説明

液晶パネルの試験方法及び試験装置

【課題】 液晶パネルの耐光性の評価に要する時間の短縮を図ることを可能とする技術を提供すること。
【解決手段】 一対の基板と当該基板間に介在する液晶層とを含んでなる液晶パネルの耐光性を試験するための方法であって、レーザ光(LB)をその波長、照射エネルギー又は照射時間のうち少なくとも1つを可変パラメータとして設定して前記液晶パネル(100)の試験対象領域(AR)に照射する第1工程と、観察光(OB)を前記液晶パネルに照射し、当該液晶パネルを通過した当該観察光の状態を検出する第2工程と、前記レーザ光の前記可変パラメータの設定に応じた前記観察光の状態の差異に基づいて前記液晶パネルの耐光性を評価する第3工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの耐光性を評価するための試験方法及び試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶パネルの信頼性評価の1つとして耐光性試験が行われている。例えば、液晶プロジェクタにおいてライトバルブとして用いられる液晶パネルは、強い光が長時間に渡って照射されて各構成要素(部品、部材)に劣化が生じやすいので、所要の品質を確保するために耐光性試験が重要となる。
【0003】
このような液晶パネルの耐光性においては、長い場合には数ヶ月といったオーダでの試験期間を要する場合がある。しかし、製品開発期間の短縮化が求められる状況ではこのような長期間の試験は許容しがたい。これに対して、評価期間を短縮する手法の1つとして、実際の使用状況よりも過酷な条件による負荷をかけて試験を行い、その結果から長期間の使用後における劣化を予測する、いわゆる加速試験が知られている。このような液晶パネルの耐光性評価に関する従来技術は、例えば特開2001−4526号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
上記したような従来の耐光性評価方法では、メタルハイドロランプ、UHPランプ或いはハロゲンランプなどの光源を用いて液晶パネルに光を照射していた。ところが、これらの光源により得られる光は集光性が低く、高いエネルギー密度が得られないため、短時間で劣化現象を発現されることが難しかった。このため、液晶パネルの耐光性の評価に長い時間が必要となる不都合があった。このように評価時間が長くなることは、製品開発期間の短縮化の妨げとなり好ましくない。
【0005】
【特許文献1】特開2001−4526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、液晶パネルの耐光性の評価に要する時間の短縮を図ることを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の本発明は、一対の基板と当該基板間に介在する液晶層とを含んでなる液晶パネルの耐光性を試験するための方法であって、レーザ光をその波長、照射エネルギー又は照射時間のうち少なくとも1つを可変パラメータとして設定して上記液晶パネルの試験対象領域に照射する第1工程と、観察光を上記液晶パネルに照射し、当該液晶パネルを通過した当該観察光の状態を検出する第2工程と、上記レーザ光の上記可変パラメータの設定に応じた上記観察光の状態(光強度、偏光状態等)の差異に基づいて上記液晶パネルの耐光性を評価する第3工程と、を含むものである。
【0008】
かかる方法では、液晶パネルの耐光性を調べるための光としてレーザ光を用いているので、ハロゲンランプ等を光源として用いる場合に比較的して、局所的に高いエネルギー密度で光照射を行うことができる。これにより、極めて短時間(例えば数分間〜数十分間程度)で劣化現象を発現させることができ、その際のレーザ光の照射条件と発現した劣化の程度との相関関係を検討することにより液晶パネルの耐光性を評価することができる。したがって、液晶パネルの耐光性の評価に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0009】
上述した第1工程は、上記レーザ光の照射によって上記試験対象領域内の上記液晶層の配向性を局所的に低下させるものであることが好ましい。特に、試験対象領域内の配向膜に変質を生じさせて、配向膜の配向規制力を低下又は消失させるものであることが好ましい。
【0010】
これにより、光照射による配向性の低下に起因する液晶パネルの劣化を評価することができる。
【0011】
好ましくは、上述した第2工程は、少なくとも上記液晶パネルの光出射側に偏光素子を配置し、当該偏光素子を通過後の上記観察光の光強度を当該観察光の状態として検出する。
【0012】
偏光素子を用いることにより、液晶パネルの劣化による液晶層の配向状態の変化を透過光の強度変化として容易に検出することができる。
【0013】
また、上記レーザ光を上記観察光として兼用し、上記第1工程及び上記第2工程を並行して行うことが好ましい。
【0014】
これにより、更なる評価時間の短縮を図ることが可能となる。また、試験方法の実施に用いる装置、器具等の簡素化が可能となる。
【0015】
また、上述したレーザ光として連続波のものを用いることが好ましい。
【0016】
これにより、試験対象領域へ効率よくエネルギーを与えて劣化を生じさせることが可能となり、評価時間のより一層の短縮を図ることができる。
【0017】
好ましくは、上記第1工程は、結像光学系を介して上記レーザ光を上記試験対象領域に照射する。
【0018】
これにより、試験対象領域の全域に対して均一にエネルギーを与えることが可能となり、評価結果の信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、上記第1工程においては、集光光学系を介して上記レーザ光を上記試験対象領域に照射することも好ましい。
【0020】
この場合には、試験対象領域をより極小な領域に絞って評価を行うことが可能となる。したがって、例えば、液晶パネルの構成要素のうち特定の要素を選択的に評価したい場合(例えば、画素電極内だけを評価したい場合等)に有効である。
【0021】
第2の態様の本発明は、上記第1の態様にかかる試験方法の実施に用いて好適な試験装置に関するものである。具体的には、本発明にかかる液晶パネルの試験装置は、一対の基板と当該基板間に介在する液晶層とを含んでなる液晶パネルの耐光性を試験するための装置であって、レーザ光をその波長、照射エネルギー又は照射時間のうち少なくとも1つを可変パラメータとして設定して出力可能なレーザ発振器と、上記液晶パネルの試験対象領域に上記レーザ発振器から出力される上記レーザ光が照射されるように当該レーザ光と上記液晶パネルとの相対位置を設定する位置設定手段と、上記液晶パネルの光透過状態を観測するための観察光を当該液晶パネルに照射する観察光出力手段と、上記液晶パネルを通過した後の上記観察光の状態を検出する検出手段と、を備えている。
【0022】
かかる構成の試験装置を用いることにより、液晶パネルの耐光性の評価に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0023】
また、少なくとも上記液晶パネルの光出射側に配置される偏光素子を更に含み、上記偏光素子を通過後の上記観察光の光強度を当該観察光の状態として上記検出手段によって検出することが好ましい。
【0024】
これにより、観察光の状態を容易に検出することができる。
【0025】
また、上述したレーザ光が観察光を兼ねることも好ましい。
【0026】
これにより、装置構成の簡素化が可能となる。
【0027】
また、上記レーザ光が連続波であることも好ましい。
【0028】
これにより、試験対象領域へ効率よくエネルギーを与えて劣化を生じさせることが可能となり、評価時間のより一層の短縮を図ることができる。
【0029】
また、上記レーザ光を上記試験対象領域に結像させる結像光学系を更に含むことが好ましい。
【0030】
これにより、試験対象領域の全域に対して均一にエネルギーを与えることが可能となり、評価結果の信頼性を向上させることができる。
【0031】
また、上記レーザ光を上記試験対象領域に集光させる集光光学系を更に含むことも好ましい。
【0032】
この場合には、試験対象領域をより極小な領域に絞って評価を行うことが可能となる。したがって、例えば、液晶パネルの構成要素のうち特定の要素を選択的に評価したい場合に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の態様について説明する。
【0034】
図1は、液晶パネルの試験方法を概略的に説明する図である。本実施形態の試験方法は、一対の基板と当該基板間に介在する液晶層とを含んでなる液晶パネルの耐光性についての試験方法であって、レーザ光の照射により液晶パネルに劣化を生じさせ、その後、液晶パネルに観察光を照射して光学的に観察して当該液晶パネルの劣化度合いを評価するものである。
【0035】
具体的には、まず図1(A)に示すように、レーザ光LBをその波長、照射エネルギー又は照射時間のうち少なくとも1つを可変パラメータとして設定して、液晶パネル100の試験対象領域ARに照射する(第1工程)。レーザ光LBの発生にはレーザ発振器10を用いる。試験対象領域ARは任意に設定可能であり、例えば液晶パネル100の1画素に対応する領域が設定される。レーザ光LBを用いて比較的に高いエネルギーを与えることにより、液晶パネル100の試験対象領域ARに含まれる各部材(例えば配向膜や液晶分子等)に劣化が生じる。このとき、液晶パネル100の劣化度合いは、レーザ光LBの可変パラメータの設定内容によって異なることとなる。本実施形態では、主として、レーザ光LBの照射によって試験対象領域AR内の配向膜を変質させ、液晶層の配向性を局所的に低下させるという態様の劣化を考える。
【0036】
次に、図1(B)に示すように、観察光OBを液晶パネル100に照射し、当該液晶パネル100を通過した当該観察光OBの状態を検出する(第2工程)。ここで、検出対象とする観察光OBの状態(光学的特性)としては、光強度、偏光状態、分光特性など種々のものが考えられる。よって、観察光OBの状態として検出したい内容に応じた観察光出力手段12及び検出手段14が適宜、選択される。このとき、液晶パネル100の試験対象領域ARに劣化が生じていれば、多くの場合、当該領域ARにおいては当該領域AR以外の領域とは異なる光学的特性が検出される。
【0037】
その後、レーザ光LBの可変パラメータの設定内容に応じた観察光OBの状態の差異に基づいて液晶パネルの耐光性を評価する(第3工程)。例えば、レーザ光LBの照射時間の長短による観察光OBの状態の差異を比較することにより経時劣化を評価できる。また、レーザ光LBの照射エネルギーの大小による観察光OBの状態の差異を比較することにより、光強度に対する耐性を評価できる。
【0038】
なお、レーザ光LBを観察光OBとしても兼用し、上述した第1工程及び第2工程を並行して行うようにしてもよい。また、レーザ光LBを連続波(CW)とすることにより、エネルギーをより効率よく与えることが可能となる。
【0039】
本発明にかかる液晶パネルの試験方法の概略は以上の通りであり、次に、より具体的な実施の形態について説明する。以下では、配向モードをTN(ツイステッドネマティック)型とした液晶パネルを採り上げ、観察光OBの状態として当該観察光OBの光強度を検出する場合についての実施形態を詳細に説明する。
【0040】
図2は、試験対象となる液晶パネル100の構成例を説明するための断面図である。図2(A)は、劣化が生じる前の液晶パネル100の構成を概略的に示す図であり、図2(B)は劣化が生じた後の液晶パネル100の構成を概略的に示す図である。
【0041】
図2(A)及び図2(B)に示す液晶パネル100は、基板101、102、配向膜103、104、液晶層105、画素電極106、対向電極107、ブラックマスク108を含んで構成されている。図2では、液晶パネル100の一部、具体的には3つの画素P1、P2、P3を含む範囲が示されているが、全体としてはこのような画素をアレイ状に多数配置した構成となっている。
【0042】
各基板101、102は、ガラス、プラスチックなどの透光性の材料からなるものであり、図示しないスペーサ等を挟んで所定間隔(例えば、3μm程度)だけ離間して対向配置されている。
【0043】
各配向膜103、104は、各基板101、102の相互間に介在する液晶層105内の液晶分子の配向を規制するためのものである。本例では、これらの配向膜103、104として、ポリイミド膜をラビング処理したものを用いている。各配向膜103、104は、それぞれ膜表面において液晶分子を一方向に平行配向させる配向規制力を有する。この配向規制力が働く方向が略直交するように各配向膜103、104を配置することにより、液晶層105内の液晶分子をTN配向させている。
【0044】
液晶層105は、ネマティック液晶からなる層であり、基板101、102の相互間に介在する。この液晶層105に含まれる液晶分子は、図2(A)に示すように、基板101側から基板102側に向かって連続的に90度ねじれた配向状態となっている。また、液晶パネル100の一部(例えば画素P2に対応する部分)において、配向膜103及び/又は104の配向規制力の低下あるいは消失などの要因による劣化が生じた場合には、図2(B)に示すように当該部分において液晶分子の配向性が低下する。
【0045】
画素電極106は、各画素ごとに液晶層105に電圧を印加するためのものであり、基板101上の各画素P1〜P3に対応する位置にそれぞれ形成されている。これらの画素電極106は、例えばITO(Indium-Tin-Oxide)などの透明導電膜を基板101上に成膜し、パターニングすることによって形成される。そして、各画素電極106には、図示しない薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子が接続されており、当該スイッチング素子によって電圧印加が制御される。各スイッチング素子は、信号線を通じて外部回路により駆動される。
【0046】
対向電極107は、上記の各画素電極106と共に液晶層105に電圧を印加するためのものであり、基板102上の略全面に形成されている。この対向電極107は、各画素に共用される共通電極となっており、接地電位等の所定電位に接続される。対向電極107としても、ITOなどの透明導電膜が用いられる。
【0047】
ブラックマスク108は、各画素の境界を覆い、当該領域における漏れ光を遮断するためのものであり、基板102上に形成されている。このブラックマスク108は、光透過率の極めて低いクロム等の材料を用いて、各画素に対応する領域が開口するような格子状に形成されている。
【0048】
図3は、上記図2に示す液晶パネル100に観察光を照射し、当該観察光の光強度を検出する方法の一例について説明する図である。より詳細には、図3(A)は、上記図2(A)に示した劣化が生じる前の液晶パネル100についての説明図であり、図3(B)は、上記図2(B)に示した劣化が生じた後の液晶パネル100についての説明図である。
【0049】
図3(A)に示すように、液晶パネル100の光入射側及び光出射側には、それぞれ偏光素子22、24が配置される。偏光素子22と偏光素子24とは、互いの光学的主軸が略直交するように配置される。そして、偏光素子22は、その光学的主軸(偏光軸)が液晶パネル100の基板101側における液晶分子の平均的配向方向(ダイレクタ)と略平行となるように配置される。また、偏光素子24は、その光学的主軸(偏光軸)が液晶パネル100の基板102側におけるダイレクタと略平行となるように配置される。偏光素子22に入射した観察光OBは、当該偏光素子22の光学的主軸に沿った振動成分のみが通過し、直線偏光となる。この直線偏光となった観察光OBが液晶パネル100の一方面(基板101側)に入射すると、その偏光方向が液晶分子のねじれに沿って90度回転して、液晶パネル100の他方面(基板102側)から出射される。そして、液晶パネル100から出射した観察光OBの偏光方向は偏光素子24の光学的主軸と略平行となるので、当該偏光素子24を通過する。
【0050】
一方、図3(B)に示す例においても、液晶パネル100と各偏光素子22、24との相対的配置は上記図3(A)の場合と同様になっている。しかし、図2(B)に示したように、画素P2においては液晶層105の液晶分子の配向性が低下しているため、これに伴い、入射光の偏光方向を回転させる能力(旋光性)が低下する。そして、液晶分子の配向性がある程度低下した場合には、図3(B)に示すように観察光OBはその偏光方向がほとんど回転せずに液晶パネル100の他方面から出射される。よって、液晶パネル100から出射する観察光OBは、その偏光方向が偏光素子24の光学的主軸と略直交することとなるため偏光素子24を通過できない。
【0051】
このように、各偏光素子22、24を用いることにより、液晶パネル100を通過する観察光OBの光強度を検出することができる。なお、観察光OB自身の偏光状態が直線偏光である場合には、液晶パネル100の光入射側に配置される偏光素子22が不要となる。
【0052】
次に、上述した本実施形態にかかる液晶パネルの試験方法の実施に用いる試験装置の好適な構成例について説明する。
【0053】
図4は、液晶パネルの試験装置の構成例を説明する図である。図4に示す液晶パネルの試験装置1は、上述した試験方法によって液晶パネルの耐光性を試験するためのものであり、レーザ発振器10、ミラー11、テーブル13、パワーメータ(検出手段)14、ホモジナイザー15、マスク16、結像レンズ17、偏光素子22、24を含んで構成されている。
【0054】
レーザ発振器10は、レーザ光LBをその波長、照射エネルギー又は照射時間のうち少なくとも1つを可変パラメータとして設定して出力可能な光源である。このレーザ発振器10としては、液晶パネル100に対して短時間で所望の劣化を生じさせ得るものであれば如何なるものを採用可能である。例えば、本実施形態では波長405nm、連続波のレーザ光を出力する半導体レーザを用いる。また、本実施形態のレーザ発振器10は、液晶パネル100の光透過状態を観測するための観察光を当該液晶パネル100に照射する観察光出力手段としての機能も兼ねている。
【0055】
ミラー11は、レーザ発振器10から出力されるレーザ光LBを反射し、その進路を液晶パネル100が載置されるテーブル13の方向へ変更させる。
【0056】
テーブル13は、試験対象となる液晶パネル100が載置され、レーザ光LBが当該液晶パネル100の試験対象領域に照射されるようにレーザ光LBと液晶パネル100との相対位置を設定するものである。このテーブル13は、液晶パネル100と偏光素子22、24とをフォルダによって保持し、これらを三次元方向に自在に移動可能となっており、液晶パネル100とレーザ光LBとの相対位置を設定する位置設定手段として機能する。
【0057】
パワーメータ14は、液晶パネル100を通過した後の観察光(本例ではレーザ光LBで兼用)の状態として、光強度を検出するものである。本実施形態では、偏光素子22、24を用いることで、液晶パネル100内の劣化を透過光強度の変化として観察できるようにしている。
【0058】
ホモジナイザー15は、レーザ発振器10から出力されるレーザ光LBをその強度分布がほぼ均一となるように変換する。
【0059】
マスク16は、ホモジナイザー15を通過後のレーザ光LBのビーム形状を略矩形に変換する。
【0060】
結像レンズ17は、ホモジナイザー15及びマスク16を通過し、強度分布及びビーム形状が整形された後のレーザ光LBを液晶パネル100の試験対象領域に結像させる。図5は、上記の結像光学系を通過後のレーザ光LBの状態について説明する図である。レーザ光LBのビーム形状は図5(A)に示すような略矩形となり、強度分布についても図5(B)に示すようにビーム中央からビーム端までほぼ均一となる。
【0061】
偏光素子22は、液晶パネル100の光入射側に配置され、入射光のうちで偏光軸と同方向の振動成分のみを通過させる。同様に、偏光素子24は、液晶パネル100の光出射側に配置され、液晶パネル100からの出射光のうちで偏光軸と同方向の振動成分のみを通過させる。これらの偏光素子22、24の相互間、及びこれらと液晶パネル100との相対的配置については任意に設定可能であり、本実施形態では上記図3に示したような配置とする。これらの偏光素子22、24を用いることで、液晶パネル100を通過後の観察光の光強度を当該観察光の状態として検出することが可能となる。
【0062】
なお、液晶パネル100に入射するレーザ光LBが元々直線偏光となっている場合等においては、光入射側の偏光素子22が不要となる。また、液晶パネル100に対して偏光素子を取り付けた状態のもの(最終製品状態となったもの等)を試験対象とする場合には、各偏光素子はともに不要となる。
【0063】
このような液晶パネルの試験装置1を用いて、液晶パネル100に対して波長、照射時間等)の条件を種々に設定してレーザ光を照射して劣化を生じさせ、並行して当該レーザ光を観察光として用いて透過光をモニタすることにより、液晶パネル100の耐光性を評価することができる。例えば、レーザ光の照射時間を横軸にとり、液晶パネル100を通過する光の強度(透過率)を縦軸にとったグラフをプロットすることにより、液晶パネルの耐光性の評価が可能である。そして、かかる評価結果から加速係数を算出することにより、液晶パネル100の耐用時間を推定することができる。
【0064】
図6は、液晶パネルの試験装置の他の構成例を説明する図である。図6に示す液晶パネルの試験装置1aは、上述した試験装置1(図4参照)と基本的に同様な構成を有するものであり、共通する構成要素については同符号を付して説明を省略する。
【0065】
図6に示す本例の試験装置1aは、上記の試験装置1における集光光学系を結像光学系に変更した点が異なっている。より具体的には、ホモジナイザー15、マスク16が省略され、かつ結像レンズ17が集光レンズ18に変更されている。
【0066】
集光レンズ18は、ミラー11によって進路変更された後のレーザ光LBが入射され、当該レーザ光LBを集光する。このように、図6に示す本実施形態の試験装置1aでは、集光レンズ18を用いた集光光学系を介してレーザ光LBを液晶パネル100の試験対象領域に照射する構成を採用している。図7は、集光光学系を通過後のレーザ光LBの状態について説明する図である。レーザ光LBのビーム形状は図7(A)に示すような略円形となり、強度分布は図7(B)に示すようにビーム中央付近のエネルギーが高い状態となる。
【0067】
このように本実施形態によれば、液晶パネルの耐光性を調べるための光としてレーザ光を用いているので、ハロゲンランプ等を光源として用いる場合に比較的して、局所的に高いエネルギー密度で光照射を行うことができる。これにより、極めて短時間(例えば数分間〜数十分間程度)で劣化現象を発現させることができ、その際のレーザ光の照射条件と発現した劣化の程度との相関関係を検討することにより液晶パネルの耐光性を評価することができる。したがって、液晶パネルの耐光性の評価に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0068】
また、レーザ光を用いることにより、液晶パネル内の評価対象としたい構成要素に対して局所的に光を当てて劣化を生じさせることができる。これにより、評価対象としたい要素以外の要素の影響を極力排除し、より精度の高い評価結果を得ることが可能となる。更に、1つの液晶パネルにおいて複数箇所で試験を行うことも容易となる。
【0069】
また、レーザ光を用いることにより、試験対象領域に照射される光のエネルギー密度を均一にすることが容易となり、加速試験機としての正確な評価を得やすくなる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものでなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
【0071】
例えば、上述した実施形態では観察光の状態として光強度を採用していたが、これ以外にも偏光状態、分光特性、リタデーションなど種々のものを採用可能である。その場合には、検出対象となる状態に合わせた検出手段を用いればよい。例えば、偏光状態の変化を検出するのであれば検出手段としてエリプソメータが用いられ、分光特性を検出するのであれば検出手段として分光測定機が用いられる。
【0072】
また、上述した実施形態では、レーザ光LBを観察光としても兼用していたが、これらを別々に用意してもよい。その場合には、まずレーザ光によって液晶パネルに劣化を生じさせ、別途用意した観察光を用いて試験対象領域の光学的特性を検出するとよい。
【0073】
また、上述した実施形態ではTN配向モードの液晶パネルを例にして説明していたが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、他のタイプの液晶パネル(例えばSTN型等)の耐光性試験としても本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】液晶パネルの試験方法を概略的に説明する図である。
【図2】試験対象となる液晶パネルの構成例を説明するための断面図である
【図3】液晶パネルに観察光を照射し、当該観察光の光強度を検出する方法の一例について説明する図である。
【図4】液晶パネルの試験装置の構成例を説明する図である。
【図5】結像光学系を通過後のレーザ光の状態について説明する図である。
【図6】液晶パネルの試験装置の他の構成例を説明する図である。
【図7】集光光学系を通過後のレーザ光の状態について説明する図である。
【符号の説明】
【0075】
10…レーザ発振器、12…観察光出力手段、13…テーブル、14…検出手段、15…ホモジナイザー、16…マスク、17…結像レンズ、22、24…偏光素子、100…液晶パネル、LB…レーザ光、OB…観察光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と当該基板間に介在する液晶層とを含んでなる液晶パネルの耐光性を試験するための方法であって、
レーザ光をその波長、照射エネルギー又は照射時間のうち少なくとも1つを可変パラメータとして設定して前記液晶パネルの試験対象領域に照射する第1工程と、
観察光を前記液晶パネルに照射し、当該液晶パネルを通過した当該観察光の状態を検出する第2工程と、
前記レーザ光の前記可変パラメータの設定に応じた前記観察光の状態の差異に基づいて前記液晶パネルの耐光性を評価する第3工程と、
を含む、液晶パネルの試験方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記レーザ光の照射によって前記試験対象領域内の前記液晶層の配向性を局所的に低下させるものである、請求項1に記載の液晶パネルの試験方法。
【請求項3】
前記第2工程は、少なくとも前記液晶パネルの光出射側に偏光素子を配置し、当該偏光素子を通過後の前記観察光の光強度を当該観察光の状態として検出する、請求項1に記載の液晶パネルの試験方法。
【請求項4】
前記レーザ光を前記観察光として兼用し、前記第1工程及び前記第2工程を並行して行う、請求項1に記載の液晶パネルの試験方法。
【請求項5】
前記レーザ光を連続波とする、請求項1に記載の液晶パネルの試験方法。
【請求項6】
前記第1工程は、結像光学系を介して前記レーザ光を前記試験対象領域に照射する、請求項1に記載の液晶パネルの試験方法。
【請求項7】
前記第1工程は、集光光学系を介して前記レーザ光を前記試験対象領域に照射する、請求項1に記載の液晶パネルの試験方法。
【請求項8】
一対の基板と当該基板間に介在する液晶層とを含んでなる液晶パネルの耐光性を試験するための装置であって、
レーザ光をその波長、照射エネルギー又は照射時間のうち少なくとも1つを可変パラメータとして設定して出力可能なレーザ発振器と、
前記液晶パネルの試験対象領域に前記レーザ発振器から出力される前記レーザ光が照射されるように当該レーザ光と前記液晶パネルとの相対位置を設定する位置設定手段と、
前記液晶パネルの光透過状態を観測するための観察光を当該液晶パネルに照射する観察光出力手段と、
前記液晶パネルを通過した後の前記観察光の状態を検出する検出手段と、
を備える、液晶パネルの試験装置。
【請求項9】
少なくとも前記液晶パネルの光出射側に配置される偏光素子を更に含み、
前記検出手段は、前記偏光素子を通過後の前記観察光の光強度を当該観察光の状態として検出する、請求項8に記載の液晶パネルの試験方法。
【請求項10】
前記レーザ光が前記観察光を兼ねる、請求項8に記載の液晶パネルの試験装置。
【請求項11】
前記レーザ光が連続波である、請求項8に記載の液晶パネルの試験装置。
【請求項12】
前記レーザ光を前記試験対象領域に結像させる結像光学系を更に含む、請求項8に記載の液晶パネルの試験装置。
【請求項13】
前記レーザ光を前記試験対象領域に集光させる集光光学系を更に含む、請求項8に記載の液晶パネルの試験装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−78946(P2006−78946A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265096(P2004−265096)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】