説明

液晶表示装置

【課題】電圧印加によるスプレイ変形やベント変形などの配向変形を抑制する液晶材料を適用した液晶表示装置を提供する。
【解決手段】第一の基板SU1と第二の基板SU2の間に液晶層LCLを挟持し、該第二の基板SU2上に該液晶層に電界を印加する画素電極PEと共通電極CEを備え、該液晶層LCL中に下記[化11]で表される液晶材料を含有する。


R1,R2,R3はアルキル基、アルケニル基、水素原子など、Xはフッ素原子、トリフルオロメチル基など、P1、P2、Pn3、Pn4(n=0〜2)は水素原子、フッ素原子などをそれぞれ表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に係り、特に、配向変形によるフレクソエレクトリック効果が発生する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶テレビやパソコン用モニタ、携帯電話やデジタルカメラなど、各種電子機器の表示部に広く用いられており、薄型、軽量、低消費電力といった特徴を有する。
【0003】
この液晶表示装置には多くの表示方式があるが、広視野角を達成できる代表的な液晶表示方式としてIPS(In Plane Switching)方式やVA(Vertical Alignment)が知られている。IPS方式は、液晶分子が基板面内方向で回転することで、実効的な光軸を面内で回転させ、透過率を制御する液晶駆動方式である。IPS方式で液晶分子を基板面内で回転させるための電界を印加する方法として、様々な方法が提案されている。最も一般的な方法は、櫛歯状の画素電極と共通電極を同一基板に形成する方法である。櫛歯電極による電界印加は、画素電極と共通電極を両方ともくし歯状にする方法と、画素電極と共通電極のどちらか一方を櫛歯状にし、もう一方の電極を平板状とし、絶縁層を介して配置する方法などある。このIPS方式の液晶表示装置では、主に正の誘電異方性を有する液晶材料が用いられる。
【0004】
一方、VA方式は、基板面に対して垂直に配向させた液晶を電界により駆動させる方式である。このVA方式では、視野角を拡大するために、基板上に突起構造を設けたり、電極にスリットを設ける方法が取られている。
【特許文献1】特開2002−202736号公報
【非特許文献1】1999年日本液晶学会討論会講演予稿集514頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶を電界により駆動する場合、一様な電界で液晶を駆動することが、高画質化のためには望ましい。しかしながら電極端部や基板上の突起部分においては、電界が不均一となり配向変形が発生し、画質劣化につながる。IPS方式においてくし歯電極を用いた場合、電極端部付近などで、少なからず基板法線方向の電界成分が発生する。そのため電極端部付近では液晶分子が面内方向でのみ回転するのではなく、基板法線方向へも回転してしまう。その結果、電界印加によって液晶にスプレイ変形やベンド変形などの配向変形が誘起される。
【0006】
特に、平板状の対向電極と櫛歯状の画素電極とを組合せた電極構造の場合、この変形はさらに大きくなる。通常のネマティック液晶を用いた場合、このような配向変形は、フレクソエレクトリック効果による分極を導くことが、非特許文献1に記載されている。つまり、櫛歯電極を用いるIPS方式の場合、電圧を印加すると液晶の配向変形が誘起され、そのフレクソエレクトリック効果により分極が誘起されることになる。この結果、液晶配向の均一性が悪くなり、透過率が減少する課題がある。この課題を電極構造により解決する液晶表示装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【0007】
また、VA方式においても、基板上に設けた突起周辺や、電極スリット部の電極端部において、同様に液晶の配向変形が誘起され、それに伴うフレクソエレクトリック効果による分極がもたらされる。その結果として、透過率の低下や、フリッカといった表示品質の低下をもたらす。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、その課題は、電圧印加によってもたらされるスプレイ変形やベント変形などの配向変形を抑制する液晶材料を適用した、良好な画質の液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液晶表示装置は、第一の基板と第二の基板の間に液晶層を挟持し、該液晶層に電界を印加する画素電極と共通電極を備え、前記画素電極と共通電極の少なくとも一方が、表示領域内に電極端部を有する液晶表示装置において、前記液晶層中に下記[化3]で表される液晶材料を含有することを特徴とする。なお、下記[化3]は、請求項1における[化1]と同じであるが明細書へのイメージ合成の都合上、番号を異ならせたものである。
【化3】

ここで、R1,R2,R3は独立にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基または水素原子を表す。ただし、R1,R2,R3のうち少なくとも2つは水素原子以外の基である。Xはフッ素原子、トリフルオロメチル基,ジフルオロメチル基,フルオロメチル基,トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、フルオロメトキシ基を表す。P1、P2、Pn3,Pn4 (n=0〜2)はそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を表す。ただし,P1,またはP2のいずれかはフッ素原子である。Y、Yn (n=0〜2)は独立に、-COO-,-CHCH-,-CC-,-CH2CH2-,-CH2O-,-CF2O-或いは単結合を表す。六員環A,Bn(n=0〜2)はシクロヘキサン環,ベンゼン環のいずれかを表す。シクロヘキサン環の場合はPn3,Pn4は水素原子である。
【0010】
また、本発明の液晶表示装置は、第一の基板と第二の基板の間に液晶層を挟持し、該液晶層に電界を印加する画素電極と共通電極を備え、前記画素電極と共通電極の少なくとも一方が、表示領域内に電極端部を有する液晶表示装置において、前記液晶層中に下記[化4]で表される液晶材料を含有することを特徴とする。なお、下記[化4]は、請求項2における[化2]と同じであるが明細書へのイメージ合成の都合上、番号を異ならせたものである。
【化4】

ここで、R4,R5,R6は独立にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基または水素原子を表す。ただし、R4,R5,R6のうち少なくとも2つは水素原子以外の基である。R7はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基である。Z,Zn(n=0〜2)は、-COO-,-CHCH-,-CC-,-CH2CH2-,-CH2O-,-CF2O-或いは単結合を表す。六員環C,Dn(n=0〜2),Eはシクロヘキサン環,ベンゼン環のいずれかを表す。シクロヘキサン環の場合はPn5,Pn6は水素原子である。
【0011】
そして、前記液晶表示装置の電極群は、一方の基板上に形成されており、液晶表示装置の基板上に形成される画素電極と共通電極のうち少なくとも一方が櫛歯状に形成されることが特徴である。
【0012】
本発明は、上記の表示領域内に電極端部が存在する液晶表示装置であれば、IPS方式やVA方式のみならず、例えばTN(Twisted Nematic)方式、OCB(Optical Compensated Birefringence)方式などの他の表示方式にも適用することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、電圧印加によってもたらされる配向変形によるフレクソエレクトリック効果が抑制され、透過率の高い高画質の液晶表示装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置の1画素の断面を図1と図2に模式的に示す。図1と図2の切断面は液晶表示装置の1画素の平面図である図3に記載してある。すなわち、図1の切断面は図3のS1−S2線に沿った後述する画素電極のストライプ構造に対して平行な断面図であり、図2の切断面は図3のS3−S4線に沿った断面図である。
【0015】
図1、図2、図3において、PL1は第一の偏光板、PL2は第二の偏光板、SU1は第一の基板、SU2は第二の基板、LLは平坦化層、AL1は第一の配向膜、LCLは液晶層、AL2は第二の配向膜、GLは走査配線、CFはカラーフィルタ、BMはブラックマトリクス、PCILは層間絶縁膜、CEは共通電極、CEILは共通電極絶縁膜、GILは走査配線絶縁膜、PEは画素電極、CHはコンタクトホール、SEはソース配線である。また、SLは信号配線、TFTはアクティブ素子(薄膜トランジスタ)である。
【0016】
液晶表示装置は主に第一の基板SU1と第二の基板SU2と液晶層LCLからなり、第一の基板SU1と第二の基板SU2は液晶層LCLを狭持する。第一の基板SU1と第二の基板SU2は液晶層LCLに近接する面上に液晶層LCLの配向状態を安定化するための配向膜AL1、AL2をそれぞれ備える。また、第二の基板SU2の液晶層LCLに近接する面上には、液晶層LCLに電圧を印加するための手段を備える。
【0017】
第一の基板SU1は透明性と平坦性に優れ、かつイオン性不純物の含有が少ないホウケイサン(硼珪酸)ガラス製であり、厚さは約0.4mmである。第一の基板SU1は液晶層LCLに近接する側より第一の配向膜AL1、平坦化膜LL、カラーフィルタCF、ブラックマトリクスBMが順次積層されている。第一の配向膜AL1はポリイミド系の有機高分子膜であり、ラビング法により配向処理されており、近接する液晶層LCLに約1度のプレチルト角を付与する所謂水平配向膜である。プレチルト角を最小限の角度としたことにより、暗表示における視角特性を良好にできる。平坦化膜LLはアクリル系樹脂であり、透明性に優れ、下地の凹凸を平坦化し、かつ溶剤の浸透を防ぐ機能を有する。
【0018】
カラーフィルタCFは赤色、緑色、青色を呈するストライプ状の各部分が繰り返し配列された平面構造を有する。ブラックマトリクスBMは黒色顔料を含むレジストからなり、画素境界部に対応するように格子状の平面分布構造を有する。
【0019】
第二の基板SU2は第一の基板SU1と同様にホウケイサンガラス製であり、厚さは約0.4mmである。第二の基板SU2は液晶層LCLに近接する側より順に、主に第二の配向膜AL2、画素電極PE、層間絶縁膜PCIL、共通電極CE、アクティブ素子TFT、走査配線GL、信号配線SLを備える。第二の配向膜AL2は、第一の配向膜AL1と同様にポリイミド系の有機高分子膜からなる水平配向膜である。画素電極PEと共通電極CEはいずれも透明性と導電性に優れたITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)であり、層厚は80nmである。両者は窒化珪素(SiN)製の層間絶縁膜によって隔たれており、層間絶縁膜の層厚は300nmである。画素電極の平面形状は櫛歯状であるのに対し、共通電極は後述する共通電極空孔部を有するものの、各画素のほぼ全面に渡って分布している。
【0020】
以上のように、画素電極と共通電極をそれぞれストライプ状、ベタ平面状の平面分布とし、両者を層間絶縁膜PCILで隔てたIPS(In-Plane Switching)-Pro(Provectus)構造とし、かつ層間絶縁膜PCILの膜厚を十分に薄くすることにより、画素電極PEと共通電極CEの間にアーチ状の電気力線が形成される。この時、電気力線は層間絶縁膜PCILを貫いて主に液晶層中に分布し、なおかつ基板平面に対して平行な成分を有する所謂横電界を形成する。これにより、電圧印加時において液晶配向方向が主に層平面内で回転するように変化する、IPS方式に特有の配向変化が実現される。
【0021】
VA(Vertically Aligned)方式やECB(Electrically Controlled Birefringence)方式に比較して電圧印加時の液晶配向方向のチルト角増大が少ないため、電圧印加に伴うΔndの変化も小さい。これにより、IPS方式液晶表示装置では視角方向での階調表示特性に優れた表示が得られる。また、図2に示したIPS-Pro構造の断面図では画素電極と共通電極が層間絶縁膜を介して重畳する部分が多数存在するが、この部分は液晶層に対して並列に結合しているため、保持期間中に液晶層に印加される電圧値を一定に保つ保持容量として機能する。なおかつ前記重畳部は透明であるため、IPS-Pro構造では開口率を低下させることなく電圧保持特性を向上できる。
【0022】
図3に示したように、IPS-Pro構造では画素電極と共通電極のうち、前者のみがスリット構造を多数有するストライプ状の平面構造である。これに対して、もう一つのIPS方式であるAS(Advanced Super)-IPS構造では、画素電極と共通電極の両方がストライプ状の平面構造を有する。図7は、AS-IPS方式の液晶表示装置の画素構造例を説明する1画素の平面図である。また、図8は、図7に示したAS-IPS方式の液晶表示装置の画素構造における液晶の電界応答を説明する図である。そして、図5は、IPS-Pro構造における液晶の電界応答を説明する図である。
【0023】
図7に示したように、ストライプ構造を横断する方向で見れば、画素電極PEと共通電極CEが交互に分布する配置となる。AS-IPS構造の場合にも、電圧印加時には画素電極PEと共通電極CEの間にアーチ状の電気力線EFが形成される。ストライプ構造を横断する方向において電極とスリット構造を各一つ含む部分をストライプ構造の一周期とすると、図8に示したようにAS-IPS構造ではストライプ構造の一周期内に一つのアーチ状の電気力線EFが形成される。このためAS-IPS構造では電圧印加時に共通電極CE並びに画素電極PE上の液晶層LCLが比較的動きにくく、透過率が低下する場合があった。これに対して、IPS-Pro構造では、図5の(a)に示したようにストライプ構造の一周期内に二つのアーチ状の電気力線EFが形成される。IPS-Pro構造では、電圧印加時に画素電極PE上の液晶層LCLが動き易く、より高透過率が得られるという利点がある。
【0024】
尚、図3においてスリット構造の方向は画素内において一様であり、走査配線GL方向を0度とし、方位角を反時計回りに定義すると、各ストライプ構造の方向は90度であり、液晶配向方向は82.5度である。図4は、後述する本発明の液晶表示装置の画素構造を示す平面図である。図4の画素構造は、図3のものとは異なるスリット構造の例を示しており、スリット構造の方向の角度が7.5度である領域と、−7.5度である領域が画素内にほぼ一対一の面積比で存在する。この2領域では電圧印加時における液晶配向方向の回転方向が互いに異なる。すなわち、一方において時計回りであれば、他方において反時計回りである。各領域は黄色い着色を示す視角方向と、水色の着色を示す視角方向とをそれぞれ有するが、両者が重なって観察されることにより、視角方向での着色が低減される効果が得られる。その結果、視角方向においてより無着色の表示が得られ、かつより広い色再現範囲が確保される。
【0025】
IPS-Pro構造における上述のような2領域を形成する画素構造の図4において、液晶配向方向は水平方向である。図4の(a)ではスリットの形状がくの字型であり、くの字の屈曲部が液晶配向方向の回転方向が異なる2領域の境界になり、2領域の境界が画素の長辺方向に対して平行に形成される。図4の(b)では長方形の画素の上半分と下半分で液晶配向方向の回転方向が異なり、2領域の境界がアクティブ素子やスルーホールがある画素中央において、画素の短辺方向に対して平行に形成される。
【0026】
図3に示した様に、信号配線SLと走査配線GLは互いに交差しており、交差部の近傍にはそれぞれアクティブ素子TFTを有し、画素電極PEと1対1に対応している。アクティブ素子TFTは図3において画素電極PEよりも下層に位置するため、図3ではそのチャネル部を破線で記載した。画素電極PEにはアクティブ素子TFTを介して信号配線SLより画像信号に対応した電位が付与される。
【0027】
また、アクティブ素子手の動作は走査配線GLの走査信号により制御される。アクティブ素子TFTは薄膜トランジスタであり、そのチャネル部は電子移動度の比較的高いポリシリコン層から成る。ポリシリコン層はCVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成したアモルファスシリコン層をレーザー光線で加熱溶融して形成される。各画素電極は長方形状で互いに独立に制御され、かつ第二の基板上に格子状に配置されている。画素電極はスルーホール部においてアクティブ素子に接続している。スルーホールは共通電極を貫くが、スルーホール周辺の共通電極にはスルーホールよりも一回り大きい空孔部を配置して共通電極と画素電極との短絡を防いでいる。
【0028】
液晶層には、室温を含む広い温度範囲でネマチック相を示し、液晶配向方向の誘電率がその垂直方向よりも大きい正の誘電率異方性を示す液晶材料を用いる。このような正の誘電異方性を示す液晶材料は、トリフルオロフェニルやジフルオロフェニル、4−シアノ−3−フルオロフェニル、4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル構造を分子端に有する液晶化合物を含有する。正の誘電率異方性の液晶材料は負の誘電率異方性の液晶材料に比較して低粘度であり、より良好な応答特性を示す。また、ネマチック相を示す温度範囲がより広く、高抵抗であるという特長を有する。このうち後者により、アクティブ素子がオフとなる保持期間中における電圧低下が十分に少ないという効果が得られる。
【0029】
第一の配向膜AL1と第二の配向膜AL2にラビング法などで配向処理を施した後、第一の基板SU1と第二の基板SU2を組み立て、液晶材料を真空封入して前述の液晶層LCLとする。第一の配向膜AL1と第二の配向膜SU2の配向処理方向を反平行としたことにより、液晶層LCLを配向状態が安定なホモジニアス配向とする。その配向方向は走査配線GLに対して82.5度を成す。電圧印加時の電界方向と配向方向のなす角度が82.5度と大きいため、電圧印加時において充分に大きな液晶層の配向変化が得られる。なおかつ、横電界印加時における液晶層LCLの配向変化方向、即ち液晶層LCLの回転方向が基板法線方向から観察して時計回りか、若しくは反時計回りかが一義的に定まるため、電圧印加時の配向変化が安定化する。
【0030】
第一の基板SU1と第二の基板SU2の外側には第一の偏光板PL1と第二の偏光板PL2を配置している。第一の偏光板PL1と第二の偏光板PL2はヨウ素系色素を含み、ヨウ素は偏光板内で多量体を形成して配向している。その2色性により、これらの偏光板は入射した自然光を偏光度が十分に高い直線偏光に変換する。ヨウ素系色素の多量体の配向方向が吸収軸であり、第一の偏光板PL1と第二の偏光板PL2の吸収軸はその平面法線方向から観察して互いに直交しており、かつ第一の偏光板PL1の吸収軸は液晶配向方向に平行である。
【0031】
IPS-Pro構造の電圧印加時における液晶層配向状態を、図6を参照してより詳細に検討する。図5の(a)は図2と同じ切断面であり、2つの画素電極を含む部分を拡大して示しており、かつ液晶層LCLに近接する構成のみを記載してある。また、図6の(a)では簡単のため液晶分子を棒状の形状で記載してあるが、後述する楔形でも以下に述べることは同様の結果になる。電圧印加時には、第二の基板SU2近傍の液晶層LCLにはアーチ状の電気力線EFが形成される。液晶層LCLに正の誘電率異方性の液晶材料を用いた場合には、電気力線EFの近傍の液晶層LCLにおいて配向方向を電気力線EFに近づけるような配向変化が生じる。これに対して、第二の配向膜AL2との界面では、第二の配向膜AL2の配向規制力により液晶層LCLの配向方向を配向処理方向に固定するような力が働く。このように、第二の基板SU2近傍の液晶層LCLでは相反する2つの効果が競合するため、第二の配向膜AL2の界面から電界の存在する部分に向けて急激な配向変化が生じる。より具体的には、図5の(a)に示したようにアーチ状の電気力線EFの右半分と左半分において、それぞれ逆向きのスプレー変形が生じる。
【0032】
また、図5の(a)から明らかなように、液晶層LCLの中央付近から第一の配向膜AL1との界面間においてもスプレー変形が生じている。しかし、このスプレー変形は配向変形が比較的緩やかであり、なおかつ電界が集中している第二の基板SU2からより離れている。第二の基板SU2近傍のスプレー変形に比較して重要ではないので、これ以降はこれを考慮しないことにする。
【0033】
個々の液晶分子は、それを構成する原子の電気陰性度の違いにより何らかの分極を有する。液晶分子の集合体では、分極を相殺するように配向した方が安定であり、なおかつネマチック相では配向方向に対して液晶分子の前後の区別がないため、液晶層全体において分極は現れない。しかしながら、急激な配向変化が生じた場合には分極が相殺されずに顕在化することがある。このような配向変化に起因する分極はフレクソ分極と呼ばれており、その詳細については、例えばチャンドラセカール著、吉岡書店刊の「液晶の物理学」に記載されている。尚、「液晶の物理学」ではflexoelectricityを撓電性と訳しているが、ここでは、今日においてより一般的なフレクソ分極という名称を用いることにする。
【0034】
フレクソ分極が生じる例としては、液晶分子の形状が楔形であり、楔形の先端を尾、その反対側を頭とすると、分極方向が尾または頭の一方である場合が挙げられる。図6は、フレクソ分極の発生機構を説明する図であり、分極が尾を向いている場合を示している。配向変形が生じていない場合には、図8の(a)に示したように、頭と尾がそれぞれ同じ割合で配向方向(図6の(a)では水平方向)を向いており、個々の液晶分子の分極は相殺されて巨視的な分極は現れない。これに対して配向変形が生じた場合には、図6の(b)に示したように、個々の液晶分子の形状の非対称性とその排除体積効果により、配向方向を向く頭と尾の割合が異なるようになる。図6の(b)は、図面の右側から左側に向けて扇形に広がる急峻なスプレー変形が生じた場合の液晶分子の配向状態を示している。その結果、分極は相殺されずに顕在化し、スプレー変形が生じている部分の配向方向に巨視的な分極が現れる。図6の(b)では配向方向が水平方向に対して傾いている液晶分子も存在するが、分極の水平方向成分に着目すれば右水平方向の分極がより多い。そのため、右水平方向に分極が発生することになる。IPS方式において発生するフレクソ分極を図5(a)中に白抜きの矢印で併記した。
【0035】
フレクソ分極が生じた際には、フレクソ分極自体が電界に応答して配向変化を引き起こし、誘電率異方性による配向変形に重畳する。フレクソ分極による配向変化を回転する矢印を用いて図5の(b)に示す。図5の(b)は図5の(a)の上から見た平面図であり、簡単のため画素電極と電界方向とフレクソ分極のみを記載している。また、図5の(b)では誘電率異方性による配向変形とフレクソ分極による配向変形を分離することにより後者の効果を明らかにすることを試みている。そのため、図5の(b)に示したフレクソ分極は誘電率異方性による配向変形のみを考慮した配向状態におけるフレクソ分極としており、フレクソ分極自身の電界応答を考慮していない状態のものである。電圧印加時における液晶配向方向の変化は、フレクソ分極を考慮しない場合には図5の(b)において時計回りの回転で表される。
【0036】
また、IPS-Pro構造では画素構造や駆動条件を最適化することにより、現状においても最適値にほぼ近い回転角が実現されていると思われる。これに対してフレクソ分極による配向変化は、フレクソ分極が電界方向に対して平行となる状態に近づくような回転で表される。その結果、時計回りの回転が生じる部分と、反時計回りの回転が生じる部分が交互に現れる。図5の(b)ではスリット構造において反時計回りの回転が生じている。この場合には電圧無印加時の状態に半ば戻るような配向変化となるため、透過率が低下する。画素電極上では時計回りの回転が生じているが、フレクソ分極が生じない場合において最適な回転角が実現されているならば、これより更に回転するため透過率の低下が生じる可能性がある。
【0037】
尚、電界が図5の(a)、(b)とは逆極性になった場合には、スリット構造で時計回りの回転が生じ、画素電極上で反時計回りの回転が生じる。この場合にもフレクソ分極の電界応答により前述と同様にして透過率の低下が生じる。従って、極性反転駆動を行った場合、その何れの周期においても透過率の低下が生じることになる。
【0038】
以上をまとめると、IPS-Pro構造では電圧印加に伴い急峻なスプレー変形が発生するので、例えば分子形状が楔形でその頭または尾の方向に分極を示す液晶分子を液晶層に含む場合などにはフレクソ分極が発生する。フレクソ分極が発生するとフレクソ分極自体が電界に応答して、電圧無印加時の状態に半ば戻るような配向変化を引き起こし、その結果として透過率が低下する。また、駆動波形の極性による配向変化で画面のちらつき即ちフリッカが発生する場合もある。
【0039】
もう一つのIPS方式であるAS-IPS構造では、図5に示したように一周期内に形成される電気力線が一つである。そのため、電気力線の傾きもより小さく、液晶層のスプレー変形もより小さい。従って、AS-IPS構造ではフレクソ分極が小さく、これによる透過率低下の影響も小さい。別の見方をすると、AS-IPS構造とIPS-Pro構造を同じ加工精度で作成した場合、すなわち両者のストライプ構造の周期を同一とした場合、フレクソ分極の影響はIPS-Pro構造においてより顕著である。
【0040】
次に、本発明の液晶表示装置に用いる液晶材料についてより詳細に説明する。本発明の液晶表示装置に用いる液晶材料は、フレクソ分極を低減して透過率を向上するため、前述したトリフルオロフェニルやジフルオロフェニル、4−シアノ−3−フルオロフェニル、4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル構造を分子端に有する化合物を含有する、正の誘電異方性を有する液晶組成物に対して、[化5]に規定される化合物を添加する。この一例として[表1]〜[表5]に示す「構造群1」に主だった化合物の構造を示すが、本発明は[化5]に規定される構造である限りはこれらの構造式のみに限定されるものではない。なお、下記[化5]は、前記[化1]および[化3]と同じであるが明細書へのイメージ合成の都合上、番号を異ならせたものである。
【化5】

【0041】
ここで、R1,R2,R3は独立にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基または水素原子を表す。ただし、R1,R2,R3のうち少なくとも2つは水素原子以外の基である。Xはフッ素原子、トリフルオロメチル基,ジフルオロメチル基,フルオロメチル基,トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、フルオロメトキシ基を表す。P1、P2、Pn3,Pn4 (n=0〜2)はそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を表す。ただし,P1,またはP2のいずれかはフッ素原子である。Y、Yn (n=0〜2)は独立に、-COO-,-CHCH-,-CC-,-CH2CH2-,-CH2O-,-CF2O-或いは単結合を表す。六員環A,Bn(n=0〜2)はシクロヘキサン環,ベンゼン環のいずれかを表す。シクロヘキサン環の場合はPn3,Pn4は水素原子である。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0042】
従来のトリフルオロフェニルやジフルオロフェニル、4−シアノ−3−フルオロフェニル、4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル構造を分子端に有する化合物では、これら電子吸引性の基のある分子端の反対側はフェニル環或いはシクロヘキサン環にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基を一つ付加した構造である。このアルキル基等の基が付加する側の末端の分子形状は楔形状となっているために,分子全体として尾から頭に向かう分極を有する楔形状の化学構造となりフレクソ分極を誘起する。このような化合物群の例を[表6]に「構造群3」として示した。
【表6】

式中R1は炭素数1から10の直鎖状アルキル基であり、−CnH2n+1で示したアルキル基のnは1から12を示し、直鎖状だけでなく分枝状であっても良い。式中のベンゼン環はベンゼン環だけに限定されるものではなく、六員環であれば例えばシクロヘキサン環、ピリジン環、ピリミジン環であっても良いがシクロヘキサン環よりもベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環の方がより好ましい。式中のフッ素原子はフッ素原子だけに限定されるものではなく、電子吸引性の置換基であれば、例えばトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、シアノ基などでも良い。
【0043】
これに対して、本提案の化合物の化学構造は、電子吸引性の基のある分子端の反対側に複数のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基を有する構造とした。その結果,分子形状がより棒状となってフレクソ分極を発生し難い。更に電子吸引性の基のある分子端の反対側のアルキル基等をパラ位,及び2箇所のメタ位の3個所に付加すれば、図9中の化合物A群(Group A)として示すように、分極方向は楔形の頭から尾に向かう構造とすることができる。これらを従来型の図9に示す化合物B群(Group B)と混合することにより、図10に示すようにスプレー変形が生じた場合にも化合物A群,化合物B群間で互いに分極が相殺されることにより、結果としてフレクソ分極が発生しにくく,透過率向上及びフリッカ低減に有効である。
【0044】
本発明では、使用する液晶材料の分子形状、フレクソ分極方向に応じて、それとは異なる化合物群の化合物を添加することを特徴とする。その際、両構造群のモル比が等量になるように添加することにより、本発明が有効に作用する。
【0045】
さらに、本発明の液晶表示装置に用いる液晶材料は、フレクソ分極を低減して透過率を向上するため、前述したトリフルオロフェニルやジフルオロフェニル、4−シアノ−3−フルオロフェニル、4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル構造を分子端に有する化合物を含有する、正の誘電異方性を有する液晶組成物に対して、[化6]に規定される化合物を添加する。この一例として[表7]〜[表18]に示す構造群2に主だった化合物の構造を示すが、本発明は[化6]に規定される構造である限りはこれらの構造式のみに限定されるものではない。なお、下記[化6]は、前記[化2]および[化4]と同じであるが明細書へのイメージ合成の都合上、番号を異ならせたものである。
【化6】

【0046】
ここで、R4,R5,R6は独立にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基または水素原子を表す。ただし、R4,R5,R6のうち少なくとも2つは水素原子以外の基である。R7はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基である。Z,Zn(n=0〜2)は、-COO-,-CHCH-,-CC-,-CH2CH2-,-CH2O-,-CF2O-或いは単結合を表す。六員環C,Dn(n=0〜2),Eはシクロヘキサン環,ベンゼン環のいずれかを表す。シクロヘキサン環の場合はPn5,Pn6は水素原子である。
【0047】
これらの[式6]で表される化学構造の分子は,一方の分子端に複数のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基を有し,他端に一つのアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基を有するので,分子全体として楔形の化学構造となるが,非極性であるためにフレクソ分極を発生することが無い。このような分子を添加することによってフレクソ分極の小さい材料を得ることができ,透過率の向上及びフリッカ低減に有効である。
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【0048】
本発明では、使用する液晶材料が極性,分子形状によってフレクソ分極が発生する場合に、非極性でフレクソ分極が発生しない化学構造の化合物を添加することを特徴とする。その際の添加量は,液晶材料としての特性バランスを崩さない範囲でより多量に添加することが望ましい。
【0049】
なお、本発明による分子末端に複数のアルキル基等を設ける化合物は、従来の末端に1つのアルキル基等を設ける化合物より液晶材料の等方相移転温度が低い傾向がある。そこで、本発明による「構造群1」もしくは「構造群2」に示す化合物のうち、六員環が3つ以上含まれている化合物は液晶材料の等方相転移温度の低下を防ぐことができるため、液晶材料への添加物として、より好ましい。また、混合する化合物として3環(ターフェニル、ビフェニルシクロヘキシル等)の骨格を有する液晶化合物、或いは4環の骨格を有する液晶化合物をより多く使うことが有効である。
【0050】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0051】
図1と図3において、本発明に係る液晶表示装置の実施例1の製法は本発明の骨子には関係しないので詳細は省略するが、以下記述にしたがって作成した。液晶表示装置を構成する絶縁基板のうち一方の基板(第二の基板)SU2上に、薄膜トランジスタであるアクティブ素子TFTおよび信号配線SL、走査配線GLを形成する。画素の表示領域においては、第二の基板SU二上層にベタ状の電極CEを、ITO(インジウム・チン・オキサイド)からなる透明導電層で形成し、さらにその上層に窒化シリコンもしくは有機物からなる層間絶縁層PCILを形成する。本実施例では、ITOからなるベタ状の電極CEおよび層間絶縁層PCILの膜厚は、それぞれ77nmおよび500nmとした。
【0052】
次に、図2のように、層間絶縁層PCILの上に、櫛歯状の画素電極PEを膜厚77nmのITO電極層で形成する。この櫛歯状の画素電極PEの電極幅および電極間隔は共に5μmである。この櫛歯状の画素電極PEの上に、ポリアミック酸ワニスを印刷により塗布した後に、200℃で焼成し、第二の配向膜AL2を形成した。この第二の配向膜AL2にはラビング法により配向制御能(配向規制力)を付与した。
【0053】
他方の基板である第一の基板SU1には、図示しないカラーフィルタなどを形成した後、第二の基板SU二と同様に、第一の配向膜AL1を形成する。さらに、この第一の配向膜AL1にラビング法により配向制御能を付与する。これらの2枚の基板を、スペーサーと周辺部のシール剤とを介在させ、かつ、第一の配向膜AL1及び第二の配向膜AL2の配向方向が平行をなすようにセル(液晶表示パネル)に組み立てる。
【0054】
さらに、このセルに後述の液晶組成物を真空で封入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止剤で封止して液晶パネルを製作した。この時、液晶層LCLの厚み(ギャップ、セルギャップ)は、本実施例では、上記のスペーサーにより、液晶封入状態で3.0μmとなるように調節する。
【0055】
次に、このパネルを2枚の偏光板PL1,PL2(日東電工社製SEG1224DU)で挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を他方のそれに直交させるように配置した。この時,一方の偏光板の偏光透過軸は、配向膜AL1,AL2の配向方向に平行をなす方向とした。
【0056】
次に、上記ベタ状の共通電極CE、櫛歯状の画素電極PEに交流駆動電圧ACVが加わるように駆動回路を接続する。その後、バックライトなどを組み付けてモジュール化し、液晶表示装置とする。
【0057】
この液晶表示装置の液晶層LCLには、母体液晶組成物ZLI-1565(メルク社製)に[化7]に示す構造の化合物を10重量%添加し調整した液晶組成物を用いた。
【化7】

[化7]に示す構造の化合物は、市販品でないため、合成して得たものを使用した。この合成方法は本発明の骨子および実施の形態には関係しないので詳細は省略するが、以下の手順に従うことにより得た。3,4,5-トリメトキシ安息香酸(アルドリッチ社製)をクロロホルム中にて塩化チオニルを用いて、酸塩化物とした。これを濃縮乾固させたものを、3,4,5-トリフルオロフェノール(アルドリッチ社製)と反応させ目的物を抽出した。
【0058】
このZLI-1565と[化7]に示す化合物を含む液晶組成物を用いた液晶表示装置は、以下に示す「比較例1」に比べてフリッカーの発生がごく少なく,より高透過率の良好な表示を実現することが出来た。
【0059】
本実施例では、構造群1に示される化合物の代表として[化7]に示す化合物を含む液晶組成物を使用したが、その他の構造でも効果が確認できた。
【比較例1】
【0060】
前記液晶表示装置の液晶層として、母体液晶組成物ZLI-1565(メルク社製)に[化8]に示す構造の化合物を10重量%添加し調整した液晶組成物を用いた。
【化8】

【0061】
なお、[化8]に示す構造の化合物も市販品でないため、合成して得たものを使用した。この合成方法は本発明の骨子には関係しないので詳細は省略するが、4-メトキシ安息香酸(アルドリッチ社製)をクロロホルム中にて塩化チオニルを用いて、酸塩化物とした。これを濃縮乾固させたものを、3,4,5-トリフルオロフェノール(アルドリッチ社製)と反応させ目的物を抽出した。このZLI-1565と[化2]に示す化合物を含む液晶組成物を用いた液晶表示装置ではフリッカが発生し、この結果、透過率が低下した。
【実施例2】
【0062】
前記液晶表示装置の液晶層として、母体液晶組成物として比較例1に示した組成物を用い,これに[化9]に示す構造の化合物を10重量%添加し調整した液晶組成物を用いた。
【化9】

なお、[化9]に示す構造の化合物も、市販品でないため合成して得たものを使用した。この合成方法は本発明の骨子には関係しないので詳細は省略するが、実施例1に記載の方法において3,4,5-トリフルオロフェノールの代わりに4-プロピルフェノール(アルドリッチ社製)を用いる以外は、ほぼ同様にして得た。
【0063】
この[化9]に示す化合物を含む液晶組成物を用いた液晶表示装置は、比較例1及び以下に示す比較例2に比べてフリッカーの発生が抑制され,より高透過率の良好な表示を実現することが出来た。本実施例では、構造群2に示される化合物の代表として[化9]を使用したが、その他の構造でも効果が確認できた。
【比較例2】
【0064】
前記液晶表示装置の液晶層として、母体液晶組成物として比較例1に示した組成物を用い,これに[化10]に示す構造の化合物を10重量%添加し調整した液晶組成物を用いた。
【化10】

なお、[化10]に示す構造の化合物も、市販品でないため合成して得たものを使用した。この合成方法は本発明の骨子には関係しないので詳細は省略するが、比較例1に記載の方法において3,4,5-トリフルオロフェノールの代わりに4-プロピルフェノール(アルドリッチ社製)を用いる以外は、ほぼ同様にして得た。この[化10]に示す化合物を含む液晶組成物を用いた液晶表示装置ではフリッカが発生し、この結果、透過率が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の液晶表示装置の1画素の図3のS1−S2線に沿った断面である。
【図2】本発明の液晶表示装置の1画素の図3のS3−S4線に沿った断面である。
【図3】本発明の液晶表示装置の1画素の画素構造を示す平面図である。
【図4】AS-IPS構造の画素構造を示す平面図である。
【図5】AS-IPS構造における液晶層の電界応答を示す図である。
【図6】IPS-Pro構造における液晶層の電界応答を示す図である。
【図7】本発明の液晶表示装置の図3のものとは異なるスリット構造の画素構造を示す平面図である。
【図8】フレクソ分極の発生機構を示す図である。
【図9】本発明の実施の効果を示す図である。
【図10】本発明の実施の効果を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
PL1:第一の偏光板、PL2:第二の偏光板、SU1:第一の基板、SU2:第二の基板、LL:平坦化層、AL1:第一の配向膜、LCL:液晶層、AL2:第二の配向膜、GL:走査配線、CF:カラーフィルタ、BM:ブラックマトリクス、PCIL:層間絶縁膜、CE:共通電極、CEIL:共通電極絶縁膜、GIL:走査配線絶縁膜、PE:画素電極、CH:コンタクトホール、SE:ソース配線、SL:信号配線、TFT:アクティブ素子、EF:電気力線、FP:フレクソ分極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板と第二の基板の間に液晶層を挟持し、該液晶層に電界を印加する画素電極と共通電極を備え、前記画素電極と共通電極の少なくとも一方が、表示領域内に電極端部を有する液晶表示装置において、前記液晶層中に下記[化1]で表される液晶材料を含有することを特徴とする液晶表示装置。
【化1】

ここで、R1,R2,R3は独立にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基または水素原子を表す。ただし、R1,R2,R3のうち少なくとも2つは水素原子以外の基である。Xはフッ素原子、トリフルオロメチル基,ジフルオロメチル基,フルオロメチル基,トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、フルオロメトキシ基を表す。P1、P2、Pn3,Pn4 (n=0〜2)はそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を表す。ただし,P1,またはP2のいずれかはフッ素原子である。Y、Yn (n=0〜2)は独立に、-COO-,-CHCH-,-CC-,-CH2CH2-,-CH2O-,-CF2O-或いは単結合を表す。六員環A,Bn(n=0〜2)はシクロヘキサン環,ベンゼン環のいずれかを表す。シクロヘキサン環の場合はPn3,Pn4は水素原子である。
【請求項2】
第一の基板と第二の基板の間に液晶層を挟持し、該液晶層に電界を印加する画素電極と共通電極を備え、前記画素電極と共通電極の少なくとも一方が、表示領域内に電極端部を有する液晶表示装置において、前記液晶層中に下記[化2]で表される液晶材料を含有することを特徴とする液晶表示装置。
【化2】

ここで、R4,R5,R6は独立にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基または水素原子を表す。ただし、R4,R5,R6のうち少なくとも2つは水素原子以外の基である。R7はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基である。Z,Zn(n=0〜2)は、-COO-,-CHCH-,-CC-,-CH2CH2-,-CH2O-,-CF2O-或いは単結合を表す。六員環C,Dn(n=0〜2),Eはシクロヘキサン環,ベンゼン環のいずれかを表す。シクロヘキサン環の場合はPn5,Pn6は水素原子である。
【請求項3】
前記液晶表示装置の電極群が、一方の基板上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶表示装置の電極群が、一方の基板上に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶表示装置の基板上に形成される画素電極と共通電極のうち少なくとも一方が櫛歯状に形成されることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶表示装置の基板上に形成される画素電極と共通電極のうち少なくとも一方が櫛歯状に形成されることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−167228(P2009−167228A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3404(P2008−3404)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】