説明

液晶ポリエステル樹脂混合物およびそれを用いた成形体。

【課題】可塑化時間に係る安定化効果に優れる液晶ポリエステル樹脂混合物を提供する。さらに当該液晶ポリエステル樹脂混合物を成形して得られる、成形体を提供する。
【解決手段】[1]液晶ポリエステルと、3価リン原子を有するリン化合物と、下記一般式(1)で表されるアミド化合物とを混合してなる、液晶ポリエステル樹脂混合物。
[2]液晶ポリエステルと充填剤とを含む液晶ポリエステル樹脂組成物に、3価リン原子を有するリン化合物と、下記一般式(1)で表されるアミド化合物とを混合してなる、液晶ポリエステル樹脂混合物。
R-CONH2 (1)
(式中、Rは炭素数10〜30の飽和炭化水素基または炭素数10〜30の不飽和炭化水素基を表す。)
[3]上記[1]または[2]の液晶ポリエステル樹脂混合物を成形してなる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル樹脂混合物、該液晶ポリエステル樹脂混合物を用いる成形して得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、一般に溶融液晶型(サーモトロピック液晶)ポリマーと呼ばれているものであり、その特異的な挙動のため溶融流動性が極めて優れ、構造によっては300℃以上の耐熱変形性を有する。このような特性を生かし、電子部品をはじめ、OA、AV部品、耐熱食器等の用途の成形体に用いられている。
【0003】
当該成形体を得る成形方法としては、射出成形が一般的である。射出成形においては、射出ユニットにおける計量工程にかかる時間(可塑化時間)が一定で安定していること、その可塑化時間が金型ユニットにおける冷却工程にかかる時間(冷却時間)以内であることが必要である。しかしながら、液晶ポリエステルでは、可塑化時間が一定になりにくく、冷却時間内に可塑化が終了しない場合が生じる。そのため、一定サイクルでの成形が行うことが困難になり、生産性の低下と同時に成形品の品質にも悪影響が生じることがあった。
【0004】
液晶ポリエステルの可塑化時間が不安定になる理由は明かではないが、原因の一つとして、特許文献1には、液晶ポリエステル自身の溶融粘度の剪断速度、温度に対する依存性が大きいこと、そのため液晶ポリエステルの粒子表面のみが選択的に可塑化して、その融着が生じ易いことが推定されている。このような現象を抑制する手段として、当該液晶ポリエステルに対し、高級脂肪酸アミドを配合してなる混合物が開示されている。当該混合物を用いることにより、可塑化時間を極めて安定化できることから、一定サイクルで成形を行なうことができ、成形体を得る上で生産性に優れた成形が可能となる。
【特許文献1】特開2003-12908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている混合物に対し、乾燥等の加温処理を施すと、可塑化時間に係る安定化効果が低下する場合があった。本発明は、このような加温処理等を施したとしても、可塑化時間に係る安定化効果が保持される液晶ポリエステル樹脂混合物を提供するものである。さらに本発明は当該液晶ポリエステル樹脂混合物を成形して得られる、生産性に優れる成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]または[2]を提供する。
[1]液晶ポリエステル100重量部と、充填剤0〜150重量部と、3価リン原子を有するリン化合物0.001〜5重量部と、下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.001〜5重量部とを混合してなる、液晶ポリエステル樹脂混合物
R-CONH2 (1)
(式中、Rは、炭素数10〜30の飽和炭化水素基または炭素数10〜30の不飽和炭化水素基を表す。)
[2]液晶ポリエステル100重量部と充填剤20〜100重量部とを含む液晶ポリエステル樹脂組成物に、3価リン原子を有するリン化合物0.001〜5重量部と、下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.001〜5重量部とを混合してなる、液晶ポリエステル樹脂混合物。
R-CONH2 (1)
(式中、Rは炭素数10〜30の飽和炭化水素基または炭素数10〜30の不飽和炭化水素基を表す。)
【0007】
さらに、上記[1]または[2]の液晶ポリエステル樹脂混合物に係る、好適な構成成分として下記の[2]〜[7]を提供する。
[3]上記液晶ポリエステルが、
(イ)芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し構造単位、
(ロ)芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位、
(ハ)芳香族ジオール、芳香族ジアミンおよび水酸基を有する芳香族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1つに由来する繰り返し構造単位、
からなる、上記[1]または[2]の液晶ポリエステル樹脂混合物
[4]上記液晶ポリエステルが、上記の(イ)、(ロ)および(ハ)の合計を100モル%としたとき、上記(イ)で表される構造単位を30モル%以上含む液晶ポリエステルである、上記[3]の液晶ポリエステル樹脂混合物
[5]上記液晶ポリエステルにおける、上記(イ)が、下記の(A1)で表される繰り返し構造単位および/または(A3)で表される繰り返し構造単位である、上記[3]または[4]に記載の液晶ポリエステル樹脂混合物

(式中の、芳香環は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。)
[6]上記液晶ポリエステルにおける、上記(ロ)が、下記の(B1)、(B2)または(B3)で表される繰り返し構造単位から選ばれる、上記[3]〜[5]のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂混合物。

(式中の、芳香環は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。)
[7]上記3価リン原子を有するリン化合物がリン系酸化防止剤である、上記いずれかの液晶ポリエステル樹脂混合物
8]上記アミド化合物の融点が30℃以上である、上記いずれかの液晶ポリエステル樹脂混合物
【0008】
上記[1]、[2]に記載の液晶ポリエステル樹脂混合物は、混合時に加熱溶融して組成物としてもよく、下記の[9]、[10]を提供する。
[9]液晶ポリエステル100重量部、3価リン原子を有するリン化合物0.001〜5重量部、下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.001〜5重量部および充填剤0〜150重量部を含む、液晶ポリエステル樹脂組成物
R-CONH2 (1)
(式中、Rは炭素数10〜30の飽和炭化水素基または炭素数10〜30の不飽和炭化水素基を表す。)
[10]液晶ポリエステル100重量部、3価リン原子を有するリン化合物0.001〜5重量部、下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.001〜5重量部および充填剤20〜100重量部を含む、液晶ポリエステル樹脂組成物
R-CONH2 (1)
(式中、Rは炭素数10〜30の飽和炭化水素基または炭素数10〜30の不飽和炭化水素基を表す。)
【0009】
さらに、本発明は上記いずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂混合物あるいは液晶ポリエステル樹脂組成物を用いる、下記の[11]、[12]を提供する。
[11]上記[1]〜[8]いずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂混合物を成形して得られる成形体
[12]上記[9]または[10]に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形体
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物は、射出成形加工時に、可塑化時間が安定化されることから、安定な成形加工を行うことが可能となり、さらには当該樹脂混合物を乾燥等にて、加熱処理を施したとしても、当該可塑化時間の安定化効果が保持されることから工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〈液晶ポリエステル〉
本発明で使用される液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。これらの液晶ポリエステルのなかでも、好適なものとしては、例えば、
(1)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオールと、芳香族ヒドロキシカルボン酸とを縮合して得られるもの
(2)上記(1)の芳香族ジオールの一部または全部を、芳香族ジアミンおよび/または水酸基を有する芳香族アミンに置き換えて縮合して得られるもの
(3)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を縮合して得られるもの
(4)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオールとを縮合して得られるもの
(5)上記(4)の芳香族ジオールの一部または全部を、芳香族ジアミンおよび/または水酸基を有する芳香族アミンに置き換えて縮合して得られるもの
(6)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに、芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの
が挙げられる。
なお、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、水酸基を有する芳香族アミンおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、それらのエステル形成性誘導体が使用されることもあり、芳香族ジアミンまたは水酸基を有する芳香族アミンの代わりに、それらのアミド形成性誘導体を使用することもできる。
【0012】
上記の例示の中でも(1)あるいは(2)が、より耐熱性に優れることから好ましい。すなわち、該液晶ポリエステルが、下記の(イ)、(ロ)および(ハ)で示す繰り返し構造単位からなるものが好ましい。
(イ)芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し構造単位
(ロ)芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位
(ハ)芳香族ジオール、芳香族ジアミンおよび水酸基を有する芳香族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1つに由来する繰り返し構造単位
ここで、上記繰り返し構造単位を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:

なお、これらの繰り返し構造単位は、その芳香環に結合している水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。
【0013】
芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:

なお、これらの繰り返し構造単位は、その芳香環に結合している水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。
【0014】
芳香族ジオールに由来する繰り返し構造単位:

なお、これらの繰り返し構造単位は、その芳香環に結合している水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。
【0015】
水酸基を有する芳香族ジアミンに由来する繰り返し構造単位:

なお、これらの繰り返し構造単位は、その芳香環に結合している水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。
【0016】
芳香族ジアミンに由来する繰り返し構造単位:

なお、これらの繰り返し構造単位は、その芳香環に結合している水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。
【0017】
上記の構造単位に置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基が通常用いられ、中でもメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基が好ましい。また、置換されていてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基またはビフェニル基等が通常用いられ、中でもフェニル基が好ましい。また、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子から選ばれる。
【0018】
上記に示す、液晶ポリエステルを構成する繰り返し構造単位において、耐熱性、機械的強度および加工性のバランスの面で、上記(イ)芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位を多く含む液晶ポリエステルであると好ましく、具体的には、上記(イ)、(ロ)および(ハ)の合計(以下、「構造単位合計」と呼ぶこともある)を100モル%としたとき、(イ)が30モル%以上含む液晶ポリエステルであると好ましい。
【0019】
さらに、上記に(イ)として例示した繰り返し構造単位の中で物、(A1)で表される繰り返し構造単位および/または(A3)で表される繰り返し構造単位が好ましい。(A1)で表される繰り返し構造単位を含む液晶ポリエステルは、特に耐熱性に優れるため好ましく、上記(A3)で表される繰り返し構造単位を含む液晶ポリエステルは、得られる成形体が加水分解に対する耐久性に優れるものが得られるため、好ましい。
【0020】
また、上記(ロ)芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位が、上記の(B1)、(B2)および(B3)で表される繰り返し構造単位から選ばれる繰り返し構造単位であると、好ましい。上記(ロ)が、このような繰り返し構造単位を有する液晶ポリエステルは、得られる成形体の寸法安定性に優れるものを得ることができる。
【0021】
これらの観点を併せ、特に好ましい液晶ポリエステルを具体的に例示する。上記の繰り返し構造単位の組み合わせで表すと、下記(a)〜(f)の組み合わせから選ばれる構造単位を有する液晶ポリエステルが好ましい。
(a):(A1)、(B1)、(C1)からなる組み合わせ。
(b):(a)の(B1)の一部または全部を(B2)および/または(B3)で置き換えた組み合わせ。
(c):(a)または(b)において、(A1)の一部または全部を(A2)で置き換えた組み合わせ。
(d):(a)、(b)または(c)において、(C1)の一部または全部を(C3)および/または(C4)で置き換えた組み合わせ。
(e):(a)、(b)または(c)において、(C1)の一部または全部を(D1)および/または(D2)に置き換えた組み合わせ。
(f):(a)、(b)または(c)において、(C1)の一部または全部を(E1)および/または(E2)に置き換えた組み合わせ。
【0022】
このような、好ましい繰り返し構造単位の組み合わせにおいて、構造単位合計に対して、(イ)の下限は上記のとおり30モル%以上であると好ましいが、より好ましくは40モル%であり、特に好ましくは45モル%以上である。一方、(イ)の上限としては、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは、70モル%以下であり、特に好ましくは65モル%以下である。このように、構造単位合計に対する(イ)のモル分率が上記の範囲であると、より液晶性が発現しやすい傾向があり、かつ加工性が優れる傾向があるため、好ましい。
一方、構造単位合計に対する、(ロ)のモル分率、(ハ)のモル分率は10〜35モル%の範囲であると好ましい。さらには、(ロ)のモル分率および(ハ)のモル分率は、その下限が15モル%以上であると好ましく、17.5モル%以上であると特に好ましい。一方、その上限は、30モル%以下であると好ましく、27.5モル%以下であると特に好ましい。
また、液晶ポリエステル中の(ロ)のモル分率と(ハ)のモル分率とを対比すると、(ロ)/(ハ)で表して、100/85〜85/100の範囲で任意に選ばれるが、実質的に(ロ)のモル分率と(ハ)のモル分率は実質的に等量((ロ)/(ハ)が約1)であると好ましい。
【0023】
本発明で使用される液晶ポリエステルの製造方法は、特に限定されないが、上記繰り返し構造単位(イ)を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸、繰り返し構造単位(ロ)を誘導する芳香族ジカルボン酸構成単位、繰り返し構造単位(ハ)を誘導する芳香族ジオール、芳香族ジアミンおよび水酸基を有する芳香族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物、あるいはこれらのエステル形成性誘導体、アミド形成性誘導体を用いて重縮合により得ることができる。特に、好ましくは当該エステル形成性誘導体やアミド形成性誘導体を用いると重縮合が容易に進行するため好ましい。
【0024】
ここで、エステル形成性誘導体あるいはアミド形成性誘導体について説明する。
カルボン酸のエステル形成性誘導体又はアミド形成性誘導体としては、ポリエステル生成反応もしくはポリアミド生成反応が促進される誘導体、例えば、反応活性が向上した酸塩化物、酸無水物などの誘導体、エステル交換反応もしくはアミド交換反応によりポリエステルもしくはポリアミドが生成可能な、エステルもしくはアミド誘導体(カルボキシル基が、アルコール類やエチレングリコール、アミンなどと反応して形成されるもの)が挙げられる。
【0025】
水酸基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成(アシル化)しているものなどが挙げられる。
【0026】
アミノ基のアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するようなカルボン酸類とアミドを形成(アシル化)しているものなどが挙げられる。
【0027】
上記の中でも、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールあるいは水酸基を有する芳香族アミンに係る水酸基のエステル形成性誘導体として、これらの水酸基をアシル化した誘導体、芳香族ジアミンあるいは水酸基を有する芳香族アミンに係るアミノ基をアシル化したアミド形成性誘導体が好ましい。
当該アシル化の方法においては、脂肪酸無水物を用いると好ましい。この添加量は、水酸基とアミノ基の合計に対して、1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.1倍当量である。脂肪酸無水物の添加量が1.0倍当量未満では、エステル交換・アミド交換による重縮時にアシル化物や芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが昇華し、反応系が閉塞し易い傾向があり、また、1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
【0028】
アシル化反応は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
【0029】
アシル化反応に使用される脂肪酸無水物は,特に限定されないが、例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、イソ酪酸無水物、吉草酸無水物、ピバル酸無水物、2−エチルヘキサン酸無水物、ビス(モノクロル酢酸)無水物、ビス(ジクロル酢酸)無水物、ビス(トリクロル酢酸)無水物、ビス(モノブロモ酢酸)無水物、ビス(ジブロモ酢酸)無水物、ビス(トリブロモ酢酸)無水物、ビス(モノフルオロ酢酸)無水物、ビス(ジフルオロ酢酸)無水物、ビス(トリフルオロ酢酸)無水物、グルタル酸無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸、ビス(β−ブロモプロピオン酸)無水物などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取り扱い性の観点から、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、イソ酪酸無水物が好ましく、より好ましくは、無水酢酸である。
【0030】
エステル交換・アミド交換による重縮合は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。また、この際、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
【0031】
なお、アシル化反応、エステル交換・アミド交換による重縮合は、触媒の存在下に行ってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重縮合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。触媒は、通常、アシル化反応時に存在させ、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合にはそのまま次の処理を行うことができる。また、次の処理を行うときに、上記のような触媒をさらに添加してもよい。
【0032】
エステル交換・アミド交換による重縮合は、通常、溶融重合により行なわれるが、溶融重合と固相重合とを併用してもよい。固相重合は、溶融重合工程からプレポリマーを抜き出し、固化後、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にした後、公知の固相重合方法により行うことができる。具体的には、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、200〜350℃で、1〜30時間固相状態で熱処理する方法などが挙げられる。固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお適当な攪拌機構を備えることにより溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。固相重合後、得られた液晶ポリエステルは、公知の方法によりペレット化して使用してもよい。
かかる液晶ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
【0033】
このようにして得られた液晶ポリエステルの中でも、下記測定方法で求められる流動温度が、250℃以上、好ましくは300℃以上の液晶ポリエステルが好適である。このような、液晶ポリエステルを用いた、液晶ポリエステル樹脂混合物は、得られる成形体の耐熱性が良好となるため、好ましい。なお、下記の流動温度測定法は、当該分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(例えば、小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。このような流動温度を有する液晶ポリエステルは上述のとおり、液晶ポリエステルを構成する繰り返し構造単位の中で、(A1)あるいは(A3)の共重合比率をコントロールすることで容易に製造できる。
〔流動温度測定法〕
4℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を荷重9.8MPa(100kgf/cm2)のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押し出す時に、溶融粘度が48000ポイズを示す温度を測定する。
【0034】
〈充填剤〉
本発明においては、得られる成形体の機械強度等の特性を向上させる観点から、必要に応じて充填剤を添加してもよい。充填剤を添加する場合は、液晶ポリエステル100重量部に対して充填材を150重量部以下、好ましくは液晶ポリエステル100重量部に対して充填剤を20〜100重量部添加する。充填剤の配合割合が150重量部よりも多い場合は、液晶ポリエステルと充填剤からなる組成物の溶融粘度が高くなり、その造粒性および成形性が低下し、実用上好ましくない。
本発明に適用される、液晶ポリエステル樹脂と充填剤からなる組成物は、後述する添加剤との混合を容易にするといった観点から、ペレット等の粒子形状、チップあるいは粒子状であることが好ましい。当該組成物の好ましい形状は、数平均粒径で表して、1mm以上10mm以下である。平均粒径が1mm以上であると、成形加工時にスクリューで樹脂を可塑化する際にガスを巻き込みにくく、得られた製品の表面状態が良好となるため好ましい。また、平均粒径が10mm以下であると、成形加工時の可塑化が、より容易となり、スクリューの回転トルクも安定となるため、好ましい。
該組成物の粒子またはチップを得るための手段は特に限定されないが、液晶ポリエステルおよび充填剤、必要に応じて離型改良剤、熱安定剤類、着色材等をヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて混合した後、押出機を用いて溶融混練を行ない、ダイスの穴から押し出された溶融樹脂を回転刃により粒子状に切断する方法、あるいはダイスの穴から押し出された樹脂のストランドを冷却固化後に回転刃で粒子状に切断する方法が一般的である。また、重合された液晶ポリエステルの反応器の下流に押出機を直結して、粒子あるいはチップを得ることも可能である。
【0035】
このような充填剤とは、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、炭素繊維、金属繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタン酸繊維、アスベスト等の一般無機繊維、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、石英砂、けい砂、ウォラストナイト、ドロマイト、各種金属粉末、カーボンブラック、グラファイト、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、焼石膏等の粉末物質、炭化ケイ素、アルミナ、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、窒化ボロン、窒化ケイ素等の粉粒状あるいは板状の無機化合物、ウィスカー等、木粉、やし殻粉、くるみ粉、パルプ粉等の木質粉が挙げられ、その一種または二種以上を混合して用いることができる。
【0036】
〈リン化合物〉
本発明で用いられるリン化合物は、その分子内に3価のリン原子を有するものである。3価のリン原子を有するとは、分子内にホスフィン基またはホスホン酸エステル基を有する化合物であり、当該3価のリン原子が5価に自己酸化することで、過酸化物分解効果(過酸化物から発生するラジカルを消失)により、酸化防止性を有する化合物であると好ましい。
【0037】
3価リン原子を有する酸化防止性を有するものとして、リン系酸化防止剤を用いると好ましい。ここで、「リン系酸化防止剤」とは、「高分子大辞典」(三田達監訳,丸善,413頁,1994年9月20日発行)に酸化防止剤として挙げられている、3価リン原子を有するリン系酸化防止剤である。
【0038】
これらのリン系酸化防止剤を具体的に例示すると、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、(オクチル)ジフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)ブタンジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジホスファイト、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、トリス(モノ・ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、
水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)ビス[4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)]−1,6−ヘキサンジオールジホスファイト、フェニル(4,4’−イソプロピリデンジフェノール)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス[4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール)]ホスファイト、ジ(イソデシル)フェニルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェノール)ビス(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルフォスファイト、2−[{2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]−ジオキサホスフェピン−6−イル}オキシ]−N,N−ビス〔2−[{2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]−ジオキサホスフェピン−6−イル}オキシ]エチル〕エタンアミン、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]−ジオキサホスフェピンなどが挙げられる。
【0039】
また、ビス(ジアルキルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトエステルとしては、下記一般式(2a)

(式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜9のアルキル基等を表す。)
で示されるスピロ型、又は、下記一般式(2b)

(式中、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜9程度のアルキル基等を表す。)
で示されるケージ形のものなどが挙げられる。
【0040】
リン系酸化防止剤として、市販品を使用することもでき、例えばイルガフォス168(登録商標、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、イルガフォス12(登録商標、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、イルガフォス38(登録商標、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)、アデカスタブ329K(登録商標、旭電化製)、アデカスタブPEP36(登録商標、旭電化製)、アデカスタブPEP−8(登録商標、旭電化製)、Sandstab P−EPQ(登録商標、クラリアント製)、ウェストン618(登録商標、GE製)、ウェストン619G(登録商標、GE製)、ウルトラノックス626(登録商標、GE製)、スミライザーGP(登録商標、住友化学製)などが挙げられる。
【0041】
かかるリン化合物の配合割合は、上記液晶ポリエステル樹脂組成物100重量部に対して、0.001〜5重量部であり、特に好ましくは、0.003〜1重量部である。上記液晶ポリエステル100重量部に対して、該リン化合物を0.001重量部以上用いると、射出成形に係る可塑化時間の安定化効果が十分となるため好ましい。一方、該リン化合物が5重量部以下であると、成形加工時に該リン化合物の分解に起因するガス発生が抑制され、成形品にふくれ等が生じにくくなり、該成形品からの発生ガスも少なくなるため好ましい。
【0042】
〈アミド化合物〉
本発明に使用されるアミド化合物は上記一般式(1)で表される化合物である。Rは、炭素数10〜30の飽和あるいは不飽和の炭化水素基であり、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、オクタコシル基、トリアコンチル基等の飽和炭化水素基や、当該飽和炭化水素基の中に、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合を1つまたは2つ以上有する不飽和炭化水素基が例示される。具体的に該アミド化合物を例示すると、デカン酸アミド(C10)、ラウリル酸アミド(C12)、ミリスチン酸アミド(C14)、パルミチン酸アミド(C15)、ヘプタデカン酸アミド(C16)、ステアリン酸アミド(C18)、リノール酸アミド(C18)、リノレイン酸アミド(C18)、オレイン酸アミド(C18)、エライジン酸アミド(C18)、エイコサン酸アミド(C20)、ベヘニン酸アミド(C21)、エルカ酸アミド(C22)、リグノセリン酸アミド(C24)、ペンタコサン酸アミド(C25)、セロチン酸アミド(C26)等が挙げられる。
これらの例示の中でも、ラウリル酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミドは、市場から容易に入手できるため好ましい。具体的には、日本精化(株)製ニュートロン(登録商標)、ライオンアクゾ社製アーモスリップ(登録商標)、花王(株)製脂肪族アマイドS等をそのまま、あるいは精製して用いることができる。また、このような市販品の純度を公知のクロマトグラフィー法や酸価測定法にて求めることで、本発明の混合物に係る、所望の配合割合を算出して用いることもできる。
【0043】
かかるアミド化合物の配合量は、液晶ポリエステル100重量部に対して、0.001〜5重量部であり、好ましくは0.005〜0.5重量部であり、より好ましくは0.01〜0.1重量部である。該アミド化合物の配合量が0.001重量部以上であれば、射出成形に係る可塑化時間の安定化効果が十分となり好ましい。一方、該アミド化合物の配合量が5重量部以下であると、成形加工時に該アミド化合物自身の分解に起因するガスの発生が抑制され、成形品にふくれ等が生じにくくなることから、表面外観に優れる成形体が得られるため好ましい。
【0044】
上記アミド化合物の融点は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることが特に好ましい。該アミド化合物の融点が上記の範囲であると、成形前に、本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物を予備乾燥した時に、該アミド化合物の揮発が抑制され、目的とする成形加工時の安定化効果が得られるため、好ましい。
具体的には、上記に例示したアミド化合物の中で、その総炭素数が12以上のものであれば融点30℃以上のものを選択することができ、その総炭素数が14以上のものであれば融点50℃以上のものを選択することができる。
さらに、該アミド化合物は液晶ポリエステル樹脂組成物との混合を容易にし、かつ成形時の分散を効果的にするために、平均粒径100μm以下の粉末状であることが好ましく、平均粒径50μm以下の粉末状であることがより好ましい。
【0045】
〈樹脂混合物・樹脂組成物〉
上記にそれぞれ記載した液晶ポリエステルと、3価リン原子を有するリン化合物と、アミド化合物と、必要に応じて充填剤とを混合してなる液晶ポリエステル樹脂混合物は、混合する方法については、特に限定されるものではなく、公知の混合機を用いて、混合することができる。該混合機としては、ヘンシェルミキサー、タンブラー等が挙げられる。
さらに、上記のようにして混合する際、加熱することにより溶融して樹脂組成物とすることもできる。また、該樹脂組成物は溶融押出にてペレット化することもできる。このようにして液晶ポリエステル樹脂組成物が得られるが、溶融する際の溶融温度は、使用する液晶ポリエステルの上記流動温度測定法にて求められた流動温度以下で混合すると好ましい。このような液晶ポリエステル樹脂混合物は射出成形時の可塑化安定時間や冷却時間を著しく安定化できるため、射出成形による成形体の生産性を、より向上することができる。
また、本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物を得るための各成分の混合順序は特に限定されるものではないが、充填剤を含めて混合する場合は、液晶ポリエステルと充填剤とを予め混合溶融してペレット化した後、リン化合物と、アミド化合物とを混合して、液晶ポリエステル樹脂混合物を得る方法が好ましい。
さらに、本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物を調整する過程で、上記3価リン原子を有するリン化合物の一部が、環境からの酸素によって酸化され、5価リン原子を有するリン化合物になることもあるが、本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物あるいは液晶ポリエステル樹脂組成物は、このようなものも包含する。このように、上記3価リン原子を有する化合物が酸化されて変性することは、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を加熱溶融せしめて得る過程で、酸素の混入を遮断した環境(例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気)で行うことで抑制することもできる。
【0046】
なお、本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物は、本発明の目的を損なわない範囲で染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。また、少量の熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド等や、少量の熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の、一種または二種以上を添加することもできる。
【0047】
〈成形体〉
本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物または液晶ポリエステル樹脂組成物は、可塑化時間が安定しているため、射出成形法にて成形体を成形する際に、シリンダー内で一定量の樹脂ペレットを、スクリュウを用いて加熱溶融して計量する構造の装置を用いる成形方法に好適に使用することができる。特に、該射出成形においては、射出ユニットにおける計量工程にかかる時間(可塑化時間)が一定で安定しているので、溶融状態が安定化し、ショートショットやバリなどの不良現象が発生しない成形条件を容易に見出すことができる。
また、本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物は、乾燥等における加温処理を施しても、上記可塑化時間の安定化効果が劣化しない組成物であり、上記射出成形の製造管理が容易となることから、工業的に有利である。
このように、本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物は、射出成形に係る成形体の製造に有利となるものであるが、押し出し成形等、他の成形法によって成形体を得ることも可能である。
【0048】
本発明の液晶ポリエステル樹脂混合物を用いた成形体は、例えば、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、 コンピュータ関連部品等の電気・電子部品;ICトレー、ウエハーキャリヤー等の半導体製造プロセス関連部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、ランプホルダー等の照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品;分離爪、ヒータホルダー等の複写機、印刷機関連部品;インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品;自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品、マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具;床材、壁材などの断熱、防音用材料、梁、柱などの支持材料、屋根材等の建築資材、または土木建築用材料;航空機、宇宙機、宇宙機器用部品;原子炉等の放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品、スポーツ用品、レジャー用品などの部材として好適に用いられる。
【0049】
また、本発明の樹脂混合物から加工されたフィルム状、またシート状材料はまたそれらから加工された材料は工業的に有用な材料であり、表示装置用部品、電気絶縁用フィルム、フレクシブル回路基板用フィルム、包装用フィルム、記録媒体用フィルム等の用途に用いられる。本発明の樹脂混合物は押出し成形性に優れるため、樹脂成形品、金属部品の被覆材として有用であり、配管被覆、電線被覆などさまざまな分野の被覆に用いることができる。本発明の樹脂混合物から加工された連続繊維、短繊維、パルプ等の繊維状材料、及びそれらから加工された材料は工業的に有用な材料であり、衣料、耐熱断熱材、FRP用補強材、ゴム補強材、ロープ、ケーブル、不織布等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1、比較例1
繰り返し構造単位が前記の(A1)、(B1)、(B2)、(C1)からなり、(A1):(B1):(B2):(C1)のモル比が60:18:2:20であり、上記で定義された流動温度が360℃である液晶ポリエステル100重量部と、ミルドガラスファイバー(セントラル硝子(株)製EFH75−01)66.7重量部とをヘンシェルミキサーで混合後、二軸押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて、シリンダー温度360℃で造粒し、ペレットを得た。該ペレットは、平均粒径2mm、長さ2.5mmの円柱状であった。
得られたペレット166.7重量部に対し、リン化合物と、アミド化合物とを、表1に記載の重量部で、タンブラーを用いて室温で混合し、液晶ポリエステル樹脂混合物を得た(なお、上記のリン化合物およびアミド化合物は、いずれも乳鉢ですり潰し、200メッシュ以下にして用いた)。
この液晶ポリエステル樹脂混合物を150℃で24時間乾燥後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製 PS40E5ASE)を用いて、シリンダー温度380℃、金型温度130℃で曲げ試験片(厚み6.4mm×幅12.7mm×長さ127mm)を成形し、連続50ショットの計量時間を測定し、その安定性を評価した。
結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
なお、液晶ポリエステル樹脂混合物に使用したアミド化合物、3価リン原子を有するリン化合物は下記のとおりである。
アミド化合物 :ライオンアクゾ社製 アーモスリップE(エルカ酸アミド)
(エルカ酸アミドの融点;79〜81℃)
リン化合物 :住友化学(株)製 スミライザーGP


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル100重量部と、3価リン原子を有するリン化合物0.001〜5重量部と、下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.001〜5重量部と、充填剤0〜150重量部とを混合してなる、液晶ポリエステル樹脂混合物。
R-CONH2 (1)
(式中、Rは炭素数10〜30の飽和炭化水素基または炭素数10〜30の不飽和炭化水素基を表す。)
【請求項2】
液晶ポリエステル100重量部と、3価リン原子を有するリン化合物0.001〜5重量部と、下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.001〜5重量部と、充填剤20〜100重量部とを混合してなる、液晶ポリエステル樹脂混合物。
R-CONH2 (1)
(式中、Rは炭素数10〜30の飽和炭化水素基または炭素数10〜30の不飽和炭化水素基を表す。)
【請求項3】
上記液晶ポリエステルが、
(イ)芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し構造単位
(ロ)芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位
(ハ)芳香族ジオール、芳香族ジアミンおよび水酸基を有する芳香族アミンからなる群から選ばれる少なくとも1つに由来する繰り返し構造単位
からなる、請求項1または2に記載の液晶ポリエステル樹脂混合物。
【請求項4】
上記液晶ポリエステルが、上記の(イ)、(ロ)および(ハ)の合計を100モル%としたとき、(イ)が30モル%以上の液晶ポリエステルである、請求項3に記載の液晶ポリエステル樹脂混合物。
【請求項5】
上記液晶ポリエステルにおける、上記(イ)が、下記の(A1)で表される繰り返し構造単位および/または(A3)で表される繰り返し構造単位である、請求項3または4に記載の液晶ポリエステル樹脂混合物。

(式中の、芳香環は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。)
【請求項6】
上記液晶ポリエステルにおける、上記(ロ)が、下記の(B1)、(B2)または(B3)で表される繰り返し構造単位から選ばれる、請求項3〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂混合物。

(式中の、芳香環は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。)
【請求項7】
上記3価リン原子を有するリン化合物がリン系酸化防止剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂混合物。
【請求項8】
上記アミド化合物の融点が30℃以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂混合物。
【請求項9】
液晶ポリエステル100重量部、3価リン原子を有するリン化合物0.001〜5重量部、下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.001〜5重量部および充填剤0〜150重量部を含む、液晶ポリエステル樹脂組成物。
R-CONH2 (1)
(式中、Rは炭素数10〜30の飽和炭化水素基または炭素数10〜30の不飽和炭化水素基を表す。)
【請求項10】
液晶ポリエステル100重量部と、3価リン原子を有するリン化合物0.001〜5重量部と、下記一般式(1)で表されるアミド化合物0.001〜5重量部および充填剤20〜100重量部を含む、液晶ポリエステル樹脂組成物。
R-CONH2 (1)
(式中、Rは炭素数10〜30の飽和炭化水素基または炭素数10〜30の不飽和炭化水素基を表す。)
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかの記載の液晶ポリエステル樹脂混合物を成形して得られる成形体。
【請求項12】
請求9または10に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形体。

【公開番号】特開2007−308619(P2007−308619A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139982(P2006−139982)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】