液晶表示装置
【課題】画素に直流電荷がチャージされることによる残像の発生を、より高精度に抑制する。
【解決手段】データ線駆動回路(4)は、画素Xの階調値が中間階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、中間階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧の映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、中間階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧の映像信号を出力する。但し、画素Xの階調値が最小階調値である場合、データ線駆動回路(4)は、正極性の映像信号を出力する場合のみ、最小階調値に対応する正極性の最小階調電圧を補正した電圧の映像信号を出力する。ここにおいて、データ線駆動回路(4)は、正極性の最小階調電圧を補正した電圧の映像信号の出力を、中間階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行う。
【解決手段】データ線駆動回路(4)は、画素Xの階調値が中間階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、中間階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧の映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、中間階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧の映像信号を出力する。但し、画素Xの階調値が最小階調値である場合、データ線駆動回路(4)は、正極性の映像信号を出力する場合のみ、最小階調値に対応する正極性の最小階調電圧を補正した電圧の映像信号を出力する。ここにおいて、データ線駆動回路(4)は、正極性の最小階調電圧を補正した電圧の映像信号の出力を、中間階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図19は、一般的な液晶表示装置100を示す図である。同図に示すように、液晶表示装置100には、液晶パネル102、データ線駆動回路104、及び走査線駆動回路106が主として備えられ、液晶パネルには、拡大図に示すように、垂直方向に伸びるデータラインDLと、水平方向に伸びる走査ラインGLと、共通電極に跨って形成される共通ラインCLが形成される。また、拡大図に示すように、データラインDLと走査ラインGLによって囲まれた一つの画素領域には、TFTトランジスタTRと、画素電極、共通電極が備えられ、更に、TFTトランジスタTRのゲート−ドレイン間の寄生容量Cgsと、画素電極−共通電極間の画素容量Clcと、補助容量Cstを有する。
【0003】
走査線駆動回路106は、上から順番に走査ラインGLを選択し、選択した走査ラインGLに一水平期間、走査信号を出力する。また、データ線駆動回路104は、走査駆動回路106が走査ラインGLを選択するごとに、各データラインDLに映像信号を出力する。
【0004】
このような液晶表示装置100では、寄生容量Cgsの存在により、走査信号の電圧の立ち下がりに応じて画素電極の電圧が立ち下がるフィールドスルー現象が起きる。図20に、フィールドスルー現象を示した。同図に示すように、走査信号の立ち下がりに応じて画素電極の電圧が「Δ」下がっている。
【0005】
そして、このフィールドスルー現象により、液晶表示装置100において列ライン反転駆動方式やドット反転駆動方式等のフレーム反転方式が採用されていても、図21に示すように、画素電極の正極性の電圧と、画素電極の負極性の電圧と、の共通電圧Vcに対する対称性が崩れることによって、画素に直流電荷がチャージされてしまい、いわゆる残像(あるいは焼付き)という不具合が発生することがわかっている。
【0006】
そこで、下記特許文献1に記載の液晶表示装置では、画素電極の電圧が一方の極性に偏らないよう、データラインDLから出力される映像信号を補正することにより、通常より高電圧な映像信号を出力するようにしている(図22参照)。また、下記特許文献1では、Δが画素の水平位置に応じて変化することも考慮し、画素の水平位置に応じて映像信号の補正量を調節するようにもしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/133906号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、画素の階調値と、映像信号の電圧と、が図2Aに示す関係を有しているものとする。この場合、画素の階調値が最小階調(以下、黒階調と呼ぶ)を表す階調値「0」である場合において負極性の映像信号を出力する場合、階調値「0」に対応する負極性の階調電圧「V0−」より高電圧の映像信号を出力しようとしても、階調値「0」は最小階調であるため、データ線駆動回路の構成から、それ以上高い電圧は出力できない。そのため、画素の階調値が黒階調を表す階調値「0」である場合、正極性の映像信号を出力する場合しか映像信号の補正を行うことができず、その結果、残像発生を十分に抑制できないという問題がある。
【0009】
また、画素の階調値が最大階調(以下、白階調と呼ぶ)を表す階調値「Dmax」(図2A参照)である場合において正極性の映像信号を出力する場合、そもそも、データ線駆動回賂が、階調値「Dmax」に対応する正極性の階調電圧「Vm+」より高電圧の信号を出力できない。そのため、画素の階調値が白階調を表す階調値「Dmax」である場合、負極性の映像信号を出力する場合しか映像信号の補正を行うことができず、この点からも残像発生を十分に抑制できないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、画素に直流電荷がチャージされることによる残像の発生を、より高精度に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る液晶表示装置は、複数のデータ線と、複数の走査線と、前記複数のデータ線のうちのいずれかである一のデータ線と前記複数の走査線のうちのいずれかである一の走査線とに対応する一の画素の、正極性の映像信号又は負極性の映像信号を、所定の出力周期で選択的に、前記一のデータ線に出力するデータ線駆動回路と、前記一の画素の映像信号が出力される場合に、前記一の走査線に走査信号を出力する走査線駆動回路と、を含む液晶表示装置において、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が、最小階調を表す第1階調値及び最大階調を表す第2階調値、以外の階調値である中間階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、前記一の画素の階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、前記一の画素の階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が第1階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、第1階調値に対応する正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、第1階調値に対応する負極性の第1階調電圧を有する映像信号を出力し、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が第2階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、第2階調値に対応する正極性の第2階調電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、第2階調値に対応する負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、前記データ線駆動回路は、正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力を、中間階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行い、且つ、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力を、中間階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行うこと、を特徴とする。
【0012】
本発明の一態様では、前記データ線駆動回路は、正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、における電圧補正量を所定の周期で変化させてよい。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記液晶表示装置は、前記一の画素の階調値が第1階調値と第2階調値とのいずれかである場合に、前記一の画素の階調値を複数の補正量候補を含む補正量候補群に基づいて補正し、補正階調値を生成する生成回路と、前記一の画素の階調値が第1階調値と第2階調値とのいずれかである場合に、前記一の画素の階調値自身と、前記生成回路により生成された補正階調値と、のうちのいずれか一方を選択的に出力する出力回路と、をさらに含み、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が第1階調値である場合において、前記一の画素の階調値自身が前記出力回路から出力された場合、負極性の第1階調電圧を有する映像信号を出力し、補正階調値が前記出力回賂から出力された場合、当該補正階調値に対応する正極性の電圧を有する映像信号を出力し、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が第2階調値である場合において、前記一の画素の階調値自身が前記出力回路から出力された場合、正極性の第2階調電圧を有する映像信号を出力し、補正階調値が前記出力回賂から出力された場合、当該補正階調値に対応する負極性の電圧を有する映像信号を出力し、前記生成回路は、前記一の画素の階調値の補正に用いる補正量候補群を前記所定の周期で切り替えてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記補正量候補群に含まれる補正量候補は、それぞれ異なる水平位置と関連づけられ、前記生成回賂は、前記補正量候補群に含まれる補正量候補と、前記一の画素の水平位置と、各補正量候補に関連づけられた水平位置と、に基づいて補間演算を行うことにより、補正量を決定してもよい。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記生成回路は、前記一の画素の階調値が第1階調値である場合と、前記一の画素の階調値が第2階調値である場合と、で異なる補正量候補群に基づいて補正量を決定してもよい。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記所定の周期は、前記データ線駆動回路の極性反転周期以上の長さであってもよい。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記データ線駆動回路は、正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、を電圧補正量の平均が前記一の画素の前記走査線駆動回路からの距離が短いほど大きくなるように行ってよい。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記データ線駆動回路は、正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、を電圧補正量の平均が前記一の画素の前記走査線駆動回路からの距離を変数とする減少指数関数の関数値に応じた量になるように行ってもよい。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記走査線駆動回路は、所定の長さの水平期間、前記一の走査線に走査信号を出力し、前記データ線駆動回路は、正極性の映像信号を出力する場合、前記水平期間のうちの前記水平期間の終了時期を含む一部の後段期間、映像信号を出力し、前記水平期間のうちの前記後段期間を除く前段期間、映像信号より高いあるいは低い電圧を有する信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合、前記後段期間、映像信号を出力し、前記前段期間、映像信号より低いあるいは高い電圧を有する信号を出力してよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置を示す図である。
【図2A】階調値と階調電圧との関係を示す図である。
【図2B】階調値と階調電圧との関係を示す図である。
【図3A】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図3B】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図4】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図5】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図6】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図7】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図8】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図9A】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図9B】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図9C】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図9D】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図10】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図11】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図12】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図13】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図14】変形例1について説明するための図である。
【図15】変形例1について説明するための図である。
【図16】開発経緯について説明するための図である。
【図17A】開発経緯について説明するための図である。
【図17B】開発経緯について説明するための図である。
【図17C】開発経緯について説明するための図である。
【図18A】変形例2について説明するための図である。
【図18B】変形例2について説明するための図である。
【図19】一般的な液晶表示装置を示す図である。
【図20】フィールドスルー現象を示す図である。
【図21】画素電極の正極性の電圧と画素電極の負極性の電圧とが共通電圧に対して非対称になる様子を示す図である。
【図22】映像信号が補正される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の例について図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
[液晶表示装置]
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置2を示す図である。液晶表示装置2は、液晶パネル9と、液晶パネル9の上部に備えられたデータ線駆動回路4と、液晶パネル9の左右に備えられた走査線駆動回路6a,6bと、縦スジ補正回路8と、タイミング制御回路10と、を備える。なお、液晶表示装置2は、これらの他にも、参照電圧生成回路(不図示)、共通電圧生成回路(不図示)、及びバックライト(不図示)等も備えている。本実施形態の場合、IPS(In Plane Switching)方式の液晶パネルを採用しているが、例えばTN(Twisted Nematic)方式やVA (Vertical Alignment)方式の液晶パネルを採用してもよい。なお、走査線駆動回路6aと走査線駆動回路6bとを総称して、走査線駆動回路6と記載する場合がある。
【0023】
液晶パネル9には、拡大図に示すように、垂直方向に伸びる複数のデータラインDLと、水平方向に伸びる複数の走査ラインGLと、共通電極と、複数の共通電極に跨って形成される共通ラインCLと、データラインDLと走査ラインGLとに囲まれる複数の画素と、が備えられる。各共通ラインCLには、共通電圧生成回路により共通電圧Vcが供給される。また、拡大図に示すように、一つの画素には、TFTトランジスタTRと、TFTトランジスタTRのゲート−ドレイン間の寄生容量Cgsと、画素電極−共通電極間の画素容量Clcと、補助容量Cstと、が含まれる。画素容量Clcは、画素電極と共通電極とにより構成される。なお、本実施形態の場合、画素配列の方式として、いわゆるストライプ配列が採用されている。
【0024】
縦スジ補正回路8には、各画素の階調値を示すビットデータが入力される。
【0025】
また、走査線駆動回路6は、タイミング制御回路10からのタイミング制御信号に従って上から順番に走査ラインGLを一水平時間ずつ選択し、選択した走査ラインGLに走査信号を出力する。また、データ線駆動回路4は、タイミング制御信号に従い、走査駆動回路6が走査ラインGLを選択するごとに、各データラインDLに映像信号を出力する。
【0026】
すなわち、複数の走査ラインGLのうちのいずれかである任意の走査ラインGLX(例えば、一番上の走査ラインGL)、及び複数のデータラインDLのうちのいずれかである任意のデータラインDLX(例えば、一番左のデータラインDL)に着目した場合、走査線駆動回路6は、タイミング制御信号に従い、フレーム時間間隔で、走査ラインGLX(一の走査線)を選択し、走査ラインGLXに一水平時間、走査信号を出力する。また、データ線駆動回路4は、タイミング制御信号に従い、走査ラインGLXに走査信号が出力される間、データラインDLX(一のデータ線)に、走査ラインGLXとデータラインDLXとが交差する位置にある画素(以下、画素Xと記載する)の階調値に応じた映像信号を出力する。
【0027】
なお、走査ラインGLの総数と一水平時間との積がフレーム時間である。また、以下、走査ラインGLXが選択される期間のことを一水平期間と呼ぶ。
【0028】
以下、「一水平期間、データラインDLXに出力される映像信号」のことを「画素Xの映像信号」と呼ぶ。
【0029】
また、この液晶表示装置2では、フレーム反転方式が採用されており、データ線駆動回路4から出力される映像信号の極性がフレーム時間間隔で反転される。データ線駆動回路4は、フレーム時間間隔で、画素Xの負極性の映像信号と画素Xの正極性の映像信号とのうちのいずれか一方を、データラインDLXに選択的に出力することになる。
【0030】
なお、本実施形態の場合、フレーム反転方式のうちの列毎反転駆動方式が採用されている。そのため、データラインDLXから出力される画素Xの映像信号の極性と、画素Xの左右の画素の映像信号の極性と、は逆になる。
【0031】
[階調電圧]
図2A及び図2Bは、データ線駆動回路4に予め設定された、階調値と、階調値に対応する階調電圧と、の関係を示す図である。本実施形態の場合、階調値と階調値に対応する階調電圧とは、図2Aに示す関係を有している。図2Aによれば、階調値「D」に対応する負極性の階調電圧は「VD−」となり、階調値「D」に対応する正極性の階調電圧は「VD+」となる。また、図2Aによれば、階調値「D」が最小階調(以下、黒階調)を表す最小階調値「0」の場合、最小階調値「D」に対応する負極性の階調電圧「V0−」及び正極性の階調電圧「V0+」とも「V0」となる。図2Aでは、「VD−」と「VD+」との平均は、必ず「V0」となる。
【0032】
なお、共通電極の電圧である共通電圧Vc(不図示)は、「VD+」と「VD−」の平均値であるセンター電圧(この場合、V0)よりも、およそΔvだけ低い値(すなわち、「V0−Δv」)に設定されている。すなわち、「VD+−Δv」と「VD−−Δv」と、が共通電圧Vcに対して対称になるように設定されている。ここではΔvは、後述するフィールドスルー現象により液晶パネル9の中央の水平方向の位置である中央水平位置において発生する電圧降下量に設定されている。
【0033】
なお、図2Aに示すように、最大階調(以下、白階調)を表す最大階調値(第2階調値)「Dmax」以上の値に対応する電圧は、正極性に関しても負極性に関しても設定されていない。そのため、本実施形態の場合、データ線駆動回路4は、最大階調値「Dmax」に対応する正極性の電圧「Vm+」より高い電圧を出力することも、最大階調値「Dmax」に対応する負極性の電圧「Vm−」より低い電圧を出力することもできない。
【0034】
なお、階調電圧「V0−」と階調電圧「V0+」とが同電圧である必要はない。階調値と、階調値に対応する階調電圧と、は例えば図2Bに示す関係を有していてもよい。
【0035】
[データ線駆動回路の動作概要]
以下、データ線駆動回路4の動作概要につき、図3A乃至図7を参照しながら、画素Xの映像信号の出力を例に取り上げて説明する。なお、以下、画素Xの画素電極の電圧のことを「画素Xの電圧」と呼ぶ。
【0036】
液晶表示装置2では、寄生容量Cgsの存在により、走査ラインGLXに出力される走査信号の立ち下がりに応じて画素Xの画素電極の電圧が立ち下がるフィールドスルー現象が起きる。そのため、データ線駆動回路4が画素Xの階調値に対応する階調電圧「VD+(VD−)」を画素Xの映像信号としてデータラインDLXから出力するようにすると、画素Xの電圧が映像信号「VD+(VD−)」より「ΔV」(ΔV≧Δv)だけ下がってしまう。そのため、図3Aに示すように、画素Xの正極性の電圧「VD+−ΔV」と、画素Xの負極性の電圧「VD−−ΔV」と、の共通電圧Vcに対する対称性が崩れ、画素Xに直流電荷がチャージされてしまう。その結果、残像が発生してしまう。
【0037】
そこで、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4が、図3Bに示すように、画素Xの映像信号をデータラインDLXに出力する場合、正極性の映像信号を出力する場合は、画素Xの階調値に対応する正極性の階調電圧「VD+」を補正した電圧「VD++ΔV−Δv」を有する正極性の映像信号を出力し、且つ、負極性の映像信号を出力する場合は、画素Xの階調値に対応する負極性の階調電圧「VD−」を補正した電圧「VD−+ΔV−Δv」を有する負極性の映像信号を出力するようになっている。その結果、図3Bに示すように、画素Xの正極性の電圧「VD++ΔV−Δv−ΔV」(すなわち、VD+−Δv)と、画素Xの負極性の電圧「VD−+ΔV−Δv−ΔV」(すなわち、VD−−Δv)と、の共通電圧Vc(すなわち、「V0−Δv」)に対する対称性が維持されるようになっている。
【0038】
但し、画素Xの負極性の映像信号を出力する場合において画素Xの階調値が最小階調値「0」の場合、最小階調値「0」を減少させることができないので、最小階調値「0」を減少させることによる「V0+ΔV−Δv」の出力は不可能である。
【0039】
そこで、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4が、図4に示すように、画素Xの階調値が最小階調値「0」の場合、画素Xの負極性の映像信号を出力する場合は、最小階調値「0」に対応する負極性の階調電圧「V0」を有する映像信号を出力し、画素Xの正極性の映像信号を出力する場合は、「V0」を電圧補正量「ΔV−Δv」より大きい電圧補正量ΔVxで補正した電圧「V0+ΔVx」を有する映像信号を出力するようになっている。ここでは、ΔVxは「ΔV−Δv」の2倍の電圧量であるものとする。そのため、画素Xの階調値が最小階調値「0」であっても、画素Xの正極性の電圧「V0+ΔV−2×Δv」と、画素Xの負極性の電圧「V0−ΔV」と、の共通電圧Vcに対する対称性が維持されるようになっている。
【0040】
また、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4は、図5に示すように、画素Xの階調値が最大階調値「Dmax」である場合、画素Xの正極性の映像信号を出力する場合は、最大階調値「Dmax」に対応する正極性の階調電圧「Vm+」(図2A参照)を出力し、画素Xの負極性の映像信号を出力する場合は、最大階調値「Dmax」に対応する負極性の階調電圧「Vm−」を「ΔV−Δv」より大きい電圧補正量「ΔVx」で補正した電圧「Vm−+ΔVx」を有する映像信号を出力するようにもなっている。そのため、画素Xの階調値が最大階調値「Dmax」であっても、画素Xの正極性の電圧「Vm+−ΔV」と、共通電圧画素Xの負極性の電圧「Vm−+ΔV−2×Δv」と、の共通電圧Vcに対する対称性が維持されるようにもなっている。
【0041】
また、フィールドスルー現象による電圧降下量ΔVは、画素Xの走査線駆動回路6aからの距離R1に応じて変化する。すなわち、電圧降下量ΔVは、距離R1が短いほど大きくなる。また、電圧降下量ΔVは、画素Xの走査線駆動回路6bからの距離R2によっても変化する。すなわち、電圧降下量ΔVは、距離R2が短いほど大きくなる。具体的には、電圧降下量Vは、距離R1を変数とする関数fの関数値f(R1)で近似されるようになっている。
【0042】
より詳細には、R1が走査線駆動回路6aからの上記中央水平位置からの距離W以下である場合は、関数Fが距離R1を変数とする下記の減少指数関数f1(R1)の関数値で近似されるようになっている。
【0043】
f1=Δv+B×exp(−R1/C)
【0044】
ここで、「B」,「C」は、液晶パネル9の特性によって決まる定数であり、「B」はいわゆる飛び込み電圧に基づく定数、「C」は走査線の配線遅延に基づく定数である。また、走査線駆動回路6aと走査線駆動回路6bとの間の距離は2×Wである。なお、R1が距離Wである場合、f1(R1)はΔvになる。
【0045】
また、R1が距離Wより長い場合は、関数Fが距離R1を変数とする下記の指数関数f2の関数値f2(R1)で近似されるようになっている。
【0046】
f2=Δv+B×exp(−((2×W−R1)/C))
【0047】
なお、「2×W−R1」がR2に相当する。
【0048】
このように、電圧降下量ΔVは、関数fの関数値f(R1)で近似されるようになっている。そこで、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4が、画素Xが最大階調値及び最小階調値以外の階調値(以下、中間階調値と呼ぶ)である場合における画素Xの正極性の映像信号「VD++ΔV−Δv」の出力と、画素Xが中間階調値である場合における画素Xの負極性の映像信号「VD−+ΔV−Δv」の出力と、を電圧補正量「ΔV−Δv」が理想的な電圧補正量「f(R1)−Δv」となるよう行うようになっている。
【0049】
また、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4が、画素Xが最小階調値「0」である場合における画素Xの正極性の映像信号「V0+ΔVx」の出力と、画素Xが最大階調値「Dmax」である場合における画素Xの負極性の映像信号「Vm−+ΔVx」の出力と、を電圧補正量「ΔVx」が理想的な電圧補正量「2×(f(R1)−Δv)」になるよう行うようになっている。図6の曲線は、理想的な電圧補正量「2×(f(R1)−Δv)」を示している。
【0050】
なお、本実施形態の場合、後述するように、データ線駆動回路4は、画素Xの正極性の映像信号「V0+ΔVx」の出力と、画素Xの負極性の映像信号「Vm−+ΔVx」の出力と、における電圧補正量「ΔVx」を、所定の切替時間間隔で変化させる。そのため、本実施形態の場合、データ線駆動回路4は、電圧補正量「ΔVx」の平均が「2×(f(R1)−Δv)」になるよう、映像信号「V0+ΔVx」の出力及び映像信号「Vm−+ΔVx」の出力を行うこととなる。
【0051】
以上のようにデータ線駆動回路4が動作するため、この液晶表示装置2では、画素Xの階調値が最大階調値又は最小階調値であっても、図7に示すように、画素Xの正極性の電圧と、画素Xの負極性の電圧と、の共通電圧Vcに対する対称性が画素Xの水平方向の位置(以下、水平位置と呼ぶ)によらず維持されるようになる。その結果、画素Xに直流電荷がチャージされ難くなり、残像発生がより高精度に抑制されることになる。
【0052】
[縦スジ補正回路]
以上のようにデータ線駆動回路4を動作させるための縦スジ補正回路8の動作について、図8乃至図13を参照しながら説明する。
【0053】
図8は、縦スジ補正回路8の構成を示す図である。同図に示すように、縦スジ補正回路8は、図9A乃至図9Dに示す正極用の8つのルックアップテーブルP1〜P8と、負極用の8つのルックアップテーブルN1〜N8(不図示)と、正極補正回路及び負極補正回路からなる補正回路12aと、加算回路12bと、減算回路12cと、スイッチ12dと、タイマー12eと、極性カウンタ12fと、を含む。また、これらの他にも図示しない水平カウンタなども含まれる。
【0054】
以下、ルックアップテーブルP1〜P8を総称して、ルックアップテーブルPと記載し、ルックアップテーブルN1〜N8を総称してルックアップテーブルNと記載する場合がある。
【0055】
ルックアップテーブルPは、液晶パネル9内の全水平位置のうちから選択された複数の代表水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなるテーブルとして構成される(図9A乃至図9D参照)。ルックアップテーブルPは予め記憶される。本実施形態の場合、5つの代表水平位置の各々と階調補正量候補とが対応付けられている。図9AがルックアップテーブルP1及びP8を示し、図9BがルックアップテーブルP2及びP7を示し、図9CがルックアップテーブルP3及びP6を示し、図9DがルックアップテーブルP4及びP7を示している。代表水平位置を表す数値は、走査線駆動回路6からの距離を示している。また、括弧内の数値は、階調補正量候補に対応する電圧補正量を示している。
【0056】
各ルックアップテーブルPに設定された階調補正量候補は、代表水平位置における理想的な電圧補正量(すなわち、2×(f(R1)−Δv))を考慮して設定されている。例えば、各ルックアップテーブルPの代表水平位置「0」に設定された階調値補正量候補の平均である「4.75」に対応する電圧補正量「519mV」は、水平位置「0」の理想的な電圧補正量「526mV」(図6参照)に近い値となっている。
【0057】
また、ルックアップテーブルNも、ルックアップテーブルPと同様に、上記5つの代表水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなるテーブルとして構成される。ルックアップテーブルNもルックアップテーブルPと同様予め記憶され、各ルックアップテーブルPに設定された階調補正量候補も、上述した理想的な電圧補正量を考慮して設定されている。但し、ルックアップテーブルNの記憶内容は、ルックアップテーブルPの記憶内容とは異なる。
【0058】
なお、縦スジ補正回路8には、負極用の中間階調用ルックアップテーブル(不図示)と正極用の中間階調用ルックアップテーブル(不図示)とが、一つずつ備えれている。どちらの中間階調用ルックアップテーブルも、上記5つの代表水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなるテーブルとして構成される。各中間階調用ルックアップテーブルに設定された階調補正量候補も、代表水平位置における理想的な電圧補正量(すなわち、f(R1)−Δv)を考慮して設定されている。
【0059】
極性カウンタ12fは、同期信号に従って、各画素の極性を示す極性信号を、補正回路12a、スイッチ12d、及びデータ線駆動回路4に出力する。
【0060】
スイッチ12dは、極性信号により示される極性が正極性である場合、加算回路12bから出力されるデータをデータ線駆動回路4に出力し、極性信号により示される極性が負極性である場合、減算回路12cから出力されるデータをデータ線駆動回路4に出力する。
【0061】
以下、縦スジ補正回路8に階調値が入力された場合における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。ここでは、縦スジ補正回路8に画素Xの階調値が入力された場合を例に取り上げる。
【0062】
[ケース1]
まず、画素Xの階調値「D」が中間階調値である場合(以下、ケース1)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0063】
ケース1では、補正回路12a及び加算回路12bは、正極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D+Δd」を生成する。
【0064】
すなわち、正極補正回路が、正極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて階調補正量「Δd」を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を階調補正量「Δd」として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって、階調補正量「Δd」を決定する。
【0065】
そして、加算回路12bが、階調値「D」に階調補正量「Δd」を加算することにより、補正階調値「D+Δd」を生成する。
【0066】
また、ケース1では、補正回路12a及び減算回路12cは、負極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D−Δd」を生成する。
【0067】
すなわち、負極補正回路が、正極用の中間階調用ルックアップテーブルを用いる場合と同様にして、負極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて階調補正量「Δd」を決定する。
【0068】
そして、減算回路12cが、階調値「D」から階調補正量「Δd」を減算することにより、補正階調値「D−Δd」を生成する。
【0069】
その結果、ケース1では、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合に、補正階調値「D+Δd」がスイッチ12dから出力され、タイミング制御回路10を経てデータ線駆動回路4に入力される。また、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合に、補正階調値「D−Δd」がスイッチ12dから出力され、タイミング制御回路10を経てデータ線駆動回路4に入力される。
【0070】
そのため、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合、データ線駆動回路6が、補正階調値「D+Δd」に対応する正極性の階調電圧を画素Xの映像信号として出力することとなる。また、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合、データ線駆動回路6が、補正階調値「D−Δd」に対応する負極性の階調電圧を画素Xの映像信号として出力することとなる。
【0071】
[ケース2]
次に、画素Xの階調値「D」が最小階調値「0」である場合(以下、ケース2)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0072】
ケース2では、補正回路12a及び加算回路12bは、8つのルックアップテーブルPのうちのいずれかである参照用ルックアップテーブルPXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D+ΔD」を生成する。
【0073】
すなわち、正極補正回路が、タイマー12eからの信号に基づいて参照用ルックアップテーブルPXを上記切替時間間隔でルックアップテーブルP1〜P8の順に切り替えながら、参照用ルックアップテーブルPXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて階調補正量「ΔD」を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応付けられた階調補正量候補を階調補正量「ΔD」として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって、階調補正量「ΔD」を決定する。
【0074】
そして、加算回路12bが、階調値「D」に階調補正量「ΔD」を加算することにより、補正階調値「D+ΔD」を生成する。
【0075】
一方、ケース2では、補正回路12a及び減算回路12cは、階調値「D」の補正を行わない。
【0076】
その結果、ケース2では、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合に、補正階調値「D+ΔD」、すなわち補正階調値「ΔD」がスイッチ12dから出力され、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合に、階調値「D」すなわち、階調値「0」自身がスイッチ12dから出力される。
【0077】
そのため、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合、データ線駆動回路6が、補正階調値「D+ΔD」に対応する正極性の階調電圧「V0+ΔVx」を画素Xの映像信号として出力することとなる。また、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合、データ線駆動回路6が、階調値「D」自身に対応する負極性の階調電圧「V0」を画素Xの映像信号として出力することとなる。
【0078】
[ケース3]
次に、画素Xの階調値「D」が最大階調値「Dmax」である場合(以下、ケース3)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0079】
ケース3では、ケース2と異なり、補正回路12a及び加算回路12cは、階調値「D」の補正を行わない。
【0080】
しかし、ケース3では、補正回路12a及び減算回路12cが、8つのルックアップテーブルNのうちのいずれかである参照用ルックアップテーブルNXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D−ΔD」を生成する。
【0081】
すなわち、負極補正回路が、タイマー12eからの信号に基づいて参照用ルックアップテーブルNXを上記切替時間間隔でルックアップテーブルN1〜N8の順に切り替えながら、参照用ルックアップテーブルPXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて階調補正量「ΔD」を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応付けられた階調補正量候補を階調補正量「ΔD」として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって、階調補正量「ΔD」を決定する。
【0082】
そして、減算回路12cが、階調値「D」から階調補正量「ΔD」を減算することにより、補正階調値「D−ΔD」を生成する。
【0083】
その結果、ケース3では、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合に、補正階調値「D−ΔD」、すなわち、補正階調値「Dmax−ΔD」がスイッチ12dから出力され、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合に、階調値「D」、すなわち、階調値「Dmax」自身がスイッチ12dから出力される。
【0084】
そのため、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合、データ線駆動回路6が、補正階調値「D−ΔD」に対応する負極性の階調電圧「Vm−+ΔVx」を画素Xの映像信号として出力することとなる。また、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合、データ線駆動回路6が、階調値「D」自身に対応する正極性の階調電圧「Vm+」を画素Xの映像信号として出力することとなる。
【0085】
なお、上記切替時間は、データ線駆動回路4の極性反転周期より長いことが望ましい。なお、本実施形態の場合、データ線駆動回路4の極性反転周期は、フレーム時間の2倍である。
【0086】
ところで、ルックアップテーブルP及びルックアップテーブルNを一つずつ用意してもよいようにも思われる。すなわち、ケース2において、液晶パネル9内の全部の水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなる1つのルックアップテーブルPを参照ルックアップテーブルPXとして用い、且つ、ケース3において、液晶パネル9内の全部の水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなる1つのルックアップテーブルNを参照ルックアップテーブルNXとして用いるようにしてもよいように思われる。
【0087】
しかしながら、この場合、全部の水平位置について階調補正量候補が記憶されることとなるため、データ量が増大してしまう。この点、この液晶表示装置2では、上述のような1つのルックアップテーブルP及び上述のような1つのルックアップテーブルNを用いる場合よりもデータ量が抑制されるようになる。
【0088】
また、ケース2において、図10に示すようなルックアップテーブルPだけを参照ルックアップテーブルPXとして用い、ケース1と同様に補間演算を行うことよって、階調補正量ΔDを決定してもよいように思われる。また、ケース3において、一つのルックアップテーブルN(例えば、ルックアップテーブルN1)だけを参照ルックアップテーブルNXとして用い、ケース1と同様に補間演算を行うことによって、階調補正量ΔDを決定してもよいように思われる。
【0089】
しかしながら、この場合、電圧補正量ΔVxを、理想的な電圧補正量に近づけることが困難であるという問題がある。以下、この点について説明する。
【0090】
上述のように、ΔdやΔDは、補間演算によって決定される。そのため、ΔdやΔDは、画素Xの水平位置に応じて線形的に変化する。そのため、Δdの単位変化量(すなわち、「1」)に対する階調電圧の変化量が大きければ、画素Xの水平位置の単位変化量(すなわち、「1」)に対する階調電圧の変化量は大きくなり、Δdの単位変化量に対する階調電圧の変化量が小さければ、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量は小さくなる。また、ΔDの単位変化量に対する階調電圧の変化量が大きければ、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量は大きくなり、ΔDの単位変化量に対する階調電圧の変化量が小さければ、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量は小さくなる。
【0091】
この点、図11の右下に示すように、中間階調値付近では、階調値の単位変化量に対する階調電圧の変化量が比較的小さい。そのため、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量も比較的小さくなる。従って、図12の中央の図に示すように、どの水平位置においても、Δdに対応する電圧補正量が理想の電圧補正量に近い値になり易い。なお、図12の中央の図に示す折れ線は、Δdに対応する電圧補正量を示し、曲線は、理想的な電圧補正量を示している。
【0092】
一方、図11の左下に示すように、黒階調付近では、階調値の単位変化量に対する階調電圧の変化量が大きい。そのため、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量も大きくなる。従って、図12の下の図に示すように、場所によって、ΔDに対応する電圧補正量が理想の電圧補正量とはほど遠い値になる。白階調付近についても同様である。図12の下の図に示す折れ線は、ΔDに対応する電圧補正量を示し、曲線は、理想的な電圧補正量を示している。
【0093】
そのため、黒階調又は白階調付近では、画素Xの場所によっては、電圧補正量ΔVxを、理想的な電圧補正量に近づけることが困難になる。
【0094】
この点、この液晶表示装置2では、参照用ルックアップテーブルP及び参照用ルックアップテーブルNが切り替えられるようになっているので、図13に示すように、どの水平位置においても、電圧補正量ΔVxの平均を、理想的な電圧補正量、すなわち図13に示す曲線に近づけることができる。その結果として、残像発生をより高精度に抑制することができる。
【0095】
なお、本発明の実施形態は上記実施形態だけに限らない。
【0096】
例えば、上記実施形態では、画素Xの階調値「D」を補正することによって、画素Xの映像信号を補正するようにしているが、画素Xの映像信号に電圧を加算したり画素Xの映像信号から電圧を減算したりすることによって、画素Xの映像信号を補正するようにしてもよい。
【0097】
また、走査線駆動回路6aと走査線駆動回路6bとのうちの一方だけが液晶表示装置2に備えられてもよい。
【0098】
[変形例1]
ところで、リフレッシュレートが高い場合、例えばリフレッシュレートが240Hzである場合、一水平期間が短くなるため、一水平期間内に期待するところの電荷量が画素Xにチャージされなくなる場合がある。その結果、一水平期間の間に画素Xの電圧を期待するところの電圧まで上昇又は下降させることができなくなり、却って画質が劣化するという問題がある。
【0099】
そこで、プリチャージと呼ばれる技術を採用するようにしてもよい。すなわち、データ線駆動回路4が、画素Xの正極性の映像信号を出力する場合、一水平期間のうちの後半期間では、映像信号を出力し、一水平期間のうちの前半期間では、映像信号より高電圧或いは低電圧の補正映像信号を出力するようにしてもよい。すなわち、データ線駆動回路4が、後半期間では、縦スジ補正回路8から出力される階調値「X」に対応する正極性の階調電圧を出力し、前半期間では、当該階調電圧より高電圧或いは低電圧の信号を出力するようにしてよい。なお、階調値「X」とは、画素Xの階調値「D」が入力された場合に縦スジ補正回路8から出力される階調値のことである。
【0100】
また、データ線駆動回路4が、画素Xの負極性の映像信号を出力する場合、上記後半期間では、映像信号を出力し、上記前半期間では、映像信号より低電圧或いは高電圧の補正映像信号を出力するようにしてもよい。すなわち、データ線駆動回路4が、上記後半期間では、縦スジ補正回路8から出力される階調値「X」に対応する負極性の階調電圧を出力し、前半期間では、当該階調電圧より低電圧或いは高電圧の信号を出力するようにしてよい。
【0101】
以下、この態様(変形例1)を説明するための図14及び図15を参照しながら、変形例1について説明する。
【0102】
図14は、変形例1における液晶表示装置2の構成を示す図である。同図に示すように、変形例1では、データ線駆動回路4を上記のようにして動作させるためにプリチャージ回路11が追加されている。図15に、プリチャージ回路11の構成を示した。
【0103】
階調値「X」が入力された場合におけるプリチャージ回路11の動作について説明する。なお、画素Xの階調値「D」が中間階調値であるとき、階調値「X」は「D+Δd」又は「D−Δd」となり、画素Xの階調値「D」が最小階調値「0」であるとき、階調値「X」は「ΔD」又は「0」となり、画素Xの階調値「D」が最大階調値「Dmax」であるとき、階調値「X」は「Dmax」又は「Dmax−ΔD」となる。
【0104】
補正量算出回路14fは、ラインメモリ14eに格納される画素Xの一つ上の画素Yの階調値「Y」と、階調値「X」と、に基づいて、プリチャージ量ΔXを算出する。例えば、補正量算出回路14fは、階調値「Y」と階調値「X」とを比較し、階調値「Y」と階調値「X」との差に応じたプリチャージ量ΔXを算出する。
【0105】
そして、加算回路14dが、プリチャージ量ΔXに基づいて、プリチャージ階調値「X+ΔX」又は「X−ΔX」を生成する。すなわち、階調値「X」が階調値「Y」以上である場合、プリチャージ階調値「X+ΔX」を生成し、「階調値X」が階調値「Y」より小さい場合、プリチャージ階調値「X−ΔX」を生成する。
【0106】
倍速化回路14cには、このプリチャージ階調値が入力される。倍速化回路14cは、倍速化処理を行ってこのプリチャージ階調値をスイッチ14gに出力する。
【0107】
一方、倍速化回路14bには、プリチャージ階調値ではなく、階調値「X」自身が入力される。倍速化回路14bは、倍速化処理を行って階調値「X」をスイッチ14gに出力する。
【0108】
なお、スイッチ14gは、倍速化回路14bと倍速化回路14cとのうちのいずれか一方の接続先との接続を確立する。
【0109】
このスイッチ14gには、水平カウンタ14aより所定の信号が入力されるようになっており、この信号に従って、スイッチ14gが一水平時間の半分の時間である半水平時間間隔で接続先を切り替えるようになっている。そして、その結果、上記前半期間では、プリチャージ階調値がスイッチ14gから出力され、タイミング制御回路10を経てデータ線駆動回路4に入力されることとなる。一方、後半期間では、階調値「X」自身がスイッチ14gから出力され、タイミング制御回路10を経てデータ線駆動回路4に入力されることとなる。
【0110】
その結果、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合、前半期間ではプリチャージ階調値「X+ΔX」又は「X−ΔX」に対応する正極性の階調電圧が補正映像信号としてデータ線駆動回路4から出力され、後半期間では階調値「X」に対応する正極性の階調電圧が映像信号としてデータ線駆動回路4から出力されることとなる。また、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合、前半期間ではプリチャージ階調値「X+ΔX」又は「X−ΔX」に対応する負極性の階調電圧が補正映像信号としてデータ線駆動回路4から出力され、後半期間では階調値「X」に対応する負極性の階調電圧が映像信号としてデータ線駆動回路4から出力されることとなる。
【0111】
なお、チャージされる電荷量の不足を補うための方法として、データ線駆動回路4を2つ設け、走査信号の出力一回につき、上下2つの走査ラインGLに走査信号を出力する方法が考えられる。しかしながら、データラインDLの数が増えるので、開口率が低下し、表示輝度が低下する。また、データ線駆動回路4の数が増加するため製造コストが上がる。
【0112】
この点、変形例1では、上記の方法よりも、製造コストを抑制しつつ、且つ表示輝度の低下を抑制しつつ、画素にチャージされる電荷量の不足を解消することができる。
【0113】
なお、液晶表示装置2は、プリチャージを行う液晶表示装置を開発する過程で生まれたものである。以下、図16乃至図17Cを参照しながら、開発経緯を説明する。
【0114】
まず、消費電力の削減を考えた。一般的に、データ線駆動回路4の駆動方法としては、映像信号の極性をフレーム時間間隔で反転させる駆動方法と、映像信号の極性を一水平時間間隔で反転させる駆動方法と、があるが、前者の駆動方法の方が後者の駆動方法より電力消費が少ない。前者の駆動方法の方が後者の駆動方法よりデータ線駆動回路4の極性反転周期が長いためである。そこで、前者の駆動方法を採用した。
【0115】
次に、画素配列の方式を考えた。一般的に、画素配列の方式としては、ストライプ配列と、図16に示すようないわゆる千鳥格子配列とがある。なお、ストライプ配列を採用すると、列毎反転駆動となり、千鳥格子配列を採用すると、ドット反転駆動となる。
【0116】
上述のようにプリチャージ量ΔXは、画素の階調値と当該画素の一つ上の画素の階調値との差に応じて決定される。そのため、高精度にプリチャージ量ΔXを決定するには、上下の画素それぞれの色プレーンが同じであることが望ましい。上下の画素それぞれの階調値の相関性が高いからである。そこで、上下の画素それぞれの色プレーンが異なる千鳥格子配列ではなく、上下の画素それぞれの色プレーンが同じであるストライプ配列を採用した。
【0117】
ストライプ配列を採用して実験したところ、下記のような現象が発生した。発明者らは、この現象を「縦スジ流れ」と呼んでいる。以下、縦スジ流れについて、図17A乃至図17Cを参照しながら説明する。
【0118】
図17Aは、列毎反転駆動において実現され得る、水平方向の画素列に含まれる画素それぞれの電圧極性の分布を示す図である。同図に示すように、列毎反転駆動では、左上の分布と、右上の分布と、が交互に実現される。なお、簡単のため、各画素の画素値が同じである場合を想定している。
【0119】
以下、「+」が記された画素を正極画素と呼び、「−」が記された画素を負極画素と呼び、説明を続ける。
【0120】
フィールドスルー現象により、画素電極の正極性の電圧と、画素電極の負極性の電圧と、の共通電圧Vcに対する対称性が崩れると各画素には直流電荷がチャージされる。図17Aでは、フィールドスルー現象により、正極画素の表示輝度B2より負極画素の表示輝度B1が高くなってしまう例を示した。図17Aの左上の分布では、表示輝度の分布が左下に示すようになり、右上の分布では、表示輝度の分布が右下に示すようになる。なお、ΔBは、B1とB2との差を示している。
【0121】
仮に利用者の視線が固定されている場合、図17Bに示すように、各画素の表示輝度がB1とB2とのうちで交互に変化するため、利用者によって知覚される輝度は各画素で同じになる。そのため、見かけ上、問題はない。
【0122】
しかしながら、利用者の視線が移動する場合(例えば、動画が表示される場合)、視線の移動速度によっては、図17Cに示すように、表示輝度の差が知覚されてしまう。そのため、比較的暗い縦線と比較的明るい縦線とからなる縦スジが視線の移動方向に移動しているように見える現象、すなわち、縦スジ流れが発生することがわかった。
【0123】
そこで、発明者らは、階調値が中間階調値である画素の映像信号を、以上で説明したようにして補正する対処を行った。しかしながら、この対処を行っても画素に若干量の直流電荷がチャージされてしまい、縦スジ流れを目立たなくするには不十分であることがわかった。これを受け、画素にチャージされる直流電荷量をさらに抑制するべく、階調値が最小階調値である画素の映像信号及び階調値が最大階調値である画素の映像信号も補正する必要に迫られた結果、この液晶表示装置2が発明された次第である。
【0124】
[変形例2]
なお、上記実施形態では、画素Xの階調値が最小階調値「0」に近い階調値(例えば、「1」)であっても、画素Xの階調値が中間階調値に相当するため、電圧補正量(すなわち、ΔV−Δv)が、画素Xが最小階調値「0」である場合の電圧補正量ΔVx(≒2×(ΔV−Δv))とは大きく異なる電圧補正量となる。これは、画素Xの階調値が最大階調値「Dmax」に近い階調値(例えば、「Dmax−1」)である場合も同様であり、上記実施形態では、最小階調値「0」の近傍及び最大階調値「Dmax」の近傍において、電圧補正量が急激に変化する。このことによっても、残像が発生する可能性がある。
【0125】
そこで、最小階調値「0」の近傍及び最大階調値「Dmax」の近傍における電圧補正量の変化を滑らかにするために、データ線駆動回路4が、画素Xの階調値「D」が「1」以上「u」以下の第1階調値範囲に属する中間階調値(以下、第1中間階調値)である場合において正極性の映像信号を出力する場合、図18Aに示すように電圧補正量を階調値「D」に応じて変化させるようにしてよい。
【0126】
また、データ線駆動回路4が、画素Xの階調値「D」が「v(v>u)」以上「Dmax−1」以下の第2階調値範囲に属する中間階調値(以下、第2中間階調値)である場合において負極性の映像信号を出力する場合、図18Bに示すように、電圧補正量を電圧補正量を階調値「D」に応じて変化させるようにしてよい。以下、この態様(変形例2)について説明する。
【0127】
まず、画素Xの階調値「D」が第1中間階調値でも第2中間階調値でもない中間階調値である場合(以下、ケース4)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。ケース4では、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cは、ケース1の場合と同様に動作する。
【0128】
次に、画素Xの階調値「D」が第1中間階調値である場合(以下、ケース5)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0129】
ケース5では、補正回路12a及び減算回路12cは、ケース1の場合と同様にして、負極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D−Δd」を生成する。
【0130】
但し、ケース5では、補正回路12a及び加算回路12bは、正極用の中間階調用ルックアップテーブルだけでなく、参照ルックアップテーブルPXも使用して、階調値「D」を補正し、補正階調値「D+Δd」を生成する。
【0131】
すなわち、正極補正回路が、正極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて第1階調補正量候補を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を第1階調補正量候補として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって第1階調補正量候補を決定する。
【0132】
また、正極補正回路が、参照ルックアップテーブルPXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて第2階調補正量候補を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を第2階調補正量候補として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって第2階調補正量候補を決定する。
【0133】
そして、正極補正回路が、中間階調値「u+1」と、最小階調値「0」と、中間階調値「u+1」に対応する上記第1階調補正量候補と、最小階調値「0」に対応する上記第2階調補正量候補と、第1中間階調値である画素Xの階調値「D」と、に基づいて補間演算を行うことによって階調補正量「Δd」を決定する。
【0134】
そして、加算回路12bが、階調値「D」に階調補正量「Δd」を加算することにより、補正階調値「D+Δd」を生成することになる。
【0135】
次に、画素Xの階調値「D」が第2中間階調値である場合(以下、ケース6)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0136】
ケース6では、補正回路12a及び加算回路12bは、ケース2の場合と同様にして、階調値「D」を補正し、補正階調値「D+Δd」を生成する。
【0137】
但し、ケース6では、補正回路12a及び減算回路12cは、負極用の中間階調用ルックアップテーブルだけでなく、参照ルックアップテーブルNXも使用して階調値「D」を補正し、補正階調値「D−Δd」を生成する。
【0138】
すなわち、負極補正回路が、負極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて第3階調補正量候補を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を第3階調補正量候補として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって第3階調補正量候補を決定する。
【0139】
また、負極補正回路が、参照ルックアップテーブルNXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて第4階調補正量候補を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を第4階調補正量候補として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって第4階調補正量候補を決定する。
【0140】
そして、負極補正回路が、中間階調値「v−1」と、最大階調値「Dmax」と、中間階調値「v−1」に対応する上記第3階調補正量候補と、最大階調値「Dmax」に対応する上記第4階調補正量候補と、第1中間階調値である画素Xの階調値「D」と、に基づいて補間演算を行うことによって階調補正量「Δd」を決定する。
【0141】
そして、減算回路12cが、階調値「D」から階調補正量「Δd」を加算することにより、補正階調値「D−Δd」を生成することになる。
【符号の説明】
【0142】
2 液晶表示装置、4 データ線駆動回路、6,6a,6b 走査線駆動回路、8 縦スジ補正回路、9 液晶パネル、10 タイミング制御回路、11 プリチャージ回路、12a 補正回路、12b,14d 加算回路、12c 減算回路、12d,14g スイッチ、12e タイマー、12f 極性カウンタ、14a 水平カウンタ、14b,14c 倍速化回路、14e ラインメモリ、14f 補正量算出回路、Cgs 寄生容量、CL 共通ライン、Clc 画素容量、Cst 補助容量、DL,DLX データライン、GL,GLX 走査ライン、TR TFTトランジスタ、P,N ルックアップテーブル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図19は、一般的な液晶表示装置100を示す図である。同図に示すように、液晶表示装置100には、液晶パネル102、データ線駆動回路104、及び走査線駆動回路106が主として備えられ、液晶パネルには、拡大図に示すように、垂直方向に伸びるデータラインDLと、水平方向に伸びる走査ラインGLと、共通電極に跨って形成される共通ラインCLが形成される。また、拡大図に示すように、データラインDLと走査ラインGLによって囲まれた一つの画素領域には、TFTトランジスタTRと、画素電極、共通電極が備えられ、更に、TFTトランジスタTRのゲート−ドレイン間の寄生容量Cgsと、画素電極−共通電極間の画素容量Clcと、補助容量Cstを有する。
【0003】
走査線駆動回路106は、上から順番に走査ラインGLを選択し、選択した走査ラインGLに一水平期間、走査信号を出力する。また、データ線駆動回路104は、走査駆動回路106が走査ラインGLを選択するごとに、各データラインDLに映像信号を出力する。
【0004】
このような液晶表示装置100では、寄生容量Cgsの存在により、走査信号の電圧の立ち下がりに応じて画素電極の電圧が立ち下がるフィールドスルー現象が起きる。図20に、フィールドスルー現象を示した。同図に示すように、走査信号の立ち下がりに応じて画素電極の電圧が「Δ」下がっている。
【0005】
そして、このフィールドスルー現象により、液晶表示装置100において列ライン反転駆動方式やドット反転駆動方式等のフレーム反転方式が採用されていても、図21に示すように、画素電極の正極性の電圧と、画素電極の負極性の電圧と、の共通電圧Vcに対する対称性が崩れることによって、画素に直流電荷がチャージされてしまい、いわゆる残像(あるいは焼付き)という不具合が発生することがわかっている。
【0006】
そこで、下記特許文献1に記載の液晶表示装置では、画素電極の電圧が一方の極性に偏らないよう、データラインDLから出力される映像信号を補正することにより、通常より高電圧な映像信号を出力するようにしている(図22参照)。また、下記特許文献1では、Δが画素の水平位置に応じて変化することも考慮し、画素の水平位置に応じて映像信号の補正量を調節するようにもしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/133906号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、画素の階調値と、映像信号の電圧と、が図2Aに示す関係を有しているものとする。この場合、画素の階調値が最小階調(以下、黒階調と呼ぶ)を表す階調値「0」である場合において負極性の映像信号を出力する場合、階調値「0」に対応する負極性の階調電圧「V0−」より高電圧の映像信号を出力しようとしても、階調値「0」は最小階調であるため、データ線駆動回路の構成から、それ以上高い電圧は出力できない。そのため、画素の階調値が黒階調を表す階調値「0」である場合、正極性の映像信号を出力する場合しか映像信号の補正を行うことができず、その結果、残像発生を十分に抑制できないという問題がある。
【0009】
また、画素の階調値が最大階調(以下、白階調と呼ぶ)を表す階調値「Dmax」(図2A参照)である場合において正極性の映像信号を出力する場合、そもそも、データ線駆動回賂が、階調値「Dmax」に対応する正極性の階調電圧「Vm+」より高電圧の信号を出力できない。そのため、画素の階調値が白階調を表す階調値「Dmax」である場合、負極性の映像信号を出力する場合しか映像信号の補正を行うことができず、この点からも残像発生を十分に抑制できないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、画素に直流電荷がチャージされることによる残像の発生を、より高精度に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る液晶表示装置は、複数のデータ線と、複数の走査線と、前記複数のデータ線のうちのいずれかである一のデータ線と前記複数の走査線のうちのいずれかである一の走査線とに対応する一の画素の、正極性の映像信号又は負極性の映像信号を、所定の出力周期で選択的に、前記一のデータ線に出力するデータ線駆動回路と、前記一の画素の映像信号が出力される場合に、前記一の走査線に走査信号を出力する走査線駆動回路と、を含む液晶表示装置において、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が、最小階調を表す第1階調値及び最大階調を表す第2階調値、以外の階調値である中間階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、前記一の画素の階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、前記一の画素の階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が第1階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、第1階調値に対応する正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、第1階調値に対応する負極性の第1階調電圧を有する映像信号を出力し、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が第2階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、第2階調値に対応する正極性の第2階調電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、第2階調値に対応する負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、前記データ線駆動回路は、正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力を、中間階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行い、且つ、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力を、中間階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行うこと、を特徴とする。
【0012】
本発明の一態様では、前記データ線駆動回路は、正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、における電圧補正量を所定の周期で変化させてよい。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記液晶表示装置は、前記一の画素の階調値が第1階調値と第2階調値とのいずれかである場合に、前記一の画素の階調値を複数の補正量候補を含む補正量候補群に基づいて補正し、補正階調値を生成する生成回路と、前記一の画素の階調値が第1階調値と第2階調値とのいずれかである場合に、前記一の画素の階調値自身と、前記生成回路により生成された補正階調値と、のうちのいずれか一方を選択的に出力する出力回路と、をさらに含み、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が第1階調値である場合において、前記一の画素の階調値自身が前記出力回路から出力された場合、負極性の第1階調電圧を有する映像信号を出力し、補正階調値が前記出力回賂から出力された場合、当該補正階調値に対応する正極性の電圧を有する映像信号を出力し、前記データ線駆動回路は、前記一の画素の階調値が第2階調値である場合において、前記一の画素の階調値自身が前記出力回路から出力された場合、正極性の第2階調電圧を有する映像信号を出力し、補正階調値が前記出力回賂から出力された場合、当該補正階調値に対応する負極性の電圧を有する映像信号を出力し、前記生成回路は、前記一の画素の階調値の補正に用いる補正量候補群を前記所定の周期で切り替えてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記補正量候補群に含まれる補正量候補は、それぞれ異なる水平位置と関連づけられ、前記生成回賂は、前記補正量候補群に含まれる補正量候補と、前記一の画素の水平位置と、各補正量候補に関連づけられた水平位置と、に基づいて補間演算を行うことにより、補正量を決定してもよい。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記生成回路は、前記一の画素の階調値が第1階調値である場合と、前記一の画素の階調値が第2階調値である場合と、で異なる補正量候補群に基づいて補正量を決定してもよい。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記所定の周期は、前記データ線駆動回路の極性反転周期以上の長さであってもよい。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記データ線駆動回路は、正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、を電圧補正量の平均が前記一の画素の前記走査線駆動回路からの距離が短いほど大きくなるように行ってよい。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記データ線駆動回路は、正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、を電圧補正量の平均が前記一の画素の前記走査線駆動回路からの距離を変数とする減少指数関数の関数値に応じた量になるように行ってもよい。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記走査線駆動回路は、所定の長さの水平期間、前記一の走査線に走査信号を出力し、前記データ線駆動回路は、正極性の映像信号を出力する場合、前記水平期間のうちの前記水平期間の終了時期を含む一部の後段期間、映像信号を出力し、前記水平期間のうちの前記後段期間を除く前段期間、映像信号より高いあるいは低い電圧を有する信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合、前記後段期間、映像信号を出力し、前記前段期間、映像信号より低いあるいは高い電圧を有する信号を出力してよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置を示す図である。
【図2A】階調値と階調電圧との関係を示す図である。
【図2B】階調値と階調電圧との関係を示す図である。
【図3A】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図3B】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図4】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図5】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図6】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図7】データ線駆動回路の動作概要について説明するための図である。
【図8】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図9A】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図9B】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図9C】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図9D】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図10】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図11】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図12】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図13】縦スジ補正回路の動作について説明するための図である。
【図14】変形例1について説明するための図である。
【図15】変形例1について説明するための図である。
【図16】開発経緯について説明するための図である。
【図17A】開発経緯について説明するための図である。
【図17B】開発経緯について説明するための図である。
【図17C】開発経緯について説明するための図である。
【図18A】変形例2について説明するための図である。
【図18B】変形例2について説明するための図である。
【図19】一般的な液晶表示装置を示す図である。
【図20】フィールドスルー現象を示す図である。
【図21】画素電極の正極性の電圧と画素電極の負極性の電圧とが共通電圧に対して非対称になる様子を示す図である。
【図22】映像信号が補正される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の例について図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
[液晶表示装置]
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置2を示す図である。液晶表示装置2は、液晶パネル9と、液晶パネル9の上部に備えられたデータ線駆動回路4と、液晶パネル9の左右に備えられた走査線駆動回路6a,6bと、縦スジ補正回路8と、タイミング制御回路10と、を備える。なお、液晶表示装置2は、これらの他にも、参照電圧生成回路(不図示)、共通電圧生成回路(不図示)、及びバックライト(不図示)等も備えている。本実施形態の場合、IPS(In Plane Switching)方式の液晶パネルを採用しているが、例えばTN(Twisted Nematic)方式やVA (Vertical Alignment)方式の液晶パネルを採用してもよい。なお、走査線駆動回路6aと走査線駆動回路6bとを総称して、走査線駆動回路6と記載する場合がある。
【0023】
液晶パネル9には、拡大図に示すように、垂直方向に伸びる複数のデータラインDLと、水平方向に伸びる複数の走査ラインGLと、共通電極と、複数の共通電極に跨って形成される共通ラインCLと、データラインDLと走査ラインGLとに囲まれる複数の画素と、が備えられる。各共通ラインCLには、共通電圧生成回路により共通電圧Vcが供給される。また、拡大図に示すように、一つの画素には、TFTトランジスタTRと、TFTトランジスタTRのゲート−ドレイン間の寄生容量Cgsと、画素電極−共通電極間の画素容量Clcと、補助容量Cstと、が含まれる。画素容量Clcは、画素電極と共通電極とにより構成される。なお、本実施形態の場合、画素配列の方式として、いわゆるストライプ配列が採用されている。
【0024】
縦スジ補正回路8には、各画素の階調値を示すビットデータが入力される。
【0025】
また、走査線駆動回路6は、タイミング制御回路10からのタイミング制御信号に従って上から順番に走査ラインGLを一水平時間ずつ選択し、選択した走査ラインGLに走査信号を出力する。また、データ線駆動回路4は、タイミング制御信号に従い、走査駆動回路6が走査ラインGLを選択するごとに、各データラインDLに映像信号を出力する。
【0026】
すなわち、複数の走査ラインGLのうちのいずれかである任意の走査ラインGLX(例えば、一番上の走査ラインGL)、及び複数のデータラインDLのうちのいずれかである任意のデータラインDLX(例えば、一番左のデータラインDL)に着目した場合、走査線駆動回路6は、タイミング制御信号に従い、フレーム時間間隔で、走査ラインGLX(一の走査線)を選択し、走査ラインGLXに一水平時間、走査信号を出力する。また、データ線駆動回路4は、タイミング制御信号に従い、走査ラインGLXに走査信号が出力される間、データラインDLX(一のデータ線)に、走査ラインGLXとデータラインDLXとが交差する位置にある画素(以下、画素Xと記載する)の階調値に応じた映像信号を出力する。
【0027】
なお、走査ラインGLの総数と一水平時間との積がフレーム時間である。また、以下、走査ラインGLXが選択される期間のことを一水平期間と呼ぶ。
【0028】
以下、「一水平期間、データラインDLXに出力される映像信号」のことを「画素Xの映像信号」と呼ぶ。
【0029】
また、この液晶表示装置2では、フレーム反転方式が採用されており、データ線駆動回路4から出力される映像信号の極性がフレーム時間間隔で反転される。データ線駆動回路4は、フレーム時間間隔で、画素Xの負極性の映像信号と画素Xの正極性の映像信号とのうちのいずれか一方を、データラインDLXに選択的に出力することになる。
【0030】
なお、本実施形態の場合、フレーム反転方式のうちの列毎反転駆動方式が採用されている。そのため、データラインDLXから出力される画素Xの映像信号の極性と、画素Xの左右の画素の映像信号の極性と、は逆になる。
【0031】
[階調電圧]
図2A及び図2Bは、データ線駆動回路4に予め設定された、階調値と、階調値に対応する階調電圧と、の関係を示す図である。本実施形態の場合、階調値と階調値に対応する階調電圧とは、図2Aに示す関係を有している。図2Aによれば、階調値「D」に対応する負極性の階調電圧は「VD−」となり、階調値「D」に対応する正極性の階調電圧は「VD+」となる。また、図2Aによれば、階調値「D」が最小階調(以下、黒階調)を表す最小階調値「0」の場合、最小階調値「D」に対応する負極性の階調電圧「V0−」及び正極性の階調電圧「V0+」とも「V0」となる。図2Aでは、「VD−」と「VD+」との平均は、必ず「V0」となる。
【0032】
なお、共通電極の電圧である共通電圧Vc(不図示)は、「VD+」と「VD−」の平均値であるセンター電圧(この場合、V0)よりも、およそΔvだけ低い値(すなわち、「V0−Δv」)に設定されている。すなわち、「VD+−Δv」と「VD−−Δv」と、が共通電圧Vcに対して対称になるように設定されている。ここではΔvは、後述するフィールドスルー現象により液晶パネル9の中央の水平方向の位置である中央水平位置において発生する電圧降下量に設定されている。
【0033】
なお、図2Aに示すように、最大階調(以下、白階調)を表す最大階調値(第2階調値)「Dmax」以上の値に対応する電圧は、正極性に関しても負極性に関しても設定されていない。そのため、本実施形態の場合、データ線駆動回路4は、最大階調値「Dmax」に対応する正極性の電圧「Vm+」より高い電圧を出力することも、最大階調値「Dmax」に対応する負極性の電圧「Vm−」より低い電圧を出力することもできない。
【0034】
なお、階調電圧「V0−」と階調電圧「V0+」とが同電圧である必要はない。階調値と、階調値に対応する階調電圧と、は例えば図2Bに示す関係を有していてもよい。
【0035】
[データ線駆動回路の動作概要]
以下、データ線駆動回路4の動作概要につき、図3A乃至図7を参照しながら、画素Xの映像信号の出力を例に取り上げて説明する。なお、以下、画素Xの画素電極の電圧のことを「画素Xの電圧」と呼ぶ。
【0036】
液晶表示装置2では、寄生容量Cgsの存在により、走査ラインGLXに出力される走査信号の立ち下がりに応じて画素Xの画素電極の電圧が立ち下がるフィールドスルー現象が起きる。そのため、データ線駆動回路4が画素Xの階調値に対応する階調電圧「VD+(VD−)」を画素Xの映像信号としてデータラインDLXから出力するようにすると、画素Xの電圧が映像信号「VD+(VD−)」より「ΔV」(ΔV≧Δv)だけ下がってしまう。そのため、図3Aに示すように、画素Xの正極性の電圧「VD+−ΔV」と、画素Xの負極性の電圧「VD−−ΔV」と、の共通電圧Vcに対する対称性が崩れ、画素Xに直流電荷がチャージされてしまう。その結果、残像が発生してしまう。
【0037】
そこで、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4が、図3Bに示すように、画素Xの映像信号をデータラインDLXに出力する場合、正極性の映像信号を出力する場合は、画素Xの階調値に対応する正極性の階調電圧「VD+」を補正した電圧「VD++ΔV−Δv」を有する正極性の映像信号を出力し、且つ、負極性の映像信号を出力する場合は、画素Xの階調値に対応する負極性の階調電圧「VD−」を補正した電圧「VD−+ΔV−Δv」を有する負極性の映像信号を出力するようになっている。その結果、図3Bに示すように、画素Xの正極性の電圧「VD++ΔV−Δv−ΔV」(すなわち、VD+−Δv)と、画素Xの負極性の電圧「VD−+ΔV−Δv−ΔV」(すなわち、VD−−Δv)と、の共通電圧Vc(すなわち、「V0−Δv」)に対する対称性が維持されるようになっている。
【0038】
但し、画素Xの負極性の映像信号を出力する場合において画素Xの階調値が最小階調値「0」の場合、最小階調値「0」を減少させることができないので、最小階調値「0」を減少させることによる「V0+ΔV−Δv」の出力は不可能である。
【0039】
そこで、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4が、図4に示すように、画素Xの階調値が最小階調値「0」の場合、画素Xの負極性の映像信号を出力する場合は、最小階調値「0」に対応する負極性の階調電圧「V0」を有する映像信号を出力し、画素Xの正極性の映像信号を出力する場合は、「V0」を電圧補正量「ΔV−Δv」より大きい電圧補正量ΔVxで補正した電圧「V0+ΔVx」を有する映像信号を出力するようになっている。ここでは、ΔVxは「ΔV−Δv」の2倍の電圧量であるものとする。そのため、画素Xの階調値が最小階調値「0」であっても、画素Xの正極性の電圧「V0+ΔV−2×Δv」と、画素Xの負極性の電圧「V0−ΔV」と、の共通電圧Vcに対する対称性が維持されるようになっている。
【0040】
また、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4は、図5に示すように、画素Xの階調値が最大階調値「Dmax」である場合、画素Xの正極性の映像信号を出力する場合は、最大階調値「Dmax」に対応する正極性の階調電圧「Vm+」(図2A参照)を出力し、画素Xの負極性の映像信号を出力する場合は、最大階調値「Dmax」に対応する負極性の階調電圧「Vm−」を「ΔV−Δv」より大きい電圧補正量「ΔVx」で補正した電圧「Vm−+ΔVx」を有する映像信号を出力するようにもなっている。そのため、画素Xの階調値が最大階調値「Dmax」であっても、画素Xの正極性の電圧「Vm+−ΔV」と、共通電圧画素Xの負極性の電圧「Vm−+ΔV−2×Δv」と、の共通電圧Vcに対する対称性が維持されるようにもなっている。
【0041】
また、フィールドスルー現象による電圧降下量ΔVは、画素Xの走査線駆動回路6aからの距離R1に応じて変化する。すなわち、電圧降下量ΔVは、距離R1が短いほど大きくなる。また、電圧降下量ΔVは、画素Xの走査線駆動回路6bからの距離R2によっても変化する。すなわち、電圧降下量ΔVは、距離R2が短いほど大きくなる。具体的には、電圧降下量Vは、距離R1を変数とする関数fの関数値f(R1)で近似されるようになっている。
【0042】
より詳細には、R1が走査線駆動回路6aからの上記中央水平位置からの距離W以下である場合は、関数Fが距離R1を変数とする下記の減少指数関数f1(R1)の関数値で近似されるようになっている。
【0043】
f1=Δv+B×exp(−R1/C)
【0044】
ここで、「B」,「C」は、液晶パネル9の特性によって決まる定数であり、「B」はいわゆる飛び込み電圧に基づく定数、「C」は走査線の配線遅延に基づく定数である。また、走査線駆動回路6aと走査線駆動回路6bとの間の距離は2×Wである。なお、R1が距離Wである場合、f1(R1)はΔvになる。
【0045】
また、R1が距離Wより長い場合は、関数Fが距離R1を変数とする下記の指数関数f2の関数値f2(R1)で近似されるようになっている。
【0046】
f2=Δv+B×exp(−((2×W−R1)/C))
【0047】
なお、「2×W−R1」がR2に相当する。
【0048】
このように、電圧降下量ΔVは、関数fの関数値f(R1)で近似されるようになっている。そこで、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4が、画素Xが最大階調値及び最小階調値以外の階調値(以下、中間階調値と呼ぶ)である場合における画素Xの正極性の映像信号「VD++ΔV−Δv」の出力と、画素Xが中間階調値である場合における画素Xの負極性の映像信号「VD−+ΔV−Δv」の出力と、を電圧補正量「ΔV−Δv」が理想的な電圧補正量「f(R1)−Δv」となるよう行うようになっている。
【0049】
また、この液晶表示装置2では、データ線駆動回路4が、画素Xが最小階調値「0」である場合における画素Xの正極性の映像信号「V0+ΔVx」の出力と、画素Xが最大階調値「Dmax」である場合における画素Xの負極性の映像信号「Vm−+ΔVx」の出力と、を電圧補正量「ΔVx」が理想的な電圧補正量「2×(f(R1)−Δv)」になるよう行うようになっている。図6の曲線は、理想的な電圧補正量「2×(f(R1)−Δv)」を示している。
【0050】
なお、本実施形態の場合、後述するように、データ線駆動回路4は、画素Xの正極性の映像信号「V0+ΔVx」の出力と、画素Xの負極性の映像信号「Vm−+ΔVx」の出力と、における電圧補正量「ΔVx」を、所定の切替時間間隔で変化させる。そのため、本実施形態の場合、データ線駆動回路4は、電圧補正量「ΔVx」の平均が「2×(f(R1)−Δv)」になるよう、映像信号「V0+ΔVx」の出力及び映像信号「Vm−+ΔVx」の出力を行うこととなる。
【0051】
以上のようにデータ線駆動回路4が動作するため、この液晶表示装置2では、画素Xの階調値が最大階調値又は最小階調値であっても、図7に示すように、画素Xの正極性の電圧と、画素Xの負極性の電圧と、の共通電圧Vcに対する対称性が画素Xの水平方向の位置(以下、水平位置と呼ぶ)によらず維持されるようになる。その結果、画素Xに直流電荷がチャージされ難くなり、残像発生がより高精度に抑制されることになる。
【0052】
[縦スジ補正回路]
以上のようにデータ線駆動回路4を動作させるための縦スジ補正回路8の動作について、図8乃至図13を参照しながら説明する。
【0053】
図8は、縦スジ補正回路8の構成を示す図である。同図に示すように、縦スジ補正回路8は、図9A乃至図9Dに示す正極用の8つのルックアップテーブルP1〜P8と、負極用の8つのルックアップテーブルN1〜N8(不図示)と、正極補正回路及び負極補正回路からなる補正回路12aと、加算回路12bと、減算回路12cと、スイッチ12dと、タイマー12eと、極性カウンタ12fと、を含む。また、これらの他にも図示しない水平カウンタなども含まれる。
【0054】
以下、ルックアップテーブルP1〜P8を総称して、ルックアップテーブルPと記載し、ルックアップテーブルN1〜N8を総称してルックアップテーブルNと記載する場合がある。
【0055】
ルックアップテーブルPは、液晶パネル9内の全水平位置のうちから選択された複数の代表水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなるテーブルとして構成される(図9A乃至図9D参照)。ルックアップテーブルPは予め記憶される。本実施形態の場合、5つの代表水平位置の各々と階調補正量候補とが対応付けられている。図9AがルックアップテーブルP1及びP8を示し、図9BがルックアップテーブルP2及びP7を示し、図9CがルックアップテーブルP3及びP6を示し、図9DがルックアップテーブルP4及びP7を示している。代表水平位置を表す数値は、走査線駆動回路6からの距離を示している。また、括弧内の数値は、階調補正量候補に対応する電圧補正量を示している。
【0056】
各ルックアップテーブルPに設定された階調補正量候補は、代表水平位置における理想的な電圧補正量(すなわち、2×(f(R1)−Δv))を考慮して設定されている。例えば、各ルックアップテーブルPの代表水平位置「0」に設定された階調値補正量候補の平均である「4.75」に対応する電圧補正量「519mV」は、水平位置「0」の理想的な電圧補正量「526mV」(図6参照)に近い値となっている。
【0057】
また、ルックアップテーブルNも、ルックアップテーブルPと同様に、上記5つの代表水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなるテーブルとして構成される。ルックアップテーブルNもルックアップテーブルPと同様予め記憶され、各ルックアップテーブルPに設定された階調補正量候補も、上述した理想的な電圧補正量を考慮して設定されている。但し、ルックアップテーブルNの記憶内容は、ルックアップテーブルPの記憶内容とは異なる。
【0058】
なお、縦スジ補正回路8には、負極用の中間階調用ルックアップテーブル(不図示)と正極用の中間階調用ルックアップテーブル(不図示)とが、一つずつ備えれている。どちらの中間階調用ルックアップテーブルも、上記5つの代表水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなるテーブルとして構成される。各中間階調用ルックアップテーブルに設定された階調補正量候補も、代表水平位置における理想的な電圧補正量(すなわち、f(R1)−Δv)を考慮して設定されている。
【0059】
極性カウンタ12fは、同期信号に従って、各画素の極性を示す極性信号を、補正回路12a、スイッチ12d、及びデータ線駆動回路4に出力する。
【0060】
スイッチ12dは、極性信号により示される極性が正極性である場合、加算回路12bから出力されるデータをデータ線駆動回路4に出力し、極性信号により示される極性が負極性である場合、減算回路12cから出力されるデータをデータ線駆動回路4に出力する。
【0061】
以下、縦スジ補正回路8に階調値が入力された場合における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。ここでは、縦スジ補正回路8に画素Xの階調値が入力された場合を例に取り上げる。
【0062】
[ケース1]
まず、画素Xの階調値「D」が中間階調値である場合(以下、ケース1)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0063】
ケース1では、補正回路12a及び加算回路12bは、正極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D+Δd」を生成する。
【0064】
すなわち、正極補正回路が、正極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて階調補正量「Δd」を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を階調補正量「Δd」として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって、階調補正量「Δd」を決定する。
【0065】
そして、加算回路12bが、階調値「D」に階調補正量「Δd」を加算することにより、補正階調値「D+Δd」を生成する。
【0066】
また、ケース1では、補正回路12a及び減算回路12cは、負極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D−Δd」を生成する。
【0067】
すなわち、負極補正回路が、正極用の中間階調用ルックアップテーブルを用いる場合と同様にして、負極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて階調補正量「Δd」を決定する。
【0068】
そして、減算回路12cが、階調値「D」から階調補正量「Δd」を減算することにより、補正階調値「D−Δd」を生成する。
【0069】
その結果、ケース1では、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合に、補正階調値「D+Δd」がスイッチ12dから出力され、タイミング制御回路10を経てデータ線駆動回路4に入力される。また、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合に、補正階調値「D−Δd」がスイッチ12dから出力され、タイミング制御回路10を経てデータ線駆動回路4に入力される。
【0070】
そのため、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合、データ線駆動回路6が、補正階調値「D+Δd」に対応する正極性の階調電圧を画素Xの映像信号として出力することとなる。また、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合、データ線駆動回路6が、補正階調値「D−Δd」に対応する負極性の階調電圧を画素Xの映像信号として出力することとなる。
【0071】
[ケース2]
次に、画素Xの階調値「D」が最小階調値「0」である場合(以下、ケース2)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0072】
ケース2では、補正回路12a及び加算回路12bは、8つのルックアップテーブルPのうちのいずれかである参照用ルックアップテーブルPXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D+ΔD」を生成する。
【0073】
すなわち、正極補正回路が、タイマー12eからの信号に基づいて参照用ルックアップテーブルPXを上記切替時間間隔でルックアップテーブルP1〜P8の順に切り替えながら、参照用ルックアップテーブルPXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて階調補正量「ΔD」を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応付けられた階調補正量候補を階調補正量「ΔD」として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって、階調補正量「ΔD」を決定する。
【0074】
そして、加算回路12bが、階調値「D」に階調補正量「ΔD」を加算することにより、補正階調値「D+ΔD」を生成する。
【0075】
一方、ケース2では、補正回路12a及び減算回路12cは、階調値「D」の補正を行わない。
【0076】
その結果、ケース2では、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合に、補正階調値「D+ΔD」、すなわち補正階調値「ΔD」がスイッチ12dから出力され、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合に、階調値「D」すなわち、階調値「0」自身がスイッチ12dから出力される。
【0077】
そのため、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合、データ線駆動回路6が、補正階調値「D+ΔD」に対応する正極性の階調電圧「V0+ΔVx」を画素Xの映像信号として出力することとなる。また、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合、データ線駆動回路6が、階調値「D」自身に対応する負極性の階調電圧「V0」を画素Xの映像信号として出力することとなる。
【0078】
[ケース3]
次に、画素Xの階調値「D」が最大階調値「Dmax」である場合(以下、ケース3)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0079】
ケース3では、ケース2と異なり、補正回路12a及び加算回路12cは、階調値「D」の補正を行わない。
【0080】
しかし、ケース3では、補正回路12a及び減算回路12cが、8つのルックアップテーブルNのうちのいずれかである参照用ルックアップテーブルNXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D−ΔD」を生成する。
【0081】
すなわち、負極補正回路が、タイマー12eからの信号に基づいて参照用ルックアップテーブルNXを上記切替時間間隔でルックアップテーブルN1〜N8の順に切り替えながら、参照用ルックアップテーブルPXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて階調補正量「ΔD」を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応付けられた階調補正量候補を階調補正量「ΔD」として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって、階調補正量「ΔD」を決定する。
【0082】
そして、減算回路12cが、階調値「D」から階調補正量「ΔD」を減算することにより、補正階調値「D−ΔD」を生成する。
【0083】
その結果、ケース3では、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合に、補正階調値「D−ΔD」、すなわち、補正階調値「Dmax−ΔD」がスイッチ12dから出力され、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合に、階調値「D」、すなわち、階調値「Dmax」自身がスイッチ12dから出力される。
【0084】
そのため、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合、データ線駆動回路6が、補正階調値「D−ΔD」に対応する負極性の階調電圧「Vm−+ΔVx」を画素Xの映像信号として出力することとなる。また、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合、データ線駆動回路6が、階調値「D」自身に対応する正極性の階調電圧「Vm+」を画素Xの映像信号として出力することとなる。
【0085】
なお、上記切替時間は、データ線駆動回路4の極性反転周期より長いことが望ましい。なお、本実施形態の場合、データ線駆動回路4の極性反転周期は、フレーム時間の2倍である。
【0086】
ところで、ルックアップテーブルP及びルックアップテーブルNを一つずつ用意してもよいようにも思われる。すなわち、ケース2において、液晶パネル9内の全部の水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなる1つのルックアップテーブルPを参照ルックアップテーブルPXとして用い、且つ、ケース3において、液晶パネル9内の全部の水平位置の各々と階調補正量候補とを対応付けてなる1つのルックアップテーブルNを参照ルックアップテーブルNXとして用いるようにしてもよいように思われる。
【0087】
しかしながら、この場合、全部の水平位置について階調補正量候補が記憶されることとなるため、データ量が増大してしまう。この点、この液晶表示装置2では、上述のような1つのルックアップテーブルP及び上述のような1つのルックアップテーブルNを用いる場合よりもデータ量が抑制されるようになる。
【0088】
また、ケース2において、図10に示すようなルックアップテーブルPだけを参照ルックアップテーブルPXとして用い、ケース1と同様に補間演算を行うことよって、階調補正量ΔDを決定してもよいように思われる。また、ケース3において、一つのルックアップテーブルN(例えば、ルックアップテーブルN1)だけを参照ルックアップテーブルNXとして用い、ケース1と同様に補間演算を行うことによって、階調補正量ΔDを決定してもよいように思われる。
【0089】
しかしながら、この場合、電圧補正量ΔVxを、理想的な電圧補正量に近づけることが困難であるという問題がある。以下、この点について説明する。
【0090】
上述のように、ΔdやΔDは、補間演算によって決定される。そのため、ΔdやΔDは、画素Xの水平位置に応じて線形的に変化する。そのため、Δdの単位変化量(すなわち、「1」)に対する階調電圧の変化量が大きければ、画素Xの水平位置の単位変化量(すなわち、「1」)に対する階調電圧の変化量は大きくなり、Δdの単位変化量に対する階調電圧の変化量が小さければ、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量は小さくなる。また、ΔDの単位変化量に対する階調電圧の変化量が大きければ、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量は大きくなり、ΔDの単位変化量に対する階調電圧の変化量が小さければ、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量は小さくなる。
【0091】
この点、図11の右下に示すように、中間階調値付近では、階調値の単位変化量に対する階調電圧の変化量が比較的小さい。そのため、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量も比較的小さくなる。従って、図12の中央の図に示すように、どの水平位置においても、Δdに対応する電圧補正量が理想の電圧補正量に近い値になり易い。なお、図12の中央の図に示す折れ線は、Δdに対応する電圧補正量を示し、曲線は、理想的な電圧補正量を示している。
【0092】
一方、図11の左下に示すように、黒階調付近では、階調値の単位変化量に対する階調電圧の変化量が大きい。そのため、画素Xの水平位置の単位変化量に対する階調電圧の変化量も大きくなる。従って、図12の下の図に示すように、場所によって、ΔDに対応する電圧補正量が理想の電圧補正量とはほど遠い値になる。白階調付近についても同様である。図12の下の図に示す折れ線は、ΔDに対応する電圧補正量を示し、曲線は、理想的な電圧補正量を示している。
【0093】
そのため、黒階調又は白階調付近では、画素Xの場所によっては、電圧補正量ΔVxを、理想的な電圧補正量に近づけることが困難になる。
【0094】
この点、この液晶表示装置2では、参照用ルックアップテーブルP及び参照用ルックアップテーブルNが切り替えられるようになっているので、図13に示すように、どの水平位置においても、電圧補正量ΔVxの平均を、理想的な電圧補正量、すなわち図13に示す曲線に近づけることができる。その結果として、残像発生をより高精度に抑制することができる。
【0095】
なお、本発明の実施形態は上記実施形態だけに限らない。
【0096】
例えば、上記実施形態では、画素Xの階調値「D」を補正することによって、画素Xの映像信号を補正するようにしているが、画素Xの映像信号に電圧を加算したり画素Xの映像信号から電圧を減算したりすることによって、画素Xの映像信号を補正するようにしてもよい。
【0097】
また、走査線駆動回路6aと走査線駆動回路6bとのうちの一方だけが液晶表示装置2に備えられてもよい。
【0098】
[変形例1]
ところで、リフレッシュレートが高い場合、例えばリフレッシュレートが240Hzである場合、一水平期間が短くなるため、一水平期間内に期待するところの電荷量が画素Xにチャージされなくなる場合がある。その結果、一水平期間の間に画素Xの電圧を期待するところの電圧まで上昇又は下降させることができなくなり、却って画質が劣化するという問題がある。
【0099】
そこで、プリチャージと呼ばれる技術を採用するようにしてもよい。すなわち、データ線駆動回路4が、画素Xの正極性の映像信号を出力する場合、一水平期間のうちの後半期間では、映像信号を出力し、一水平期間のうちの前半期間では、映像信号より高電圧或いは低電圧の補正映像信号を出力するようにしてもよい。すなわち、データ線駆動回路4が、後半期間では、縦スジ補正回路8から出力される階調値「X」に対応する正極性の階調電圧を出力し、前半期間では、当該階調電圧より高電圧或いは低電圧の信号を出力するようにしてよい。なお、階調値「X」とは、画素Xの階調値「D」が入力された場合に縦スジ補正回路8から出力される階調値のことである。
【0100】
また、データ線駆動回路4が、画素Xの負極性の映像信号を出力する場合、上記後半期間では、映像信号を出力し、上記前半期間では、映像信号より低電圧或いは高電圧の補正映像信号を出力するようにしてもよい。すなわち、データ線駆動回路4が、上記後半期間では、縦スジ補正回路8から出力される階調値「X」に対応する負極性の階調電圧を出力し、前半期間では、当該階調電圧より低電圧或いは高電圧の信号を出力するようにしてよい。
【0101】
以下、この態様(変形例1)を説明するための図14及び図15を参照しながら、変形例1について説明する。
【0102】
図14は、変形例1における液晶表示装置2の構成を示す図である。同図に示すように、変形例1では、データ線駆動回路4を上記のようにして動作させるためにプリチャージ回路11が追加されている。図15に、プリチャージ回路11の構成を示した。
【0103】
階調値「X」が入力された場合におけるプリチャージ回路11の動作について説明する。なお、画素Xの階調値「D」が中間階調値であるとき、階調値「X」は「D+Δd」又は「D−Δd」となり、画素Xの階調値「D」が最小階調値「0」であるとき、階調値「X」は「ΔD」又は「0」となり、画素Xの階調値「D」が最大階調値「Dmax」であるとき、階調値「X」は「Dmax」又は「Dmax−ΔD」となる。
【0104】
補正量算出回路14fは、ラインメモリ14eに格納される画素Xの一つ上の画素Yの階調値「Y」と、階調値「X」と、に基づいて、プリチャージ量ΔXを算出する。例えば、補正量算出回路14fは、階調値「Y」と階調値「X」とを比較し、階調値「Y」と階調値「X」との差に応じたプリチャージ量ΔXを算出する。
【0105】
そして、加算回路14dが、プリチャージ量ΔXに基づいて、プリチャージ階調値「X+ΔX」又は「X−ΔX」を生成する。すなわち、階調値「X」が階調値「Y」以上である場合、プリチャージ階調値「X+ΔX」を生成し、「階調値X」が階調値「Y」より小さい場合、プリチャージ階調値「X−ΔX」を生成する。
【0106】
倍速化回路14cには、このプリチャージ階調値が入力される。倍速化回路14cは、倍速化処理を行ってこのプリチャージ階調値をスイッチ14gに出力する。
【0107】
一方、倍速化回路14bには、プリチャージ階調値ではなく、階調値「X」自身が入力される。倍速化回路14bは、倍速化処理を行って階調値「X」をスイッチ14gに出力する。
【0108】
なお、スイッチ14gは、倍速化回路14bと倍速化回路14cとのうちのいずれか一方の接続先との接続を確立する。
【0109】
このスイッチ14gには、水平カウンタ14aより所定の信号が入力されるようになっており、この信号に従って、スイッチ14gが一水平時間の半分の時間である半水平時間間隔で接続先を切り替えるようになっている。そして、その結果、上記前半期間では、プリチャージ階調値がスイッチ14gから出力され、タイミング制御回路10を経てデータ線駆動回路4に入力されることとなる。一方、後半期間では、階調値「X」自身がスイッチ14gから出力され、タイミング制御回路10を経てデータ線駆動回路4に入力されることとなる。
【0110】
その結果、極性信号により示される画素Xの極性が正極性である場合、前半期間ではプリチャージ階調値「X+ΔX」又は「X−ΔX」に対応する正極性の階調電圧が補正映像信号としてデータ線駆動回路4から出力され、後半期間では階調値「X」に対応する正極性の階調電圧が映像信号としてデータ線駆動回路4から出力されることとなる。また、極性信号により示される画素Xの極性が負極性である場合、前半期間ではプリチャージ階調値「X+ΔX」又は「X−ΔX」に対応する負極性の階調電圧が補正映像信号としてデータ線駆動回路4から出力され、後半期間では階調値「X」に対応する負極性の階調電圧が映像信号としてデータ線駆動回路4から出力されることとなる。
【0111】
なお、チャージされる電荷量の不足を補うための方法として、データ線駆動回路4を2つ設け、走査信号の出力一回につき、上下2つの走査ラインGLに走査信号を出力する方法が考えられる。しかしながら、データラインDLの数が増えるので、開口率が低下し、表示輝度が低下する。また、データ線駆動回路4の数が増加するため製造コストが上がる。
【0112】
この点、変形例1では、上記の方法よりも、製造コストを抑制しつつ、且つ表示輝度の低下を抑制しつつ、画素にチャージされる電荷量の不足を解消することができる。
【0113】
なお、液晶表示装置2は、プリチャージを行う液晶表示装置を開発する過程で生まれたものである。以下、図16乃至図17Cを参照しながら、開発経緯を説明する。
【0114】
まず、消費電力の削減を考えた。一般的に、データ線駆動回路4の駆動方法としては、映像信号の極性をフレーム時間間隔で反転させる駆動方法と、映像信号の極性を一水平時間間隔で反転させる駆動方法と、があるが、前者の駆動方法の方が後者の駆動方法より電力消費が少ない。前者の駆動方法の方が後者の駆動方法よりデータ線駆動回路4の極性反転周期が長いためである。そこで、前者の駆動方法を採用した。
【0115】
次に、画素配列の方式を考えた。一般的に、画素配列の方式としては、ストライプ配列と、図16に示すようないわゆる千鳥格子配列とがある。なお、ストライプ配列を採用すると、列毎反転駆動となり、千鳥格子配列を採用すると、ドット反転駆動となる。
【0116】
上述のようにプリチャージ量ΔXは、画素の階調値と当該画素の一つ上の画素の階調値との差に応じて決定される。そのため、高精度にプリチャージ量ΔXを決定するには、上下の画素それぞれの色プレーンが同じであることが望ましい。上下の画素それぞれの階調値の相関性が高いからである。そこで、上下の画素それぞれの色プレーンが異なる千鳥格子配列ではなく、上下の画素それぞれの色プレーンが同じであるストライプ配列を採用した。
【0117】
ストライプ配列を採用して実験したところ、下記のような現象が発生した。発明者らは、この現象を「縦スジ流れ」と呼んでいる。以下、縦スジ流れについて、図17A乃至図17Cを参照しながら説明する。
【0118】
図17Aは、列毎反転駆動において実現され得る、水平方向の画素列に含まれる画素それぞれの電圧極性の分布を示す図である。同図に示すように、列毎反転駆動では、左上の分布と、右上の分布と、が交互に実現される。なお、簡単のため、各画素の画素値が同じである場合を想定している。
【0119】
以下、「+」が記された画素を正極画素と呼び、「−」が記された画素を負極画素と呼び、説明を続ける。
【0120】
フィールドスルー現象により、画素電極の正極性の電圧と、画素電極の負極性の電圧と、の共通電圧Vcに対する対称性が崩れると各画素には直流電荷がチャージされる。図17Aでは、フィールドスルー現象により、正極画素の表示輝度B2より負極画素の表示輝度B1が高くなってしまう例を示した。図17Aの左上の分布では、表示輝度の分布が左下に示すようになり、右上の分布では、表示輝度の分布が右下に示すようになる。なお、ΔBは、B1とB2との差を示している。
【0121】
仮に利用者の視線が固定されている場合、図17Bに示すように、各画素の表示輝度がB1とB2とのうちで交互に変化するため、利用者によって知覚される輝度は各画素で同じになる。そのため、見かけ上、問題はない。
【0122】
しかしながら、利用者の視線が移動する場合(例えば、動画が表示される場合)、視線の移動速度によっては、図17Cに示すように、表示輝度の差が知覚されてしまう。そのため、比較的暗い縦線と比較的明るい縦線とからなる縦スジが視線の移動方向に移動しているように見える現象、すなわち、縦スジ流れが発生することがわかった。
【0123】
そこで、発明者らは、階調値が中間階調値である画素の映像信号を、以上で説明したようにして補正する対処を行った。しかしながら、この対処を行っても画素に若干量の直流電荷がチャージされてしまい、縦スジ流れを目立たなくするには不十分であることがわかった。これを受け、画素にチャージされる直流電荷量をさらに抑制するべく、階調値が最小階調値である画素の映像信号及び階調値が最大階調値である画素の映像信号も補正する必要に迫られた結果、この液晶表示装置2が発明された次第である。
【0124】
[変形例2]
なお、上記実施形態では、画素Xの階調値が最小階調値「0」に近い階調値(例えば、「1」)であっても、画素Xの階調値が中間階調値に相当するため、電圧補正量(すなわち、ΔV−Δv)が、画素Xが最小階調値「0」である場合の電圧補正量ΔVx(≒2×(ΔV−Δv))とは大きく異なる電圧補正量となる。これは、画素Xの階調値が最大階調値「Dmax」に近い階調値(例えば、「Dmax−1」)である場合も同様であり、上記実施形態では、最小階調値「0」の近傍及び最大階調値「Dmax」の近傍において、電圧補正量が急激に変化する。このことによっても、残像が発生する可能性がある。
【0125】
そこで、最小階調値「0」の近傍及び最大階調値「Dmax」の近傍における電圧補正量の変化を滑らかにするために、データ線駆動回路4が、画素Xの階調値「D」が「1」以上「u」以下の第1階調値範囲に属する中間階調値(以下、第1中間階調値)である場合において正極性の映像信号を出力する場合、図18Aに示すように電圧補正量を階調値「D」に応じて変化させるようにしてよい。
【0126】
また、データ線駆動回路4が、画素Xの階調値「D」が「v(v>u)」以上「Dmax−1」以下の第2階調値範囲に属する中間階調値(以下、第2中間階調値)である場合において負極性の映像信号を出力する場合、図18Bに示すように、電圧補正量を電圧補正量を階調値「D」に応じて変化させるようにしてよい。以下、この態様(変形例2)について説明する。
【0127】
まず、画素Xの階調値「D」が第1中間階調値でも第2中間階調値でもない中間階調値である場合(以下、ケース4)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。ケース4では、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cは、ケース1の場合と同様に動作する。
【0128】
次に、画素Xの階調値「D」が第1中間階調値である場合(以下、ケース5)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0129】
ケース5では、補正回路12a及び減算回路12cは、ケース1の場合と同様にして、負極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて、階調値「D」を補正し、補正階調値「D−Δd」を生成する。
【0130】
但し、ケース5では、補正回路12a及び加算回路12bは、正極用の中間階調用ルックアップテーブルだけでなく、参照ルックアップテーブルPXも使用して、階調値「D」を補正し、補正階調値「D+Δd」を生成する。
【0131】
すなわち、正極補正回路が、正極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて第1階調補正量候補を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を第1階調補正量候補として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって第1階調補正量候補を決定する。
【0132】
また、正極補正回路が、参照ルックアップテーブルPXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて第2階調補正量候補を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を第2階調補正量候補として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって第2階調補正量候補を決定する。
【0133】
そして、正極補正回路が、中間階調値「u+1」と、最小階調値「0」と、中間階調値「u+1」に対応する上記第1階調補正量候補と、最小階調値「0」に対応する上記第2階調補正量候補と、第1中間階調値である画素Xの階調値「D」と、に基づいて補間演算を行うことによって階調補正量「Δd」を決定する。
【0134】
そして、加算回路12bが、階調値「D」に階調補正量「Δd」を加算することにより、補正階調値「D+Δd」を生成することになる。
【0135】
次に、画素Xの階調値「D」が第2中間階調値である場合(以下、ケース6)における、補正回路12a、加算回路12b、及び減算回路12cの動作について説明する。
【0136】
ケース6では、補正回路12a及び加算回路12bは、ケース2の場合と同様にして、階調値「D」を補正し、補正階調値「D+Δd」を生成する。
【0137】
但し、ケース6では、補正回路12a及び減算回路12cは、負極用の中間階調用ルックアップテーブルだけでなく、参照ルックアップテーブルNXも使用して階調値「D」を補正し、補正階調値「D−Δd」を生成する。
【0138】
すなわち、負極補正回路が、負極用の中間階調用ルックアップテーブルのうちの2つの階調補正量候補に基づいて第3階調補正量候補を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を第3階調補正量候補として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって第3階調補正量候補を決定する。
【0139】
また、負極補正回路が、参照ルックアップテーブルNXのうちの2つの階調補正量候補に基づいて第4階調補正量候補を決定する。例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれかである場合、画素Xの水平位置に対応する階調補正量候補を第4階調補正量候補として決定する。また、例えば、画素Xの水平位置が「0」、「120」、「240」、「360」、及び「480」のいずれでもない場合、画素Xの水平位置と、画素Xより右側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、画素Xより左側の代表水平位置のうちで画素Xに最も近い代表水平位置と、これら2つの代表水平位置に対応付けられた階調補正量候補と、に基づいて補間演算を行うことによって第4階調補正量候補を決定する。
【0140】
そして、負極補正回路が、中間階調値「v−1」と、最大階調値「Dmax」と、中間階調値「v−1」に対応する上記第3階調補正量候補と、最大階調値「Dmax」に対応する上記第4階調補正量候補と、第1中間階調値である画素Xの階調値「D」と、に基づいて補間演算を行うことによって階調補正量「Δd」を決定する。
【0141】
そして、減算回路12cが、階調値「D」から階調補正量「Δd」を加算することにより、補正階調値「D−Δd」を生成することになる。
【符号の説明】
【0142】
2 液晶表示装置、4 データ線駆動回路、6,6a,6b 走査線駆動回路、8 縦スジ補正回路、9 液晶パネル、10 タイミング制御回路、11 プリチャージ回路、12a 補正回路、12b,14d 加算回路、12c 減算回路、12d,14g スイッチ、12e タイマー、12f 極性カウンタ、14a 水平カウンタ、14b,14c 倍速化回路、14e ラインメモリ、14f 補正量算出回路、Cgs 寄生容量、CL 共通ライン、Clc 画素容量、Cst 補助容量、DL,DLX データライン、GL,GLX 走査ライン、TR TFTトランジスタ、P,N ルックアップテーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータ線と、
複数の走査線と、
前記複数のデータ線のうちのいずれかである一のデータ線と前記複数の走査線のうちのいずれかである一の走査線とに対応する一の画素の、正極性の映像信号又は負極性の映像信号を、所定の出力周期で選択的に、前記一のデータ線に出力するデータ線駆動回路と、
前記一の画素の映像信号が出力される場合に、前記一の走査線に走査信号を出力する走査線駆動回路と、
を含む液晶表示装置において、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が、最小階調を表す第1階調値及び最大階調を表す第2階調値、以外の階調値である中間階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、前記一の画素の階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、前記一の画素の階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が第1階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、第1階調値に対応する正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、第1階調値に対応する負極性の第1階調電圧を有する映像信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が第2階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、第2階調値に対応する正極性の第2階調電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、第2階調値に対応する負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力を、中間階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行い、且つ、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力を、中間階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行うこと、
を特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記データ線駆動回路は、
正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、における電圧補正量を所定の周期で変化させること、
を特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶表示装置は、
前記一の画素の階調値が第1階調値と第2階調値とのいずれかである場合に、前記一の画素の階調値を複数の補正量候補を含む補正量候補群に基づいて補正し、補正階調値を生成する生成回路と、
前記一の画素の階調値が第1階調値と第2階調値とのいずれかである場合に、前記一の画素の階調値自身と、前記生成回路により生成された補正階調値と、のうちのいずれか一方を選択的に出力する出力回路と、をさらに含み、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が第1階調値である場合において、前記一の画素の階調値自身が前記出力回路から出力された場合、負極性の第1階調電圧を有する映像信号を出力し、補正階調値が前記出力回賂から出力された場合、当該補正階調値に対応する正極性の電圧を有する映像信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が第2階調値である場合において、前記一の画素の階調値自身が前記出力回路から出力された場合、正極性の第2階調電圧を有する映像信号を出力し、補正階調値が前記出力回賂から出力された場合、当該補正階調値に対応する負極性の電圧を有する映像信号を出力し、
前記生成回路は、
前記一の画素の階調値の補正に用いる補正量候補群を前記所定の周期で切り替えること、
を特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記補正量候補群に含まれる補正量候補は、それぞれ異なる水平位置と関連づけられ、
前記生成回賂は、
前記補正量候補群に含まれる補正量候補と、前記一の画素の水平位置と、各補正量候補に関連づけられた水平位置と、に基づいて補間演算を行うことにより、補正量を決定すること、
を特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記生成回路は、
前記一の画素の階調値が第1階調値である場合と、前記一の画素の階調値が第2階調値である場合と、で異なる補正量候補群に基づいて補正量を決定すること、
を特徴とする請求項3又は4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記所定の周期は、前記データ線駆動回路の極性反転周期以上の長さであること、
を特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記データ線駆動回路は、
正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、を電圧補正量の平均が前記一の画素の前記走査線駆動回路からの距離が短いほど大きくなるように行うこと、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記データ線駆動回路は、
正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、を電圧補正量の平均が前記一の画素の前記走査線駆動回路からの距離を変数とする減少指数関数の関数値に応じた量になるように行うこと、
を特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記走査線駆動回路は、
所定の長さの水平期間、前記一の走査線に走査信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
正極性の映像信号を出力する場合、前記水平期間のうちの前記水平期間の終了時期を含む一部の後段期間、映像信号を出力し、前記水平期間のうちの前記後段期間を除く前段期間、映像信号より高いあるいは低い電圧を有する信号を出力し、
負極性の映像信号を出力する場合、前記後段期間、映像信号を出力し、前記前段期間、映像信号より低いあるいは高い電圧を有する信号を出力すること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項1】
複数のデータ線と、
複数の走査線と、
前記複数のデータ線のうちのいずれかである一のデータ線と前記複数の走査線のうちのいずれかである一の走査線とに対応する一の画素の、正極性の映像信号又は負極性の映像信号を、所定の出力周期で選択的に、前記一のデータ線に出力するデータ線駆動回路と、
前記一の画素の映像信号が出力される場合に、前記一の走査線に走査信号を出力する走査線駆動回路と、
を含む液晶表示装置において、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が、最小階調を表す第1階調値及び最大階調を表す第2階調値、以外の階調値である中間階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、前記一の画素の階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、前記一の画素の階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が第1階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、第1階調値に対応する正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、第1階調値に対応する負極性の第1階調電圧を有する映像信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が第2階調値である場合、正極性の映像信号を出力する場合は、第2階調値に対応する正極性の第2階調電圧を有する映像信号を出力し、負極性の映像信号を出力する場合は、第2階調値に対応する負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力を、中間階調値に対応する正極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行い、且つ、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力を、中間階調値に対応する負極性の階調電圧を補正した電圧を有する映像信号を出力する場合より大きい電圧補正量で行うこと、
を特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記データ線駆動回路は、
正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、における電圧補正量を所定の周期で変化させること、
を特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶表示装置は、
前記一の画素の階調値が第1階調値と第2階調値とのいずれかである場合に、前記一の画素の階調値を複数の補正量候補を含む補正量候補群に基づいて補正し、補正階調値を生成する生成回路と、
前記一の画素の階調値が第1階調値と第2階調値とのいずれかである場合に、前記一の画素の階調値自身と、前記生成回路により生成された補正階調値と、のうちのいずれか一方を選択的に出力する出力回路と、をさらに含み、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が第1階調値である場合において、前記一の画素の階調値自身が前記出力回路から出力された場合、負極性の第1階調電圧を有する映像信号を出力し、補正階調値が前記出力回賂から出力された場合、当該補正階調値に対応する正極性の電圧を有する映像信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
前記一の画素の階調値が第2階調値である場合において、前記一の画素の階調値自身が前記出力回路から出力された場合、正極性の第2階調電圧を有する映像信号を出力し、補正階調値が前記出力回賂から出力された場合、当該補正階調値に対応する負極性の電圧を有する映像信号を出力し、
前記生成回路は、
前記一の画素の階調値の補正に用いる補正量候補群を前記所定の周期で切り替えること、
を特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記補正量候補群に含まれる補正量候補は、それぞれ異なる水平位置と関連づけられ、
前記生成回賂は、
前記補正量候補群に含まれる補正量候補と、前記一の画素の水平位置と、各補正量候補に関連づけられた水平位置と、に基づいて補間演算を行うことにより、補正量を決定すること、
を特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記生成回路は、
前記一の画素の階調値が第1階調値である場合と、前記一の画素の階調値が第2階調値である場合と、で異なる補正量候補群に基づいて補正量を決定すること、
を特徴とする請求項3又は4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記所定の周期は、前記データ線駆動回路の極性反転周期以上の長さであること、
を特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記データ線駆動回路は、
正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、を電圧補正量の平均が前記一の画素の前記走査線駆動回路からの距離が短いほど大きくなるように行うこと、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記データ線駆動回路は、
正極性の第1階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、負極性の第2階調電圧を補正した電圧を有する映像信号の出力と、を電圧補正量の平均が前記一の画素の前記走査線駆動回路からの距離を変数とする減少指数関数の関数値に応じた量になるように行うこと、
を特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記走査線駆動回路は、
所定の長さの水平期間、前記一の走査線に走査信号を出力し、
前記データ線駆動回路は、
正極性の映像信号を出力する場合、前記水平期間のうちの前記水平期間の終了時期を含む一部の後段期間、映像信号を出力し、前記水平期間のうちの前記後段期間を除く前段期間、映像信号より高いあるいは低い電圧を有する信号を出力し、
負極性の映像信号を出力する場合、前記後段期間、映像信号を出力し、前記前段期間、映像信号より低いあるいは高い電圧を有する信号を出力すること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の液晶表示装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−189764(P2012−189764A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52648(P2011−52648)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】
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