説明

液晶表示パネル用部材の作成方法及び液晶表示パネル用部材

【課題】表示部の外側の外枠部を表示部と段差のない方法で形成した液晶表示パネル部材の作成方法及び液晶表示パネル部材を提供する。
【解決手段】液晶表示パネルに用いられる部材の作成方法において、表示パネルの中央部の表示部の外側に設ける外枠部を作成する方法であって、表示パネル基材14の裏面に、表示部形状のマスクを介して、隠蔽性を有する蒸着層を単層または複数層形成し、蒸着層の表示部側をレーザー加工してザラツキのない内端を有する外枠部を作成することを特徴とする液晶表示パネル用部材の作成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話、高度情報端末、カーナビゲーション、電子書籍タブレット等に用いられる液晶表示パネル用部材の作成方法及び液晶表示パネル用部材において、液晶表示パネルの中央部の表示部の外側の外枠を作成する方法及び部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は携帯電話の表示部の一例を示したものである。図1(a)に示される携帯電話の表示パネル100は、表示部である内枠部1と、表示部の外側の外枠部2とで構成されている。また、図1(b)に示される携帯電話の表示パネル101の外枠部には例えば携帯電話会社を表すミラー文字3が施されている場合もある。
【0003】
表示パネルの基本的構成について図面により説明する。図2(a)は上記携帯電話の表示パネル100の断面の一部を模式的に示す図で、図2(b)は上記携帯電話の表示パネル101の断面の一部を模式的に示す図である。
【0004】
図2(a)に示される表示パネル100は、表示パネル基材4の裏面にインキ層6と接着層7が、また表面にはハードコート層8が設けられており、最上面には保護フィルム9が貼られている。
【0005】
図2(b)に示される表示パネル101は、表示パネル基材4の裏面にはミラー文字を施したミラー印刷層5と、インキ層6と、接着層7とが、また表面にはハードコート層8が設けられており、最上面には保護フィルム9が貼られている。
【0006】
表示パネル基材4として、ガラスシート、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)シート、PC(ポリカーボネート)シート等のいずれかが用いられる。
【0007】
ミラー印刷層5、インキ層6は一般的にはシルクスクリーン印刷によって形成されている。このインキ層6は表示パネルの意匠性を持たせるために隠蔽性や美粧性を有した層となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−225699号公報
【特許文献2】特開2010−44546号公報
【特許文献3】登録特許第38133270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図2に示される従来用いられている表示パネルでは、ミラー印刷層5は5〜7μmで、インキ層6は隠蔽性を確保するためにスクリーン印刷を数回まで重ねて加飾印刷する場合が多く、数μm〜25μm程度にまで厚くなる。
【0010】
そのため、表示部である内枠部1(以下、表示部)と、表示部の外側の外枠部2と段差は、図2(a)で示すミラー印刷層5のない表示パネルの場合は数μm〜25μmとなり、図2(b)で示すミラー印刷層5を有する表示パネルの場合は10〜30μm程度にまでなり、図3に示すように接着層7(層厚:数μm程度)を塗布しても、段差は埋めきれず(図3(a))、更にその下部にタッチパネル電極層10やRGB表示層11を設ける場合や(図3(b))や、タッチパネル機能のない表示パネルの場合にはRGB表示層11を設けるが(図3(c))、この場合に段差が原因となって表示部に気泡を抱き込んでしまい、不良品が発生してしまう問題がある。
【0011】
そこで本発明では、表示部の外側の外枠部2を表示部1と段差のない方法で形成した液晶表示パネル用部材の作成方法及び液晶表示パネル用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明の請求項1に係る発明は、液晶表示パネルに用いられる部材の作成方法において、
表示パネルの中央部の表示部の外側に設ける外枠部を作成する方法であって、
表示パネル基材の裏面に、表示部形状のマスクを介して、隠蔽性を有する蒸着層を単層または複数層形成し、
蒸着層の表示部側をレーザー加工してザラツキのない内端を有する外枠部を作成することを特徴とする液晶表示パネル用部材の作成方法である。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、液晶表示パネルに用いられる部材の作成方法において、
表示パネルの中央部の表示部の外側に設ける外枠部を作成する方法であって、
表示パネル基材の裏面に、隠蔽性を有する蒸着層を単層または複数層形成し、
前記単層または複数の蒸着層上にフォトレジストを塗布した後、フォトマスクを介してフォトレジストを露光、現像して外枠を作成することを特徴とする液晶表示パネル用部材の作成方法である。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、前記複数の蒸着層の内の1層を、インクジェット層に変えたことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示パネル用部材の作成方法である。
【0015】
本発明の請求項4に係る発明は、液晶表示パネルに用いられる部材において、
表示パネルの中央部の表示部の外側に外枠を備えた液晶表示パネル用部材であって、
表示パネル基材の裏面に、表示部形状のマスクを介して隠蔽性を有する蒸着層を単層または複数層設け、
蒸着層の表示部側をレーザー加工してザラツキのない内端を有する外枠部を備えたことを特徴とする液晶表示パネル用部材である。
【0016】
本発明の請求項5に係る発明は、液晶表示パネルに用いられる部材において、
表示パネルの中央部の表示部の外側に外枠部を備えた液晶表示パネル用部材であって、
表示パネル基材の裏面に、隠蔽性を有する蒸着層を単層または複数層設け、
前記単層または複数の蒸着層上にフォトレジストを塗布した後、フォトマスクを介してフォトレジストを露光、現像して得られた外枠部を備えたことを特徴とする液晶表示パネル用部材である。
【0017】
本発明の請求項6に係る発明は、前記複数の蒸着層の内の1層を、インクジェット層に変えたことを特徴とする請求項4または5に記載の液晶表示パネル用部材である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、表示部と段差の少ない隠蔽性のある外枠部を作成することが出来、その結果、タッチパネル電極層あるいはRGB表示層を設ける場合に気泡の抱き込みを発生することがなくなる。更に表示部形状のマスクを介して作成した外枠部の内端をレーザー加工することによって、またフォトレジストを塗布した後、フォトマスクを介してフォト
レジストを露光、現像して外枠を作成することによって、ザラツキのない外枠を作成することが出来るため、美粧性に優れた外枠部を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】携帯電話の表示パネルの一例を示した図。(a)は携帯電話の表示パネルを示す図。(b)は外枠部にミラー文字が施されている場合を示す図。
【図2】携帯電話の表示パネルの断面の一部を模式的に示す図。
【図3】従来の表示パネルの場合の問題を説明するための図。(a)は接着層を塗布しても、段差が埋めきれないことを示す図。(b)はタッチパネル電極層やRGB表示層を設ける場合を示す図。(c)はRGB表示層を設ける場合を示す図。
【図4】本発明による液晶表示パネル用部材を作成する方法を説明するための図。(a)は外枠部を得る場合を示す図。(b)は隠蔽性が足りない場合、第二蒸着層またはインクジェット層を加飾形成することを示す図。(c)は接着層を形成したことを示す図。
【図5】(a)は(図4(c))を上面から見た図。(b)はマスキングされた表示部の外枠部の内端の鋸歯状のザラツキを示す図。(c)はレーザー光線によって加工された内端を示す図。(d)は内端のザラツキPを示す図。
【図6】本発明に係る外枠をフォトリソグラフィー法によって作成する手順を示す図。
【図7】外枠部に形成されたアイコン部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る液晶表示パネル用部材の作成方法及び液晶表示パネル用部材を実施するための形態を説明する。
【0021】
図4は本発明による液晶表示パネル用部材110を作成する方法を説明するための図である。表示パネル用部材110は、ガラスシート、PMMAシート、PCシートのいずれかを用いたパネル基材14に蒸着層26−1、接着層17、ハードコート層18が設けられており、また最上面には保護フィルム19が貼られている。
【0022】
(実施例1)
本発明に係る蒸着層26−1は、先ず、パネル基材14に表示部をマスキングして、隠蔽を考慮した黒蒸着(例えばクロム蒸着)によって第一の蒸着層26−1を加飾形成して外枠部を得る(図4(a))。隠蔽性が足りない場合は、第二蒸着層またはインクジェット層26−2を加飾形成する(図4(b))。この場合の第二蒸着層またはインクジェット層26−2は、第一の蒸着層と同等又は同等以下の極薄加飾層である。
【0023】
次に、マスキングを剥離し、その後、接着材OCA(光学接着剤)を塗布しUV硬化を行って接着層17を形成する(図4(c))。
【0024】
図5(a)は(図4(c))を上面から見た図で、この場合、マスキングされた表示部30の外枠部31の内端32は鋸歯状のザラツキが見られる(図5(b))。このザラツキは、意匠性を悪くするため、以下に述べるレーザーによる微細加工を施す。
【0025】
そこで、近紫外レーザー、遠紫外レーザー、超短パルスレーザーなどのレーザー光線を外枠部31の内端32に沿って照射し、黒蒸着を溶かして内端32をザラツキのない内端32aに仕上げる(図5(c))。
【0026】
上記レーザー加工によれば、(図5(d))に示すザラツキの大きさ(山谷のピーク高さの範囲Pを指す)はサンプル数n=3で、蒸着直後が432μmであったのに対して、レーザー加工後は225μmと滑らかになり、レーザー加工による効果が認められ、美粧性に優れた外枠が得られた。
【0027】
また、上記第一の蒸着層26−1は、2420〜3330Å程度であり、第二の蒸着層またはインクジェット層26−2は第一の蒸着層と同等、又はより薄いため、UV硬化OCA接着剤(厚み:数μm)をその後全面塗布しても、パネル基材14の裏面の表示部と外枠部との厚み段差が生じることはない。
【0028】
従来のスクリーン印刷によって得られた外枠部を備えた液晶表示用部材と上記方法によって得られた外枠部を備えた液晶表示用部材の0.5mmΦ以上の気泡の抱き込み不良の発生回数を比較した結果、サンプル数n=10に対して従来のスクリーン印刷によって得られた外枠部を備えた液晶表示用部材が5回であったのに対して、上記方法によって得られた外枠部を備えた液晶表示用部材の場合には2回であり、不良発生の頻度が少ないことが認められた。
【0029】
(実施例2)
上記では、第一の蒸着層26−1、更に第二の蒸着層26−2をマスクを用いて形成したが、図6に示すように、ガラスシート、PMMAシート、PCシートのいずれかを用いたパネル基材14の裏面に蒸着層36を設けた(図6(a))後、蒸着層36の全面にフォトレジスト膜を37を塗布し(図6(b))、次に表示枠に相当するフォトマスク38を介して露光した後(図6(c))、現像(図6(d))、レジスト膜37を剥離(図6(e))することによって外枠を作成しても良い。この場合の外枠の内端はザラツキのないものが得られ、上記レーザー加工を必要としない。
【0030】
尚、上記説明ではクロム蒸着によって黒色に加飾形成する外枠部を例示したが、これに限定されず、蒸着膜の設計を行い、蒸着の材料種類や膜厚や層数を決めることによって、有色でしかも美粧性、隠蔽性に優れた外枠部を加飾形成することが出来る。
【0031】
また、蒸着による外枠部の形成であるので図7に示すような外枠部31に形成された例えばアイコン部40を有する静電容量のタッチパネルにおいて、容易にタッチレスポンスを得ることが出来る。
【0032】
このようにして、段差のない隠蔽性、美粧性に優れた蒸着加飾パネルを得ることが出来る。
【0033】
以上のように本発明による液晶表示パネル用部材の作成方法によれば、隠蔽性、美粧性の高い液晶表示パネル用部材が得られる。また、パネル基材の裏面に形成される表示部と外枠部との段差は、従来に比べて格段に小さくなり、パネルに加工する際の歩留まり向上が可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・内枠部(表示部)
2・・・外枠部
3・・・ミラー文字
4・・・表示パネル基材
5・・・ミラー印刷層
6・・・インキ層
7・・・接着層
8・・・ハードコート層
9・・・保護フィルム
10・・・タッチパネル電極層
11・・・RGB表示層
14・・・パネル基材
17・・・接着層
18・・・ハードコート層
19・・・保護フィルム
26−1・・・第一の蒸着層
26−2・・・第二蒸着層またはインクジェット層
30・・・マスキングされた表示部
31・・・マスキングされた表示部の外側の外枠部
32・・・外枠部31の内端
32a・・・ザラツキのない内端
37・・・レジスト膜
38・・・フォトマスク
40・・・アイコン部
100、101・・・携帯電話の表示パネル
110・・・本発明による液晶表示パネル用部材
P・・・山谷のピーク高さの範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示パネルに用いられる部材の作成方法において、
表示パネルの中央部の表示部の外側に設ける外枠部を作成する方法であって、
表示パネル基材の裏面に、表示部形状のマスクを介して、隠蔽性を有する蒸着層を単層または複数層形成し、
蒸着層の表示部側をレーザー加工してザラツキのない内端を有する外枠部を作成することを特徴とする液晶表示パネル用部材の作成方法。
【請求項2】
液晶表示パネルに用いられる部材の作成方法において、
表示パネルの中央部の表示部の外側に設ける外枠部を作成する方法であって、
表示パネル基材の裏面に、隠蔽性を有する蒸着層を単層または複数層形成し、
前記単層または複数の蒸着層上にフォトレジストを塗布した後、フォトマスクを介してフォトレジストを露光、現像して外枠を作成することを特徴とする液晶表示パネル用部材の作成方法。
【請求項3】
前記複数の蒸着層の内の1層を、インクジェット層に変えたことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示パネル用部材の作成方法。
【請求項4】
液晶表示パネルに用いられる部材において、
表示パネルの中央部の表示部の外側に外枠を備えた液晶表示パネル用部材であって、
表示パネル基材の裏面に、表示部形状のマスクを介して隠蔽性を有する蒸着層を単層または複数層設け、
蒸着層の表示部側をレーザー加工してザラツキのない内端を有する外枠部を備えたことを特徴とする液晶表示パネル用部材。
【請求項5】
液晶表示パネルに用いられる部材において、
表示パネルの中央部の表示部の外側に外枠部を備えた液晶表示パネル用部材であって、
表示パネル基材の裏面に、隠蔽性を有する蒸着層を単層または複数層設け、
前記単層または複数の蒸着層上にフォトレジストを塗布した後、フォトマスクを介してフォトレジストを露光、現像して得られた外枠部を備えたことを特徴とする液晶表示パネル用部材。
【請求項6】
前記複数の蒸着層の内の1層を、インクジェット層に変えたことを特徴とする請求項4または5に記載の液晶表示パネル用部材。

【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−25297(P2013−25297A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163219(P2011−163219)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】