説明

液晶光学素子および光ピックアップ装置

【課題】従来の収差補正用の液晶光学素子は、使用環境温度の変化によって液晶層のセルギャップが変動してしまい、その結果補正値が狂ってしまうという問題があった。
【解決手段】上下基板の間のシール部材により規定される空間領域に液晶材料を封入して成る液晶光学素子において、弾性を有する外皮と該外皮中に包含された内包物とを有する中空粒子が、液晶材料とともに空間領域に配設され、剛性を有するスぺーサーが、上下基板の間に配設された構成を採用した。また中空粒子の外径をスペーサーの外径よりも大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置のレーザー光の光軸上に配置して、コマ収差、球面収差または非点収差等を補償する収差補正用の液晶光学素子およびそれを搭載した光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CDあるいはDVD等のディスクに情報を書き込んだり、読み取ったりするための光ピックアップ装置における収差補正を行うために、収差補正用液晶光学素子が用いられている。このような収差補正用液晶光学素子は、ディスクに照射されるレーザー光の光軸が傾くことにより、DVD等のディスク内に生じるコマ収差や、ディスクの厚み方向の球面収差や、光ピックアップ装置を構成する光学部材に起因する非点収差を含む波面収差を光学的に補正する。
【0003】
従来の赤色レーザーを用いるDVDでは、従来の収差補正用液晶光学素子で問題なく補正が出来ていたが、青色レーザーが使用されてディスクの記録密度が高密度化された結果、従来の収差補正用液晶光学素子では収差補正が困難となってきた。
【0004】
その主な原因は、収差補正用液晶光学素子が使用環境温度の変化によって液晶層のセルギャップが変動してしまうことに起因して収差補正用液晶光学素子で補正される設定補正量からずれてしまうことである。
【0005】
この現象について更に詳細に説明をする。
図6は収差補正用液晶光学素子31の断面図で、その問題となる状況を模式的に表している。
【0006】
図6において、符号12は上基板、符号14は下基板、符号16は上下基板を接着するシール部材、符号18は液晶材料で上下基板とシール部材16によって密閉された空間に充填されており、該空間が液晶層である。そして、図6(a)は使用環境温度が常温環境下、図6(b)は低温環境下、図6(c)は高温環境下の収差補正用f31の状態を示している。
【0007】
常温環境下の収差補正用液晶光学素子31は図6(a)に示したように、収差補正用液晶光学素子31の液晶材料18の層厚であるセルギャップは図示していないスぺーサーによって設計値に保たれLNとなる。
【0008】
それに対して、低温環境下の収差補正用液晶光学素子31は、液晶層を構成する液晶材料18が収縮するため、上下基板がともに内側に引っ張られ、図6(b)に示すような中凹形状(ベコ形状)となる。したがって液晶層のセルギャップは図示のLLとなり、常温での値LNよりも小さくなってしまう。
【0009】
また、高温環境下の収差補正用液晶光学素子31は、液晶層を構成する液晶材料18が膨張するため、上下基板がともに外側に押され、図6(c)に示すような中凸形状(タイコ形状)となる。したがって液晶層のセルギャップは図示のLHとなり、常温での値LNよりも大きくなってしまう。
【0010】
一般に収差補正用液晶光学素子31の液晶層のセルギャップ変動は、レーザー光の波長をλとした時、λ/6以内ならば問題ないとされてきたが、青色レーザーが使われ始め、
該青色レーザー光の波長λ(405nm)がCDおよびDVDで用いられる波長(795nm、650nm)に対して小さいため、収差補正用液晶光学素子31の全使用温度範囲でのより精密なセルギャップの管理が必要となってきている。なお以下の図において、同様の部材には同様の番号を付している。
【0011】
このような液晶層のセルギャップ変動を防止するための技術として、中空のスぺーサーを用い、該中空スぺーサーの変形を利用して、低温放置に於ける液晶材料の体積収縮による液晶光学素子の内部に発生する圧力の減少をスぺーサーの変形により吸収して、常に液晶層が一定の圧力となる様にして液晶層中での気泡の発生を防ぐという提案がされている(例えば特許文献1参照)。
【0012】
しかし、中空スぺーサーが液晶光学素子のセルギャップを正確に出せるほど硬ければ、液晶光学素子の内部に発生する圧力の増減をスペーサーにより吸収することは不可能となる。それに対して液晶光学素子の内部に発生する圧力の増減によって変形できるほど柔らかいスぺーサーを用いれば、液晶光学素子のセルギャップを一定に保つことは不可能となる。
【0013】
したがって、上述した構成を収差補正用液晶光学素子に用いると、外的な温度変化に応じてセルギャップが変動してしまうこととなり、ディスク等により発生する波面収差を正確に補正できなくなってしまう。そのため、この様な液晶光学素子を収差補正用液晶光学素子として、光ピックアップ装置に搭載することは現実的に不可能となる。
【0014】
また、光ピックアップ装置用の収差補正用液晶光学素子において、収差補正用液晶光学素子内に液晶層と気泡の双方を挟持し、かつ気泡と液晶層間に気泡固定手段を設けて気泡が光学的有効領域に進入しないよう構成し、温度変化による収差補正用液晶光学素子内部の圧力の増減を該気泡層の体積の増減により吸収しようという提案がされている(例えば特許文献2参照)。
【0015】
しかし、この提案による構成では、収差補正用液晶光学素子のセルギャップを一定に保つことが出来るものの、気泡層を構成する気体が液晶層に溶け込んでしまい圧力の吸収体として機能しなくなってしまうという問題がある。また、気体が液晶層に溶け込むにしたがって、気体から液体に変化することによる体積収縮が起きるため、収差補正用液晶光学素子内の圧力低下が起こることに起因して上下基板を内側に引っ張るため、収差補正用液晶光学素子を図6(b)に示した中凹形状にしてしまうという問題がある。
【0016】
さらには、液晶層中に溶け込んだ気体は環境温度が高温から低温に変化した時再び気化することとなるが、このような状況で気化した気体が光学的有効領域に集まってしまうことを阻止することは出来ないという問題もある。
【0017】
このように従来の収差補正用液晶光学素子は、上述した多くの問題を包含しており、特に青色レーザーを用いた光ピックアップ装置にこの収差補正用液晶光学素子を搭載することは好ましくない。
【0018】
【特許文献1】特開平5−142548号公報(第2頁、第1−2図)
【特許文献2】特開2003−45065号公報(第2頁、第1−5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、収差補正用液晶光学素子の温度変化による液晶層のセルギャップ変動を抑え、使用温度範囲全般にわたって、特に青色レーザーを用
いた光ピックアップ装置においても収差補正が可能な、収差補正用液晶光学素子およびそれを搭載した光ピックアップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の液晶光学素子は、上下基板の間のシール部材により規定される空間領域に液晶材料を封入して成る液晶光学素子において、弾性を有する外皮と該外皮中に包含された内包物とを有する中空粒子が、液晶材料とともに空間領域に配設され、剛性を有するスぺーサーが、上下基板の間に配設されていることを特徴とするものである。
【0021】
また本発明の液晶光学素子は、前述した内包物が気体であることを特徴とするものである。
【0022】
さらに本発明の液晶光学素子は、前述したスぺーサーがシール部材に混入されて配設されていることを特徴とするものである。
【0023】
またさらに本発明の液晶光学素子は、前述したスぺーサーがシール部材に混入されるとともに液晶材料が配設された領域に配置されていることを特徴とするものである。
【0024】
またさらに本発明の液晶光学素子は、前述した中空粒子の外径が、スペーサーの外径より大きいものを用いたことを特徴とするものである。
【0025】
本発明の光ピックアップ装置は、レーザー光源と、当該レーザー光源から出射される往路のレーザー光をディスクに集光するための対物レンズと、ディスクからの反射光である復路のレーザー光を受光するための受光器と、レーザー光源と対物レンズとの間の光路中に配設された上述した液晶光学素子を収差補正様液晶光学素子として搭載したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、環境温度が大きく変化しても液晶光学素子の液晶層のセルギャップ変動を非常に小さく出来るため、特に青色レーザーを用いた光ピックアップ装置においても正確に波面収差補正を行うことが出来るようになる。
【0027】
また、この液晶光学素子を収差補正用液晶光学素子として搭載した光ピックアップ装置は、上述した様に様々な環境下において正確に波面収差を補正することが出来るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の液晶光学素子は、上下基板の間のシール部材により規定される空間領域に液晶材料を封入し、弾性を有する外皮と該外皮中に包含された内包物とを有する中空粒子が、この液晶材料とともに空間領域に配設され、剛性を有するスぺーサーが、上下基板の間に配設された構成を採用した。また、前述した中空粒子の外径は、スペーサーの外径よりも大きくして配置するのが好ましい。
【0029】
なお、下記の記載は、特に液晶光学素子を収差補正用液晶光学素子に適用した例を示すが、これに限定されるものではなく、外的温度変化に応じてセルギャップを極力抑えたい液晶光学素子全般に適用できることに留意されたい。
【実施例1】
【0030】
図1は本発明による収差補正用液晶光学素子30の断面図で、図1(a)は室温環境下での断面図、図1(b)は低温環境下での断面図、図1(c)は高温環境下での断面図を
示している。
【0031】
図1(a)〜(c)において、符号12は上基板、符号14は下基板、符号16はシール部材で、この上下基板とシール部材16とによって密閉された空間が形成され、該空間内に液晶材料18、剛性を有するスぺーサー26とともに中空粒子20が封入されている。
【0032】
剛性を有するスぺーサー26は、従来から用いられている既知のスぺーサーであり、素子の製造段階で上下基板を押圧したときに、液晶層のセルギャップが精度の良い幅に設定される剛性を有しており、中空粒子20は、使用環境温度が変化したときの液晶材料18の体積膨張、収縮に応じて体積が収縮、膨張するよう弾性を有する外皮中に、好ましくは気体の内包物を包含している。
【0033】
ここで図2、3を用いて中空粒子20の説明を行う。
図2は本発明で用いる中空粒子20の断面図であり、図2(a)は通常の圧力環境下での中空粒子20の状態を示す断面図、図2(b)は低い圧力環境下での中空粒子20の状態を示す断面図、図2(c)は高い圧力環境下での中空粒子20の状態を示す断面図である。
【0034】
図2(a)〜(c)において、中空粒子20は、弾性を有する外皮22中に包含された内包物24を有している。該内包物24は、掛かる圧力により変形する液体を用いることも出来るが、好ましくは気体であり、圧力に対して体積が変化し易いものを用いることが肝要である。従って固体は内包物として好ましくない。
【0035】
図2(a)は、通常の圧力環境下、すなわちほぼ1気圧での中空粒子20の断面形状を示しており、この中空粒子20を構成する外皮22および内包物24は、球形に近い形状をしている。
【0036】
そして、低い圧力環境下で中空粒子20が液晶層内に置かれた場合は、内包物24が膨張して体積が大きくなるが、上下基板に対して軟らかい中空粒子20の上面と下面が基板によって押えられるため、内包物24が横方向に膨張し、弾性を有する外皮は内包物の膨張に応じて膨張して、図2(b)のような形状となる。
【0037】
また、高い圧力環境下で中空粒子20が液晶層内に置かれた場合は、内包物24とともに、弾性を有する外皮22は、外圧によって内包物24の収縮に応じて収縮するが、この外皮は気体程には収縮出来ないため、図2(c)のように外皮22に皺がよったような形状となる。
【0038】
ここで外皮22としては、例えばスチレン・アクリル系のポリマー、またはナイロン系のポリマーを使うことが出来る。外皮22の厚さはできるだけ薄くして、外圧に対して容易に変形し易くすることが望ましい。また、内包物24は気体であれば問題なかったが、製造の面からは空気もしくは窒素が好ましかった。
【0039】
次に、中空粒子20とスペーサー26との径の関係について説明をする。
図3は中空粒子20の構成を説明するための図面である。
【0040】
本発明の収差補正用液晶光学素子30では、図3(a)に示すスペーサー26の直径L1に対して、図3(b)に示す中空粒子20の約1気圧での直径L2を大きく設定したものを用いた。
【0041】
このように、中空粒子20の直径L2をスぺーサー26の直径L1よりも大きく設定したため、上下基板によって中空粒子20が所望の箇所に固定して配置される。そのため、光学的有効領域で中空粒子20が遊動し集まってしまうことを防ぐことができるようになる。従って上記構成とすれば、外部の環境が変化したとしても、光学的有効領域に浮遊して中空粒子20が集まることがなく、光学的補正に支障をきたすことはない。
【0042】
なお、中空粒子20の直径L2は、スぺーサー26の直径L1より5%から40%程度、好ましくは10%から20%程度大きいことが望ましかった。また、この中空粒子20の直径L2を極端に大きくし過ぎると、常温環境下において上下基板により中空粒子20が大きく潰れてしまい好ましくない。そのため、スペーサー26により設定されるセルギャップとの関係を留意して中空粒子20の直径L2を設定する必要がある。
【0043】
次に、図2,図3で説明した中空粒子20とスペーサー26を適用した収差補正用液晶光学素子30の作用について図1を用いて説明をする。
【0044】
図1に示す様に、液晶材料18、スぺーサー26と共に上下基板間に中空粒子20を封入した構成とすれば、室温環境下では上下基板とシール部材16とによって密閉された空間内の圧力がほぼ1気圧であるため、中空粒子20は図2(a)で示した形状となり、図1(a)に示すように収差補正用液晶光学素子30のスペーサー26により決められたセルギャップはLNとなる。
【0045】
そして、低温環境下では液晶材料18が収縮するため、上下基板とシール部材16とによって密閉された空間内の圧力が低下し、中空粒子20は図2(b)で示した形状となり、図1(b)に示すように収差補正用液晶光学素子30のスペーサー26により決められたセルギャップはLL(LN=LL)に保たれる。
【0046】
また、高温環境下では液晶材料18が膨張するため、上下基板とシール部材16とによって密閉された空間内の圧力が上昇し、中空粒子20は図2(c)で示した形状となり、図1(c)に示すように収差補正用液晶光学素子30のスペーサー26により決められたセルギャップはLH(LN=LL=LH)に保たれる。
【0047】
このように、中空粒子20が外部環境の温度に応じて体積を変えるため、上下基板とシール部材16とによって密閉された空間の体積は、使用環境温度の変化に対しほぼ一定となり、上下基板を引っ張る力、押す力を大幅に減少させることができる。そのため、液晶層のセルギャップは常温に於ける値LN,低温に於ける値LL,高温に於ける値LHの変化が大幅に減少し、使用温度範囲でのセルギャップ変化を0.07μm以下に抑えることが出来た。
【0048】
また、上述した様にセルギャップ変化を、青色レーザー波長の1/6以下に抑えることが可能となったため、青色レーザーを用いる光ピックアップ装置に好適な収差補正用液晶光学素子を実現出来た。
【0049】
さらに、本発明においては内包物24を外皮22で覆っているため、内包物24が液晶材料18中に溶け出してしまうことも防ぐことができる。
【0050】
なお、保存温度範囲の最低温度と最高温度での液晶材料18の体積の差よりも、中空粒子20全体の内包物24体積の方が大きいことが望ましく、この条件を満足すると液晶層のセルギャップの変動は非常に小さくなる。
【0051】
ただし、上下基板には通常ガラス基板を用いるが、ガラス基板厚が厚くなるにしたがっ
て基板が非常に堅くなるため、必ずしも上記条件を満足しなくとも十分な効果を生じることが出来る。
【実施例2】
【0052】
次に、本発明の収差補正用液晶光学素子における他の構成例について説明をする。
図4は中空粒子20とともに配置するスぺーサー26の配置形態を示した図面である。
【0053】
図4(a)では、中空粒子20が液晶層に混入されて配置されており、スぺーサー26−1がシール部材16とに混入されて配置されており、上下基板とシール部材16とによって密閉された液晶層が封入される領域には配置されていない構成例を示している。
【0054】
このように構成することにより、光学的有効領域にはスぺーサーが存在しなくなるため、図1に示したスぺーサー26による収差補正の障害が減少するという効果を得ることができる様になる。この構成は、収差補正用液晶光学素子30を小型とした場合に特に有効な構成となる。
【0055】
また、図4(b)では、スぺーサー26−1がシール部材16に混入されて配置されるとともに、液晶材料18が配設される領域にも同じ材料と形状のスぺーサー26−2が配置されている構成例を示している。
【0056】
このように構成することにより、収差補正領域にスペーサーが混入されるものの、液晶層のセルギャップをより正確に制御することが出来るという効果を得ることができる様になる。
【0057】
上記図4(b)に示した構成例の説明では、シール部材16に混入して配置されるスペーサー26−1と、液晶材料18が配設される領域に配置されるスペーサー26−2とが、共に剛性を有するスペーサーとした例を示したが、この様な機能を持たせるために同一のスペーサー材料、および形状のものを用いても良いし、スペーサー26−1には円柱形の比較的硬いスペーサーを、スペーサー26−2にはプラスチックビーズのような比較的柔らかいスペーサーを用いても良い。
【0058】
上述したスペーサー26−2にプラスチックビーズを用いる場合は、例えば液晶層の設定セルギャップ6.5μmに対しスペーサー径6.6μm〜6.8μmのものを用いるのが好ましく、上記スペーサー26−2を用いれば、スペーサーを多少潰してセルギャップを出すのができる。
【0059】
この様に、スペーサー26−1とスペーサー26−2の径は、収差補正用液晶光学素子30の製造条件によりどちらを大きくするかが決定されるので仕様用途に応じて決定されるものであることに留意されたい。
【実施例3】
【0060】
次に、本発明の収差補正用液晶光学素子30を光ピックアップ装置に用いた例について説明をする。
図5は本発明による収差補正用液晶光学素子30を用いた光ピックアップ装置の全体構成を示すブロック図で、レーザー光源50と、コリメータレンズ52と、偏光ビームスプリッタ54と、収差補正用液晶光学素子30と、該収差補正用液晶光学素子30に収差補正用の電圧信号を与える駆動回路40と、1/4位相差板66と、対物レンズ56と、集光レンズ60と受光器62とから図示のように構成されている。
【0061】
本図面に示す様に、レーザー光源50から出射した往路のレーザー光64は、コリメー
タレンズ52によってP偏光の平行光とされ、偏光ビームスプリッタ54と収差補正用液晶光学素子30を通過する。レーザー光64は収差補正用液晶光学素子30により入射する平行光のコマ収差、球面収差、または非点収差を含む波面収差を補正された後、1/4位相差板66により円偏光に変換され、対物レンズ56によりディスク58にビームを照射する。
【0062】
さらに、ディスク58からの反射された復路のレーザー光は、対物レンズ56を透過し、1/4位相差板66にてS偏光に変換された後、収差補正用液晶光学素子30を通過し、偏光ビームスプリッタ54にて光路を変えて集光レンズ60を通過して受光器62にディスク58から反射されたレーザー光を集める。そのデータを基に、ディスク58に記録された情報等を読み取ったり、ディスク面に書き込みをする。
【0063】
本発明の光ピックアップ装置は、波面収差を精度良く補正できる収差補正用光学素子30を用いているため、精度の良い情報の書き込み、読み出しを行うことができ、特に青色レーザーを用いた情報記録媒体の高密度化にも対応し得る。
【0064】
以上説明したように、本発明によれば使用環境温度に対して液晶層のセルギャップが安定な収差補正用液晶光学素子30が実現出来るため、青色レーザーを用いた情報記録媒体の高密度化にも対応可能となり効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の収差補正用液晶光学素子の構成および作用を示す断面図である。(実施例1)
【図2】本発明で用いる中空粒子の作用を説明する図面である。(実施例1)
【図3】本発明で用いる中空粒子の直径とスペーサーの直径との関係を示す図面である。(実施例1)
【図4】本発明の収差補正用液晶光学素子の他の構成例を示した断面図である。(実施例2)
【図5】本発明の光ピックアップ装置の構成を示す模式図である。(実施例3)
【図6】従来の収差補正用液晶光学素子の構成例および採用を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
12 上基板
14 下基板
16 シール部材
18 液晶材料
20 中空粒子
22 外皮
24 内包物
26,26−1,26−2 スぺーサー
30 収差補正用液晶光学素子
50 レーザー光源
52 コリメータレンズ
54 偏光ビームスプリッタ
56 対物レンズ
58 ディスク
60 集光レンズ
62 受光器
64 レーザー光
66 1/4位相差板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下基板の間のシール部材により規定される空間領域に液晶材料を封入して成る液晶光学素子において、
弾性を有する外皮と該外皮中に包含された内包物とを有する中空粒子が、前記液晶材料とともに前記空間領域に配設され、
剛性を有するスぺーサーが、前記上下基板の間に配設されていることを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
前記内包物は、気体であることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
前記スぺーサーは、前記シール部材に混入されて配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
前記スぺーサーは、前記シール部材に混入されて配設されるとともに、前記空間領域にも配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記中空粒子の外径が、前記スペーサーの外径より大きいものを用いたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
レーザー光源と、
前記レーザー光源から出射される往路のレーザー光をディスクに集光するための対物レンズと、
前記ディスクからの反射光である復路のレーザー光を受光するための受光器と、
前記レーザー光源と前記対物レンズとの間の光路中に配設された請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶光学素子と、
を備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−208520(P2006−208520A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17761(P2005−17761)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】