説明

液晶光学素子及びその製造方法

【課題】量産性に優れると共に、液晶光学素子の接続の信頼性を確保することができ、かつ液晶光学素子の小型化、低コスト化を図ることができる液晶光学素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コモン電極が形成された第1の基板と複数のセグメント電極が形成された第2の基板との間に液晶を封入してなる液晶光学素子であって、この液晶光学素子の側面の複数の角部に、外部に露出して形成された複数の電極端子が設けられており、複数の電極端子は液晶光学素子の厚さ方向に伸長して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を形成した基板の間に液晶を挟んで構成され、印加する電圧により焦点距離を制御することができる小型の液晶光学素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶を用いた光学素子として、一対の透明基板と透明基板上に形成される一対の透明電極と透明基板間に挟持された液晶層とを備え、電極間に印加される電圧の大きさに応じて焦点距離を可変し得る液晶光学素子が知られている。この種の液晶光学素子としては、例えば、携帯電話機、携帯情報端末機(PDA)もしくはデジタル機器等における超小型カメラに内蔵され、オートフォーカス機能やマクロ−ミクロ切替機能を持つ液晶光学素子、または、光ディスク装置において、光ピックアップにおける記録・再生時に生ずる収差を補正するために用いる液晶収差補正素子などがある。
【0003】
このような液晶光学素子は、外部回路と接続するために、液晶光学素子の透明電極に接続される端子が同一ガラス面の延設部に引き出される構造を有していた(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載されている液晶光学素子1は、図15に示すように、透明なガラス基板である第1の基板2と第2の基板3とを備え、その第1の基板2上には、第1の透明電極2aと複数の端子5が設けられ、第2の基板3上には第2の透明電極3aが設けられている。第1の透明電極2aと第2の透明電極3aには、それぞれ収差補正パターン6が形成されている。外周シール部7を介することによって2つの基板2および3は所定の間隔を持って液晶4を挟んで貼り合わされている。この場合、端子5と第2の透明電極3aとを、外周シール部7の内側に配したコモン転移電極8の中に混入した導電粒8aにより電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−270656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の液晶光学素子は、電子機器への組み込みのため、その寸法をより小型化にすることが要求されている。例えば、液晶セルサイズの要求は、4〜5mm程度である。しかしながら、上述した特許文献1に記載された液晶光学素子においては、電極端子を引き出す構造であるため、寸法を小さくすることができない。即ち、片方のガラス基板を長くし、電極等に接続される端子を同一ガラス面の延設部に引き出す構造であるため、その引き出す方向の寸法を小さくすることが困難であった。
【0007】
また、液晶光学素子において、接続の信頼性を確保するために、外部回路と接続する端子の幅は最小寸法で1.5〜2.0mmが必要である。そのため、複数のセグメント電極を有する液晶光学素子の場合、または複数の液晶セルが重ねられて配置された多重液晶光学素子の場合、電極の数が多くなり、端子を配置するスペースが足りなくなる。
【0008】
また、特許文献1の液晶光学素子のような端子構造を有する場合、大きいガラス基板に複数の液晶光学素子を形成し、このガラス基板を個々の液晶光学素子に切断する際に、電極端子が配置される側の切断工程が非常に複雑となる。
【0009】
従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、本発明の目的は、量産性に優れると共に、液晶光学素子の接続の信頼性を確保することができ、かつ液晶光学素子の小型化、低コスト化を図ることができる液晶光学素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、コモン電極が形成された第1の基板と複数のセグメント電極が形成された第2の基板との間に液晶を封入してなる液晶光学素子であって、この液晶光学素子の側面の複数の角部に、外部に露出して形成された複数の電極端子が設けられており、複数の電極端子は液晶光学素子の厚さ方向に伸長して形成されている液晶光学素子が提供される。
【0011】
液晶光学素子の側面に外部に露出する複数の電極端子が設けられ、これら電極端子は液晶光学素子の厚さ方向に伸長して形成されるため、従来のように、片方のガラス基板を長くし電極を引き出す部を形成することが必要なく、接続の信頼性を確保することができると共に、小型化をでき、かつ大量生産が容易にできる。
【0012】
複数の電極端子は、液晶光学素子の複数の角部の切欠部に充填され切断によって側面に露出した導電層を備えていることが好ましい。また、複数の電極端子は、液晶光学素子の側面に印刷された導電パターンを備えていることが好ましい。このような電極端子は、形成が容易である。
【0013】
複数の電極端子は、液晶光学素子の上下表面における角部近傍に印刷された所定面積の導電パターンを備えていることが好ましい。これにより、接続の信頼性をより向上することが可能となる。また、第1の基板のコモン電極が形成された面および第2の基板の複数のセグメント電極が形成された面の角部に所定面積の導電パターンが印刷されていることが好ましい。このように、電極と電極端子部との接触面積を拡大することになり、導通の信頼性を確保することができる。また、液晶光学素子の側面に導電パターンを印刷する際に、印刷される導通材料が内部に進入することを防ぐことができる。
【0014】
本発明によれば、さらに、複数の液晶光学素子を切り出せる少なくとも一対の大判ガラス基板に複数の液晶光学素子に対応する電極を形成する電極形成工程と、少なくとも一対の大判ガラス基板の間に液晶を封入して複数の液晶光学素子を有する素子群を形成する素子群組立工程と、少なくとも一対の大判ガラス基板の切断線の交差位置に複数の貫通孔をそれぞれ形成する貫通孔形成工程と、複数の貫通孔に導電材料を充填して導電層を形成する導電材料充填工程と、素子群を単一の素子に切断分離する切断工程とを備えている液晶光学素子の製造方法が提供される。
【0015】
基板の切断線の交差位置(例えば単一の素子の角部に対応する位置)に複数の貫通孔をそれぞれ形成し、これら貫通孔に導電材料を充填することで、素子群を単一の素子に切断する場合、各素子の角部に外部に露出した電極端子が形成される。そのため、大量生産が容易にできる。
【0016】
素子群の表面の複数の貫通孔に対応する位置に導電パターンを印刷し複数の表面端子部をそれぞれ形成する表面端子部形成工程をさらに備え、複数の表面端子部の各々は複数の貫通孔各々より大きい面積を有することが好ましい。このように、表面端子部を形成することで、接続の信頼性を向上することができる。
【0017】
本発明によれば、さらにまた、複数の液晶光学素子を切り出せる少なくとも一対の大判ガラス基板に前記複数の液晶光学素子に対応する電極を形成する電極形成工程と、少なくとも一対の大判ガラス基板の間に液晶を封入して複数の液晶光学素子を有する素子群を形成する素子群組立工程と、素子群を短冊又は単一の素子に切断分離する切断工程と、短冊又は単一の素子の側面に導電パターンを印刷し複数の側面端子部を形成する側面端子部形成工程とを備えている液晶光学素子の製造方法が提供される。
【0018】
短冊又は単一の素子に切断した状態で短冊又は単一の素子の側面に導電パターンを印刷し複数の側面端子部を形成することで、側面端子部を簡単に形成することができる。
【0019】
また、短冊又は単一の素子の表面に、導電パターンを印刷し、複数の側面端子部にそれぞれ電気的に接続されておりそれぞれが所定面積を有する複数の表面端子部を形成する表面端子部形成工程をさらに備えることが好ましい。このような表面端子部を形成することで、接続の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、液晶光学素子の側面の厚さ方向に渡り、複数のセグメント電極及びコモン電極にそれぞれ接続される複数の端子を設けることで、量産性に優れると共に、液晶光学素子の接続の信頼性を確保することができ、かつ液晶光学素子の小型化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態における液晶光学素子の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示した液晶光学素子の構成を概略的に示すA−A線断面図である。
【図3】図1に示した液晶光学素子の電極と端子の配置を示す平面図である。
【図4】図1に示した液晶光学素子の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】液晶光学素子の製造において、基板加工工程、導電材料充填工程および導電材料印刷工程を終えた状態を示す平面図である。
【図6】切断分離工程にて得られた液晶光学素子を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における液晶光学素子の構成を概略的に示す斜視図である。
【図8】図7に示した液晶光学素子の構成を概略的に示すB−B線断面図である。
【図9】図7に示した液晶光学素子の電極と端子の配置を示す平面図である。
【図10】図7に示した液晶光学素子の製造方法を示すフローチャートである。
【図11】素子群を短冊状に切断する前の状態を示す平面図及び側面図である。
【図12】側面に導電層を印刷した状態を示す平面図及び側面図である。
【図13】切断分離工程にて得られた液晶光学素子を示す平面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態における液晶光学素子の構成を概略的に示す平面図である。
【図15】従来の液晶光学素子の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る液晶光学素子の実施形態を、図を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の第1の実施形態における液晶光学素子100の構成を示しており、図2はこの液晶光学素子100のA−A線断面を示しており、図3は液晶光学素子100の電極と端子の配置状態を示している。
【0024】
図1〜図3に示すように、液晶光学素子100は、第1の液晶ユニット100aおよび第2の液晶ユニット100b内にそれぞれ封入された2層の液晶40aおよび40bを有するものである。液晶光学素子100は、これら第1の液晶ユニット100aと、第2の液晶ユニット100bとを互いに重畳し、接着して一体化することにより、直方体形状を有するように構成されている。
【0025】
即ち、液晶光学素子100は、第1の基板10と、第2の基板20と、中間基板10aおよび20aと、第1の基板10上に形成された第1の透明電極50と、第2の基板20上に形成された第2の透明電極60および第3の透明電極70と、複数の端子81,82,83および84とを備えている。第1の基板10と中間基板10aとの間にシール材30aを介して液晶40aが封入され、第2の基板20と中間基板20aとの間にシール材30bを介して液晶40bが封入されている。液晶光学素子100の4つの側面の角部には、外部に露出した電極端子81,82,83および84がそれぞれ形成されている。これら電極端子81,82,83および84は、第1の透明電極50、第2の透明電極60および第3の透明電極70に電気的に接続されている。従って、これら電極端子81,82,83および84を介して外部から印加される制御電圧は、第1の透明電極50、第2の透明電極60および第3の透明電極70にそれぞれ印加される。
【0026】
なお、図2においては、第1の透明電極50、第2の透明電極60および第3の透明電極70と液晶40との間に、一般的に設けられる配向膜や第1の基板10と第2の基板20とに設けられる透明絶縁層や、反射防止膜等は図示を省略している。
【0027】
第1の基板10および第2の基板20の各々は、透明ガラス基板から構成されている。第1の基板10と第2の基板20との間に中間基板10aおよび20aが配置され、これにより液晶が2層に分割されている。第1の基板10と中間基板10aとの間、および第2の基板20と中間基板20aとの間には、シール材30aおよび30bにより液晶充填領域がそれぞれ形成されており、これら液晶充填領域内に液晶40aおよび40bがそれぞれ封入されている。
【0028】
第1の透明電極50は、コモン電極であり、ITO(酸化インジウム・スズ)材料を用いて第1の基板10の内面上に形成されている。この第1の透明電極50は、端子83に電気的に接続されている。また、第1の透明電極50の表面には配向膜が形成されている。
【0029】
第2の透明電極60は、セグメント電極であり、ITO材料を用いて第2の基板20の内面上の中央部に形成されている。この第2の透明電極60は、例えば円形に形成され、かつ端子84に電気的に接続されており、端子84を介して独立した制御電圧を印加できるように構成されている。
【0030】
第3の透明電極70は、セグメント電極であり、ITO材料を用いて第2の基板20の内面上の第2の透明電極60の周辺に形成されている。この第3の透明電極70は、中央部に円形の切欠部を有する形状に形成され、かつ端子82に電気的に接続されており、端子82を介して独立した制御電圧を印加するように構成されている。
【0031】
電極端子81,82,83および84は、側面端子部81a,82a,83aおよび84aと、1対の表面端子部81b,82b,83bおよび84bとからそれぞれ構成されている。側面端子部81a,82a,83aおよび84aは、母材となる大きい基板を用いて複数の液晶光学素子を同時に形成する際に、その基板に設けられる貫通孔内に導電材料を充填して導電層を形成し、個々の液晶光学素子に切断する際に貫通孔が1/4に分割されて導電層が表面に露出した状態とすることによって形成される。一方、表面端子部81b,82b,83bおよび84bは、液晶光学素子100の表面に側面端子部81a,82a,83aおよび84aに対応する位置に所定面積の導電パターンを印刷することによって形成される。なお、端子81は、例えばヒーター等(図示せず)との電気的な接続に利用することができる。
【0032】
また、第1の基板10および第2の基板20の電極が形成される面の各角部に導電パターン81c,82c,83cおよび84cが印刷されている。ここで、第1の透明電極50は導電パターン83cと接続されている。第2の透明電極60は導電パターン84cと接続されている。第3の透明電極70は導電パターン82cと接続されている。導電パターン81c,82c,83cおよび84cを印刷することで、電極と側面端子部との接触面積が大きくなり、導通の信頼性を確保することができる。
【0033】
以下、液晶光学素子100の製造方法について説明する。図4は液晶光学素子100の製造方法を示すフローチャートである。
【0034】
図4に示すように、多層構造液晶光学素子100を製造する際には、まず、第1の液晶ユニット100aおよび第2の液晶ユニット100bをそれぞれ製作し、この作成した第1の液晶ユニット100aと第2の液晶ユニット100bとを積層する。
【0035】
まず、第1の液晶ユニット形成工程について、図4のステップS10〜S20を参照し説明する。最初に、上側の基板(単一の素子の場合、基板20となる)を所定寸法に加工する(S10)。例えば、厚さ300μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法となるように加工する。このシート状ガラス基板には複数の素子を形成できる。次いで、上側の基板の内側(液晶を充填する側)表面にITO膜を積層し、電極を形成する(S11)。ここでは、エッチング等によるパターンニング処理を行って、素子ごとに第2の透明電極60と第3の透明電極70とを形成する。次いで、上側の基板の電極が形成される側の表面に高抵抗膜を積層する(S12)。さらに配向膜を積層し、配向処理を行う(S13)。配向膜は、ポリイミド(PI:polyimide)等の液晶配向膜である。配向処理した後、上側の基板の電極が形成された面の角部に導電パターン81c,82c,83cおよび84cを印刷する(S14)。
【0036】
また、下側の基板(単一の素子の場合、中間基板20aとなる)を所定寸法に加工する(S15)。例えば、厚さ300μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法となるように加工する。次いで、下側の基板の内側(液晶を充填する側)表面に配向膜を積層し、配向処理を行う(S16)。次いで、素子ごとに液晶を封入する液晶充填領域を形成するために、ギャップ材を混入したシール材30aをリング状に印刷する(S17)。
【0037】
その後、液晶滴下装置を用いてリング状のシール材30aの内側に液晶を滴下する(S18)。次いで、上側の基板と下側の基板とを組み合わせて素子群を組み立てる(S19)。次いで、下側の基板を厚さが約30μmとなるように研磨する(S20)。即ち、下側の基板を薄くする。研磨方法としては、メカニカル法もしくはエッチング法を用いる。これにより、第1の液晶ユニット100aが得られる。
【0038】
次に、第2の液晶ユニット形成工程について、図4のステップS21〜S30を参照して説明する。まず、上側の基板(単一の素子の場合、中間基板10aとなる)を所定寸法に加工する(S21)。例えば、厚さ300μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法となるように加工する。次いで、上側の基板の内側(液晶を充填する側)表面に配向膜を積層し、配向処理を行う(S22)。次いで、素子ごとに液晶を封入する液晶充填領域を形成するために、ギャップ材を混入したシール材30bをリング状に印刷する(S23)。次いで、液晶滴下装置を用いてリング状のシール材30bの内側に液晶を滴下する(S24)。
【0039】
また、下側の基板(単一の素子の場合、基板10となる)を所定寸法に加工する(S25)。例えば、厚さ300μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法に加工する。次いで、下側の基板の内側(液晶を充填する側)の面にITO膜を積層し、電極を形成する(S26)。ここでは、エッチング等によるパターンニング処理を行って素子ごとにコモン電極を形成する。次いで、下側の基板の電極が形成される側の表面に配向膜を積層し、配向処理を行う(S27)。配向処理した後、この基板の電極が形成された面の角部に導電パターン81c,82c,83cおよび84cを印刷する(S28)。
【0040】
次いで、上側の基板と下側の基板とを組み合わせて素子群を組み立てる(S29)。次いで、上側の基板を厚さが約30μmとなるように研磨する(S30)。即ち、上側の基板を薄くする。研磨方法としては、メカニカル法もしくはエッチング法を用いる。これにより、第2の液晶ユニット100bが得られる。
【0041】
その後、第1の液晶ユニット100aと第2の液晶ユニット100bとを重畳接着する(S31)。接着は光学接着剤によって行われる。
【0042】
次いで、側面端子部を形成するために、貫通孔80を形成する(S32)。ここで、各素子の角部(即ち、切断線の交差する位置)に貫通孔80を形成する(図5(a)参照)。次いで、貫通孔80内に導電材料を充填して導電層80aを形成する(S33)。図5(b)は、貫通孔80内に導電層80aが形成された状態を示している。次いで、表面端子部を形成するために、素子群の表面の貫通孔80に対応する位置に導電材料を印刷して所定面積の導電パターン80bを形成する(S34)。導電パターン80bの印刷面積は貫通孔80の直径より大きくなることが好ましい。ここでは、各導電パターン80bは四角形に印刷されている(図5(c)参照)。
【0043】
次いで、このように形成した複数の液晶光学素子からなる基板をスライサー等を用いて切断し、個々の液晶光学素子100、即ち製品サイズに分離する(S35)。この切断分離工程によって、貫通孔80内の導電層80aが分割切断されてその表面が外部に露出し、側面端子部81a,82a,83aおよび84aが形成される。また、液晶光学素子100の上下面には外部に露出した表面端子部81b,82b,83bおよび84bが形成される。図6は、この切断分離工程によって得られた単一の液晶光学素子を示す平面図である。以上の製造工程によって、図1に示す液晶光学素子100が得られる。
【0044】
このように、本実施形態においては、液晶光学素子100は、第1の基板10と、第2の基板20と、中間基板10aおよび20aと、第1の基板10上に形成された第1の透明電極50と、第2の基板20上に形成された第2の透明電極60および第3の透明電極70と、外部へ露出した複数の端子81,82,83および84とを備えている。第1の基板10と中間基板10aとの間にはシール材30aを介して液晶40aが封入され、第2の基板20と中間基板20aとの間にはシール材30bを介して液晶40bが封入されている。端子81,82,83および84は、側面端子部81a,82a,83aおよび84aと、表面端子部81b,82b,83bおよび84bとからそれぞれ構成されている。
【0045】
本実施形態の液晶光学素子100は、第2の透明電極50および第3の透明電極60に印加される電圧を変化することにより、焦点位置を移動させることができる。これにより、光に対する屈折率を電気的に制御することができ、焦点可変レンズや収差補正素子として有益な機能素子となる。
【0046】
また、本実施形態の液晶光学素子100は、大判ガラス基板の切断線の交差位置に複数の貫通孔をそれぞれ形成し、複数の貫通孔に導電材料を充填して導電層を形成し、切断分離工程によって、貫通孔80内の導電層80aが分割切断されてその表面が外部に露出し、側面端子部81a,82a,83aおよび84aが形成されることで、量産性に優れると共に、液晶光学素子の接続の信頼性を確保することができ、かつ液晶光学素子の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0047】
さらに、表面端子部81b,82b,83bおよび84bを形成することにより、液晶光学素子100の上下面で外部回路と接続することも可能である。
【0048】
さらに、2層の液晶層を有するため、液晶の充填量および十分な光学的距離Lを確保し、応答速度と光透過率を向上することができる。
【0049】
図7は本発明の第2の実施形態における液晶光学素子200の構成を示しており、図8はこの液晶光学素子200のB−B線断面を示しており、図9は液晶光学素子200の電極と端子の配置状態を示している。
【0050】
図7〜図9に示すように、液晶光学素子200は、第1の液晶ユニット200aおよび第2の液晶ユニット200b内にそれぞれ封入された2層の液晶40aおよび40bを有するものである。液晶光学素子200は、これら第1の液晶ユニット200aと、第2の液晶ユニット200bとを互いに重畳し、接着して一体化することにより、直方体形状を有するように構成されている。
【0051】
液晶光学素子200は、第1の基板10と、第2の基板20と、中間基板10aおよび20aと、第1の基板10上に形成された第1の透明電極50と、第2の基板20上に形成された第2の透明電極60および第3の透明電極70と、複数の端子91,92,93および94とを備えている。第1の基板10と中間基板10aとの間にシール材30aを介して液晶40aが封入され、第2の基板20と中間基板20aとの間にシール材30bを介して液晶40bが封入されている。液晶光学素子200の4つの側面の角部には、外部に露出した電極端子91,92,93および94がそれぞれ形成されている。これら電極端子91,92,93および94は、第1の透明電極50、第2の透明電極60および第3の透明電極70に電気的に接続されている。従って、これら電極端子91,92,93および94を介して外部から印加される制御電圧は、第1の透明電極50、第2の透明電極60および第3の透明電極70にそれぞれ印加される。
【0052】
なお、図8において、第1の透明電極50、第2の透明電極60および第3の透明電極70と液晶40との間に、一般的に設けられる配向膜や第1の基板10と第2の基板20とに設けられる透明絶縁層や、反射防止膜等は図示を省略している。
【0053】
この液晶光学素子200は、電極端子91,92,93および94以外に、上述した液晶光学素子100と同様な構成を有している。ここで、その詳細な説明を省略する。
【0054】
電極端子91,92,93および94は、側面端子部91a,92a,93aおよび94aと、1対の表面端子部91b,92b,93bおよび94bとからそれぞれ構成されている。側面端子部91a,92a,93aおよび94aは、液晶光学素子200の側面に導電パターンを印刷することによって形成される。一方、表面端子部91b,92b,93bおよび94bは、液晶光学素子200の表面に側面端子部91a,92a,93aおよび94aに対応する位置に導電パターンを印刷することによって形成される。
【0055】
また、第1の基板10および第2の基板20の電極が形成される面の各角部に導電パターン91c,92c,93cおよび94cが印刷されている。ここで、第1の透明電極50は導電パターン93cと接続されている。第2の透明電極60は導電パターン94cと接続されている。第3の透明電極70は導電パターン92cと接続されている。導電パターン91c,92c,93cおよび94cを印刷することで、電極と該電極に対応する側面端子部との接触面積が大きくなり、導通の信頼性を確保することができる。また、側面に側面端子部91a,92a,93aおよび94aを印刷する際に、印刷される導通材料が内部に進入することを防ぐことができる。
【0056】
以下、液晶光学素子200の製造方法について説明する。図10は液晶光学素子200の製造方法を示すフローチャートである。
【0057】
図10に示すように、液晶光学素子200を製造する際には、まず、第1の液晶ユニット200aおよび第2の液晶ユニット200bをそれぞれ製作し、この製作した第1の液晶ユニット200aと第2の液晶ユニット200bとを積層する。
【0058】
まず、第1の液晶ユニット形成工程について、図10のステップS50〜S60を参照して説明する。最初に、上側の基板(単一の素子の場合、基板20となる)を所定寸法に加工する(S50)。例えば、厚さ300μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法となるように加工する。このシート状ガラス基板には複数の素子を形成できる。次いで、上側の基板の内側(液晶を充填する側)表面にITO膜を積層し、電極を形成する(S51)。ここでは、エッチング等によるパターンニング処理を行って、素子ごとに第2の透明電極60と第3の透明電極70とを形成する。次いで、上側の基板の電極が形成される側の表面に高抵抗膜を積層する(S52)。さらに配向膜を積層し、配向処理を行う(S53)。配向膜は、ポリイミド(PI:polyimide)等の液晶配向膜である。配向処理した後、上側の基板の外側表面に反射防止膜(AR膜)を積層する。次いで、上側の基板の電極が形成された面において各素子の角部に導電パターン91c,92c,93cおよび94cを印刷する(S54)。
【0059】
また、下側の基板(単一の素子の場合、中間基板20aとなる)を所定寸法に加工する(S55)。例えば、厚さ300μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法となるように加工する。次いで、下側の基板の内側(液晶を充填する側)表面に配向膜を積層し、配向処理を行う(S56)。次いで、素子ごとに液晶を封入する液晶充填領域を形成するために、ギャップ材を混入したシール材30aをリング状に印刷する(S57)。
【0060】
その後、液晶滴下装置を用いてリング状のシール材の内側に液晶を滴下する(S58)。次いで、上側の基板と下側の基板とを組み合わせて素子群を組み立てる(S59)。次いで、下側の基板を厚さが約30μmとなるように研磨する(S60)。即ち、下側の基板を薄くする。研磨方法としては、メカニカル法もしくはエッチング法を用いる。これにより、第1の液晶ユニット200aが得られる。
【0061】
次に、第2の液晶ユニット形成工程について、図10のステップS61〜S70を参照して説明する。まず、上側の基板(単一の素子の場合、中間基板10aとなる)を所定寸法に加工する(S61)。例えば、厚さ300μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法に加工する。次に、上側の基板の内側(液晶を充填する側)表面に配向膜を積層し、配向処理を行う(S62)。次いで、素子ごとに液晶を封入する液晶充填領域を形成するために、ギャップ材を混入したシール材30aをリング状に印刷する(S63)。次いで、液晶滴下装置を用いてリング状のシール材の内側に液晶を滴下する(S64)。
【0062】
また、下側の基板(単一の素子の場合、基板10となる)を所定寸法に加工する(S65)。例えば、厚さ300μmのシート状ガラス基板を200mm×200mmの寸法に加工する。次いで、下側の基板の内側(液晶を充填する側)表面にITO膜を積層し、電極を形成する(S66)。ここでは、エッチング等によるパターンニング処理を行って素子ごとにコモン電極を形成する。次いで、下側の基板の電極が形成される側の表面に配向膜を積層し、配向処理を行う(S67)。次いで、下側の基板の電極が形成された面において各素子の角部に導電パターン91c,92c,93cおよび94cを印刷する(S68)。
【0063】
次いで、上側の基板と下側の基板とを組み合わせて素子群を組み立てる(S69)。次いで、上側の基板を厚さが約30μmとなるように研磨する(S70)。即ち、上側の基板を薄くする。研磨方法としては、メカニカル法もしくはエッチング法を用いる。これにより、第2の液晶ユニット200bが得られる。
【0064】
その後、第1の液晶ユニット200aと第2の液晶ユニット200bとを重畳して接着する(S71)。接着は光学接着剤によって行われる。
【0065】
次いで、基板の表面において各素子の角部に(切断線の交差する位置を中心とする。図11(a)参照)導電パターン90bを印刷し、表面端子部を形成する(S72)。次いで、このように形成した複数の液晶光学素子からなる基板を短冊状に切断する(S73)。そして、短冊状に切断された基板の側面に導電層90aを印刷し、側面端子部を形成する(S74)。導電層90aは、基板の表面に印刷された導電パターン90bに対応する位置に印刷される。図11(a)は、短冊状に切断する前の素子群上から見た図であり、図11(b)は、短冊状に切断する前の素子群の側面図である。図12(a)は、側面に導電層90aを印刷した短冊状基板の平面図であり、図12(b)は、側面に導電層90aを印刷した短冊状基板の側面図である。
【0066】
最後に、このように形成した複数の液晶光学素子からなる基板をスライサー等を用いて切断し、個々の液晶光学素子200、即ち製品サイズに分離する(S75)。図13は、切断分離工程によって得られた単一の液晶光学素子200を示す平面図である。以上の製造工程によって、図7に示す液晶光学素子200が得られる。
【0067】
本実施形態の液晶光学素子200は、複数の電極端子91,92,93および94が設けられている。電極端子91,92,93および94は、側面端子部91a,92a,93aおよび94aと、表面端子部91b,92b,93bおよび94bとからそれぞれ構成されている。
【0068】
これにより、液晶光学素子200は、上述した液晶光学素子100と同様な効果が得られる。
【0069】
また、液晶光学素子200の場合は、側面端子部を形成するために側面に導電材料を印刷する印刷工程があるが、基板に貫通孔を形成する加工がないので、基板の加工が容易になる。
【0070】
図14は本発明の第3の実施形態における液晶光学素子300の構成を概略的に示している。図14に示すように、液晶光学素子300は、4つの角を斜めに切り欠いて、その切欠部の表面に側面端子部91a,92a,93aおよび94aを形成し、上面および下面には三角形の表面端子部91b,92b,93bおよび94bを形成している。それ以外の構成は、上述した第2の実施形態における液晶光学素子200の構成と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0071】
液晶光学素子300の場合は、その平面形状が液晶光学素子100および200の場合より円形に近いため、光学系に装着することがさらに容易になる。
【0072】
なお、上述した実施形態の液晶光学素子100,200および300においては、2層の液晶を有するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1層又は3層以上の液晶層を有するものであってもよい。なお、複数の液晶光学素子を同一光軸上になるように重ねて多重構造にしてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態の液晶光学素子100,200および300においては、表面端子部の形状はそれぞれ方形、1/4円形、三角形としたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
また、上述した実施形態の液晶光学素子100,200および300においては、セグメント電極として第2の透明電極60と第3の透明電極70とを有するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複数の同心円リング状のセグメント電極を有するように構成してもよい。この場合、電極の数に応じて4つ以上の端子が必要な時、角部以外の側面に端子を形成するように構成してもよい。
【0075】
さらに、上述した実施形態の液晶光学素子100において、貫通孔80が一定の直径を有するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、貫通孔の片側にテーパーを有するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、携帯電話機、携帯情報端末機(PDA)またはデジタル機器等において超小型カメラが内蔵され、オートフォーカス機能やマクロ−ミクロ切替機能を持つ液晶光学素子として、および、光ディスク装置において、光ピックアップによる記録・再生時に生ずる収差を補正するために用いる液晶収差補正素子として利用できる。
【符号の説明】
【0077】
10 第1の基板
10a,20a 中間基板
20 第2の基板
30a,30b シール材
40a,40b 液晶
50 第1の透明電極
60 第2の透明電極
70 第3の透明電極
80 貫通孔
80a,90a, 導電層
80b,81c,82c,83c,84c,90b,91c,92c,93c,94c 導電パターン
81,82,83,84,91,92,93,94 電極端子
81a,82a,83a,84a,91a,92a,93a,94a 側面端子部
81b,82b,83b,84b,91b,92b,93b,94b 表面端子部
100,200,300 液晶光学素子
100a,200a 第1の液晶ユニット
100b,200b 第2の液晶ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモン電極が形成された第1の基板と複数のセグメント電極が形成された第2の基板との間に液晶を封入してなる液晶光学素子であって、
当該液晶光学素子の側面の複数の角部に、外部に露出して形成された複数の電極端子が設けられており、該複数の電極端子は当該液晶光学素子の厚さ方向に伸長して形成されていることを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
前記複数の電極端子は、当該液晶光学素子の前記複数の角部の切欠部に充填され切断によって側面に露出した導電層を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
前記複数の電極端子は、当該液晶光学素子の側面に印刷された導電パターンを備えていることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
前記複数の電極端子は、当該液晶光学素子の上下表面における角部近傍に印刷された所定面積の導電パターンを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
前記第1の基板の前記コモン電極が形成された面および前記第2の基板の前記複数のセグメント電極が形成された面の角部に所定面積の導電パターンが印刷されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
複数の液晶光学素子を切り出せる少なくとも一対の大判ガラス基板に前記複数の液晶光学素子に対応する電極を形成する電極形成工程と、
前記少なくとも一対の大判ガラス基板の間に液晶を封入して前記複数の液晶光学素子を有する素子群を形成する素子群組立工程と、
前記少なくとも一対の大判ガラス基板の切断線の交差位置に複数の貫通孔をそれぞれ形成する貫通孔形成工程と、
前記複数の貫通孔に導電材料を充填して導電層を形成する導電材料充填工程と、
前記素子群を単一の素子に切断分離する切断工程とを備えていることを特徴とする液晶光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記素子群の表面の前記複数の貫通孔に対応する位置に導電パターンを印刷し複数の表面端子部をそれぞれ形成する表面端子部形成工程をさらに備え、該複数の表面端子部の各々は前記複数の貫通孔各々より大きい面積を有することを特徴とする請求項6に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項8】
複数の液晶光学素子を切り出せる少なくとも一対の大判ガラス基板に前記複数の前記液晶光学素子に対応する電極を形成する電極形成工程と、
前記少なくとも一対の大判ガラス基板の間に液晶を封入して前記複数の液晶光学素子を有する素子群を形成する素子群組立工程と、
前記素子群を短冊又は単一の素子に切断分離する切断工程と、
前記短冊又は単一の素子の側面に導電パターンを印刷し複数の側面端子部を形成する側面端子部形成工程とを備えていることを特徴とする液晶光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記短冊又は単一の素子の表面に、導電パターンを印刷し、前記複数の側面端子部にそれぞれ電気的に接続されておりそれぞれが所定面積を有する複数の表面端子部を形成する表面端子部形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の液晶光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−88394(P2012−88394A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232846(P2010−232846)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(503376596)株式会社びにっと (13)
【Fターム(参考)】