谷部との間のクリアランスによって通気経路(呼吸通路)が形成される。
【0058】
通気経路の第2実施形態を図6に示す。この第2実施形態に係る通気経路102cでは、ハウジング本体部68のフランジ部20aと基体12とが接触する合わせ面100に溝部108を形成し、前記溝部108が外部空間と連通するように設けられている点に特徴がある。
【0059】
すなわち、基体12の前面12bと接触する合わせ面100において、ブッシュ78の座面及びハウジング本体部68のフランジ部20aの一部を切り欠いて溝部108を形成する。この溝部108によって、ブッシュ78のねじ部78a及びハウジング取付ねじ62のねじ部62bの螺合部位と、外部空間との間を連通させることができる。
【0060】
この溝部108を形成することにより、ハウジング室48と外部空間との間の通気性能をより一層向上させることができる。なお、溝部108は、合わせ面100であれば基体12側に形成してもよい。
【0061】
補強リブ20cは、ハウジング固定孔20bの周辺部位から周壁部20の角部に向かって平面視して略L字状に延在するように設けられる。補強リブ20cと周壁部20との間には、軽量化を達成するための肉抜き孔部20dが設けられる。
【0062】
前記ハウジング室48内には、コイル組立体72や制御基板74等の電気部品が収容される。コイル組立体72は、ボビンに電線が巻回されて構成されたソレノイドコイルや可動鉄心及び固定鉄心等を含む。制御基板74は、図示しない電子回路がプリントされた矩形状の基板本体に、例えば、半導体チップ、コンデンサ、ダイオード等の電子部品が実装される。
【0063】
なお、通気孔96は、基板本体に実装された発熱電子部品の近傍部位に配置されているため、発熱電子部品から発生した熱を、前記通気孔96を通じて外部空間へ逃がすことができる。
【0064】
図2に示されるように、制御基板74は、ワイヤボンディング78によって、ハウジング本体部68に設けられた端子部80と電気的に接続されている。この制御基板74は、車両に設けられた図示しない各種センサから得られた検出情報や、予め記憶されたプログラム等に基づいて、電磁弁57やモータ14等を制御するように設けられている。
【0065】
図1及び図3(b)に示されるように、雄コネクタ部70aは、ハウジング本体部68と一体的に形成された有底筒状の雄コネクタハウジング71と、雌コネクタ部70b側に向かって突出した複数のコネクタピン82とを有する。
【0066】
一方、雌コネクタ部70bは、前記雄コネクタハウジング71と着脱自在に設けられた有底筒状の雌コネクタハウジング73と、前記雄コネクタ部70aのコネクタピン82が挿入されて電気的に接続される図示しないピン受け部とを有する。
【0067】
さらに、図2に示されるように、ハウジング本体部68のハウジング室48は、基体12の挿通孔40(内壁)とモータ14の給電部34との間に形成された間隙44を介して、モータハウジング22内のモータ室46と通気(連通)するように設けられる。この結果、連通孔88を介してハウジング室48とコネクタ室86とが連通するように設けられ(図7参照)、さらに、通気孔96を介してハウジング室48と外部空間とが通気するように設けられている(図5参照)。このため、モータハウジング22内のモータ室46は、外部空間と通気して大気圧に保持される。
【0068】
本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0069】
本実施形態では、ハウジング取付ねじ62で基体12とハウジング本体部68とを一体的に締結(固定)した際、ハウジング固定孔20bの内径部(ブッシュ78のねじ部78aとハウジング取付ねじ62のねじ部62aとの螺合部位)を通じて、ハウジング室48と外部空間とが通気可能に設けられている。
【0070】
従って、本実施形態では、従来技術のように通気孔96が外部空間に露出することがなく、外部から水が浸入しにくいハウジング固定孔20bを利用して通気させることができる。この結果、本実施形態では、ハウジング本体部68内のハウジング室48への水の浸入を好適に阻止することができる。
【0071】
また、本実施形態では、ハウジング室48が、基体12とハウジング本体部68のフランジ部20aとの合わせ面100、及び、ハウジング取付ねじ62の頭部62bによるワッシャ63の座面と基体12との固定面106のいずれか一方を経由して、外部空間と通気可能に設けられる。このように構成することにより、通気孔96の位置に水が直接当たることを効果的に防止しながら、ハウジング室48と外部空間との通気を行うことができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、ハウジング固定孔20bに、ハウジング室48に臨む通気孔96(開口)が形成され、前記通気孔96が、ハウジング本体部68の内部側から防水通気部材98によって被覆されている。このように構成することにより、防水通気部材によって防水及び通気させることができると共に、例えば、高圧洗浄作業時において、高圧な洗浄水が防水通気部材98(通気孔96の位置)に対して直接当たることが好適に回避され、より確実な防水構造とすることができる。
【0073】
さらにまた、本実施形態では、ハウジング本体部68のフランジ部20aに、ハウジング取付ねじ62と螺合するブッシュ78が設けられ、ハウジング取付ねじ62とブッシュ78との螺合部位を通じてハウジング室48と外部空間とが通気可能に設けられる。このように構成することにより、例えば、樹脂製材料でハウジング本体部68を形成した場合であっても、ハウジング取付ねじ62でハウジング本体部68と基体12とを固定しつつ、ハウジング取付ねじ62とブッシュ78との螺合部位を通じて、ハウジング室48と外部空間とを確実に通気することができる。
【0074】
またさらに、本実施形態では、ハウジング取付ねじ62が、基体12を貫通してハウジング本体部68のフランジ部20aに形成されたハウジング固定孔20bに対して螺着される。このように構成することにより、ハウジング固定孔20をハウジング室48に臨むように容易に形成することができ、簡単な構造で防水通気構造とすることができる。
【0075】
またさらに、本実施形態では、基体12とハウジング本体部68のフランジ部20aとの合わせ面100に、外部空間と通気する溝部108が形成される。このように構成することにより、合わせ面100に形成された溝部108を介して、ハウジング室48と外部空間とを簡便に通気させることができる。
【0076】
本実施形態では、図3(b)に示されるように、2つ設けられているハウジング固定孔20bのうち、雄コネクタ部70aに近接して配置された単一のハウジング固定孔20bのみが、ハウジング室48と連通している場合を、その一例として説明しているが、これに限定されるものではなく、2つ設けられているハウジング固定孔20bの両方がそれぞれハウジング室48と連通するようにしてもよい。また、本実施形態では、2つのハウジング取付用貫通孔58が設けられている場合を例示しているが(図1参照)、これに限定されるものではなく、例えば、図示しない4つのハウジング貫通孔を設け、前記ハウジング貫通孔に対応する4つのハウジング固定孔のうち、少なくとも1個のハウジング固定孔がハウジング室48と連通するように設けられていればよい。換言すると、複数のハウジング固定孔のうち、少なくともその1つがハウジング室48と連通するように設けられるとよい。
【0077】
なお、上記の説明では、自動二輪車に好適に用いられるブレーキ制御装置10を例示しているが、前記した技術的事項を自動四輪車に用いられるブレーキ制御装置に適用しても差し支えない。
【符号の説明】
【0078】
10 ブレーキ液圧制御装置(液圧制御装置)
12 基体
16 コントロールハウジング(ハウジング)
20b ハウジング固定孔(固定孔)
48 ハウジング室
62 ハウジング取付ねじ(締結手段、ねじ部材)
63 ワッシャ(締結手段)
72 コイル組立体(電気部品)
74 制御基板(電気部品)
78 ブッシュ
96 通気孔
98 防水通気部材
100 合わせ面
106 固定面
108 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体の一面に取り付けられ、電気部品を内部に収容するハウジングとを備え、前記ハウジングには、締結手段を介して前記基体と固定するための固定孔が形成された液圧制御装置において、
前記固定孔は、前記ハウジング内のハウジング室と連通するように設けられ、
前記締結手段で前記基体と前記ハウジングとを固定した際、前記固定孔の内径部を通じて前記ハウジング室と外部空間とが通気可能に設けられることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の液圧制御装置において、
前記ハウジング室は、前記基体と前記ハウジングとの合わせ面、及び、前記締結手段の座面と前記基体との固定面の少なくともいずれか一方を通じて、外部空間と通気可能に設けられることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の液圧制御装置において、
前記基体と前記ハウジングとの合わせ面には、外部空間と通気する溝部が形成されることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の液圧制御装置において、
前記固定孔には、前記ハウジング室に臨む開口が形成され、前記開口は、前記ハウジングの内部側から防水通気部材によって被覆されることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の液圧制御装置において、
前記締結手段は、ねじ部を有するねじ部材からなり、前記ねじ部材は、前記基体を貫通して前記固定孔に対して螺着されることを特徴とする液圧制御装置。
【請求項6】
請求項5記載の液圧制御装置において、
前記ハウジングには、前記ねじ部と螺合するブッシュが設けられ、前記ブッシュには、前記固定孔が形成されることを特徴とする液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−111334(P2012−111334A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261440(P2010−261440)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】