説明

液晶組成物、位相差板及び楕円偏光板

【課題】 着色のない化合物を用いて、二軸性液晶相を発現しうる液晶組成物を提供する。
【解決手段】 下記一般式(DI)で表される化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物である。式中、Y11〜Y13はそれぞれメチンまたは窒素原子を;L1〜L3はそれぞれ単結合または二価の連結基を;H1〜H3はそれぞれ二価の5員環環状基を;R1〜R3はそれぞれ環状構造を有する二価基を含む所定の基を表すが、少なくとも1つは棒状液晶性基を含む。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色のない液晶化合物を利用した二軸性の液晶相を発現する液晶組成物、該液晶組成物を用いた位相差板及び楕円偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
3軸方向の屈折率を制御した二軸性のフィルムは、偏光を利用する光学分野において有用である。特に液晶ディスプレイの分野では偏光をきめ細かく制御できるこのようなフィルムの重要性は高い。このような光学的二軸性のフィルムを作製する場合、ポリマーから得られるフィルムを二軸延伸によって得る方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。二軸延伸によって二軸性のフィルムを得る場合には、3軸方向の屈折率を延伸倍率によって制御できるため、比較的容易に所望の屈折率に制御できる。
【0003】
二軸性液晶を用いて二軸性フィルムが作製できれば、これまで多く用いられてきた二軸延伸フィルムと比較して、その膜厚を非常に薄くできるというメリットがあるので、二軸性フィルムに二軸性液晶を用いることは、デバイスの薄層化や軽量化等に有用な手段である。
【0004】
ところが、二軸性液晶を発現させることは困難であり、特に二軸性ネマチック相(Nb相)は非常に困難である。そのため、二軸性ネマチック相に関する報告はあまり多くなく(例えば、非特許文献1、非特許文献2)、更に報告にある二軸性ネマチック相が発現していると考えられる液晶化合物は、いずれも黄色に着色した化合物を用いているために、光学用フィルムとしては非常に用途が限られてしまうものであった。
【非特許文献1】Jonathan J. Hunt等著,J. Am. Chem. Soc., 2001年,123巻,10115頁
【非特許文献2】Paul H. Kouwer、Georg H. Mehl著,J. Am. Chem. Soc., 2003年,125巻,11172頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような状況に鑑み、本発明の目的は、着色のない化合物、特に液晶性を発現する化合物を提供し、更にその化合物を用いて、二軸性液晶相を発現しうる液晶組成物を提供することにある。また本発明は、液晶表示装置の視野角の拡大に寄与し得る位相差板及び楕円偏光板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1) 下記一般式(DI)で表される化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、L1、L2およびL3は、それぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、H1、H2およびH3はそれぞれ独立に、二価の5員環環状基を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、一般式(DI−R)または一般式(DI−MG)を表すが、ただし、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、一般式(DI−MG)であり;
一般式(DI−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)におけるH1〜H3側と結合する位置を表し、L21は単結合または二価の連結基を表し、Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基を表し、n1は0〜4の整数を表し、L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ2側と結合する位置を表し、L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよく、Q1は重合性基または水素原子を表し、n1が2以上のとき、複数個の−L21−Q2は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく;
一般式(DI−MG)
*−(−L31−Q3n2−L32−L33−MG
一般式(DI−MG)中、*は一般式(DI)におけるH1〜H3側と結合する位置を表し、L31は単結合または二価の連結基を表し、Q3は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基を表し、n2は0〜4の整数を表し、L32は、単結合、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ3側と結合する位置を表し、L33は、単結合または、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよく、MGは棒状液晶性基を表し、n2が2以上のとき、複数個の−L31−Q3は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
【0009】
(2) 上記一般式(DI)において、H1、H2およびH3がそれぞれ独立に、下記一般式(DI−A)、下記一般式(DI−B)または下記一般式(DI−C)で表される二価の5員環環状基である(1)の液晶組成物。
【0010】
【化2】

(一般式(DI−A)中、YA1およびYA2は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XAは、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)
【0011】
【化3】

(一般式(DI−B)中、YB1およびYB2は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XBは、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)
【0012】
【化4】

(一般式(DI−C)中、YC1およびYC2は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XCは、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)
【0013】
(3) 少なくとも一種の別の液晶化合物をさらに含有する(1)又は(2)の液晶組成物。
(4) 前記少なくとも一種の別の液晶化合物が、ディスコティック液晶相を発現する液晶化合物である(3)の液晶組成物。
(5) 前記少なくとも一種の別の液晶化合物が、下記一般式(DII)で表される化合物である(3)又は(4)の液晶組成物。
【0014】
【化5】

(一般式(DII)中、Y21、Y22およびY23は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、L21、L22およびL23は、それぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、H21、H22およびH23はそれぞれ独立に、下記一般式(DII−A)または下記一般式(DII−B)または下記一般式(DII−C)を表し;
【0015】
【化6】

一般式(DII−A)中、YA21およびYA22は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XA2は、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DII)におけるL21〜L23側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DII)におけるR21〜R23側と結合する位置を表す;
【0016】
【化7】

一般式(DII−B)中、YB21およびYB22は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XB2は、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DII)におけるL21〜L23側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DII)におけるR21〜R23側と結合する位置を表す;
【0017】
【化8】

一般式(DII−C)中、YC21およびYC22は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XC2は、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DII)におけるL21〜L23側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DII)におけるR21〜R23側と結合する位置を表す;
21、R22、R23は、それぞれ独立に、下記一般式(DII−R)を表す;
一般式(DII−R)
*−(−L221−Q22n21−L222−L223−Q21
一般式(DII−R)中、*は上記一般式(DII)におけるH21〜H23側と結合する位置を表し、L221は単結合または二価の連結基を表し、Q22は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基を表し、n21は0〜4の整数を表し、L222は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ2側と結合する位置を表し、L223は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q21は重合性基または水素原子を表す。n21が2以上のとき、複数個の−L221−Q22は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
【0018】
(6) 透明支持体の上に、少なくとも一層の光学異方性層を有する位相差板であって、該光学異方性層が(1)〜(5)のいずれかの液晶組成物から形成される光学異方性層であることを特徴とする位相差板。
(7) (6)の位相差板と偏光膜とを有することを特徴とする楕円偏光板。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、着色のない化合物、特に液晶性を発現する化合物を提供できる。更にその化合物を用いて、二軸性液晶相を発現しうる液晶組成物を提供できる。また、本発明によれば、液晶表示装置の視野角の拡大に寄与し得る位相差板及び楕円偏光板を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0021】
本発明の化合物は、下記一般式(DI)で表される。
【0022】
【化9】

【0023】
一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
【0024】
11、Y12およびY13がそれぞれメチンの場合、炭素原子は置換基を有していてもよい。ここで、「原子は置換基を有していてもよいとは」、該原子を含む環状構造の該原子の部分に結合している水素原子部分が他の基に置換されていてもよいことを意図している(以下同じ)。炭素原子が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基が最も好ましい。
11、Y12およびY13は、いずれもメチンであることがより好ましく、炭素原子は無置換であることが最も好ましい。
【0025】
一般式(DI)中、L1、L2およびL3は、それぞれ独立に単結合または二価の連結基を表す。L1、L2およびL3が二価の連結基の場合、それぞれ独立に、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−SO2−、−CH=CH−、−C≡C−、二価の環状基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0026】
1、L2およびL3における二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基(以下、環状基と呼ぶことがある)である。環状基は5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることがもっとも好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。環状基は、芳香族環および複素環がより好ましい。なお、本発明における2価の環状基は、環状構造のみ(但し、置換基を含む)からなる2価の連結基であることがより好ましい(以下、同じ)。
【0027】
1、L2およびL3で表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0028】
1、L2およびL3で表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数が2〜16アルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0029】
1、L2およびL3としては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−、*−O−CO−二価の環状基−、*−CO−O−二価の環状基−、*−CH=CH−二価の環状基−、*−C≡C−二価の環状基−、*−二価の環状基−O−CO−、*−二価の環状基−CO−O−、*−二価の環状基−CH=CH−および*−二価の環状基−C≡C−が好ましい。特に、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−CH=CH−二価の環状基−および*−C≡C−二価の環状基−が好ましく、単結合が最も好ましい。ここで、*は一般式(DI)中のY11、Y12およびY13を含む6員環側に結合する位置を表す。
【0030】
1、H2およびH3はそれぞれ独立に、二価の5員環環状基を表す。二価の5員環環状基は、ヘテロ環であるのが好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ホウ素原子およびリン原子等を挙げることができる。特に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子の少なくとも一種を含むヘテロ環が好ましく、特に窒素原子と酸素原子とを含むヘテロ環が好ましい。
二価の5員環環状基は、少なくとも1個のメチンを有していることが好ましく、2個のメチンを有していることが更に好ましい。特に、メチンの水素原子が、L1、L2、L3もしくはR1、R2、R3と置き換わっていることが好ましい。
二価の5員環環状基としては、例えば、チオフェン−2,5−ジイル、チオフェン−2,4−ジイル、フラン−2,5−ジイル、フラン−2,4−ジイル、オキサゾール−2,5−ジイル、オキサゾール−2,4−ジイル、イミダゾール2,5−ジイル、イミダゾール2,4−ジイル、1,3,4−オキサジアゾ−ル−2,5−ジイル、1,2,4−オキサジアゾ−ル−3,5−ジイル、テトラヒドロフラン−2,4−ジイル等を挙げることができる。
二価の5員環環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、Y11、Y12およびY13と同様の置換基を挙げることができる。
【0031】
1、H2およびH3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)、下記一般式(DI−B)または下記一般式(DI−C)であることが特に好ましい。
【0032】
【化10】

【0033】
一般式(DI−A)中、YA1およびYA2は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表す。YA1およびYA2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が、窒素原子であることがより好ましい。XAは、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表し、酸素原子が好ましい。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0034】
【化11】

【0035】
一般式(DI−B)中、YB1およびYB2は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表す。YB1およびYB2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が、窒素原子であることがより好ましい。XBは、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表し、酸素原子が好ましい。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0036】
【化12】

【0037】
一般式(DI−C)中、YC1およびYC2は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表す。YC1およびYC2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が、窒素原子であることがより好ましい。XCは、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表し、酸素原子が好ましい。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0038】
1、R2およびR3は、それぞれ独立に、一般式(DI−R)または一般式(DI−MG)を表す。ただし、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、一般式(DI−MG)である。
【0039】
一般式(DI−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
【0040】
一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す。
【0041】
21は単結合または二価の連結基である。L21が二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−SO2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0042】
21は単結合、ならびに、***−O−CO−、***−CO−O−、***−CH=CH−および***−C≡C−(ここで、***は一般式(DI−R)中の*側を表す)のいずれかが好ましく、単結合がより好ましい。
【0043】
2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す。このような環状基としては、5員環、6員環、または7員環を有する環状基が好ましく、5員環または6員環を有する環状基がより好ましく、6員環を有する環状基がさらに好ましい。上記環状基に含まれる環状構造は、縮合環であっても良い。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
【0044】
上記Q2のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4−フェニレン基が好ましい。
【0045】
2は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0046】
n1は、0〜4の整数を表す。n1としては、1〜3の整数が好ましく、1もしくは2がさらに好ましい。
【0047】
22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ2側と結合する位置を表す。
22は、好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−SO2−、**−O−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−、**−C≡C−であり、より好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−O−CO−O−、**−O−SO2−、**−CH2−である。
【0048】
23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0049】
23は、−O−、−C(=O)−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。L23は、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。さらに、L23は、−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがさらに好ましい。
【0050】
1は重合性基または水素原子を表す。本発明の化合物を、位相差の大きさが熱により変動しないのが好ましい光学フィルム(例えば光学補償フィルム)等の作製に用いる場合には、Q1は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。例えば、以下に示す重合性基の群から選ばれる基が挙げられる。
【0051】
【化13】

【0052】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0053】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0054】
【化14】

【0055】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(M−1)〜(M−6)の中、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0056】
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
【0057】
一般式(DI−MG)
*−(−L31−Q3n2−L32−L33−MG
一般式(DI−MG)中、*は一般式(DI)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す。
【0058】
31は一般式(DI−R)中のL21の定義と同義である。Q3は一般式(DI−R)中のQ2の定義と同義である。L32は一般式(DI−R)中のL22の定義と同義である。L33は一般式(DI−R)中のL23の定義と同義である。
MGは棒状液晶性基を表す。棒状液晶性基とは、棒状液晶性を示す化合物とL33を結合するために、液晶性の化合物の1つの水素原子をL33で置き換えた基を表す。棒状液晶性を示す化合物としては、種々の液晶性化合物を用いることができる。例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類を挙げることができる。
【0059】
このような液晶性化合物として具体的に例えば、D.Demusら著Hand Book of Liquid Crystals、Vol.1、Vol.2A、Vol.2Bに記載の化合物やこれら化合物に重合性基を導入した化合物を挙げることができる。重合性基としては、上記Q1で挙げた重合性基を用いることができる。
【0060】
更に、重合性基を有する棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻,107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、国際公開WO95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、及び特開2001−328973号などに記載の化合物を用いることができる。
【0061】
棒状液晶性化合物が示す液晶相としては、詳しくは液晶便覧(丸善(株)2000年発行)第2章などに記載されており、例えば、ネマチック相、コレステリック相、スメクチック相を挙げることができる。本発明においては、液晶相としてはネマチック相が特に好ましい。
【0062】
以下に、一般式(DI)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
【化18】

【0067】
本発明の液晶組成物は、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現することが好ましい。さらに好ましくは40℃〜280℃であり、最も好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(具体的に例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(具体的に例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0068】
本発明の液晶組成物は、光学的に二軸性の液晶相を発現する液晶組成物であることが好ましい。二軸性の液晶相とは、3軸方向の屈折率nx、ny、nzが異なり、例えばnx>ny>nzの関係を満たす液晶相である。
【0069】
本発明の液晶組成物が発現する二軸性液晶相としては、二軸性ネマチック相、二軸性スメクチックA相、二軸性スメクチックC相を挙げることができる。これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示す二軸性ネマチック相(Nb相)が好ましい。二軸性ネマチック相とは、ネマチック液晶性化合物がとり得る液晶相の一種であるが、液晶相の空間をx軸、y軸、z軸で定義した際、該液晶性化合物がy軸を中心にしたxz平面の自由回転も、z軸を中心にしたxy平面の自由回転も禁止されている状態を示す。
【0070】
本発明の液晶組成物が二軸性液晶相を発現するためには、本発明の化合物が液晶性を発現することが好ましく、更に、液晶性の化合物を混合することが好ましい。混合する液晶性の化合物としては、本発明の化合物でも良いし、本発明以外の液晶性化合物でも良い。化合物の合成の容易さを考慮すると、混合に用いる液晶性化合物は、本発明の化合物以外の化合物(例えば、棒状液晶性基を含まない化合物等)が好ましい。
【0071】
本発明の化合物が、負の複屈折性を有する液晶相を発現する場合、混合する液晶性化合物は、正の複屈折性を有する棒状液晶相を発現する化合物が好ましい。また、本発明の化合物が、正の複屈折性を有する液晶相を発現する場合、混合する液晶性化合物は、負の複屈折性を有するディスコティック液晶相を発現する化合物が好ましい。
【0072】
ディスコティック液晶化合物としては、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crys.Liq.Crys.,71巻,111頁(1981年)、日本化学会編,季刊化学総説,No.22,液晶の化学,第5章,第10章,第2節(1994)、B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,1794頁(1985年)、J.Zhanget et al.,J.Am.Chem.Soc.,116巻,2655頁(1994年))などに記載のものが挙げられる。
【0073】
ディスコティック液晶化合物が発現するディスコティック液晶相としては、カラムナー相、カラムナーラメラ相、カラムナーネマティック相、ディスコティックネマティック相を挙げることができる。この中で、特に、ディスコティックネマティック相が好ましい。
【0074】
ディスコティック液晶化合物としては、特に下記一般式(DII)で表される化合物が好ましい。
【0075】
【化19】

【0076】
一般式(DII)中、Y21、Y22およびY23は、一般式(DI)中のY11、Y12およびY13と同義である。
21、L22およびL23は、一般式(DI)中のL1、L2およびL3と同義である。H21、H22およびH23はそれぞれ独立に、下記一般式(DII−A)、下記一般式(DII−B)または下記一般式(DII−C)を表す。
【0077】
【化20】

【0078】
一般式(DII−A)中、YA21、YA22およびXA2は、(DI−A)中のYA1、YA2およびXAと同義である。*は上記一般式(DII)におけるL21〜L23側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DII)におけるR21〜R23側と結合する位置を表す。
【0079】
【化21】

【0080】
一般式(DII−B)中、YB21、YB22およびXB2は、(DI−B)中のYB1、YB2およびXBと同義である。*は上記一般式(DII)におけるL21〜L23側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DII)におけるR21〜R23側と結合する位置を表す。
【0081】
【化22】

【0082】
一般式(DII−C)中、YC21、YC22およびXC2は、(DI−C)中のYC1、YC2およびXCと同義である。*は上記一般式(DII)におけるL21〜L23側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DII)におけるR21〜R23側と結合する位置を表す。
【0083】
21、R22およびR23はそれぞれ独立に、下記一般式(DII−R)で表される基である。
一般式(DII−R)
*−(−L221−Q22n1−L222−L223−Q21
一般式(DII−R)中、*は上記一般式(DII)におけるH21〜H23側と結合する位置を表す。L221は一般式(DI−R)中のL21の定義と同義である。Q22は一般式(DI−R)中のQ2の定義と同義である。n21は一般式(DI−R)中のn1の定義と同義である。L222は一般式(DI−R)中のL22の定義と同義である。L223は一般式(DI−R)中のL23の定義と同義である。Q21は、一般式(DI−R)中のQ1の定義と同義である。n21が2以上のとき、複数個の−L221−Q22は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0084】
以下に、一般式(DII)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
【化23】

【0086】
【化24】

【0087】
【化25】

【0088】
【化26】

【0089】
【化27】

【0090】
本発明の液晶組成物における本発明の化合物の含有量の好ましい範囲は、その用途によって変動する。例えば、光学補償フィルム等の光学フィルムの作製に用いる場合は、本発明の化合物と本発明の化合物以外の液晶性化合物との割合は、質量比で100:1〜1:10であるのが好ましく、50:1〜1:5であるのがより好ましい。
【0091】
本発明の位相差板は、本発明の組成物から形成された光学異方性層を少なくとも一層有する。本発明の位相差板は、偏光膜と組み合わせて楕円偏光板の用途に供することができる。さらに、透過型液晶表示装置に、偏光膜と組み合わせて適用することにより、液晶表示装置の視野角の拡大に寄与させることができる。以下に、本発明の位相差板を利用した楕円偏光板および液晶表示装置について説明する。
【0092】
[楕円偏光板]
本発明の位相差板と偏光膜を積層することによって楕円偏光板を作製することができる。本発明の位相差板を利用することにより、液晶表示装置の視野角を拡大しうる楕円偏光板を提供することができる。
【0093】
前記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0094】
偏光膜は本発明の位相差板の光学異方性層側に積層する。偏光膜の光学異方性層を積層した側と反対側の面に透明保護膜を形成することが好ましい。透明保護膜は、光透過率が80%以上であるのが好ましい。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはセルローストリアセテートフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0095】
[液晶表示装置]
本発明の位相差板の利用により、視野角が拡大された液晶表示装置を提供することができる。TNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、米国特許5805253号明細書および国際公開第96/37804号パンフレットに記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特許第2866372号公報に記載がある。
【実施例】
【0096】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
[DRO−3の合成]
下記スキームにしたがって合成した。
【0097】
【化28】

【0098】
(DRO−3Aの合成)
4−シアノ−4'−ヒドロキシビフェニル 25.0g、10−ブロモ−1−デカノール 20.5gおよび炭酸カリウム 21.8gの混合物に、N,N−ジメチルホルムアミド 200mlを加え、110℃で5時間攪拌した。冷却後、反応液に水 400mlを加え、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行うことで、DRO−3Aの結晶33.5gを得た。
【0099】
(DRO−3Bの合成)
DRO−3A 16.5gおよびトリエチルアミン 7.8mlをテトラヒドロフラン250mlに溶解させ、氷冷下でメタンスルホニルクロライド(MsCl) 4.0mlを滴下し、1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を濃縮し、カラムクロマトグラフィーを用いて精製を行うことで、DRO−3Bの結晶20.0gを得た。
【0100】
(DRO−3Cの合成)
3−フルオロ−4−シアノフェノール 137gをイソプロピルアルコール400mLに溶解させ、50%ヒドロキシルアミン水溶液 184mLを加え、60℃で3時間攪拌した。反応後、氷冷し、析出した結晶をイソプロピルアルコールで洗浄、乾燥し、DRO−3Cの結晶119gを得た。
【0101】
(DRO−3Dの合成)
1,3,5−ベンゼントリカルボン酸 40.0gに、塩化チオニル 200mLとN,N−ジメチルホルムアミド 1mLを加え、60℃で5時間攪拌した後に残った塩化チオニルを留去した。残渣をアセトニトリル 100mLに溶解させた。DRO−3C 81.7gおよびピリジン 55mLを、乾燥N,N−ジメチルアセトアミド 500mLに溶解させた溶液を氷冷し、10℃以下に保ちながら1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリドのアセトニトリル溶液を滴下した。室温にて30分間攪拌した後、100℃で1時間攪拌した。反応液を水4.5Lに加え、生じた沈殿物をろ過し、水、続いてメタノールで洗浄した。得られた残渣をテトラヒドフラン2Lに溶解させ、メタノール4Lを加えて攪拌すると結晶が析出した。析出した結晶をろ別してメタノールで洗浄し、DRO−3Dの結晶75.2gを得た。
【0102】
(DRO−3の合成)
DRO−3D 0.65g、DRO−3B 1.50g、ヨウ化ナトリウム 1.60gおよび炭酸カリウム 1.50gの混合物に、N,N−ジメチルアセトアミド 40mlを加え、70℃で2時間および80℃で3時間攪拌した。冷却後、反応液に水 150mlを加え、析出した結晶を濾取した。得られた結晶をカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行うことで、DRO−3の無色の結晶1.35gを得た。得られたDRO−3のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0103】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.25−1.45(24H、m)、1.40−1.55(12H、m)
1.75−1.90(12H、m)、4.02(6H、t)、4.07(6H、t)、6.80(3H、dd)、6.90(3H、dd)、6.98(6H、d)、7.52(6H、d)、7.63(6H、d)、7.68(6H、d)、8.15(3H、t)、9.22(3H、s)。
【0104】
得られたDRO−3の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行ったところ、温度を上げていき129℃付近で結晶相からネマチック液晶相に変わり、169℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、DRO−3は129℃から169℃の間でネマチック液晶相を呈することが分かった。
また、DRO−3をホメオトロピック配向させ、液晶相の複屈折性の正負の判断を行ったところ、正の複屈折性を有することが分った。すなわちDRO−3は棒状液晶性である。
【0105】
[実施例2]
[ディスコティック液晶化合物との混合]
(DII−2の合成)
実施例1のDRO−3Dより、定法に従い、無色のDII−2を合成した。得られたDII−2のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0106】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
0.85(9H、t)、1.25−1.35(12H、m)、1.35−1.45(6H、m)、1.70−1.80(6H、m)、4.10(6H、t)、6.80(3H、dd)、6.90(3H、dd)、8.15(3H、t)、9.20(3H、s)。
【0107】
得られたDII−2の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行ったところ、温度を上げていき141℃付近で結晶相からディスコティックネマティック液晶相に変わり、142℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、DII−2は141℃から142℃の間でディスコティックネマティック液晶相を呈することが分かった。
また、DII−2をホメオトロピック配向させ、液晶相の複屈折性の正負の判断を行ったところ、負の複屈折性を有することが分った。すなわちDII−2はディスコティック液晶性である。
【0108】
(DRO−3とDII−2の混合)
スライドガラス上に、DRO−3とDII−2の結晶を近傍に配置し、カバーグラスをかぶせ、175℃まで昇温後、175℃から降温しながらDRO−3とDII−2の混合領域を偏光顕微鏡を用いて観察した。その結果、DRO−3とDII−2が混合した全ての領域においてもネマチック相由来のテクスチャーが見られた。この結果より、正の複屈折性ネマチックのDRO−3と負の複屈折性ネマチックのDII−2の混合により得られるネマチック相は、二軸性ネマチック相であることが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(DI)で表される化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物。
【化1】

(一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、L1、L2およびL3は、それぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、H1、H2およびH3はそれぞれ独立に、二価の5員環環状基を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、一般式(DI−R)または一般式(DI−MG)を表すが、ただし、R1、R2およびR3の少なくとも1つは、一般式(DI−MG)であり;
一般式(DI−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)におけるH1〜H3側と結合する位置を表し、L21は単結合または二価の連結基を表し、Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基を表し、n1は0〜4の整数を表し、L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ2側と結合する位置を表し、L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよく、Q1は重合性基または水素原子を表し、n1が2以上のとき、複数個の−L21−Q2は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく;
一般式(DI−MG)
*−(−L31−Q3n2−L32−L33−MG
一般式(DI−MG)中、*は一般式(DI)におけるH1〜H3側と結合する位置を表し、L31は単結合または二価の連結基を表し、Q3は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基を表し、n2は0〜4の整数を表し、L32は、単結合、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ3側と結合する位置を表し、L33は、単結合または、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよく、MGは棒状液晶性基を表し、n2が2以上のとき、複数個の−L31−Q3は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
上記一般式(DI)において、H1、H2およびH3がそれぞれ独立に、下記一般式(DI−A)、下記一般式(DI−B)または下記一般式(DI−C)で表される二価の5員環環状基である請求項1に記載の液晶組成物。
【化2】

(一般式(DI−A)中、YA1およびYA2は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XAは、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)
【化3】

(一般式(DI−B)中、YB1およびYB2は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XBは、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)
【化4】

(一般式(DI−C)中、YC1およびYC2は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XCは、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)
【請求項3】
少なくとも一種の別の液晶化合物をさらに含有する請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記少なくとも一種の別の液晶化合物が、ディスコティック液晶相を発現する液晶化合物である請求項3に記載の液晶組成物。
【請求項5】
前記少なくとも一種の別の液晶化合物が、下記一般式(DII)で表される化合物である請求項3又は4に記載の液晶組成物。
【化5】

(一般式(DII)中、Y21、Y22およびY23は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、L21、L22およびL23は、それぞれ独立に単結合または二価の連結基を表し、H21、H22およびH23はそれぞれ独立に、下記一般式(DII−A)または下記一般式(DII−B)または下記一般式(DII−C)を表し;
【化6】

一般式(DII−A)中、YA21およびYA22は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XA2は、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DII)におけるL21〜L23側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DII)におけるR21〜R23側と結合する位置を表す;
【化7】

一般式(DII−B)中、YB21およびYB22は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XB2は、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DII)におけるL21〜L23側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DII)におけるR21〜R23側と結合する位置を表す;
【化8】

一般式(DII−C)中、YC21およびYC22は、それぞれ独立に炭素原子または窒素原子を表し、XC2は、酸素原子、硫黄原子、炭素原子または窒素原子を表す。*は上記一般式(DII)におけるL21〜L23側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DII)におけるR21〜R23側と結合する位置を表す;
21、R22、R23は、それぞれ独立に、下記一般式(DII−R)を表す;
一般式(DII−R)
*−(−L221−Q22n21−L222−L223−Q21
一般式(DII−R)中、*は上記一般式(DII)におけるH21〜H23側と結合する位置を表し、L221は単結合または二価の連結基を表し、Q22は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基を表し、n21は0〜4の整数を表し、L222は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ2側と結合する位置を表し、L223は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q21は重合性基または水素原子を表す。n21が2以上のとき、複数個の−L221−Q22は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
透明支持体の上に、少なくとも一層の光学異方性層を有する位相差板であって、該光学異方性層が請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶組成物から形成される光学異方性層であることを特徴とする位相差板。
【請求項7】
請求項6に記載の位相差板と偏光膜とを有することを特徴とする楕円偏光板。

【公開番号】特開2006−274133(P2006−274133A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97613(P2005−97613)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】