説明

液晶表示装置

【課題】 液晶応答を改善するためのオーバードライブ駆動と、ディザ処理による階調表現の拡張を両立した液晶表示装置を提供する。
【解決手段】
入力される階調データD1に基づき、階調値がオーバードライブ駆動を考慮してフレーム期間毎に時分割された階調データ列D3を生成する時分割駆動部18、及び、ディザ処理部19を備える液晶表示装置1であって、時分割駆動部18から出力された階調データ列D3の各階調値が、予め設定された階調閾値Dthより高階調か否かをフレーム期間毎に判定する判定部20を、更に備える。判定部20は、階調値がDth以下のフレーム期間では、階調データ列D3の階調値が選択され、階調値がDthより高階調なフレーム期間では、ディザ変換後の階調データ列D4の階調値が選択されるように、スイッチ21の出力である映像信号D5の階調値を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、更に詳細には、ディザ処理による階調表現の拡張が可能な液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビの大型化が進んでいる。これに伴い、液晶テレビの正面から視聴しても、画面の両端は斜め方向から見ることになり、視野角特性の改善が求められている。
【0003】
このような課題を解決するため、時分割駆動による視野角特性の改善方法が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1によれば、1つの階調を、4フレームを1周期とする時分割駆動で実現している。時分割駆動を行う4フレームのうち、2フレームは入力データを高階調側に変換し、残る2フレームは入力データを低階調側に変換することで中間階調を実現しつつ、更に、低階調から高階調に遷移する最初のフレーム及び高階調から低階調に遷移する最初のフレームに、液晶応答を改善するオーバードライブ駆動を考慮したパラメータを適用することで、フリッカを抑えながら視野角特性の改善を実現している。
【0005】
ここで、三次元映像表示における時分割駆動において、ディザ処理によって階調表現を拡張する方法が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2011/065091号明細書
【特許文献2】特開2011−13568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記視野角特性を改善する時分割駆動において、ディザ処理によって階調表現を拡張する場合、上記の先行技術を利用しても、表示にざらつきやちらつきが生じることが、本願発明者らの鋭意研究の結果、明らかになった。
【0008】
これは、上記オーバードライブ駆動を行いつつ、ディザ処理によって階調表現を拡張する場合、ディザ処理により特定の画素に表示する階調が+1階調されると、これに併せて次フレームでのオーバードライブ量を見直す必要があることに起因する。しかしながら、ディザ処理の結果に基づいてオーバードライブ量の見直しを行うことは、回路構成上困難である。
【0009】
即ち、次フレームでのオーバードライブ量がディザ処理前の階調値に基づいて決定され、当該オーバードライブ量の見直しが行われないため、ディザ処理後の階調値に基づいて最適化されていないパラメータを用いてオーバードライブ駆動を行うことになる。この結果、画素の表示にざらつきやちらつきが生じることが分かった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な回路構成で、オーバードライブ駆動と、ディザ処理による階調拡張を両立した液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る液晶表示装置は、入力される画素毎の階調データに基づき、各画素の表示を、n個のフレーム期間(nは1以上の自然数)からなるフレーム周期で画素の輝度を変化させて行う液晶表示装置であって、
前記フレーム周期中に、液晶応答を改善するためのオーバードライブ駆動を行う一または複数の連続した前記フレーム期間からなるオーバードライブ期間を、一または複数有し、
前記フレーム周期内において、階調値が前記フレーム期間毎に時分割された階調データ列を生成する時分割駆動部と、
前記階調データの階調より多階調の表示を実現するため、ディザ変換パターンに従って、隣接する各画素の前記階調データ列の各階調値に対して演算処理を行ったディザ変換後の階調値を生成するディザ処理部と、
前記階調データ列の各階調値が所定の階調閾値よりも低階調か否かを前記フレーム期間毎に判定する判定部を備え、
前記時分割駆動部は、
前記オーバードライブ期間の直前の前記フレーム期間から次以降の前記フレーム期間にかけて高階調または低階調に階調値が変化する場合、当該オーバードライブ期間の直前の前記フレーム期間における階調値および変化後の目標階調値に基づいて、当該オーバードライブ期間の階調値が液晶応答が改善されるように調整された前記階調データ列を生成し、
前記時分割駆動部により生成された前記階調データ列の階調値が前記階調閾値以下の前記フレーム期間に対しては、当該階調データ列の当該各階調値に応じた前記出力データ電圧が前記画素に供給されるとともに、
前記時分割駆動部により生成された前記階調データ列の階調値が前記階調閾値より高階調の前記フレーム期間に対しては、当該階調データ列の当該各階調値が前記ディザ処理部によりディザ変換された階調値に応じた前記出力データ電圧が前記画素に供給されることを特徴とする。
【0012】
尚、ここで、階調値が高階調に変化する、或いは階調値が低階調に変化するという場合、同一のフレーム周期内の前後のフレーム期間の間で階調値が変化する場合に限られず、あるフレーム周期の直前のフレーム周期の最後のフレーム期間から、当該フレーム周期の最初のフレーム期間にかけて階調値が変化する場合や、フレーム周期の最後のフレーム期間から、当該フレーム周期の直後のフレーム周期の最初のフレーム期間にかけて階調値が変化する場合を含むものとする。
【0013】
上記特徴の液晶表示装置に依れば、時分割駆動部が出力するディザ処理前の階調値と、ディザ処理部によりディザ処理後の階調値との何れか一方がフレーム期間毎に選択され、当該選択された階調値に応じた出力データ電圧が各画素に供給されることとした。そして、ディザ処理前の階調値が階調閾値以下の場合、ディザ処理前の階調値に応じた出力データ電圧が当該画素に供給されるように構成した。
【0014】
ディザ処理により階調値を増減させる(例えば、1だけ増加させる)とした場合、ディザ処理後の階調値に基づいて、次フレーム期間におけるオーバードライブ量は調整されるべきである。ところが、階調値が+1されたか否かに応じて、次フレーム期間におけるオーバードライブ量を変更することは回路構成上困難であるため、一般的には、ディザ処理により階調値が増減したか否かに拘わらず、ディザ処理前の階調値に基づき、次フレーム期間におけるオーバードライブ量は調整される。
【0015】
ところで、階調値が低階調側では、図8に示すように、入力階調値が1だけ増加しても輝度は殆ど変化しないが、画素に印加する階調電圧(出力データ電圧)の変化は大きい。このため、ディザ処理により低階調側の階調値を+1するとした場合、次フレーム期間において調整されるべきオーバードライブ量は、それが低階調であればあるほどディザ処理前の階調値に基づいたオーバードライブ量から乖離してゆく。つまり、低階調側の階調値がディザ処理により+1されると、ディザ処理前の階調値に基づいたオーバードライブ量では、次フレーム期間以降において所望の輝度を再現することができず、ざらつき、及び、ちらつきの原因となる。
【0016】
そこで、本発明では、階調値の増減に対して出力データ電圧が大きく変化する低階調側の領域に属する上限の階調値を階調閾値として定義し、階調値が当該階調閾値以下であり、階調値の増減に対して出力データ電圧が大きく変化する場合には、ディザ処理による演算結果を使用せず、ディザ処理前の(即ち、階調値が+1されていない)階調値に応じた出力データ電圧を画素に供給することにした。これにより、次フレーム期間におけるオーバードライブ量は適正水準であり、ディザ処理後の階調値の輝度をほぼ維持しつつ、ざらつき、及び、ちらつきのない表示が得られる。
【0017】
尚、本発明では、フレーム周期内の全てのフレーム期間において、階調データ列の階調値が当該階調閾値以下であった場合には、ディザ処理が行われない結果となるが、そのような場合は、殆どゼロに近い輝度を表示する場合であり、ディザ処理がされていてもされていなくても人の目では認識できないため、本発明の適用上問題は生じない。
【0018】
上記特徴の液晶表示装置は、更に、
前記時分割駆動部は、前記フレーム周期内で複数のデータ変換テーブルを切り替えながら、前記階調データを前記データ変換テーブルに従って変換することで、前記階調データ列を生成することが好ましい。
【0019】
上記特徴の液晶表示装置は、更に、
三次元映像を得るために、左眼用の前記階調データと右眼用の前記階調データを生成し、前記時分割駆動部へ出力する三次元映像変換部を備える構成とすることができる。
【0020】
これにより、オーバードライブ駆動と、ディザ処理による階調拡張を両立しつつ、三次元映像の表示が可能な液晶表示装置を実現できる。
【0021】
上記特徴の液晶表示装置は、更に、n≧2であり、
所定画素の中間階調の表示において、前記時分割駆動部は、
前記フレーム周期の第1〜第mフレーム期間(mは1〜n−1の自然数)と前記フレーム周期の第m+1〜第nフレーム期間の何れか一方を前記中間階調よりも階調値の高い高階調期間とし、何れか他方を前記中間階調よりも階調値の低い低階調期間として、前記階調データ列を生成する構成とすることができる。
【0022】
このように構成することで、高階調期間と低階調期間が時間的に平均化される結果として擬似的な中間階調を表現でき、視野角特性を改善した中間階調表示を得られる。
【0023】
このとき、更に、
前記フレーム周期の前記第1〜第mフレーム期間を前記高階調期間、前記フレーム周期の前記第m+1〜第nフレーム期間を前記低階調期間として、前記階調データ列が前記時分割駆動部により生成される第1の画素と、前記フレーム周期の前記第1〜第mフレーム期間を前記低階調期間、前記フレーム周期の前記第m+1〜第nフレーム期間を前記高階調期間として、前記階調データ列が前記時分割駆動部により生成される第2の画素と、を有し、
前記第mフレーム期間における前記第1の画素の階調値と、前記第nフレーム期間における前記第2の画素の階調値、及び、前記第nフレーム期間における前記第1の画素の階調値と、前記第mフレーム期間における前記第2の画素の階調値が、夫々同じである構成とすることが好ましい。
【0024】
このように構成することで、高階調期間と低階調期間が空間的に平均化される結果として擬似的な中間階調を表現でき、視野角特性を改善した中間階調表示を得られる。
【0025】
この場合、前記高階調期間では、前記判定部による判定を常に行わず、前記画素に前記ディザ処理部によりディザ変換された階調値に応じた前記出力データ電圧が供給される構成とすることができる。
【0026】
即ち、所定画素の中間階調の表示において、高階調期間における階調値が前記階調閾値より高階調になるように設定しておくことで、高階調期間における判定部による判定処理を省略することができる。
【0027】
上記特徴の液晶表示装置は、更に、前記階調閾値を、任意のタイミングで変更することが可能な構成とすることができる。
【0028】
上記特徴の液晶表示装置は、更に、前記階調閾値として、前記フレーム期間毎に異なる値を設定できる構成とすることができる。
【0029】
上記特徴の液晶表示装置は、更に、前記階調閾値が、前記画素の色(例えばR、G、B)毎に異なる値を設定できる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に依れば、オーバードライブ駆動と、ディザ処理による階調拡張を両立し、表示のちらつきやざらつきを生じさせることなく階調表現の拡張が可能な液晶表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す回路ブロック図
【図2】液晶表示装置における、画素の構成例を示す回路図
【図3】時分割駆動部が階調データ列の生成のため使用するデータ変換テーブルの一例
【図4】時分割駆動を考慮しない従来のディザ処理の例を説明する図
【図5】時分割駆動において従来のディザ処理を適用する場合の方法と、その問題点を説明するための図
【図6】時分割駆動において本発明のディザ処理を適用する場合の方法を説明するための図
【図7】従来のディザ処理方法と本発明のディザ処理方法を適用した場合とで、時分割駆動がされた輝度波形を示す図
【図8】入力階調値に対して、画素の液晶に印加される階調電圧(出力データ電圧)との関係、及び、画素に表示される輝度との関係を示す図
【図9】三次元映像変換部を備える本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す回路ブロック図
【図10】三次元映像表示において、本発明の時分割駆動部による階調データ列の生成方法の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
〈第1実施形態〉
本発明の一実施形態に係る液晶表示装置1の構成例を図1に示す。図1の回路ブロック図に示すように、液晶表示装置1は、タイミングコントローラ11、ソースドライバ12、ゲートドライバ13、及び、液晶パネル14を備えてなる。本実施形態において、液晶表示装置1は、1つの階調を、4フレーム期間を1周期とする時分割駆動で実現し、それを更にディザ処理により拡張して液晶パネル14に表示する。
【0033】
液晶パネル14は、ゲートドライバ13により駆動される複数のゲート線GLと、ソースドライバ12により駆動される複数のソース線SLの交点に、マトリクス上に配置された複数の画素41を備える。図2に画素41の構成を示す。
【0034】
図2に示すように、1つの画素41は、TFT(Thin Film Transistor)42、液晶容量43、及び、補助容量44を備える。TFT42はスイッチの役割を果たす薄膜トランジスタであり、そのゲート端子、ソース端子、ドレイン端子には、ゲート線GL、ソース線SL、液晶容量43と補助容量44の一端が、夫々、接続されている。液晶容量43の他端は液晶パネル14の対向電極に接続しており、補助容量44の他端は補助容量線CSに接続している。ゲート線GL、ソース線SLを選択することで、(pix,line)で指定される画素41に、階調値に応じた出力データ電圧が供給される。
【0035】
ゲートドライバ13により選択されたゲート線GLに正の高電圧が印加されると、TFT42がオンし、ソースドライバ12により選択されたソース線SLを介して、出力データ電圧が液晶容量43と補助容量44に供給され、液晶容量43と補助容量44が充放電され、液晶パネル上14に所望の映像が表示される構成である。
【0036】
ゲートドライバ13は、タイミングコントローラ11からの制御信号DGにより制御され、選択されたゲート線GLに正または負の高電圧を印加することで、TFT42のオン、オフを制御する。
【0037】
ソースドライバ12は、タイミングコントローラ11から出力された制御タイミング情報と映像データを含む制御信号DSを受け取り、映像データの階調値をデジタルアナログ変換し、変換された出力データ電圧を、当該制御タイミング情報の制御タイミングに従って選択されたソース線SLに印加する。
【0038】
タイミングコントローラ11は、入力回路15と、出力回路16と、時分割駆動部18、ディザ処理部19、判定部20、及び、スイッチ21からなる映像調整回路17とを備え、映像信号D0に対して、視野角特性の改善および階調表現の拡張処理を行って液晶パネル14に表示するための映像調整、及び、最適なタイミングで液晶パネル4を駆動するためのタイミング調整を行い、ソースドライバ12およびゲートドライバ13に、夫々、制御信号DS及び制御信号DGを出力する。
【0039】
ここで、映像信号D0がタイミングコントローラ11に入力後、入力回路15から出力された映像信号D1の階調データは、時分割駆動部18内で、予め用意された4種類のデータ変換テーブルLUTA、LUTB、LUTC、LUTDに従って、フレーム期間毎にデータ変換テーブルを切り替えながら階調変換が行われ、画素毎に、4フレーム期間を1フレーム周期とする階調データ列D3に変換される。当該階調データ列D3は、ディザ処理部19、判定部20、及び、スイッチ21に入力される。尚、LUTはLook Up Tableの略称である。
【0040】
各データ変換テーブルLUTA〜LUTDは、階調データに対する一次元配列で定義されている。ここで、4種類のデータ変換テーブルのうちどれを使用するかについては、フレーム期間の番号(以降、適宜「フレーム番号」と称す)、画素の座標(pix,line)に応じて、例えば、図3に示すように予め決められている。
【0041】
図3に示す例では、階調データは、座標(pix,line)=(2i,2j)、及び(2i+1,2j+1)の画素に対しては、フレーム番号が4k(kは0以上の整数)のときLUTAを参照して変換され、フレーム番号が4k+1のときLUTBを参照して変換され、フレーム番号が4k+2のときLUTCを参照して変換され、フレーム番号が4k+3のときLUTDを参照して変換され、階調データ列D3が生成される。
【0042】
ここで、LUTA、LUTBは、階調データを高階調側に変換し、LUTC、LUTDは、階調データを低階調側に変換する。視野角特性は、高階調、低階調側では良いが、中間調領域で悪いため、高階調と低階調を時間的に平均化して擬似的に中間階調を表現することで、視野角特性を改善した中間階調表示が得られる。所定の中間階調の表示において、座標(2i,2j)及び(2i+1,2j+1)の画素において、フレーム番号4k〜4k+1までの期間が、当該中間階調より高階調を表示する高階調期間であり、フレーム番号4k+2〜4k+3までの期間が、当該中間階調より低階調を表示する低階調期間である。
【0043】
更に、低階調から高階調、または高階調から低階調へ遷移する最初のフレーム期間で使用するデータ変換テーブル(LUTA、LUTC)は、液晶応答を改善するオーバードライブ駆動を考慮したパラメータが設定されている。即ち、低階調から高階調に変化する最初のフレーム期間で使用するLUTAの階調値は、高階調期間の階調値であるLUTB(及び、低階調期間の階調値であるLUTD)よりも高階調とし、高階調から低階調に変化する最初のフレーム期間で使用するLUTCの階調値は、低階調期間の階調値であるLUTD(及び、高階調期間の階調値であるLUTB)よりも低階調とする。本実施形態におけるオーバードライブ駆動は、上記のように、高階調に変化させる場合は、例えば最初に目標の階調値より高階調となる出力データ電圧を画素に印加することで、或いは、低階調に変化させる場合は、例えば最初に目標の階調値より低階調となる出力データ電圧を画素に印加することで、液晶の応答速度を改善し、より短時間で目標階調値の輝度に到達させるものである。ここで、目標階調値よりもどれだけ高階調あるいは低階調な出力データ電圧を印加させればよいか(オーバードライブ量)は、LUTBとLUTDの階調値により定まるパラメータとなる。
【0044】
一方、座標(2i+1,2j)及び(2i,2j+1)の画素に対しては、図3の例に示すように、フレーム番号が4kのときLUTCを参照して変換され、フレーム番号が4k+1のときLUTDを参照して変換され、フレーム番号が4k+2のときLUTAを参照して変換され、フレーム番号が4k+3のときLUTBを参照して変換され、階調データ列D3を生成する。即ち、座標(2i,2j)及び(2i+1,2j+1)の画素とは2フレーム期間だけずれており、高階調期間と低階調期間が入れ替わっている。
【0045】
このように構成することで、所定の中間階調の表示において、pix方向、或いはline方向に隣接する画素同士では、何れか一方が当該中間階調より高階調となり、何れか他方が当該中間階調より低階調となる。このため、高階調と低階調を空間的に平均化して擬似的に中間調を表現することで、視野角特性を改善した中間調表示が得られる。
【0046】
このようにして、時分割駆動部18は、オーバードライブ駆動を行いつつ、時間的、空間的に中間階調を実現する。
【0047】
ディザ処理部19は、時分割駆動部18から出力された階調データ列D3の階調表現を拡張するため、予め用意されたディザ変換パターンに従って、階調データ列D3の各階調値に対して演算処理を行い、ディザ変換後の階調データ列D4を生成し、スイッチ21に出力する。尚、ディザ変換パターンは、フレーム番号、及び、画素の座標によって、予め決められている。具体的なディザ変換の方法については、後述する。
【0048】
判定部20は、時分割駆動部18から出力された階調データ列D3の各階調値を、予め設定されている階調閾値Dthと比較し、階調データ列D3の各階調値が、Dthよりも高階調か否かをフレーム期間毎に判定する。当該階調値がDth以下のフレーム期間では、階調データ列D3の階調値が選択され、当該階調値がDthより高階調なフレーム期間では、ディザ変換後の階調データ列D4の階調値が選択されるように、スイッチ21の出力である映像信号D5の階調値を制御する。
【0049】
出力回路16は、映像信号D5の階調値に基づき、映像データを含む制御信号DSを生成し、ソースドライバ12に出力する。また、ゲート線GLを選択するための制御信号DGを生成し、ゲートドライバ13に出力する。
【0050】
以下に、従来技術におけるディザ処理の問題点と、本発明の液晶表示装置1におけるディザ処理の方法について、詳細に説明する。
【0051】
《1.従来技術におけるディザ処理方法》
先ず、ディザ処理の概要を簡単に説明するため、時分割駆動を考慮しない従来のディザ処理に関して、図4に示す2×2のディザ変換パターンを用いて階調表現を拡張する方法について説明する。図4において、+1の表記は入力データの階調値を+1階調することを、0の表記は入力データに対して何も処理しないことを表す。
【0052】
図4に示す例では、各画素の階調値は、フレーム番号が4k(kは0以上の整数)のときは、座標(pix,line)=(2i,2j)で指定される画素の階調値が1階調だけ加算され、それ以外の画素は入力データの階調値がそのまま出力される。
【0053】
一方、フレーム番号が4k+1のときは、座標(2i+1,2j)で指定される画素の階調値が1階調だけ加算され、それ以外の画素は入力データの階調値がそのまま出力される。
【0054】
同様に、フレーム番号が4k+2のときは、座標(2i+1,2j+1)で指定される画素の階調値が1階調だけ加算され、それ以外の画素は入力データの階調値がそのまま出力される。
【0055】
同様に、フレーム番号が4k+3のときは、座標(2i,2j+1)で指定される画素の階調値が1階調だけ加算され、それ以外の画素は入力データの階調値がそのまま出力される。
【0056】
この結果、4フレーム期間を時間平均すると、入力データの階調値が擬似的に+0.25階調された輝度が液晶パネルに表示されることとなり、階調表現が拡張される。
【0057】
更に、特定のフレーム期間に着目した場合、フレーム番号が4k〜4k+3の任意のフレーム期間において、4つの隣接する画素のうち何れか1つの画素のみ階調値が1階調だけ加算され、それ以外の画素は入力データの階調値がそのまま出力されているため、空間的にも輝度が平均化され、入力データの階調値が擬似的に+0.25階調された輝度で液晶パネルへの表示が行われることとなり、階調表現が拡張される。
【0058】
このように、ディザ処理により、時間的、空間的に階調表現を拡張することができる。
【0059】
《2.従来技術におけるディザ処理の問題点》
次に、時分割駆動部18の後段にディザ処理部19を設け、上述の従来の方法でディザ処理を行う場合に生じる問題点について説明する。
【0060】
図5は、図3に示す時分割駆動に合わせ、図4に示したディザ変換パターンの切替を、4フレーム期間からなるフレーム周期毎に行う場合の例を示す。図5では、4フレーム期間からなるフレーム周期内で、データ変換テーブルLUTA、LUTB、LUTC、LUTDに従って階調変換を行うことは図3と同様であるが、当該フレーム周期毎にディザ変換パターンを切り替えて使用するため、全体として16フレーム期間で1周期となる。
【0061】
図5に示す例では、階調データは、座標(pix,line)=(2i,2j)、及び(2i+1,2j+1)の画素に対しては、フレーム番号が16k、16k+4、16k+8、16k+12(kは0以上の整数)のときLUTAを参照して、時分割駆動部18により変換される。一方、フレーム番号が16k+1、16k+5、16k+9、16k+13のときは、LUTBを参照して、時分割駆動部18により変換される。同様に、フレーム番号が16k+2、16k+6、16k+10、16k+14のときは、LUTCを参照して、時分割駆動部18により変換され、フレーム番号が16k+3、16k+7、16k+11、16k+15のときは、LUTDを参照して、時分割駆動部18により変換される。そして、上記の変換により、階調データ列D3が生成されている。
【0062】
一方、座標(2i+1,2j)及び(2i,2j+1)の画素に対しては、フレーム番号が16k、16k+4、16k+8、16k+12のときLUTCを参照して、フレーム番号が16k+1、16k+5、16k+9、16k+13のときは、LUTDを参照して、フレーム番号が16k+2、16k+6、16k+10、16k+14のときは、LUTAを参照して、フレーム番号が16k+3、16k+7、16k+11、16k+15のときは、LUTBを参照して、時分割駆動部18により変換され、階調データ列D3が生成されている。
【0063】
一方、ディザ処理部19は、フレーム番号が16k〜16k+3のフレーム期間では、ディザ変換パターンに従い、時分割駆動部18から出力された階調データ列D3のうち、座標(2i,2j)で指定される画素の階調データ列D3の各階調値に対して、階調値を+1加算する演算処理を行い、ディザ変換後の階調データ列D4を出力する。一方、座標(2i,2j)で指定される画素以外の画素に対しては、階調データ列D3の各階調値を、そのままディザ変換後の階調値として、ディザ変換後の階調データ列D4を出力する。
【0064】
同様に、ディザ処理部19は、フレーム番号が16k+4〜16k+7のフレーム期間では、ディザ変換パターンに従い、時分割駆動部18から出力された階調データ列D3のうち、座標(2i+1,2j)で指定される画素の階調データ列D3の各階調値に対して、階調値を+1加算する演算処理を行い、ディザ変換後の階調データ列D4を出力する。一方、座標(2i+1,2j)で指定される画素以外の画素に対しては、階調データ列D3の各階調値を、そのままディザ変換後の階調値として、ディザ変換後の階調データ列D4を出力する。
【0065】
同様に、ディザ処理部19は、フレーム番号が16k+8〜16k+11のフレーム期間では、ディザ変換パターンに従い、時分割駆動部18から出力された階調データ列D3のうち、座標(2i+1,2j+1)で指定される画素の階調データ列D3の各階調値に対して、階調値を+1加算する演算処理を行い、ディザ変換後の階調データ列D4を出力する。一方、座標(2i+1,2j+1)で指定される画素以外の画素に対しては、階調データ列D3の各階調値を、そのままディザ変換後の階調値として、ディザ変換後の階調データ列D4を出力する。
【0066】
同様に、ディザ処理部19は、フレーム番号が16k+12〜16k+15のフレーム期間では、ディザ変換パターンに従い、時分割駆動部18から出力された階調データ列D3のうち、座標(2i,2j+1)で指定される画素の階調データ列D3の各階調値に対して、階調値を+1加算する演算処理を行い、ディザ変換後の階調データ列D4を出力する。一方、座標(2i,2j+1)で指定される画素以外の画素に対しては、階調データ列D3の各階調値を、そのままディザ変換後の階調値として、ディザ変換後の階調データ列D4を出力する。
【0067】
そして、ディザ変換後の階調データ列D4に応じた制御信号DSを出力回路16が生成し、当該制御信号DSがソースドライバ12に入力されることで、画素の表示が行われる。上記処理により、階調データ列D3の各階調値より高階調を出力した画素と、階調データ列D3の各階調値をそのまま出力した画素との輝度が時間的に、及び、空間的に平均化されることにより、階調表現が拡張される。
【0068】
図7(a)〜図7(c)に、判定部20およびスイッチ21を備えない従来の液晶表示装置において、フレーム番号が16k+4〜16k+7の4フレーム期間における座標(2i+1,2j)で指定される画素の輝度波形(液晶パネル14からの透過光をフォトダイオードにより電圧に変換したもの)を示す。図7(a)は、映像信号D1として20階調の階調データを繰り返し表示させた場合の輝度波形を示しており、上記4フレーム期間において、ディザ処理部19が出力する階調値は、図7(a)の場合、夫々、
フレーム番号16k+4では、LUTC(20)、
フレーム番号16k+5では、LUTD(20)、
フレーム番号16k+6では、LUTA(20)、
フレーム番号16k+7では、LUTB(20)、
を参照することにより得られる。
【0069】
同様に、図7(b)に、映像信号D1として21階調の階調データを繰り返し表示させた場合の座標(2i+1,2j)で指定される画素の輝度波形を実線で示す。尚、比較のため、映像信号D1として20階調の階調データを表示させた場合の輝度波形(図7(a)と同じ波形)を点線で示している。フレーム番号が16k+4〜16k+7の4フレーム期間において、ディザ処理部19が出力する階調値は、図7(b)の場合、夫々、
フレーム番号16k+4では、LUTC(21)、
フレーム番号16k+5では、LUTD(21)、
フレーム番号16k+6では、LUTA(21)、
フレーム番号16k+7では、LUTB(21)、
を参照することにより得られる。
【0070】
同様に、図7(c)に、映像信号D1として20階調の階調データを繰り返し表示させた場合であって、上述のディザ処理により擬似的に20.25階調を表示させた場合の座標(2i+1,2j)で指定される画素の輝度波形を実線で示す。尚、比較のため、ディザ処理前の輝度波形(図7(a)と同じ波形)を点線で示している。フレーム番号が16k+4〜16k+7の4フレーム期間において、ディザ処理部19が出力する階調値は、図7(c)の場合、夫々、データ変換テーブルLUTA〜LUTDの階調値を1加算し、
フレーム番号16k+4では、LUTC(20)+1、
フレーム番号16k+5では、LUTD(20)+1、
フレーム番号16k+6では、LUTA(20)+1、
フレーム番号16k+7では、LUTB(20)+1で表される。
【0071】
図7から、図7(a)と図7(b)の実線との輝度差は小さいが、図7(a)と図7(c)の実線との差異は大きい。このように、ディザ処理を行うことで、輝度が想定よりも大きくなる場合があることが分かった。この結果として、周辺画素との輝度差が大きい画素が、ディザ処理により周期的に現れることで、ちらつきやざらつきが視認されるという問題が生じる。
【0072】
このように輝度が想定よりも大きくなる原因を、図8を用いて説明する。図8は、入力される階調データ列D4の階調値に対して、液晶パネル14の画素41の液晶容量43に印加される階調電圧(出力データ電圧)との関係、及び、画素41に表示される輝度との関係を示す図である。図8の曲線aは、液晶容量43への印加電圧が対向電極の電圧に対して+極性の場合の、入力階調値と出力データ電圧の関係を示す。図8の曲線bは、液晶容量43への印加電圧が対向電極の電圧に対して−極性の場合の、入力階調値と出力データ電圧の関係を示す。図8の曲線c(点線)は、入力階調値と画素に表示される輝度との関係を示す。
【0073】
入力される階調値が小さい(例えば、8階調以下)領域では、図8の曲線cに示すように、入力階調が1だけ増加しても、輝度はほとんど変化しないが、図8の曲線aとbに示すように、出力データ電圧は大きく変化している。
【0074】
このため、低階調から高階調への遷移において、オーバードライブ駆動を行う際に、低階調側の階調がこの領域に入っている場合、ディザ処理により画素41に表示する階調が+1階調されると、それに合わせて次フレーム期間でのオーバードライブ量を見直す必要がある。しかしながら、オーバードライブ量は時分割駆動部18で決められており、また、ディザ処理部19からのフィードバックがないため、オーバードライブ量の見直しができず、液晶応答が破綻し、所望の輝度を再現することができなくなる。
【0075】
ここで、低階調から高階調への遷移において、オーバードライブ駆動を行う際のオーバードライブ量は、本実施形態ではデータ変換テーブルLUTAの階調値により設定されている。LUTAの階調値とLUTBの階調値から定まる出力データ電圧差がオーバードライブ量である。当該LUTAの階調値は、当該LUTAを使用するフレーム期間より直前のフレーム期間のLUTDの階調値、及び、直後のフレーム期間のLUTBの階調値に基づいて設定されている。一方、ディザ処理部19により、LUTDの階調値を+1した階調値が、階調データ列D4として出力され、画素の表示が行われる場合、LUTAを参照する次フレーム期間において、当該LUTDの階調値を+1した階調値、及び、LUTBの階調値に基づいて、オーバードライブ量が調整されることが望ましい。特に、LUTDの階調値が低階調であり、入力階調の変化に対して出力データ電圧が大きく変化する領域に入っている場合、LUTDの階調値がディザ処理により+1されると、次フレーム期間でLUTAの階調値に基づいてオーバードライブ駆動を行おうとしたときに、オーバードライブ量に狂いが生じ、次次フレーム期間において液晶応答が破綻し、LUTBの階調値に基づいた輝度を再現することができなくなる。
【0076】
尚、図5の例では、フレーム番号16k+4における座標(2i,2j)で指定される画素の表示、フレーム番号16k+6における座標(2i+1,2j)で指定される画素の表示、フレーム番号16k+12における座標(2i+1,2j+1)で指定される画素の表示、及び、フレーム番号16k+14における座標(2i,2j+1)で指定される画素の表示において(図5で斜線で表示)、直前のフレーム期間でLUTDの階調値が+1されているため、オーバードライブ量に狂いが生じ、応答が破綻している。
【0077】
図7において、20階調の階調データを繰り返し表示させる場合、時分割駆動部18によりLUTC、LUTDを用いて低階調側に変換された階調データ列D3の各階調値は、この入力階調の変化に対して出力データ電圧が大きく変化する領域に該当する。座標(2i+1,2j)で指定される画素の表示に際し、フレーム番号16k+4ではLUTC、フレーム番号16k+5ではLUTDを参照して階調データ列D3が生成されているが、上述の通り、この領域では階調値を+1増加させても輝度はほとんど変化しないため、この期間における輝度は、ディザ変換を行う場合(図7(c))と行わない場合(図7(a))とでほぼ変らない。ところが、ディザ変換を行う場合、次フレーム期間であるフレーム番号16k+6において、オーバードライブ量の見直しが行われないことにより、液晶応答が破綻する。
【0078】
《3.本発明におけるディザ処理方法》
上述の従来技術のディザ処理により生じる問題を解決するため、本発明では、低階調から高階調への遷移において、オーバードライブ駆動を行う際に、階調データ列D3の階調値が、入力階調の変化に対して出力データ電圧が大きく変化する領域に該当する場合、ディザ処理部19による演算結果を使用せず、ディザ処理前の、階調値が+1されていない階調データ列D3の階調値に応じた出力データ電圧を画素に供給する。
【0079】
先ず、低階調から高階調への遷移において、オーバードライブ駆動による応答が破綻する最大の階調値を、階調閾値Dth(例えば、Dth=8)として設定する。階調閾値Dthは、TVのメインシステム(不図示)を介して随時設定値を変更し、液晶表示装置1内のレジスタ(不図示)に設定値を保持しておくこともできるし、ROM(Read Only Memory)に記憶されている値を、電源投入時にロードして設定することもできる。
【0080】
次に、時分割駆動部18から出力された階調データ列D3の各階調値の夫々と、階調閾値Dthとの大小関係を、判定部20で判定する。階調データ列D3の階調値がDthより高階調である場合、ディザ処理が行われても応答が破綻しないと判定し、ディザ処理後の階調データ列D4の階調値に応じた輝度で画素の表示が行われるように、スイッチ21の出力である映像信号D5の階調値を、D5=D4となるように切り替える。一方、階調データ列D3の階調値がDth以下の低階調である場合、ディザ処理により応答が破綻すると判定し、ディザ処理前の、階調データ列D3の階調値に応じた輝度で画素の表示が行われるように、スイッチ21の出力である映像信号D5の階調値を、D5=D3となるように切り替える。
【0081】
図7(d)に、本発明の液晶表示装置1において、映像信号D1として20階調の階調データを繰り返し表示させた場合であって、本発明のディザ処理方法を適用して擬似的に20.25階調を表示させた場合の座標(2i+1,2j)で指定される画素の輝度波形(液晶パネル14からの透過光をフォトダイオードにより電圧に変換したもの)を示す。フレーム番号が16k+4〜16k+7の4フレーム期間において、スイッチ21の出力である映像信号D5の階調値は、LUTC、LUTDの階調値が階調閾値Dth以下であるので、夫々、
フレーム番号16k+4では、LUTC(20)、
フレーム番号16k+5では、LUTD(20)、
フレーム番号16k+6では、LUTA(20)+1、
フレーム番号16k+7では、LUTB(20)+1で表される。
【0082】
図7(c)と比較すると、図7(d)では、フレーム番号16k+5において、LUTDの階調値がディザ処理により+1されないため、液晶応答が破綻することなく、階調表現が拡張されていることがわかる。これにより、表示のざらつきやちらつきを抑えた階調拡張が可能となる。
【0083】
尚、図5の例において、本発明のディザ処理方法を適用した場合のディザ変換の様子を、図6に示す。フレーム番号16k+2、16k+3における座標(2i,2j)で指定される画素の表示、フレーム番号16k+4、16k+5における座標(2i+1,2j)で指定される画素の表示、フレーム番号16k+10、16k+11における座標(2i+1,2j+1)で指定される画素の表示、及び、フレーム番号16k+12、16k+13における座標(2i,2j+1)で指定される画素(図6で斜線で表示)では、ディザ処理部により、LUTC又はLUTDを参照して時分割駆動部により変換された階調値が+1されるが、ディザ処理後の結果を使用せず、ディザ処理前の階調データ列D3の階調値に応じた輝度で、画素の表示が行われる。
【0084】
〈第2実施形態〉
本発明の一実施形態に係る液晶表示装置2の構成例を図9に示す。尚、上記第1実施形態で説明した内容と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は割愛する。図9の回路ブロック図に示すように、液晶表示装置2は、タイミングコントローラ11、ソースドライバ12、ゲートドライバ13、及び、液晶パネル14を備えてなる。本実施形態において、液晶表示装置2は、三次元映像を得るために、左眼用の階調データと右眼用の階調データを生成する三次元映像変換部22を、タイミングコントローラ11内部に備える。
【0085】
三次元映像変換部22は、入力回路15から出力された二次元の映像信号D1から、左眼用映像信号、及び、右眼用映像信号を生成し、右眼用映像信号及び左眼用映像信号に基づき左眼用の階調データD2Lと右眼用の階調データD2Rからなる階調データD2を生成して、時分割駆動部23に出力する。
【0086】
時分割駆動部23は、階調データD2を変換し、三次元映像表示用の階調データ列D3を生成する。
【0087】
三次元変換部22から出力され、時分割駆動部18に入力される階調データD2の波形と、時分割駆動部23から出力される階調データ列D3の波形を図10に示す。本実施形態では、図10(a)に示すように、左眼用の階調データD2L、及び、右眼用の階調データD2Rが、夫々2フレーム期間をかけて出力され、計4フレーム期間を1周期とする階調データD2が出力されている。
【0088】
ここで、三次元映像を表示する場合、視差があるため、階調データD2LとD2Rとの間で階調値に差が生じる。即ち、左眼用の階調データD2Lを表示する2フレーム期間、或いは、右眼用の階調データD2Rを表示する2フレーム期間のうち、何れか一方が他方より階調値の高い高階調期間、何れか他方が低階調期間となる。従って、当該高階調期間と当該低階調期間の間で、低階調側から高階調側に、或いは高階調側から低階調側に、階調値が変化することとなる。
【0089】
時分割駆動部23は、低階調から高階調、または高階調から低階調へ遷移する最初のフレーム期間において、液晶応答を改善するためのオーバードライブ駆動を行い、前フレーム期間における出力階調値と、入力された次フレーム期間における階調値に基づき、オーバードライブ期間におけるオーバードライブ量を算出したうえで、階調データ列D3を生成する。図10(b)に示す例では、左眼用の階調データD2Lを表示する2フレーム期間では、階調値が高階調から低階調に変化するので、階調データD2RとD2Lの階調値に基づき、その最初のフレーム期間(図10(b)のフレーム期間1又は5)において、変化後の階調値よりも例えば低階調となるように階調値が調整され、これにより液晶の応答速度を速め、短時間で目標階調値の輝度((図10(b)のフレーム2又は6の輝度)に到達させるようにしている。一方、右眼用の階調データD2Rを表示する2フレーム期間では、階調値が低階調から高階調に変化するので、階調データD2LとD2Rの階調値に基づき、その最初のフレーム期間(図10(b)のフレーム期間3又は7)において、変化後の階調値よりも例えば高階調となるように、階調値が調整され、これにより液晶の応答速度を速め、短時間で目標階調値の輝度((図10(b)のフレーム4又は8の輝度)に到達させるようにしている。
【0090】
ディザ処理部19、判定部20、スイッチ21の動作については図1に示す第1実施形態の液晶表示装置1と同様であり、詳細な説明を割愛する。本実施形態の液晶表示装置2では、三次元映像の表示において、オーバードライブ駆動を行いつつ、表示のちらつきやざらつきを抑えた階調表現の拡張が可能となる。
【0091】
以下に、別実施形態について説明する。
〈別実施形態〉
【0092】
〈1〉上記第1実施形態では、時分割駆動部18が、中間階調を表示する場合に、データ変換テーブルLUTA〜LUTDを参照してオーバードライブ駆動を行っているが、一般の階調表示においても、本発明を適用することで、オーバードライブ駆動処理された映像に対して、表示のざらつきやちらつきを抑えた階調表現の拡張を実現できる。尚、オーバードライブ量は、計算により、或いはデータ変換テーブルを参照することにより算出することが可能である。具体的には、階調値が変化する前のフレーム期間における出力階調値と、変化後のフレーム期間における入力階調値から、二次元のデータ変換テーブルを参照して、オーバードライブ期間におけるオーバードライブ量を算出することができる。
【0093】
〈2〉上記実施形態では、視野角改善効果と表示品位のバランスが最も良かった、画素の表示が、4フレーム期間を1フレーム周期として行われる場合を例示したが、本発明はこれに限られるものではない。特に、上記実施形態では、1つの階調の表示を2フレーム期間をかけて行い、うち最初の1フレーム期間をオーバードライブ駆動のための期間としたが、本発明はこれに限られるものではなく、1つの階調の表示を1フレーム又は3フレーム以上の期間をかけて行うようにしても構わない。また、オーバードライブ駆動のための期間についても、最初の1フレーム期間のみに限られず、複数のフレーム期間からなるものとしても構わない。このとき、異なるフレーム期間でオーバードライブ量が異なるものとしても構わない。1フレーム期間を1フレーム周期としてオーバードライブ駆動を行う場合であっても、本発明のディザ処理を適用することで、表示のちらつきやざらつきを抑えた階調表現の拡張が可能となる。
【0094】
同様に、中間階調表示を行う場合の高階調期間および低階調期間についても、夫々1フレーム期間以上あればよい。一般に、フレーム周期をnフレーム期間(nは2以上の自然数)からなるとして、第1〜第mフレーム期間(mは1〜n−1の自然数)までの期間、及び、第m+1〜第nフレーム期間までの期間のうち、何れか一方を高階調期間とし、何れか他方を低階調期間として、本発明を適用することができる。
【0095】
〈3〉上記実施形態では、判定部20が、フレーム期間毎に、時分割駆動部18から出力された階調データ列D3の各階調値と、階調閾値Dthとを比較判定するものとなっている。しかし、上記第1実施形態のように中間階調を時分割駆動で表示する場合、高階調期間における階調値が階調閾値より高階調になるようにデータ変換テーブルを設定しておけば、判定部20は、高階調期間では常にディザ処理後の階調データ列D4が選択されるようにスイッチ21を制御すればよく、判定部20による比較判定処理を省略できる。
【0096】
〈4〉また、階調値が低階調から高階調に変化する場合、直前のフレーム期間における階調値が階調閾値より高階調であれば(即ち、直前のフレーム期間において、ディザ処理後の階調値を選択していれば)、変化後のフレーム期間における階調値は階調閾値より高階調となるので、ディザ処理後の階調データ列D4を選択でき、判定部による判定処理を簡略化することができる。
【0097】
〈5〉上記実施形態において、階調閾値Dthは、任意のタイミングで変更することができ、更に、フレーム期間毎に異なる値を設定できる。また、階調閾値Dthとして、表示画素の色(例えばR(赤)、G(緑)、B(青))毎に異なる値を設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、液晶表示装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1、2: 本発明に係る液晶表示装置
11: タイミングコントローラ
12: ソースドライバ
13: ゲートドライバ
14: 液晶パネル
15: 入力回路
16: 出力回路
17: 映像調整回路
18、23: 時分割駆動部
19: ディザ処理部
20: 判定部
21: スイッチ
22: 三次元映像変換部
41: 画素
42: TFT
43: 液晶容量
44: 補助容量
CS: 補助容量線
D0〜D5、D2L、D2R: 映像信号
D3: 階調データ列
D4: ディザ変換後の階調データ列
DG、DS: 制御信号
Dth: 階調閾値
GL: ゲート線
LUTA、LUTB、LUTC、LUTD: データ変換テーブル
SL: ソース線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される画素毎の階調データに基づき、各画素の表示を、n個のフレーム期間(nは1以上の自然数)からなるフレーム周期で画素の輝度を変化させて行う液晶表示装置であって、
前記フレーム周期中に、液晶応答を改善するためのオーバードライブ駆動を行う一または複数の連続した前記フレーム期間からなるオーバードライブ期間を、一または複数有し、
前記フレーム周期内において、階調値が前記フレーム期間毎に時分割された階調データ列を生成する時分割駆動部と、
前記階調データの階調より多階調の表示を実現するため、ディザ変換パターンに従って、隣接する各画素の前記階調データ列の各階調値に対して演算処理を行ったディザ変換後の階調値を生成するディザ処理部と、
前記階調データ列の各階調値が所定の階調閾値よりも低階調か否かを前記フレーム期間毎に判定する判定部を備え、
前記時分割駆動部は、
前記オーバードライブ期間の直前の前記フレーム期間から次以降の前記フレーム期間にかけて高階調または低階調に階調値が変化する場合、当該オーバードライブ期間の直前の前記フレーム期間における階調値および変化後の目標階調値に基づいて、当該オーバードライブ期間の階調値が液晶応答が改善されるように調整された前記階調データ列を生成し、
前記時分割駆動部により生成された前記階調データ列の階調値が前記階調閾値以下の前記フレーム期間に対しては、当該階調データ列の当該各階調値に応じた前記出力データ電圧が前記画素に供給されるとともに、
前記時分割駆動部により生成された前記階調データ列の階調値が前記階調閾値より高階調の前記フレーム期間に対しては、当該階調データ列の当該各階調値が前記ディザ処理部によりディザ変換された階調値に応じた前記出力データ電圧が前記画素に供給されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記時分割駆動部は、
前記フレーム周期内で複数のデータ変換テーブルを切り替えながら、前記階調データを前記データ変換テーブルに従って変換することで、前記階調データ列を生成することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
三次元映像を得るために、左眼用の前記階調データと右眼用の前記階調データを生成し、前記時分割駆動部へ出力する三次元映像変換部を備えることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
n≧2であり、
所定画素の中間階調の表示において、前記時分割駆動部は、
前記フレーム周期の第1〜第mフレーム期間(mは1〜n−1の自然数)と前記フレーム周期の第m+1〜第nフレーム期間の何れか一方を前記中間階調よりも階調値の高い高階調期間とし、何れか他方を前記中間階調よりも階調値の低い低階調期間として、前記階調データ列を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記フレーム周期の前記第1〜第mフレーム期間を前記高階調期間、前記フレーム周期の前記第m+1〜第nフレーム期間を前記低階調期間として、前記階調データ列が前記時分割駆動部により生成される第1の画素と、
前記フレーム周期の前記第1〜第mフレーム期間を前記低階調期間、前記フレーム周期の前記第m+1〜第nフレーム期間を前記高階調期間として、前記階調データ列が前記時分割駆動部により生成される第2の画素と、を有し、
前記第mフレーム期間における前記第1の画素の階調値と、前記第nフレーム期間における前記第2の画素の階調値、及び、前記第nフレーム期間における前記第1の画素の階調値と、前記第mフレーム期間における前記第2の画素の階調値が、夫々同じであることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記高階調期間では、前記判定部による判定を常に行わず、前記画素に前記ディザ処理部によりディザ変換された階調値に応じた前記出力データ電圧が供給されることを特徴とする請求項4又は5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記階調閾値を、任意のタイミングで変更することが可能な請求項1〜6の何れか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記階調閾値として、前記フレーム期間毎に異なる値を設定できることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記階調閾値が、前記画素の色毎に異なる値を設定できることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の液晶表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−88745(P2013−88745A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231434(P2011−231434)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】