説明

液晶装置の製造方法、および電子機器

【課題】位相差層の層厚方向における遅相軸のばらつきを抑えた液晶装置の製造方法、液晶装置ならびに電子機器を提供すること。
【解決手段】液晶装置100の製造方法は、対向基板10に設けた配向電極42,44と、配向用基板50に設けた配向電極52,54とが対向するように、対向基板10と配向用基板50との間に液晶材料層41を挟持する工程と、液晶材料層41の液晶分子41aを配向電極42,44の配向規制力と配向電極52,54の配向規制力とによって配向させた状態で、液晶材料層41を硬化させて位相差層40を形成する工程と、配向用基板50を取り外す工程と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置の製造方法、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの画素内に透過表示部と反射表示部とを有する半透過反射型液晶装置の形態の一つとして、液晶層を挟持する上基板と下基板とのうち下基板の反射表示部の領域の液晶層側に反射層を設け、上基板と下基板との外側(液晶層の反対側)の全面にそれぞれ位相差板を配置する構成が提案されている。この構成では、本来位相差板がなくてもよい透過表示部にも位相差板が配置されるため、反射表示部に比べて透過表示部の表示品位が低下するという課題があった。
【0003】
これに対し、他の形態として、下基板の反射表示部の領域に設けられた反射層上に位相差層を配置する構成が提案されている(例えば特許文献1)。また、位相差層を液晶セル内の反射層に対向する側に配置する構成が提案されている(例えば特許文献2)。これらの構成によれば、位相差層を液晶セル外の両側かつ全面に配置する構成に比べ、位相差層を反射表示領域に選択的に配置することで透過表示領域の表示品位を低下させることがなく、また半透過反射型液晶装置全体を薄くすることができる。
【0004】
上述のような位相差層は、一般的に、ラビング等の配向処理を施した配向膜上に配置した液晶材料を配向させた状態で硬化させることにより形成される。このとき、配向膜上に配置された液晶材料は配向膜に施されたラビング処理の方向に沿って配向し、この配向方向が位相差層の遅相軸の方向となる。すなわち、このような構成においては、位相差層の遅相軸の方向はラビング処理の方向によって規定される。
【0005】
【特許文献1】特開2004−38205号公報
【特許文献2】特開2005−338256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液晶材料中の液晶分子に対する配向規制力は、配向膜との界面から遠ざかるにつれて弱くなる。このため、液晶材料の配向膜とは反対側の界面の近傍では液晶分子の配列に乱れが生じる。このような状態で液晶材料が硬化され位相差層が形成されると、位相差層の層厚方向で遅相軸がばらついてしまい、その結果、所望の光学補償特性とずれが生じ、液晶装置の視角特性が低下するという課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[適用例1]本適用例に係る液晶装置の製造方法は、第1の基板に設けた第1の配向規制手段と第2の基板に設けた第2の配向規制手段とが対向するように、前記第1の基板と前記第2の基板との間に位相差層材料を挟持する工程(a)と、前記位相差層材料の分子を前記第1の配向規制手段の配向規制力と前記第2の配向規制手段の配向規制力とによって配向させた状態で、前記位相差層材料を硬化させて位相差層を形成する工程(b)と、前記工程(b)の後に、前記第1の基板と前記第2の基板とのうち一方の基板を取り外す工程(c)と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、位相差層材料は、硬化される前の状態において、第1の配向規制手段が形成された第1の基板と第2の配向規制手段が形成された第2の基板との間に挟持される。このため、位相差層材料の分子は、第1の配向規制手段の配向規制力と第2の配向規制手段の配向規制力とによって層厚方向の両側から配向を規制されるので、層厚方向の両側でほぼ均一に一軸配向する。これにより、位相差層の層厚方向における遅相軸のばらつきが抑えられる。したがって、従来の製法で得られるものに比べて高い光学補償特性を有する位相差層を形成できる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係る液晶装置の製造方法であって、前記第1の配向規制手段は第1の複数の透明電極からなり、前記第2の配向規制手段は第2の複数の透明電極からなり、前記第1の配向規制手段の配向規制力は前記第1の複数の透明電極間に印加する電圧によって発生する電界であり、前記第2の配向規制手段の配向規制力は前記第2の複数の透明電極間に印加する電圧によって発生する電界であってもよい。
【0011】
この構成によれば、第1の基板上の第1の複数の透明電極間に電圧が印加されると、第1の基板上には第1の基板面にほぼ平行な方向に電界が発生し、第2の基板上の第2の複数の透明電極間に電圧が印加されると、第2の基板上には第2の基板面にほぼ平行な方向に電界が発生する。第2の基板は第1の基板にほぼ平行に配置されるので、第2の基板上に発生する電界は第1の基板面にほぼ平行である。これにより、位相差層材料の層厚方向の両側において、第1の基板面にほぼ平行な方向に沿って分子の配向を規制できる。
【0012】
このとき、位相差層材料の分子の配向方向、すなわち位相差層の遅相軸の方向の精度は、複数の透明電極間に発生する電界の方向の精度、つまり複数の透明電極の位置精度に依存する。複数の透明電極をフォトリソグラフィ法により形成すれば、複数の透明電極の位置精度は、ラビング処理を行う場合の位置精度に比べて格段に高い。これにより、位相差層の遅相軸の方向の精度が格段に高められ、高い光学補償特性が得られる。したがって、優れた表示品質を有する液晶装置を提供できる。
【0013】
また、位相差層材料の分子を電界により配向させるので、位相差層材料を配向させるための配向膜およびそのラビング処理を必要としない。これにより、配向膜のラビング処理に伴うキズや異物発生のリスクが回避でき、高い歩留りで液晶装置を製造できる。
【0014】
[適用例3]上記適用例に係る液晶装置の製造方法であって、前記第1の複数の透明電極のそれぞれが複数の電極指を備えた櫛歯形状を有し、それぞれの前記複数の電極指同士が互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されており、前記第2の複数の透明電極のそれぞれが複数の電極指を備えた櫛歯形状を有し、それぞれの前記複数の電極指同士が互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、交互に配置されたそれぞれの複数の電極指同士の間に電界が発生するので、第1の基板上と第2の基板上との双方において、より均一に電界を発生させることができる。これにより、位相差層材料の分子をより均一に配向させることができる。
【0016】
[適用例4]上記適用例に係る液晶装置の製造方法であって、前記第1の基板上の前記複数の電極指と、前記第2の基板上の前記複数の電極指と、が互いにほぼ平行であってもよい。
【0017】
この構成によれば、第1の基板上の複数の電極指と第2の基板上の複数の電極指とが互いにほぼ平行であるので、位相差層材料の層厚方向の両側でほぼ同じ方向に電界が発生する。これにより、位相差層材料の分子を層厚方向に亘ってほぼ同じ方向に均一に配向させることができる。
【0018】
[適用例5]上記適用例に係る液晶装置の製造方法であって、前記第1の配向規制手段は配向膜からなり、前記第2の配向規制手段は複数の透明電極からなり、前記第1の配向規制手段の配向規制力は前記配向膜による配向規制力であり、前記第2の配向規制手段の配向規制力は前記複数の透明電極間に印加する電圧によって発生する電界であってもよい。
【0019】
この構成によれば、第1の基板上には配向膜により第1の基板面にほぼ平行な方向に配向規制力が生じる。一方、第2の基板上の複数の透明電極間に電圧が印加され電界が発生すると、第2の基板上には第2の基板面にほぼ平行な方向に配向規制力が生じる。第2の基板は第1の基板にほぼ平行に配置されるので、位相差層材料の層厚方向の両側において、第1の基板面にほぼ平行な方向に沿って分子の配向を規制できる。
【0020】
[適用例6]上記適用例に係る液晶装置の製造方法であって、前記複数の透明電極のそれぞれが複数の電極指を備えた櫛歯形状を有し、それぞれの前記複数の電極指同士が互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、交互に配置されたそれぞれの複数の電極指同士の間に電界が発生するので、第2の基板上に、より均一に電界を発生させることができる。これにより、位相差層材料の分子をより均一に配向させることができる。
【0022】
[適用例7]上記適用例に係る液晶装置の製造方法であって、前記配向膜には配向処理が施され、前記第1の配向規制手段の配向規制方向と、前記第2の配向規制手段の配向規制方向と、が互いにほぼ平行であってもよい。
【0023】
この構成によれば、第1の基板の配向膜の配向規制方向と、第2の基板の複数の電極間で発生する電界による配向規制方向と、がほぼ平行であるので、位相差層材料の分子を層厚方向に亘ってほぼ同じ方向に均一に配向させることができる。
【0024】
[適用例8]上記適用例に係る液晶装置の製造方法であって、前記第2の基板は柔軟性を有する材料からなり、前記工程(c)では、前記第2の基板を前記第1の基板から取り外してもよい。
【0025】
この構成によれば、柔軟性を有する材料からなる第2の基板を第1の基板から取り外すので、第2の基板を取り外す際に第1の基板上に形成された位相差層にかかる応力を緩和できる。これにより、第2の基板を取り外す際に位相差層が損傷を受けるリスクを低減でき、高い歩留りで液晶装置を製造できる。
【0026】
[適用例9]上記適用例に係る液晶装置の製造方法であって、前記液晶装置は、複数の画素と、前記複数の画素のそれぞれに設けられた、反射表示領域と透過表示領域と、をさらに備え、前記工程(b)では、前記反射表示領域の前記位相差層材料の分子を配向させた状態で硬化させてもよい。
【0027】
この構成によれば、高い光学補償特性を有する位相差層が反射表示領域に選択的に配置されるので、優れた表示品質を有する半透過反射型の液晶装置を提供できる。
【0028】
[適用例10]本適用例に係る電子機器は、上記に記載の液晶装置の製造方法を用いて製造した液晶装置を備えたことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、優れた表示品質を有する液晶装置を備えた電子機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の層厚や寸法の比率、角度等は適宜異ならせてある。また、参照する各図面において、素子、配線、接続部等を省略してある。
【0031】
(第1の実施形態)
<液晶装置>
まず、第1の実施形態に係る液晶装置の構成について図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る液晶装置の表示領域の一部を示す平面図である。図2は、第1の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図である。詳しくは、図1のA−A’線、または図3のB−B’線に沿った部分断面図である。図3は位相差層の配置を示す平面図である。なお、図1および図3では、以下の位置関係の説明に必要な構成要素のみを図示している。本実施形態に係る液晶装置100は、FFS(Fringe-Field Switching)方式の半透過反射型の液晶装置である。
【0032】
図1に示すように、液晶装置100の表示領域には、赤、緑、青の表示に寄与する画素27R,27G,27B(以下では、対応する色について区別しない場合には単に画素27とも呼ぶ)が複数配置されている。画素27は、液晶装置100の表示の最小単位であり、隣り合う画素27同士の間に間隔が空くように、マトリクス状に配置されている。隣り合う画素27同士の間には、図示しないが、遮光層(ブラックマスク)が配置されている。遮光層は、画素27同士の間から漏れる光を遮って表示のコントラストを向上させる役割を果たす。なお、X軸は画素27の行方向を示し、Y軸は画素27の列方向を示している。
【0033】
それぞれの画素27は、反射表示に寄与する反射表示領域Rと、透過表示に寄与する透過表示領域Tと、を有している。X軸に沿った方向には反射表示領域R同士または透過表示領域T同士が対向するように配列され、Y軸に沿った方向には反射表示領域Rと透過表示領域Tとが互いに対向するように配列されている。画素27R,27G,27Bから画素群28が構成されている。液晶装置100では、画素群28において画素27R,27G,27Bのそれぞれの表示の輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。
【0034】
図2に示すように、液晶装置100は、素子基板20と、第1の基板としての対向基板10と、液晶層30と、第1の複数の透明電極としての配向電極42および配向電極44と、位相差層40と、を備えている。対向基板10は基板12を基体として構成されており、素子基板20は基板21を基体として構成されている。液晶層30は、対向基板10と素子基板20との間に位置している。
【0035】
対向基板10は、液晶装置100の観察側に位置している。対向基板10は、基板12と、カラーフィルタ層14と、オーバーコート層16と、を備えている。基板12は、透明な材料からなり、例えばガラスからなる。カラーフィルタ層14とオーバーコート層16とは、基板12の液晶層30側に順に積層されている。カラーフィルタ層14は、例えば、赤、緑、青の3色の色要素を含んでいる。対向基板10の液晶層30とは反対側、すなわち観察側には、偏光板18が配置されている。
【0036】
配向電極42と配向電極44とは、対向基板10上の液晶層30側に位置しており、オーバーコート層16上に配置されている。図3に示すように、配向電極42と配向電極44とのそれぞれは、複数の電極指を備えた櫛歯形状を有している。また、配向電極42と配向電極44とは、対向基板10の同一面上の対向する2辺の近傍にそれぞれが位置し、互いに対向して配置される。配向電極42の備える複数の電極指42aのそれぞれと、配向電極44の備える複数の電極指44aのそれぞれと、は少なくとも反射表示領域Rに、互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されている。
【0037】
交互に配置された電極指42aと電極指44aとのピッチは、例えば16μm〜20μmである。電極指42aと電極指44aとのそれぞれの幅は、例えば8μmである。電極指42aと電極指44aとは、図3のY軸に沿った方向に対して所定の角度ずれて配置されている。本実施形態では、電極指42aと電極指44aとは、Y軸に沿った方向に対して時計回りに112.5°ずれている。なお、図3において、X軸は画素27(図1参照)の反射表示領域R同士または透過表示領域T同士が対向するように配列された方向であり、Y軸は反射表示領域Rと透過表示領域Tとが互いに対向するように配列された方向である。配向電極42と配向電極44とは、透明な導電材料からなり、例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる。
【0038】
位相差層40は、対向基板10上の反射表示領域Rに位置し、配向電極42の電極指42aと配向電極44の電極指44aとを覆うように配置されている。また、位相差層40は、X軸に沿った方向に複数の画素27の反射表示領域Rに亘って一列に配置されている。位相差層40は、複屈折性を有する光硬化性材料または熱硬化性材料からなる。このような材料の一例として、光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶を用いることができる。光硬化性材料または熱硬化性材料は、例えば、正の誘電率異方性を有している。光硬化性材料または熱硬化性材料は、負の誘電率異方性を有していてもよい。
【0039】
位相差層40は、光硬化性材料または熱硬化性材料が配向された状態で硬化されて形成されている。後述するが、位相差層40の遅相軸40a(図4参照)は、Y軸に沿った方向に対して時計回りに22.5°ずれている。なお、Y軸に沿った方向が、偏光板18の透過軸18a(図4参照)の方向である。また、位相差層40は、入射される可視光の波長に対し所定の位相差、例えば1/2波長分の位相差を付与する。
【0040】
図2に戻って、素子基板20は、液晶層30を挟んで、対向基板10に対向する側に位置している。素子基板20は、基板21と、回路素子層22と、反射層23と、共通電極24と、絶縁層25と、画素電極26と、を備えている。基板21は、透明な材料からなり、例えばガラスからなる。回路素子層22は、基板21の対向基板10に対向する側に形成されている。反射表示領域Rに位置する回路素子層22の上面には、図示しないが、外光を散乱させるための凹凸形状が形成されており、この凹凸形状を反映する形で反射層23が形成される。
【0041】
反射層23は、回路素子層22上の反射表示領域Rに形成されている。反射層23は、反射率の高い金属膜からなる。反射層23の材料は、例えばアルミニウムである。反射層23の材料は、APC(銀−パラジウム−銅の合金)であってもよい。共通電極24は、反射表示領域Rと透過表示領域Tとに亘って形成されており、反射表示領域Rにおいては反射層23上に形成され透過表示領域Tにおいては回路素子層22上に形成されている。共通電極24は、例えばITOからなる。
【0042】
共通電極24上には、その上面を覆うように絶縁層25が形成されている。さらに、絶縁層25上には、複数のスリット状の開口部26aを有する画素電極26が形成されている。画素電極26は、例えばITOからなる。画素電極26のそれぞれは、カラーフィルタ層14の赤、緑、青の3色のいずれかに対応している。これらの3色のそれぞれと対応する3つの画素電極26との組み合わせにより、3色の画素27R,27G,27Bがそれぞれ構成される(図1参照)。
【0043】
素子基板20の対向基板10と反対の側には、偏光板29が配置されている。なお、回路素子層22には、図示しないが、液晶層30を駆動するための素子、配線パターン、接続部等が設けられている。
【0044】
液晶層30は、対向基板10と素子基板20との間に位置している。対向基板10の液晶層30に接する側には、オーバーコート層16と位相差層40とを覆うように配向膜32が形成されている。また、素子基板20の液晶層30に接する側には、絶縁層25と画素電極26とを覆うように、配向膜34が形成されている。液晶層30は、配向膜32と配向膜34とに施された配向処理によって配向方向が規制されており、ホモジニアス配向している。
【0045】
液晶層30は、反射表示領域Rと透過表示領域Tとで層厚が異なる。具体的には、液晶層30の反射表示領域Rにおける層厚は、液晶層30の透過表示領域Tにおける層厚のほぼ1/2となっている。このことにより、液晶層30は入射される可視光の波長に対して、反射表示領域Rにおいて1/4波長分の位相差を付与し、透過表示領域Tにおいて1/2波長分の位相差を付与する。
【0046】
反射表示を行う液晶装置100では、光学設計上、暗表示を行う際に反射層23に到達する外光がすべての可視波長域でほぼ円偏光である必要がある。反射層23に到達した外光が楕円偏光であると暗表示に色づきが生じ、高コントラストな反射表示を得ることが困難になるからである。
【0047】
本実施形態では、反射表示領域Rに対応する領域に選択的に位相差層40を配置し、反射表示領域Rにおける液晶層30の層厚が透過表示領域Tにおける液晶層30の層厚に比べて薄くなるように構成している。これにより、偏光板18と位相差層40と反射表示領域R内の液晶層30とで広帯域円偏光を作り出せるようにして反射層23に到達する外光をほぼすべての可視波長域で円偏光に近づけている。
【0048】
<光学的軸配置および表示原理>
次に、液晶装置100の光学的軸配置を説明する。図4は、液晶装置100の光学的軸配置を説明する図である。図4において、X軸は図1のX軸の方向に対応し、Y軸は図1のY軸の方向に対応している。偏光板18の透過軸18aを図4(a)に示す。位相差層40の遅相軸40aは、図4(b)に示すように、偏光板18の透過軸18aに対して時計回り方向に22.5°ずれている。また、液晶層30の配向方向30aは、図4(c)に示すように、偏光板18の透過軸18aに対して時計回り方向に90°ずれている。なお、図示しないが、偏光板29の透過軸は、偏光板18の透過軸18aに対して直交している。すなわち、偏光板29の透過軸は、液晶層30の配向方向30aに平行である。
【0049】
次に、液晶装置100の表示原理を説明する。本実施形態では、液晶装置100は、液晶層30に電圧が印加されない状態が暗表示となる「ノーマリーブラック」型である。したがって、暗表示を行う場合は、液晶層30に電圧が印加されない状態(非選択電圧印加状態)とする。
【0050】
まず、反射表示領域Rにおいては、偏光板18の上方から入射した光は透過軸18aに平行な直線偏光となり、その状態で位相差層40に入射する。位相差層40に入射した光は、位相差層40により振動方向の異なる直線偏光に変換され、液晶層30に入射する。この液晶層30に入射した直線偏光は、液晶層30を通過することにより円偏光となる。この円偏光は、反射層23(図2参照)で反射されることにより回転方向が反転した円偏光になり、次いで液晶層30と位相差層40とを再び通過することにより透過軸18aに垂直な直線偏光となる。そして、透過軸18aに垂直な直線偏光は偏光板18に吸収されて偏光板18の上方(観察側)へ戻らないため、暗表示となる。
【0051】
一方、透過表示領域Tにおいては、偏光板29(図2参照)の下方から入射した光は、偏光板29の透過軸に平行な直線偏光となり、液晶層30に入射する。この直線偏光の振動方向は液晶層30の配向方向30aに平行であり、液晶層30によって位相差が付与されない。したがって、液晶層30を通過した直線偏光は、偏光板29の透過軸に平行な状態のまま、すなわち偏光板18の透過軸18aに垂直な状態で、偏光板18に入射する。そして、透過軸18aに垂直な直線偏光は偏光板18に吸収されて偏光板18の上方(観察側)へ届かないため、暗表示となる。
【0052】
次に、明表示を行う場合は、液晶層30に電圧が印加された状態(選択電圧印加状態)とする。電圧が印加された状態において、液晶層30における液晶分子は電界により偏光板18の透過軸18aに対し例えば45°に配向する。
【0053】
まず、反射表示領域Rにおいては、位相差層40を出た偏光は、液晶層30を通過し、偏光の状態を変えずに反射層23で反射して、液晶層30と位相差層40とを再び通過することにより透過軸18aに平行な直線偏光となる。そして、透過軸18aに平行な直線偏光は偏光板18を透過し、偏光板18の上方(観察側)へ戻るため、明表示となる。
【0054】
一方、透過表示領域Tにおいては、偏光板29の下方から入射した光は、偏光板29の透過軸に平行な直線偏光となり、液晶層30に入射する。この直線偏光の振動方向は液晶層30の配向方向30aと45°ずれており、液晶層30によって1/2波長分の位相差が付与される。したがって、液晶層30を通過した直線偏光は、偏光板29の透過軸に垂直な状態で、すなわち偏光板18の透過軸18aに平行な状態で、偏光板18に入射する。そして、透過軸18aに平行な直線偏光は偏光板18を透過し偏光板18の上方(観察側)へ届くため、明表示となる。
【0055】
<製造方法>
次に、第1の実施形態に係る液晶装置の製造方法を図を参照して説明する。図5は、対向基板10のマザー基板を示す図である。図6は、配向用基板を示す図である。図7は、液晶装置の製造方法を示すフローチャートである。図8および図9は、位相差層の形成方法を説明する図である。
【0056】
各工程を説明する前に、本実施形態では、素子基板20と対向基板10とは複数枚取りできる大型の基板(マザー基板)で加工が行われ、最終的にそのマザー基板同士を貼り合わせた後に切断して個片化することにより、複数の液晶装置100が得られる。図5は、複数の対向基板10を含むマザー基板10bを示している。図5において、X軸は図3のX軸の方向に対応し、Y軸は図3のY軸の方向に対応している。
【0057】
また、本実施形態では、位相差層形成工程において、位相差層40の材料の分子の配向を規制するために、第2の基板としての配向用基板50を対向基板10上に取り外し可能に配置する。図6に示すように、配向用基板50は、第2の複数の透明電極としての配向電極52と配向電極54とを備えている。図6は、配向用基板50の配向電極52と配向電極54とが形成されていない面側から見た平面図である。Y軸は配向用基板50の1辺に沿った方向であり、配向用基板50上における配向電極52と配向電極54との位置決めの基準となる方向である。X軸は、Y軸に直行する方向である。配向用基板50が対向基板10上に配置される際は、図6のY軸の方向が図3のY軸の方向に沿い、図6のX軸が図3のX軸の方向に沿うように位置合わせされる。
【0058】
配向用基板50は、透明な材料からなり、例えばガラスからなる。配向電極52と配向電極54とのそれぞれは、複数の電極指を備えた櫛歯形状を有している。また、配向電極52と配向電極54とは、配向用基板50の同一面上の対向する2辺の近傍にそれぞれが位置し、互いに対向して配置される。配向電極52の備える複数の電極指52aのそれぞれと、配向電極54の備える複数の電極指54aのそれぞれと、は互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されている。
【0059】
交互に配置された電極指52aと電極指54aとのピッチは、例えば16μm〜20μmである。電極指52aと電極指54aとのそれぞれの幅は、例えば8μmである。電極指52aと電極指54aとのピッチおよび幅は、電極指42aと電極指44aとのピッチおよび幅と同じであることが好ましい。電極指52aと電極指54aとは、図6のY軸に沿った方向に対して所定の角度ずれて配置されている。本実施形態では、電極指52aと電極指54aとは、Y軸に沿った方向に対して時計回りに112.5°ずれている。配向電極52と配向電極54とは、透明な導電材料からなり、例えばITOからなる。なお、配向用基板50も素子基板20および対向基板10と同様に、複数枚取りできる大型のマザー基板で加工が行われる。
【0060】
次に、液晶装置100を製造する工程を説明する。図7において、工程P11から工程P14は素子基板20を製造する工程であり、工程P21から工程P23は対向基板10を製造する工程である。工程P31から工程P33は、素子基板20と対向基板10とを組み合わせて液晶装置100を製造する工程である。工程P11から工程P14と、工程P21から工程P23と、はそれぞれ独立に行われる。
【0061】
まず、素子基板20を製造する工程を説明する。図7に示す工程P11では、基板21上に、素子、各種配線、接続部、層間絶縁層等を含む回路素子層22を形成する。このとき、回路素子層22の上面の反射表示領域Rに位置する部分に、外光を散乱させるための凹凸形状を形成する。次に、工程P12では、回路素子層22上のうち反射表示領域Rに反射層23を形成する。次に、工程P13では、回路素子層22と反射層23との上に共通電極24を形成する。次に、工程P14では、共通電極24上に絶縁層25を形成し、絶縁層25上に画素電極26を形成する。
【0062】
次に、対向基板10を製造する工程を説明する。工程P21では、基板12上にカラーフィルタ層14を形成する。次に、工程P22では、カラーフィルタ層14上にオーバーコート層16を形成する。カラーフィルタ層14およびオーバーコート層16を形成する方法は、例えばスピンコート法やフォトリソグラフィ法等を適用する。次に、工程P23では、オーバーコート層16上に位相差層40を形成する。この工程P23は、図8に示す加工工程を含んでいる。以下、図8を参照して、工程P23の位相差層形成工程についてより詳しく説明する。なお、本実施形態では、位相差層40の材料として、光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶を用いる場合を例にとり説明する。
【0063】
<1.配向電極形成工程(対向基板)>
まず、図8(a)に示すように、対向基板10上に配向電極42および電極指42aと配向電極44および電極指44aとを、例えばフォトリソグラフィ法により形成する。図8(a)は、図3のB−B’線に沿った部分断面の反射表示領域Rの部分を示している。
【0064】
このとき、図3に示すように、配向電極42と配向電極44とは、対向基板10の同一面上の対向する2辺の近傍にそれぞれが位置し、互いに対向して配置される。また、複数の電極指42aのそれぞれと複数の電極指44aのそれぞれとは、少なくとも反射表示領域Rに、互いにほぼ平行であるとともに交互に配置される。また、電極指42aと電極指44aとは、Y軸に沿った方向に対して時計回り方向に112.5°ずれて配置される。
【0065】
この工程では、配向電極42および電極指42aと配向電極44および電極指44aとを形成すると同時に、図5に示すように、マザー基板10b上にベース電極42bとベース電極44bとを形成する。ベース電極42bは、複数の対向基板10のそれぞれの配向電極42に接続されている。ベース電極44bは、複数の対向基板10のそれぞれの配向電極44に接続されている。
【0066】
<2.材料配置工程>
次に、図8(b)に示すように、対向基板10上に配向電極42と配向電極44とを覆うように、位相差層40の材料となる光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶を配置する。この光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶は、正の誘電率異方性を有しているものとする。
【0067】
まず、対向基板10上の透過表示領域Tと反射表示領域Rとに亘って、光反応性のアクリル基を分子末端に有する液晶と反応開始剤を含む有機溶媒とからなる液晶材料層41を配置する。液晶材料層41を配置する方法は、例えばスピンコート法を適用する。続いて、配置された液晶材料層41をプレベークする。プレベークは、例えば、90℃に加熱された雰囲気に1分間放置して行う。
【0068】
<3.配向電極形成工程(配向用基板)>
次に、配向用基板50上に配向電極52および電極指52aと配向電極54および電極指54aとを、例えばフォトリソグラフィ法により形成する。図8(c)に、配向電極52および電極指52aと配向電極54および電極指54aとが形成された配向用基板50を示す。図8(c)の配向用基板50は、図6のC−C’線に沿った部分断面を示している。
【0069】
このとき、図6に示すように、配向電極52と配向電極54とは、配向用基板50の同一面上の対向する2辺の近傍にそれぞれが位置し、互いに対向して配置される。また、複数の電極指52aのそれぞれと、複数の電極指54aのそれぞれと、は互いにほぼ平行であるとともに交互に配置される。また、電極指52aと電極指54aとは、図6のY軸に沿った方向に対して時計回り方向に112.5°ずれて配置される。
【0070】
この工程では、配向電極52および電極指52aと配向電極54および電極指54aとを形成すると同時に、図示しないが、配向用基板50のマザー基板上に、複数の配向用基板50のそれぞれの配向電極52に接続されるベース電極と、複数の配向用基板50のそれぞれの配向電極54に接続されるベース電極と、を形成する。なお、配向用基板50の配向電極形成工程は、対向基板10の配向電極形成工程の前に行ってもよい。
【0071】
<4.配向用基板配置工程>
次に、図8(c)に示すように、配向電極42および配向電極44と配向電極52および配向電極54とが互いに対向し、対向基板10と配向用基板50との間に液晶材料層41を挟持するように、対向基板10上に配向用基板50を取り外し可能に配置する。このとき、図6のY軸の方向が図3のY軸の方向に沿い、図6のX軸が図3のX軸の方向に沿うように配置する。配向用基板50は、好ましくは、電極指52aが電極指42aに重なり、電極指54aが電極指44aに重なるように配置する。
【0072】
<5.材料配向工程>
次に、液晶材料層41を配向させる。まず、液晶材料層41を等方相となる温度、例えば120℃〜180℃に加熱する。液晶材料層41が等方相の状態で、図5に示すマザー基板10b上のベース電極42bとベース電極44bとの間に、例えば5V〜10Vの直流電圧を印加する。また、図示しないが、配向用基板50のマザー基板上の配向電極52に接続されたベース電極と配向電極54に接続されたベース電極との間にも同様に5V〜10Vの直流電圧を印加する。これにより、図8(c)に示す配向電極42と配向電極44との間と、配向電極52と配向電極54との間と、に直流電圧が印加される。なお、印加される電圧は交流電圧であってもよい。
【0073】
図9は、このときの配向用基板50側、すなわち対向基板10の観察側から見た反射表示領域Rにおける液晶材料層41の一部を拡大して模式的に示している。X軸は画素27(図1参照)の反射表示領域R同士または透過表示領域T同士が対向するように配列された方向であり、Y軸は反射表示領域Rと透過表示領域Tとが互いに対向するように配列された方向である。
【0074】
図9に示すように、配向電極42および電極指42aと配向電極44および電極指44aとは対向基板10の同一面上に位置している。そのため、配向電極42と配向電極44との間に電圧が印加されると、対向基板10の配向電極42および電極指42aと配向電極44および電極指44aとが形成された面に対してほぼ平行な方向に電界が発生する。
【0075】
電極指42aと電極指44aとが互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されているので、配向電極42と配向電極44との間に電圧が印加されると、電極指42aと電極指44aとの間に、それぞれが互いに対向している範囲に亘ってほぼ均一に電界が発生する。この電極指42aと電極指44aとの間に発生する電界の方向は、電極指42aと電極指44aとが伸びている方向に対してほぼ直交している。
【0076】
また、配向電極52および電極指52aと配向電極54および電極指54aとは配向用基板50の同一面上に位置している。そのため、配向電極52と配向電極54との間に電圧が印加されると、配向用基板50の配向電極52および電極指52aと配向電極54および電極指54aとが形成された面に対してほぼ平行な方向に電界が発生する。
【0077】
電極指52aと電極指54aとが互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されているので、配向電極52と配向電極54との間に電圧が印加されると、電極指52aと電極指54aとの間に、それぞれが互いに対向している範囲に亘ってほぼ均一に電界が発生する。この電極指52aと電極指54aとの間に発生する電界の方向は、電極指52aと電極指54aとが伸びている方向に対してほぼ直交しており、電極指42aと電極指44aとの間に発生する電界の方向とほぼ平行である。
【0078】
次に、配向電極42と配向電極44との間、および配向電極52と配向電極54との間に電圧が印加された状態を維持し、液晶材料層41が液晶相となる温度、例えば60℃以上120℃未満になるまで徐々に冷却する。液晶材料層41が液晶相の状態になると、液晶材料層41の液晶分子41aは対向基板10側で発生する電界と配向用基板50側で発生する電界とにより配向する。
【0079】
液晶材料層41が例えば正の誘電率異方性を有している場合、液晶材料層41の液晶分子41aは、対向基板10との界面では電極指42aと電極指44aとの間に発生した電界の方向に沿って、配向用基板50との界面では電極指52aと電極指54aとの間に発生した電界の方向に沿って、対向基板10の面に対してほぼ平行に配向する。なお、液晶材料層41が負の誘電率異方性を有している場合は、発生した電界の方向に対して直交する方向に沿って配向する。
【0080】
ここで、電極指42aおよび電極指44aと電極指52aおよび電極指54aとは、Y軸に沿った方向に対して時計回り方向に112.5°ずれて配置されているので、電極指42aと電極指44aとの間に発生する電界の方向と、電極指52aと電極指54aとの間に発生する電界の方向と、はY軸に沿った方向に対して時計回りに22.5°ずれている。したがって、液晶分子41aの配向方向は、Y軸に沿った方向に対して時計回りに22.5°ずれている。この方向が、前述の位相差層40の遅相軸40a(図4参照)の方向となる。また、Y軸に沿った方向が、偏光板18の透過軸18a(図4参照)の方向である。
【0081】
<6.材料硬化工程>
次に、図8(d)に示すように、液晶材料層41を硬化させる。液晶分子41aが配向した状態を維持し、液晶材料層41に紫外光を照射する。このとき、液晶材料層41の反射表示領域Rのみに紫外光が照射されるように、液晶材料層41の反射表示領域R以外の部分をマスキングする。これにより、液晶材料層41のうち反射表示領域Rにおいて、液晶分子41aのアクリル基が光重合され硬化される。
【0082】
<7.配向用基板取り外し工程>
次に、図8(e)に示すように、対向基板10上に配置された配向用基板50を取り外す。なお、取り外した配向用基板50は、工程P23の位相差層形成工程において繰り返し使用してもよい。
【0083】
<8.材料除去工程>
次に、液晶材料層41の反射表示領域R以外の部分、すなわち透過表示領域T(図3参照)の部分を除去する。液晶材料層41の透過表示領域Tの部分は硬化していないので、有機溶媒を用いてこの部分を現像し除去する。有機溶媒は、例えば、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)、あるいはシクロペンタノンを用いることができる。現像の時間は、例えば90秒である。
【0084】
以上により、図3に示すように、対向基板10上の反射表示領域Rに位相差層40が形成される。なお、配向電極42および電極指42aと配向電極44および電極指44aとは、位相差層40が形成された後も対向基板10上にそのまま残るが、透明な材料で構成されているので、液晶装置100の視認性が損なわれることはない。
【0085】
次に、工程P31では、素子基板20と対向基板10とを貼り合わせを行う。貼り合わせは、素子基板20または対向基板10にシール剤を塗布し、アライメント(位置合わせ)をした後、素子基板20と対向基板10とを接触させ、圧着して行われる。
【0086】
次に、工程P32では、シール剤の開口部(注入口)から素子基板20と対向基板10との間に液晶を注入し、注入口を封止する。
【0087】
次に、工程P33では、対向基板10の外側に偏光板18を、素子基板20の外側に偏光板29を、それぞれ貼り付ける。以上により液晶装置100が完成する。
【0088】
上記第1の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0089】
(1)硬化される前の位相差層40の材料、すなわち液晶材料層41は、配向電極42と配向電極44とが形成された対向基板10と、配向電極52と配向電極54とが形成された配向用基板50と、の間に挟持される。このため、液晶分子41aは、配向電極42と配向電極44との間に発生する電界による配向規制力と、配向電極52と配向電極54との間に発生する電界による配向規制力と、によって層厚方向の両側から配向を規制されるので、層厚方向の両側でほぼ均一に一軸配向する。これにより、位相差層40の層厚方向における遅相軸40aのばらつきが抑えられる。したがって、従来の製法で得られるものに比べて高い光学補償特性を有する位相差層40を形成できる。また、位相差層40の層厚方向に亘ってほぼ均一な配向が得られることにより、位相差層40の層厚から位相差層40の位相差を予想することが容易になるため、位相差層40の光学設計を容易にできる。
【0090】
(2)液晶分子41aの配向方向、すなわち位相差層40の遅相軸40aの方向の精度は、配向電極42と配向電極44との間に発生する電界の方向の精度、つまり配向電極42と配向電極44との位置精度に依存する。配向電極42と配向電極44とをフォトリソグラフィ法により形成すれば、配向電極42と配向電極44との位置精度は、ラビング処理を行う場合の位置精度に比べて格段に高い。このことは、配向電極52と配向電極54とについても同様である。これにより、位相差層40の遅相軸40aの方向の精度が格段に高められ、高い光学補償特性が得られる。したがって、優れた表示品質を有する液晶装置100を提供できる。
【0091】
(3)液晶分子41aを電界により配向させるので、液晶材料層41を配向させるための配向膜およびそのラビング処理を必要としない。これにより、配向膜のラビング処理に伴うキズや異物発生のリスクが回避でき、高い歩留りで液晶装置100を製造できる。
【0092】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る液晶装置の構成について図を参照して説明する。図10は、第2の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図である。図11は、第2の実施形態に係る液晶装置の製造方法を説明する図である。なお、第1の実施形態と共通する構成要素については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0093】
第2の実施形態に係る液晶装置200は、第1の実施形態に係る液晶装置100に対して、配向電極42および配向電極44の代わりに配向膜46が配置されている点が異なっているが、その他の構成は同じである。
【0094】
図10に示すように、液晶装置200は、素子基板20と、対向基板10と、液晶層30と、配向膜46と、位相差層40と、を備えている。配向膜46は、対向基板10上の液晶層30側に位置しており、オーバーコート層16上に配置されている。配向膜46には、位相差層40の材料、すなわち液晶材料層41(図11(b)参照)の配向を規制するため、例えばラビング法により配向処理が施されている。配向処理の方法は光配向法であってもよい。配向膜46に施された配向処理により、図3のY軸に沿った方向に対して時計回りに22.5°ずれた方向に沿って配向が規制される。
【0095】
位相差層40は、配向膜46上の反射表示領域Rに配置されている。配向膜32は、配向膜46と位相差層40とを覆うように形成されている。
【0096】
次に、第2の実施形態に係る液晶装置の製造方法について説明する。第2の実施形態に係る液晶装置200の製造方法は、第1の実施形態に係る液晶装置100の製造方法に対し、工程P23の位相差層形成工程が異なっているが、その他の工程は同じである。
【0097】
第2の実施形態に係る位相差層形成工程では、第1の実施形態と同様に、配向用基板50を対向基板10上に取り外し可能に配置する。ただし、対向基板10に配向電極が形成されないため、対向基板10のマザー基板には配向電極に接続するベース電極は形成されない。以下、図11を参照して、工程P23の位相差層形成工程について説明するが、第1の実施形態と共通する工程についてはその説明を省略する。
【0098】
<1.配向膜形成工程(対向基板)>
まず、図11(a)に示すように、対向基板10上に配向膜46を形成する。そして、配向膜46に配向処理を施す。配向膜46の材料および形成方法は、公知の技術を適用すればよい。
【0099】
<2.材料配置工程>
次に、図11(b)に示すように、配向膜46上に液晶材料層41を配置する。
【0100】
<3.配向電極形成工程(配向用基板)>
次に、第1の実施形態と同様に、配向用基板50上に配向電極52および電極指52aと配向電極54および電極指54aとを形成する。
【0101】
<4.配向用基板配置工程>
次に、図11(c)に示すように、配向膜46と配向電極52および配向電極54とが対向し、対向基板10と配向用基板50との間に液晶材料層41を挟持するように、対向基板10上に配向用基板50を取り外し可能に配置する。
【0102】
<5.材料配向工程>
次に、液晶材料層41を配向させる。まず、液晶材料層41を加熱し等方相にする。液晶材料層41が等方相の状態で、図示しないが、配向用基板50のマザー基板上の配向電極52に接続されたベース電極と配向電極54に接続されたベース電極との間に5V〜10Vの直流電圧を印加する。これにより、図11(c)に示す配向電極52と配向電極54との間に直流電圧が印加される。
【0103】
次に、配向電極52と配向電極54との間に電圧が印加された状態を維持し、液晶材料層41が等方相の状態から液晶相の状態に変わるまで徐々に冷却する。液晶材料層41が液晶相の状態になると、図示しないが、液晶分子41aは、対向基板10との界面では配向膜46による配向規制方向に沿って、配向用基板50との界面では電極指52aと電極指54aとの間に発生した電界の方向に沿って、対向基板10の面に対してほぼ平行に配向する。
【0104】
ここで、配向膜46による配向規制方向は、Y軸に沿った方向に対して時計回りに22.5°ずれており、電極指52aと電極指54aとの間に発生した電界の方向とほぼ同じ方向である。この方向が、位相差層40の遅相軸40a(図4参照)の方向である。
【0105】
<6.材料硬化工程>
次に、図11(d)に示すように、液晶材料層41を硬化させる。
【0106】
<7.配向用基板取り外し工程>
次に、図11(e)に示すように、対向基板10上に配置された配向用基板50を取り外す。
【0107】
<8.材料除去工程>
次に、液晶材料層41の反射表示領域R以外の部分の部分を除去する。
【0108】
以上により、図10に示すように、対向基板10上の反射表示領域Rに位相差層40が形成される。
【0109】
上記第2の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0110】
(1)液晶分子41aは、配向膜46による配向規制力と、配向電極52と配向電極54との間に発生する電界と、によって層厚方向の両側から配向を規制されるので、層厚方向に亘ってほぼ同じ方向に均一に配向する。これにより、一般的な配向膜を用いて位相差層の材料の配向を規制する構成においても、位相差層40の層厚方向における遅相軸40aのばらつきが抑えられ、高い光学補償特性を有する位相差層40を形成できる。
【0111】
(2)配向膜46を有機材料で構成すれば、配向膜46と位相差層40との密着性は、無機材料であるITOで形成された配向電極52および配向電極54と位相差層40との密着性よりも良好である。これにより、配向用基板取り外し工程において、配向用基板50を取り外す際に、対向基板10上に形成された位相差層40にかかる応力を緩和できる。これにより、配向用基板50を取り外す際に、位相差層40が損傷を受けるリスクを低減でき、高い歩留りで液晶装置200を製造できる。
【0112】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図を参照して説明する。第3の実施形態に係る液晶装置は、第1の実施形態における液晶装置と同じ構成を有している。第3の実施形態に係る液晶装置の製造方法は、第1の実施形態における液晶装置の製造方法と同じ工程を有しているが、配向用基板の材質が異なっており、これに伴い配向用基板取り外し工程における配向用基板の取り外し方法が異なっているが、それ以外の工程は同じである。図12は、第3の実施形態に係る液晶装置の製造方法における配向用基板取り外し工程を説明する図である。
【0113】
図12に示す配向用基板60は、柔軟性を有する透明な材料、例えばプラスチックからなる。配向用基板60には、配向電極52および電極指52aと配向電極54および電極指54aとが形成されている。
【0114】
<7.配向用基板取り外し工程>
図12に示すように、対向基板10上に配置された配向用基板60を、配向用基板60の端部から矢印の方向に巻き取るようにして取り外す。
【0115】
上記第3の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0116】
(1)柔軟性を有する材料からなる配向用基板60をその端部から巻き取るようにして対向基板10から取り外すので、配向用基板60を取り外す際に、対向基板10上に形成された位相差層40にかかる応力をより緩和できる。これにより、配向用基板60を取り外す際に、位相差層40が損傷を受けるリスクをより低減できる。
【0117】
なお、第3の実施形態の製造方法は、第2の実施形態に適用してもよい。この場合においても同等の効果が得られる。
【0118】
(電子機器)
上述した液晶装置100,200は、例えば、図13(a)に示すように、電子機器としての携帯電話機500に搭載して用いることができる。電子機器は、図13(b)に示すように、電子ビューファインダ510であってもよい。携帯電話機500、電子ビューファインダ510は、それぞれの表示部502,512に液晶装置100,200を備えている。この構成により、表示部502を有する携帯電話機500および表示部512を有する電子ビューファインダ510は優れた表示品質を有している。
【0119】
また、電子機器は、モバイルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、オーディオ機器、液晶プロジェクタであってもよい。
【0120】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0121】
(変形例1)
以上の実施形態では、位相差層形成工程で液晶材料層41の層厚方向に亘って液晶分子41aを同じ方向に配向させた状態で液晶材料層41を硬化させたが、この形態に限定されない。液晶分子41aを液晶材料層41の層厚方向でツイスト配向させた状態で液晶材料層41を硬化させてもよい。
【0122】
この場合、配向用基板配置工程において、電極指42aと電極指44aとの間に発生する電界の方向と電極指52aと電極指54aとの間に発生する電界の方向とが非平行になるように、あるいは、配向膜46の配向規制方向と電極指52aと電極指54aとの間に発生する電界の方向とが非平行になるように、配向用基板50を配置すればよい。また、配向用基板50の配向電極形成工程において、配向用基板50上における電極指52aと電極指54aとの配置をずらしてもよい。
【0123】
(変形例2)
以上の実施形態の液晶装置は、FFS方式の半透過反射型の液晶装置であったが、この形態に限定されない。液晶装置は、例えば、IPS(In-Plane Switching)方式の液晶装置、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式の液晶装置、VA(Vertical Alignment)方式の液晶装置であってもよい。また、液晶装置は、反射型の液晶装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】第1の実施形態に係る液晶装置の表示領域の一部を示す平面図。
【図2】第1の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図。
【図3】位相差層の配置を示す平面図。
【図4】液晶装置の光学的軸配置を説明する図。
【図5】対向基板のマザー基板を示す図。
【図6】配向用基板を示す図。
【図7】液晶装置の製造方法を示すフローチャート。
【図8】位相差層の形成方法を説明する図。
【図9】位相差層の形成方法を説明する図。
【図10】第2の実施形態に係る液晶装置の概略構成を示す断面図。
【図11】第2の実施形態に係る液晶装置の製造方法を説明する図。
【図12】第3の実施形態に係る液晶装置の配向用基板取り外し工程を説明する図。
【図13】本実施の形態における電子機器を示す図。
【符号の説明】
【0125】
10…対向基板、10b…マザー基板、12…基板、14…カラーフィルタ層、16…オーバーコート層、18…偏光板、18a…透過軸、20…素子基板、21…基板、22…回路素子層、23…反射層、24…共通電極、25…絶縁層、26…画素電極、26a…開口部、27…画素、28…画素群、29…偏光板、30…液晶層、30a…配向方向、32…配向膜、34…配向膜、40…位相差層、40a…遅相軸、41…液晶材料層、41a…液晶分子、42…配向電極、42a…電極指、42b…ベース電極、44…配向電極、44a…電極指、44b…ベース電極、46…配向膜、50…配向用基板、52…配向電極、52a…電極指、54…配向電極、54a…電極指、60…配向用基板、100…液晶装置、200…液晶装置、500…携帯電話機、502…表示部、510…電子ビューファインダ、512…表示部、R…反射表示領域、T…透過表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板に設けた第1の配向規制手段と第2の基板に設けた第2の配向規制手段とが対向するように、前記第1の基板と前記第2の基板との間に位相差層材料を挟持する工程(a)と、
前記位相差層材料の分子を前記第1の配向規制手段の配向規制力と前記第2の配向規制手段の配向規制力とによって配向させた状態で、前記位相差層材料を硬化させて位相差層を形成する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、前記第1の基板と前記第2の基板とのうち一方の基板を取り外す工程(c)と、
を備えたことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第1の配向規制手段は第1の複数の透明電極からなり、
前記第2の配向規制手段は第2の複数の透明電極からなり、
前記第1の配向規制手段の配向規制力は前記第1の複数の透明電極間に印加する電圧によって発生する電界であり、
前記第2の配向規制手段の配向規制力は前記第2の複数の透明電極間に印加する電圧によって発生する電界であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第1の複数の透明電極のそれぞれが複数の電極指を備えた櫛歯形状を有し、それぞれの前記複数の電極指同士が互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されており、
前記第2の複数の透明電極のそれぞれが複数の電極指を備えた櫛歯形状を有し、それぞれの前記複数の電極指同士が互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されていることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第1の基板上の前記複数の電極指と、前記第2の基板上の前記複数の電極指と、が互いにほぼ平行であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第1の配向規制手段は配向膜からなり、
前記第2の配向規制手段は複数の透明電極からなり、
前記第1の配向規制手段の配向規制力は前記配向膜による配向規制力であり、
前記第2の配向規制手段の配向規制力は前記複数の透明電極間に印加する電圧によって発生する電界であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記複数の透明電極のそれぞれが複数の電極指を備えた櫛歯形状を有し、それぞれの前記複数の電極指同士が互いにほぼ平行であるとともに交互に配置されていることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記配向膜には配向処理が施され、
前記第1の配向規制手段の配向規制方向と、前記第2の配向規制手段の配向規制方向と、が互いにほぼ平行であることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記第2の基板は柔軟性を有する材料からなり、
前記工程(c)では、前記第2の基板を前記第1の基板から取り外すことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記液晶装置は、
複数の画素と、
前記複数の画素のそれぞれに設けられた、反射表示領域と透過表示領域と、をさらに備え、
前記工程(b)では、前記反射表示領域の前記位相差層材料の分子を配向させた状態で硬化させることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶装置の製造方法を用いて製造した液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−69245(P2009−69245A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235047(P2007−235047)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】