説明

液晶化合物

【課題】 従来技術の欠点を有さないか、または有しても程度が低減されていて、しかも好ましくは同時に極めて大きい抵抗値および低いしきい値電圧を有するMLCディスプレイ、IPS、TNまたはSTNディスプレイ用の媒体の提供。
【解決手段】 式I


式中、
、A、A、Z、Z、X、a、b、L、LおよびLは、請求項1において定義した通りである、
で表される液晶化合物、および式Iで表される少なくとも1種の化合物を含む液晶媒体、ならびにこのような液晶媒体を含有する電気光学的ディスプレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶化合物および液晶媒体、電気光学的な目的におけるそれらの使用およびこの媒体を含有するするディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は、特にディスプレイデバイスの誘電体として用いられるが、その理由は、このような物質の光学的特性を、印加された電圧によって改変し得るからである。液晶に基づく電気光学的デバイスは、当業者に極めてよく知られており、種々の効果に基づくことができる。このようなデバイスの例には、動的散乱を有するセル、DAP(配向相の変形)セル、ゲスト/ホストセル、ねじれネマチック構造を有するTNセル、STN(スーパーツイストネマチック)セル、SBE(超複屈折効果)セルおよびOMI(光学モード干渉)セルが含まれる。最も一般的なディスプレイデバイスは、シャット−ヘルフリッヒ(Schadt-Helfrich)効果に基づいており、ねじれネマチック構造を有する。
【0003】
液晶材料は、良好な化学的および熱的安定性並びに電場および電磁気放射に対する良好な安定性を有さなければならない。さらに、液晶材料は、低い粘度を有さなければならず、およびセルにおいて、短い応答時間、低いしきい値電圧および高いコントラストを生じなければならない。
【0004】
さらに、これらは、標準的な駆動温度において、すなわち、室温よりも高くそして低い、可能な限り広い範囲において、適切なメソフェーズ、例えば前記セルについてのネマチックまたはコレステリックメソフェーズを有さなければならない。液晶は、一般に多くの成分の混合物として用いられるため、該成分は相互に容易に混和し得ることが重要である。他の特性、例えば導電性、誘電異方性および光学異方性は、セルのタイプおよび適用分野に依存する、種々の要求を満たさなければならない。例えば、ねじれネマチック構造を有するセル用の材料は、正の誘電異方性および低い導電性を示さなければならない。
【0005】
例えば、個別の画素を切り換えるための集積非線形素子を有するマトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)には、大きい正の誘電異方性、広範囲のネマチック相、比較的低い複屈折、極めて高い比抵抗、良好なUVおよび温度安定性並びに低い蒸気圧を有する媒体が望まれる。
このようなマトリックス液晶ディスプレイは知られている。各画素を個別に切り換えるために用い得る非線形素子は、例えば能動的素子(すなわちトランジスタ)である。「アクティブマトリックス」の用語がそこでは用いられ、2つのタイプの間の区別が可能になっている:
1.基板としてのシリコンウエファー上のMOS(金属酸化物半導体)または他のダイオード。
2.基板としてのガラスシート上の薄膜トランジスタ(TFTs)。
【0006】
基板材料としての単結晶シリコンの使用によって、ディスプレイの大きさは制限されるが、その理由は、個々の部分表示をモジュラー集合させても、接合部に問題が生じるからである。
より有望なタイプ2の場合において、これは好適であるが、用いられる電気光学効果は、通常TN効果である。2つの技術の間における区別がなされる:化合物半導体、例えばCdSeを含むTFTs、または多結晶形または無定形シリコンを基材とするTFTs、である。後者の技術に関して、精力的な研究が世界中で行われている。
【0007】
TFTマトリックスは、ディスプレイの1枚のガラスプレートの内側に適用され、他のガラスシートの内側には、透明な対向電極を担持する。画素電極の大きさと比較してTFTは極めて小さく、像に対する悪影響を実質的に及ぼさない。この技術は、全色可能ディスプレイに拡張することもでき、フィルター素子が切り換え可能な画像素子に対向するように、モザイク状の赤色、緑色および青色フィルターが配列される。
【0008】
TFTディスプレイは、通常、透過光内に交差偏光板を有するTNセルとして作動し、照射は裏側から行われる。
本明細書におけるMLCディスプレイの用語は、集積非線型素子を有するあらゆるマトリックスディスプレイを包含し、すなわちアクティブマトリックス以外に、受動素子、例えばバリスターまたはダイオード(MIM=金属−絶縁体−金属)を含むディスプレイを包含する。
【0009】
このタイプのMLCディスプレイは、特に、TVアプリケーションに(例えば、ポケットTV)、またはコンピューターアプリケーション(ラップトップ型)および自動車または航空機構築用の高度情報ディスプレイ用に適する。コントラストの角度依存性および反応時間に関する問題以外に、MLCディスプレイには、液晶混合物の比抵抗の高さが不十分なことに起因する問題が生じる(非特許文献1および2参照)。
【0010】
抵抗値が減少するに従って、MLCディスプレイディスプレイのコントラストは低下し、残像消去の問題が生じ得る。一般に、液晶混合物の比抵抗は、ディスプレイの内部表面との相互作用によって、MLCディスプレイの全使用期間を通じて減少するため、(初期)抵抗値が大きいことは、許容される耐用年数を得るために極めて重要である。特に、低電圧混合物の場合、極めて大きい比抵抗値を得ることは、従来不可能であった。さらに、温度上昇に伴って、および加熱および/またはUVへの暴露の後に、比抵抗の上昇が可能な限り低いことが重要である。従来技術による混合物の低温特性は、特に不利である。結晶化および/またはスメクチック相が、低温下においても、生じず、かつ粘度に対する温度依存性が可能な限り小さいことが要求される。したがって、従来技術によるMLCディスプレイは、今日の要求を満たさない。
【0011】
したがって、極めて大きい比抵抗および同時に広い動作温度範囲、低温においても短い反応時間および低いしきい値電圧を有し、これらの欠点を有さないか、または低減された、MLCディスプレイに対する多大なる要求が存在し続けている。
TN(シャット−ヘルフリッヒ)セルについては、セル内において以下の利点を容易にする媒体が望まれている:
−拡大されたネマチック相範囲(特に低温の方向に)、
−超低温における切換能力(野外での使用、自動車、航空機)、
−UV照射に対する増大した抵抗(より長い耐用年数)、
−より早い反応時間実現のための高いΔn、
である。
【0012】
従来技術による媒体は、他のパラメーターを同時に維持したまま、これらの利点を達成することを可能にしない。
スーパーツイストセル(STN)の場合、より大きい時分割特性および/またはより低いしきい値電圧および/またはより広いネマチック相範囲(特に低温における)が可能である媒体が望まれている。この目的のために、利用できるパラメーターの幅(透明点、スメクチック−ネマチック転移または融点、粘度、誘電パラメーター、弾性パラメーター)をさらに拡大することが、早急に要求されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】トガシ・エス、セキグチ・ケイ、タナベ・H、ヤマモト・イー、ソリマチ・ケイ、タジマ・イー、ワタナベ・エイチ、シミズ・エイチ(TOGASHI, S., SEKIGUCHI, K., TANABE, H., YAMAMOTO, E., SORIMACHI, K., TAJIMA, E., WATANABE, H., SHIMIZU, H)., プロク・ユーロディスプレイ(Proc. Eurodisplay) 84, 1984年9月:A210-288 二段階ダイオード環によって調節されるマトリクスLCD(Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings), 141頁以降、パリ(Paris)。
【非特許文献2】ストロマー・エム(STROMER, M.), プロク・ユーロディスプレイ(Proc. Eurodisplay) 84, 1984年9月: 液晶テレビディスプレイのマトリクス応答のための薄膜トランジスタの設計(Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays), 145頁以降、パリ(Paris)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、前述の欠点を有さないか、または有しても程度が低減されていて、かつ好ましくは同時に極めて大きい抵抗値および低いしきい値電圧を有する、特にこのタイプのMLCディスプレイ、IPS、TNまたはSTNディスプレイ用の、媒体を提供することにある。この目的には、高い透明点および低い回転粘度を有する液晶化合物を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、本発明の液晶化合物を用いる場合に達成することができることが見出された。
すなわち、本発明は、式I
【化1】

式中、
Rは、H、非置換であるか、CNまたはCFによって単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されていて、2〜15個のC原子を有するアルケニル基であり、さらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−OC−O−または−O−CO−により、O原子が互いに直接結合していないように置換されていてもよく、
およびAは、各々互いに独立して、
a)1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−シクロヘキシレン基であり、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH基は、−O−または−S−によって置換されていてもよく、
b)1,4−フェニレン基であり、ここで、1つまたは2つのCH基は、Nによって置換されていてもよく、
c)ピペリジン−1,4−ジイル、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、フェナントレン−2,7−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルおよびフルオレン−2,7−ジイルからなる群から選択される基であり、
基a)、b)およびc)は、ハロゲン原子により単置換または多置換されていてもよく、
Xは、F、Cl、CN、NCS、SFであるかまたはハロゲン化されているか、もしくは非置換の5個までの炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルケニルオキシまたはアルケニル基であり、
およびZは、各々互いに独立して、−CO−O−、−O−CO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−(CH−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CF=CF−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、ただし、ブリッジZおよびZの少なくとも1つは、−CFO−または−OCF−であり、
aは、0、1または2であり、
bは、0、1または2であり、
、LおよびLは、各々互いに独立して、H、FまたはClである、
で表される液晶化合物に関する。
【0016】
本発明はさらに、式Iで表される化合物の、液晶媒体における使用に関する。
式Iで表される化合物は、広い適用範囲を有する。置換基の選択に依存して、これらの化合物は、液晶媒体を主構成するベース材料として機能することができる;しかしまた、式Iで表される化合物を、他の群の化合物からの液晶ベース材料に添加して、例えば誘電性および/またはこのような誘電性の光学異方性を改変し、および/またはこのしきい値電圧および/またはこの粘度を最適化することもできる。
【0017】
式Iで表される化合物は、純粋な状態では無色であり、電気光学的使用に好ましい温度範囲において液晶メソフェーズを形成する。特に、本発明の化合物は、これらの広いネマチック相範囲によって区別される。液晶混合物においては、本発明による前記物質は、スメクチック相を抑制し、そして低温保存安定性において明かな改善をもたらす。それらは化学的に、熱的に、そして光に安定である。
本発明は、特に、式Iで表され、Rがビニル、CHCH=CH、CH=CHCHCHまたはCHCH=CHCHCHである化合物に関する。
【0018】
a=b=1またはa=b=2である式Iで表される化合物は特に好ましい。ZまたはZは、好ましくは、単結合、さらに−CFO−、−OCF−、−C−、−CHO−、−OCH−または−COO−である。
アルケニル基Rは、直鎖状または分枝状であってよい。Rは、好ましくは、直鎖状であり、2〜10個のC原子を有する。したがって、Rは、好ましくはビニル、プロプ−1−または−2−エニル、ブト−1−、−2−または−3−エニル、ペント−1−、2−、3−または−4−エニル、ヘクス−1−、2−、3−、4−または−5−エニル、ヘプト−1−、2−、3−、4−、5−または−6−エニル、オクト−1−、2−、3−、4−、5−、6−または−7−エニル、ノン−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−または−8−エニル、デク−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または−9−エニルである。
【0019】
Rが、CNまたはCFによって単置換されているアルケニル基である場合、好ましくはこの基は直鎖状である。CNまたはCFによる置換は、あらゆる所望の場所であってよい。
【0020】
Rが、ハロゲンによって少なくとも単置換されているアルケニル基である場合、この基は、好ましくは直鎖状であり、ハロゲンは、好ましくはFまたはClである。多置換の場合には、ハロゲンは、好ましくはFである。得られた基は、過フッ素化基も含む。単置換の場合には、フッ素または塩素置換基は、あらゆる所望の位置にあってよいが、好ましくはω位である。
【0021】
分枝した翼状基Rを有する式Iで表される化合物は、従来の液晶ベース材料におけるより良好な可溶性のために、重要である場合があり、特にこれらが光学的に活性である場合には、キラルドーパントとして重要である。このタイプのスメクチック化合物は、強誘電性材料の成分として好適である。
相を有する式Iで表される化合物は、例えば、熱的にアドレスされたディスプレイに適する。
【0022】
簡便のために、以下においては、Cycは、1,4−シクロヘキシレン基を示し、Cheは、1,4−シクロヘキセニレン基を示し、Dioは、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を示し、Ditは、1,3−ジチアン−2,5−ジイル基を示し、Pheは、1,4−フェニレン基を示し、Pydは、ピリジン−2,5−ジイル基を示し、Pyrは、ピリミジン−2,5−ジイル基を示し、Biは、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基を示し、PheFは、2−または3−フルオロ−1,4−フェニレン基を示し、PheFFは、2,3−ジフルオロ−または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン基を示し、Napは、置換または非置換ナフタレン基を示し、Decは、デカヒドロナフタレン基を示し、Phenは置換または非置換のフェナントレン基を示す。
【0023】
簡便のため、以下においては、A−Xは、
【化2】

を示す。
【0024】
したがって、式Iで表される化合物は、従属式Ia〜Ijの好ましい二環式化合物を含む:
(Zは、−CFO−または−OCF−である)
R−Cyc−Z−A−X Ia
R−Phe−Z−A−X Ib
R−Pyr−Z−A−X Ic
R−Dio−Z−A−X Id
R−Bi−Z−A−X Ie
R−PheF−Z−A−X If
R−PheFF−Z−A−X Ig
R−Nap−Z−A−X Ih
R−Dec−Z−A−X Ii
R−Phen−Z−A−X Ij
【0025】
したがって、式Iで表される化合物は、従属式Ik〜Ivの好ましい三環式化合物を含む:
(Zは、−CFO−または−OCF−である)
R−Cyc−Z−Cyc−Z−A−X Ik
R−Cyc−Z−Phe−Z−A−X Il
R−Cyc−Z−PheF−Z−A−X Im
R−Cyc−Z−PheFF−Z−A−X In
R−Phe−Z−Phe−Z−A−X Io
R−Cyc−Z−Dio−Z−A−X Ip
R−Dio−Z−Cyc−Z−A−X Iq
R−Dec−Z−Cyc−Z−A−X Ir
R−Phe−Z−PheF−Z−A−X Is
R−Phe−Z−PheFF−Z−A−X It
R−Pyr−Z−Phe−Z−A−X Iu
R−Phe−Z−Phen−Z−A−X Iv
【0026】
これらの化合物のうち、特に好ましいのは、従属式Ia、Ib、Id、IkおよびIIの化合物である。
【0027】
およびAは、好ましくは、Phe、PheF、PheFF、CycまたはChe、またPyrまたはDio、DecまたはNapである。式Iで表される化合物は、好ましくは、基Bi、Pyd、Pyr、Dio、Dit、NapまたはDecを、1個より多く含まない。
【0028】
およびAが、単置換または二置換された1,4−フェニレンである、式Iおよびすべての従属式で表される全ての化合物も好ましい。特に、これらは、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンおよび2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0029】
式Iで表される化合物の好ましいより小さい群は、従属式I1〜I105の化合物である:
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
【化9】

【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
【化17】

【0044】
【化18】

【0045】
式Iで表される化合物は、自体公知の方法によって製造され、それは文献(例えば、標準的な教本、例えばHouben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)に記載されているが、正確には、既知の、前記反応に適切な反応条件下において製造される。自体公知の変法を用いることもできるが、本明細書においては詳細を述べない。
【0046】
本発明の化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる:

スキーム1
【化19】

【0047】
スキーム2
(alkyl:1〜9個の炭素原子を有する、直鎖状または分枝状のアルキル基)
【化20】

【0048】
スキーム3
【化21】

【0049】
スキーム4
【化22】

【0050】
本発明はまた、このタイプの媒体を含有する電気光学的ディスプレイ(特に、フレームと一緒にセルを形成する2つの平面状平行外板、基板上の個別の画素を切り替えるための集積非線型素子および、セル中に存在する正の誘電異方性および高い比抵抗を有するネマティック液晶混合物を有するSTNディスプレイまたはMLCディスプレイ)およびこれらの媒体を電気光学的目的使用に関する。
本発明の液晶混合物は、用い得るパラメーターの許容範囲の顕著な拡大を可能にする。
【0051】
透明点、低温における粘度、熱およびUV安定性並びに誘電異方性の達成可能な組み合わせは、従来技術による材料よりもはるかに優れている。
現在まで、高い透明点、低温におけるネマティック相および高いΔεの要求を適切に満たすことは不十分でしかなかった。液晶混合物、例えばMLC−6476およびMLC−6625(Merck KGaA, Darmstadt, Germany)は、匹敵する透明点および低温安定性を有するが、これらは比較的低いΔn値および約≧1.7Vの比較的高いしきい値電圧を有する。
【0052】
他の混合物系は、匹敵する粘度およびΔε値を有するが、60℃近傍の透明点を有するのみである。
本発明の液晶混合物は、−20℃まで、および好ましくは−30℃まで、特に好ましくは−40℃までのネマティック相を維持する一方、80℃より高い、好ましくは90℃より高い、特に好ましくは100℃より高い透明点、同時に≧4、好ましくは≧6の誘電異方性値Δεおよび高い比抵抗値を達成することを可能にし、優れたSTNディスプレイおよびMLCディスプレイを得ることを可能にする。特に、混合物は、低い駆動電圧を特徴とする。TNしきい値は、1.5Vより低く、好ましくは1.3Vより低い。
【0053】
本発明の混合物の成分の適切な選択によって、より高いしきい値電圧におけるより高い透明点(例えば110℃より高い)またはより低いしきい値電圧におけるより低い透明点を達成し、他の有利な特性を維持することも勿論可能である。関連して僅かに上昇した粘度において、より大きいΔεおよびそれによってより低いしきい値を有する混合物を同様に得ることができる。本発明のMLCディスプレイは、好ましくはグーチおよびタリー[C.H. GoochおよびH.A. Tarry, Electron. Lett. 10, 2-4, 1974; C.H. GoochおよびH.A. Tarry, Appl. Phys. Vol. 8, 1575-1584, 1975]による第一次透過率極小値において作動し、特に好ましい電気光学的特性、例えば特性曲線の急峻性およびコントラストの低い角度依存性(独国特許3022818号)のみならず、第二次極小値における類似するディスプレイに等しいしきい値電圧において、低誘電異方性(a lower dielectric anisotropy)も十分である。このため、本発明の混合物を用いることによって、シアノ化合物を含む混合物を用いるよりも有意に高い第一次極小値における比抵抗を達成することができる。個別の成分およびこれらの重量比を適切に選択することによって、当業者は、単純なルーチンの方法を用いて、本発明によるMLCディスプレイの所定の層の厚さに要求される複屈折を設定することができる。
【0054】
20℃における流動粘度ν20は、好ましくは<60mm・s−1、特に好ましくは<50mm・s−1である。ネマティック相範囲は、好ましくは、少なくとも90°、特に少なくとも100°である。好ましくは、この範囲は、少なくとも−30°〜+80°にわたる。
【0055】
容量保持率(HR)の測定[S. Matsumoto et al., Liquid Crystals 5, 1320 (1989); K. Niwa et al., Proc. SID Conference, San Francisco, 1984年6月、p. 304 (1984); G, Weber et al., Liquid Crystals 5, 1381 (1989)]は、式Iで表される化合物を含む本発明の混合物が示す温度上昇に伴うHRの低下は、類似の混合物、例えば、式Iで表される化合物の代わりに、式
【化23】

で表されるシアノフェニルシクロヘキサンまたは式
【化24】

で1表されるエステルを含む前記混合物より、有意に小さいことを示している。
【0056】
本発明の混合物のUV安定性は、同様に顕著に良好であり、したがって、これらのUV照射の下におけるHRの低下は有意により小さい。
好ましくは、本発明の媒体は、複数(好ましくは2種、3種または4種以上)の式Iで表される化合物に基づき、したがって、これらの化合物の比率は、5〜95%、好ましくは10〜60%および特に好ましくは15〜40%の範囲内である。
本発明の媒体において用いることができる式I〜IXおよびこれらの従属式で表される個別の化合物は、既知であるるか、またはこれらは、既知の化合物に類似の方法によって調製することができる。
好ましい態様を以下に示す:
【0057】
−媒体は、好ましくは、式Iで表される1種、2種または3種の同族化合物を含み、各同族体の混合物中における存在比率は最大で10%である。
−媒体は、さらに、式II〜IXからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を含む:
【化25】

【0058】
【化26】

【0059】
式中、個々の基は、以下の意味を有する:
は、各々9個までのC原子を有するn−アルキル、オキサアルキル、フルオロアルキル、アルケニルオキシまたはアルケニルであり、
は、F、Cl、7個までのC原子を有するハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルケニルオキシまたはハロゲン化アルコキシであり、
は、−CH=CH−、−C−、−(CH−、−C−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−または−COO−であり、
、Y、YおよびYは、各々互いに独立してHまたはFであり、そして
rは、0または1である。
【0060】
式IVで表される化合物は、好ましくは、
【化27】

【0061】
【化28】

である。
【0062】
−媒体は、以下の式で表される1種または2種以上の化合物を含む:
【化29】

【0063】
【化30】

【0064】
【化31】

式中、RおよびYは、上記の意味を有する。
【0065】
−媒体は、好ましくは、H1〜H16(n=1〜7)からなる群から選択される、1種、2種または3種、あるいはまた4種の化合物の同族体を含む:
【化32】

【0066】
【化33】

【0067】
【化34】

【0068】
−媒体は、式X〜XVからなる群から選択される、1種または2種以上の化合物をさらに含む:
【化35】

式中、R、X、Y、Y、YおよびYは、各々互いに独立して、請求項7において特定した意味を有する。Xは、好ましくはF、Cl、CF、OCF、OCHFである。Rは、好ましくは、アルキル、オキサアルキル、フルオロアルキル、アルケニルまたはアルケニルオキシである。
【0069】
−混合物全体中における式I〜IXで表される化合物全体の割合は、少なくとも50重量%である。
−混合物全体中における式Iで表される化合物の割合は、5〜50重量%である。
−混合物全体中における式II〜IXで表される化合物の割合は、30〜70重量%である。
【0070】
【化36】

【0071】
−媒体は、式II、III、IV、V、VI、VII、VIIIおよび/またはIXで表される化合物を含む。
−Rは、2〜7個のC原子を有する直鎖状アルキルまたはアルケニルである。
−媒体は、本質的に式I〜XVで表される化合物からなる。
−媒体は、好ましくは、一般式XVI〜XXからなる下記の群から選択されるさらなる化合物を含む:
【化37】

式中、RおよびXは、前記定義の通りであり、1,4−フェニレン環は、CN、塩素原子またはフッ素原子によって置換されていてもよい。1,4−フェニレン環は、好ましくは、フッ素原子により単置換または多置換されている。
【0072】
−媒体は、好ましくは、、式RI〜RXIからなる下記の群から選択されるさらなる化合物を含む:
【化38】

【0073】
【化39】

式中、
は、各々9個までのC原子を有するn−アルキル、オキサアルキル、フルオロアルキル、アルケニルオキシまたはアルケニルであり、
dは、0、1または2であり、
は、HまたはFであり、
AlkylおよびAlkylは、各々互いに独立して、1〜9個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基であり、
AlkenylおよびAlkenylは、各々互いに独立して、9個までのC原子を有する直鎖状または分枝状アルケニル基である。
【0074】
−媒体は、好ましくは、下記式で表される化合物を1種または2種以上含む:
【化40】

【化41】

式中、nおよびmは、各々1〜9の整数である。
【0075】
−重量比I:(II+III+IV+V+VI+VII+VIII+IX)は、好ましくは1:10〜10:1である。
−媒体は、本質的に、一般式I〜XVからなる群から選択される化合物からなる。
【0076】
式Iで表される化合物を比較的小さい割合で従来の液晶材料に混合した場合においても、特に式II、III、IV、V、VI、VII、VIIIおよび/またはIXで表される1種または2種以上の化合物を混合した場合には、しきい値電圧の有意な低下および低い複屈折値を生ぜしめ、低いスメクチック−ネマチック転移温度を有する広ドメインネマチック相が同時に観察され、保存安定性が改善される。式I〜IXで表される化合物は無色であり、安定であり、相互におよび他の液晶物質と容易に混和性である。
【0077】
「Alkyl」または「Alkyl」の用語は、1〜9個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状アルキル基、特に直鎖状基メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを包含する。2〜5個の炭素原子を有する基が、一般的に好ましい。
【0078】
「Alkenyl」または「Alkenyl」の用語は、9個までの炭素原子を有する直鎖状および分枝状アルケニル基、特に直鎖状基を包含する。特に好ましいアルケニル基は、C−C−1E−アルケニル、C−C−3E−アルケニル、C−C−4−アルケニル、C−C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特にC−C−1E−アルケニル、C−C−3E−アルケニルおよびC−C−4−アルケニルである。好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニル等である。5個までの炭素原子を有する基が、一般的に好ましい。
【0079】
「フルオロアルキル」の用語は、好ましくは、末端フッ素を有する直鎖状基、すなわちフルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルを包含する。しかし、フッ素の他の位置も除外されない。
「オキサアルキル」の用語は、好ましくは、式C2n+1−O−(CHで表される直鎖状基であって、式中nおよびmは、各々互いに独立して1〜6であるものを包含する。nは好ましくは1であり、mは好ましくは1〜6である。
【0080】
およびXの意味の適切な選択によって、応答時間、しきい値電圧、透過特性の急峻性等を、所望の通りに改変することが可能である。例えば、1E−アルケニル基、3E−アルケニル基、2E−アルケニルオキシ基等によって、アルキルまたはアルコキシ基と比較して、一般的に応答時間がより短くなり、ネマチック傾向が改善され、そして弾性定数k33(曲がり)およびk11(広がり)の比率がより高くなる。4−アルケニル基、3−アルケニル基等によって、アルキルおよびアルコキシ基より低いしきい値電圧および小さいk33/k11の値が一般的に得られる。
【0081】
および/またはZ中の−CHCH−基は、単共有結合と比較して、より高いk33/k11の値を一般的に生ぜしめる。k33/k11のより高い値は、例えば、90°のねじれ(灰色の色相を達成するために)を有するTNセルにおけるよりフラットな透過特性曲線およびSTN、SBEおよびOMIセル(より大きい時分割特性)におけるより急峻な透過特性曲線およびその逆の達成を容易にする。
【0082】
式IおよびII+III+IV+V+VI+VII+VIII+IXの化合物の最適な混合比率は、所望の特性、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIIIおよび/またはIXで表される成分の選択並びに存在するすべての他の成分の選択に大きく依存する。前記において示した範囲内の適切な混合比率は、場合に応じて容易に決定することができる。
【0083】
本発明の混合物中の式I〜XVで表される化合物の合計量は、臨界的なものではない。したがって、種々の特性を最適化するために、該混合物は1種または2種以上の他の成分を含むことができる。しかし、全般に、式I〜XVで表される化合物の合計濃度が高いほど、応答時間およびしきい値電圧に対する観察される効果は高くなる。
【0084】
特に好ましい態様において、本発明の媒体は、式II〜IX(好ましくはIIおよび/またはIII)の化合物であって、XがOCF、OCHF、F、OCH=CF、OCF=CF、OCFCHFCFまたはOCF−CFHである前記化合物を含む。式Iで表される化合物との好ましい相乗効果の結果、特に有利な特性が得られる。
【0085】
偏光板、電極ベースプレートおよび表面処理を有する電極を含む本発明によるMLCディスプレイの構成は、このタイプのディスプレイの従来の構成と一致する。「従来の構成」の用語は広く解され、MLCディスプレイのすべての派生体および改変体も包含し、そして特にポリ−Si TFTまたはMIMに基づくマトリックスディスプレイ素子を含む、
しかし、本発明のディスプレイと、ねじれネマティックセルに基づく従来のディスプレイとの間の有意な差異は、液晶層の液晶パラメーターの選択に存する。
【0086】
本発明において用い得る液晶混合物は、それ自体一般的な方法によって調製される。一般に、より少量で用いる成分の所望の量を主成分を構成する成分に溶解するが、好ましくは昇温下で溶解する。成分の溶液を有機溶媒、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノール中において混合し、そして十分に混合した後に溶媒を再び除去することもできるが、例えば除去は蒸留によって行う。
【0087】
誘電体はまた、当業者に知られ、文献中に記載されている他の添加物を含むことができるが、その例としては、例えば、安定剤および抗酸化剤である。例えば、0〜15%の多色性染料またはキラルなドーパントを添加することができる。
Cは結晶相を表し、Sはスメクチック相を表し、SはスメクチックC相を表し、SはスメクチックB相を表し、Nはネマチック相を表し、Iはアイソトロピック相を表す。
【0088】
10は、10%透過率のための電圧を表す(視覚方向はプレート表面に対して垂直)。tonは、V10の値の2.0倍に対応する動作電圧におけるスイッチオン時間を表し、toffは、スイッチオフ時間を表す。Δnは、光学異方性を表し、nは、屈折率を表す。Δεは、誘電異方性を表す(Δε=ε‖−ε⊥、ここでε‖は分子の長軸に対して平行な方向の誘電定数を表し、ε⊥は、分子の長軸に対して垂直方向の誘電定数を表す)。電気光学データは、別段の記載がない限り、TNセルにおける第一次極小値(すなわち0.5のd・Δn値)において、20℃で測定した。光学データは、別段の記載がない限り、20℃で測定した。
【0089】
本特許明細書および以下の例において、液晶化合物の構造は頭字語で示され、以下の表AおよびBに従って化学式に変換することができる。全ての基C2n+1およびC2m+1は、それぞれn個またはm個のC原子を有する直鎖状アルキル基である。そして、nおよびmは、それぞれの場合互いに独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15である。表Bのコードは自明である。表Aには、母核構造の頭字語のみを示す。各々の場合において、母核構造の頭字語に、ハイフンで分離されて、置換基R、R、LおよびLのコードが続く:
【0090】
【表1】

【0091】
好ましい混合物の成分を、表AおよびBに示す。
表A:
【化42】

【0092】
【化43】

【0093】
【化44】

【0094】
【化45】

【0095】
表B:
【化46】

【0096】
【化47】

【0097】
【化48】

【0098】
【化49】

【0099】
【化50】

【0100】
【化51】

【0101】
表C: 表Cは本発明における混合物に一般的に添加する可能なドーパントを示す。
【化52】

【0102】
【化53】

【0103】
表D:
例として、本発明の混合物に加えることができる安定剤を以下に挙げる。
【化54】

【0104】
【化55】

【0105】
【化56】

【0106】
【化57】

【0107】
【化58】

【0108】
以下の例は、本発明を限定することなく本発明を説明しようとするものである。前記および以下において、百分率は、重量によるパーセントである。温度はすべて、摂氏度で示されている。m.p.は、融点を意味し、c.p.は透明点を意味する。さらに、C=結晶状態、N=ネマチック相、S=スメクチック相、およびI=アイソトロピック相である。これらの記号間のデータは、転移温度を示す。Δnは、光学異方性(589nm、20℃)を意味し。流動粘度ν20(mm/秒)は20℃において測定した。回転粘度γ[mPa・s]も、同様に20℃において測定した。
【0109】
「通常の精製操作(work-up)」の意味は、所要に応じて水を加え、混合物に対する抽出を、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルまたはトルエンを用いて行い、相を分離し、有機相を乾燥、留去せしめ、そして生成物の精製を、減圧下における蒸留または結晶化および/またはクロマトグラフィーによって実施する、ことである。以下の略語を用いる:
n−BuLi n−ヘキサン中のn−ブチルリチウム1.6モル溶液
DMAP 4−(ジメチルアミノ)ピリジン
THF テトラヒドロフラン
DCC N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
LDA リチウムジメチルアミド
【実施例】
【0110】
例1
【化59】

ステップ1.1
【化60】

【0111】
0.780molのを2.5lの無水THFに最初に導入し、−70℃に冷却する。−70℃にて、0.780molのn−BuLi(n−ヘキサン中の15%溶液)を滴下添加し、そして該混合物を−70℃にて0.5時間攪拌し、緩やかに−15℃に加温する。0.78molのを−70℃にて添加した後、該混合物を室温にて一晩攪拌する。メチルtert−ブチルエーテルおよびNaHCO溶液を該混合物に添加し、それを通常の精製操作に付す。粗生成物をn−ヘプタンから再結晶せしめる。
【0112】
ステップ1.2
【化61】

0.1molのをジクロロメタン300mlに溶解し、そして0.1molのトリフルオロメタンスルホン酸を氷冷下添加する。反応混合物を5℃にて攪拌し、室温になるまで放置し、さらに2時間攪拌する。30mlのジクロロメタン中の0.15molの3,4,5−トリフルオロフェノールと0.18molのトリエチルアミンの混合物を前記反応混合物に−70℃にて滴下添加し、そして該反応混合物を続いて−70℃にて1時間攪拌する。0.5molのトリスハイドロフルオライドトリエチルアミンを添加した後、ジクロロメタン170ml中の1,3−ジブロモ5,5−ジメチルヒダントインの混合物を分割添加する。該混合物を−70℃にてさらに1時間攪拌し、−20℃にて1モルのNaOH溶液300mlを添加する。水相を分離除去し、ジクロロメタンにて抽出を行う。合わせた有機相を通常の精製操作に付する。
【0113】
ステップ1.3
【化62】

200mlのギ酸を、250mlの無水トルエン中に溶解した0.083molのに添加し、そして該混合物を室温にて一晩攪拌する。ギ酸を分離除去し、トルエンにて抽出を行う。合わせた有機相を通常の精製操作に付する。n−ヘプタンからの残渣の再結晶を行う。
【0114】
ステップ1.4
【化63】

0.013molのおよび0.019molのメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロライドを300mlの無水THFに溶解した溶液を、不活性の容器に導入し、−5℃にて冷却する。0.019molのカリウムt−ブトキシドを50mlの無水THFに溶解した溶液を添加した後、該混合物を0℃にて1時間および室温にて一晩攪拌する。HOおよび数滴の希HClを添加した後、合わせた有機相を通常の精製操作に付する。
【0115】
ステップ1.5
【化64】

200mlのギ酸を、無水トルエン250ml中に溶解せしめた0.083molのに添加し、そして混合物を室温下にて一晩攪拌する。ギ酸を分離除去し、トルエンにて抽出を行う。合わせた有機相を、通常の精製操作に付す。n−ヘプタンからの残渣の再結晶を行う。
【0116】
ステップ1.6
【化65】

2.82mmolの、3.36mmolのメチルトリフェニルホスホニウムブロマイドを、40mlの無水THF中に溶解せしめ、そして2℃に冷却する。3.36mmolのカリウムt−ブトキシドを20mlの無水THFに溶解せしめた溶液を滴下添加し、室温下にて一晩溶解せしめる。トリフェニルホスフィンオキシドを吸引にて濾別し、そして濾物を乾燥するまで濃縮する。粗生成物をn−ヘプタンに溶解せしめ、シリカフリットを通して濾別し、そして濾物を再濃縮する。残渣のn−ヘプタンからの再結晶を−20℃にて行う。C 29 N 88.4 I; Δn=0.0761;Δε=8.3。
【0117】

【化66】

で表される以下の化合物が、同様にして製造される:
【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【0120】
混合物の例
例M1
【表4】

【0121】
例M2
【表5】

【0122】
例M3
【表6】

【0123】
例M4
【表7】

【0124】
例M5
【表8】

【0125】
例M6
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶化合物であって、式I
【化1】

式中、
Rは、H、非置換であるか、CNまたはCFによって単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されていて、2〜15個のC原子を有するアルケニル基であり、さらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−OC−O−または−O−CO−により、O原子が互いに直接結合していないように置換されていてもよく、
およびAは、各々互いに独立して、
a)1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−シクロヘキシレン基であり、ここで、1つまたは2つの隣接していないCH基は、−O−または−S−によって置換されていてもよく、
b)1,4−フェニレン基であり、ここで、1つまたは2つのCH基は、Nによって置換されていてもよく、
c)ピペリジン−1,4−ジイル、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、フェナントレン−2,7−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルおよびフルオレン−2,7−ジイルからなる群から選択される基であり、
基a)、b)およびc)は、ハロゲン原子により単置換または多置換されていてもよく、
Xは、F、Cl、CN、NCS、SFであるかまたはハロゲン化されているか、もしくは非置換の5個までの炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルケニルオキシまたはアルケニル基であり、
およびZは、各々互いに独立して、−CO−O−、−O−CO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−(CH−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CF=CF−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合であり、ただし、ブリッジZおよびZの少なくとも1つは、−CFO−または−OCF−であり、
aは、0、1または2であり、
bは、0、1または2であり、
、LおよびLは、各々互いに独立して、H、FまたはClである、
で表される、前記液晶化合物。
【請求項2】
Rが、ビニル、CHCH=CH、CH=CHCHCHまたはCHCH=CHCHCHであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶化合物。
【請求項3】
a+b=1またはa+b=2であることを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶化合物。
【請求項4】
がフッ素であり、Lがフッ素または塩素であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶化合物。
【請求項5】
およびLが、フッ素であることを特徴とする、請求項4に記載の液晶化合物。
【請求項6】
式I1〜I105:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

式中、
は、請求項1において定義した通りである、
で表される液晶化合物。
【請求項7】
少なくとも2種のメソゲン性化合物を含む液晶媒体であって、請求項1に記載の式Iの化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする、前記液晶媒体。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶媒体の、電気光学的目的への使用。
【請求項9】
請求項7に記載の液晶媒体を含む、電気光学的液晶ディスプレイ。

【公開番号】特開2011−174070(P2011−174070A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42906(P2011−42906)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2002−285381(P2002−285381)の分割
【原出願日】平成14年9月30日(2002.9.30)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】