説明

液晶表示装置

【課題】共振周波数がスピーカの出力音の周波数帯域の一部と重複する片持ち支持された導光板を備えた液晶表示装置において,その導光板の共振による性能悪化を防止できるとともに,出力音響の音量が小さい場合に聴覚上感じられる音質劣化を回避できること。
【解決手段】音響処理回路23が,スピーカ25に入力される音響信号における特定周波数帯の信号成分を減衰させるノッチフィルタ処理を行うが,その音響信号の音量レベルが所定のしきいレベル未満である場合には音響信号に対するフィルタ処理を解除する。前記特定周波数帯は,片持ち支持された導光板の共振周波数の帯域である。ノッチフィルタ処理における前記特定周波数帯の減衰ゲインは,音量レベルに応じて変更され,また,音響バッファ23aにより遅延期間中の音響信号の音量レベルに応じて,遅延後の音響信号に対するノッチフィルタ処理の前記特定周波数帯の減衰ゲインを徐々に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶テレビジョン受像機等の液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,テレビジョン受像機は,スピーカを備え,録画・再生装置等の周辺機器と接続されたAVシステムにおける主要なAV装置として利用されることが多い。そして,液晶テレビジョン受像機に代表されるパネル型のテレビジョン受像機は,その画面の大型化に伴い,出力の大きなスピーカを備える場合が多い。また,デザイン性向上の観点から,液晶テレビジョン受像機において,スピーカが,液晶パネルの背面側に配置されることもある。
また,昨今の液晶テレビジョン受像機は,純度の高い3原色(RGB)の光を出力するLEDを用いて液晶パネルのバックライトを構成するものがある。これにより,色の再現領域の広い高画質の液晶テレビジョン受像機を実現することができる。
一方,特許文献1には,視聴環境におけるくぼみ共鳴周波数を検出し,入力された音響信号に基づく音響をスピーカにより出力する際に,その音響信号から,前記くぼみ共鳴周波数の帯域の信号成分をフィルタによって除去することにより,音質を改善することついて示されている。
【0003】
ところで,液晶テレビジョン受像機において,3原色のLEDを光源とするバックライトは,3色のLEDからの出力光を,片持ち支持された導光板を通じて液晶パネル側へ導くことにより,その液晶パネルを照明するものがある。
図5及び図6は,片持ち支持された導光板を備えたバックライト17の断面図及び平面図である。但し,図6において,前記バックライト17が備える拡散板の記載は省略されている。
図5及び図6に示されるバックライト17は,3原色各々の光を出力するLED41と,その出力光を液晶パネル15側へ導く導光板42とを備えている。前記LED41は,その光の出射方向が,前記液晶パネル15の面に対して平行な方向となる状態で,バックライト基板30に対して半田付けされている。また,前記導光板42は,その一端が前記バックライト基板30に対してビス43により固定されている。これにより,前記導光板42は,前記バックライト基板30により片持ち支持された状態となっている。片持ち支持された前記導光板42における前記バックライト基板30から浮き上がった部分の長さは,例えば,50mm程度である。
そして,前記導光板42は,前記液晶パネル15に平行な前記バックライト基板30の表面に対して斜め方向に伸びて形成され,前記液晶パネル15に固定された端部における前記LED41に対向する端面から前記LED41の出射光が導入される。さらに,前記導光板42に導入された3原色の光は,前記導光板42の内部で混合されて白色光となり,その白色光が,前記導光板42における前記液晶パネル15側に向く他方の端面から放射される。
前記LED41及び前記ビス43により固定された前記導光板42を有する複数の投光部40が,前記液晶パネル15の背面側において,前記バックライト基板30上に配列されている。
また,前記バックライト17は,前記導光板42における光の放射面と前記液晶パネル15との間に配置された拡散板50を備えている。これにより,前記導光板42から放射された白色光が,前記拡散板50により拡散光となって前記液晶パネル15に対してその背面側から照射される。
図5に示されるように,前記導光板42は,隣り合うもの相互間において,前記拡散板50を介して前記液晶パネル15の背面側に対向する光の放射面以外の部分が,前記液晶パネル15側から見て重なり合うように配置されている。前記導光板42により,前記LED41から出力される3原色の光が,狭いスペースにおいて効率的に混合される。
【特許文献1】特開平10−28299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,液晶テレビジョン受像機において,図5及び図6に示されるように片持ち支持された前記導光板42は,その共振周波数が比較的低く,その共振周波数が,スピーカの出力音の周波数帯域の一部と重複する場合がある。そのため,スピーカから,前記導光板42の共振周波数の帯域を一部に含む大音量の音響が出力されると,その音響に対して前記導光板42が共振し,前記液晶パネル15の表示映像の輝度に変動が生じ,表示映像の画質が悪化するという問題点があった。
また,その問題点の解決のため,特許文献1に示されるように,入力された音響信号に基づく音響をスピーカにより出力する際に,その音響信号から,前記導光板42の共振周波数の帯域の信号成分をフィルタによって除去することが考えられる。
しかしながら,特許文献1に示される技術によれば,出力音響の音量が小さい場合に,音響信号における一部の周波数成分が除去されることによる音質の劣化が聴覚上特に顕著に感じられるという問題点があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,共振周波数がスピーカの出力音の周波数帯域の一部と重複する部品である片持ち支持された導光板を備えた液晶表示装置において,その部品の共振による性能悪化を防止できるとともに,出力音響の音量が小さい場合に聴覚上感じられる音質劣化を回避できることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明に係る液晶表示装置は,映像を表示する液晶パネルと,光源からの光を片持ち支持された導光板を通じて前記液晶パネル側へ導くことによりその液晶パネルを照明するバックライトと,スピーカとを備え,さらに次の(1)及び(2)に示される各構成要素を備えている。
(1)前記スピーカに入力される音響信号における,前記導光板の共振周波数の帯域である特定周波数帯の信号成分を減衰させるノッチフィルタ。
(2)前記音響信号の音量レベルが予め設定されたしきいレベル未満である場合に前記ノッチフィルタによる前記音響信号に対するフィルタ処理を解除するフィルタ解除手段。
ここで,前記特定周波数帯は,当該液晶表示装置が備える前記導光板の共振周波数を含むごく狭い周波数帯域であり,前記導光板の共振周波数は,前記スピーカの出力音の周波数帯域の一部と重複する。
また,前記予め設定されたしきいレベルは,そのレベルの音量の音響が前記スピーカから出力されても,前記導光板において性能劣化につながるような顕著な共振が生じない程度の音量のレベルである。
本発明に係る液晶表示装置は,前記スピーカに入力される音響信号の音量レベルが大きい場合には,その音響信号における前記特定周波数帯の信号成分をノッチフィルタによって減衰させる。これにより,前記スピーカから大音量の音響が出力される場合でも,その音響に対して前記導光板が共振して当該液晶表示装置の画質や音質等の性能が悪化することを防止できる。
また,本発明に係る液晶表示装置は,前記スピーカに入力される音響信号の音量レベルが,前記導光板の共振を生じさせない程度に小さい場合には,前記ノッチフィルタによるフィルタ処理を解除する。これにより,出力音響の音量が小さい場合に聴覚上感じられる音質劣化を回避できる。
【0006】
また,本発明に係る液晶表示装置が,さらに次の(3)に示される構成要素を備えることも考えられる。
(3)前記音響信号の音量レベルが前記しきいレベル以上である場合におけるその音量レベルに応じて前記ノッチフィルタにおける前記特定周波数帯の減衰ゲインを変更する減衰ゲイン調節手段。
一般に,前記音響信号の音量レベルが小さいほど,前記スピーカの出力音響に対して前記導光板が共振しないようにするための前記減衰ゲインの絶対値は小さくて済む。そこで,前記減衰ゲイン調節手段は,前記音響信号の音量レベルが前記しきいレベル以上である場合におけるその音量レベルが小さいほど,前記特定周波数帯の減衰ゲインの絶対値を小さくする。これにより,出力音響の音量が比較的小さい場合に聴覚上感じられる音質劣化をさらに低減できる。
ところで,前記特定周波数帯の減衰ゲインが急変すると,前記スピーカの出力音響において聴覚上感じられる音質が急変し,その音響を聞く人に違和感を感じさせてしまう場合がある。
そこで,本発明に係る液晶表示装置が,さらに次の(4)に示される構成要素を備え,前記減衰ゲイン調節手段が,次の(5)に示される処理を実行することが考えられる。
(4)前記音響信号を一時記憶して該音響信号の前記スピーカへの伝送を遅延させる信号遅延手段。
(5)前記減衰ゲイン調節手段が,前記信号遅延手段による遅延期間中の前記音響信号の前記しきいレベル以上の音量レベルに応じて,前記信号遅延手段による遅延後の前記音響信号における前記特定周波数帯の減衰ゲインを徐々に変化させる。
これにより,前記特定周波数帯の減衰ゲインが徐々に変化するので,聴覚上感じられる音質の急変を防止できる。
また,本発明に係る液晶表示装置は,次の(6)及び(7)に示される構成要素を備えた装置,即ち,液晶表示装置であることが考えられる。
(6)映像を表示する液晶パネル。
(7)光源からの光を片持ち支持された導光板を通じて前記液晶パネル側へ導くことによりその液晶パネルを照明するバックライト。
なお,この場合,前記予め設定された特定周波数帯は,前記導光板の共振周波数の帯域である。例えば,前記予め設定された特定周波数帯が,片持ち支持された前記導光板の共振周波数の帯域であることが考えられる。
これにより,前記導光板の振動による表示映像の悪化,即ち,表示輝度の変動を防止できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る液晶表示装置は,共振周波数がスピーカの出力音の周波数帯域の一部と重複する導光板を備えている場合に,その導光板の共振による性能悪化を防止できるとともに,出力音響の音量が小さい場合に聴覚上感じられる音質劣化を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る液晶表示装置の一例である液晶テレビジョン受像機Xの概略構成を表すブロック図,図2は液晶テレビジョン受像機Xにおけるノッチフィルタのフィルタ特性を表す図,図3は液晶テレビジョン受像機Xにおける音響信号の音量レベルとノッチフィルタの特定周波数帯の減衰ゲインとの関係を表す図,図4は液晶テレビジョン受像機Xにおける音響信号の音量レベルの検出方法と特定周波数帯の減衰ゲインの設定方法とを説明するためのタイムチャート,図5及び図6は液晶テレビジョン受像機における片持ち支持された導光板を備えたバックライトの断面図及び平面図である。
【0009】
まず,図1に示されるブロック図を参照しつつ,本発明の実施形態に係る液晶表示装置の一例である液晶テレビジョン受像機Xの構成について説明する。
図1に示すように,液晶テレビジョン受像機Xは,複数のチューナ1,外部信号入力部2,復調・分離回路3,映像復号回路11,映像選択回路12,映像バッファ13a,映像処理回路13,液晶ドライバ14,液晶パネル15,調光回路16,バックライト17,音響復号回路21,音響選択回路22,音響バッファ23a,音響処理回路23,アンプ24,スピーカ25,制御回路4,リモコン受光部6及びリモコン7等を備えている。
なお,図1に示される「液晶表示パネル」の用語は,「液晶パネル」と同義である。
【0010】
前記チューナ1は,入力されたテレビジョン放送信号から放送番組のコンテンツの信号を抽出する電子部品である。より具体的には,前記チューナ1は,前記制御回路4により選択を指示された放送番組の信号が含まれる搬送波周波数成分の信号を抽出し,その抽出信号を後段の復調・分離回路3に伝送する。なお,前記チューナ1は,地上波,BS,CS等の放送媒体ごとに個別に設けられる。
前記復調・分離回路3は,前記チューナ1から伝送されてきた搬送波周波数成分からトランスポートストリーム信号(Transport Stream信号:以下,TS信号)を復調する。さらに,前記復調・分離回路3は,抽出されたTS信号から,視聴される放送番組に対応した映像信号及び音響信号,並びに付加データ等を分離して抽出する。さらに,前記復調・分離回路3は,前記制御回路4から受けたPID(Packet IDentification)に応じて,視聴対象となる放送番組の映像信号及び音響信号を抽出し,各信号を前記映像復号回路11及び前記音響復号回路21それぞれに伝送する。
また,前記復調・分離回路3は,TS信号から,付加データであるSI(Service Information)等を抽出して前記制御回路4に伝送する。このSIは,EPG(Electronic Program Guide)の情報が多重化されたデータである。EPGの情報には,例えば,番組名,番組のジャンル,放送時間等を示す情報が含まれる。
【0011】
また,前記外部信号入力部2は,外部装置から映像信号及び音響信号を入力する信号入力インターフェースである。
また,前記映像復号回路11は,前記復調・分離回路3から伝送される映像信号を復号し,復号した映像信号を前記映像選択回路12に伝送する。同様に,前記音響復号回路21は,前記復調・分離回路3から伝送される音響信号を復号し,復号した音響信号を前記音響選択回路22に伝送する。
前記映像選択回路12は,前記制御回路4からの制御指令に従って,入力される複数のコンテンツの映像信号の中から,1つ又は複数の映像信号を選択して後段の前記映像処理回路13側へ伝送する。この映像選択回路12に入力される信号には,前記映像復号回路11を通じて入力される放送番組のコンテンツの映像信号と,前記外部信号入力部2を通じて入力される外部入力コンテンツの映像信号とが含まれる。
前記映像バッファ13aは,前記映像選択回路12により選択された映像信号を一時記憶し,その映像信号に基づくフレーム画像信号の前記液晶ドライバ14への伝送を遅延させるメモリである。
また,前記映像処理回路13は,前記映像バッファ13aに一時記憶されている映像信号に基づいて,コンテンツの映像を前記液晶パネル15に表示させるために前記液晶ドライバ14に供給するフレーム画像信号を生成する。
前記液晶ドライバ14は,前記映像処理回路13から所定周期で順次伝送されてくる前記フレーム画像信号に基づいて前記液晶パネル15を制御し,そのフレーム画像信号に対応する1フレーム分(1コマ)の映像を前記液晶パネル15に順次表示させる回路である。
【0012】
また,前記液晶パネル15は,前記液晶ドライバ14による制御に応じて,前記フレーム画像信号に対応する映像を表示する映像表示部である。
また,前記バックライト17は,前述した図5及び図6に示される構造を有している。
即ち,前記バックライト17は,前記液晶パネル15の背面側に配列された複数のLED41からの光を,片持ち支持された前記導光板42を通じて前記液晶パネル15側へ導くことによりその液晶パネル15を背面側から照明する。
そのため,前記バックライト17は,3原色各々の光を出力する前記LED41と,その出力光を前記液晶パネル15側へ導く導光板42とを備えている。
そして,前記導光板42は,その一端が前記バックライト基板30に対してビス43により固定されている。これにより,前記導光板42は,前記バックライト基板30により片持ち支持された状態となっている。片持ち支持された前記導光板42における前記バックライト基板30から浮き上がった部分の長さは,例えば,50mm程度である。
また,前記液晶パネル15に固定された端部における前記LED41に対向する端面から前記LED41の出射光が導入され,その3原色の光は,前記導光板42の内部で混合されて白色光となり,その白色光が,前記導光板42における前記液晶パネル15側に向く他方の端面から放射される。
また,前記導光板42における光の放射面と前記液晶パネル15との間に配置された拡散板50により,前記導光板42から放射された白色光が,拡散光となって前記液晶パネル15に対してその背面側から照射される。
ここで,片持ち支持された前記導光板42の共振周波数は,前記スピーカ25の出力音の周波数帯域の一部と重複する。
また,前記調光回路16は,前記制御回路4からの制御指令に従って,前記バックライト17の光源である前記LED41に対する供給電力を調節することにより,前記バックライト17の発光の明るさを調節する回路である。
【0013】
前記リモコン受光部6は,当該液晶テレビジョン受像機Xの操作用のリモコン7(リモート操作器)から,一般にリモコンプロトコルと称される信号伝送プロトコルに従って,赤外線による無線信号受信を行う信号伝送インターフェースである。そして,前記リモコン受光部6は,赤外線信号から前記リモコン7に対する操作入力情報を表す信号を抽出し,その信号を前記制御回路4に伝送する。
前記制御回路4は,演算手段であるMPU4a,記憶手段であるROM4b(EPROM)及びEEPROM4cを備え,前記MPU4aが,制御プログラムを実行することによって当該液晶テレビジョン受像機X全体を制御する。
前記ROM4bには,前記MPU4aによって実行される制御プログラムが予め格納されている。また,前記EEPROM4cには,前記MPU4aが実行する処理において読み書き(参照又は書き込み)される各種データが記憶される。
なお,以降の説明において,前記制御回路4が実行する処理は,前記MPU4aが前記ROM4bに記憶された制御プログラムを実行することによって実現される。
例えば,前記制御回路4は,前記リモコン7及び前記リモコン受光部6を通じてチャンネル選局や音量調節の情報を取得し,その取得情報の内容に応じて前記チューナ1に対する選局指示や前記アンプ24に対する音量調節指示を出力する。
【0014】
前記音響復号回路21は,前記復調・分離回路3から伝送されてくる音響信号を復号し,復号した音響信号を前記音響選択回路22に伝送する。
前記音響選択回路22は,前記制御回路4からの制御指令に従って,入力される複数の音響信号の中から1つの音響信号を選択して後段の前記音響処理回路23側へ伝送する回路である。前記音響選択回路22に入力される音響信号には,前記チューナ1により選局された放送番組のコンテンツの音響信号(前記音響復号回路21を通じて入力される音響信号)と,前記外部信号入力部2を通じて入力される音響信号が含まれる。
【0015】
前記音響バッファ23aは,前記音響選択回路22により選択された音響信号を一時記憶し,その映像信号に基づくフレーム画像信号の前記液晶ドライバ14への伝送を遅延させるメモリである。前記音響バッファ23aが,前記信号遅延手段の一例である。
ここで,前記映像バッファ13aによる映像信号の遅延時間と,前記音響バッファ23aによる音響信号の遅延時間とは同じ時間である。これにより,映像表示と同期した音響出力が行われる。
また,前記音響処理回路23は,前記音響バッファ23aに一時記憶されている音響信号に対して各種信号処理を行うものである。例えば,前記音響処理回路23は,前記スピーカ25の特性に合わせたイコライズ処理や,サラウンド処理等を行う。
さらに,前記音響処理回路23は,前記音響バッファ23aに一時記憶されている音響信号,即ち,前記アンプ24を通じて前記スピーカ24に入力される音響信号における予め設定された特定周波数帯fxwの信号成分を減衰させるノッチフィルタ処理を行う。
また,前記音響処理回路23は,前記イコライズ処理や前記ノッチフィルタ処理を行うために,時間領域の音響信号を周波数領域の音響信号に変換するフーリエ変換処理を行う。さらに,前記音響処理回路23は,前記イコライズ処理や前記ノッチフィルタ処理が行われた後の周波数領域の音響信号を時間領域の音響信号に戻す逆フーリエ変換処理も行う。なお,図1には示されていないが,前記音声処理回路23と前記アンプ24との間には,デジタルの音響信号をアナログ信号に変換するD/A変換器が設けられている。
前記アンプ24は,前記音響処理回路23による処理後の音響信号を,前記制御回路4からの指示に従って増幅或いは減衰させる音量調節処理を行い,前記スピーカ25に出力するものである。
【0016】
図2は,前記音響処理回路23によるノッチフィルタ処理のフィルタ特性,即ち,音響信号の周波数と減衰ゲインGとの対応関係をを表す図である。
図2に示されるように,前記音響処理回路23は,前記スピーカ24に入力される音響信号における前記特定周波数帯fxwの信号成分を減衰させるノッチフィルタ処理を行う。ここで,前記特定周波数帯fxwは,片持ち支持された前記導光板42の共振周波数fxを中心とするごく狭い周波数帯域である。
このノッチフィルタ処理においては,音楽や音声等の周波数帯域である可聴周波数帯域fwにおける前記特定周波数帯fxw以外の周波数帯については,減衰ゲインが0[dB]に設定され,音響信号における元の信号成分がそのまま維持される。
このようなノッチフィルタ処理により,前記スピーカ25から大音量の音響が出力される場合でも,その音響に対して前記導光板42が共振して当該テレビジョン受像機Xの画質の悪化や振動によるノイズ音が生じる不都合を防止できる。
特に,前記スピーカ25が,装置のデザイン性の観点から,前記液晶パネル15及び前記バックライト17の背面側に配置されている場合,前記ノッチフィルタ処理による画質悪化防止の効果が顕著となる。
前記特定周波数帯fxwは,当該テレビジョン受像機Xの設計段階又は出荷調整の段階において設定されるパラメータであり,例えば,前記制御回路4における前記EEPROM4cに記憶され,その情報が前記音響処理回路23に引き渡される。
【0017】
また,図3は,音響信号の音量レベルVLとノッチフィルタの前記特定周波数帯fxwにおける中心周波数fxの信号成分に対する減衰ゲインGpとの関係を表す図である。以下,前記特定周波数帯fxwを代表する周波数fxの信号成分に対する減衰ゲインGpを,前記特定周波数帯fxwの減衰ゲインと称する。
図3に示されるように,当該液晶テレビジョン受像機Xにおいては,前記音響処理回路23が,前記ノッチフィルタ処理における前記特定周波数帯fxwの減衰ゲインGpを,音響信号の音量レベルVLに応じて動的に設定する。
即ち,前記音響処理回路23は,前記音響バッファ23aに一時記憶された音響信号の音量レベルVLが予め設定されたしきいレベルVL0未満である場合に,前記減衰ゲインGpを0[dB]に設定することにより,前記ノッチフィルタ処理による音響信号に対するフィルタ処理を解除する。この処理を行う前記音響処理回路23が,前記フィルタ解除手段の一例である。
これにより,前記スピーカ25に入力される音響信号の音量レベルが,前記導光板42の共振を生じさせない程度に小さい場合には,前記ノッチフィルタ処理によるフィルタ処理が解除される。その結果,出力音響の音量が小さい場合に聴覚上感じられる音質劣化を回避できる。
さらに,図3に示されるように,前記音響処理回路23は,前記音響バッファ23aに一時記憶された音響信号の音量レベルVLが前記しきいレベルVL0以上である場合におけるその音量レベルVLに応じて,前記ノッチフィルタ処理における前記特定周波数帯の減衰ゲインGpを変更する。この処理を行う前記音響処理回路23が,前記減衰ゲイン調節手段の一例である。
より具体的には,前記音響処理回路23は,音響信号の音量レベルVLが前記しきいレベルVL0以上である場合に,その音量レベルVLが小さいほど,前記特定周波数帯の減衰ゲインGpの絶対値を小さく,即ち,減衰幅を小さくする。これにより,出力音響の音量が比較的小さい場合に聴覚上感じられる音質劣化をさらに低減できる。また,そのようにしても,前記ノッチフィルタ処理の後の音響信号における前記特定周波数帯の信号成分の強度を,前記導光板42の共振を生じさせない程度に抑えることができる。
【0018】
ところで,前記ノッチフィルタ処理において,前記特定周波数帯の減衰ゲインGpが急変すると,前記スピーカ25の出力音響において聴覚上感じられる音質が急変し,その音響を聞く人に違和感を感じさせてしまう場合がある。
そこで,前記音響処理回路23は,前記音響バッファ23aによる遅延期間中の音響信号の音量レベルVLを検出し,検出した前記しきいレベルVL0以上の音量レベルVLに応じて,前記音響バッファ23aによる遅延後の音響信号に反映される前記特定周波数帯の減衰ゲインGpを徐々に変化させる。
例えば,前記音響処理回路23は,遅延処理後の音響信号の音量レベルVLをその遅延期間中に事前に検出する。さらに,前記音響処理回路23は,遅延期間中に検出した音量レベルVLに応じて遅延処理後の音響信号に対する前記特定周波数帯の減衰ゲインGpを,目標減衰ゲインとして設定する。そして,前記音響処理回路23は,前記ノッチフィルタ処理における前記特定周波数帯の減衰ゲインGpを,現状の減衰ゲインから前記目標減衰ゲインまで徐々に変化させる。
【0019】
以下,図4に示されるタイムチャートを参照しつつ,音響信号の音量レベルVLの検出方法及び前記特定周波数帯の減衰ゲインGpの設定方法の一例について説明する。なお,図4に示されるタイムチャートは,紙面に向かって左方向が時間軸方向となっている。
ここで,前記音響バッファ23aにより音響信号の遅延時間,即ち,前記音響バッファ23aに一時滞留する時間をu,ある時点の時刻をt(i),その時刻t(i)から時間uが経過する毎の時刻をt(i+u),t(i+2u),t(i+3u),…とする。また,前記音響バッファ23aに入力される遅延処理前の音響信号をSvin,前記音響バッファ23aから出力される遅延処理後の音響信号をSvoutとする。また, 時刻t(i+u),t(i+2u),t(i+3u),…に検出される遅延処理後の音響信号Svoutの音量レベルの検出値を,VL(i+u),VL(i+2u),VL(i+3u),…とする。
前記音響処理回路23は,時刻t(i+u),t(i+2u),t(i+3u),…の各時点において,遅延処理後の音響信号Svoutの時刻t(i+u)〜t(i+2u),t(i+2u)〜t(i+3u),t(i+3u)〜t(i+4u),…の各期間における音量レベルVL(i+u),VL(i+2u),VL(i+3u),…を,前記音響バッファ23aに一時蓄積された遅延期間中の音響信号から事前に検出する。
【0020】
図4に示される例では,前記音響処理回路23は,時刻t(i+u) ,t(i+2u),t(i+3u), …の各時点において,その時点で前記音響バッファ23aに一時蓄積されている最新の時間u分の音響信号Svoutの音量レベルの最大値を検出し,その最大値を遅延処理後の音響信号Svoutの時刻t(i+u)〜t(i+2u),t(i+2u)〜t(i+3u),t(i+3u)〜t(i+4u),…の各期間における音量レベルVL(i+u),VL(i+2u),VL(i+3u),…とする。なお,前記音響バッファ23aに一時蓄積されている最新の時間u分の音響信号Svoutの音量レベルの平均値を,音量レベルVL(i+u),VL(i+2u),VL(i+3u),…とすることも考えられる。
また,前記音響バッファ23aに一時蓄積されている音響信号の音量レベルとは,前記音響バッファ23aに入力される元々の音響信号の音量レベルに対し,前記アンプ24に対して設定される音量調節ゲインに相当する係数を乗算して算出されるレベルのことである。ここで,前記アンプ24に設定される音量調節ゲインは,前記MPU4aにより,前記リモコン7を通じてユーザにより設定される音量情報に応じて設定される。
また,前記アンプ24に設定される音量調節ゲインを,前記音響バッファ23aに一時蓄積されている音響信号の音量レベルとして代用することも考えられる。
【0021】
さらに,前記音響処理回路23は,時刻t(i+u) ,t(i+2u),t(i+3u), …の各時点において,その時点で検出した音量レベルVL(i+u),VL(i+2u),VL(i+3u),…に応じて遅延処理後の音響信号に対する前記特定周波数帯の減衰ゲインGp(i+u),Gp(i+2u),Gp(i+3u),…を,目標減衰ゲインとして設定する。そして,前記音響処理回路23は,前記ノッチフィルタ処理における前記特定周波数帯の減衰ゲインGpを,現状の減衰ゲインから前記目標減衰ゲインまで所定時間vの間に徐々に変化させる。但し,時間vは,遅延時間uよりも短い時間に設定されている。
図4に示される例では,前記音響処理回路23が,時刻t(i+u) ,t(i+2u),t(i+3u), …の各時点から予め定められた時間vが経過するまでの間に,前記ノッチフィルタ処理に用いる減衰ゲインGpを,それまでに設定していた減衰ゲインGp(i),Gp(i+u),Gp(i+2u),…から前記目標減衰ゲインGp(i+u),Gp(i+2u),Gp(i+3u),…まで一定のペースで徐々に変化させる例である。その他,前記ノッチフィルタ処理に用いる減衰ゲインGpの変化ペースを,一次遅れ関数や二次関数等により定めることも考えられる。
また,減衰ゲインGpの変化のペースを,予め定められた下限ペースから上限ペースまでの範囲内に制限することも考えられる。
これにより,前記特定周波数帯fxwの減衰ゲインGpが徐々に変化するので,聴覚上感じられる音質の急変を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は,液晶テレビジョン受像機等の液晶表示装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の一例である液晶テレビジョン受像機Xの概略構成を表すブロック図。
【図2】液晶テレビジョン受像機Xにおけるノッチフィルタのフィルタ特性を表す図。
【図3】液晶テレビジョン受像機Xにおける音響信号の音量レベルとノッチフィルタの特定周波数帯の減衰ゲインとの関係を表す図。
【図4】液晶テレビジョン受像機Xにおける音響信号の音量レベルの検出方法と特定周波数帯の減衰ゲインの設定方法とを説明するためのタイムチャート。
【図5】液晶テレビジョン受像機における片持ち支持された導光板を備えたバックライトの断面図。
【図6】液晶テレビジョン受像機における片持ち支持された導光板を備えたバックライトの平面図。
【符号の説明】
【0024】
X :液晶テレビジョン受像機
1 :チューナ
2 :外部信号入力部
3 :復調・分離回路
4 :制御回路
6 :リモコン受光部
7 :リモコン
11 :映像復号回路
12 :映像選択回路
13 :映像処理回路
13a:映像バッファ
14 :液晶ドライバ
15 :液晶パネル
16 :調光回路
17 :バックライト
21 :音響復号回路
22 :音響選択回路
23 :音響処理回路
23a:音響バッファ
24 :アンプ
25 :スピーカ
30 :バックライト基板
40 :投光部
41 :LED
42 :導光板
50 :拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示する液晶パネルと,光源からの光を片持ち支持された導光板を通じて前記液晶パネル側へ導くことにより該液晶パネルを照明するバックライトと,スピーカと,を備えた液晶表示装置であって,
前記スピーカに入力される音響信号における,前記導光板の共振周波数の帯域である特定周波数帯の信号成分を減衰させるノッチフィルタと,
前記音響信号の音量レベルが予め設定されたしきいレベル未満である場合に前記ノッチフィルタによる前記音響信号に対するフィルタ処理を解除するフィルタ解除手段と,
を具備してなることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記音響信号の音量レベルが前記しきいレベル以上である場合におけるその音量レベルに応じて前記ノッチフィルタにおける前記特定周波数帯の減衰ゲインを変更する減衰ゲイン調節手段を具備してなる請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記音響信号を一時記憶して該音響信号の前記スピーカへの伝送を遅延させる信号遅延手段を具備し,
前記減衰ゲイン調節手段が,前記信号遅延手段による遅延期間中の前記音響信号の前記しきいレベル以上の音量レベルに応じて,前記信号遅延手段による遅延後の前記音響信号における前記特定周波数帯の減衰ゲインを徐々に変化させてなる請求項2に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−124442(P2010−124442A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298769(P2008−298769)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】