説明

液晶表示装置

【課題】透過部での透過表示のみならず反射部での反射表示においても視野角の拡大が可能な半透過型の液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アレイ基板10と対向基板20との間にホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層30を保持した構成であり、各画素PXに透過部PTと反射部PRとを備えた半透過型の液晶表示パネル1と、
液晶表示パネルをアレイ基板側から照明するバックライト60と、
液晶表示パネルとバックライトとの間に配置された第1光学素子と、
液晶表示パネルの対向基板側に配置された第2光学素子と、を備え、
第2光学素子は、ネマティック液晶分子を法線方向に沿ってハイブリッド配向した状態で固定化させた層を含み、2軸の屈折率異方性を有する位相差板RF3を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置に係り、特に、外光を選択的に反射して画像を表示する反射部とバックライト光を選択的に透過して画像を表示する透過部とを一画素内に有する半透過型液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、軽量、薄型、低消費電力などの特徴を生かして、パーソナルコンピュータなどのOA機器やテレビなどの表示装置として各種分野で利用されている。近年では、液晶表示装置は、携帯電話などの携帯端末機器や、カーナビゲーション装置、ゲーム機などの表示装置としても利用されている。
【0003】
特に、携帯端末機器への用途では、消費電力を低減することが極めて重要であり、半透過型液晶表示装置が注目されている。
【0004】
この半透過型液晶表示装置は、同一画素内において、反射電極を有する反射部と、透過電極を有する透過部とを備えている。このような半透過型液晶表示装置は、画素内の透過部を利用してバックライト光を選択的に透過することによって画像を表示する透過型液晶表示装置として機能するとともに、画素内の反射部を利用して外光を選択的に反射することによって画像を表示する反射型液晶表示装置として機能する。
【0005】
一方で、液晶表示装置においては、視野角の拡大が望まれている。
【0006】
例えば、特許文献1においては、特に透過モードでの表示が明るく光コントラストであり視野角依存性の少ない半透過型液晶表示装置が開示されている。この特許文献1によれば、半透過型液晶表示装置は、液晶セルの表示面側に配置された上側偏光板、上側偏光板と液晶セルとの間に配置されλ/2のリタデーション(位相差)を付与する位相差補償板及びλ/4のリタデーションを付与する位相差補償板、液晶セルの上側偏光板とは反対側に配置された半透過反射板、液晶セルの後方に配置した下側偏光板、下側偏光板と液晶セルとの間に配置されλ/2のリタデーション(位相差)を付与する液晶フィルム及びλ/4のリタデーションを付与するポリカーボネートフィルムを備えている。
【0007】
液晶フィルムとしては、ネマティック液晶性を示す液晶材料を液晶状態においてハイブリッド配向させた後に固定化することによって得たものを適用している。
【特許文献1】特開2002−31717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、透過部での透過表示のみならず反射部での反射表示においても視野角の拡大が可能な半透過型の液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の態様による液晶表示装置は、
第1基板と第2基板との間にホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層を保持した構成であり、各画素に透過部と反射部とを備えた半透過型の液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルを前記第1基板側から照明するバックライトと、
前記液晶表示パネルと前記バックライトとの間に配置された第1光学素子と、
前記液晶表示パネルの前記第2基板側に配置された第2光学素子と、を備え、
前記第1光学素子は、第1偏光板と、前記第1偏光板と前記液晶表示パネルとの間に配置され1/4波長の位相差を与える第1位相差板と、前記第1偏光板と前記第1位相差板との間に配置され1/2波長の位相差を与える第2位相差板と、を含み、
前記第2光学素子は、第2偏光板と、前記第2偏光板と前記液晶表示パネルとの間に配置され1/4波長の位相差を与える第3位相差板と、前記第2偏光板と前記第3位相差板との間に配置され1/2波長の位相差を与える第4位相差板と、を含み、
前記第3位相差板は、ネマティック液晶分子を法線方向に沿ってハイブリッド配向した状態で固定化させた層を含み、2軸の屈折率異方性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、透過部での透過表示のみならず反射部での反射表示においても視野角の拡大が可能な半透過型の液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施の形態に係る液晶表示装置について図面を参照して説明する。なお、ここでは、液晶表示装置として、1画素内に外光を選択的に反射することによって画像を表示する反射部とバックライト光を選択的に透過することによって画像を表示する透過部とを有する半透過型液晶表示装置を例に説明する。
【0012】
図1乃至図3に示すように、液晶表示装置は、半透過型の液晶表示パネル1を備えている。この液晶表示パネル1は、一対の基板すなわちアレイ基板(第1基板)10と対向基板(第2基板)20との間に液晶層30を保持した構成であり、マトリクス状に配置された複数の画素PXを備えている。各画素PXは、反射部PRと、透過部PTと、を備えている。
【0013】
アレイ基板10は、ガラスなどの光透過性を有する絶縁基板11を用いて形成されている。このアレイ基板10は、絶縁基板11の一方の主面(つまり、液晶層30と対向する面)に、画素PXの行方向に沿って配置された複数の走査線Y、画素PXの列方向に沿って配置された複数の信号線X、走査線Yと信号線Xとの交差部近傍において画素PX毎に配置されたスイッチ素子12、スイッチ素子12に接続され画素PX毎に配置された画素電極13、画素電極13上に配置された図示しない配向膜などを備えている。
【0014】
スイッチ素子12は、例えば、アモルファスシリコン膜や多結晶シリコン膜などによって形成された半導体層12SCを備えた薄膜トランジスタ(TFT)によって構成されている。
【0015】
スイッチ素子12のゲート電極12Gは、走査線Yとともに絶縁基板11の上に配置されている。ゲート電極12Gは、走査線Yに接続されている(あるいは、ゲート電極12Gは、走査線Yと一体的に形成されている)。これらのゲート電極12G及び走査線Yは、例えば、モリブデン−タングステン(MoW)によって形成されている。ゲート絶縁膜15は、ゲート電極12G及び走査線Yを覆っている。ゲート絶縁膜15は、例えば、酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜などの無機系材料によって形成されている。半導体層12SCは、ゲート絶縁膜15の上に配置され、そのチャネル領域が保護膜16によって覆われている。
【0016】
スイッチ素子12のソース電極12Sは、低抵抗膜17を介して半導体層12SCにコンタクトしている。ソース電極12Sは、信号線Xに接続されている(あるいは、ソース電極12Sは、信号線Xと一体的に形成されている)。スイッチ素子12のドレイン電極12Dは、低抵抗膜18を介して半導体層12SCにコンタクトしている。
【0017】
これらのソース電極12S、ドレイン電極12D、及び信号線Xは、例えば、モリブデン(Mo)/アルミニウム(Al)/モリブデン(Mo)を順に積層した積層体によって形成されている。
【0018】
これらのソース電極12S及びドレイン電極12Dは、層間絶縁膜19によって覆われている。この層間絶縁膜19は、例えば、窒化シリコン膜などの無機系材料によって形成されている。さらに、この層間絶縁膜19は、有機系材料によって形成された有機絶縁膜14によって覆われている。有機絶縁膜14の表面には、反射部PRにおいて、反射表示における表示品位を改善するなどの目的で凹凸パターン14Pが形成されている。ここでは、スイッチ素子12は、透過部PTの開口率低減を避けるため、反射部PRに配置されており、層間絶縁膜19及び有機絶縁膜14によって覆われている。
【0019】
画素電極13は、反射部PRに配置された反射電極13R及び透過部PTに配置された透過電極13Tを有している。反射電極13Rと透過電極13Tとは、電気的に接続されている。画素電極13は、有機絶縁膜14の上に配置されている。反射電極13Rは、有機絶縁膜14の凹凸パターン14Pの表面を覆っている。反射電極13Rは、アルミニウムなどの光反射性を有する導電材料によって形成されている。透過電極13Tは、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)などの光透過性を有する導電材料によって形成されている。
【0020】
このような画素電極13の反射電極13Rと反射部PRに配置されたスイッチ素子12との間には、絶縁層として、層間絶縁膜19及び有機絶縁膜14が介在している。反射電極13Rは、有機絶縁膜14及び層間絶縁膜19に形成されたコンタクトホールを介してスイッチ素子12のドレイン電極12Dにコンタクトしている。これにより、画素電極13は、スイッチ素子12と電気的に接続されている。
【0021】
一方、対向基板20は、ガラスなどの光透過性を有する絶縁基板21を用いて形成されている。この対向基板20は、絶縁基板21の一方の主面(つまり、液晶層30と対向する面)に、反射部PRと透過部PTとでの液晶層30のギャップ差を形成するための樹脂層23、樹脂層23を覆うとともに複数の画素電極13と対向するように配置された対向電極22、対向電極22上に配置された図示しない配向膜などを備えている。対向電極22は、ITOなどの光透過性を有する導電材料によって形成されている。
【0022】
カラー表示タイプの液晶表示装置においては、対向基板20は、各画素PXに対応して絶縁基板21の一方の主面に配置されたカラーフィルタ層24を備えている。カラーフィルタ層24は、互いに異なる複数の色、例えば、赤色、青色、緑色といった3原色にそれぞれ着色された着色樹脂によって形成されている。赤色着色樹脂、青色着色樹脂、及び緑色着色樹脂は、それぞれ赤色画素、青色画素、及び緑色画素に対応して配置されている。また、対向基板20は、カラーフィルタ層24の表面の凹凸の影響を緩和するなどのために、カラーフィルタ層24の上にオーバーコート層を備えていても良い。なお、図3に示したカラー表示タイプの液晶表示装置の例では、カラーフィルタ層24は、対向基板側に配置されているが、アレイ基板側に配置しても良い。
【0023】
アレイ基板10と対向基板20との間のギャップは、反射部PRと透過部PTとでは異なるように形成されている。反射部PR及び透過部PTはそれぞれ適正なギャップに形成されている。反射部PRにおけるギャップは、概ね透過部PTの半分に設定されることが多い。この実施の形態においては、透過部PTにおけるギャップは4.25μmであり、反射部PRにおけるギャップは2.15μmに設定されている。
【0024】
このようなギャップ差は、樹脂層23によって形成されている。樹脂層23は、反射部PRに対応して配置されている。このため、反射部PRと透過部PTとでは、実質的に樹脂層23の厚さのギャップ差が形成される。この樹脂層23は、光透過性を有する樹脂材料によって形成されている。
【0025】
上述したような構成のアレイ基板10と対向基板20とは、図示しないスペーサ(例えば、樹脂材料によって一方の基板と一体的に形成された柱状スペーサ)を介して互いに所定のギャップを維持した状態で配置され、シール材によって貼り合わせられている。液晶層30は、これらアレイ基板10と対向基板20との間のギャップに封入された液晶組成物によって形成されている。特に、この実施の形態においては、ECBモードを採用しており、液晶層30は、アレイ基板10と対向基板20との間でホモジニアス配向した液晶分子を含んでいる。
【0026】
また、液晶表示装置は、液晶表示パネル1をアレイ基板側から照明するバックライト60を備えている。
【0027】
さらに、液晶表示装置は、液晶表示パネル1とバックライト60との間に配置された第1光学素子OD1と、液晶表示パネル1の対向基板側に配置された第2光学素子OD2と、を備えている。すなわち、上述したような半透過型の液晶表示パネル1に対しては、円偏光もしくは楕円偏光を利用して反射表示及び透過表示を行う。このため、第1光学素子OD1及び第2光学素子OD2は、円偏光板もしくは楕円偏光板として機能する。
【0028】
より具体的には、図4に示すように、第1光学素子OD1は、第1偏光板PL1と、第1偏光板PL1と液晶表示パネル1との間に配置された第1位相差板RF1及び第2位相差板RF2と、を備えて構成されている。図4に示した例では、第1位相差板RF1は、第1偏光板PL1と液晶表示パネル1(アレイ基板10)との間に配置されている。また、第2位相差板RF2は、第1偏光板PL1と第1位相差板RF1との間に配置されている。
【0029】
第2光学素子OD2は、第2偏光板PL2と、第2偏光板PL2と液晶表示パネル1との間に配置された第3位相差板RF3及び第4位相差板RF4と、を備えて構成されている。図4に示した例では、第3位相差板RF3は、第2偏光板PL2と液晶表示パネル1(対向基板20)との間に配置されている。また、第4位相差板RF4は、第2偏光板PL2と第3位相差板RF3との間に配置されている。
【0030】
ここで適用される第1偏光板PL1及び第2偏光板PL2は、光の進行方向に直交する平面内において、互いに直交する吸収軸及び透過軸を有している。このような偏光板は、ランダムな方向の振動面を有する光から、透過軸と平行な1方向の振動面を有する光すなわち直線偏光の偏光状態を有する光を取り出すものである。
【0031】
このような第1偏光板PL1及び第2偏光板PL2は、例えばトリアセテートセルロース(TAC)によって形成された一対のベースフィルム間に一軸延伸したポリビニルアルコール(PVA)を挟持して構成されている。
【0032】
第1光学素子OD1に含まれる第1位相差板RF1及び第2位相差板RF2は、屈折率異方性を有しており、それぞれ面内において互いに直交する遅相軸及び進相軸を有している。このため、第1位相差板RF1及び第2位相差板RF2は、それぞれ、Δn・d(nm)(但し、Δn=ne−no、dは位相差板の厚み)で定義されるそれぞれ所定の正面位相差を有している。
【0033】
第1位相差板RF1は、遅相軸と進相軸とをそれぞれ透過する所定波長(例えば550nm)の光の間に所定位相差(すなわちλを波長としたとき、λ/4の位相差)を与える機能を有している。また、第2位相差板RF2は、進相軸及び遅相軸を透過する所定波長(例えば550nm)の光の間に所定位相差(すなわちλ/2の位相差)を与える機能を有している。
【0034】
これらの第1位相差板RF1及び第2位相差板RF2は、シクロオレフィンポリマ(COP)を用いて形成されている。第1位相差板RF1は、たとえば、100nm〜120nm程度のリタデーションを有するように形成されている。また、第2位相差板RF2は、たとえば、250nm〜270nm程度のリタデーションを有するように形成されている。
【0035】
第1偏光板PL1と第2位相差板RF2との間、第2位相差板RF2と第1位相差板RF1との間は、それぞれ粘着材により互いに貼り合わせされ、第1光学素子OD1として一体化されている。さらに、第1位相差板RF1と液晶表示パネル1のアレイ基板10を構成する絶縁基板11との間も粘着材により互いに貼り合わせられ、液晶表示パネル1と第1光学素子OD1とが一体化されている。
【0036】
第2光学素子OD2に含まれる第3位相差板RF3及び第4位相差板RF4も同様に、屈折率異方性を有しており、それぞれ面内において互いに直交する遅相軸及び進相軸を有している。
【0037】
第3位相差板RF3は、遅相軸と進相軸とをそれぞれ透過する所定波長(例えば550nm)の光の間に所定位相差(すなわちλを波長としたとき、λ/4の位相差)を与える機能を有している。また、第4位相差板RF4は、進相軸及び遅相軸を透過する所定波長(例えば550nm)の光の間に所定位相差(すなわちλ/2の位相差)を与える機能を有している。この第4位相差板RF4は、シクロオレフィンポリマ(COP)を用いて形成されている。第4位相差板RF4は、たとえば、250nm〜270nm程度のリタデーションを有するように形成されている。
【0038】
第2偏光板PL2と第4位相差板RF4との間、第4位相差板RF4と第3位相差板RF3との間は、それぞれ粘着材により互いに貼り合わせされ、第2光学素子OD2として一体化されている。さらに、第3位相差板RF3と液晶表示パネル1の対向基板20を構成する絶縁基板21との間は散乱性の粘着材により互いに貼り合わせられ、液晶表示パネル1と第2光学素子OD2とが一体化されている。
【0039】
また、ここで適用される第3位相差板RF3は、光学的に異方性を有する位相差板であり、光学的に正の1軸性の屈折率異方性を有するネマティック液晶分子を液晶状態において法線方向(すなわち位相差板の厚み方向)に沿ってハイブリッド配向した状態で固定化させた層を含み、2軸の屈折率異方性を有している(このような位相差板はO−プレートとも称されている)。このような第3位相差板RF3は、λ/4の位相差を与える機能に加えて、液晶層30に含まれる液晶分子の配向により視角に依存して変化する液晶層30のリタデーションを光学的に補償する機能を有しており、視野角拡大機能を有した位相差板に相当する。
【0040】
このような構成によれば、主として視野角拡大機能を有した位相差板(RF3)を液晶表示パネル1の観察者側に配置したことにより、透過表示のみならず反射表示においても視野角の拡大が可能となる。
【0041】
上述した構成の液晶表示装置について、反射表示及び透過表示を行った際の特性をシミュレーションしたところ、特許文献1で開示されたような液晶セルの後方に液晶フィルムを配置した構成(比較例)と同等の透過表示特性が得られるのに加えて、反射表示を行った際には比較例よりも視野角が拡大できていることが確認された。
【0042】
図5は、比較例の構成において反射表示を行った際のコントラスト比の視野角依存性のシミュレーション結果を示したものであり、図6は図4に示した構成において反射表示を行った際のコントラスト比の視野角依存性のシミュレーション結果を示したものである。
【0043】
ここで、コントラスト比の視野角依存性に関する測定結果を示す図においては、中心が液晶表示パネル1の法線方向に相当し、法線方向を中心とした同心円は、法線に対する倒れ角度(視角)が20°〜80°に相当する。ここで示した特性図は、各方位について等コントラスト比の領域を結ぶことで得られたものである。
【0044】
図6に示したように、本構成によれば、等コントラスト比(CR)=10:1の視野角範囲は、画面の全方位について50°以上となり、十分な広視野角化を実現できていることが確認できた。
【0045】
ここで、本構成のように、液晶分子を固定化させた層を含む位相差板(RF3)を液晶表示パネル1の観察者側に配置したことによる更なる利点について説明する。
【0046】
ホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層30に電圧を印加して液晶分子の配向状態を切り替え液晶層30のリタデーションを制御するモードに代表されるECBモードにおいては、リタデーションの設計が極めて重要である。特に、第3位相差板RF3のリタデーションは、固定化された液晶分子の配向状態などに基づいて決定されるが、所望の配向状態が得られなかった場合などには設計値から大幅にずれるおそれがある。このような場合、ECBモードでは、表示に悪影響を及ぼす。
【0047】
液晶表示装置として組み立てられた後の表示性能評価で、液晶分子を固定化させた層を含む位相差板が所望のリタデーションを有していないことに起因してNG判定となった場合には、位相差板の貼り替えが必要となる。
【0048】
比較例のように、液晶セルの後方に液晶フィルムを配置した構成では、液晶フィルムを含む円偏光板がバックライトに貼り付けられているため、液晶フィルムの貼り替えが必要となった際、円偏光板をバックライトから剥がす必要がある。円偏光板とバックライトとは両面テープなどで強固に接着されているため、円偏光板が剥がされた後のバックライトは再利用できないことが多い。バックライトは、液晶表示装置の構成部品の中でも比較的高価であるため、再利用できない場合には、歩留まりの低下及び製造コストの増大を招く。
【0049】
これに対して、本構成によれば、液晶分子を固定化させた層を含む位相差板RF3の貼り替えが必要となった際、液晶表示パネル1から第2光学素子OD2を剥がして別の位相差板RF3を含む第2光学素子OD2に貼り替えれば良い。このとき、特に大きなダメージを受ける構成部品はないため、貼り替えロスが発生せず、歩留まりの低下及び製造コストの増大といった比較例の欠点を解消できる。
【0050】
また、液晶分子を固定化させた層を含む位相差板において比較的波長分散が大きい特性を有している場合には、透過する光の波長によっては付与するリタデーションが理想値よりも大きく異なることがある。このため、反射表示におけるコントラスト比の低下を招くおそれがある。
【0051】
すなわち、波長分散が大きい特性の位相差板を適用した場合、透過表示においては、液晶層とアレイ基板側及び対向基板側の位相差板によってリタデーションなどを最適化することにより補償可能である。しかしながら、反射表示においては、実質的に作用するのは対向基板側の位相差板、及び、液晶層のみであって、アレイ基板側の位相差板は作用しない。このため、透過表示での光学補償を優先した設計においては、反射表示における十分な光学補償が期待できない場合が多い。
【0052】
また、透過部での開口率低減を避けるため、スイッチ素子が、反射部に配置されている場合には、反射部に形成されたコンタクトホールを介して画素電極と電気的に接続されている。コンタクトホールでは、コンタクトホール周辺の反射部に比べてギャップが大きく、反射部として適正なギャップが形成されていないため、コンタクトホールに反射電極を配置したとしても、黒表示の際に、光漏れを引き起こしてしまう。このような光漏れは、反射表示におけるコントラスト比低下の要因となりうる。
【0053】
さらに、液晶層における透過部と反射部のギャップ差を無くすための樹脂層の端部が傾斜面として形成された場合、樹脂層の端部において、電圧印加時に画素電極と対向電極との間に不所望な斜めの電界が形成されてしまうことがある。このような斜めの電界は、液晶分子の配向不良を招き、光漏れを引き起こすおそれがある。このような光漏れも、反射表示におけるコントラスト比低下の要因となりうる。
【0054】
このような光漏れが反射コントラスト比に与える影響度は、1画素内における反射部の面積(具体的には反射部に配置された反射電極の設置面積)の占める割合が小さいほど大きくなる。このため、反射電極の面積が透過電極の面積よりも小さい構成においては、特に、光漏れの影響度が高い。
【0055】
以上の考察に鑑み、比較的波長分散が大きい特性を有する位相差板RF3を対向基板側に配置する本構成においては、反射表示を行った際、高いコントラスト比を要求されない用途、つまり、反射表示機能を補助的に活用する用途において特に有効である。このことは、以下図7における測定結果から示される。
【0056】
本構成及び比較例において、反射表示でのコントラスト比を測定した結果を図7に示す。なお、ここでは、ミノルタ社製の反射率計CM−508dを用いて測定した反射率に基づいてコントラスト比を測定した。図7において、横軸は1画素内における反射部PRに配置された反射電極13Rの占める割合(反射開口率)であり、縦軸は測定した反射コントラスト比である。また、点線Aが本構成であり、点線Bが比較例である。
【0057】
図7より本構成と比較例の反射コントラスト比を比較すると、反射開口率が小さいと本構成と比較例との反射コントラスト比の差も小さいことがわかる。この図7に示す測定結果によれば、本構成は、上述のとおり反射表示機能を補助的に活用する用途に対して有用であることがわかる。
【0058】
以上説明したように、この実施の形態の半透過型液晶表示装置によれば、反射コントラスト比の低減を抑制しつつ透過部での透過表示のみならず反射部での反射表示においても視野角の拡大が可能となる。
【0059】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る液晶表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した液晶表示装置に適用可能な液晶表示パネルの一画素の構成を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図2に示した液晶表示パネルをA−A線で切断したときの断面構造を概略的に示す図である。
【図4】図4は、本実施形態における液晶表示装置の構成、特に光学素子の構成を具体的に示す図である。
【図5】図5は、比較例の半透過型液晶表示装置において反射表示を行った際のコントラスト比の視野角依存性をシミュレーションした結果を示す図である。
【図6】図6は、図4に示した本実施形態の半透過型液晶表示装置において反射表示を行った際のコントラスト比の視野角依存性をシミュレーションした結果を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態及び比較例の反射開口率に対する反射コントラスト比の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1…液晶表示パネル PX…画素 PR…反射部 PT…透過部
10…アレイ基板 11…絶縁基板 12…スイッチ素子 Y…走査線 X…信号線
13…画素電極 13R…反射電極 13T…透過電極 40…コンタクトホール
20…対向基板 21…絶縁基板 22…対向電極 23…樹脂層
24…カラーフィルタ層
30…液晶層
60…バックライト
OD1…第1光学素子 PL1…第1偏光板
RF1…第1位相差板 RF2…第2位相差板
OD2…第2光学素子 PL2…第2偏光板
RF3…第3位相差板 RF4…第4位相差板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間にホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層を保持した構成であり、各画素に透過部と反射部とを備えた半透過型の液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルを前記第1基板側から照明するバックライトと、
前記液晶表示パネルと前記バックライトとの間に配置された第1光学素子と、
前記液晶表示パネルの前記第2基板側に配置された第2光学素子と、を備え、
前記第1光学素子は、第1偏光板と、前記第1偏光板と前記液晶表示パネルとの間に配置され1/4波長の位相差を与える第1位相差板と、前記第1偏光板と前記第1位相差板との間に配置され1/2波長の位相差を与える第2位相差板と、を含み、
前記第2光学素子は、第2偏光板と、前記第2偏光板と前記液晶表示パネルとの間に配置され1/4波長の位相差を与える第3位相差板と、前記第2偏光板と前記第3位相差板との間に配置され1/2波長の位相差を与える第4位相差板と、を含み、
前記第3位相差板は、ネマティック液晶分子を法線方向に沿ってハイブリッド配向した状態で固定化させた層を含み、2軸の屈折率異方性を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1基板は、
各画素に配置されたスイッチ素子と、
前記スイッチ素子の上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層の上において各画素に配置され、前記反射部において前記絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して前記スイッチ素子と電気的に接続された画素電極と、
を備え、
前記第2基板は、
前記反射部に配置され、前記透過部と前記反射部とでの前記液晶層のギャップ差を形成する樹脂層と、
前記樹脂層を覆うとともに、前記画素電極と対向するように配置された対向電極と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記画素電極は、各画素の透過部に配置された透過電極と、前記透過電極に電気的に接続されるとともに各画素の前記反射部に配置された反射電極と、を有し、
前記反射電極の面積は、前記透過電極の面積よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記反射部での反射コントラスト比は、15以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−8687(P2010−8687A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167586(P2008−167586)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】