説明

液晶表示素子

【課題】本発明が解決しようとする技術課題は、観察側から遠い液晶層の反射効率を高くすることで、色バランスの良い液晶表示素子を提供することである。
【解決手段】コレステリック相を示す第1の液晶調光層と、コレステリック相を示す第2の液晶調光層とを有し、観察側からこの順に積層された液晶表示素子であって、第1の液晶の液滴の直径の平均値が、第2の液晶の液滴の直径の平均値より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ネマティック液晶にカイラル材を添加することにより、室温においてコレステリック相を示すようにしたカイラルネマティック液晶組成物を用いた液晶表示素子が知られている。そのような液晶表示素子においては、カイラルネマティック液晶組成物を挟む一対の電極間に高低のパルス電圧(駆動電圧)を印加することによって液晶をプレーナー(PL)配向状態とフォーカルコニック(FC)配向状態またはホメオトロピック(Homeo)状態とに切り替えて表示が行われる。PL配向状態とFC配向状態の2状態を無電源で維持できるため表示の書き換え時以外は電力を供給する必要がなく、低消費電力の表示素子を提供することが可能である。PL配向状態でカイラルネマティック液晶は棒状の液晶分子が平行に配列した層が螺旋状に重なった構造をとっており、その螺旋ピッチによって決まる特定の波長の光を選択反射し、それ以外の波長の光は透過させる性質をもっている。このため液晶表示素子の背面に光吸収層を設けることで選択反射に由来する色と黒の間で表示を切り替えることができる。赤・緑・青に対応する波長の光を反射するように螺旋ピッチを調整したカイラルネマティック液晶組成物を一対の基板に挟持した液晶表示素子を積層することで加法混色によりフルカラー表示や白黒表示が可能となる。しかし、一対の基板に液晶を挟持した素子を3層積層すると、柔軟性に欠け、屈曲したときに割れや剥がれが生じるという問題がある。
【0003】
近年、このような問題点に対して、特許文献1や特許文献2にみられるように、カイラルネマティック液晶を高分子樹脂中に分散させた塗布液を基板上に塗布して形成した調光層を有する分散塗布型カイラルネマティック液晶表示素子の研究がされている。
【0004】
この塗布型カイラルネマティック液晶表示素子は、樹脂シート基板の上に電極層や液晶層を直接塗布又は蒸着して積層形成できるため、柔軟で屈曲に強い、各層を塗布による作成が可能で低コストに作成できる、1つの基板上に複数の液晶層を直接積層でき多色化に適している、といった特徴を有している。また、カイラルネマティック液晶を封入したマイクロカプセルを基板上に塗布して形成した調光層を有する液晶表示素子も知られている。
【特許文献1】米国特許第6585849号公報
【特許文献2】米国特許第6690447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示す方法で作製した積層型表示素子では観察側から遠い液晶層ほど光利用効率が悪くなるため反射率が低くなる。そのため各層を着色状態にしたとき色バランスが悪くなると言う問題が発生する。
【0006】
従って、本発明が解決しようとする技術課題は、観察側から遠い液晶層の反射効率を高くすることで、色バランスの良い液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成により上記課題を達成することができる。
【0008】
1.
少なくとも、20℃でコレステリック相を示す第1の液晶の液滴を分散した第1の液晶調光層と、20℃でコレステリック相を示す第2の液晶の液滴を分散した第2の液晶調光層とを有し、観察側からこの順に積層された液晶表示素子であって、前記第1の液晶の液滴の直径の平均値が、前記第2の液晶の液滴の直径の平均値より小さいことを特徴とする液晶表示素子。
【0009】
2.
前記第1の液晶と前記第2の液晶は互いに選択反射波長が異なることを特徴とする1に記載の液晶表示素子。
【0010】
3.
前記第1の液晶と前記第2の液晶は互いに螺旋ねじれの方向が異なることを特徴とする1又は2に記載の液晶表示素子。
【0011】
4.
前記第1の液晶の選択反射波長は前記第2の液晶の選択反射波長より短いことを特徴とする1乃至3のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【0012】
5.
前記第1の液晶調光層と前記第2の液晶調光層との間に20℃でコレステリック相を示す第3の液晶が液滴として分散された第3の液晶調光層が設けられており、前記第3の液晶の液滴の直径の平均値は前記第1の液晶の液滴の直径の平均値以上で、前記第2の液晶の液滴の直径の平均値以下であることを特徴とする1乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【0013】
6.
前記第3の液晶の選択反射波長は前記第1の液晶の選択反射波長より長く前記第2の液晶の選択反射波長より短いことを特徴とする5に記載の液晶表示素子。
【0014】
7.
前記第1〜第3の液晶は、選択反射波長のピーク値が、400〜500nmにある青色反射液晶、500〜580nmにある緑色反射液晶、580〜610nmにある黄色反射液晶、610〜700nmにある赤色反射液晶から選ばれることを特徴とする1乃至6のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【0015】
8.
前記第1〜第3の液晶の液滴がマイクロカプセル壁により被覆されていることを特徴とする1乃至7のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【0016】
9.
前記第1〜第3の液晶がネマティック液晶およびカイラル材からなることを特徴とする1乃至8のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【0017】
10.
前記第1〜第3の液晶を駆動するための電極が設けられていることを特徴とする1乃至9のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
に変更願います。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、観察側から順に第1の液晶調光層、第2の液晶調光層が積層された層を有する液晶表示素子であって、第1の液晶の液滴の直径の平均値が、第2の液晶の液滴の直径の平均値より小さくしたので、第1の液晶調光層からの反射率と第2の液晶調光層からの反射率を調整すること可能となり、観察側から遠い液晶調光層の反射効率を高くすることで、色バランスの良い液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である液晶表示素子の断面図である。図1に示すようにこの液晶表示素子10は、透明基体42の上にストライプ状の電極32が形成されている。この電極32の上に高分子体に第2の液晶2の液滴を分散した第2の液晶調光層22が形成されている。この第2の液晶調光層22の上には高分子体に第1の液晶1の液滴を分散した第1の液晶調光層21が形成されている。この第1の液晶調光層21の上にはストライプ状の電極31が電極32とクロスするように形成されている。電極31の上には透明基板41が形成されており、透明基板41側が観察側となっている。電極31と電極32には、液晶表示素子10を駆動するための電源60が接続されている。また、透明基板42の電極32が形成されている面と反対側の面には、黒色の光吸収層50が形成されている。この液晶表示素子10を用いて、白黒表示を行うことができる。
【0021】
この液晶表示素子10において、第1の液晶1の液滴の直径の平均値と、前記第2の液晶2の液滴の直径の平均値が互いに異なっている。このような関係にすることで第1の液晶調光層21と第2の液晶調光層22での光の反射効率を制御することができ、各層の反射率に依存する色バランスを調製することができる。
【0022】
また、第1の液晶1の液滴の直径の平均値が、前記第2の液晶2の液滴の直径の平均値より小さい。このような関係にすることで、観察側から遠い層になるに従い光の利用効率が低下し、その層での反射率が低下するという問題に対して、第2の液晶2の液滴の直径を大きくすることにより、第2の液晶調光層22の反射率を第1の液晶調光層21の反射率に近づけることができ、色バランスをとることができる。その結果、純粋な白色に近づけることができる。このような効果が得られる理由としては、液滴またはカプセルの直径が大きくなると各液晶層の選択反射の効率が高まることが挙げられる。また、カプセルの直径が大きくなると選択反射に寄与していない、液滴またはカプセル間のバインダー領域や、カプセルの被膜および被膜近傍の液晶の領域が、相対的に小さくなり選択反射に寄与する領域が増えることで、選択反射の効率が高まる。
【0023】
また、第1の液晶1と第2の液晶2の選択反射波長が異なることが好ましい。このようにすることで、白色表現ができると共に、色バランスを取ることができ、より純粋な白色を形成できる。
【0024】
また、第1の液晶1と第2の液晶2は互いに螺旋ねじれの方向が異なることが好ましい。このようにすることで、第1の液晶調光層21で反射に用いられないもう一方の円偏光の光を第2の液晶調光層22で用いることができ、光の利用効率が向上する。
【0025】
また、コレステリック相を示す液晶が選択反射するときの一つの特徴として、選択反射波長域以外の波長の光の透過性を挙げることができる。選択反射波長域より長い波長の光と、短い波長の光を比べた場合、長い波長の光の方が透過率は高くなる。したがって、選択反射波長が短い液晶調光層ほど観察側に近く配置することで、光の利用効率を高めることができる。よって、第1の液晶1の選択反射波長は第2の液晶2の選択反射波長より短いことが好ましい。このようにすることで、第2の液晶調光層22での反射効率をより高めることができ、より色バランスの良い白色を表示することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、第1の液晶調光層21と第2の液晶調光層22との間に電極を形成していないが、その間に電極を形成し、第1の液晶調光層21と第2の液晶調光層22とを別々に駆動するようにしても良い。
【0027】
図2に本発明の別の実施形態を示す。図2に示す液晶表示素子11は、図1に示す液晶表示素子10の第1の液晶調光層21と第2の液晶調光層22との間に第3の液晶3の液滴を高分子体に分散した第3の液晶調光層23を形成したものである。他の構成は、液晶表示素子10と同様にした。この液晶表示素子11は白色表示、又はマルチカラー表示を行うことができる。
【0028】
この液晶表示素子11において、第3の液晶3の液滴の直径の平均値は第1の液晶1の液滴の直径の平均値以上で、第2の液晶2の液滴の直径の平均値以下であることが好ましい。このようにすることで、観察側から遠い液晶調光層ほど光の利用効率が低下し、反射率が低くなると言う問題を解決し、各液晶調光層の反射率をほぼ等しくなるように制御することができ、色バランスを取ることができる。
【0029】
また、第3の液晶3の選択反射波長は、第1の液晶1の選択反射波長より長く、第2の液晶の選択反射波長より短いことが好ましい。このように選択反射波長が短い液晶調光層ほど観察側に近く配置することで、光の利用効率を高めることができる。
【0030】
なお、図2に示す液晶表示素子11では、各液晶調光層は、電極31と32により一度に駆動するようにしているが、各液晶調光層の間に電極を形成し、それぞれの液晶調光層を個別に駆動するようにしても良い。
【0031】
ところで上記の2つの実施形態の液晶表示素子10、11では、液晶の液滴を高分子体に分散したものを用いたが、分散される液晶の液滴をマイクロカプセル壁により被覆したものを用いてもよい。マイクロカプセル壁を被覆した液滴を用いることにより、より製造時の取り扱いが容易となる。
【0032】
次に、本発明に係る液晶表示素子の各構成要素の詳細について、順次説明する。
(液晶調光層)
本発明に係る各液晶調光層は、少なくとも、20℃でコレステリック相を示す液晶の液滴又は、マイクロカプセル壁により被覆されている液滴がバインダーに分散したものからなる。液滴の平均直径としては、1μm〜100μmのものが好ましい。1μm未満の小さな液滴になると、平均径の制御が難しくなる。また、100μmを越えると、平均径制御による反射率の制御が困難になる。
【0033】
液晶調光層の構成要素を以下に示す。
(バインダー)
本発明に係るバインダーとしては水溶性の高分子バインダーが用いられ、具体的には下記に示すバインダーが好ましく用いられる。
【0034】
本発明において好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、カゼイン、デンプン、セルロースエステル類、が挙げられる。これらバインダーは2種以上を併用して用いてもよい。
【0035】
本発明に係るバインダーは、さらに色素または/かつ紫外線吸収剤を添加してもよい。添加される色素は、表示のコントラストや色バランスを改善するものである。アゾ化合物、キノン化合物、アントラキノン化合物等、あるいは、2色性色素等、従来知られている各種の色素が使用可能である。添加される紫外線吸収剤は、バインダーや液晶組成物の紫外線劣化、例えば経時に伴う変退色や応答性の変化等を防止するものである。ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリシレート化合物等の材料が使用可能である。その他に酸化防止剤、光安定剤などを添加してもよい。添加量は、バインダー樹脂の質量に対し、5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。
【0036】
本発明に係るバインダーは、特に対向電極を用いる場合、分散型液晶含有層の膜強度を確保する為に重要であり、バインダーと共に膜厚を一定化するため、樹脂柱構造物やスペーサー粒子を用いることも可能であるが、工程の簡略化からそれらは特に使用しないことが好ましい。
【0037】
本発明に係る実施形態に好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールやポリビニルアルコール誘導体等も含まれる。
【0038】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられる。ケン化度は50〜100%のものが好ましく、60〜99.5%のものが特に好ましい。含有されている酢酸ナトリウム等のイオン性物質は少ないことが望ましく、2%以下、特に0.5%以下のものが好ましい。
(液晶)
本発明に係る液晶(以下、液晶組成物ともいう)としては、コレステリック相を示す液晶組成物を含むことが好ましい。
【0039】
カイラルネマティック液晶はコレステリック相を示す液晶の代表的なもので、ネマティック液晶に所定量のカイラル材を添加することによって得られる。
【0040】
ネマティック液晶としては、特に制限されず、従来から液晶表示素子の分野で知られているネマティック液晶が使用可能である。そのようなネマティック液晶材料としては、例えば、液晶性エステル化合物、液晶性ピリミジン化合物、液晶性シアノビフェニル化合物、液晶性トラン化合物、液晶性フェニルシクロヘキサン化合物、液晶性ターフェニル化合物、ならびにフッ素原子、フルオロアルキル基およびシアノ基等の極性基を有する他の液晶性化合物、およびそれらの混合物等が挙げられる。
【0041】
カイラル材としては、液晶表示素子の分野で従来から知られている種々のものが使用可能である。例えば、コレステリック環を有するコレステリック化合物、ビフェニル骨格を有するビフェニル化合物、ターフェニル骨格を有するターフェニル化合物、2つのベンゼン環がエステル結合によって連結されてなる骨格を有するエステル化合物、シクロヘキサン環がベンゼン環に直接的に連結されてなる骨格を有するシクロヘキサン化合物、ピリミジン環がベンゼン環に直接的に連結されてなる骨格を有するピリミジン化合物、2つのベンゼン環がアゾキシ結合またはアゾ結合によって連結されてなる骨格を有するアゾキシまたはアゾ化合物等が挙げられる。
【0042】
そのようなカイラル材としては、例えば、下記化学構造式(C1)〜(C7)であらわされる化合物などがある。
【0043】
【化1】

【0044】
カイラル材の含有量は、特に制限されず、通常、ネマティック液晶およびカイラル材の合計量に対して3〜40質量%である。
【0045】
液晶組成物には、紫外線吸収剤等の添加剤をさらに添加してもよい。紫外線吸収剤は、液晶組成物の紫外線劣化、例えば経時に伴う退色や応答性の変化等を防止するものである。例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリシレート化合物等の材料が使用可能である。添加量は、ネマティック液晶およびカイラル材の合計量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。
【0046】
このような液晶組成物は各材料を所定の比率で混合して得られる。液晶組成物は所望により、イオン交換樹脂・吸着剤等と接触させて精製を行い水分や不純物を除去した後で、素子の製造に用いるとよい。
【0047】
このカイラルネマティック液晶は、一般的に、棒状の液晶分子がねじれた配列をなし、コレステリック相を示している。この液晶に光が入射すると、ヘリカル軸に対して平行な方向から光が入射した場合、λ=npで示される波長の光を選択反射する(プレーナー状態)。ここで、λは波長、nは液晶分子の平均屈折率、pは液晶分子が360°ねじれている距離である。一方、ヘリカル軸に対して垂直な方向から光が入射した場合、光は反射することなく透過する(フォーカルコニック状態)。この選択反射及び透過を利用して表示が行われる。
【0048】
メモリー性を有する反射型液晶表示体の動作モードとしては、テクニカルペーパーSID国際シンポジューム要約(SID International Symposium Digest of Technical Paper)第29巻、897頁に開示されている。この動作モードは、カイラルネマティック液晶の配向状態をプレーナー状態(光の選択反射状態)及びフォーカルコニック状態(光の透過状態)のいずれかに切り替えて表示を行う方式である。プレーナー状態及びフォーカルコニック状態は、それぞれ安定な状態であるため、一旦液晶をいずれかの状態にセットすれば、外力が加わらない限り、半永久的にその状態を維持する。即ち、画像を一旦表示すれば電源を切っても表示された画像がそのまま維持されるメモリー性を備えた反射型液晶表示素子として有用である。本発明に用いられる液晶組成物は、マイクロカプセルに内包させた状態で用いることができる。
【0049】
本発明に用いることができるマイクロカプセルの製法としては、コアセルベーション法、界面重合法、in−situ法等の公知の方法を用いることができる。これらの中でコアセルベーション法による製法は油相である液晶組成物への化学的影響が少なく好ましく用いることができる。
【0050】
また、界面重合法は、ポリアミン、多価フェノール等と多塩基酸ハライド、ポリイソシアネート等を水相と油相界面で重合してマイクロカプセル壁を形成することができる。
【0051】
また、in−situ重合方法としては、尿素−メラミン等に用いられるアミド樹脂、フェノール樹脂の単独またはその共重合体をホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドで架橋してマイクロカプセルを形成させることができる。
【0052】
マイクロカプセル壁には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニルデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、アクリル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ジエン樹脂、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアリレート、アラミド、ポリイミド、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−キシレン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリヒダントイン、ポリパラバン酸、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサジアゾール、ポリキノキサリン等を共存させることにより、マイクロカプセル壁強度を向上させることができる。
【0053】
本発明に係るマイクロカプセルは、溶液系で調製した後、乾燥して分級することもできる。乾燥の方法としては、スプレー乾燥、ロータリー乾燥、バンド乾燥等が挙げられ、分級の方法としては、比重法、遠心法、慣性法、ふるい法などが挙げられる。
(基板)
上記の液晶表示素子に用いることができる基板は、透光性を有していることが好ましい。透光性を有する基板としては、ガラス基板、ならびにポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレートおよびポリエチレンテレフタレート等のフレキシブル基板を使用することができる。素子の軽量化の観点からはフレキシブル基板を使用することが好ましい。基板としてフレキシブル基板を用いると、軽量で薄型の素子を作製でき、また破損(割れ)を抑えることができる。
(電極)
本発明に係る液晶表示素子においては、液晶層より観察側に位置する電極には透光性を有する電極を用いるのがよい。透光性を有する電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、フッ素添加酸化錫(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、ビスマス珪素酸化物(BSO)、3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)などが挙げられる。表面抵抗値は、300Ω/□以下のものが好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0054】
背面側の電極には金属電極も好ましく用いることができる。金属電極としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス、及びそれらの合金等、公知の金属種を用いることができる。
【0055】
電極パターンの形成は、蒸着法、CVD法、インクジェット法、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、リソグラフィ法、レーザーエッチング法等の公知の方法を単独もしくは組み合わせて用いることにより形成することができる。
【実施例】
【0056】
以下に本発明の実施例を示す。
(液晶液滴の粒径測定)
表示層塗布液中をスライドガラスに取り、CCDカメラ付き光学顕微鏡を用いてクロスニコル下に観察し、観察画像をパソコンに取り込んで画像処理ソフトで2値化して液晶液滴の個数と占める面積から粒径の平均値を求めた。
(素子の表示特性の測定)
図3に示すパルス(この駆動波形では前段のパルスで液晶を一旦プレーナー状態にリセットしている。a,bの値については各実施例の中に示した)を印加して表示素子を駆動し、フォーカルコニック状態とプレーナー状態のそれぞれにおいて明るさを示すY値を分光測色計(CM3700d;コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定した。
【0057】
また同時に表示素子のプレーナー状態おける分光分布曲線を測定して白色度を求めた。すなわち測定した分光分布曲線からCIE1931表色系の色度座標(x,y)を求め、標準の光D65(x=0.3127,y=0.3290)からの距離(d)を次式により算出した。
【0058】
距離(d)は白さを表すひとつのパラメーターであり、距離(d)が小さいほど白色であることを示す。距離(d)については以下の知見が得られている。
【0059】
d<0.02;純粋な白色と見なすことができる;◎
0・02≦d<0.04;ほぼ白色と見なすことができる;○
0.04≦d<0.05;光源により、白色と見なされない場合がある;×
0.05≦d;明らかに着色していると見なされる;××
よって、d<0.04、さらに望ましくはd<0.02に設定するのがよい。
【0060】
なお各値の測定温度は25℃であった。
〈塗布液の調製〉
(塗布液1:表示層塗布液Y1の調製)
ネマティック液晶(BL035;メルク社製)81質量部、カイラル材(CNL611L;ADEKA社製)19質量部を混合し、加熱攪拌して均一な状態になった後冷却して、カイラルネマティック液晶組成物(選択反射波長590nm)を得た。このカイラル剤は左螺旋ねじれを誘起する。
【0061】
このカイラルネマティック液晶10質量部と、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物の75%酢酸エチル溶液(タケネートD−110N;三井化学ポリウレタン社製)1質量部を酢酸エチル100質量部中に溶解して油相組成物を調製した。これを、2%ポリビニルアルコール水溶液150質量部中に投入し、櫛歯式分散機で2分間攪拌して乳化した。この乳化液を60℃で3時間攪拌した後、室温まで冷却し、平均粒径15μmのマイクロカプセル分散液を得た。このマイクロカプセル分散液5質量部に10%ポリビニルアルコール水溶液1質量部を添加して表示層塗布液Y1を得た。
(塗布液2:表示層塗布液B1の調製)
ネマティック液晶(BL006;メルク社製)81質量部、カイラル材(MLC6248とR1011の2:1混合物;いずれもメルク社製)19質量部を用いて得たカイラルネマティック液晶組成物(選択反射波長470nm)を使用し、櫛歯式分散機での撹拌時間を3分間にして平均粒径10μmのマイクロカプセル分散液を得た以外は塗布液1と同様にして表示層塗布液B1を得た。このカイラル剤は右螺旋ねじれを誘起する。
(塗布液3:表示層塗布液G1の調製)
ネマティック液晶(BL006;メルク社製)83質量部、カイラル材(MLC6247とS1011の2:1混合物;いずれもメルク社製)17質量部を用いて得たカイラルネマティック液晶組成物(選択反射波長550nm)を使用した以外は塗布液2と同様にして平均粒径10μmの表示層塗布液G1を得た。このカイラル剤は左螺旋ねじれを誘起する。
(塗布液4:表示層塗布液R1の調製)
ネマティック液晶(BL006;メルク社製)86質量部、カイラル材(MLC6248とR1011の2:1混合物;いずれもメルク社製)14質量部を用いて得たカイラルネマティック液晶組成物(選択反射波長680nm)を使用した以外は塗布液1と同様にして平均粒径15μmの表示層塗布液R1を得た。このカイラル剤は右螺旋ねじれを誘起する。
(塗布液5:表示層塗布液Y2の調製)
塗布液1と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。
【0062】
一方、塗布液1で使用したカイラル材とは逆の螺旋ねじれを誘起するカイラル材(CNL611R;ADEKA社製)を使用した以外は塗布液1と同様にして平均粒径15μmのマイクロカプセル分散液を得た。このカイラル剤は右螺旋ねじれを誘起する。
【0063】
これらのマイクロカプセル分散液各2.5質量部に10%ポリビニルアルコール水溶液1質量部を添加して表示層塗布液Y2を得た。
(塗布液6:表示層塗布液B2の調製)
塗布液2と同様にしてマイクロカプセル分散液を得た。
【0064】
一方、塗布液2で使用したカイラル材とは逆の螺旋ねじれを誘起するカイラル材(MLC6247とS1011の2:1混合物;いずれもメルク社製)を使用した以外は塗布液2と同様にして平均粒径10μmのマイクロカプセル分散液を得た。このカイラル剤は左螺旋ねじれを誘起する。
【0065】
これらのマイクロカプセル分散液各2.5質量部に10%ポリビニルアルコール水溶液1質量部を添加して表示層塗布液B2を得た。
(塗布液7:表示層塗布液Y3の調製)
塗布液1で使用したカイラル材とは逆の螺旋ねじれを誘起するカイラル材(CNL611R;ADEKA社製)を使用した以外は塗布液1と同様にして平均粒径15μmのマイクロカプセル分散液を得た。このカイラル剤は右螺旋ねじれを誘起する。
【0066】
このマイクロカプセル分散液5質量部に10%ポリビニルアルコール水溶液1質量部を添加して表示層塗布液Y3を得た。
(塗布液8:表示層塗布液B3の調製)
塗布液2で使用したカイラル材とは逆の螺旋ねじれを誘起するカイラル材(MLC6247とS1011の2:1混合物;いずれもメルク社製)を使用した以外は塗布液2と同様にして平均粒径10μmのマイクロカプセル分散液を得た。このカイラル剤は左螺旋ねじれを誘起する。
【0067】
このマイクロカプセル分散液5質量部に10%ポリビニルアルコール水溶液1質量部を添加して表示層塗布液B3を得た。
(塗布液9:表示層塗布液B4の調製)
塗布液2において櫛歯式分散機での撹拌時間を2分間にして平均粒径15μmのマイクロカプセル分散液を得た以外は同様にして表示層塗布液B4を得た。このカイラル剤は右螺旋ねじれを誘起する。
(塗布液10:表示層塗布液Y4の調製)
塗布液1において櫛歯式分散機での撹拌時間を3分間にして平均粒径10μmのマイクロカプセル分散液を得た以外は同様にして表示層塗布液Y4を得た。このカイラル剤は左螺旋ねじれを誘起する。
(塗布液11:表示層塗布液G2の調製)
塗布液3において櫛歯式分散機での撹拌時間を2.5分間にして平均粒径12μmのマイクロカプセル分散液を得た以外は同様にして表示層塗布液G2を得た。
(塗布液12:表示層塗布液G3の調製)
塗布液3において櫛歯式分散機での撹拌時間を2分間にして平均粒径15μmのマイクロカプセル分散液を得た以外は同様にして表示層塗布液G3を得た。
【0068】
以上の塗布液の一覧表を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
〈実施例及び比較例〉
(実施例1〜8、比較例1〜3)
全面にインジウムスズ酸化物からなる透明電極が形成されたポリエーテルスルホン基板上に塗布液1〜12で調製した表示層塗布液を第1層目から順にそれぞれアプリケータで塗布して乾燥させ、各液晶調光層を形成した。1層塗布・乾燥するごとに触針式表面形状測定器Dektak3030(ビーコインスツルメンツ社製)を用いて測定した膜厚から、各層の厚みはいずれも6μm(乾燥膜厚)と求められた。次に導電性ペースト(DW−250H−5;東洋紡績社製)をスクリーン印刷法により塗布・乾燥させて電極とした。さらに水性黒色顔料インクと5%ポリビニルアルコール水溶液の1:1混合液をアプリケータで塗布・乾燥させて光吸収層(厚み2μm)を形成し、液晶表示素子を完成させた。
【0071】
上記液晶表示素子にあっては、電極間に図3に示すパルス電圧として、フォーカルコニック状態(黒表示状態)となるa、bの電圧値を印加し、そのときのY値を測定した。また電極間にプレーナー状態(白表示状態)となるa、bの電圧値を印加し、Y値を測定した。またこの時の距離(d)を測定した。
【0072】
実施例1〜8及び比較例1〜3は、表2に示すような層構成で、表1の塗布液を用いて、液晶表示素子を作製した。
【0073】
また、実施例1〜8及び比較例1〜3の測定値、及び評価結果も同時に表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
表2の結果から、実施例1では、第1の液晶の液滴の直径の平均値が、第2の液晶の液滴の直径の平均値より小さいことから、第2の液晶調光層からの反射光と第1の液晶調光層の反射光との色バランスが良く、白色の純度の高い、明るい液晶表示素子を作製することができた。
【0076】
また、実施例1と実施例5との結果から、第1の液晶と第2の液晶は互いに螺旋ねじれの方向が異なることが好ましいことが分かる。
【0077】
また、実施例1と実施例6との結果から、第1の液晶の選択反射波長は第2の液晶の選択反射波長より短いことが、より好ましいことが分かる。
【0078】
実施例2と実施例7、実施例8の結果から、第1の液晶調光層と第2の液晶調光層との間に第3の液晶調光層を設け、第3の液晶の液滴の直径の平均値が第1の液晶の液滴の直径の平均値以上で、第2の液晶の液滴の直径の平均値以下であることが好ましいことが分かる。また、より好ましいのは、実施例7に示す観察側から順に各調光層の液晶の液滴の直径の平均値が大きくなるのが良いといえる。
【0079】
また、実施例4のように4層の構成とし、第1層と第2層は、液晶の選択反射波長と液滴の直径の平均値が同じで、螺旋ねじれの方向が逆であり、第3層と第4層も、液晶の選択反射波長と液滴の直径の平均値が同じで、螺旋ねじれの方向が逆の構成とし、第1層と第2層の選択反射波長が、第3層と第4層の選択反射波長よりも短く、第1層と第2層の液晶の液滴の直径の平均値が、第3層と第4層の液晶の液滴の直径の平均値よりも小さくなるようにすることで、明るく、白色の純度の良い液晶表示素子を得ることができる。
【0080】
比較例1〜3としては、第1の液晶の液滴の直径の平均値が第2の液晶の液滴の直径の平均値より小さくなく、等しいか又は大きいために白色の純度が悪いことが分かる。
【0081】
以上のように本発明によれば、明るく、白色の純度が高い、色バランスの良い液晶表示素子を提供できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態である液晶表示素子の断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態である液晶表示素子の断面図である。
【図3】液晶表示素子を駆動するための電圧駆動波形を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 第1の液晶
2 第2の液晶
3 第3の液晶
10、11 液晶表示素子
21 第1の液晶調光層
22 第2の液晶調光層
23 第3の液晶調光層
31、32 電極
41、42 基板
50 光吸収層
60 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、20℃でコレステリック相を示す第1の液晶の液滴を分散した第1の液晶調光層と、20℃でコレステリック相を示す第2の液晶の液滴を分散した第2の液晶調光層とを有し、観察側からこの順に積層された液晶表示素子であって、前記第1の液晶の液滴の直径の平均値が、前記第2の液晶の液滴の直径の平均値より小さいことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記第1の液晶と前記第2の液晶は互いに選択反射波長が異なることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記第1の液晶と前記第2の液晶は互いに螺旋ねじれの方向が異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記第1の液晶の選択反射波長は前記第2の液晶の選択反射波長より短いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記第1の液晶調光層と前記第2の液晶調光層との間に20℃でコレステリック相を示す第3の液晶が液滴として分散された第3の液晶調光層が設けられており、前記第3の液晶の液滴の直径の平均値は前記第1の液晶の液滴の直径の平均値以上で、前記第2の液晶の液滴の直径の平均値以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記第3の液晶の選択反射波長は前記第1の液晶の選択反射波長より長く前記第2の液晶の選択反射波長より短いことを特徴とする請求項5に記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記第1〜第3の液晶は、選択反射波長のピーク値が、400〜500nmにある青色反射液晶、500〜580nmにある緑色反射液晶、580〜610nmにある黄色反射液晶、610〜700nmにある赤色反射液晶から選ばれることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項8】
前記第1〜第3の液晶の液滴がマイクロカプセル壁により被覆されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項9】
前記第1〜第3の液晶がネマティック液晶およびカイラル材からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項10】
前記第1〜第3の液晶を駆動するための電極が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−89970(P2008−89970A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270562(P2006−270562)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】