説明

液晶表示装置

【課題】常温において液晶表示パネルに反りが生じていても、該液晶表示装置の動作時の温度で該反りの矯正を行わせ、これによって該液晶表示パネルの表示むらを減少させた液晶表示装置の提供。
【解決手段】第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟持された液晶層とを有する液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルの背面に配置されたバックライトとを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルは、常温で第1の方向に凸になるように反っており、
前記液晶表示パネルは、前記第1の基板または前記第2の基板の前記液晶層とは反対側に、第1の板状体と、前記第1の板状体に貼り合わされた第2の板状体とを有し、
前記第1の板状体の熱膨張率と、前記第2の板状体の熱膨張率とが、前記常温よりも温度が上がったときに、前記第1の板状体と前記第2の板状体との組み合わせにより、前記第1の方向とは反対側の第2の方向に凸になるように反るような熱膨張率にそれぞれ設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に係り、特に、バックライトを備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その液晶表示パネルがマトリックス状に配置されたそれぞれの画素における光透過率を制御させるように構成されているため、該液晶表示パネルの背面にバックライトを備えたものとして構成されるのが通常である。
【0003】
すなわち、液晶表示パネルは、一対の対向するたとえばガラスからなる基板の間に液晶を介在させ、それぞれの画素の領域において当該画素の液晶を駆動する一対の電極を備えて構成されている。前記一対の電極によって当該画素の液晶に電界を発生せしめ、画素の光透過率を制御するようになっている。
【0004】
そして、近年、液晶表示パネルは、テレビのモニタとしても用いられ、ますます、大型化され、かつ薄型化されてくる傾向にある。
【0005】
このことから、該液晶表示パネルは、種々の原因で反りが生じ易い構成となっており、その反りを矯正させる技術が、たとえば下記特許文献1あるいは特許文献2に開示がなされている。
【0006】
特許文献1では、液晶を介在する一対の基板において、それらの熱膨張係数が異なるために生じる反りを、一方の基板の表面に他方の基板と同じ熱膨張係数の板状体を接着するようにして、矯正するようにした技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2では、液晶を介在する一対の基板において、一方の基板が半導体基板であって、その液晶側の面に絶縁層あるいは配線層を形成することによって前記半導体基板が反るのを、液晶と反対側の面に応力相殺膜を形成することによって矯正するようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8−114789号公報
【特許文献2】特開平11−153788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1および特許文献2に示す液晶表示パネルは、いずれも、該液晶表示パネルの製造の完成時(常温時)において反りのない構成として得るための工夫がなされたものである。
【0009】
しかし、液晶表示パネルの製造にあって、該液晶表示パネルの大型化および薄型化が進んでくると、該液晶表示パネルを完全に平坦化させた状態で形成させることが困難な事情にあり、完成時(常温時)における該液晶表示パネルは若干反った状態で形成され、その表示面が凹面あるいは凸面となって形成されてしまうことを免れ得なくなっている。
【0010】
このような液晶表示パネルの反りは大きく目立つものでなく、該液晶表示パネルを製品として利用できるものであるが、該反りに起因して、該液晶表示パネルの表示画像に表示むらを発生させてしまうという不都合をもたらすようになる。
【0011】
本発明の目的は、常温において液晶表示パネルに反りが生じていても、該液晶表示装置の動作時の温度で該反りの矯正を行わせ、これによって該液晶表示パネルの表示むらを減少させた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0013】
(1)本発明による液晶表示装置は、たとえば、第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟持された液晶層とを有する液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルの背面に配置されたバックライトとを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルは、常温で第1の方向に凸になるように反っており、
前記液晶表示パネルは、前記第1の基板または前記第2の基板の前記液晶層とは反対側に、第1の板状体と、前記第1の板状体に貼り合わされた第2の板状体とを有し、
前記第1の板状体の熱膨張率と、前記第2の板状体の熱膨張率とが、前記常温よりも温度が上がったときに、前記第1の板状体と前記第2の板状体との組み合わせにより、前記第1の方向とは反対側の第2の方向に凸になるように反るような熱膨張率にそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0014】
(2)本発明による液晶表示装置は、たとえば、(1)の構成を前提とし、 前記第2の板状体は、前記第1の板状体よりも前記第1の方向側に配置されており、
前記第2の板状体は、前記第1の板状体よりも熱膨張率が小さいことを特徴とする。
【0015】
(3)本発明による液晶表示装置は、たとえば、(1)または(2)の構成を前提とし、前記第1の板状体と前記第2の板状体とのうち、一方の板状体は偏光板であることを特徴とする。
【0016】
(4)本発明による液晶表示装置は、たとえば、(3)の構成を前提とし、 前記第1の板状体と前記第2の板状体とのうち、他方の板状体はリタデーションが5nm以下であることを特徴とする。
【0017】
(5)本発明による液晶表示装置は、たとえば、(1)から(4)の何れかの構成を前提とし、前記第1の板状体および前記第2の板状体が、前記第1の基板および第2の基板よりも前記バックライト側に配置されていることを特徴とする。
【0018】
(6)本発明による液晶表示装置は、たとえば、(1)から(4)の何れかの構成を前提とし、前記第1の板状体および前記第2の板状体が、前記第1の基板および前記第2の基板よりも前記バックライトから遠い側に配置されていることを特徴とする。
【0019】
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【発明の効果】
【0020】
上述した構成からなる液晶表示装置によれば、常温において液晶表示パネルに反りが生じていても、該液晶表示装置の動作時の温度で該反りの矯正を行わせ、これによって該液晶表示パネルの表示むらを減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明による液晶表示装置の実施例を図面を用いて説明をする。
【0022】
〈実施例1〉
(全体の構成)
図2は、本発明による液晶表示装置の一実施例を示す概略斜視図で、一部破断させて描いている。
【0023】
まず、観察者側から、液晶表示パネルPNL、光学シートOS、およびバックライトBLが順次配置されている。
【0024】
液晶表示パネルPNLは、一対の対向配置されたたとえばガラスからなる基板SUB1、基板SUB2を外囲器として構成され、これら基板SUB1、基板SUB2の間に液晶が挟持されている。
【0025】
基板SUB1、基板SUB2の周辺には、これら基板SUB1、基板SUB2の固定を兼ねるシール材SLが形成され、このシール材SLによって前記液晶が基板SUB1、基板SUB2の間に封入されるようになっている。
【0026】
液晶表示パネルPNLの液晶が封入された領域(前記シール材SLによって囲まれた領域)は液晶表示領域ARを構成するようになっている。
【0027】
すなわち、前記液晶表示領域ARにおける基板SUB1、基板SUB2の液晶側の面には、マトリックス状に配置された画素(図示せず)が前記液晶を一構成要素として形成され、これら画素における光透過率を制御できるようになっている。
【0028】
ここで、この実施例では、図2では図示されていないが、たとえばバックライトBL側の基板SUB1の液晶側の面に図3に示す回路が形成されている。図3に示す回路は等価回路であるが、幾何学的に対応づけられて描画され、図3中の点線枠A内の回路が一画素における回路となっている。
【0029】
図3において、図中x方向へ延在しy方向に並設される複数のゲート信号線GLと、y方向へ延在しx方向に並設される複数のドレイン信号線DLとを備え、一対のゲート信号線GLと一対のドレイン信号線DLとで囲まれた領域で前記一画素の領域を形成している。
【0030】
そして、各画素の領域には、一方のゲート信号線GLからの信号(走査信号)の供給によってオンされる薄膜トランジスタTFTと、このオンされたトランジスタTFTを介してドレイン信号線DLからの信号(映像信号)が供給されるたとえば透明導電膜からなる画素電極PXと、他方のゲート信号線GLと前記画素電極PXとの間に形成された容量素子Caddが備えられている。
【0031】
前記容量素子Caddは、画素電極PXに供給された信号を該画素電極PXに長く蓄積させるための容量として構成されている。
【0032】
このような回路は、前記基板SUB1の液晶側の面において、フォトリソグラフィ技術による選択エッチング法によって、所定のパターンからなる導電層、半導体層、絶縁層を所定の層数および順番で積層させることによって構成している。
【0033】
このような回路が形成された前記基板SUB1の面には、該回路を被い、液晶と直接に当接する配向膜(図示せず)が形成されている。この配向膜は前記液晶の分子の初期配向方向を決定させるようになっている。
【0034】
なお、このように薄膜トランジスタTFTを含む回路が形成された前記基板SUB1を、この明細書では、TFT基板SUB1と称する場合がある。
【0035】
また、前記TFT基板SUB1の液晶と反対側の面には、図示されていないが偏光板(図1参照、符号POL1で示す)が少なくとも液晶表示領域ARを被うように該TFT基板SUB1のほぼ全域に配置されている。この偏光板POL1は液晶の駆動の際における該液晶の分子の挙動を可視化するために設けられ、たとえば樹脂材料から構成されている。
【0036】
さらに、図2では図示されていないが、観察者側の基板SUB2の液晶側の面には、たとえば、それぞれの画素領域の周囲の全部あるいは一部を画するようにしてブラックマトリックス(遮光膜)、それぞれの画素領域を被って形成されるカラーフィルタ、それぞれの画素に共通に形成され透明導電膜からなる対向電極が順次積層されて形成されている。
【0037】
そして、前記対向電極を被い、液晶と直接に当接する配向膜(図示せず)が形成されている。この配向膜は前記液晶の分子の初期配向方向を決定させるようになっている。
【0038】
なお、このように前記TFT基板SUB1と液晶を介して対向配置される前記基板SUB2を、この明細書では、対向基板SUB2と称する場合がある。
【0039】
また、前記対向基板SUB2の液晶と反対側の面には、偏光板POL2が少なくとも液晶表示領域ARを被うように該対向基板SUB2のほぼ全域に配置されている。この偏光板POL2は液晶の駆動の際における該液晶の分子の挙動を可視化するために設けられ、たとえば樹脂材料から構成されている。
【0040】
このように構成される液晶表示パネルPNLの背面には、たとえば拡散シート、プリズムシート、あるいはこれらの積層体からなる光学シートOSを介してバックライトBLが配置されている。光学シートOSは、前記バックライトBLからの光を拡散、あるいは集光させたりして液晶表示パネルPNL側に導くようになっている。
【0041】
バックライトBLは、前記液晶表示パネルPNLの少なくとも液晶表示領域ARの全域に均一に光を照射する面光源体から構成されている。
【0042】
該バックライトBLは、たとえば直下型と称されるもので、液晶表示パネルPNLと平行な平面内に配置された複数の蛍光管と、これら蛍光管を支持するとともに、該蛍光管からの光を液晶表示パネルPNL側へ反射させる反射シートが載置された箱状のフレームとから構成されている。
【0043】
しかし、バックライトBLは、必ずしも、このような構成に限定されることはなく、たとえば導光板と、この導光板の側壁面の一部に配置される蛍光管とで構成されるものであっても適用できる。また、光源として、蛍光管に代えて発光ダイオードを用いてもよい。
【0044】
(液晶表示パネルPNL)
ここで、図2に示した液晶表示パネルPNLは、常温において、若干の反りを有したものが用いられ、該液晶表示パネルPNLの表示の際に、該液晶表示パネルPNLが、バックライトBLからの熱によって該反りが減少する方向に変形し、ほぼ完全に平坦化できるように構成されたものとなっている。
【0045】
すなわち、前記液晶表示パネルPNLは、図2のI(a)−I(a)線における断面図である図1(a)に示すように、常温において、該液晶表示パネルPNLの表示面と直交する方向のうちバックライトBLの方向に凸となる(観察者側の面が凹面を有する)ように反っているものを対象としている。ここで、常温とはこの明細書において25℃と定義する。
【0046】
そして、25℃の温度下にある液晶表示装置は、たとえばバックライトBLにおいて消灯の状態にあり、いまだ点灯していない状態を想定している。バックライトBLが点灯すると、その熱によって常温以上に温度が上がるからである。
【0047】
ちなみに、液晶表示パネルPNLにおいて、観察者側、あるいは、バックライトBL側のどちらの方向に凸になるかは、例えば、液晶表示パネルPNLの製造方法や搬送方法によって変わり得る。
【0048】
たとえば、液晶表示パネルPNLを液晶真空封止方によって製造する場合、液晶を封入する前にTFT基板SUB1と対向基板SUB2とをシール材SLを介して貼り合わせ、搬送した後に、熱または紫外線でシール材SLを硬化させる。このとき、シール材SLの硬化前に、TFT基板SUB1と対向基板SUB2とのうち、いずれの基板を下側にして搬送するか、あるいは、どのような形状の搬送装置で基板を支持して搬送するかによって、液晶表示パネルPNLがどちらの方向に凸になるかが決まる。例えば、TFT基板SUB1を下側にし、基板の端部を支持して搬送すれば、重力の影響で下側に凸に反ることになる。もちろん、対向基板SUB2側を下側にすれば、最終的には観察者側に凸に反ることも想定される。
【0049】
また、例えば、液晶表示パネルPNLを液晶滴下法によって製造する場合、液晶を滴下する際にTFT基板SUB1と対向基板SUB2とのうちどちら側に液晶を滴下するか、あるいは、どのような状態でシール材SLを硬化するか、あるいはピンで基板を持ち上げる際に、どのようなピンの配置にするか、あるいは、どのように基板を搬送するかによって、液晶表示パネルPNLがどちらの方向に凸になるかが決まる。例えば、対向基板SIUB2を下側にして基板の端部をピンで支持して持ち上げ、搬送すれば、重力の影響で下側に凸に反ることになる。最終的には、対向基板SUB2側を観察者側に配置するため、観察者側に凸に反ることとなる。当然、TFT基板SUB1を下側にして同様に搬送すれば、バックライトBL側に凸に反ることも想定される。
【0050】
ここで、液晶真空封止法は、図4(a)に示すように、TFT基板SUB1と対向基板SUB2とを液晶封入口ECOが形成されているシール材SLによって貼り合せ、前記TFT基板SUB1、対向基板SUB2、シール材SLによって形成されるセルの周囲を真空(減圧)にし、液晶LCの自由表面にシール材SLの前記液晶封入口ECOを当接させた後に、減圧状態を常圧に戻すことによって液晶LCをシール材SL内に吸入させ、その後において前記シール材SLの前記液晶封入口ECOを封止材(図示せず)によって封止させることよって、液晶表示パネルPNLを形成する方法である。
【0051】
また、液晶滴下法は、図4(b)に示すように、たとえば対向基板SUB2にシール材SLを連続した環状のパターン(液晶封入口を有さないパターン)で形成し、該シール材SLで囲まれた領域内に液晶LCを滴下することにより充填させ、その後にTFT基板SUB1(図示せず)を貼り合せて、液晶表示パネルを形成する方法である。
【0052】
図1(a)において、液晶表示パネルPNLの反りは誇張して示している。液晶表示パネルPNLの形状変化を把握し易くするためである。該反りは、実際には僅かであるが、その場合であっても、表示の際において表示むらを惹き起こす原因となる。
【0053】
そして、液晶表示パネルPNLにおいて、TFT基板SUB1の液晶と反対側の面(バックライトBL側の面)において、少なくとも、液晶表示領域ARを被う偏光板POL1が配置されていることは上述したが、この偏光板POL1はその上面に貼り合わされたフィルムFILによって被われている。
【0054】
ここで、前記フィルム(板状体)FILは、該フィルムFILが貼り合された前記偏光板(板状体)POL1と対になって、いわゆるバイメタルの如く、両者の熱膨張率の差を利用して、温度の上昇にともない、観察者側に凸を有する方向に反りを生じる性質を有するようになっている。
【0055】
このため、該フィルムFILは、熱膨張率の比較的小さい(前記偏光板POL1の熱膨張率より小さい)材料で形成され、たとえば、シクオレフィン系およびポリカーボネート系フィルム等が選定されて用いられている。
【0056】
また、該フィルムFILは、液晶表示パネルPNLの光学特性に及ぼす影響を回避させるため、光学異方性がないことが好ましく、たとえばそのリタデーションを5nm以下とすることによって、良好な表示を確保することができる。
【0057】
図1(b)は、バックライトBLが点灯し、液晶表示パネルPNLに表示される映像を目視できる状態にある場合を示し、図1(a)と対応させて描いた図となっている。
【0058】
この場合、液晶表示装置の使用時に、バックライトBLの点灯によって、液晶表示パネルPNLは該バックライトBLから常温(25℃)以上の熱を受けることになる。
【0059】
そして、液晶表示パネルPNLのTFT基板SUB1側に配置された偏光板POL1およびフィルムFILは、いずれも前記熱によって膨張するが、それらの熱膨張率は上述したように異なることから、図1(b)に示すように、偏光板POL1の伸びSは大きく、フィルムFILの伸びsは小さくなる。
【0060】
これにより、互いに貼り合わされた偏光板POL1とフィルムFILは観察者側へ凸となる方向に反りだし、その反りは液晶表示パネルPNLに伝達されるようになる。
【0061】
これにより、液晶表示パネルPNLは、いままで生じていた反りが減少する方向(図中(−)M方向)に変形し、平坦性に優れた形状変化がなされるようになる。
【0062】
このような現象は、前記偏光板POL1の熱膨張率と、前記フィルムFILの熱膨張率とが、常温よりも温度が上がったときに、前記偏光板POL1と前記フィルムFILとの組み合わせにより、観察者側に凸になるように反るような熱膨張率にそれぞれ設定されているから発生し得るということができる。
【0063】
これにより、本実施例による液晶表示装置によれば、液晶表示パネルPNLの反りによる表示むらを減少させることができるようになる。
【0064】
なお、上述した実施例では、液晶表示パネルPNLの反りを矯正するために配置されたフィルムFILは、バックライトBL側に配置されるTFT基板SUB1側に設けたものである。これにより、前記フィルムFILと偏光板POL1は、液晶表示パネルPNLよりもバックライトBLに近い側の存在するため、バックライトBLからの熱の影響を大きく受け、液晶表示パネルPNLの反りを矯正する効果を増大させることができる。
【0065】
〈実施例2〉
図5は、本発明による液晶表示装置の他の実施例を示す構成図で、図1に対応して描いたものである。
【0066】
図5において、図1の場合と比較して異なる構成は、まず、液晶表示パネルPNLは、常温(25℃)において、該液晶表示パネルPNLの表示面と直交する方向のうち観察者の方向に凸となる(バックライトBL側の面が凹面を有する)ように反っているものを対象としている。
【0067】
そして、25℃の温度下にある液晶表示装置は、バックライトBLにおいて消灯の状態にあり、いまだ点灯していない状態を想定している。
【0068】
そして、図5(a)に示す液晶表示パネルPNLは、TFT基板SUB2の液晶と反対側の面(観察者側の面)において、少なくとも液晶表示領域ARを被う偏光板POL2が配置されていることは上述したが、この偏光板POL2はその上面に貼り合わされたフィルムFILによって被われている。
【0069】
ここで、前記フィルム(板状体)FILは、実施例1と同様に、該フィルムFILが貼り合された偏光板(板状体)POL2と対になって、いわゆるバイメタルの如く、両者の熱膨張率の差を利用して、温度の上昇にともなって反りが生じる性質を有するが、この場合、該反りはバックライトBLの側に凸を有する方向になされるようになっている。
【0070】
また、実施例1と同様に、該フィルムFILは、熱膨張率の比較的小さい(前記偏光板POL2の熱膨張率より小さい)材料で形成され、液晶表示パネルPNLの光学特性に及ぼす影響を回避させるため、光学異方性がないことが好ましく、たとえばそのリタデーションを5nm以下とすることによって、良好な表示を確保することができるようになっている。
【0071】
図5(b)は、バックライトBLが点灯し、液晶表示パネルPNLに表示される映像を目視できる状態にある場合を示し、図5(a)と対応させて描いた図となっている。
【0072】
この場合、液晶表示装置の使用時に、バックライトBLの点灯によって、液晶表示パネルPNLは該バックライトBLから常温(25℃)以上の熱を受けることになる。
【0073】
そして、液晶表示パネルPNLの対向基板SUB2に配置された偏光板POL2およびフィルムFILは、いずれも前記熱によって膨張するが、それらの熱膨張率は上述したように異なることから、図5(b)に示すように、偏光板POL2の伸びSは大きく、フィルムFILの伸びsは小さくなる。
【0074】
これにより、互いに貼り合わされた偏光板POL1とフィルムFILは観察者側へ凹となる方向に反りだし、その反りは液晶表示パネルPNLに伝達されるようになる。
【0075】
これにより、液晶表示パネルPNLは、いままで生じていた反りが減少する方向(図中(+)M方向)に変形し、平坦性に優れた形状変化がなされるようになる。
【0076】
これにより、本実施例による液晶表示装置によれば、液晶表示パネルPNLの反りによる表示むらを減少させることができるようになる。
【0077】
〈実施例3〉
図6は、本発明による液晶表示装置の他の実施例を示す断面図で、図1(b)あるいは図5(b)に対応させて描いた図となっている。このため、図6に示す液晶表示パネルPNLは、バックライトBLが点灯されて、周囲の温度が常温(25℃)以上となっている場合の状態を示している。
【0078】
ここで、前記液晶表示パネルPNLは、そのTFT基板SUB1の液晶LCとは反対側の面に、光学層OLY、および偏光板POL1が順次積層されて配置されている。ここで、前記光学層OLYとして、たとえば位相差板が用いられ、これにより、該液晶表示パネルPNLの広視野角特性の向上を図った構成となっている。
【0079】
一方、対向基板SUB2の液晶LCとは反対側の面に、フィルムFIL、および偏光板POL2が順次積層されている。
【0080】
ちなみに、上記構成からフィルムFILを取り除いた形態の液晶表示パネルPNLは、その画素において、平板状の透明電極と絶縁膜を介して重畳して配置される櫛歯状の電極が備えられ、これら電極の間に発生する電界によって液晶の分子を駆動させる構成からなるいわゆるIPS(In Plane Switching)方式のものに多く観られる構成となっている。
【0081】
なお、図示していないが、このような構成からなる液晶表示パネルPNLは、周囲の温度が常温(25℃)の場合に、観察者側に凹面を有する形状となっていることを想定している。
【0082】
そして、温度が常温(25℃)以上となることによって、互いに貼り合わせて構成されたフィルムFILと偏光板POL2とのそれぞれの熱膨張率の相異によって、伸びが異なるようになる。
【0083】
図6において、たとえば前記フィルムFILの伸びをsとした場合に前記偏光板POL2の伸びがS(>s)となり、互いに貼り合わされたフィルムFILと偏光板POL2は観察者側に凸になるように変形し、この変形が液晶表示パネルPNLに伝達されるようになる。
【0084】
このため、液晶表示パネルPNLは、図中(−)M方向(観察者側に凸になる方向)に湾曲し、いままでの反りが減少する方向に形状変化し、図6に示すように、液晶表示パネルPNLが平坦化するようになる。
【0085】
〈実施例4〉
図7は、本発明による液晶表示装置の他の実施例を示す断面図で、図6の場合と同様、液晶表示パネルPNLは、バックライトBLが点灯されて、周囲の温度が常温(25℃)以上となっている場合の状態を示している。
【0086】
ここで、前記液晶表示パネルPNLは、その対向基板SUB2の液晶LCとは反対側の面に、光学層OLY、および偏光板POL2が順次積層されて配置されている。ここで、前記光学層OLYとして、たとえば位相差板が用いられている。
【0087】
一方、TFT基板SUB2の液晶LCとは反対側の面に、フィルムFIL、および偏光板POL2が順次積層されている。
【0088】
ちなみに、上記構成からフィルムFILを取り除いた形態の液晶表示パネルPNLは、周知のVA(Vertical Alignment)方式のものに多く観られる構成となっている。
【0089】
なお、図示していないが、このような構成からなる液晶表示パネルPNLは、周囲の温度が常温(25℃)の場合に、観察者側に凸面を有する形状となっていることを想定している。
【0090】
そして、温度が常温(25℃)以上となることによって、互いに貼り合わせて配置されたフィルムFILと偏光板POL1とのそれぞれの熱膨張率の相異によって、伸びが異なるようになる。
【0091】
図7において、たとえば前記フィルムFILの伸びをsとした場合に前記偏光板POL1の伸びがS(>s)となり、互いに貼り合わされたフィルムFILと偏光板POL1はバックライトBLの側に凸になるように変形し、この変形が液晶表示パネルPNLに伝達されるようになる。
【0092】
このため、液晶表示パネルPNLは、図中(+)M方向(バックライトBLの側に凸になる方向)に湾曲し、いままでの反りが減少する方向に形状変化し、図7に示すように、液晶表示パネルPNLが平坦化するようになる。
【0093】
なお、上述した実施例では、液晶表示パネルPNLの反りを矯正ために配置されたフィルムFILは、バックライトBL側に配置されるTFT基板SUB1側に設けたものである。これにより、液晶表示パネルPNLよりもバックライトBLに近い側に存在するため、前記フィルムFILと偏光板POL1は、バックライトBLからの熱の影響を大きく受け、液晶表示パネルPNLの反りを矯正する効果を増大できる効果を奏する。
【0094】
〈実施例5〉
図8は、本発明による液晶表示装置の他の実施例を示す断面図で、図6の場合と同様、液晶表示パネルPNLは、バックライトBLが点灯されて、周囲の温度が常温(25℃)以上となっている場合の状態を示している。
【0095】
ここで、前記液晶表示パネルPNLは、その対向基板SUB2の液晶LCとは反対側の面に、光学層OLY2、および偏光板POL2が順次積層されて配置されている。
【0096】
一方、TFT基板SUB1の液晶LCとは反対側の面に、光学層OLY1偏光板POL1、およびフィルムFILが順次積層されている。
【0097】
ここで、前記光学層OLY1、OLY2は、いずれも、たとえば位相差板となっている。
【0098】
ちなみに、上記構成からフィルムFILを取り除いた形態の液晶表示パネルPNLは、周知のTN(Twisted Nematic)方式のものに多く観られる構成となっている。
【0099】
なお、図示していないが、このような構成からなる液晶表示パネルPNLは、周囲の温度が常温(25℃)の場合に、観察者側に凹面を有する形状となっていることを想定している。
【0100】
そして、温度が常温(25℃)以上となることによって、互いに貼り合わせて構成されたフィルムFILと偏光板POL1とのそれぞれの熱膨張率の相異によって、伸びが異なるようになる。
【0101】
図8において、たとえば前記フィルムFILの伸びをsとした場合に前記偏光板POL1の伸びがS(>s)となり、互いに貼り合わされたフィルムFILと偏光板POL1は観察者側に凸になるように変形し、この変形が液晶表示パネルPNLに伝達されるようになる。
【0102】
このため、液晶表示パネルPNLは、図中(−)M方向(観察者側に凸になる方向)に湾曲し、いままでの反りが減少する方向に形状変化し、図8に示すように、液晶表示パネルPNLが平坦化するようになる。
【0103】
なお、上述した実施例では、液晶表示パネルPNLの反りを矯正するために形成されたフィルムFILは、バックライトBL側に配置されるTFT基板SUB1側に設けたものである。これにより、液晶表示パネルPNLよりもバックライトBLに近い側に存在するため、前記フィルムFILと偏光板POL1は、バックライトBLからの熱の影響を大きく受け、液晶表示パネルPNLの反りを矯正する効果を増大できる効果を奏する。
【0104】
実施例3〜5でも、前記フィルムFILのリタデーションが5nm以下とすることが望ましい。
【0105】
〈実施例6〉
図9は、本発明による液晶表示装置の他の実施例を示す断面図で、たとえば図6と対応させて描いた図となっている。
【0106】
これまでに説明した実施例では、液晶表示パネルPNLの基板SUB1、SUB2に形成するフィルムFILは1枚のみ用いた構成としたものである。しかし、図9に示すように、たとえば2枚のフィルムFIL1、FIL2を用意し、これらをたとえばフィルムFIL1、フィルムFIL2の順に互いに重ね合わせるようにして構成してもよい。
【0107】
たとえば1枚のフィルムFIL1のみ用いた構成は、該フィルムFIL1に光学的な位相差が生じる場合があることから、該フィルムFIL1の遅相軸に対して前記フィルムFIL2の遅相軸が直交するように該フィルムFIL2を配置させることにより、前記位相差の発生を抑制させることができる。よって、フィルムFIL1、フィルムFIL2のリタデーションは5nm以上でもよい。
【0108】
このように、フィルムFIL1、フィルムFIL2を上述した目的で配置する構成は、図6の場合に限定されることはなく、図1、図5、図7、図8においても適用することができる。
【0109】
また、フィルムFILの複数枚の積層は、その積層数の増減を適当に設定することにより、液晶表示パネルの反りの低減に関し、精細な調整を行うことができるので、このように構成してもよい。この場合、リタデーションは5nm以下であってもよい。
【0110】
上述したそれぞれの実施例では、従来の構成における液晶表示パネルPNLに対して、新たなフィルム(板状体)FILを追加することにより、該液晶表示パネルPNLの反りを戻すようにしたものである。しかし、フィルムFILを新たに設けることなく、たとえば既存の位相差板等を所定の熱膨張率からなる材料で構成し、この位相差板と対となるたとえば偏光板等の他の板状体との組み合わせによって、該液晶表示パネルPNLの反りを戻すように構成してもよい。
【0111】
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明による液晶表示装置の一実施例を示す構成図で、(a)は常温時の状態、(b)は常温よりも高い温度になった際の状態を示す断面図である。
【図2】本発明による液晶表示装置の一実施例を示す斜視図で、一部において破断された図である。
【図3】本発明による液晶表示装置において、そのTFT基板の液晶側の面の液晶表示領域に形成される等価回路の一実施例を示す図である。
【図4】液晶表示パネルにおいて、それに液晶を内包させる方法の形態を示した説明図である。
【図5】本発明による液晶表示装置の他の実施例を示す構成図で、図1と対応させて描いた図である。
【図6】本発明による液晶表示装置の一実施例を示す構成図で、常温よりも高い温度になった際の状態を示した断面図である。
【図7】本発明による液晶表示装置の一実施例を示す構成図で、常温よりも高い温度になった際の状態を示した断面図である。
【図8】本発明による液晶表示装置の一実施例を示す構成図で、常温よりも高い温度になった際の状態を示した断面図である。
【図9】本発明による液晶表示装置の一実施例を示す構成図で、常温よりも高い温度になった際の状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0113】
PNL……液晶表示パネル、SUB1……TFT基板、SUB2……対向基板、SL……シール材、AR……液晶表示領域、POL1、POL2……偏光板、OS……光学シート、BL……バックライト、GL……ゲート信号線、DL……ドレイン信号線、TFT……薄膜トランジスタ、PX……画素電極、Cadd……容量素子、LC……液晶、FIL、FIL1、FIL2……フィルム、OLY……光学層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟持された液晶層とを有する液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルの背面に配置されたバックライトとを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルは、常温で第1の方向に凸になるように反っており、
前記液晶表示パネルは、前記第1の基板または前記第2の基板の前記液晶層とは反対側に、第1の板状体と、前記第1の板状体に貼り合わされた第2の板状体とを有し、
前記第1の板状体の熱膨張率と、前記第2の板状体の熱膨張率とが、前記常温よりも温度が上がったときに、前記第1の板状体と前記第2の板状体との組み合わせにより、前記第1の方向とは反対側の第2の方向に凸になるように反るような熱膨張率にそれぞれ設定されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の板状体は、前記第1の板状体よりも前記第1の方向側に配置されており、
前記第2の板状体は、前記第1の板状体よりも熱膨張率が小さいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1の板状体と前記第2の板状体とのうち、一方の板状体は偏光板であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1の板状体と前記第2の板状体とのうち、他方の板状体はリタデーションが5nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の板状体および前記第2の板状体が、前記第1の基板および第2の基板よりも前記バックライト側に配置されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1の板状体および前記第2の板状体が、前記第1の基板および前記第2の基板よりも前記バックライトから遠い側に配置されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−109602(P2009−109602A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279839(P2007−279839)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】