説明

液圧式に操作可能な排ガスフラップ

【課題】正確かつ無段階に制御されることが可能であり、少ない設置空間で、幅広い温度上の適用範囲を有する排ガスフラップ装置を提供する。
【解決手段】自動車の排ガストレイン2中のフラップ装置1であって、排ガスフラップ3を有し、この排ガスフラップ3の運転姿勢がスレーブシリンダ4を介して制御可能であって、スレーブシリンダ4が液圧配管6を介してマスターシリンダ5と接続されている前記フラップ装置1において、液圧フルードとして液体金属が使用されることを特徴とする前記フラップ装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の排ガストレイン中のフラップ装置であって、排ガスフラップを有し、この排ガスフラップの運転姿勢がスレーブシリンダを介して制御可能であるものに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術からは、排ガスフラップを有する排ガスシステムの多くの応用が公知である。これらは、例えばあるバイバスをリリースしたり、または調整された運転で空気流量及び/又は排ガス流を意図的に方向転換するために使用される。排ガスフラップは、ディーゼルパティキュレートフィルターおよび排ガスリターンフローのための熱管理においてや、または音および有害物質の放出を変更したり、そして内燃機関の出力を排ガスの排圧制御によって向上するために適用範囲を見出している。
【0003】
公知の排ガスフラップは、およそ常にバキュームボックス(Unterdruckdosen)によって制御される。これらバキュームボックスは、「開いている」状態と「閉じている」状態の間のコントロールされていない運転のみしか可能としないという欠点を有する。排ガスフラップの開口姿勢の角度に関する無段階の微調整は、公知のバキュームボックスによっては実現不可能である。
【0004】
電気式の調整アクチュエータによって駆動される排ガスフラップもまた同様に先行技術から公知である。これによって、確かに開口姿勢の個々の段階づけが実現可能であるが、しかしこれは排ガストレインの、高い排ガス温度が行渡っている領域には導入することができない。例えば、内燃機関のエキゾーストマニホールドに直接使用することは不可能である。
【0005】
さらに、先に記載した、使用されており、かつ公知の排ガスフラップの周辺装置は、排ガストレインのすぐ周囲に相応して大きな設置空間を必要とする。ここで、ちょうどマニホールドの領域に、少ない空間した存在しないということは、不利益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、正確かつ無段階に制御されることが可能であり、少ない設置空間を必要とし、そして幅広い温度上の適用範囲(Einsatzspektrum)を有する排ガスフラップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を請求項1に記載の特徴によって、スレーブシリンダが液圧式に制御可能であることによって解決する。
【0008】
本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載の特徴によって解決される。
【0009】
スレーブシリンダを介した排ガスフラップの液圧式の操作によって、無段階に調整可能な排ガスフラップを、車両における排ガストレイン中のおよそあらゆる任意の部分に柔軟に配置することが可能である。排ガスフラップは、その運転姿勢をスレーブシリンダを介して調整され、完全に開いた状態と完全に閉じた状態の間で無段階に制御可能である。さらに本発明に係るフラップ装置は、少ない設置空間のみしか必要とせず、そして広範に及んで温度依存せず駆動可能である。ここで温度依存性は、使用される液圧流体の温度特性のみに決定的に支配される。フラップ機構の機能性は、マニホールドで発生する1000℃に至る排ガス温度においても与えられる。
【0010】
好ましくは、スレーブシリンダは、液圧式配管を介してマスターシリンダと接続されている。液圧式配管によって、スレーブシリンダもマスターシリンダも、自動車内のおよそあらゆる任意の場所に至らしめることが可能である。排ガスフラップと付随する調整アクチュエータに関しての設置空間の問題点は、本発明に係る解決策のバリエーションにより考慮の対象から外れる。
【0011】
特に有利な実施形においては、液圧フルードとして液体金属が使用される。液体金属は、マスターシリンダの各動作をスレーブシリンダに伝達するので、これらは対応して動作する。マスターシリンダとスレーブシリンダが典型的なシリンダピストン装置の形式からなっているとき、液圧配管のマスターシリンダによる圧力付勢によって、スレーブシリンダの一次的な動作が行われる。
【0012】
液体金属は特に低い融点を有しており、この融点はー20℃を下回る。これによって、コールドスタート態様における低い外部温度においても、広い適用範囲が生じる。スレーブシリンダがフラップ機構と接触すると、しばしば600℃に至る高い温度が、排ガス流中に含まれる熱の熱伝導により発生する。液体金属は、1000℃より高い沸点を有する。排ガス熱による液圧フルードの熱的影響は、よって危機的ではない。これによって、内燃機内の使用中のすべての温度領域が、フルード形態である液体金属の熱的特性によってカバーされる。好ましくは液体金属としては、主合金構成元素ガリウム、インジウムおよびスズを有するガリンスタン(Galinstan)が使用される。特に重量組成で65%から70%のガリンスタン(Galinstan)、20から25%のインジウム(Indium)、5から15%のスズ(Stannum)および0から2%のビスマス(Bismuth)および0から5%のアンチモン(Antimon)である。液圧式の連結の別のメリットは、ローメンテナンスまたはメンテナンスフリーな作動である。
【0013】
発明に係る実施形では、排ガスフラップはスレーブシリンダと機械的に連結されている。したがってスレーブシリンダによって実行される動作は、例えば接続ロッドによってや直接に、排ガスフラップに伝達されることが可能である。排ガスフラップのスレーブシリンダとの機械式の連結は、特に、その温度非依存性と丈夫さによって際立っている。
【0014】
好ましくは、スレーブシリンダは調整アクチュエータと連結されている。その際、調整アクチュエータは、リニアアクチュエータとして、特に好ましくは電磁ストロークアクチュエータ(Hubaktor)としてか、又はピエゾスタックアクチュエータ(Piezosteckaktuator)として形成されている。さらに本発明の枠内にて、リニアモーター、ギヤードモーター、またはその他の電気若しくは電子調整アクチュエータが使用されることが可能である。アクチュエータは、機械式または電気式に駆動可能であり、そのコントロールは、機械化されてかまたは自動的に行われる。アクチュエータの小さな動作距離においても作動することができるように、通過開口部を狭くすることによる、液圧式の力/経路変換部(Kraft-/Wegumsetzung)が推奨される。相応する機械式のまたは液圧式の変換の際、ピエゾ電気式の重ね型アクチュエータ(Stapelaktor)が、調整アクチュエータとして使用されることが可能である。調整アクチュエータは、排ガストレインに対して間隔を有するその組込位置に基づいて、少ない温度負荷のみにさらされる。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形では、排ガスフラップが、排ガストレインの内部輪郭に適合された絞りとして形成されている。これによってこの排ガスフラップは「閉じた」姿勢で、排ガストレインの内側の全横断固定面(Querspannflaeche)をカバーする。
【0016】
好ましくは、絞りは排ガストレイン内で回転軸の周りを回転可能に設けられている。この絞りは、よって、排ガストレインの内側の横断固定面が完全にカバーされている「閉じた」姿勢から、「開いた」姿勢へと回転されることが可能であるので、排気ガスの最大限の通過が行われる。有利な構造では、フラップはそれ自体バタフライ排ガスフラップとして形成される。その際、このフラップは、排ガストレインの中央の回転軸の周りを中心対称(zentrosymmetrisch)に回転する。本発明の方向で、偏心して回転可能に設けられた排ガスフラップもまた実現可能である。この際、回転軸は排ガストレインの中央に対してずれている。回転軸はセラミックブッシュを介して支承されており、そして透き間をふさいでいるので、申し分のない機能が、高い排ガス温度において保持されたままである。本発明の別の実施形は、スライダーとして形成された排ガスフラップにより実現される。本発明の枠内で、排ガストレイン内のバルブにより駆動もまた可能である。よって、例えばAGRバルブが、発明に従い液圧配管を介して液体金属により駆動されることが可能である。
【0017】
好ましくは、排ガスフラップの作動姿勢の角度が、センサーによって検出可能である。望まれる排ガス流量率に応じて、自動車の排ガスフラップは、その回転軸の周りで角度調整されることにより、一つの作動姿勢を有する。この作動姿勢は、第一にスレーブシリンダによって調整され、また他方、流れ抵抗によっても影響される。よって作動姿勢の正確な位置が常に検出され、これらは回転角度として計測される。計測された角度を介して、排ガストレイン中の開かれた面積が計算され、そしてそのようにして排気ガスのフローレートが算出される。
【0018】
その際、特に好ましくは、センサーが二つの逆回転する(gegenlaufige)ディファレンシャルポテンショメータにより形成される。両ディファレンシャルポテンショメータを有する装置によって、排ガストレインに隣接する温度による特有の抵抗値の変化が影響されない。ディファレンシャルポテンショメータの、上昇する特有の抵抗は、逆回転するディファレンシャルポテンショメータの、上昇する特有の抵抗によって相殺される。本発明の枠内で、センサーはまた、ディファレンシャル式のキャパシタンスメータにより形成されることが可能である。これによって、適用された計測方法が消耗が無いというメリットが特に生じる。
【0019】
よって、本発明に係る自動車の排ガスフラップ装置は、少ない温度負荷に基づくアクチュエータの長い耐久年限、逆回転するディファレンシャルポテンショメータによる簡単な角度検出、そして追加的な冷却部を必要としないので、コスト面で安価であって簡単な構造という点で際立っている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】排ガストレイン中の排ガスフラップを有するフラップ装置
【図2】排ガストレイン中の排ガスフラップ
【発明を実施するための形態】
【0021】
図中では同じまたは類似の部品には同一の符号がふされており、その際、繰り返しの説明が簡単化の理由から省略されていたとしても、対応するまたは比較可能なメリットが達成されることが可能である。
【0022】
図1は、自動車の排ガストレイン2におけるフラップ装置1を示している。ここで排ガスフラップ3は、排ガストレイン2中にあり、スレーブシリンダ4を介して駆動される。スレーブシリンダ4は、液圧配管6を介してマスターシリンダ5と接続されている。マスターシリンダ5は、調整アクチュエータ7と連結されている。調整アクチュエータ7の動作は、したがってマスターシリンダ5に伝えられ、このマスターシリンダが自身の動作を液圧配管6を介してスレーブシリンダ4に伝える。排ガスフラップ3は、その「閉じた」位置で、これが内部輪郭8に完全に接することにより排ガストレイン2を完全に閉じる。この排ガスフラップは、スレーブシリンダ4と機械的に連結されているので、スレーブシリンダ4の動作は、ここに示されている実施バリエーションでは、回転軸9周りでの排ガスフラップ3の回転へと転換される。排ガスフラップ3の回転により、角度10での開口姿勢が生じ、よって排ガス流Aが排ガストレイン2を通ってながれることが可能である。
【0023】
図2は、排ガストレイン2の簡易化された断面図を示す。ここに表わされた視線方向により、排ガスフラップ3は、「閉じた」姿勢で示される。これは、その外側の形状が排ガストレイン2の内部輪郭8に適合されていることにより、「閉じた」姿勢で排ガストレイン2を閉鎖する。ここでは示されていないスレーブシリンダの動作によって、排ガスフラップ3の回転軸9周りの回転が行われる。ここで動作位置は、センサー11によって検出される角度位置である。
【符号の説明】
【0024】
1 フラップ装置
2 排ガストレイン
3 排ガスフラップ
4 スレーブシリンダ
5 マスターシリンダ
6 液圧配管
7 調整アクチュエータ
8 内側輪郭
9 回転軸
10 角度位置
11 センサー

A 排ガス流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の排ガストレイン(2)中のフラップ装置(1)であって、排ガスフラップ(3)を有し、この排ガスフラップの運転姿勢がスレーブシリンダ(4)を介して制御可能であって、スレーブシリンダ(4)が液圧配管(6)を介してマスターシリンダ(5)と接続されている前記フラップ装置(1)において、
液圧フルードとして液体金属が使用されることを特徴とする前記フラップ装置。
【請求項2】
排ガスフラップ(3)がスレーブシリンダ(4)と機械的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のフラップ装置。
【請求項3】
マスターシリンダ(5)が調整アクチュエータ(7)と連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフラップ装置。
【請求項4】
調整アクチュエータ(7)がリニアアクチュエータとして形成されていることを特徴とする請求項3に記載のフラップ装置。
【請求項5】
排ガスフラップ(3)が、排ガストレイン(2)の内部輪郭(8)に適合された絞りとして形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフラップ装置。
【請求項6】
絞りが、排ガストレイン(2)内の回転軸(9)の周りを回転可能に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のフラップ装置。
【請求項7】
運転姿勢の角度位置(10)がセンサー(11)によって検出可能であることを特徴とする請求項1から6のいずか一項に記載のフラップ装置。
【請求項8】
センサー(11)が逆回転する二つのディファレンシャルポテンショメータにより形成されていることを特徴とする請求項7に記載のフラップ装置。
【請求項9】
センサー(11)がディファレンシャルキャパシタンスメータにより形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載のフラップ装置。
【請求項10】
液体金属が、主合金構成元素としてガリウム、インジウムおよびスズを有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のフラップ装置。
【請求項11】
フラップ装置が、液圧式の力経路変換部を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のフラップ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−127596(P2011−127596A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275769(P2010−275769)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】