液晶ディスプレイのバックライト及び同バックライトの発光制御方法
【課題】 液晶ディスプレイの画像の液晶配向遅れに起因する画像のボヤケを改善することができるバックライトを提供すること。
【解決手段】 n行m列のマトリクス状に配列された複数の液晶表示素子11を備えるとともに、一定時間の行走査を行順に行うことにより各液晶表示素子の光の透過率を変更する液晶ディスプレイに適用されるバックライトであって、複数の電子放出素子21と蛍光体とを備える。各電子放出素子は、互いに隣接する複数の液晶表示素子からなる液晶表示素子群に蛍光体を挟んで対向配置されている。行走査が完了し光の透過率が安定した状態となった時点の液晶表示素子に対向する電子放出素子に、電子放出電圧が付与される。その電子放出素子は電子を蛍光体に照射する。蛍光体は、その電子の照射により、光の透過率が安定した状態となっている液晶表示素子に対して光を発生する。
【解決手段】 n行m列のマトリクス状に配列された複数の液晶表示素子11を備えるとともに、一定時間の行走査を行順に行うことにより各液晶表示素子の光の透過率を変更する液晶ディスプレイに適用されるバックライトであって、複数の電子放出素子21と蛍光体とを備える。各電子放出素子は、互いに隣接する複数の液晶表示素子からなる液晶表示素子群に蛍光体を挟んで対向配置されている。行走査が完了し光の透過率が安定した状態となった時点の液晶表示素子に対向する電子放出素子に、電子放出電圧が付与される。その電子放出素子は電子を蛍光体に照射する。蛍光体は、その電子の照射により、光の透過率が安定した状態となっている液晶表示素子に対して光を発生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子によって光の透過率を制御することにより、表示される画像を切り換える液晶ディスプレイに適用されるバックライト及び同バックライトの発光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られる液晶ディスプレイのバックライトは、管状の冷陰極放電ランプを複数有し、これらのランプを互いに平行に配列させ、その上部に拡散板及び複数の拡散シートを配置した構造を備えている(例えば、特許文献1を参照。)。このようなバックライトは、冷陰極放電ランプによって常に一定の光量の光を発生させている。
【特許文献1】特開2004−235103号公報
【0003】
一方、液晶ディスプレイは、各液晶表示素子の液晶の配向を変更することにより光の透過率を変化させている。液晶の配向を変化させるには、ある程度の時間が必要である。従って、液晶表示素子は、光の透過率を瞬時に変化させることができない。換言すると、液晶表示素子によって変更される光の透過率は、表示したい画像に応じた所望の透過率へと徐々に変化する。この結果、従来のバックライトを適用した液晶ディスプレイにおいては、透過率が所望の透過率に到る途中であって透過率が変化している段階においてもバックライトからの光が透過される。このため、表示される画像にボヤケが生じるという問題がある。
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的の一つは、液晶ディスプレイのこのような画像のボヤケを改善することができるバックライトを提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するための本発明によるバックライトは、
n行m列のマトリクス状に配列された複数の液晶表示素子を備えるとともに、1つのフレーム期間において一定時間の行走査を行順に総ての行に対して行うことにより同複数の液晶表示素子の光の透過率を変更して、同複数の液晶表示素子により表示される画像を切り換える液晶ディスプレイに適用されるバックライトであって、電子放出装置と、蛍光体と、駆動電圧付与回路と、を備える。
【0006】
前記電子放出装置は、
誘電体からなるエミッタ部と同エミッタ部の下部に形成された下部電極と同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成されてなる上部電極とを有し、所定の書込み電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに多数の電子を同エミッタ部に蓄積するとともに所定の電子放出電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに同エミッタ部に蓄積した電子を同エミッタ部から同微細貫通孔を通して放出する電子放出素子を複数備え、同複数の電子放出素子のそれぞれが前記液晶ディスプレイの互いに隣接する複数の前記液晶表示素子からなる液晶表示素子群のそれぞれに対向するようにマトリクス状に配列されている。
【0007】
前記蛍光体は、
前記電子放出素子の上部電極と前記液晶ディスプレイとの間において同上部電極と対向するように配置されるとともに電子の衝突により同液晶ディスプレイに向けて発光するようになっている。
【0008】
前記駆動電圧付与回路は、
前記液晶表示素子群のうちの一つの液晶表示素子群に対する前記行走査が総て終了した後に同一つの液晶表示素子群に属する各液晶表示素子の光の透過率が安定した状態となってから同一つの液晶表示素子群に対する次の行走査が開始するまでの期間において前記複数の電子放出素子のうちの同一つの液晶表示素子群に対向する電子放出素子に前記電子放出電圧を所定時間だけ付与するとともに、同電子放出電圧が付与された電子放出素子に次の前記電子放出電圧を付与するまでの期間において前記書込み電圧を付与するようになっている。
【0009】
これによれば、光の透過率が安定した状態となっている液晶表示素子に対して蛍光体を挟んで実質的に対向している電子放出素子に電子放出電圧が付与される。この電子放出素子には、それまでに書込み電圧が付与されているので、その電子放出素子のエミッタ部には電子が蓄積されている。この結果、光の透過率が安定した状態となっている液晶表示素子に対向している蛍光体(又は蛍光体の部分)に電子が照射され、同蛍光体(又は蛍光体の部分)が光を発生する。そして、その光は、光の透過率が安定した状態となっている液晶表示素子に照射される。従って、液晶配向動作の遅れに起因する画像のボヤケを解消することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施態様において、
前記数値nは2以上の整数Nの倍数であり、前記数値mは2以上の整数Mの倍数であり、前記液晶表示素子群は前記nを前記Nで除したn/N行であって前記mを前記Mで除したm/M列のマトリクス状に配列され、
前記駆動電圧付与回路は、
1つの前記液晶表示素子群を構成する前記液晶表示素子の総てに対する前記行走査が完了した時点を開始時点とし同開始時点から前記N行分の前記行走査に要する時間が経過した時点を終了時点とする1つのサブフレーム期間において、同サブフレーム期間の終了時点において前記行走査が開始される予定の前記液晶表示素子を含む前記液晶表示素子群に対向する前記電子放出素子に前記書込み電圧と前記電子放出電圧とを付与するように構成されることが好適である。
【0011】
この態様は、電子放出装置がn/N行m/M列のマトリクス状に電子放出素子を配列されてなる場合に対応している。この場合、液晶表示素子の一行分の行走査に要する時間をTgとすると、1つのフレーム期間Tfはn・Tgであり、サブフレーム期間は(N・Tg)となる。駆動電圧付与回路は、このような一つのサブフレーム期間において、同サブフレーム期間の終了時点において前記行走査が開始される予定の前記液晶表示素子を含む液晶表示素子群に対向する前記電子放出素子に前記書込み電圧と前記電子放出電圧とを付与し、その電子放出素子に対向している蛍光体(又は蛍光体の部分)から光を発生させる。従って、蛍光体からの光が照射される液晶表示素子は、直前の行走査から十分な時間が経過しているので、その配向の変更が完了して光の透過率が安定している。この結果、液晶の配向作動遅れに起因する表示画像のボヤケを解消することができる。
【0012】
更に、このようなバックライトにおいて、
前記駆動電圧付与回路は、
前記書込み電圧を、同書込み電圧が付与される電子放出素子に対向する前記液晶表示素子群に属する前記複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた電圧に設定するように構成されることが好適である。
【0013】
これによれば、各液晶表示素子群に属する複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた量の電子が、各液晶表示素子群に対向配置されている電子放出素子から放出される。従って、各液晶表示素子群に対向配置されている部分の蛍光体が、各液晶表示素子群に属する複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた量の光を発生する。
【0014】
従って、例えば、表示画像のうちの暗い部分を表示しようとしている液晶表示素子群に対向している蛍光体(又は蛍光体の部分)は、表示画像のうちの明るい部分を表示しようとしている液晶表示素子群に対向している蛍光体(又は蛍光体の部分)よりも少ない量の光を発生する。この結果、電子放出装置及び蛍光体は、液晶表示素子によって無駄に遮蔽されてしまう光の量を低下させることができるので、消費電力の小さいバックライトが提供される。更に、液晶表示素子は、表示画像の暗い部分において蛍光体(又は蛍光体の部分)から発せられた小さな光量の光を遮断し、表示画像の明るい部分において蛍光体(又は蛍光体の部分)から発せられた大きな光量の光を透過させるので、表示画像のコントラストを向上することも可能となる。
【0015】
更に、本発明は上記バックライトにおいて実行されるバックライトの発光制御方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明によるバックライト及び同バックライトの発光制御方法が適用された液晶表示装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「電子の蓄積」と「電子の書込み」は同義として用いられる。
【0017】
(構成)
図1は、この液晶表示装置LDの概略部分断面図である。液晶表示装置LDは、液晶ディスプレイ10とバックライト20とを備えている。液晶ディスプレイ10は、バックライト20の上面側(Z軸正方向側)に配置されている。
【0018】
図2は、液晶ディスプレイ10の平面図である。液晶ディスプレイ10の平面視における形状は長方形である。液晶ディスプレイ10は、液晶表示素子11を、768行(n行)×1024列(m列)のマトリクス状に配列した周知の液晶ディスプレイである。1つの液晶表示素子11は、1つの赤色用液晶素子R、1つの緑色用液晶素子G及び1つの青色用液晶素子Bからなっている。
【0019】
赤色用液晶素子Rは、白色光に含まれる赤色光を透過させる赤色フィルタを備えるとともに、配向制御によって赤色フィルタを透過した赤色光の透過率を変更するようになっている。緑色用液晶素子Gは、白色光に含まれる緑色光を透過させる緑色フィルタを備えるとともに、配向制御によって緑色フィルタを透過した緑色光の透過率を変更するようになっている。青色用液晶素子Bは、白色光に含まれる青色光を透過させる青色フィルタを備えるとともに、配向制御によって青色フィルタを透過した青色光の透過率を変更するようになっている。
【0020】
同一の行に属する液晶表示素子11には、行走査信号(行選択信号)Scが図示を省略した表示制御回路から入力されるようになっている(図15を参照。)。同一の列に属する液晶表示素子11には、赤色用液晶素子R、緑色用液晶素子G及び青色用液晶素子Bのそれぞれに対する画像制御信号Svが表示制御回路から入力されるようになっている。
【0021】
バックライト20は、図1に示したように、電子放出装置20Aと、電子放出装置20Aの上方に配置された発光部20Bとからなっている。
【0022】
電子放出装置20Aは、図2及び電子放出装置20Aの平面図である図3に示したように、複数の電子放出素子21を備えている。電子放出素子21のそれぞれは、8行(N行)8列(M列)のマトリクス状に配列された複数(64個)の液晶表示素子11からなる液晶表示素子群の一つに対向するように配置されている。即ち、複数の電子放出素子21は、96行(=n/N行)128列(=m/M列)のマトリクス状に配列されている。
【0023】
図4は、液晶ディスプレイ10、電子放出装置20A及び発光部20Bの部分拡大断面図である。図4に示したように、電子放出装置20Aの電子放出素子21は、基板21a、下部電極(下部電極層)21b、エミッタ部21c及び上部電極(上部電極層)21dから構成されている。
【0024】
基板21aは、互いに直交するX軸及びY軸により形成される平面(X−Y平面)に平行な上面及び下面を有し、X軸及びY軸のそれぞれに直交するZ軸方向に厚み方向を有する薄板体である。基板21aの平面視における形状は、液晶ディスプレイ10と略同一の長方形である。基板21aは、例えば、ガラス又はセラミックス(好ましくは、酸化ジルコニウムを主成分とした材料)からなっている。
【0025】
下部電極21bは、導電性物質(ここでは、銀又は白金)からなり、基板21aの上面の上に膜状に形成されている。下部電極21bの平面視における形状はX軸方向に長手方向を有する帯状である。下部電極21bのY軸方向の長さ(即ち、帯の幅)は、前述した1つの液晶表示素子群のY軸方向の長さ(即ち、液晶表示素子11のY軸方向長さの約8倍の長さ)と略同一である。
【0026】
エミッタ部21cは、強誘電体(ここでは、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、チタン酸鉛(PT)及びジルコン酸鉛(PZ)の3成分系材料PMN−PT−PZ)からなり、基板21a及び下部電極21bの上面の上に形成されている。エミッタ部21cは、Z軸方向に厚み方向を有する薄板体であり、平面視において基板21aと略同一の長方形状を有している。エミッタ部21cの上面には、強誘電体の粒界による凹凸21c1が形成されている。
【0027】
上部電極21dは、導電性物質(ここでは、白金)からなり、エミッタ部21cを挟んで下部電極21bに対向するようにエミッタ部21cの上部(エミッタ部21cの上面の上)に膜状に形成されている。上部電極21dの平面視における形状はY軸方向に長手方向を有する帯状である。上部電極21dのX軸方向の長さ(即ち、帯の幅)は、前述した1つの液晶表示素子群のX軸方向の長さ(即ち、液晶表示素子11のX軸方向長さの約8倍の長さ)と略同一である。上部電極21dには、図4及び上部電極21dの部分拡大平面図である図5に示したように、複数の微細な貫通孔21d1が形成されている。
【0028】
上部電極21dの厚みtは、0.01μm以上且つ10μm以下であり、好ましくは、0.05μm以上且つ1μm以下である。また、微細貫通孔21d1の周部であってエミッタ部21cと対向する面は、エミッタ部21cの上部から所定距離だけ離間している。この貫通孔21d1の周部(貫通孔の縁部)であってエミッタ部21cと対向する面とエミッタ部21c(エミッタ部21cの上面)との距離の最大値は0μmより大きく且つ10μm以下であり、好ましくは、0.01μm以上且つ1μm以下である。
【0029】
下部電極21b、エミッタ部21c及び白金レジネートペーストからなる上部電極21dは焼成処理によって一体化させられている。この一体化のための焼成処理により、上部電極21dとなる膜が例えば厚み10μmから厚み0.1μmに収縮する。このとき、上部電極21dには前述した複数の微細貫通孔21d1が形成される。
【0030】
以上説明したように、下部電極21bと上部電極21dとは、平面視において重なり合っている。この下部電極21bと上部電極21dとが重なりあった部分は、その部分において下部電極21bと上部電極21dとの間に挟まれたエミッタ部21cと共に、一つの電子放出素子21を形成している。下部電極21b及び上部電極21dは、後に詳述する駆動電圧付与回路31に接続され、駆動電圧Vin(下部電極21bには図3に示したラインSa上の行電圧、上部電極21dには図3に示したラインSb上の列電圧)が付与されるようになっている。なお、駆動電圧Vinは、下部電極21bを基準としたときの下部電極21bと上部電極21dとの電位差であると定義することができる。
【0031】
発光部20Bは、図4に示したように、透明板22、コレクタ電極23及び蛍光体24を備えている。
【0032】
透明板22は、互いに平行な上面及び下面を有し、これらの面に直交する方向に厚み方向を有する薄板体である。透明板22の平面視における形状は、液晶ディスプレイ10と略同一の長方形である。透明板22は、透明な材質(ここでは、ガラス又はアクリル)からなっている。透明板22は、電子放出素子21の上方(Z軸正方向)に、電子放出素子21の上面(上部電極21dの上面)から所定の距離だけ離れた位置に配設されている。透明板22は、その下面が上部電極21d(即ち、電子放出素子21の電子放出部)のなす平面と平行となるように配設されている。
【0033】
コレクタ電極23は、導電性物質(ここでは、透明導電膜,ITO)からなっている。コレクタ電極23は、透明板22の下面の全体に膜状に形成されている。コレクタ電極23には、コレクタ電圧付与回路32が接続され、正の所定電圧(コレクタ電圧)Vcが付与されている。これにより、コレクタ電極23は、電子放出素子21から放出される電子を加速・吸引する電界を形成するようになっている。
【0034】
蛍光体24は、コレクタ電極23を覆うように透明板22の下面において膜状に形成されている。蛍光体24は、電子が衝突すると、その電子により励起状態となり、その励起状態から基底状態へと遷移するときに白色の光を発生するようになっている。このような白色蛍光体としての代表例は、Y2O2S:Tbである。或いは、白色蛍光体は、赤色蛍光体(例えば、Y2O2S:Eu)、緑色蛍光体(例えば、ZnS:Cu,Al)及び青色蛍光体(例えば、ZnS:Ag,Cl)の蛍光体を混ぜ合わせることにより作製することもできる。蛍光体24が発生した光は、透明板22を通して発光部20Bの上方に進行し、液晶ディスプレイ10に入射する。
【0035】
基板21aと透明板22との間に形成される空間は略真空(102〜10−6Paが好ましく、より好ましくは10−3〜10−5Pa)に維持されている。換言すると、基板21a及び透明板22は、図示しない電子放出装置20Aの側壁部とともに密閉空間を形成している。従って、電子放出素子21は、空間形成部材により略真空状態に維持されている密閉空間内に配置されていることになる。
【0036】
ここで、上記のように構成された電子放出素子21の作動原理について説明する。
【0037】
先ず、図6に示したように、下部電極21bの電位を基準とした下部電極21bと上部電極21dの実際の電位差Vka(素子電圧Vka)が正の所定電圧Vpに維持され、エミッタ部21cの電子が総て放出した直後であって、電子がエミッタ部21cに蓄積されていない状態から説明を開始する。このとき、エミッタ部21cの双極子の負極はエミッタ部21cの上面(Z軸正方向、即ち、上部電極21d側)に向いた状態となっている。この状態は、図7に示したグラフ上の点p1の状態である。図7のグラフは、横軸に素子電圧Vkaをとり、縦軸に上部電極21d近傍部分の電荷Qをとったエミッタ部21cの電圧−分極特性のグラフである。
【0038】
この状態において、駆動電圧付与回路31は、駆動電圧Vinを負の所定電圧である書込み電圧(蓄積電圧)Vmに変更する。これにより、素子電圧Vkaは図7の点p2を経由して点p3に向けて減少する。そして、素子電圧Vkaが図7に示した負の抗電界電圧Va(例えば、−10V)の近傍の電圧になると、エミッタ部21cの双極子の向きが反転し始める。即ち、図8に示したように、分極反転(負側分極反転)が開始する。
【0039】
この負側分極反転により、エミッタ部21cの上面と、上部電極21dと、これらの周囲の媒質(この場合、真空)との接触箇所(トリプルジャンクション)及び/又は微細貫通孔21d1を形成している上部電極21dの先端部分において電界が大きくなる(電界集中が発生する。)。その結果、図9に示したように、上部電極21dからエミッタ部21cに向けて電子が供給され始める。
【0040】
この供給された電子は、主としてエミッタ部21cの上部であって上部電極21dの微細貫通孔21d1から露呈している部分の近傍及び微細貫通孔21d1を形成している上部電極21dの端部近傍(以下、単に「微細貫通孔21d1近傍」とも言う。)に蓄積される。その後、所定の時間が経過して負側分極反転が完了すると、素子電圧Vkaは負の所定電圧Vmに向けて急激に変化し負の所定電圧Vmとなる。この結果、電子の蓄積が完了する(電子の蓄積飽和状態に至る)。この状態が、図7の点p4の状態である。
【0041】
次に、駆動電圧付与回路31は、電子放出タイミングが到来すると、駆動電圧Vinを正の所定電圧である電子放出電圧Vpに変更する。これにより、素子電圧Vkaは増大し始める。このとき、素子電圧Vkaが図7の点p5に対応する正の抗電界電圧Vd(例えば、+50V)より僅かに小さい電圧Vb(点p6)に到達するまでは、図10に示したように、エミッタ部21cの帯電状態が維持される。
【0042】
その後、素子電圧Vkaは正の抗電界電圧Vdの近傍の電圧に到達する。これにより、双極子の負極がエミッタ部21cの上面側に向き始める。即ち、図11に示したように、分極が再び反転する(正側分極反転が開始する。)。この状態が図7の点p5近傍の状態である。
【0043】
その後、正側分極反転が完了する時点の近傍の時点になると、負極がエミッタ部21cの上面側に反転した双極子の数が多くなる。この結果、図12に示したように、エミッタ部21cの微細貫通孔21d1の近傍に蓄積されていた電子がクーロンの反発力により微細貫通孔21d1を通って上方(Z軸正方向)に放出され始める。この場合、上部電極21dには多数の微細貫通孔21d1が形成されているから、多数の電子はそれらの微細貫通孔21d1を通して平面状に放出される。放出された電子は、発光部20Bの蛍光体24に照射される。この結果、蛍光体24は白色の光を発生する。発生した光は、透明板22を通って上方に進行し、液晶ディスプレイ10に入射する。
【0044】
そして、正側分極反転が完了すると、素子電圧Vkaは急激に増大を開始し、電子が活発に放出される。その後、電子の放出は完了し、素子電圧Vkaは正の所定電圧Vpに到達する。この結果、エミッタ部21cの状態は図6に示した当初の状態(図7の点p1の状態)に復帰する。以上が、電子の蓄積(電子の書込み)及び放出(蛍光体の発光)に係る一連の作動である。
【0045】
このように、電子放出素子21においては、駆動電圧Vinが負の抗電界電圧Va(例えば、−10V)を超えないと(駆動電圧Vinが負の抗電界電圧Vaの絶対値よりも大きさが大きい負の電圧にならないと)負側分極反転が発生しないから、放出するための電子をエミッタ部21cの微細貫通孔21d1近傍に蓄積することができない。従って、この電子放出素子21の書込み電圧(電子の蓄積期間における駆動電圧Vin)と蛍光体24の発光量との関係は、図13に示したグラフのように変化する。なお、図13から理解されるように、電子放出素子21は、所定の範囲の書込み電圧(負の電圧、この例では−20〜−10(V))に対し、その電圧の絶対値が大きくなるほど多くの電子を蓄積し且つ多くの電子を放出できる素子でもある。
【0046】
更に、電子放出素子21においては、駆動電圧Vinが正の抗電界電圧Vd(例えば、+50V)を超えないと正側分極反転が発生しないから、エミッタ部21cの微細貫通孔21d1近傍に蓄積している電子を放出することができない。従って、この電子放出素子21の電子放出電圧(発光期間における駆動電圧Vin)と蛍光体24の発光量との関係は、図14に示したグラフのように変化する。
【0047】
次に、駆動電圧付与回路31について詳細に説明する。駆動電圧付与回路31は、図15に示したように、信号制御回路31a、行信号回路(行選択回路)31b、列信号回路(信号供給回路)31cを備えている。図15において、符合D11、D12、…D32、D33などが付されたものは、それぞれ、前述した一つの電子放出素子21を示している。なお、Dxyは、x行y列に位置する電子放出素子21を示す。
【0048】
信号制御回路31aは、液晶ディスプレイ10の各液晶表示素子11に前述した行走査信号Sc及び画像制御信号Svを供給する表示制御回路12と接続され、行走査信号Sc及び画像制御信号Svを入力するようになっている。
【0049】
行信号回路31bは、信号制御回路31aに接続され、行信号制御信号Sxを入力するようになっている。更に、行信号回路31bは、複数の行選択線LLと接続されている。複数の行選択線LLのそれぞれは、同じ行上の電子放出素子21の下部電極21bと接続されている。例えば、行選択線LL1は第1行の素子D11、D12、D13…の各下部電極21bと接続され、行選択線LL2は第2行の素子D21、D22、D23…の各下部電極21bと接続され、行選択線LL3は第3行の素子D31、D32、D33…の各下部電極21bと接続されている。行信号回路31bは、行信号制御信号Sxに応じ、複数の行選択線LLを介して各電子放出素子21の下部電極21bに後述する行電圧を付与するようになっている。
【0050】
列信号回路31cは、信号制御回路31aに接続され、列信号制御信号Syを入力するようになっている。更に、列信号回路31cは、複数の放出信号線ULと接続されている。放出信号線ULのそれぞれは、同じ列上の電子放出素子21の上部電極21dと接続されている。例えば、放出信号線UL1は第1列の素子D11、D21、D31…の各上部電極21dと接続され、放出信号線UL2は第2列の素子D12、D22、D32…の各上部電極21dと接続され、放出信号線UL3は第3列の素子D13、D23、D33…の各上部電極21dと接続されている。列信号回路31cは、列信号制御信号Syに応じ、複数の放出信号線ULを介して各電子放出素子21の上部電極21dに後述する列電圧を付与するようになっている。
【0051】
(作動)
次に、このように構成された液晶表示装置LDの作動について説明する。表示制御回路12は、液晶ディスプレイによる表示技術として周知の行走査を行って各液晶表示素子11(赤色用液晶素子R、緑色用液晶素子G及び青色用液晶素子B)の液晶の配向を制御し、液晶ディスプレイ10上に画像を表示する。
【0052】
より具体的に述べると、表示制御回路12は、行走査を実行する行(選択行)に対応する行走査信号Scを所定の電圧に設定するとともに、他の行の行走査信号Scを別の電圧に設定する。これにより、行走査を実行する行の液晶表示素子11にのみ画像制御信号Svに基づく電圧が印加される状態となる。そして、表示制御回路12は、行走査を実行する行の液晶表示素子11のそれぞれが表示すべき画像に応じた透過率を達成するように、画像制御信号Svを付与する。行走査を実行する行の液晶表示素子11は、画像制御信号Svが付与されると、その画像制御信号Svに基づく透過率を達成するように配向の変更を開始し、10m秒程度後に配向動作を完了して安定した透過率を達成する状態となる。このような行走査は、図16の(A)に示したように、一定時間(Tg)毎に第1行から第768行まで順に繰り返し行われる。
【0053】
第1行から第768行まで行走査がなされると、液晶ディスプレイ10の総ての液晶表示素子11の透過率が変化させられるので、新たな1フレームの画像が表示される。従って、第1行から第768行まで行走査がなされるのに必要な期間は、フレーム期間(1フレーム時間)Tfと称呼される。
【0054】
一方、バックライト20の制御を行う信号制御回路31aは、サブフレーム期間Tsubを一つの周期として電子の蓄積(書込み)動作と放出(発光部20Bからの発光)動作を行う。サブフレーム期間Tsubは、液晶ディスプレイ10の8行分の行走査に要する時間(8・Tg)である。例えば、一つのサブフレーム期間Tsubは液晶ディスプレイ10の第1行から第8行までの行走査に対応する期間であり、次のサブフレーム期間Tsubは液晶ディスプレイ10の第9行から第16行までの行走査に対応する期間である。
【0055】
即ち、サブフレーム期間Tsubは、8行8列の液晶表示素子11からなる1つの液晶表示素子群を構成する液晶表示素子11の総てに対する行走査が完了した時点を開始時点とし、その開始時点から液晶表示素子11の8(8=N)行分の行走査に要する時間(8・Tg)が経過した時点を終了時点とする期間である。
【0056】
より具体的には、信号制御回路31aは、表示制御回路12から入力した行走査信号Scに基づいてサブフレーム期間Tsubが開始したと認識すると、そのサブフレーム期間Tsubの終了時点において液晶ディスプレイ10の行走査の開始が予定されている行を含む液晶表示素子群に対応する(発光部20Bを挟んで対向する)同一行上の電子放出素子21に、駆動電圧Vinとして負の電圧(書込み電圧)を設定する。これにより、それらの電子放出素子21のエミッタ部21cへ電子が蓄積され始める。そして、このサブフレーム期間Tsubの開始時点から電子蓄積期間Tdが経過すると、駆動電圧Vinとして正の電圧(電子放出電圧)を設定することにより蓄積した電子を放出させ、蛍光体24から発光させる。
【0057】
例えば、図16に示したように、液晶ディスプレイ10の第1行から第8行までの行走査に対応するサブフレーム期間(第1サブフレーム期間)Tsubの終了時点において、行走査を開始する予定の液晶表示素子群は、液晶ディスプレイ10の第9行の液晶表示素子11を含む液晶表示素子群である。従って、この液晶表示素子群に対応する電子放出素子21は、電子放出装置20Aの第2行に属する128個の電子放出素子21である。そのため、信号制御回路31aは、第1サブフレーム期間Tsubにおいて、電子放出装置20Aの第2行に属する電子放出素子21に対し、電子の蓄積及び放出を行わせる。
【0058】
第1サブフレーム期間Tsubにおいて、電子放出装置20Aの第2行に属する電子放出素子21の電子の蓄積が完了した時点は、液晶ディスプレイ10の第9行目の液晶表示素子11が属する液晶表示素子群のうち最も遅く行走査がなされる第16行の液晶表示素子11に対する前回の行走査が完了してから十分な時間が経過した時点である。
【0059】
従って、第1サブフレーム期間Tsubの電子蓄積完了時点において、液晶ディスプレイ10の第9行の液晶表示素子11を含む液晶表示素子群に属する複数の液晶表示素子11は、総て配向動作が完了し、安定した光の透過率を達成し得る状態にある。バックライト20は、このタイミングにてこれらの液晶表示素子11に光を照射することになるので、液晶の配向動作遅れによる画像のボヤケを抑制することができる。
【0060】
同様に、第9行から第16行までの液晶ディスプレイ10の行走査に対応するサブフレーム期間(第2サブフレーム期間)Tsubの終了時点において、行走査を開始する予定の液晶表示素子群は、液晶ディスプレイ10の第17行の液晶表示素子11を含む液晶表示素子群である。従って、この液晶表示素子群に対応する電子放出素子21は、電子放出装置20Aの第3行に属する128個の電子放出素子21である。そのため、信号制御回路31aは、第2サブフレーム期間Tsubにおいて、電子放出装置20Aの第3行に属する電子放出素子21に対し、電子の蓄積及び放出を行わせる。
【0061】
この場合においても、第2サブフレーム期間Tsub内の電子蓄積完了時点は、液晶ディスプレイ10の第17行の液晶表示素子11が属する液晶表示素子群のうち最も遅く行走査がなされる第24行の液晶表示素子11に対する前回の行走査が完了してから十分な時間が経過した時点である。従って、第2サブフレーム期間Tsub内の電子蓄積完了時点において、液晶ディスプレイ10の第17行の液晶表示素子11を含む液晶表示素子群に属する液晶表示素子11は、総て配向動作が完了し、安定した光の透過率を達成し得る状態にある。バックライト20は、このタイミングにてこれらの液晶表示素子11に光を照射することになるので、液晶の配向動作遅れによる画像のボヤケを抑制することができる。
【0062】
更に、信号制御回路31aは、表示される画像の明るさに応じて発光部20Bから発せられる光の量を制御する。この制御について、電子放出装置20Aの第1行に対応する発光部20Bから発光させる場合を例に挙げ、図17を参照しながら説明する。
【0063】
先ず、信号制御回路31aは、表示制御回路12から入力される画像制御信号Svに基づいて、各電子放出素子21に対応する(各電子放出素子21の直上に存在する)液晶表示素子群に属している液晶表示素子11により表示される画像の部分の平均的な明るさ(即ち、これらの液晶表示素子11の光の透過率の平均値)を計算により求める。
【0064】
いま、電子放出装置20Aの1行1列に位置する電子放出素子(D11)に対応する画像部分は非常に明るく、1行2列に位置する電子放出素子(D12)に対応する画像部分は中程度に明るく、1行3列に位置する電子放出素子(D13)に対応する画像部分は黒のみ(発光なし)と仮定して説明を続ける。
【0065】
この場合、信号制御回路31aは、図17に示したように、サブフレーム期間Tsubの電子蓄積期間(書込み期間)Tdにおいて、行選択線LL1に10(V)の行電圧、行選択線LL2に−10(V)の行電圧、行選択線LL3に−10(V)の行電圧、を行信号回路31bによって付与する。同時に、信号制御回路31aは、その電子蓄積期間Tdにおいて、放出信号線UL1に−10(V)の列電圧、放出信号線UL2に−5(V)の列電圧、放出信号線UL3に0(V)の列電圧、を列信号回路31cによって付与する。
【0066】
この結果、1行1列に位置する電子放出素子(D11)の下部電極21bには10(V)が付与され、上部電極21dには−10(V)が付与されるので、同素子に対する駆動電圧Vin(書込み電圧)は−20Vとなる。従って、図13からも理解できるように、1行1列に位置する電子放出素子(D11)のエミッタ部21cには、略飽和量の多量の電子が蓄積される。更に、1行2列に位置する電子放出素子(D12)に対する駆動電圧Vinは−15Vとなる。従って、図13からも理解できるように、1行2列に位置する電子放出素子(D12)のエミッタ部21cには、飽和量の半分程度の電子が蓄積される。一方、1行3列に位置する電子放出素子(D13)に対する駆動電圧Vinは−10Vとなる。従って、1行3列に位置する電子放出素子(D13)には電子が蓄積されない。
【0067】
一方、第2行及び第3行の各電子放出素子に対する駆動電圧Vinは、図17に示したようになる。即ち、x行y列の素子の駆動電圧をVin(x,y)と表記すると、Vin(2,1)=0(V)、Vin(2,2)=5(V)、Vin(2,3)=10(V)、Vin(3,1)=0(V)、Vin(3,2)=5(V)、Vin(3,3)=10(V)となる。これらの駆動電圧Vinは何れも負の抗電界電圧Vaの−10(V)より大きい電圧であるから、これらの電子放出素子21のエミッタ部21cに電子は蓄積されない。
【0068】
次に、信号制御回路31aは、電子蓄積期間Tdが経過して電子放出期間(発光期間)Thとなると、この電子放出期間Thにおいて、行選択線LL1に−200(V)の行電圧、行選択線LL2に0(V)の行電圧、行選択線LL3に0(V)の行電圧、を行信号回路31bによって付与する。同時に、信号制御回路31aは、その電子放出期間Thにおいて、放出信号線UL1乃至放出信号線UL3の総てに0(V)の列電圧、を列信号回路31cによって付与する。
【0069】
これにより、第1行の電子放出素子(D11)、電子放出素子(D12)及び電子放出素子(D13)に対する駆動電圧Vinは、何れも200Vとなる。
【0070】
この結果、非常に多くの電子を蓄積していた電子放出素子(D11)から多量の電子が放出されるので、その上部に位置する蛍光体24は大光量の光を発生する。従って、電子放出素子(D11)に対応する画像部分は非常に明るく表示される。
【0071】
また、飽和量の半分程度の電子を蓄積していた電子放出素子(D12)からは、電子放出素子(D11)から放出される電子の量よりも少ない量の電子が放出されるので、その上部に位置する蛍光体24は中程度の光量の光を発生する。従って、電子放出素子(D12)に対応する画像部分は通常の明るさで表示される。
【0072】
更に、電子が蓄積されていない1行3列に位置する電子放出素子(D13)からは、電子が全く放出されない。従って、電子放出素子(D13)に対応する画像部分は黒のみで表示される。
【0073】
一方、第2行及び第3行の各電子放出素子に対する駆動電圧Vinは、電子放出期間Thにおいて0(V)であり、しかも、これらの素子には電子が蓄積されていない。従って、これらの素子から電子は放出されないので、これらの素子に対応する画像部分は黒のみで表示される。
【0074】
図18は、以上に説明した制御によって得られる発光部20Bの平面視の様子を模式的に示した図である。図18において、(A)は第1行に属する電子放出素子21の電子蓄積期間Tdに対応する発光部20Bの状態を示している。このように、電子蓄積期間Tdにおいては、発光部20Bは一切の光を発生しない。その後、第1行に属する電子放出素子21に対する電子放出期間Thとなると、(B)に示したように、第1行に属する各電子放出素子21に対応する発光部20Bの部分は、第1行に属する各電子放出素子21の電子放出量に応じた明るさで発光する。
【0075】
以降、同様に、電子蓄積期間Tdにおいて発光部20Bは一切の光を発生せず、それに続く電子放出期間Thとなると、直前の電子蓄積期間Tdにおいて電子が蓄積された特定の行に属する電子放出素子21に対応する発光部20Bの部分が、その行に属する電子放出素子21のそれぞれの電子放出量に応じた明るさで発光する。そして、発光が終了すると、その発光が終了した部分に対応する液晶ディスプレイ10の液晶表示素子11に対する行走査が開始される。換言すると、前述した液晶表示素子群のうちの最後に行走査が行われる液晶表示素子11についての行走査が行われてから、同じ液晶表示素子11に対する次の行走査が開始されるまでの期間(実際には、この液晶表示素子群のうちの最初に行走査が行われる液晶表示素子11についての次の行走査が開始されるまでの期間)のうち、最も遅いサブフレーム期間において、同液晶表示素子11に対応する電子放出素子21が電子を放出し、対応する部分の蛍光部20Bが発光する。
【0076】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る液晶ディスプレイのバックライト及び同バックライトの制御方法によれば、図19にも示したように、液晶の配向動作か完了して透過率が安定した状態にある液晶表示素子に対して、光を照射することができる。従って、液晶の配向動作遅れに伴う画像のボヤケを抑制することができる。なお、図19において、時刻t1及びt3は、液晶ディスプレイ10の特定の行(液晶表示素子群のうちの最初に行走査が行われる行)の液晶表示素子11に対する連続する行走査開始時点である。
【0077】
更に、上記液晶ディスプレイのバックライト及び同バックライトの制御方法によれば、画像の暗い部分を表現する液晶表示素子に対向する蛍光体に無駄な光を発生させず、且つ、その液晶表示素子に無駄な光を入射させないので、消費電力の小さな液晶表示装置を提供することができる。
【0078】
加えて、図19からも理解できるように、電子放出装置は発光量の種類(発光量レンジ、図19において破線にて示す。)を多段階とすることができるので、液晶表示装置(液晶表示素子群)によって表現することができる階調は、液晶表示素子11単体による透過率の大きさの種類(透過率レンジ)の数と、発光量レンジの数と、の積となる。即ち、システムの階調表現能力を格段に向上することができる。
【0079】
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態において、蛍光体24は複数の電子放出素子21に対して一つであったが、各電子放出素子21に一つの蛍光体が配設されてもよい。
【0080】
また、発光部20Bは、図20に示したように、透明板22の下面(上部電極21dと対向する面)に蛍光体24’を予め形成した後、その蛍光体24’を覆うように厚さ100〜200nm程度のアルミニウム薄膜からなるコレクタ電極23’を形成してなる構造を備えていてもよい。この場合、コレクタ電圧Vcの印加に従って形成された電界により加速された電子は、コレクタ電極23’を貫通して蛍光体24’に到達する。このような構成によれば、コレクタ電極23’は蛍光体24’が発した光を透明板22の方へ反射させるミラーとして機能する。従って、蛍光体24’の発光を効率良く外部へ取り出すことができる。
【0081】
更に、蛍光体24は、上部電極21dに対してエミッタ部21cと反対側の面に同上部電極21dに接するように形成されてもよい。これにより、上部電極21dの微細貫通孔21d1を通って放出させられた電子が上部電極21dの直上部に存在する蛍光体に衝突し、蛍光体を励起して光を発生させる発光素子が形成される。
【0082】
加えて、電子放出装置は、下部電極、エミッタ部及び上部電極を備えてなる完全に独立した電子放出素子を基板上にN行M列のマトリクス状で配列し、同一行の電子放出素子の下部電極同士を導電体により接続するとともに、同一列の電子放出素子の上部電極同士を導電体により接続した構造を備えるものであってもよい。
【0083】
また、上部電極に、鱗片状の物質(例えば黒鉛等)の集合体や、鱗片状の物質を含んだ導電性の物質の集合体を使用することもできる。このような物質の集合体は、元来、鱗片と鱗片とが離間している部分を有しているので、焼成などの熱処理を経なくても、その部分を上部電極の上記微細貫通孔として使用することができる。更に、エミッタ部上に有機樹脂と金属薄膜とをこの順に層状に形成した後で焼成し、有機樹脂を燃焼させることにより金属薄膜に微細貫通孔を形成し、上部電極としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の概略部分断面図である。
【図2】図1に示した液晶ディスプレイの平面図である。
【図3】図1に示した電子放出装置の平面図である。
【図4】図1に示した液晶ディスプレイ、電子放出装置及び発光部の部分拡大断面図である。
【図5】図4に示した上部電極の拡大部分平面図である。
【図6】図4に示した電子放出素子の一つの状態を示した図である。
【図7】図4に示したエミッタ部の電圧−分極特性のグラフである。
【図8】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図9】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図10】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図11】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図12】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図13】図4に示した電子放出素子の書込み電圧(電子の蓄積期間における駆動電圧)と蛍光体の発光量との関係を示したグラフである。
【図14】図4に示した電子放出素子の電子放出電圧(発光期間における駆動電圧)と蛍光体の発光量との関係を示したグラフである。
【図15】図1に示した電子放出装置の駆動電圧付与回路の回路図である。
【図16】図1に示した液晶表示装置における液晶表示素子の行走査とバックライトの発光制御との関係を示したタイムチャートである。
【図17】本発明によるバックライトの発光制御を説明するための図である。
【図18】本発明によるバックライトの発光制御によって得られる発光部の平面視の様子を模式的に示した図である。
【図19】本発明による液晶表示素子の透過率の変化と発光部の発光期間(電子放出装置の電子放出期間)との関係を示したグラフである。
【図20】図1に示した発光部の変形例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0085】
10…液晶ディスプレイ、11…液晶表示素子、12…表示制御回路、20…バックライト、20B…蛍光部、20A…電子放出装置、20B…発光部、21…電子放出素子、21a…基板、21b…下部電極、21c…エミッタ部、21d…上部電極、21d1…微細貫通孔、22…透明板、23…コレクタ電極、24…蛍光体、31…駆動電圧付与回路、32…コレクタ電圧付与回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子によって光の透過率を制御することにより、表示される画像を切り換える液晶ディスプレイに適用されるバックライト及び同バックライトの発光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られる液晶ディスプレイのバックライトは、管状の冷陰極放電ランプを複数有し、これらのランプを互いに平行に配列させ、その上部に拡散板及び複数の拡散シートを配置した構造を備えている(例えば、特許文献1を参照。)。このようなバックライトは、冷陰極放電ランプによって常に一定の光量の光を発生させている。
【特許文献1】特開2004−235103号公報
【0003】
一方、液晶ディスプレイは、各液晶表示素子の液晶の配向を変更することにより光の透過率を変化させている。液晶の配向を変化させるには、ある程度の時間が必要である。従って、液晶表示素子は、光の透過率を瞬時に変化させることができない。換言すると、液晶表示素子によって変更される光の透過率は、表示したい画像に応じた所望の透過率へと徐々に変化する。この結果、従来のバックライトを適用した液晶ディスプレイにおいては、透過率が所望の透過率に到る途中であって透過率が変化している段階においてもバックライトからの光が透過される。このため、表示される画像にボヤケが生じるという問題がある。
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的の一つは、液晶ディスプレイのこのような画像のボヤケを改善することができるバックライトを提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するための本発明によるバックライトは、
n行m列のマトリクス状に配列された複数の液晶表示素子を備えるとともに、1つのフレーム期間において一定時間の行走査を行順に総ての行に対して行うことにより同複数の液晶表示素子の光の透過率を変更して、同複数の液晶表示素子により表示される画像を切り換える液晶ディスプレイに適用されるバックライトであって、電子放出装置と、蛍光体と、駆動電圧付与回路と、を備える。
【0006】
前記電子放出装置は、
誘電体からなるエミッタ部と同エミッタ部の下部に形成された下部電極と同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成されてなる上部電極とを有し、所定の書込み電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに多数の電子を同エミッタ部に蓄積するとともに所定の電子放出電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに同エミッタ部に蓄積した電子を同エミッタ部から同微細貫通孔を通して放出する電子放出素子を複数備え、同複数の電子放出素子のそれぞれが前記液晶ディスプレイの互いに隣接する複数の前記液晶表示素子からなる液晶表示素子群のそれぞれに対向するようにマトリクス状に配列されている。
【0007】
前記蛍光体は、
前記電子放出素子の上部電極と前記液晶ディスプレイとの間において同上部電極と対向するように配置されるとともに電子の衝突により同液晶ディスプレイに向けて発光するようになっている。
【0008】
前記駆動電圧付与回路は、
前記液晶表示素子群のうちの一つの液晶表示素子群に対する前記行走査が総て終了した後に同一つの液晶表示素子群に属する各液晶表示素子の光の透過率が安定した状態となってから同一つの液晶表示素子群に対する次の行走査が開始するまでの期間において前記複数の電子放出素子のうちの同一つの液晶表示素子群に対向する電子放出素子に前記電子放出電圧を所定時間だけ付与するとともに、同電子放出電圧が付与された電子放出素子に次の前記電子放出電圧を付与するまでの期間において前記書込み電圧を付与するようになっている。
【0009】
これによれば、光の透過率が安定した状態となっている液晶表示素子に対して蛍光体を挟んで実質的に対向している電子放出素子に電子放出電圧が付与される。この電子放出素子には、それまでに書込み電圧が付与されているので、その電子放出素子のエミッタ部には電子が蓄積されている。この結果、光の透過率が安定した状態となっている液晶表示素子に対向している蛍光体(又は蛍光体の部分)に電子が照射され、同蛍光体(又は蛍光体の部分)が光を発生する。そして、その光は、光の透過率が安定した状態となっている液晶表示素子に照射される。従って、液晶配向動作の遅れに起因する画像のボヤケを解消することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施態様において、
前記数値nは2以上の整数Nの倍数であり、前記数値mは2以上の整数Mの倍数であり、前記液晶表示素子群は前記nを前記Nで除したn/N行であって前記mを前記Mで除したm/M列のマトリクス状に配列され、
前記駆動電圧付与回路は、
1つの前記液晶表示素子群を構成する前記液晶表示素子の総てに対する前記行走査が完了した時点を開始時点とし同開始時点から前記N行分の前記行走査に要する時間が経過した時点を終了時点とする1つのサブフレーム期間において、同サブフレーム期間の終了時点において前記行走査が開始される予定の前記液晶表示素子を含む前記液晶表示素子群に対向する前記電子放出素子に前記書込み電圧と前記電子放出電圧とを付与するように構成されることが好適である。
【0011】
この態様は、電子放出装置がn/N行m/M列のマトリクス状に電子放出素子を配列されてなる場合に対応している。この場合、液晶表示素子の一行分の行走査に要する時間をTgとすると、1つのフレーム期間Tfはn・Tgであり、サブフレーム期間は(N・Tg)となる。駆動電圧付与回路は、このような一つのサブフレーム期間において、同サブフレーム期間の終了時点において前記行走査が開始される予定の前記液晶表示素子を含む液晶表示素子群に対向する前記電子放出素子に前記書込み電圧と前記電子放出電圧とを付与し、その電子放出素子に対向している蛍光体(又は蛍光体の部分)から光を発生させる。従って、蛍光体からの光が照射される液晶表示素子は、直前の行走査から十分な時間が経過しているので、その配向の変更が完了して光の透過率が安定している。この結果、液晶の配向作動遅れに起因する表示画像のボヤケを解消することができる。
【0012】
更に、このようなバックライトにおいて、
前記駆動電圧付与回路は、
前記書込み電圧を、同書込み電圧が付与される電子放出素子に対向する前記液晶表示素子群に属する前記複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた電圧に設定するように構成されることが好適である。
【0013】
これによれば、各液晶表示素子群に属する複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた量の電子が、各液晶表示素子群に対向配置されている電子放出素子から放出される。従って、各液晶表示素子群に対向配置されている部分の蛍光体が、各液晶表示素子群に属する複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた量の光を発生する。
【0014】
従って、例えば、表示画像のうちの暗い部分を表示しようとしている液晶表示素子群に対向している蛍光体(又は蛍光体の部分)は、表示画像のうちの明るい部分を表示しようとしている液晶表示素子群に対向している蛍光体(又は蛍光体の部分)よりも少ない量の光を発生する。この結果、電子放出装置及び蛍光体は、液晶表示素子によって無駄に遮蔽されてしまう光の量を低下させることができるので、消費電力の小さいバックライトが提供される。更に、液晶表示素子は、表示画像の暗い部分において蛍光体(又は蛍光体の部分)から発せられた小さな光量の光を遮断し、表示画像の明るい部分において蛍光体(又は蛍光体の部分)から発せられた大きな光量の光を透過させるので、表示画像のコントラストを向上することも可能となる。
【0015】
更に、本発明は上記バックライトにおいて実行されるバックライトの発光制御方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明によるバックライト及び同バックライトの発光制御方法が適用された液晶表示装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「電子の蓄積」と「電子の書込み」は同義として用いられる。
【0017】
(構成)
図1は、この液晶表示装置LDの概略部分断面図である。液晶表示装置LDは、液晶ディスプレイ10とバックライト20とを備えている。液晶ディスプレイ10は、バックライト20の上面側(Z軸正方向側)に配置されている。
【0018】
図2は、液晶ディスプレイ10の平面図である。液晶ディスプレイ10の平面視における形状は長方形である。液晶ディスプレイ10は、液晶表示素子11を、768行(n行)×1024列(m列)のマトリクス状に配列した周知の液晶ディスプレイである。1つの液晶表示素子11は、1つの赤色用液晶素子R、1つの緑色用液晶素子G及び1つの青色用液晶素子Bからなっている。
【0019】
赤色用液晶素子Rは、白色光に含まれる赤色光を透過させる赤色フィルタを備えるとともに、配向制御によって赤色フィルタを透過した赤色光の透過率を変更するようになっている。緑色用液晶素子Gは、白色光に含まれる緑色光を透過させる緑色フィルタを備えるとともに、配向制御によって緑色フィルタを透過した緑色光の透過率を変更するようになっている。青色用液晶素子Bは、白色光に含まれる青色光を透過させる青色フィルタを備えるとともに、配向制御によって青色フィルタを透過した青色光の透過率を変更するようになっている。
【0020】
同一の行に属する液晶表示素子11には、行走査信号(行選択信号)Scが図示を省略した表示制御回路から入力されるようになっている(図15を参照。)。同一の列に属する液晶表示素子11には、赤色用液晶素子R、緑色用液晶素子G及び青色用液晶素子Bのそれぞれに対する画像制御信号Svが表示制御回路から入力されるようになっている。
【0021】
バックライト20は、図1に示したように、電子放出装置20Aと、電子放出装置20Aの上方に配置された発光部20Bとからなっている。
【0022】
電子放出装置20Aは、図2及び電子放出装置20Aの平面図である図3に示したように、複数の電子放出素子21を備えている。電子放出素子21のそれぞれは、8行(N行)8列(M列)のマトリクス状に配列された複数(64個)の液晶表示素子11からなる液晶表示素子群の一つに対向するように配置されている。即ち、複数の電子放出素子21は、96行(=n/N行)128列(=m/M列)のマトリクス状に配列されている。
【0023】
図4は、液晶ディスプレイ10、電子放出装置20A及び発光部20Bの部分拡大断面図である。図4に示したように、電子放出装置20Aの電子放出素子21は、基板21a、下部電極(下部電極層)21b、エミッタ部21c及び上部電極(上部電極層)21dから構成されている。
【0024】
基板21aは、互いに直交するX軸及びY軸により形成される平面(X−Y平面)に平行な上面及び下面を有し、X軸及びY軸のそれぞれに直交するZ軸方向に厚み方向を有する薄板体である。基板21aの平面視における形状は、液晶ディスプレイ10と略同一の長方形である。基板21aは、例えば、ガラス又はセラミックス(好ましくは、酸化ジルコニウムを主成分とした材料)からなっている。
【0025】
下部電極21bは、導電性物質(ここでは、銀又は白金)からなり、基板21aの上面の上に膜状に形成されている。下部電極21bの平面視における形状はX軸方向に長手方向を有する帯状である。下部電極21bのY軸方向の長さ(即ち、帯の幅)は、前述した1つの液晶表示素子群のY軸方向の長さ(即ち、液晶表示素子11のY軸方向長さの約8倍の長さ)と略同一である。
【0026】
エミッタ部21cは、強誘電体(ここでは、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、チタン酸鉛(PT)及びジルコン酸鉛(PZ)の3成分系材料PMN−PT−PZ)からなり、基板21a及び下部電極21bの上面の上に形成されている。エミッタ部21cは、Z軸方向に厚み方向を有する薄板体であり、平面視において基板21aと略同一の長方形状を有している。エミッタ部21cの上面には、強誘電体の粒界による凹凸21c1が形成されている。
【0027】
上部電極21dは、導電性物質(ここでは、白金)からなり、エミッタ部21cを挟んで下部電極21bに対向するようにエミッタ部21cの上部(エミッタ部21cの上面の上)に膜状に形成されている。上部電極21dの平面視における形状はY軸方向に長手方向を有する帯状である。上部電極21dのX軸方向の長さ(即ち、帯の幅)は、前述した1つの液晶表示素子群のX軸方向の長さ(即ち、液晶表示素子11のX軸方向長さの約8倍の長さ)と略同一である。上部電極21dには、図4及び上部電極21dの部分拡大平面図である図5に示したように、複数の微細な貫通孔21d1が形成されている。
【0028】
上部電極21dの厚みtは、0.01μm以上且つ10μm以下であり、好ましくは、0.05μm以上且つ1μm以下である。また、微細貫通孔21d1の周部であってエミッタ部21cと対向する面は、エミッタ部21cの上部から所定距離だけ離間している。この貫通孔21d1の周部(貫通孔の縁部)であってエミッタ部21cと対向する面とエミッタ部21c(エミッタ部21cの上面)との距離の最大値は0μmより大きく且つ10μm以下であり、好ましくは、0.01μm以上且つ1μm以下である。
【0029】
下部電極21b、エミッタ部21c及び白金レジネートペーストからなる上部電極21dは焼成処理によって一体化させられている。この一体化のための焼成処理により、上部電極21dとなる膜が例えば厚み10μmから厚み0.1μmに収縮する。このとき、上部電極21dには前述した複数の微細貫通孔21d1が形成される。
【0030】
以上説明したように、下部電極21bと上部電極21dとは、平面視において重なり合っている。この下部電極21bと上部電極21dとが重なりあった部分は、その部分において下部電極21bと上部電極21dとの間に挟まれたエミッタ部21cと共に、一つの電子放出素子21を形成している。下部電極21b及び上部電極21dは、後に詳述する駆動電圧付与回路31に接続され、駆動電圧Vin(下部電極21bには図3に示したラインSa上の行電圧、上部電極21dには図3に示したラインSb上の列電圧)が付与されるようになっている。なお、駆動電圧Vinは、下部電極21bを基準としたときの下部電極21bと上部電極21dとの電位差であると定義することができる。
【0031】
発光部20Bは、図4に示したように、透明板22、コレクタ電極23及び蛍光体24を備えている。
【0032】
透明板22は、互いに平行な上面及び下面を有し、これらの面に直交する方向に厚み方向を有する薄板体である。透明板22の平面視における形状は、液晶ディスプレイ10と略同一の長方形である。透明板22は、透明な材質(ここでは、ガラス又はアクリル)からなっている。透明板22は、電子放出素子21の上方(Z軸正方向)に、電子放出素子21の上面(上部電極21dの上面)から所定の距離だけ離れた位置に配設されている。透明板22は、その下面が上部電極21d(即ち、電子放出素子21の電子放出部)のなす平面と平行となるように配設されている。
【0033】
コレクタ電極23は、導電性物質(ここでは、透明導電膜,ITO)からなっている。コレクタ電極23は、透明板22の下面の全体に膜状に形成されている。コレクタ電極23には、コレクタ電圧付与回路32が接続され、正の所定電圧(コレクタ電圧)Vcが付与されている。これにより、コレクタ電極23は、電子放出素子21から放出される電子を加速・吸引する電界を形成するようになっている。
【0034】
蛍光体24は、コレクタ電極23を覆うように透明板22の下面において膜状に形成されている。蛍光体24は、電子が衝突すると、その電子により励起状態となり、その励起状態から基底状態へと遷移するときに白色の光を発生するようになっている。このような白色蛍光体としての代表例は、Y2O2S:Tbである。或いは、白色蛍光体は、赤色蛍光体(例えば、Y2O2S:Eu)、緑色蛍光体(例えば、ZnS:Cu,Al)及び青色蛍光体(例えば、ZnS:Ag,Cl)の蛍光体を混ぜ合わせることにより作製することもできる。蛍光体24が発生した光は、透明板22を通して発光部20Bの上方に進行し、液晶ディスプレイ10に入射する。
【0035】
基板21aと透明板22との間に形成される空間は略真空(102〜10−6Paが好ましく、より好ましくは10−3〜10−5Pa)に維持されている。換言すると、基板21a及び透明板22は、図示しない電子放出装置20Aの側壁部とともに密閉空間を形成している。従って、電子放出素子21は、空間形成部材により略真空状態に維持されている密閉空間内に配置されていることになる。
【0036】
ここで、上記のように構成された電子放出素子21の作動原理について説明する。
【0037】
先ず、図6に示したように、下部電極21bの電位を基準とした下部電極21bと上部電極21dの実際の電位差Vka(素子電圧Vka)が正の所定電圧Vpに維持され、エミッタ部21cの電子が総て放出した直後であって、電子がエミッタ部21cに蓄積されていない状態から説明を開始する。このとき、エミッタ部21cの双極子の負極はエミッタ部21cの上面(Z軸正方向、即ち、上部電極21d側)に向いた状態となっている。この状態は、図7に示したグラフ上の点p1の状態である。図7のグラフは、横軸に素子電圧Vkaをとり、縦軸に上部電極21d近傍部分の電荷Qをとったエミッタ部21cの電圧−分極特性のグラフである。
【0038】
この状態において、駆動電圧付与回路31は、駆動電圧Vinを負の所定電圧である書込み電圧(蓄積電圧)Vmに変更する。これにより、素子電圧Vkaは図7の点p2を経由して点p3に向けて減少する。そして、素子電圧Vkaが図7に示した負の抗電界電圧Va(例えば、−10V)の近傍の電圧になると、エミッタ部21cの双極子の向きが反転し始める。即ち、図8に示したように、分極反転(負側分極反転)が開始する。
【0039】
この負側分極反転により、エミッタ部21cの上面と、上部電極21dと、これらの周囲の媒質(この場合、真空)との接触箇所(トリプルジャンクション)及び/又は微細貫通孔21d1を形成している上部電極21dの先端部分において電界が大きくなる(電界集中が発生する。)。その結果、図9に示したように、上部電極21dからエミッタ部21cに向けて電子が供給され始める。
【0040】
この供給された電子は、主としてエミッタ部21cの上部であって上部電極21dの微細貫通孔21d1から露呈している部分の近傍及び微細貫通孔21d1を形成している上部電極21dの端部近傍(以下、単に「微細貫通孔21d1近傍」とも言う。)に蓄積される。その後、所定の時間が経過して負側分極反転が完了すると、素子電圧Vkaは負の所定電圧Vmに向けて急激に変化し負の所定電圧Vmとなる。この結果、電子の蓄積が完了する(電子の蓄積飽和状態に至る)。この状態が、図7の点p4の状態である。
【0041】
次に、駆動電圧付与回路31は、電子放出タイミングが到来すると、駆動電圧Vinを正の所定電圧である電子放出電圧Vpに変更する。これにより、素子電圧Vkaは増大し始める。このとき、素子電圧Vkaが図7の点p5に対応する正の抗電界電圧Vd(例えば、+50V)より僅かに小さい電圧Vb(点p6)に到達するまでは、図10に示したように、エミッタ部21cの帯電状態が維持される。
【0042】
その後、素子電圧Vkaは正の抗電界電圧Vdの近傍の電圧に到達する。これにより、双極子の負極がエミッタ部21cの上面側に向き始める。即ち、図11に示したように、分極が再び反転する(正側分極反転が開始する。)。この状態が図7の点p5近傍の状態である。
【0043】
その後、正側分極反転が完了する時点の近傍の時点になると、負極がエミッタ部21cの上面側に反転した双極子の数が多くなる。この結果、図12に示したように、エミッタ部21cの微細貫通孔21d1の近傍に蓄積されていた電子がクーロンの反発力により微細貫通孔21d1を通って上方(Z軸正方向)に放出され始める。この場合、上部電極21dには多数の微細貫通孔21d1が形成されているから、多数の電子はそれらの微細貫通孔21d1を通して平面状に放出される。放出された電子は、発光部20Bの蛍光体24に照射される。この結果、蛍光体24は白色の光を発生する。発生した光は、透明板22を通って上方に進行し、液晶ディスプレイ10に入射する。
【0044】
そして、正側分極反転が完了すると、素子電圧Vkaは急激に増大を開始し、電子が活発に放出される。その後、電子の放出は完了し、素子電圧Vkaは正の所定電圧Vpに到達する。この結果、エミッタ部21cの状態は図6に示した当初の状態(図7の点p1の状態)に復帰する。以上が、電子の蓄積(電子の書込み)及び放出(蛍光体の発光)に係る一連の作動である。
【0045】
このように、電子放出素子21においては、駆動電圧Vinが負の抗電界電圧Va(例えば、−10V)を超えないと(駆動電圧Vinが負の抗電界電圧Vaの絶対値よりも大きさが大きい負の電圧にならないと)負側分極反転が発生しないから、放出するための電子をエミッタ部21cの微細貫通孔21d1近傍に蓄積することができない。従って、この電子放出素子21の書込み電圧(電子の蓄積期間における駆動電圧Vin)と蛍光体24の発光量との関係は、図13に示したグラフのように変化する。なお、図13から理解されるように、電子放出素子21は、所定の範囲の書込み電圧(負の電圧、この例では−20〜−10(V))に対し、その電圧の絶対値が大きくなるほど多くの電子を蓄積し且つ多くの電子を放出できる素子でもある。
【0046】
更に、電子放出素子21においては、駆動電圧Vinが正の抗電界電圧Vd(例えば、+50V)を超えないと正側分極反転が発生しないから、エミッタ部21cの微細貫通孔21d1近傍に蓄積している電子を放出することができない。従って、この電子放出素子21の電子放出電圧(発光期間における駆動電圧Vin)と蛍光体24の発光量との関係は、図14に示したグラフのように変化する。
【0047】
次に、駆動電圧付与回路31について詳細に説明する。駆動電圧付与回路31は、図15に示したように、信号制御回路31a、行信号回路(行選択回路)31b、列信号回路(信号供給回路)31cを備えている。図15において、符合D11、D12、…D32、D33などが付されたものは、それぞれ、前述した一つの電子放出素子21を示している。なお、Dxyは、x行y列に位置する電子放出素子21を示す。
【0048】
信号制御回路31aは、液晶ディスプレイ10の各液晶表示素子11に前述した行走査信号Sc及び画像制御信号Svを供給する表示制御回路12と接続され、行走査信号Sc及び画像制御信号Svを入力するようになっている。
【0049】
行信号回路31bは、信号制御回路31aに接続され、行信号制御信号Sxを入力するようになっている。更に、行信号回路31bは、複数の行選択線LLと接続されている。複数の行選択線LLのそれぞれは、同じ行上の電子放出素子21の下部電極21bと接続されている。例えば、行選択線LL1は第1行の素子D11、D12、D13…の各下部電極21bと接続され、行選択線LL2は第2行の素子D21、D22、D23…の各下部電極21bと接続され、行選択線LL3は第3行の素子D31、D32、D33…の各下部電極21bと接続されている。行信号回路31bは、行信号制御信号Sxに応じ、複数の行選択線LLを介して各電子放出素子21の下部電極21bに後述する行電圧を付与するようになっている。
【0050】
列信号回路31cは、信号制御回路31aに接続され、列信号制御信号Syを入力するようになっている。更に、列信号回路31cは、複数の放出信号線ULと接続されている。放出信号線ULのそれぞれは、同じ列上の電子放出素子21の上部電極21dと接続されている。例えば、放出信号線UL1は第1列の素子D11、D21、D31…の各上部電極21dと接続され、放出信号線UL2は第2列の素子D12、D22、D32…の各上部電極21dと接続され、放出信号線UL3は第3列の素子D13、D23、D33…の各上部電極21dと接続されている。列信号回路31cは、列信号制御信号Syに応じ、複数の放出信号線ULを介して各電子放出素子21の上部電極21dに後述する列電圧を付与するようになっている。
【0051】
(作動)
次に、このように構成された液晶表示装置LDの作動について説明する。表示制御回路12は、液晶ディスプレイによる表示技術として周知の行走査を行って各液晶表示素子11(赤色用液晶素子R、緑色用液晶素子G及び青色用液晶素子B)の液晶の配向を制御し、液晶ディスプレイ10上に画像を表示する。
【0052】
より具体的に述べると、表示制御回路12は、行走査を実行する行(選択行)に対応する行走査信号Scを所定の電圧に設定するとともに、他の行の行走査信号Scを別の電圧に設定する。これにより、行走査を実行する行の液晶表示素子11にのみ画像制御信号Svに基づく電圧が印加される状態となる。そして、表示制御回路12は、行走査を実行する行の液晶表示素子11のそれぞれが表示すべき画像に応じた透過率を達成するように、画像制御信号Svを付与する。行走査を実行する行の液晶表示素子11は、画像制御信号Svが付与されると、その画像制御信号Svに基づく透過率を達成するように配向の変更を開始し、10m秒程度後に配向動作を完了して安定した透過率を達成する状態となる。このような行走査は、図16の(A)に示したように、一定時間(Tg)毎に第1行から第768行まで順に繰り返し行われる。
【0053】
第1行から第768行まで行走査がなされると、液晶ディスプレイ10の総ての液晶表示素子11の透過率が変化させられるので、新たな1フレームの画像が表示される。従って、第1行から第768行まで行走査がなされるのに必要な期間は、フレーム期間(1フレーム時間)Tfと称呼される。
【0054】
一方、バックライト20の制御を行う信号制御回路31aは、サブフレーム期間Tsubを一つの周期として電子の蓄積(書込み)動作と放出(発光部20Bからの発光)動作を行う。サブフレーム期間Tsubは、液晶ディスプレイ10の8行分の行走査に要する時間(8・Tg)である。例えば、一つのサブフレーム期間Tsubは液晶ディスプレイ10の第1行から第8行までの行走査に対応する期間であり、次のサブフレーム期間Tsubは液晶ディスプレイ10の第9行から第16行までの行走査に対応する期間である。
【0055】
即ち、サブフレーム期間Tsubは、8行8列の液晶表示素子11からなる1つの液晶表示素子群を構成する液晶表示素子11の総てに対する行走査が完了した時点を開始時点とし、その開始時点から液晶表示素子11の8(8=N)行分の行走査に要する時間(8・Tg)が経過した時点を終了時点とする期間である。
【0056】
より具体的には、信号制御回路31aは、表示制御回路12から入力した行走査信号Scに基づいてサブフレーム期間Tsubが開始したと認識すると、そのサブフレーム期間Tsubの終了時点において液晶ディスプレイ10の行走査の開始が予定されている行を含む液晶表示素子群に対応する(発光部20Bを挟んで対向する)同一行上の電子放出素子21に、駆動電圧Vinとして負の電圧(書込み電圧)を設定する。これにより、それらの電子放出素子21のエミッタ部21cへ電子が蓄積され始める。そして、このサブフレーム期間Tsubの開始時点から電子蓄積期間Tdが経過すると、駆動電圧Vinとして正の電圧(電子放出電圧)を設定することにより蓄積した電子を放出させ、蛍光体24から発光させる。
【0057】
例えば、図16に示したように、液晶ディスプレイ10の第1行から第8行までの行走査に対応するサブフレーム期間(第1サブフレーム期間)Tsubの終了時点において、行走査を開始する予定の液晶表示素子群は、液晶ディスプレイ10の第9行の液晶表示素子11を含む液晶表示素子群である。従って、この液晶表示素子群に対応する電子放出素子21は、電子放出装置20Aの第2行に属する128個の電子放出素子21である。そのため、信号制御回路31aは、第1サブフレーム期間Tsubにおいて、電子放出装置20Aの第2行に属する電子放出素子21に対し、電子の蓄積及び放出を行わせる。
【0058】
第1サブフレーム期間Tsubにおいて、電子放出装置20Aの第2行に属する電子放出素子21の電子の蓄積が完了した時点は、液晶ディスプレイ10の第9行目の液晶表示素子11が属する液晶表示素子群のうち最も遅く行走査がなされる第16行の液晶表示素子11に対する前回の行走査が完了してから十分な時間が経過した時点である。
【0059】
従って、第1サブフレーム期間Tsubの電子蓄積完了時点において、液晶ディスプレイ10の第9行の液晶表示素子11を含む液晶表示素子群に属する複数の液晶表示素子11は、総て配向動作が完了し、安定した光の透過率を達成し得る状態にある。バックライト20は、このタイミングにてこれらの液晶表示素子11に光を照射することになるので、液晶の配向動作遅れによる画像のボヤケを抑制することができる。
【0060】
同様に、第9行から第16行までの液晶ディスプレイ10の行走査に対応するサブフレーム期間(第2サブフレーム期間)Tsubの終了時点において、行走査を開始する予定の液晶表示素子群は、液晶ディスプレイ10の第17行の液晶表示素子11を含む液晶表示素子群である。従って、この液晶表示素子群に対応する電子放出素子21は、電子放出装置20Aの第3行に属する128個の電子放出素子21である。そのため、信号制御回路31aは、第2サブフレーム期間Tsubにおいて、電子放出装置20Aの第3行に属する電子放出素子21に対し、電子の蓄積及び放出を行わせる。
【0061】
この場合においても、第2サブフレーム期間Tsub内の電子蓄積完了時点は、液晶ディスプレイ10の第17行の液晶表示素子11が属する液晶表示素子群のうち最も遅く行走査がなされる第24行の液晶表示素子11に対する前回の行走査が完了してから十分な時間が経過した時点である。従って、第2サブフレーム期間Tsub内の電子蓄積完了時点において、液晶ディスプレイ10の第17行の液晶表示素子11を含む液晶表示素子群に属する液晶表示素子11は、総て配向動作が完了し、安定した光の透過率を達成し得る状態にある。バックライト20は、このタイミングにてこれらの液晶表示素子11に光を照射することになるので、液晶の配向動作遅れによる画像のボヤケを抑制することができる。
【0062】
更に、信号制御回路31aは、表示される画像の明るさに応じて発光部20Bから発せられる光の量を制御する。この制御について、電子放出装置20Aの第1行に対応する発光部20Bから発光させる場合を例に挙げ、図17を参照しながら説明する。
【0063】
先ず、信号制御回路31aは、表示制御回路12から入力される画像制御信号Svに基づいて、各電子放出素子21に対応する(各電子放出素子21の直上に存在する)液晶表示素子群に属している液晶表示素子11により表示される画像の部分の平均的な明るさ(即ち、これらの液晶表示素子11の光の透過率の平均値)を計算により求める。
【0064】
いま、電子放出装置20Aの1行1列に位置する電子放出素子(D11)に対応する画像部分は非常に明るく、1行2列に位置する電子放出素子(D12)に対応する画像部分は中程度に明るく、1行3列に位置する電子放出素子(D13)に対応する画像部分は黒のみ(発光なし)と仮定して説明を続ける。
【0065】
この場合、信号制御回路31aは、図17に示したように、サブフレーム期間Tsubの電子蓄積期間(書込み期間)Tdにおいて、行選択線LL1に10(V)の行電圧、行選択線LL2に−10(V)の行電圧、行選択線LL3に−10(V)の行電圧、を行信号回路31bによって付与する。同時に、信号制御回路31aは、その電子蓄積期間Tdにおいて、放出信号線UL1に−10(V)の列電圧、放出信号線UL2に−5(V)の列電圧、放出信号線UL3に0(V)の列電圧、を列信号回路31cによって付与する。
【0066】
この結果、1行1列に位置する電子放出素子(D11)の下部電極21bには10(V)が付与され、上部電極21dには−10(V)が付与されるので、同素子に対する駆動電圧Vin(書込み電圧)は−20Vとなる。従って、図13からも理解できるように、1行1列に位置する電子放出素子(D11)のエミッタ部21cには、略飽和量の多量の電子が蓄積される。更に、1行2列に位置する電子放出素子(D12)に対する駆動電圧Vinは−15Vとなる。従って、図13からも理解できるように、1行2列に位置する電子放出素子(D12)のエミッタ部21cには、飽和量の半分程度の電子が蓄積される。一方、1行3列に位置する電子放出素子(D13)に対する駆動電圧Vinは−10Vとなる。従って、1行3列に位置する電子放出素子(D13)には電子が蓄積されない。
【0067】
一方、第2行及び第3行の各電子放出素子に対する駆動電圧Vinは、図17に示したようになる。即ち、x行y列の素子の駆動電圧をVin(x,y)と表記すると、Vin(2,1)=0(V)、Vin(2,2)=5(V)、Vin(2,3)=10(V)、Vin(3,1)=0(V)、Vin(3,2)=5(V)、Vin(3,3)=10(V)となる。これらの駆動電圧Vinは何れも負の抗電界電圧Vaの−10(V)より大きい電圧であるから、これらの電子放出素子21のエミッタ部21cに電子は蓄積されない。
【0068】
次に、信号制御回路31aは、電子蓄積期間Tdが経過して電子放出期間(発光期間)Thとなると、この電子放出期間Thにおいて、行選択線LL1に−200(V)の行電圧、行選択線LL2に0(V)の行電圧、行選択線LL3に0(V)の行電圧、を行信号回路31bによって付与する。同時に、信号制御回路31aは、その電子放出期間Thにおいて、放出信号線UL1乃至放出信号線UL3の総てに0(V)の列電圧、を列信号回路31cによって付与する。
【0069】
これにより、第1行の電子放出素子(D11)、電子放出素子(D12)及び電子放出素子(D13)に対する駆動電圧Vinは、何れも200Vとなる。
【0070】
この結果、非常に多くの電子を蓄積していた電子放出素子(D11)から多量の電子が放出されるので、その上部に位置する蛍光体24は大光量の光を発生する。従って、電子放出素子(D11)に対応する画像部分は非常に明るく表示される。
【0071】
また、飽和量の半分程度の電子を蓄積していた電子放出素子(D12)からは、電子放出素子(D11)から放出される電子の量よりも少ない量の電子が放出されるので、その上部に位置する蛍光体24は中程度の光量の光を発生する。従って、電子放出素子(D12)に対応する画像部分は通常の明るさで表示される。
【0072】
更に、電子が蓄積されていない1行3列に位置する電子放出素子(D13)からは、電子が全く放出されない。従って、電子放出素子(D13)に対応する画像部分は黒のみで表示される。
【0073】
一方、第2行及び第3行の各電子放出素子に対する駆動電圧Vinは、電子放出期間Thにおいて0(V)であり、しかも、これらの素子には電子が蓄積されていない。従って、これらの素子から電子は放出されないので、これらの素子に対応する画像部分は黒のみで表示される。
【0074】
図18は、以上に説明した制御によって得られる発光部20Bの平面視の様子を模式的に示した図である。図18において、(A)は第1行に属する電子放出素子21の電子蓄積期間Tdに対応する発光部20Bの状態を示している。このように、電子蓄積期間Tdにおいては、発光部20Bは一切の光を発生しない。その後、第1行に属する電子放出素子21に対する電子放出期間Thとなると、(B)に示したように、第1行に属する各電子放出素子21に対応する発光部20Bの部分は、第1行に属する各電子放出素子21の電子放出量に応じた明るさで発光する。
【0075】
以降、同様に、電子蓄積期間Tdにおいて発光部20Bは一切の光を発生せず、それに続く電子放出期間Thとなると、直前の電子蓄積期間Tdにおいて電子が蓄積された特定の行に属する電子放出素子21に対応する発光部20Bの部分が、その行に属する電子放出素子21のそれぞれの電子放出量に応じた明るさで発光する。そして、発光が終了すると、その発光が終了した部分に対応する液晶ディスプレイ10の液晶表示素子11に対する行走査が開始される。換言すると、前述した液晶表示素子群のうちの最後に行走査が行われる液晶表示素子11についての行走査が行われてから、同じ液晶表示素子11に対する次の行走査が開始されるまでの期間(実際には、この液晶表示素子群のうちの最初に行走査が行われる液晶表示素子11についての次の行走査が開始されるまでの期間)のうち、最も遅いサブフレーム期間において、同液晶表示素子11に対応する電子放出素子21が電子を放出し、対応する部分の蛍光部20Bが発光する。
【0076】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る液晶ディスプレイのバックライト及び同バックライトの制御方法によれば、図19にも示したように、液晶の配向動作か完了して透過率が安定した状態にある液晶表示素子に対して、光を照射することができる。従って、液晶の配向動作遅れに伴う画像のボヤケを抑制することができる。なお、図19において、時刻t1及びt3は、液晶ディスプレイ10の特定の行(液晶表示素子群のうちの最初に行走査が行われる行)の液晶表示素子11に対する連続する行走査開始時点である。
【0077】
更に、上記液晶ディスプレイのバックライト及び同バックライトの制御方法によれば、画像の暗い部分を表現する液晶表示素子に対向する蛍光体に無駄な光を発生させず、且つ、その液晶表示素子に無駄な光を入射させないので、消費電力の小さな液晶表示装置を提供することができる。
【0078】
加えて、図19からも理解できるように、電子放出装置は発光量の種類(発光量レンジ、図19において破線にて示す。)を多段階とすることができるので、液晶表示装置(液晶表示素子群)によって表現することができる階調は、液晶表示素子11単体による透過率の大きさの種類(透過率レンジ)の数と、発光量レンジの数と、の積となる。即ち、システムの階調表現能力を格段に向上することができる。
【0079】
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態において、蛍光体24は複数の電子放出素子21に対して一つであったが、各電子放出素子21に一つの蛍光体が配設されてもよい。
【0080】
また、発光部20Bは、図20に示したように、透明板22の下面(上部電極21dと対向する面)に蛍光体24’を予め形成した後、その蛍光体24’を覆うように厚さ100〜200nm程度のアルミニウム薄膜からなるコレクタ電極23’を形成してなる構造を備えていてもよい。この場合、コレクタ電圧Vcの印加に従って形成された電界により加速された電子は、コレクタ電極23’を貫通して蛍光体24’に到達する。このような構成によれば、コレクタ電極23’は蛍光体24’が発した光を透明板22の方へ反射させるミラーとして機能する。従って、蛍光体24’の発光を効率良く外部へ取り出すことができる。
【0081】
更に、蛍光体24は、上部電極21dに対してエミッタ部21cと反対側の面に同上部電極21dに接するように形成されてもよい。これにより、上部電極21dの微細貫通孔21d1を通って放出させられた電子が上部電極21dの直上部に存在する蛍光体に衝突し、蛍光体を励起して光を発生させる発光素子が形成される。
【0082】
加えて、電子放出装置は、下部電極、エミッタ部及び上部電極を備えてなる完全に独立した電子放出素子を基板上にN行M列のマトリクス状で配列し、同一行の電子放出素子の下部電極同士を導電体により接続するとともに、同一列の電子放出素子の上部電極同士を導電体により接続した構造を備えるものであってもよい。
【0083】
また、上部電極に、鱗片状の物質(例えば黒鉛等)の集合体や、鱗片状の物質を含んだ導電性の物質の集合体を使用することもできる。このような物質の集合体は、元来、鱗片と鱗片とが離間している部分を有しているので、焼成などの熱処理を経なくても、その部分を上部電極の上記微細貫通孔として使用することができる。更に、エミッタ部上に有機樹脂と金属薄膜とをこの順に層状に形成した後で焼成し、有機樹脂を燃焼させることにより金属薄膜に微細貫通孔を形成し、上部電極としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の概略部分断面図である。
【図2】図1に示した液晶ディスプレイの平面図である。
【図3】図1に示した電子放出装置の平面図である。
【図4】図1に示した液晶ディスプレイ、電子放出装置及び発光部の部分拡大断面図である。
【図5】図4に示した上部電極の拡大部分平面図である。
【図6】図4に示した電子放出素子の一つの状態を示した図である。
【図7】図4に示したエミッタ部の電圧−分極特性のグラフである。
【図8】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図9】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図10】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図11】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図12】図4に示した電子放出素子の他の状態を示した図である。
【図13】図4に示した電子放出素子の書込み電圧(電子の蓄積期間における駆動電圧)と蛍光体の発光量との関係を示したグラフである。
【図14】図4に示した電子放出素子の電子放出電圧(発光期間における駆動電圧)と蛍光体の発光量との関係を示したグラフである。
【図15】図1に示した電子放出装置の駆動電圧付与回路の回路図である。
【図16】図1に示した液晶表示装置における液晶表示素子の行走査とバックライトの発光制御との関係を示したタイムチャートである。
【図17】本発明によるバックライトの発光制御を説明するための図である。
【図18】本発明によるバックライトの発光制御によって得られる発光部の平面視の様子を模式的に示した図である。
【図19】本発明による液晶表示素子の透過率の変化と発光部の発光期間(電子放出装置の電子放出期間)との関係を示したグラフである。
【図20】図1に示した発光部の変形例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0085】
10…液晶ディスプレイ、11…液晶表示素子、12…表示制御回路、20…バックライト、20B…蛍光部、20A…電子放出装置、20B…発光部、21…電子放出素子、21a…基板、21b…下部電極、21c…エミッタ部、21d…上部電極、21d1…微細貫通孔、22…透明板、23…コレクタ電極、24…蛍光体、31…駆動電圧付与回路、32…コレクタ電圧付与回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n行m列のマトリクス状に配列された複数の液晶表示素子を備えるとともに、1つのフレーム期間において一定時間の行走査を行順に総ての行に対して行うことにより同複数の液晶表示素子の光の透過率を変更して、同複数の液晶表示素子により表示される画像を切り換える液晶ディスプレイに適用されるバックライトであって、
誘電体からなるエミッタ部と同エミッタ部の下部に形成された下部電極と同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成されてなる上部電極とを有し、所定の書込み電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに多数の電子を同エミッタ部に蓄積するとともに所定の電子放出電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに同エミッタ部に蓄積した電子を同エミッタ部から同微細貫通孔を通して放出する電子放出素子を複数備え、同複数の電子放出素子のそれぞれが前記液晶ディスプレイの互いに隣接する複数の前記液晶表示素子からなる液晶表示素子群のそれぞれに対向するようにマトリクス状に配列された電子放出装置と、
前記電子放出素子の上部電極と前記液晶ディスプレイとの間において同上部電極と対向するように配置されるとともに電子の衝突により同液晶ディスプレイに向けて発光する蛍光体と、
前記液晶表示素子群のうちの一つの液晶表示素子群に対する前記行走査が総て終了した後に同一つの液晶表示素子群に属する各液晶表示素子の光の透過率が安定した状態となってから同一つの液晶表示素子群に対する次の行走査が開始するまでの期間において前記複数の電子放出素子のうちの同一つの液晶表示素子群に対向する電子放出素子に前記電子放出電圧を所定時間だけ付与するとともに、同電子放出電圧が付与された電子放出素子に次の前記電子放出電圧を付与するまでの期間において前記書込み電圧を付与する駆動電圧付与回路と、
を備えたバックライト。
【請求項2】
請求項1に記載のバックライトにおいて、
前記数値nは2以上の整数Nの倍数であり、前記数値mは2以上の整数Mの倍数であり、前記液晶表示素子群は前記nを前記Nで除したn/N行であって前記mを前記Mで除したm/M列のマトリクス状に配列され、
前記駆動電圧付与回路は、
1つの前記液晶表示素子群を構成する前記液晶表示素子の総てに対する前記行走査が完了した時点を開始時点とし同開始時点から前記N行分の前記行走査に要する時間が経過した時点を終了時点とする1つのサブフレーム期間において、同サブフレーム期間の終了時点において前記行走査が開始される予定の前記液晶表示素子を含む前記液晶表示素子群に対向する前記電子放出素子に前記書込み電圧と前記電子放出電圧とを付与するように構成されたバックライト。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバックライトにおいて、
前記駆動電圧付与回路は、
前記書込み電圧を、同書込み電圧が付与される電子放出素子に対向する前記液晶表示素子群に属する前記複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた電圧に設定するように構成されたバックライト。
【請求項4】
n行m列のマトリクス状に配列された複数の液晶表示素子を備えるとともに、1つのフレーム期間において一定時間の行走査を行順に総ての行に対して行うことにより同複数の液晶表示素子の光の透過率を変更して、同複数の液晶表示素子により表示される画像を切り換える液晶ディスプレイに適用され、
誘電体からなるエミッタ部と同エミッタ部の下部に形成された下部電極と同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成されてなる上部電極とを有し、所定の書込み電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに多数の電子を同エミッタ部に蓄積するとともに所定の電子放出電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに同エミッタ部に蓄積した電子を同エミッタ部から同微細貫通孔を通して放出する電子放出素子を複数備え、同複数の電子放出素子のそれぞれが前記液晶ディスプレイの互いに隣接する複数の前記液晶表示素子からなる液晶表示素子群のそれぞれに対向するようにマトリクス状に配列された電子放出装置と、
前記電子放出素子の上部電極と前記液晶ディスプレイとの間において同上部電極と対向するように配置されるとともに電子の衝突により同液晶ディスプレイに向けて発光する蛍光体と、
を備えたバックライトの発光制御方法であって、
前記液晶表示素子群のうちの一つの液晶表示素子群に対する前記行走査が総て終了した後に同一つの液晶表示素子群に属する各液晶表示素子の光の透過率が安定した状態となってから同一つの液晶表示素子群に対する次の行走査が開始するまでの期間において前記複数の電子放出素子のうちの同一つの液晶表示素子群に対向する電子放出素子に前記電子放出電圧を所定時間だけ付与するとともに、同電子放出電圧が付与された電子放出素子に次の前記電子放出電圧を付与するまでの期間において前記書込み電圧を付与する発光制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のバックライトの発光制御方法において、
前記数値nは2以上の整数Nの倍数であり、前記数値mは2以上の整数Mの倍数であり、前記液晶表示素子群は前記nを前記Nで除したn/N行であって前記mを前記Mで除したm/M列のマトリクス状に配列され、
1つの前記液晶表示素子群を構成する前記液晶表示素子の総てに対する前記行走査が完了した時点を開始時点とし同開始時点から前記N行分の前記行走査に要する時間が経過した時点を終了時点とする1つのサブフレーム期間において、同サブフレーム期間の終了時点において前記行走査が開始される予定の前記液晶表示素子を含む前記液晶表示素子群に対向する前記電子放出素子に前記書込み電圧と前記電子放出電圧とを付与する発光制御方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のバックライトの発光制御方法において、
前記書込み電圧を、同書込み電圧が付与される電子放出素子に対向する前記液晶表示素子群に属する前記複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた電圧に設定する発光制御方法。
【請求項1】
n行m列のマトリクス状に配列された複数の液晶表示素子を備えるとともに、1つのフレーム期間において一定時間の行走査を行順に総ての行に対して行うことにより同複数の液晶表示素子の光の透過率を変更して、同複数の液晶表示素子により表示される画像を切り換える液晶ディスプレイに適用されるバックライトであって、
誘電体からなるエミッタ部と同エミッタ部の下部に形成された下部電極と同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成されてなる上部電極とを有し、所定の書込み電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに多数の電子を同エミッタ部に蓄積するとともに所定の電子放出電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに同エミッタ部に蓄積した電子を同エミッタ部から同微細貫通孔を通して放出する電子放出素子を複数備え、同複数の電子放出素子のそれぞれが前記液晶ディスプレイの互いに隣接する複数の前記液晶表示素子からなる液晶表示素子群のそれぞれに対向するようにマトリクス状に配列された電子放出装置と、
前記電子放出素子の上部電極と前記液晶ディスプレイとの間において同上部電極と対向するように配置されるとともに電子の衝突により同液晶ディスプレイに向けて発光する蛍光体と、
前記液晶表示素子群のうちの一つの液晶表示素子群に対する前記行走査が総て終了した後に同一つの液晶表示素子群に属する各液晶表示素子の光の透過率が安定した状態となってから同一つの液晶表示素子群に対する次の行走査が開始するまでの期間において前記複数の電子放出素子のうちの同一つの液晶表示素子群に対向する電子放出素子に前記電子放出電圧を所定時間だけ付与するとともに、同電子放出電圧が付与された電子放出素子に次の前記電子放出電圧を付与するまでの期間において前記書込み電圧を付与する駆動電圧付与回路と、
を備えたバックライト。
【請求項2】
請求項1に記載のバックライトにおいて、
前記数値nは2以上の整数Nの倍数であり、前記数値mは2以上の整数Mの倍数であり、前記液晶表示素子群は前記nを前記Nで除したn/N行であって前記mを前記Mで除したm/M列のマトリクス状に配列され、
前記駆動電圧付与回路は、
1つの前記液晶表示素子群を構成する前記液晶表示素子の総てに対する前記行走査が完了した時点を開始時点とし同開始時点から前記N行分の前記行走査に要する時間が経過した時点を終了時点とする1つのサブフレーム期間において、同サブフレーム期間の終了時点において前記行走査が開始される予定の前記液晶表示素子を含む前記液晶表示素子群に対向する前記電子放出素子に前記書込み電圧と前記電子放出電圧とを付与するように構成されたバックライト。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバックライトにおいて、
前記駆動電圧付与回路は、
前記書込み電圧を、同書込み電圧が付与される電子放出素子に対向する前記液晶表示素子群に属する前記複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた電圧に設定するように構成されたバックライト。
【請求項4】
n行m列のマトリクス状に配列された複数の液晶表示素子を備えるとともに、1つのフレーム期間において一定時間の行走査を行順に総ての行に対して行うことにより同複数の液晶表示素子の光の透過率を変更して、同複数の液晶表示素子により表示される画像を切り換える液晶ディスプレイに適用され、
誘電体からなるエミッタ部と同エミッタ部の下部に形成された下部電極と同エミッタ部を挟んで同下部電極に対向するように同エミッタ部の上部に形成されるとともに微細貫通孔が複数形成されてなる上部電極とを有し、所定の書込み電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに多数の電子を同エミッタ部に蓄積するとともに所定の電子放出電圧が同上部電極と同下部電極との間に付与されたときに同エミッタ部に蓄積した電子を同エミッタ部から同微細貫通孔を通して放出する電子放出素子を複数備え、同複数の電子放出素子のそれぞれが前記液晶ディスプレイの互いに隣接する複数の前記液晶表示素子からなる液晶表示素子群のそれぞれに対向するようにマトリクス状に配列された電子放出装置と、
前記電子放出素子の上部電極と前記液晶ディスプレイとの間において同上部電極と対向するように配置されるとともに電子の衝突により同液晶ディスプレイに向けて発光する蛍光体と、
を備えたバックライトの発光制御方法であって、
前記液晶表示素子群のうちの一つの液晶表示素子群に対する前記行走査が総て終了した後に同一つの液晶表示素子群に属する各液晶表示素子の光の透過率が安定した状態となってから同一つの液晶表示素子群に対する次の行走査が開始するまでの期間において前記複数の電子放出素子のうちの同一つの液晶表示素子群に対向する電子放出素子に前記電子放出電圧を所定時間だけ付与するとともに、同電子放出電圧が付与された電子放出素子に次の前記電子放出電圧を付与するまでの期間において前記書込み電圧を付与する発光制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のバックライトの発光制御方法において、
前記数値nは2以上の整数Nの倍数であり、前記数値mは2以上の整数Mの倍数であり、前記液晶表示素子群は前記nを前記Nで除したn/N行であって前記mを前記Mで除したm/M列のマトリクス状に配列され、
1つの前記液晶表示素子群を構成する前記液晶表示素子の総てに対する前記行走査が完了した時点を開始時点とし同開始時点から前記N行分の前記行走査に要する時間が経過した時点を終了時点とする1つのサブフレーム期間において、同サブフレーム期間の終了時点において前記行走査が開始される予定の前記液晶表示素子を含む前記液晶表示素子群に対向する前記電子放出素子に前記書込み電圧と前記電子放出電圧とを付与する発光制御方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のバックライトの発光制御方法において、
前記書込み電圧を、同書込み電圧が付与される電子放出素子に対向する前記液晶表示素子群に属する前記複数の液晶表示素子の光の透過率に応じた電圧に設定する発光制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−86724(P2007−86724A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76052(P2006−76052)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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