説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示パネルの画像と液晶表示パネルの背面に設置された特定画像の両方を切り替えて表示することが出来る液晶表示装置における画像の輝度ムラを小さくする。
【解決手段】TFT基板11と対向基板12とで構成される液晶表示パネルの背面に液晶シャッター50が配置され、液晶シャッター50の背面に特定画像40が配置されている。液晶シャッター50を開いたときは特定画像40が表示され、液晶シャッター50が閉じたときは液晶表示パネルの画像が表示される。光源であるLED20はサイドに設置され、LED20からの出射光の分布が2方向にピークを有する。このようなLED20を用いることによって、表示画面の輝度を均一にすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に液晶表示パネルによる画像と液晶表示パネルの背面に存在する表示物を切り替えて表示することが出来る液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、ディスプレイ装置を薄くできること、重量が大きくならないこと等から、コンピュータ用ディスプレイ、携帯電話用端末等からTV等にいたるまで、需要が拡大している。液晶表示パネルはみずからは発光しないために、画像を表示するためには、液晶表示パネルの背面にバックライトを配置し、バックライトからの光を画素毎に制御することによって画像を形成する。
【0003】
液晶表示装置は薄型に出来ることから種々の表示装置への応用が可能である。ゲーム用ディスプレイでは、液晶によって表示される画像の他に、特定の画像を同じ液晶の画面を用いて表示するという要求がある。このような表示を可能にする構成として、バックライト部分に液晶シャッターを設置し、通常の液晶画面を表示する場合は、この液晶シャッターを拡散板として使用する。
一方、液晶パネルに形成される画像ではなく、特定画像を表示する場合は、液晶表示パネルは全面を透過状態とすると同時に、液晶シャッターに電圧を加えることによって、液晶シャッターを透過状態とする。そうすると、液晶シャッターの背面に置かれた特定画像を視認することが出来る。なお、この場合、光源は液晶シャッター等のサイドに設置することによって背面の特定画像の視認を妨げないようにする。
【0004】
このような技術は例えば、「特許文献1」に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−7315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
「特許文献1」に記載されているような従来技術では、バックライトの光源として、液晶シャッター50等よりも横方向外側に配置されたCCFL(冷陰極蛍光管)が使用されている。このような構成の場合、画面の輝度ムラが問題となる。
【0007】
通常のサイドライト方式の液晶表示装置では、サイドに配置されたCCFLから液晶表示パネルに均一に光を入射させるためには、種々の光学部品が必要である。図17はバックライトを有する通常の液晶表示装置の断面図である。図17においては、液晶表示パネルを収納するモールド、駆動IC等は省略されている。図17において、液晶表示装置は液晶表示パネルとバックライトとから構成されている。
【0008】
液晶表示パネルは、画素電極、薄膜トランジスタ(TFT)、走査線、データ信号線等が形成されたTFT基板11と、カラーフィルタ等が形成された対向基板12とから構成されている。TFT基板11と対向基板12の間には液晶が挟持され、画素電極等に印加されるデータ信号に応じて液晶の向きが変化し、画素毎に透過光が制御されることによって画像が形成される。液晶は偏光光に対して制御することが出来るために、液晶表示パネルへの入射光は偏光光でなければならない。そのため、TFT基板11には下偏光板14が接着され、対向基板12の上には上偏光板13が接着されている。
図17において、バックライトは、光源30、導光板21および種々の光学シートから構成されている。光源30は導光板21のサイドに設置されている。このようにバックライトとして導光板タイプを用いるのは、表示装置の厚さを薄くするためである。光源30にはCCFL30等が使用される。
【0009】
導光板21は、サイドから入射する光を液晶表示パネル方向に向ける働きを有する。導光板21の下には反射シート26が設置されており、光源30からの光を液晶表示パネル側に反射する。導光板21から液晶表示パネル方向に出射する光は、光強度のむらを有している。下拡散シート22は導光板21から出射した光を均一にする役割を有する。図17における下プリズムシート23は、マイクロプリズムによって導光板21からの光のうち、紙面と垂直な方向に広がろうとする光を、液晶表示パネルの法線方向に向ける役割を有する。上プリズムシート24は、マイクロプリズムによって導光板21からの光のうち、紙面と平行方向に広がろうとする光を、液晶表示パネルの法線方向に集束する役割を有する。上拡散シート25は、プリズムシートからの光を拡散することによって、プリズムシートからの出た周期的に強度が変化する光と、液晶表示パネルの走査線、あるいはデータ信号線等による透過率の周期的な変化との干渉によるモアレを低減する役割を有する。
【0010】
このように、通常の液晶表示装置においては、バックライトに設置されている種々の光学部品によって液晶表示パネルに入射する光の均一化を図っている。しかし、液晶表示パネルの背面に設置された特定画像40を表示するタイプの液晶表示装置では、従来の液晶表示装置のバックライトに存在するような、導光板21、拡散シート等を使用することは出来ない。これは特に、画面の輝度ムラとなって現れる。具体的には、画面の周辺において、輝度が大きく、画面の中央付近において輝度が低下する問題が生ずる。
【0011】
本発明は以上のような問題点を解決し、液晶表示パネルの背面に存在する特定画像40を表示出来る液晶表示装置において、液晶表示パネルの画像を表示するときも、背面の特定画像40を表示するときも、画面の輝度を均一にする構成を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
液晶表示パネルの背面に液晶シャッターが配置され、液晶シャッターの背面に特定画像あるいは特定物体が設置され、液晶表示パネルに形成される画像と液晶シャッターの背面に設置された特定画像あるいは特定物体を交互に表示できる液晶表示装置において、光源として2方向に出射光のピークを有するLEDをサイドに設置する。具体的な手段は次のとおりである。
【0013】
(1)液晶表示パネルと前記液晶表示パネルの背面に液晶シャッターが配置され、前記液晶シャッターの背面に特定画像または特定物体が配置され、前記液晶表示パネルの表示面よりも外側で、かつ、前記液晶シャッターよりも背面で、かつ、前記特定画像あるいは前記特定物体よりも前面に光源が配置された液晶表示装置であって、前記液晶表示パネルに形成された画像を表示するときは、前記液晶シャッターは白濁して光を散乱させるモードであり、前記特定画像あるいは前記特定物体を表示するときは、前記液晶シャッターは光を透過させるモードであり、前記光源はLEDから構成され、前記LEDからの出射光の分布におけるピークは2方向に存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【0014】
(2)前記LEDは両サイドに設置されていることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0015】
(3)液晶表示パネルと前記液晶表示パネルの背面に液晶シャッターが配置され、前記液晶シャッターの背面に特定画像または特定物体が配置され、前記液晶表示パネルの表示面よりも外側で、かつ、前記液晶シャッターよりも背面で、かつ、前記特定画像あるいは前記特定物体よりも前面に光源が配置された液晶表示装置であって、前記液晶表示パネルに形成された画像を表示するときは、前記液晶シャッターは白濁して光を散乱させるモードであり、前記特定画像あるいは前記特定物体を表示するときは、前記液晶シャッターは光を透過させるモードであり、前記光源はペアとなった2個のLEDから構成され、前記ペアとなった2個のLEDからの出射光は、2方向にピークが存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【0016】
(4)前記ペアとなった2個のLEDの各々の法線は、平行ではないことを特徴とする(3)に記載の液晶表示装置。
【0017】
(5)前記ペアとなった2個のLEDは、両サイドに設置されていることを特徴とする(3)に記載の液晶表示装置。
【0018】
(6)液晶表示パネルと前記液晶表示パネルの背面に液晶シャッターが配置され、前記液晶シャッターの背面に特定画像または特定物体が配置され、前記液晶表示パネルの表示面よりも外側で、かつ、前記液晶シャッターよりも背面で、かつ、前記特定画像あるいは前記特定物体よりも前面に光源が配置された液晶表示装置であって、前記液晶表示パネルに形成された画像を表示するときは、前記液晶シャッターは白濁して光を散乱させるモードであり、前記特定画像あるいは前記特定物体を表示するときは、前記液晶シャッターは光を透過させるモードであり、前記光源はLEDから構成され、前記LEDからの光の出射面にはレンズが設置され、前記レンズからの出射光の分布におけるピークは2方向に存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【0019】
(7)前記LEDは両サイドに設置されていることを特徴とする(6)に記載の液晶表示装置。
【0020】
(8)液晶表示パネルと前記液晶表示パネルの背面に液晶シャッターが配置され、前記液晶シャッターの背面に特定画像または特定物体が配置され、前記液晶表示パネルの表示面よりも外側で、かつ、前記液晶シャッターよりも背面で、かつ、前記特定画像あるいは前記特定物体よりも前面に光源が配置された液晶表示装置であって、前記液晶表示パネルに形成された画像を表示するときは、前記液晶シャッターは白濁して光を散乱させるモードであり、前記特定画像あるいは前記特定物体を表示するときは、前記液晶シャッターは光を透過させるモードであり、前記光源はLEDから構成され、前記LEDは断面が前記液晶表示パネルの法線と平行な方向の壁と前記壁と略直角方向の上下庇で囲まれたコの字型領域に収容され、前記LEDの中心は前記壁の中心とは一致せず、前記LEDからの出射光の分布におけるピークは2方向に存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【0021】
(9)前記LEDの中心と前記壁の中心とのずれ量は2mm以上であることを特徴とする(8)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明が対象とする液晶表示装置では、バックライトに導光板、拡散シート、プリズムシート等の光学部品を使用することは出来ないが、光源に2方向に出射光のピークを有するような指向性を有するLEDを用いることによって、液晶表示パネルの表示画像あるいは、液晶シャッターの背面に設置されている特定画像、特定物体の表示輝度を均一にすることが出来る。
【0023】
本発明の他の側面では、サイドに設置された光源として、ペアとなった2個のLEDを使用し、2個のうちの各LEDの法線方向を異ならしめることによって出射光が2方向でピークを持つようにするので、液晶表示パネルの表示画像、あるいは、液晶シャッターの背面に設置されている特定画像、特定物体の表示輝度を均一にすることが出来る。
【0024】
本発明のさらに他の側面では、サイドに設置された光源として、LEDを使用し、LEDからの光の出射面にレンズを設置し、レンズからの出射光が2方向にピークを持つようにしているので、液晶表示パネルの表示画像、あるいは、液晶シャッターの背面に設置されている特定画像、特定物体の表示輝度を均一にすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
実施例にしたがって、本発明の詳細な内容を開示する。
【実施例1】
【0026】
図1は本発明の第1の実施例を示す断面図である。図1において、液晶表示パネルは上モールド60に載置されている。液晶表示パネルは画素電極、TFT等が形成されたTFT基板11とカラーフィルタ等が形成された対向基板12とから構成されており、TFT基板11と対向基板12の間には液晶が挟持されている。TFT基板11の下には下偏光板14が、対向基板12の上には上偏光板13が接着している。
【0027】
TFT基板11は対向基板12よりも若干大きく形成されており、TFT基板11が一枚となった部分には、液晶表示パネルに電力、信号等を供給するための端子部111が形成されている。端子部111は図示しない、フレキシブル配線基板と接続し、外部回路と接続する。
【0028】
液晶表示パネルの背面には、液晶シャッター50が下モールド65に載置されている。液晶シャッター50の概略構成を図3に示す。液晶シャッター50は電圧を印加すると光が透過し、電圧を切ると光を散乱する作用を有する。図3(a)は電圧が印加されていない状態の液晶シャッター50の断面模式図である。図3(a)において、プラスチック基板53内に液晶が封入されている。また、プラスチック基板53内には、高分子51がネットワーク状に構成され、その間に液晶分子52は不規則に並んでいる。図3(a)の状態では、不規則に並んだ液晶分子52が光を散乱し、液晶シャッター50は白濁した状態となっている。このような状態の液晶シャッター50は一種の拡散板としての作用を有する。なお、プラスチック基板53の内側にはITO等の透明電極54が形成されている。
【0029】
図3(a)の状態では、液晶表示パネルの前方からは、背面に配置された特定画像40を視認することは出来ない。したがって、液晶シャッター50に電圧を印加しない状態では、図1の液晶表示装置は通常の液晶表示装置として、液晶表示パネルに形成された画像を視認することになる。
【0030】
図3(b)はプラスチック基板53の内側に形成された透明電極54に電圧が印加された状態を示している。上下の透明電極54間に電圧を印加すると液晶分子52は図3(b)に示すように、上下方向に整列し、液晶シャッター50を光が透過するようになる。
【0031】
液晶シャッター50に電圧を印加して液晶シャッター50を光が透過するような状態の場合は、図1における液晶表示パネルの全画素は、透過となっている。すなわち、白表示となっている。そうすると、液晶表示パネル、液晶シャッター50いずれも透過状態なので、液晶シャッター50の背面に配置された特定画像40が視認されることになる。ここで、液晶シャッター50の背面に配置された特定画像40は、スロットマシーン遊技機のドラムの場合もあるし、3次元の物体である場合もある。以後、3次元の物体も含めて特定画像40と表現する。
【0032】
図3に示す液晶シャッター50のON、OFFはmsecのオーダーで切り替えることが出来る。したがって、液晶表示パネルによる画面と液晶シャッター50の背面に存在する特定画像40との切り替えは、msecのオーダーの高速で切り替えることが出来る。液晶シャッター50は,モールド内に設置するために、補強のための透明なプラスチック補強板によってサンドイッチされる場合もある。
【0033】
図1において、下モールド65内のサイドには光源であるLED20(Light Emitting Diode)が設置されている。LED20は両サイドに設置されている。また、LED20は紙面の垂直方向に複数配列されている。図1において、LED20と液晶表示パネルの間には通常のバックライトのように光学部品が存在していないために液晶表示パネルに入射する光にムラが生じ易い。本発明は、光源に特定の指向性を持ったLED20を用いることによって導光板、光学シート等を用いなくとも、液晶表示パネルに入射する光を均一に設定するものである。
【0034】
液晶表示パネルを載置する上モールド60、液晶シャッター50を載置し、側部においてLED20を収容する下モールド65はフレーム70に収容されて本実施例の液晶表示装置が形成される。
【0035】
図2は本実施例で使用されるLED20の輝度分布である。図2において、横軸は出射角(θ)であり、LED20の法線方向、すなわち、図1に示す液晶表示パネルと平行な方向をゼロ度としている。図2の縦軸はLED20から出射する光の相対強度である。図2に示すように、本実施例で使用するLED20においては、LED20からの出射光の強度はLED20の法線方向が最大ではなく、LED20の法線方向から35度程度で最大強度となっている。
【0036】
このように、LED20からの出射光を法線方向でなく、上下特定角度ずれたところで、ピークを持たせることによって、本液晶表示装置が通常の液晶表示装置にように、液晶表示パネルからの画像を表示する場合も、あるいは、液晶表示パネルは単に光を透過させ、背面に設置された特定画像40を表示する場合も最適な光強度分布とすることが出来る。
【0037】
すなわち、LED20からの出射光がLED20の法線方向に最大の分布であると、対向するLED20に最も光が当たることになり、光の利用効率が低下する。通常のバックライトであれば、導光板21が存在しているので、LED20の法線方向に出射する光も、適切な反射、拡散を行うことによって光を液晶表示パネル方向に向けることが出来るが、本実施例においては、導光板21が存在していないので、LED20の出射光の指向性を変えることによって均一な光を得ている。
【0038】
本実施例においては、LED20の出射光の最大値は、+35度および−35としたが、液晶シャッター50の下の空間の大きさによって適切な角度が異なってくる場合がある。また、LED20の置かれる位置が、背面の特定画像40に近いか、あるいは液晶シャッター50に近いかによって、LED20からの出射光の指向性を変える場合もある。このような場合、LED20の角度による指向性を非対称にする場合もある。LED20からの出射光の指向性はLED20内において、LED20チップの背面に設置される鏡面の形状を変化させて変えることが出来る。
【0039】
図4は本実施例に対する比較例としての液晶表示装置である。図4において、液晶表示パネル、液晶シャッター50、上モールド60、下モールド65等は図1と同様である。図4が図1と異なる点は、光源にLED20ではなく、CCFL30を使用していることである。光源にCCFL30を使用した場合は、次のような問題を生ずる。
【0040】
図5はCCFL30から出射する光の分布である。図5において、横軸は出射角で、縦軸は出射する光の相対強度である。図5において、CCFL30からの出射強度は、出射角(θ)に係わらず、一定となっている。すなわち、CCFL30では光は放射状に均一に出射する。このようなCCFL30を図4に示すような液晶表示装置の光源として使用すると、CCFL30近辺、すなわち、液晶表示パネルの画面の周辺のみ明るくなるという現象を生ずる。
【0041】
すなわち、図4に示すように、CCFL30の近辺においては、矢印で示す光束の密度が大きく、液晶表示装置の中央付近においては光束の密度が小さい。CCFL30の近辺に入射する光はその部分で乱反射を起こすので、CCFL30からの光束が多く当たる部分が明るく視認されることになる。
【0042】
これに対して、本実施例で光源として使用されるLED20は指向性を持ち、かつ、角度にしてプラスマイナスの2方向にピークを持ち、液晶シャッター50の背面の空間形状に合わせて指向性を持たせることが出来る。したがって、本実施例によれば、導光板21等を使用しなくとも、輝度が均一な画面を得ることが出来る。
【0043】
以上の説明では、LED20は液晶表示装置の両側に配置されているとして説明した。しかし、LED20が片側にのみ配置されている場合であっても、同様な理論が適用できる。LED20が片側にのみ配置されている場合は、LED20の出射強度における2つのピークの位置、あるいは、方向を変えれば良い。
【0044】
以下は、上記説明した内容に関連するシミュレーション結果である。図6は、図1に示す液晶表示装置における、下側から液晶シャッター50の表面までの断面図において、光源を変えた場合に輝度分布がどのように変化するかを評価した結果である。仕様Aは光源としてCCFLを2本重ねて使用した場合である。CCFLはL字型となっており、下モールドの内壁に配置されている。各CCFLからの出射光の指向性は光源に指向性の欄に記載されたとおりである。これは図5と同様である。
【0045】
図1における特定画像の部分には、図6においては、反射シート26を使用している。この反射シート26は表面に銀メッキが施されており、鏡面である。また、液晶シャッター50は上下のアクリル板70によってサンドイッチされている。アクリル板70の厚さは1.5mmである。アクリル板70は、紫外線から液晶シャッター50内の液晶分子52を保護する役割を有する。
【0046】
下モールド65において、液晶シャッター50を載置する壁の高さd1は例えば、4.8mmであり、光源を載置する壁の高さd2は10.2mmである。d2の値は実際のLED20の大きさあるいはCCFLの径に比較して大きい。CCFLは2本使用するので、上下方向の裕度は小さいが、LED20は1個使用しているので、上下方向に設置の自由度が存在する。後に述べるように、LEDの設置位置によって。アクリル面、あるいは画面の輝度分布を変えることが出来る。
【0047】
仕様Bと仕様Cの構造は外見上は同様である。すなわち、仕様Bと仕様CはいずれもLED20を使用している。LED20の配置数は、下モールド65の内壁に、画面の長辺方向には10mmピッチで26個配置され、画面の短辺方向には、10mmピッチで16個配置されている。仕様Bと仕様Cが異なる点はLED20からの出射光の指向性である。仕様Bでは、図2に示すように、ピークが2方向に存在するLEDを使用している。一方、仕様Cでは、通常のLEDと同様で、ピークはLEDの法線方向に1箇所存在する。仕様Cで使用しているLEDの輝度指向性は、図14に示すLED20と同様な分布である。
【0048】
仕様A、B、Cのバックライトの構成において、輝度分布を評価した。輝度を評価した面は図6に示す上アクリル板の上である。輝度を測定した場所を、図7に示す。図7において、長径mは265.8mmで、短径nは160.8mmである。測定点は、最外周から長径あるいは短径の10%内側の長軸上、短軸上、コーナー部、および中央である。短軸上の周辺は上下で表し、長軸上は左右で表している。
【0049】
測定結果を図6の表の最右欄である輝度偏差の欄に示す。輝度偏差において、中央の輝度を100で表し、上下、左右、コーナーは中央との比較で表している。図6で示すような構造においては、コーナーが最も明るく、中央が最も暗くなる。したがって、中央とコーナーとの輝度差が小さいほど、均一な輝度分布であるといえる。
【0050】
図6に示すように、CCFLを使用した場合が、上アクリル板70上の輝度の差が大きい。LED20を使用すると、輝度ムラは改善される。なかでも、2方向にピークを有するLED20を使用した場合が、最も輝度ムラを小さくすることが出来る。
【0051】
図8は図6に示すデータの表現を変えたものである。すなわち、図8は、仕様A、B、Cについて、中央の輝度/コーナーの輝度、中央の輝度/上下の輝度、中央の輝度/左右の輝度を比較した表である。図8に示す表では、各数値が大きいほうが輝度ムラが小さいといえる。この表で見ても、輝度差が最も問題となる中央、および上下における数値は仕様B、すなわち、LED20の出射光の方向が2方向にピークを持つ場合がもっとも数値が大きく、輝度ムラを小さく出来ることを示している。
【0052】
図9は図8の表をグラフにプロットしたものである。図9において、横軸は仕様、縦軸は輝度比である。図9において、中央とコーナーの比、中央と上下の比は仕様Bが最も優れている。
【0053】
図10〜図12は下モールド65のLED20の収容部において、光源であるLED20を上下させた場合と輝度ムラとの関係を示すものである。図10において、LED20は、下モールド65において、断面が高さd2の壁と上下庇で囲まれたコの字型の領域に収容されている。図10において、hはLED20の中心と、下モールド65のLED20が収容される壁の中心との差である。また、光源は図6におけるB仕様、すなわち、2方向に出射光のピークが存在するLED20を使用している。
【0054】
図11はLED20と下モールド65の壁の中心とのズレ量と図6における上アクリル70における輝度の比較を示すものである。測定位置は図7と同様である。図11において、各数値が大きいほど輝度ムラが小さい。図11の表からわかるように、LED20の中心と下モールド65に形成された壁の中心とをずらせたほうが、上アクリル70上、あるいは、画面上の輝度ムラは小さくなる。
【0055】
図12は図11の表に示すデータをグラフにプロットしたものである。図12において、横軸は、LED20の中心と下モールド65の壁部の中心のズレ量であり、縦軸は輝度比である。図12において、数値が大きいほど、輝度ムラが小さいことを意味する。図12からわかるように、中央とコーナー、中央と上下、中央と左右の輝度比はLED20の位置が下モールド65の中心から2mm離れたところが輝度ムラが小さくなっている。LED20が上方向にずれても下方向にずれても輝度分布の改善の効果に大きな差はない。また、図12から推測できるように、LED20の中心と下モールド65に形成された壁の中心とのずれ量は2mm以上の場合に顕著な効果が得られる。
【実施例2】
【0056】
図13は本発明の第2の実施例を示す断面図である。図13において、液晶表示パネル、液晶シャッター50、上モールド60、下モールド65等は実施例1の図1と同様である。図1と異なるところは、光源として用いるLED20である。本実施例においては、2個のLED20をペアとして用いている。この2個ペアのLED20は紙面垂直方向に複数配列している。
【0057】
実施例1では、LED20自体が、2方向において光の出射強度がピークを持つLED20を使用している。このようなLED20はLED20に内蔵されている鏡面の形状を変えることによって可能となるが、LED20自体のコスト上昇の要因となる。
【0058】
本実施例では、LED20の法線方向に光強度のピークを有する通常のLED20を光源に用いることによって、実施例1と同様な効果を得るものである。図14は通常のLED20から出射される光強度の分布の例である。図14において、横軸は出射角(θ)であり、LED20の法線方向、すなわち、図13に示す液晶表示パネルと平行な方向をゼロ度としている。図14の縦軸はLED20から出射する光の相対強度である。図14に示すように、本実施例で使用するLED20は、LED20からの出射光の強度はLED20の法線方向が最大であり、通常のLED20と同様の分布を示している。このような通常の指向性を有するLEDは市場から安価に入手することが出来る。
【0059】
このLED20を図13に示すように、2個組み合わせて光源として使用する。すなわち、図13において、上側のLED20は特定画像40を照射するのに最適な角度に設定する。一方、下側のLED20は液晶表示パネルのバックライトとして最適な角度に設置する。
【0060】
本実施例の特徴は、通常のLED20を使用して、設置角度を変えればよいので、液晶シャッター50の背面の空間に合わせて光源の指向性を最適な条件に設定し易いということである。また、LED20は特殊仕様ではなく、通常のLED20を使用することが出来るので、LED20のコストの点からも有利である。
【0061】
以上の説明では、LED20のペアは液晶表示装置の両側に配置されているとして説明した。しかし、LED20のペアが片側にのみ配置されている場合であっても、同様な理論が適用できる。LED20のペアが片側にのみ配置されている場合は、LED20のペアの出射強度における2つのピークの位置を変えれば良い。この場合、2つのLED20の設置角度を変化させればよいので、実施例1の場合に比較して自由度が大きい。
【実施例3】
【0062】
図15は本発明の第3の実施例を示す断面図である。図15において、液晶表示パネル、液晶シャッター50、上モールド60、下モールド65等は実施例1の図1と同様である。図1と異なるところは、光源として用いるLED20である。本実施例においては、LED20は出射光に対して通常の指向性をもつLED20を使用している。このLED20は紙面垂直方向に複数配列している。
【0063】
実施例1では、LED20自体が、2方向において光の出射強度がピークを持つLED20を使用している。このようなLED20はLED20に内蔵されている鏡面の形状を変えることによって可能となるが、LED20自体のコスト上昇の要因となる。
【0064】
本実施例では、LED20の法線方向に光強度のピークを有する通常のLED20を光源に用い、LED20の光出射面にレンズを設置することによって実施例1と同様に、2方向に出射光がピークを持つ光源を得るものである。本実施例で使用するレンズは光の方向を変えることが目的であるから、精密なレンズである必要は無い。例えば、特定の2つの角度において、プラスチックの肉厚を大きくしたようなレンズであっても本実施例の目的は果たすことが出来る。
【0065】
図16は本実施例で使用する光源、すなわち、LED20とレンズの組み合わせによる出射光の分布である。図16において、横軸は出射角(θ)であり、LED20の法線方向、すなわち、図15に示す液晶表示パネルと平行な方向をゼロ度としている。図16の縦軸はLED20から出射する光の相対強度である。図16に示すように、本実施例で使用するLED20を用いた光源においては、光源からの出射光の強度はLED20の法線方向において最大ではなく、プラス35度およびマイナス35度においてピークを有している。出射光のピーク位置は実施例1と同様に設定したものであり、本実施例では、レンズを設計することによってピーク位置は自由に決定することが出切る。
【0066】
図16の出射光の相対強度の分布は実施例1とは異なっている。出射光の分布もレンズの設計によって自由に変えることが出来る。すなわち、本実施例においては、通常のLED20を使用して、レンズ設計によって、最適な光源とすることが出来る。
【0067】
以上の説明では、LED20は液晶表示装置の両側に配置されているとして説明した。しかし、LED20が片側にのみ配置されている場合であっても、同様な理論が適用できる。LED20が片側にのみ配置されている場合は、LED20の出射強度における2つのピークの位置を変えれば良い。この場合、LED20は同一のものを使用し、レンズの特性を変化させれば良いので、実施例1の場合に比較して自由度が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1を示す断面図である。
【図2】図1で使用されるLEDの出射光の分布である。
【図3】液晶シャッターの断面模式図である。
【図4】光源にCCFLを使用した従来例である。
【図5】CCFLの出射光の分布である。
【図6】バックライト構造と輝度分布との関係を示す表である。
【図7】輝度の測定位置を示す図である。
【図8】バックライト仕様と輝度分布の数値を示す表である。
【図9】バックライト構造と輝度分布を示すグラフである。
【図10】LEDの位置を示す断面模式図である。
【図11】LEDの位置と輝度分布を示す表である。
【図12】LEDの位置と輝度分布を示すグラフである。
【図13】実施例2を示す断面図である。
【図14】実施例2で使用されるLEDの出射光の分布である。
【図15】実施例3を示す断面図である。
【図16】実施例3の光源からの出射光の分布である。
【図17】従来のサイドライト型の液晶表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0069】
11…TFT基板、 12…対向基板、 13…上偏光板、 14…下偏光板、 20…LED、 21…導光板、 22…下拡散シート、 23…下プリズムシート、 24…上プリズムシート、 25…上拡散シート、 26…反射シート、 30…CCFL、 40…特定画像、 50…液晶シャッター、 51…高分子ネットワーク、 52…液晶分子、 53…プラスチック基板、 54…透明電極、 60…上モールド、 65…下モールド、 70…アクリル板、 111…端子部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示パネルと前記液晶表示パネルの背面に液晶シャッターが配置され、前記液晶シャッターの背面に特定画像または特定物体が配置され、前記液晶表示パネルの表示面よりも外側で、かつ、前記液晶シャッターよりも背面で、かつ、前記特定画像あるいは前記特定物体よりも前面に光源が配置された液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルに形成された画像を表示するときは、前記液晶シャッターは白濁して光を散乱させるモードであり、
前記特定画像あるいは前記特定物体を表示するときは、前記液晶シャッターは光を透過させるモードであり、
前記光源はLEDから構成され、前記LEDからの出射光の分布におけるピークは2方向に存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記LEDは両サイドに設置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
液晶表示パネルと前記液晶表示パネルの背面に液晶シャッターが配置され、前記液晶シャッターの背面に特定画像または特定物体が配置され、前記液晶表示パネルの表示面よりも外側で、かつ、前記液晶シャッターよりも背面で、かつ、前記特定画像あるいは前記特定物体よりも前面に光源が配置された液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルに形成された画像を表示するときは、前記液晶シャッターは白濁して光を散乱させるモードであり、
前記特定画像あるいは前記特定物体を表示するときは、前記液晶シャッターは光を透過させるモードであり、
前記光源はペアとなった2個のLEDから構成され、前記ペアとなった2個のLEDからの出射光は、2方向にピークが存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
前記ペアとなった2個のLEDの各々の法線は、平行ではないことを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記ペアとなった2個のLEDは、両サイドに設置されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
液晶表示パネルと前記液晶表示パネルの背面に液晶シャッターが配置され、前記液晶シャッターの背面に特定画像または特定物体が配置され、前記液晶表示パネルの表示面よりも外側で、かつ、前記液晶シャッターよりも背面で、かつ、前記特定画像あるいは前記特定物体よりも前面に光源が配置された液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルに形成された画像を表示するときは、前記液晶シャッターは白濁して光を散乱させるモードであり、
前記特定画像あるいは前記特定物体を表示するときは、前記液晶シャッターは光を透過させるモードであり、
前記光源はLEDから構成され、前記LEDからの光の出射面にはレンズが設置され、前記レンズからの出射光の分布におけるピークは2方向に存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
前記LEDは両サイドに設置されていることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
液晶表示パネルと前記液晶表示パネルの背面に液晶シャッターが配置され、前記液晶シャッターの背面に特定画像または特定物体が配置され、前記液晶表示パネルの表示面よりも外側で、かつ、前記液晶シャッターよりも背面で、かつ、前記特定画像あるいは前記特定物体よりも前面に光源が配置された液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルに形成された画像を表示するときは、前記液晶シャッターは白濁して光を散乱させるモードであり、
前記特定画像あるいは前記特定物体を表示するときは、前記液晶シャッターは光を透過させるモードであり、
前記光源はLEDから構成され、前記LEDは断面が前記液晶表示パネルの法線と平行な方向の壁と前記壁と略直角方向の上下庇で囲まれたコの字型領域に収容され、前記LEDの中心は前記壁の中心とは一致せず、
前記LEDからの出射光の分布におけるピークは2方向に存在していることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
前記LEDの中心と前記壁の中心とのずれ量は2mm以上であることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−186804(P2009−186804A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27377(P2008−27377)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】