説明

液晶カラーフィルター用研磨フィルム

【課題】液晶カラーフィルター製造工程で該フィルター上に発生する様々な硬度を有する異物等を安定して高研磨レートで除去でき、高い研磨面品位を得ることができる液晶カラーフィルター用研磨フィルムを提供する。
【解決手段】研磨フィルム1を基材フィルム10と基材フィルム10上に固着・形成した研磨層20とから構成し、研磨層20はバインダ樹脂21とバインダ樹脂21によって固定化された多数の研磨材粒子22とを含む。バインダ樹脂21として、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂を用い、バインダ樹脂21の、応力−ひずみ曲線から求められる破壊エネルギーの値を、0.1±0.05N/mの範囲とする。更に、研磨材粒子22として、平均球形度Ψwが0.6以上でかつ平均粒子径が0.3μmのαアルミナを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶カラーフィルター用研磨フィルムに関し、更に詳しくは、液晶ディスプレイに使用される液晶カラーフィルターの製造工程で該フィルター上に発生する異物等を除去するための研磨フィルム(研磨テープ)に関する。
【背景技術】
【0002】
TV、PC、携帯電話等の液晶ディスプレイには、フルカラー表示を実現するため、R(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルターが使用されている。液晶ディスプレイにおいて、RGBカラーフィルターの画素は、電極基板の片側に配列され、必要に応じてR、G、B素子間にブラック層(ブラックマトリックス:BM)が形成される。素子が形成されたカラーフィルター上には、色層の保護や平滑性を目的としてポリイミドなどで保護膜(オーバーコート層)が形成される。
【0003】
カラーフィルターの製造方法としては、各種の方法が開発、検討されている。フィルター製造法を大きく分類すると、有機材料を着色層として利用する有機フィルターと、無機材料を用いた無機フィルターと、これらの組み合わせによる複合フィルターとがある。この中で、主流は有機フィルターであり、染色法、分散法、印刷法、電着法など様々な工法が確立されている。これらの各種方法で作製されたカラーフィルターは、背面TFTガラス基板と共にスペーサーを介して液晶を封入し、偏光板やバックライトモジュールと組み合わされて液晶ディスプレイとなる。
【0004】
近年、液晶ディスプレイは、動画再生時の応答速度を向上させるために、カラーフィルターとTFTガラス基板との間(セルギャップ)を従来の10μm程度から5μm又はそれ以下に狭ギャップ化する傾向にあり、カラーフィルター上に微小な異物や突起があると、この狭ギャップ化が妨げられ、高応答速度の実現が図れないため、大きな問題となってきた。
【0005】
カラーフィルター上に発生する突起は、従来から専用の検査装置で突起高さを計測した後、除去するプロセスが確立されている。また、異物除去の方法は、レーザーによる除去や研磨フィルムよる除去、及びこれらを複合した方法が主流となっている。これらの研磨方法や研磨フィルムは、例えば、特開平8−25205号公報、特開平9−57634号公報、特開2001−62696号公報、特開2002−154061号公報等に開示されている。
【特許文献1】特開平8−25205号公報
【特許文献2】特開平9−57634号公報
【特許文献3】特開2001−62696号公報
【特許文献4】特開2002−154061号公報
【0006】
しかしながら、カラーフィルター上に発生する異物や突起は、例えば、ガラス基板から発生するガラスカレット、送液ライン中から混入する金属質の異物、オーバーコート材料の凝集物、未溶解物等で、その硬度や大きさが様々であり、従来用いられている研磨フィルムでは、これらの異物や突起を均一に除去することが困難になってきた。
【0007】
そのため、より研磨力の高い研磨フィルムによる加工を試みると、金属やガラス質の異物や突起は比較的効率的に除去することができるが、その仕上げ面粗さは悪く、カラーフィルター表面にダメージを与えてしまう。また、反対にカラーフィルターのダメージを考慮して微細な研磨材を用いた研磨フィルムによる加工では、仕上げ面粗さは良好であるが、研磨効率が悪いために、ガラスや金属質の突起が除去しきれずに残留してしまったり、仕上げ処理に長時間を要するといった問題が発生している。
【0008】
更に、カラーフィルターの検査工程では、異物や突起の位置や形状、大きさは計測することが可能であるが、異物や突起の種類まで分類することは不可能であり、突起の種類によって研磨テープを使い分けることは実質上不可能である。そのため、一つのテープで多種の異物や突起を均一に、しかもカラーフィルターにダメージを与えず除去することができる研磨テープが望まれていた。
【0009】
また、通常の粉砕粉を研磨材として用いた研磨フィルムでは、研磨材砥粒を粉砕する際に、破片のサイズ、形状などの破砕のされ方をコントロールすることは困難であるため、単に粉砕された砥粒は均一にはならず、サイズ、形状などの点でばらつきがある。そのため、このような一般研磨材を砥粒として用いると粉砕された破砕面は不規則に角があり、また鋭く鋭利な角を有するものもあり、研磨時に液晶カラーフィルター表面に不必要なダメージを与えることになってしまう。更に、このような不定形の砥粒では、特に樹脂質の異物を除去する場合、砥粒−砥粒間に目詰まりが発生し易く、高い研磨レートを長時間にわたって維持することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に着目してなされたもので、液晶カラーフィルター製造工程で該フィルター上に発生する様々な硬度を有する異物や突起を安定して高研磨レートで除去でき、なおかつ高い研磨面品位を得ることができる液晶カラーフィルター用研磨フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明によれば、基材上に研磨材粒子をバインダ樹脂で固定化した液晶カラーフィルター用研磨フィルムにおいて、研磨材粒子の平均球形度Ψwが0.6〜1.0であり、バインダ樹脂の、応力−ひずみ曲線から求められる破壊エネルギーの値が0.1±0.05N/mの範囲であることを特徴とする液晶カラーフィルター用研磨フィルムが提供される。
【0012】
本発明において、基材としては、PET、PENなどのプラスチックを好ましく用いることができるが、これに限定されるものではない。基材の厚さは、12ミクロンから75ミクロンが好ましく、特に25ミクロンが好ましい。
【0013】
本発明において、研磨材粒子としてαアルミナを好ましく用いることができる。また、研磨材粒子の平均粒子径は、0.05〜1.0μmであることが望ましい。
【0014】
研磨材粒子の球形度Ψwは、電子顕微鏡による粒子の観察結果から、長軸に接する円の直径と短軸に接する円の直径の比から求める値である。つまり、球形度Ψwの値が1.0である場合には真球であり、Ψwの値が1.0より小さくなる程、球状から離れた形状になっていることを示す。
【0015】
本発明では、球形度Ψwが0.6から1.0の研磨材粒子を用いる。これは以下の理由による。
【0016】
研磨材粒子の球形度Ψwが研磨面に与える影響について検証するため、各球形度の研磨材粒子(平均粒子径0.3μm)を用いた研磨フィルムを作製し次のように評価した。それぞれ10mm×10mm×5mmの石英ガラスブロックをワークとして、加工圧500g、研磨ストローク100mm、研磨回数50サイクルの条件にて石英ブロックを研磨し、微分干渉顕微鏡(カールツァイス社製Axio Plan、観察倍率×510.2)により研磨面上のスクラッチを評価した。ここでは研磨後の石英ガラスに発生しているスクラッチ本数が3本以下の場合、良好とし、4本以上の場合を不良とした。その結果、研磨材粒子の球形度Ψwが0.6以上ではスクラッチ発生頻度が少なく、高研磨面精度を得られることがわかった。反対に球形度Ψwが0.6を下回っている場合にはスクラッチ発生頻度が増加し、被研磨物にダメージが大きいことが確認された。評価結果を図2に示す。
【0017】
球形度Ψwが0.6以上の球状研磨材ではまた、通常の鋭利な角を有する不定形の研磨材と比較して、同一圧力下で砥粒の切り込み深さは同等であるが、球状砥粒に掛かる接触面積は増大する。その結果、一つの砥粒で除去される面積も増大するために、粉砕粉より研磨レートが高くなる。また、球状粒子の場合、広い接触面積で被研磨物を除去するために、鋭利な先端での引っかき除去の集合体である粉砕粉の場合に比較して、生成される研磨面粗さを良好に保つことができる。
【0018】
更に、充填率(バインダ樹脂中の研磨材体積濃度)が同等で比較的高い場合、球状粒子では、不定形粒子の集合体である粉砕粉に比較して、研磨材−研磨材間隙が比較的広くなるため、目詰まりの問題が発生しづらく、高い研磨レートを長時間にわたって維持することが可能である。特に、樹脂質の異物を除去する場合には目詰まりの問題は深刻であったが、球状粒子を用いた場合には、この問題も回避することができる。なお、上記充填率は、被研磨物に応じて最適値が決められる。
【0019】
球形度Ψwが0.6未満では、形状が不定形に近づくため、上述した接触面積や目詰まり回避特性が劣ってくる。なお、球形度Ψw1.0は真球であるために、これより大きな値になることはない。
【0020】
本発明において、バインダ樹脂の、応力−ひずみ曲線から求められる破壊エネルギーの値は、0.1±0.05N/mの範囲である。なお、バインダ樹脂の破壊エネルギーとは、研磨材粒子を拘束・保持している状態の硬化又は乾燥したバインダ樹脂の破壊エネルギーを意味する。また、応力−ひずみ曲線は、JIS K7161に準拠した測定方法に従って以下のように求められる。
【0021】
すなわち、一定の形状に作製された試験片(例えば100mm×10mm、厚さ0.02mm)を用い、ISO5893に準拠した試験機によって、試験片が破壊に至るまで、又は応力(荷重)もしくはひずみ(伸び)が規定値に達するまで、試験片を主縦軸に沿って一定速度で引っ張り、その間に試験片に掛かる荷重と伸びを測定する。試験中の荷重及びそれに対応する標線間距離及びクロスヘッド(測定用ロードセル)間距離の増加量を自動記録計を用いて応力−ひずみ曲線として記録する。得られた応力−ひずみ曲線の破断点に至るまでに掛かった荷重を引っ張り破壊強度、伸びを引張破壊伸度と呼ぶ。
【0022】
引張破壊強度は次式によって算出される。
σ=F/A
ここで、σ=引張破壊強度(MPa)、F=破壊時の規定ひずみにおける荷重(N)、A=試験片の元の最小断面積(mm2)である。
【0023】
また、引張破壊伸度は次式によって算出される。
ε=(L−Lo)/Lo×100
ここで、ε=引張破壊伸度(%)、L=最大荷重時の標線間距離(mm)、Lo=元の標線間距離(mm)である。
【0024】
破壊エネルギーGf(Fracture Energy Density)は、上述の試験方法によって求めた応力−ひずみ曲線の面積を表す(参考文献:On the transition from continuum nonlocal damage to quasi-brittle discrete crack models. C.Comi et al 2002 GIMC)。
破壊エネルギーは、応力−ひずみ曲線の破断点に至る面積を示すため、引張破壊強度及び引張破壊伸度共に大きな材料程、大きな値になることから、強靭であることが示されている。
【0025】
破壊エネルギーが上記範囲内のバインダ樹脂を用いると、研磨力と研磨面精度の両特性のバランスをとることができる。破壊エネルギーの値が0.05N/m以下のバインダ樹脂を用いると、カラーフィルター表面に対してマイルドに加工が進行するために、研磨面精度は優れているが所望の研磨力を得ることができない。一方、破壊エネルギーの値が0.15N/mを超える硬質なバインダ樹脂を用いた場合には、高い研磨力は得られるが、研磨面に与えるダメージが大きく液晶カラーフィルターの修正には適さない。このように破壊エネルギーの値が0.10±0.05N/mの範囲のバインダ樹脂を用いることが、液晶カラーフィルター修正用研磨フィルムには重要な因子となっている。
【0026】
破壊エネルギーが上記範囲内のバインダ樹脂を用いると、研磨力と研磨面精度の両特性のバランスをとることができる。破壊エネルギーの値が0.05N/m以下のバインダ樹脂を用いると、カラーフィルター表面に対してマイルドに加工が進行するために、研磨面精度は優れているが所望の研磨力を得ることができない。一方、破壊エネルギーの値が0.15N/mを超える硬質なバインダ樹脂を用いた場合には、高い研磨力は得られるが、研磨面に与えるダメージが大きく液晶カラーフィルターの修正には適さない。このように破壊エネルギーの値が0.10±0.05N/mの範囲のバインダ樹脂を用いることが、液晶カラーフィルター修正用研磨フィルムには重要な因子となっている。
【0027】
以上の物性を有するバインダ樹脂としては、ポリウレタン樹脂が好適である。特に、本発明に用いるバインダ樹脂として、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂をイソシアネート化合物により架橋させた系が望ましい。一般にアルミナ粒子は、酸−塩基の分類からは塩基性粒子であるために、バインダ樹脂にカルボキシル基が官能基として存在するポリウレタン樹脂を用いることによって、アルミナ研磨材粒子表面とバインダ樹脂の官能基が相互作用し、分散性を改善し、その結果、粒子の保持力が向上する。すなわち、塩基性顔料であるアルミナ研磨材の表面に対し、酸性官能基を有するバインダ樹脂が吸着しやすいため、粒子表面をバインダ樹脂により完全に濡らすことができ、これにより分散性が向上し、なおかつ粒子表面がバインダ樹脂によって被覆されているため、結果として粒子の保持力が高まる。そのため、液晶カラーフィルターの研磨中に、研磨材粒子のバインダ樹脂からの脱落などによるスクラッチの発生を抑えることが可能となる。なお、バインダ樹脂は単独もしくは二種類以上任意の割合で使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る液晶カラーフィルター用研磨フィルム1の概略断面図である。研磨フィルム1は、基材フィルム10と、基材フィルム10上に固着・形成した研磨層20とからなる。研磨層20は、バインダ樹脂21と、バインダ樹脂21によって固定化された多数の研磨材粒子22とを含む。基材フィルム10としては、厚さ25ミクロンのPETを用いた。バインダ樹脂21としては、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂を用いた。また、研磨層20をなしているバインダ樹脂21の、JIS K7161に準拠した測定方法に従う応力−ひずみ曲線から求められる破壊エネルギーの値を、0.1±0.05N/mの範囲となるように調製した。更に、研磨材粒子22としては、平均球形度Ψwが0.6以上でかつ平均粒子径が0.3μmのαアルミナを用いた。
【0030】
研磨層20は、バインダ樹脂21及び硬化剤を溶媒で均一に溶解すると共に該溶媒(樹脂液)中に研磨材粒子22を分散させてなる塗工液を、基材フィルム10上に塗布し、これを乾燥又は硬化処理することにより製造した。研磨材粒子22は、必要量を秤量し、混合して、サンドミルなどの分散機で樹脂液中に均一に分散される。基材上への塗布手段としては、例えば、ワイヤーバーコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ナイフコーター、ノズル、ダイコーターなどを使用することができる。
【0031】
硬化剤としては、ポリイソシアネートを用いることができ、具体例として、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート等を挙げることができる。これらの硬化剤は単独もしくは二種類以上任意の割合で使用される。
【0032】
研磨層20を形成するための塗工液に使用される溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、酢酸エチル酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、エタノール、イソプロパノール等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの有機溶剤は、バインダ樹脂21及び硬化剤を均一溶解でき、また、研磨材粒子22を安定して分散させることができる。更に、該溶媒は、塗布後、完全乾燥除去されるように、単独もしくは二種類以上任意の割合で使用される。
【0033】
なお、上記塗工液において、必要に応じて他の界面活性剤やカップリング剤などを使用することができる。
【0034】
次に、以上の液晶カラーフィルター用研磨フィルム1の具体例である本発明の実施例1及び2を比較例1から5と比較して、本発明の効果等を説明する。
【実施例】
【0035】
実施例1の研磨フィルムを次のようにして得た。有機溶剤としてのメチルエチルケトンと、カルボキシル基含有バインダ樹脂としてのポリウレタン系樹脂(商品名「ダイフェラミンMAU5022」:大日精化(株)製)とを用いて33wt%の樹脂液を作製した。この樹脂液に対し、研磨材粒子として平均球形度Ψw=0.75、平均粒子径0.3ミクロンのαアルミナ粒子(商品名「AKP−50」:住友化学(株)製)を、サンドミルで均一に混合・分散した後、イソシアネート架橋剤(硬化剤)(商品名「コロネートHX」:日本ポリウレタン工業(株)製)を撹拌しながら加え、その後、濾過精度5μmのフィルターリングを施して塗工液を作製した。この塗工液の組成を表1に示す。この塗工液を、ナイフコーターにより、基材としての、易接着処理を施した厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「SG−2」:帝人(株)製)上に塗布した。コーターの乾燥炉温度は120℃に設定され、塗布後、24時間室温放置し、次いで40℃にて48時間エージングをし、当該研磨フィルムを得た。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例2の研磨フィルム(その塗工液の組成を表2に示す。)は、バインダ樹脂のみをスルフォベタイン基含有ポリウレタン(商品名「タケラックE−780」:三井武田ケミカル(株)製)に変更して、実施例1と同様に作製したものである。
【0038】
【表2】

【0039】
実施例1及び2に対する比較例として、比較例1の研磨フィルムは、実施例1の研磨フィルムに対し、研磨材粒子を、平均球形度Ψw=0.5及び平均粒子径0.3ミクロンの粉砕アルミナ粒子(商品名「WA20000」:(株)フジミインコーポレーテッド製)に、比較例2の研磨フィルムは、平均球形度Ψw=0.36及び平均粒子径0.2ミクロンのシリコーンカーバイト研磨材(商品名「GC30000」:(株)フジミインコーポレーテッド製)にそれぞれ変更して調製したものである。比較例1及び2の塗工液の組成を表3及び4に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
また、比較例3の研磨フィルムは、実施例1の研磨フィルムに対し、バインダ樹脂を無極性のもの(商品名「MAU9022」:大日精化製)に、比較例4の研磨フィルムは、バインダ樹脂を塩基性のものに(商品名「MAU4308」:大日精化製)にそれぞれ変更して調製したものである。更に、比較例5の研磨フィルムは、実施例1の研磨フィルムに対し、バインダ樹脂を、カルボキシル基を含有するポリエステル樹脂(商品名「バイロンGK890」:東洋紡績(株)製)に変更して調製したものである。比較例3〜5の塗工液の組成を表5〜7に示す。
【0043】
【表5】

【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
以上の実施例及び比較例の研磨フィルムについて、JIS K7161に準拠した測定方法に従う応力−ひずみ曲線から求められる破壊エネルギーの値を、オリエンテック社製引張試験機にて測定した。測定条件は、クロスヘッド速度200.0mm/min、試料幅10.0mm、厚さ0.02mm、初期試料長さ50.0mmとし、各試料とも5回応力−ひずみ曲線を測定し、その平均値を用いた。各試料の破壊エネルギーの測定値を表8に示す。
【0047】
【表8】

【0048】
研磨特性は、実際の液晶カラーフィルター上に存在し得る金属性異物、ガラスカレット、樹脂の未溶解物からなる各種硬度の異物を想定し、それぞれ、10mm×10mm×5mmのセンダストブロック、石英ガラスブロック、ポリイミドブロックを作製し、加工圧500g、研磨ストローク100mm、研磨回数50サイクルの条件にて各ブロックをダミー研磨(ダミー研磨用のオリジナル機械を作製して使用)し、そのときの研磨力を求めた。
【0049】
研磨力判定は、硬度の異なるそれぞれのブロックの研磨量がほぼ同等なものを良好とし、硬度差による研磨量のばらつきが大きいものを不良とした。
【0050】
研磨面(上記各ブロックで実施したダミー研磨の研磨面)の評価は、微分干渉顕微鏡(カールツァイス社製Axio Plan、観察倍率×510.2)により、各ブロックの10mm×10mmの研磨面全域におけるスクラッチを次のように評価した。すなわち、スクラッチの発生がないものを◎、観察エリア内に1〜3本のスクラッチが発生しているものを○、4本以上のスクラッチが発生するものを×とした。
【0051】
以上の研磨力及び研磨面評価の結果を表9に示す。
【0052】
【表9】

【0053】
また、実際の液晶カラーフィルターの異物(突起)除去実験も併せて行った。この実験では、液晶カラーフィルター上に存在する各突起の高さを予め測定し、その突起を、カラーフィルター研磨装置で研磨し、研磨後の突起高さが5ミクロン以下になるまでの研磨回数を求め、そのときの加工面状態を上記スクラッチ評価とほぼ同様に評価した。この際、上記研磨回数が1回でかつ加工面状態が◎もしくは○のものを良好と判定し、研磨回数が1回でも加工面状態が×であるか、又は、加工面状態が◎もしくは○でも研磨回数が2回以上の場合、不良(研磨力不足/研磨面悪)と判定した。かかる実験結果を表10に示す。
【0054】
【表10】

【0055】
以上の試験・実験結果から、研磨材粒子の平均球形度Ψwが0.6〜1であり、バインダ樹脂の応力−ひずみ曲線から求められる破壊エネルギーの値が0.1±0.05N/mの範囲であり、バインダ樹脂としてカルボキシル基含有ポリウレタンを用いた、実施例1及び2のような液晶カラーフィルター用研磨フィルムでは、硬度の異なる複数の異物に対しても短時間で所望の研磨力が得られ、なおかつ研磨面状態も良好であることが確認された。その一方、比較例1〜3のように破壊エネルギーの値が上記範囲にあっても、研磨材粒子の球形度が0.6未満の場合、あるいは、比較例5のように酸性バインダを用いても、破壊エネルギーの値が上記範囲外である場合には、研磨力不足や研磨面不良が発生し、液晶カラーフィルターの異物研磨には適さないことも確認された。
【0056】
以上のように、本発明に係る液晶カラーフィルター用研磨フィルムでは、硬度の異なる異物等であっても短時間で良好な研磨力及び仕上げ面精度を得ることができるため、液晶カラーフィルター製造工程で該フィルター上に発生する様々な硬度を有する異物や突起を安定して高研磨レートで除去でき、なおかつ高い研磨面品位を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る液晶カラーフィルター用研磨フィルムの概略断面図である。
【図2】研磨材粒子の球形度Ψwと研磨面上のスクラッチ数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 液晶カラーフィルター用研磨フィルム
10 基材フィルム
20 研磨層
21 バインダ樹脂
22 研磨材粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に研磨材粒子をバインダ樹脂で固定化した液晶カラーフィルター用研磨フィルムにおいて、
研磨材粒子の平均球形度Ψwが0.6〜1.0であり、
バインダ樹脂の、応力−ひずみ曲線から求められる破壊エネルギーの値が0.1±0.05N/mの範囲であることを特徴とする液晶カラーフィルター用研磨フィルム。
【請求項2】
前記研磨材粒子はαアルミナである請求項1に記載の液晶カラーフィルター用研磨フィルム。
【請求項3】
前記研磨材粒子の平均粒子径が0.05〜1.0μmである請求項1又は2に記載の液晶カラーフィルター用研磨フィルム。
【請求項4】
前記バインダ樹脂は、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂をイソシアネート化合物により架橋させたものである請求項1から3のいずれかに記載の液晶カラーフィルター用研磨フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−192540(P2006−192540A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7851(P2005−7851)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(390027443)株式会社TMP (8)
【Fターム(参考)】